- 4 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 21:28:00.16 ID:TV3mmUenO
-
嗚呼、さようなら平穏なる日々。
嗚呼、こんにちは戦乱の日々。
生まれ落ちたるあやかしの命は人と変わらず幸を求める。
それは生けるものの糧。
舌の上に乗せた幸は、いずれ蕩けて消えて行く。
それでも幸は、いくつでも産み出せる。
( ^ω^)百鬼夜行のようです。
【九話 百人百様 思いあれ。 後】
死に逝くか生き往くか。
町を護るは砦となりし人にあやかし。
愛しい物を護る為、命すらも投げ出せる。
- 5 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 21:30:33.42 ID:TV3mmUenO
-
北の門。
護る砦は、幼い娘と一人の男。
少女、みせりは白い装束を身にまとい、黒い眼帯で右目を覆う。
いつもとは違う動きやすそうな装束は、正式な場と時にのみ着る事を許される。
そしてその小さな手には、研ぎ澄まされた二本の刃物。
片方は小振りな小刀で、もう片方は、大振りの出刃包丁。
それが、みせりの愛用する武器だった。
ミセ*%ー゚)リ「んっしょ……と、綺麗に研げたね」
(‘_L’)「…………」
ミセ*%ー゚)リ「おやっさん、研がなくて良いの?」
(‘_L’)「……もう、研いだ」
ミセ*%ー゚)リ「そっか」
- 7 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 21:33:34.09 ID:TV3mmUenO
-
(‘_L’)「…………白稚児」
ミセ*%ー゚)リ「ん?」
(‘_L’)「良い、のか」
ミセ*%ー゚)リ「何が?」
(‘_L’)「避難、しなくても」
ミセ*%ー゚)リ「どこに逃げろってのよ、あたしの家はここだよ」
(‘_L’)「…………」
ミセ*%ー゚)リ「……あたしは、好きで白稚児になって、好きでここに居るんだよ」
(‘_L’)「……ああ」
ミセ*%ー゚)リ「…………あたし、町が好き」
(‘_L’)「……」
ミセ*%ー゚)リ「だからね……守りたいの、町を」
- 9 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 21:36:53.00 ID:TV3mmUenO
-
(‘_L’)「後悔は、せん、か」
ミセ*%ー゚)リ「一度は死にかけた身、死ぬのは怖いけど、覚悟はしてる」
(‘_L’)「……俺も、一度は、死んだ身」
ミセ*%ー゚)リ「犬神……だもんね」
(‘_L’)「ああ、呪術の道具として、殺された」
ミセ*%−゚)リ「おやっさんは、自分を殺した相手……憎い?」
(‘_L’)「…………」
ミセ*%−゚)リ「……おやっさん?」
(‘_L’)「匂いが、する」
ミセ*%−゚)リ「へ?」
(‘_L’)「俺を、殺した、匂いが」
ミセ;%−゚)リ「え、え?」
(‘_L’)「最近、特に匂いが、濃い」
ミセ;%−゚)リ「ど、どう、え?」
- 12 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 21:39:45.91 ID:TV3mmUenO
-
犬神、ふぃれんくとは烏帽子を投げ捨てて頭をがしがしと掻き、立ち上がる。
そして外へ続く障子の前に立つと、潰れた目を手のひらで覆った。
何を見て、何を感じているのか。
口数の少ない犬神の心は読めず、みせりは首を傾げる。
山の主に育てられた犬の彼は、鼻が利く。
何かを、感じているのだろう。
悪いなにかを。
(‘_L’)「俺が最後に見たもの」
ミセ;%−゚)リ「う、うん」
(‘_L’)「あれは、今思うと、蝙蝠」
ミセ;%−゚)リ「こう……もり?」
(‘_L’)「鳥でも、獣でもない、翼」
- 15 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 21:42:50.36 ID:TV3mmUenO
-
最後に目にした白い月。
その月を割る、翼の影。
鳥ではない。
しかし、獣でもない。
あれは、蝙蝠の影。
銀色にきらめく太刀が頭を刎ね飛ばした。
痛みは無かった、しかし苦しみはあった。
気の狂いそうな空腹と渇きと恐怖から、解放はされたから。
その時の匂い。
あまったるい、匂い。
あの匂いが最近、濃い。
そう、内藤のが、西から帰って来てから。
気の、狂いそうな、あの匂いが。
- 17 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 21:45:33.46 ID:TV3mmUenO
-
ミセ %−゚)リ「……おやっさんは」
(‘_L’)「ん」
ミセ %−゚)リ「その蝙蝠、恨んではないんだね」
(‘_L’)「そう、なのか」
ミセ %−゚)リ「…………おやっさんが、その蝙蝠に会わないようにする」
(‘_L’)「何故、だ?」
ミセ %−゚)リ「だって、おやっさん…………怖がってるじゃん……」
(‘_L’)「…………」
ミセ %−゚)リ「怖いんだよ、その蝙蝠が」
(‘_L’)「怖い、か」
ミセ %−゚)リ「とらうまなんだよ、きっと、それは」
- 19 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 21:48:18.37 ID:TV3mmUenO
-
絶対的な力の差により捩じ伏せられ、地面に埋められた体。
嘗める事すら叶わぬ、ぎりぎりの位置に置かれた肉。
右目に刺された短刀、その痛み。
仔犬の頃の恐怖は今も、生きる。
血の通った恐怖は尚も犬神の体を、体の中を這いずり回っている。
まるで気付いて居なかったが、それは確かなものだった。
なるほど、と小さく溢す。
白稚児が心配そうな顔をして、犬神の袖を引く。
この娘もまた、死にかけたのだ。
病で親を無くし、己の身も病で腐った。
その時に崩れた顔、腐り落ちた腕。
狂った様に泣きながら、血を吐いてなお生きる事を求めていた。
死にたくない死にたくないと叫んでいる姿が自分に似ていたから、思わず、手差し伸べた。
- 20 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 21:51:09.50 ID:TV3mmUenO
-
落ちた腕は、繋げてやった。
しかし崩れた顔の右側は戻せず、今も眼帯で隠している。
右目が使えず、腕も千切れた娘。
それは、犬神と同じ。
潰された右目と切り落とされた腕が、同じで、自分の様で、ああ。
ミセ %−゚)リ「おやっさん」
(‘_L’)「……ん」
ミセ %−゚)リ「おやっさんは、町……好き?」
(‘_L’)「……解らん、だが、嫌いでは、ない」
ミセ %ー゚)リ「……じゃ、守ろう、どくおさんのお菓子も食べたいし」
(‘_L’)「ああ、そう、だな」
- 25 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 21:54:27.85 ID:TV3mmUenO
-
一つ頷いた犬神ふぃれんくとは、のっそりと部屋の奥へと移動する。
そして壁に立て掛けられたそれを掴み、持ち上げた。
それは長身な犬神の、身の丈程もある人斬り包丁。
黒く艶のある鞘に収まるそれは、恐ろしく巨大でつやめいている。
掲げた人斬り包丁を肩に担ぐと、犬神は白稚児を連れて外に出た。
大きな猫背の背中、幼い娘を連れた犬神。
二人は門の前にどっかと座り込み、外を睨んだ。
この恐怖を越える事は出来やしないだろう。
しかし、今の己はあやかし犬神。
厄を与える憑き神は、今は町を護る砦となろう。
己を育てた狼が、己の育てた白稚児が、愛してやまないこの町を。
さあ、北の砦は此にて完成。
ttp://imepita.jp/20100518/737030
- 31 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 21:58:03.60 ID:TV3mmUenO
-
南の門。
護る砦は、一人の男。
( ^Д^)「あーああ、暇だなーん」
門の前にのんびりと横たわるのは、派手な格好の一人の男。
男の名はぷぎゃー、妖怪大蝦蟇。
普段は内藤宅の井戸にて、勝手に居候をしているが、本当はなかなかの実力の持ち主。
それもそのはずで、この蝦蟇は蛙共の親玉。
化ける事と化かす事は、狐にも狸にも劣らぬ力を持つ。
炎も吐けるし毒も持つ。
牙は持たぬが何かを飲み込み、あっという間に腹の中で溶かしてしまえる。
しかしこの男、
( ^Д^)「めんどくちゃーいのー、影薄いのは解るけど何で俺っちがこんな事しなきゃなのぉー」
ひたすらに、面倒臭がり。
- 37 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:01:20.19 ID:TV3mmUenO
-
蝦蟇の親分でありながら、親分として立つ事は全くしない。
狐の様に色男と云う訳でも。
狸の様に武骨と云う訳でも。
( ^Д^)「眠いよぉぉ……でも寝たら冬眠し……いや暖かいからそれは無いかなぁん……」
全く、ない。
顔はそこそこ、背も高く、金は何故か持っている。
誰かに馬鹿にされ、いじられる事も多く、昔は子供によく泣かされた。
面倒見は悪くはないし、心は優しくもある。
何度も食われたり殺されかけたりしたものの、子供は好き。
しかし女関係は非常にまっさら。
言い寄る女は居はするが、それらも全て。
( ^Д^)「めんどくちゃーいよーぉぉぉぉぉん!」
面倒、らしい。
- 40 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:04:28.17 ID:TV3mmUenO
-
( ^Д^)「んもーぉ、何で俺っちが南門の砦なの……いやまぁね、出番あるだけ良いけどぉ」
( ^Д^)「だからってなぁん……俺っちだけ一人じゃん……さみし……」
( ^Д^)「…………」
( ^Д^)「ねむい」
顔は良いはず。
力もあるはず。
金もあるはず。
本当は結構凄いはず。
なのに。
( ^Д^)「ぷぎゃーする側じゃなくて主にされる側ってどぉ云う事なのぉー……」
何故か、三枚目。
- 44 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:08:17.67 ID:TV3mmUenO
-
( ^Д^)「まぁねぇ、町は好きだし良いんだけどぉぅ……だからってこの扱いはなぁん……」
( ^Д^)「内藤の坊っちゃんも明らかに俺っちの事てけとーにあしらってるしぃ……」
( ^Д^)「たぶん此処で大立ち回りしてもおっつーで済まされるしぃ……」
( ^Д^)「これ以上の出番も望めないしぃ……まぁあの火車に比べるとマシだけどぉん……」
( ^Д^)「…………」
( 寇D)「独り言さみし……」
顔を手で覆い、俯せに地べたへ寝転がって足をばたつかせる。
その傍らには己よりも巨大な、鉄製の鎚。
腕は確かだから一人で任されたのだが、それは理解しているが。
::( 寇D)::「ざみじいよぉぉぉぉぉぉぉぅ!!!!」
煩い。
- 49 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:10:42.81 ID:TV3mmUenO
-
::( 寇D)::「ぢぐじょぉぉぉぉぉぉぉうざみじいよぉぉぉぉぉぉぉぅ!!」
::( 寇D)::「何で俺っちだげひどりなのよぉぉぉぉぉぉぉぉう!!」
::( 寇D)::「めんどくちゃいけどざみじいよぉぉぉぉぉぉぉぅ!!」
( ゚д゚ )
::( 寇D)::「ざみじいよぉぉぉぉぉぉぉぅ!!!!」
( ゚д゚ )
::( 寇D)::
( ゚д゚ )
( 寇D^)
( ゚Д゚ )クワッ
(;^Д^)そ
- 52 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:15:08.59 ID:TV3mmUenO
-
(;^Д^)「ぉ、ぉぉう……べっくらした、みるなじゃないのよ」
( ゚д゚ )
( ^Д^)「どしたのよ、君は可愛屋の子でしょ」
( ゚д゚ )
( ^Д^)
( ゚д゚ )マソップ
( ^Д^)「色んな意味でわかんないよぉぅ」
( ゚д゚ )カクカクシカジカ
( ^Д^)「可愛屋の百足が、俺っちがうっさいから見に行けって?」
( ゚д゚ )ウマウマシカシカ
( ^Д^)「あ、これ差し入れ? わぁいお団子だー、百足って怖いけど優しいよねぇん」
( ゚д゚ )シカクイムーブ
( ^Д^)「大丈夫、あれ怖いから手は出さないよぉぅ」
- 53 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:18:22.10 ID:TV3mmUenO
-
ぱたぱたと宙に浮かぶそれは、可愛屋店主が飼う珍しい妖怪、飛頭蛮のみるな。
桃色の髪に赤い目を持つみるなは、遠く異国からやって来た妖怪である。
その辺りをへろへろ飛んでいた人の頭をきゅうが取っ捕まえ、もとい保護した。
それもこれも、人の頭が翼と化した耳でその辺りを飛んでいるのでは、商売上がったりだったからで。
まあ、意外ときゅうになつくみるなに、きゅうも可愛がっているのだが。
( ゚д゚ )ベランメェ
( ^Д^)「んー? 一人で平気かってぇ?」
( ゚д゚ )テヤンデェ
( ^Д^)「平気平気ぃ、寂しいけどねぇん」
( ゚д゚ )モルスァ
( ^Д^)「え? みるなも此処に残るのぉ?」
( ゚д゚ )ブルスコファー
( ^Д^)「危ないから百足んとこ戻りなぁ、俺っち寂しいけど一人で平気だから、寂しいけど」
- 55 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:21:16.89 ID:TV3mmUenO
-
( ゚д゚ )ヘギョミツ
( ^Д^)「え、寂しがってるだろうからって百足が……?」
( ゚д゚ )ピピルピルピルピピルピ
(*^Д^)「やだぁん、もしかして百足ってば俺っちの事ぉ……?」
( ゚Д゚ )クワッ
(;^Д^)「すんませんっ!?」
( ゚д゚ )ラウスラデラギポンデリルカ
( ^Д^)「君、ほんとあの百足好きだよねぇん……」
(*゚д゚*)ウィーラブソフマップワールド
( ^Д^)(飛頭蛮って体無いから子供は作れないと思うよぉぅ……)
( ゚Д゚ )クワッ
(;^Д^)「すんませんっ!?」
- 60 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:24:37.14 ID:TV3mmUenO
-
( ^Д^)「……みるなもさ、この町好きなのぉぅ?」
( ゚д゚ )ペロンペロントペペロンチーノ
( ^Д^)「そっかぁ、みんな好きだねぇこの町……」
( ゚д゚ )ギアッチョ
( ^Д^)「俺っちも好きよぉぅ? ……まぁ俺っちは、みるなみたく好きな子とか居ないけど」
( ゚д゚ )ボラーレヴィーア?
( ^Д^)「んんー……俺っちねぇ、先代九尾に恩があるからねぇん……」
( ゚д゚ )アバチャ
( ^Д^)「うん、だからねぇ……まあ、守らなきゃいけないよねぇ……この町」
( ゚д゚ )アリーヴェデルチ?
( ^Д^)「……先代にお世話になったから、先代の作って育てたもんは守らなきゃねぇん」
- 63 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:27:59.28 ID:TV3mmUenO
-
何となく拾われて、何となく着いてきて、何となく飼われていた。
先代と蝦蟇の間にあるのはそれだけだが、蝦蟇は恩を大事にする、とか何とか。
( ^Д^)「めんどくちゃいけど、しゃーないねーぇ!」
( ゚д゚ )ギラティナ!
( ^Д^)「しゃーないから、俺っちも本気で頑張るよぉぅ! 百足の団子は美味しいしねぇ!」
( ゚Д゚ )クワ……
( ゚Д゚ )
( ゚д゚ )=3
面倒くさいが、やる時はやってやるさ。
そうすればほら、きっと誰かが笑うっしょ?
だったらさ、みんなみーんな、ぷぎゃーさせてやるよぉぅ!!
さあ、南の砦は此にて完成。
ttp://imepita.jp/20100518/736850
- 65 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:30:58.70 ID:TV3mmUenO
-
西の門。
護る砦は、一人の娘とあやかし共。
(-、-トソン「…………」
/ ゚、。 /
(-、-トソン「…………」
/ ゚、。 /ノシ ピチ
(-、゚トソン「……だい」
/ ゚、。 /
(-、-トソン「…………大丈夫だ、あたしは」
/ ゚、。 /ノシ ピチピチ
(-、-トソン「叩かれても絞められても、あたしは此処から動かねぇ」
/ ゚、。 /シュン……
- 70 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:33:43.49 ID:TV3mmUenO
-
西の門、そのすぐ側に存在するは雑貨店都村屋。
都村屋跡継ぎ一人娘、男勝りで小柄な少女。
名はとそん、都村とそん。
綺麗に切り揃えたおかっぱ頭に強気な表情、あかぎれだらけの傷だらけの手に握られているのは。
(゚、゚トソン「祖父さんが遺した店、その全てを使って、この店と、町を、守る」
手入れの行き届いた、木目つやめく火縄銃。
とそんは店先の長椅子に腰掛けて、両手で細長い火縄銃を握りしめている。
その背にある店の中には、ずらりと大量の火縄銃が並べられていて。
そして、それにせっせと弾と火薬を詰める店の妖怪三人組。
早合を作り置く家鳴り、火縄銃に弾と火薬を詰める座敷童子、それを杖を使って衝き込む目々連。
三人はせっせと、準備の済んだ火縄銃を並べて行く。
薄い水色の一反木綿は、それととそんを困った様な顔で交互に見比べ、何かを言いたそうにする。
- 73 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:36:47.65 ID:TV3mmUenO
-
(゚、゚トソン「お前ら、少しは休め」
( ><)「単純作業なんです! 大丈夫なんです!」
(*‘ω‘ *)「ぽ」
( <●><●>)「僕らがしなきゃあなたが無茶するのは解ってます」
(゚、゚トソン「……可愛くねーの」
( <●><●>)「愛情の裏返しだとも解ってます」
(゚、゚#トソン
( <>><<>)
(゚、゚トソン「…………お前らは、この店から離れられねぇからな」
(*‘ω‘ *)「ぽ?」
( ><)「別に、離れられないわけじゃないんです」
(゚、゚トソン「は?」
( <●><●>)「僕らは家憑きですが、他の家にも憑けますよ」
(゚、゚;トソン「へ?」
- 77 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:39:32.50 ID:TV3mmUenO
-
( <●><●>)「だったら何故、僕らが此処から離れないのか」
( ><)「そんなの決まってるんです」
( <●><●>)「先代店主に云われましたから」
( ><)「とそんをよろしくと任されたんです」
( <●><●>)「そして僕らは、この店が好き」
( ><)「好きな場所と好きな人を守るため」
( <●><●>)「離れる理由が、何処にありますか?」
(゚、゚トソン
( <●><●>)「あー喋った喋った、作業しますよ」
( ><)「とそんさんはこう云う直球が苦手なんです!」
( <●><●>)「黙らせるにはこれが一番ですね」
( ><)「ですです」
- 80 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:42:10.53 ID:TV3mmUenO
-
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン「い、いや待て、おい、待て」
( <●><●>)「まだ何か云いますか」
(゚、゚トソン「お、おま、お前ら、離れられるなら、」
( ><)「だからー」
( <●><●>)「僕らも此処が好きだから残ってるんですよ」
( ><)「僕もわか君もぽっぽちゃんも、お店と命を共にする気で此処に残ったんです」
( <●><●>)「若輩者のとそんさんに色々云われる筋合いはありませんよ」
( ><)「これでも創業から此処に憑いてるんです! 年期が違います!」
(゚、゚トソン「は、」
(゚ー゚トソン「……ははっ、馬鹿ばっかりだな……」
( <●><●>)「あなたが云いますか」
- 84 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:45:45.84 ID:TV3mmUenO
-
( ><)「僕らは、此処と、とそんさんが好きだから、此処に居るんです」
( <●><●>)「じゃなかったら逃げてます」
(゚ー゚トソン「……ありがとよ」
( ><)「なんかお礼云われたんです」
( <●><●>)「気持ち悪いですね、素直で」
( ><)「いつもみたいにべらんめぇって突っ張っとけなんです」
(゚ー゚トソン「口減らねぇなぁ、てめぇら……」
( <●><●>)「口が達者なのが自慢でして」
( ><)「良いから刀でも研いどけなんです、火縄銃は任せろなんです!」
(゚ー゚トソン「わぁったよ、馬鹿共」
( <●><●>)「馬鹿にそう云われる筋合いもありませんがね」
- 87 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:48:37.85 ID:TV3mmUenO
-
/ ゚、。 /……
(*‘ω‘ *)「ぽ」
/ ゚、。 /?
(*‘ω‘ *)「ぽぽっぽ」
/ ゚、。 /
(*‘ω‘ *)「ぽー」
/ ゚、。 /゙
もう子供じゃないんだから、信じてあげなさいよ。
あの子はあの子なりに、必死で何かを守ろうとしてるんだから。
それを、無下にしちゃいけないよ。
あんたのお母さんは、弱いけど強くて、すっごく優しいよ。
- 89 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:51:37.71 ID:TV3mmUenO
-
力の弱いあやかし四匹。
それを従えるは、脆弱な人間小娘。
けれどこの町が好きだから。
友達の居るこの町が好きだから。
この店が好きだから。
家族の居るこの町が好きだから。
この子達が好きだから。
何よりも愛しいこの子達を守りたいから。
このちっぽけな命を散らしてでも、自分のすべてが無くなっても。
何人たりとも、この先には通させやしない。
小さな小さな目々連。
小さな小さな家鳴り。
小さな小さな座敷童子。
小さな小さな一反木綿。
小さな小さな人間小娘。
一つ一つが小さくても、すべてが合わされば大きくなれるよ。
- 92 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:54:45.06 ID:TV3mmUenO
-
(゚、゚トソン「もっかいだけ聞くぞ」
( <●><●>)「はいはい」
(゚、゚トソン「良いんだな、これで」
( <●><●>)「くどい」
( ><)「今さら何処に逃げろってんですか」
(*‘ω‘ *)「ぽっぽ!」
(゚、゚トソン「……だい、良いのか?」
/ ゚、。 /゙
( <●><●>)「親を置いて逃げる子が、何処に居ますか」
(゚ー゚トソン「……そっか、だいは、あたしの子だもんな」
/ `、、 /゙
(^ー^*トソン「…………ありがとな……」
- 96 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 22:57:15.70 ID:TV3mmUenO
-
火縄銃を山のようにずらりと並べ、清めた弾もしっかり詰めた。
神社の水を使って研がれた、重い刀。
振り回す力は無いかも知れないけれど、みんなみんな引き裂いてやる。
この状況でも得られた、この幸せを。
壊そうとする奴は、みんなみんな、ぶち抜いてやる。
(^ヮ^*トソン「おっしゃあ! 迎え撃つぞてめぇら!!」
/ ゚、。 /゙
( ><)「かかってきやがれなんです!」
( <●><●>)「補佐は任せて下さい」
(*‘ω‘ *)「ぽ!」
さあ、西の砦は此にて完成。
ttp://imepita.jp/20100518/736940
- 99 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:00:18.32 ID:TV3mmUenO
-
東の門。
護る砦は、二人の男。
( ^ω^)「腹減ったお」
('A`)「いつまでもくっちゃべってるからだろ」
( ^ω^)「お前さんが云うかお」
('A`)「最中はねぇが、握り飯ならあるぞ」
( ^ω^)「頂きまんもす」
('A`)「これがおかかでこれが梅」
( ^ω^)「これは?」
('A`)「昆布」
( ^ω^)「つなまよは?」
('A`)「ねぇよ」
( ´ω`)
- 101 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:03:09.67 ID:TV3mmUenO
-
( ^ω^)「はー……実感沸かんお」
('A`)「まぁな、いきなり妖怪大戦争じゃ実感沸かん」
( ^ω^)「……怖いお」
('A`)「……おう」
( ^ω^)「でも……やらにゃならんお」
('A`)「おう……」
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
( ^ω^)「どくおは、あの……餓神が来たら……どうするお?」
('A`)「あー……どう、するだろう……なぁ……」
( ^ω^)「おー……」
- 106 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:06:06.92 ID:TV3mmUenO
-
('A`)「くうが来て……話し、聞いてくれっかな……」
( ^ω^)「どうかおー……」
('A`)「聞いてくれねぇと……なぁ……」
( ^ω^)「…………どくお、死なんかお……?」
('A`)「死なんわ」
( ^ω^)「おー……なら、良いけど」
('A`)「……」
( ^ω^)「……」
('A`)「くう、何で黄泉返ったのかな……」
( ^ω^)「解らんお……」
- 109 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:09:49.17 ID:TV3mmUenO
-
('A`)「俺が、みんな悪いのかなァ……」
( ^ω^)「そんな事云うなおー……」
('A`)「んー……取り敢えず、町は守ろう……」
( ^ω^)「だおね……その為の、砦だお……」
('A`)「砦、か……言葉としては間違ってるかも知れねぇけど、その通りだよなァ……」
( ^ω^)「おー……四方を皆が守ってるお、僕らも頑張らなきゃだお」
('A`)「……俺な、思うんだ」
( ^ω^)「お?」
('A`)「多分、俺らが一番……影が薄くなる」
( ^ω^)「やめなさい」
('A`)「出番はよそに……」
( ^ω^)「やめなさい」
- 110 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:12:11.84 ID:TV3mmUenO
-
o川*゚ー゚)o「よ」
( ^ω^)「お、姐さん」
('A`)「見回りか?」
o川*゚ー゚)o「ん、逃げそびれとる子が居らんか見回り」
( ^ω^)「ご苦労様ですお、どんな感じですお?」
o川*゚ー゚)o「もうほとんど避難は済んどるみたいやね、問題無し」
( ^ω^)「おっおっ、なら良かったお!」
o川*゚ー゚)o「しっかし……近付いて来とるな」
('A`)「解るのか?」
o川*゚ー゚)o「あー……妹の気配がなぁ、するんよ」
( ^ω^)「妹さんってーと……蟲の?」
o川*゚ー゚)o「ん、蛞蝓くるう」
- 113 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:15:19.29 ID:TV3mmUenO
-
('A`)「その蛞蝓って、何か厄介なんだって?」
o川*゚ー゚)o「うん、ちょっと昔からねぇ……変な子やってんけど」
( ^ω^)「昔と云うと、蠱毒時代?」
o川*゚ー゚)o「そそ、一回ちゃんと話しとこか、蠱毒時代」
('A`)「まーた昔話か」
o川*゚ー゚)o「あんたほど長くならんわ」
( ^ω^)「まあまあ、蠱毒と云えばおっかさんの話でもあるんだからお」
o川*゚ー゚)o「そゆ事、あんたらの母親の事やねんからちったあ聞き」
( ^ω^)「はーい」
('A`)「へーい」
o川*゚ー゚)o(何となく腹立つな)
- 114 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:18:04.77 ID:TV3mmUenO
-
o川*゚ー゚)o「あれはうちらが未だ若い頃、やんちゃやった頃やね」
('A`)「何百年前?」
o川*゚ー゚)o「うちらが若い頃云うて何百て単位が出てくるんかい……いや、間違ってはないけど」
( ^ω^)「予想以上のお歳だお……」
o川*゚ー゚)o「どつくで。……まあ、ある日突然、うちらは蠱毒に突っ込まれた」
('A`)「前触れもなく?」
o川*゚ー゚)o「うちはまあ、やんちゃやったから怒られたんやと思ってんけどね
せやけど、ひいとはほんまに数合わせる為に入れられた様なもんやったよ」
( ^ω^)「おー、蟻さんは悪い事出来なさそうだしお」
o川*゚ー゚)o「喧しいだけで実害のない子やからねぇ、せやからあの子は、良い意味で異質やった」
( ^ω^)「おっかさんは?」
o川*゚ー゚)o「姉様はなぁ……なんや、恨まれて、らしいわ」
- 116 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:21:51.71 ID:TV3mmUenO
-
('A`)「毒婦の君が、恨まれる……?」
( ^ω^)「悪い事、してたのかお?」
o川*゚ー゚)o「うんにゃ、あの人は平和主義者で昔から優しかったよ、人も出来るだけ襲わん」
('A`)「あ、襲いはしてたのか」
o川*゚ー゚)o「まあ妖怪やからね……人やら妖怪食うんが、蜘蛛や」
( ^ω^)「おー……自然の摂理なのかお……」
o川*゚ー゚)o「それでも最低限しか喰わん、優しい人やった……うちと違ってな」
(;'A`)「姐さん……」
o川;゚ー゚)o「う、うちも若かったんや……今は後悔しとるけど、その……うち、西生まれやし……」
( ^ω^)「なん、だと……」
- 118 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:24:13.16 ID:TV3mmUenO
-
o川*゚ー゚)o「西の妖怪云うんはな、ほんまに荒くれもんの事を云う
親も家族もなく生まれ落ちて、ただ生きるためにだけ生きる無法者」
( ^ω^)「お……」
o川*゚ー゚)o「うちは西の、鎧のきゅうて呼ばれてた
槍も弓も通さん、最強の鎧百足として存在しとった」
( ^ω^)「おー、百足は鎧の形にもなるほど強いと聞いた事があるお」
o川*゚ー゚)o「そ、うちは百足の中でも特に秀でた力をもっとった
まあ、せやから調子に乗って暴れとったわけやけどね、青かったんやうちも」
( ^ω^)「…………おっかさんは、どこ生まれだお?」
o川*゚ー゚)o「……蠱毒に突っ込まれた蟲は、みんな、西生まれや」
('A`)「て事は……毒婦の君も、ひいとも……か」
o川*゚ー゚)o「あの二人は西のもんとしては珍しい穏健派やったから、敵もぎょうさん居ったよ」
( ^ω^)「おー……西だと、そうなるのかお……」
o川*゚ー゚)o「ま、ね……西のやり方を無視しとったわけやから」
('A`)(蟲だけに……)
o川*゚ー゚)o「どつくぞ」
- 121 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:27:40.53 ID:TV3mmUenO
-
o川*゚ー゚)o「姉様は、何や男を振ったらしくてな。その所為で恨まれたんやて」
( ^ω^)「なさけな……」
o川*゚ー゚)o「ひいともそれにくっついて、数合わせに突っ込まれた」
('A`)「ひいと……良い迷惑だな……」
o川*゚ー゚)o「他にもようさん突っ込まれたけど、うちらに比べると力の劣る奴等やった
せやからそいつら同士で殺し合い、うちらに噛みつく事も出来ずに死んでった」
( ^ω^)「……」
o川*゚ー゚)o「そん中に、うちらとも仲よおしとった奴が、一人だけ居った」
('A`)「……蛞蝓、か」
o川*゚ー゚)o「そう、蛞蝓くるう…………うちらと云うか、姉様にべたべたくっついとったんやな」
( ^ω^)「おっかさんが、好きだったのかお?」
o川*゚ー゚)o「好きやったんやろね……狂った方向に」
- 124 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:30:43.45 ID:TV3mmUenO
-
o川*゚ー゚)o「その頃には、姉様はもう男が居った。それが東の妖怪、雷獣公」
( ^ω^)「おっとさんかお!」
o川*゚ー゚)o「なんや仲よおなかったみたいやねんけど、いつの間にかくっついとったわ」
('A`)「毒婦の君と仲が悪かったって事ァ……」
o川*゚ー゚)o「雷獣も、昔は悪かったでぇ? 西まで噂が届くほどのやんちゃくれや」
( ^ω^)「ええ……意外な……」
o川*゚ー゚)o「近付くもんは片っ端から喰い散らかして、喧嘩もし放題な悪たれ野郎や
姉様が東に行った時に会うて、えらい大喧嘩してからは犬猿の仲やったのにねぇ」
(;'A`)「嘘だろ……あの馬鹿夫婦が……」
o川*゚ー゚)o「いやほんまほんま、実は大喧嘩ん時にぶっ潰れた土地がこの町の元になったんや」
(;^ω^)「おおお……まさかそんな事が……」
(;'A`)「予想の斜め上な地盤の作り方……」
- 126 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:33:22.77 ID:TV3mmUenO
-
o川*゚ー゚)o「まさかくっつくとは思てなかったけど、まあそれはええわ
そんで蠱毒の中で、何とかみんなで力を合わせてこっから抜け出そう云う事なってね」
( ^ω^)「その時に残ってたのは、もう……四人だけかお?」
o川*゚ー゚)o「ん、他の奴等はみーんな殺し合いや
せやからこれ以上死なん様にて、姉様が提案しはった」
( ^ω^)(おっかさんかっけー)
o川*゚ー゚)o「まあ拒否ったけどな」
(;^ω^)「姐さあん……」
o川;゚ー゚)o「せ、せやから若かったの! 拒否る事がかっこええと思ってたの!」
('A`)(ちゅうにびょう乙……)
o川*゚ー゚)o「どつくぞ」
('A`)「いちいち読まないで」
- 128 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:36:11.45 ID:TV3mmUenO
-
o川*゚ー゚)o「噛み付いて怒鳴り付けて、誰がんな事するかぼけぇてなっとってんけどな……
それでも、姉様は食い下がらずに、うちをずうっと優しゅう説得しはった」
('A`)「で、しつこさに折れたと」
o川*゚ー゚)o「心打たれた云いや。ひいともくるうも姉様の提案に賛成しとったしな
うちだけ強情はっても、意味なんかあらへんてほんまはわかっとったし」
( ^ω^)「で、力を合わせて蠱毒から出たのかお?」
o川*゚ー゚)o「うん、まあほとんど蟻の怪力と姉様のど根性でやったけど」
( ^ω^)「ひいと……地味に凄くないかお……?」
o川*゚ー゚)o「地中に埋められとったからね……土ん中はあの子が本気出せる場所でもあんねん……」
('A`)「……百足もなんじゃ」
o川;゚ー゚)o「う、うっさいわ……力でひいとに勝てるかい……
そんで出てきたんやけど、埋められとったんは東の土地にやったんや」
( ^ω^)「お」
- 130 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:39:09.96 ID:TV3mmUenO
-
o川*゚ー゚)o「まあ外出てみたら、雷獣が蓋開けようとしとった所でな、ここで馬鹿夫婦完成や」
( ^ω^)「あー……」
('A`)「あー……」
o川*゚ー゚)o「感動的な対面しとったよ……思い出すだけで痒ぅなるわ……」
( ^ω^)「予想できるからそれは良いお……」
('A`)「俺も痒くなってきた……」
o川*゚ー゚)o「まぁそんでうちらは適当にぶらぶらしとってんけどね、蠱毒時代が結構長くて
外では結構な時間がたっとったらしく、うちらはどうも馴染まれへんなってなぁ」
( ^ω^)「どれくらい蠱毒に居たんだお?」
o川*゚ー゚)o「普通やったら三日から七晩ってとこやけど、うちらの場合は何十年やったみたいやわ」
(;'A`)「何十年も……壺の中……」
o川*゚ー゚)o「はっはっ、気が遠くなるやろー、狭かったぞー」
- 132 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:42:39.55 ID:TV3mmUenO
-
o川*゚ー゚)o「うちはもう毒気も抜かれてしもてね、前ほどやんちゃにはなれんかった
せやから仲ようなったひいとと一緒に、何や店でもしよかて話しになってね」
( ^ω^)「その頃は、まだ町は無かったのかお?」
o川*゚ー゚)o「あったよ、けどまだ出来てすぐやったから、活気も無くてねぇ
ほんなら折角やから、ってうちらは町に移り住んで店を開く事にしたんよ」
(;'A`)「軽い理由で出来たんだな……」
o川*゚ー゚)o「なんとなーく始めただけやったしねぇ、まあ店の方は紆余曲折あるわけやけど」
( ^ω^)「おっかさんは馬鹿夫婦で、ひいとと姐さんは店……」
('A`)「……くるう、は?」
o川*゚ー゚)o「……いつの間にか、居らんなっとった」
( ^ω^)「お、でもおっかさんに……」
o川*゚ー゚)o「前は気持ち悪いくらいべたべたしとったんやけど、蠱毒から出て、急におらんなった
変わった子やけど一応はみんなで可愛がっとったから、探したけど見つからず……」
( ^ω^)「消えっちまったのかお……」
- 134 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:46:16.06 ID:TV3mmUenO
-
o川*゚ー゚)o「どこに、行ったんやろなぁ…………と浸る気にもならん」
(;^ω^)「な、なんでだお?」
o川;-д-)o「ちょっとなあ……あれは、問題がありすぎる……結局は西に戻ったみたいやし」
(;^ω^)「……よほどの問題児だったんだおね」
o川;゚ー゚)o「んー……多分あれは、姉様の事を異様なまでに好きすぎたんやろうね
四六時中監視してくっついて、べたべたにやにやしとる様な奴やったわ……」
(;'A`)「すとぉかぁ……」
o川;゚ー゚)o「見事にその通りや、しかも姉様も強くは云われへんからもう……」
(;´ω`)「う、うわー……」
o川;゚ー゚)o「姉様に近付く男はみんなおっぱらったり殺したり……雷獣にも敵意剥き出しやった」
(;'A`)「……馬鹿夫婦になって何も無かったのか?」
o川;゚ー゚)o「そこやねん……あのくるうが姉様を雷獣に取られて、黙っとるわけないのに……」
- 139 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:49:15.50 ID:TV3mmUenO
-
o川*゚ー゚)o「争い事やら謀には絶対首突っ込んで引っ掻き回してけらけら笑てたあれが
……何や、この騒ぎを黙ってほっとくわけ無い気もするんよね……」
( ^ω^)「お……確かに、町にはおっかさんもおっとさんも居るしお……」
(;'A`)「……嫌ァな感じだな」
o川*゚ー゚)o「うちも気を付けるけど、姉様んちの近い東門は気を付けてね
あの蛞蝓、どっからひょいと現れるか解らへんから警戒するに越した事はない」
( ^ω^)「把握だお、しっかり警戒しますお!」
('A`)「屋敷はあの二匹としょぼんに任せて、俺らは門をしっかり守るか」
o川*゚ー゚)o「うんうん、ほんならうちはおいとましよか
見回りして、避難しとる子ぉらに御飯作ったらんとあかんからね」
( ^ω^)「おっおっ、ありがとうございましたおー!」
('A`)「気を付けてー」
- 141 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:52:23.84 ID:TV3mmUenO
-
( ^ω^)「……警戒するもんが増えたお」
('A`)「あさひに、くうに、くるう……か」
( ^ω^)「やるっきゃないお、ここまで来たら」
('A`)「……だな、精一杯やってやるかァ」
( ^ω^)「どくお、金棒は?」
('A`)「ここに、坊っちゃん武器は?」
( ^ω^)「扇ならあるお」
('A`)
( ^ω^)
('A`)「戦えるのかそれ」
( ^ω^)「やってみんと解らんお」
('A`)「ノリで迎えて良い状況じゃねェぞ、おい……」
( ^ω^)「大丈夫大丈夫」
- 142 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:55:34.04 ID:TV3mmUenO
-
( ^ω^)「こいつはおっかさんに貰った扇だお、お守りの鈴もついてるし」
(;'A`)「あのねェ坊っちゃん……涼しいだけだろ、それ……」
( ^ω^)ノシ「そいっ」 ブォン
(;'A`)「だから……」
<ビュゥゥゥヒュゴォォォォォメキメキドスーン
(;゚ω゚)
(;゚A゚)
<ウワー テキシュウカー オレノイエガツブレタゾゴルァー
::(;゚ω゚)::
::(;゚A゚)::
- 146 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/23(日) 23:58:08.98 ID:TV3mmUenO
-
(;゚ω゚)「…………ぎこの旦那のお家が……吹っ飛んだお……」
(;゚A゚)「坊っちゃん後でぼこられる……絶対ぼこられる……」
(;゚ω゚)「……なに、この扇……」
(;゚A゚)「毒婦の君……どこでこんなもん……」
(;゚ω゚)
(;゚A゚)
(;゚ω゚)「百人力だおね」
(;゚A゚)「被害を考えたら大迷惑だぞ」
(;゚ω゚)
(;゚A゚)
(;゚ω゚)「顔が戻らんお」
(;゚A゚)「俺もです」
- 147 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/24(月) 00:01:21.59 ID:JdVuo0m1O
-
(;^ω^)「えー……扇で戦える、と云う事は解りましたお」
(;'A`)「被害は甚大、繰り返す、被害は甚大」
(;^ω^)「あ、やっべぎこの旦那こっち来た」
(;'A`)「もう素直に謝れ、木工屋だから家も建てられるだろ」
(;^ω^)「いやそれはどうか……お?」
(;'A`)「ん?」
ぶわ、と風が舞う。
それはつい先程、坊っちゃんが起こした風とはまるで違う。
生暖かく生臭く、ぬるりと鼻から喉へ、皮膚を這い回る様な不快な風。
顔を上げた二人の双眸に映る空。
西の空が、暗く、黒く。
- 151 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/24(月) 00:04:17.72 ID:JdVuo0m1O
-
( ^ω^)「……あれは」
('A`)「…………蝙蝠の影が見える」
( ^ω^)「来るか……未だ、様子見か……」
('A`)「警鐘、鳴らすか」
(;,゚Д゚)「おい、手前らッ!」
( ^ω^)「ぎこの旦那、あれ」
(#,゚Д゚)「何を人の家ぶち壊しとんじゃゴルァアッ!!」
メギャアア (#,゚Д゚)=○;)ω゚).', スンマセッ!
('A`)「そんな事より旦那よ、西の空」
(#,゚Д゚)「そんな事って手前……ああ来やがったな、ありゃ先発の様子見共だろうよ」
- 153 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/24(月) 00:08:07.52 ID:JdVuo0m1O
-
( #)ω^)「旦那、みんなに知らせてくれお」
(,,゚Д゚)「うちの狸と狐共がもう駆け回ってる、烏が伝えに来たからな」
( #)ω^)「有り難いお…………進軍は、まだかお」
(,,゚Д゚)「もう、ゆっくり始まってる」
('A`)「早ェな……数日置くと思ったが」
(,,゚Д゚)「この調子だと着くのは今夜か、明日の朝……」
( #)ω^)「…………本当に、いくさが始まるのかお……」
('A`)「……実感、沸かねェな」
(,,゚Д゚)「こう云っちまうなァ不謹慎だがよ」
( #)ω^)「お?」
(,,゚Д゚)「獣の血がな、疼く」
- 155 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/24(月) 00:11:18.78 ID:JdVuo0m1O
-
(,,゚Д゚)「狐との化かし合いも終わって、長ェ間だらけてたからな……」
('A`)「たぎるのか、妖怪の血が」
(,,゚Д゚)「ああ……儂らは狸とは云え、元々は獣の妖怪だ……紛争抗争慣れっこだった」
( #)ω^)「町に来てからは、さっぱりなのかお?」
(,,゚Д゚)「平和協定結んだから町に来れたんだ…………悪いな、不謹慎で」
( #)ω^)「あやかしの血、最後の大魅せ場だお」
(,,゚Д゚)「おう…………ぞくぞくして来やがるな……」
('A`)「……んじゃま俺も、最後くらいは鬼らしく立ち回るかね」
(,,゚Д゚)「これが妖怪として最後の戦かも知れんからな」
( #)ω^)「じゃあ僕は家屋をこう、風でぶーんと」
(;,゚Д゚)(;'A`)「止めんか」
- 159 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/24(月) 00:14:18.38 ID:JdVuo0m1O
-
遠くから、魑魅魍魎共の声が届く。
それは己らを鼓舞する様な、町の物を嘲る様な咆哮。
ざわざわと風にも似た足音が、地響きとなって町を包み込む。
予想よりも早い進軍に、人間達は肩を寄せ合い怯えるばかり。
そんな弱いものを守ろうと、あやかし達がすっくと立ち上がり眼を見開く。
四方の門には砦を組んだ。
空を守るは異形の烏と紅雀。
女郎蜘蛛の糸が張り巡らされた町の中、迫り来るは西の者。
何時のまにやらふらり入り込んだ女の影には気付かずに、始まってしまう戦の日。
第一のいくさ、はじまり、はじまり。
『九話後編 おわり。』