- 2 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:06:14.28 ID:YfFgcskbO
-
嗚呼、どうして。
どうして君が、訪れる。
この戦の中にどうして君が。
君は。
( ^ω^)百鬼夜行のようです。
【十話 百二山河 崩してみせよ。 前】
黒い波に飲まれる様に、町に押し寄せるあやかし共。
その中でも一際目立つ、あの影は。
- 5 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:09:21.51 ID:YfFgcskbO
-
ついに訪れたるは、西のあやかし大行進。
四方の門から雪崩れ込む様に、空から地から無法者共が訪れる。
それは無数の足音が地響きにもなる様な黒い波。
羽搏く音に足音に、身の毛も弥立つ鳴き声上げて。
暗いくらあい西の空。
それが町へとやって来たのは、夜の事。
夕暮れ時も終わりを迎え、降りるは闇の帳。
僅かに残った赤い夕日が、黒を映えさせ映し出す。
四方の砦は唇を噛んで、それを迎え撃とうと睨む。
さあかかってこいよ下衆共め。
お前らの欲望に、町を飲み込ませるものか。
さあさ、始まりました第一陣の狂い風。
肌を嘗める風の中、ちりちり鈴が鳴くばかり。
- 7 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:12:06.09 ID:YfFgcskbO
-
空から、何かが舞い降りる。
東の通りに程近く、黒く大きな影が。
(;^ω^)「う、やっぱり空からかお……」
('A`)「空相手は面倒だなァおい……」
(;^ω^)「盛岡屋の方では、もう烏達が頑張ってるお……」
('A`)「…………びびるな、これは」
(;^ω^)「うん……」
扇を構えた坊っちゃんに、金棒構えた餓鬼どくお。
東の通りの上空に降りる黒い影を、固唾を飲んで見守っていた。
他の砦はまだ無事か。
まだ全てのあやかしが押し寄せた訳ではない。
しかしその数たるや、町の空をすっくり覆い隠さんばかりの黒い影。
予想よりも遥かに多いあやかしに、坊っちゃんは僅かに顔色を無くす。
- 9 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:15:14.43 ID:YfFgcskbO
-
だが、ここで臆せば飲み込まれる。
気をしっかり保たねば、負けぬと己に言い聞かさねば。
この濁流に、あっと云う間も与えず食われてしまう。
しかしこの数、この早さ。
予想よりも早く、予想よりも多い。
嗚呼、すべてが予想を上回る。
どうしろと云うのだ、この数を相手に。
西と東の妖怪は、数では明らかに西が多い。
東が百とするならば、西は千を軽く越える。
しかも西の奴等は、強い。
あの蝙蝠ですら、あの細く小柄な体ですら、己よりも大きな相手を容易く殺す。
- 11 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:18:10.54 ID:YfFgcskbO
-
こちら東も強い奴等は多く居る。
狐に狸に狼、蝦蟇に犬神、餓鬼。
果てには蟲の三姉妹、雷獣公までいらっしゃる。
しかし、しかし。
過去に誰が云うたかは知らぬが、戦いは数だと云う言葉も存在する。
住人の大部分を人間が占めるこの町。
あやかしの数は、どうしても、少ない。
故に数で押されれば、少し、危うい。
これは勝てる戦なのか、僅かに坊っちゃんが恐れた時。
後ろから、ずん、とひときわ大きな地響き。
あわてて音の方を振り返ると、そこには巨大な黒い影。
砂ぼこりを巻き上げて、何かが其処に降り立った。
- 13 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:21:07.15 ID:YfFgcskbO
-
もうもうと立ち込める砂ぼこりに咳き込み、坊っちゃんは扇をぶわりと煽ってみせた。
すると、ごうと云う音を靡かせ風が舞う。
そして砂ぼこりは吹き飛ばされ、影の正体が明らかとなる。
影の正体は、六つの目玉の巨大な蜘蛛。
黒く巨大な八足の蟲は、身の毛も弥立つ恐ろしさ。
それは所謂、土蜘蛛。
そして、坊っちゃんは目を見開く。
土蜘蛛の姿にではない。
その上に立つ、男の姿に。
(; ω )「お……お……!?」
「…………よぉ、内藤」
(; ω )「な、で……お前さん、が……っ!?」
- 15 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:24:33.39 ID:YfFgcskbO
-
風にはためく赤羽織。
鈴がちりちり鳴き声上げる。
短い髪に鉄紺の着流し。
腰に差したる一本の太刀。
凛々しい顔付き、はっきりとした眉の形。
それは、ああ、それは。
ああ
_
( ゚∀゚)「元気か、内藤」
(; ω )「なが……おか……」
互いを友と認めた筈の、一人の男。
長岡の姿であった。
- 17 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:28:13.21 ID:YfFgcskbO
-
出会って、話して、仲良くなって。
君は地が好きだと云った。
命を育む地が好きだと。
君は僕に、町は好きかと聞いたじゃないか。
君はそれを、笑って、だよなぁ、と答えていた。
どうして、そんな場所に居る?
それは、西の蜘蛛だ。
町を襲いに来た、敵、なんだ。
どうして、ねえどうして。
どうして、刀を抜いて、僕に向ける。
友達だと認め合ったよ、ね?
あの笑顔は、ほんと、だよ、ね?
ねえ、長岡、長岡。
僕の、僕を僕として初めて見てくれた、僕の、とも、だ、ち。
- 18 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:30:45.99 ID:YfFgcskbO
-
(; ω )「なが、お、か……どう、し……」
町を救いに来たんだよね。
きっとそうだよね。
_
( ゚∀゚)「少しばかり、久し振りだな」
いつもみたいに、ほら。
干からびた大福だとか云って、笑おうよ。
(; ω )「何で……そんな、とこに……立って……」
笑ってくれよ。
ほら、僕は僕だと、笑って。
_
( ゚∀゚)「それはな内藤、この蜘蛛は」
俺の、部下だからだよ。
- 20 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:33:16.27 ID:YfFgcskbO
-
耳を塞ぎたい。
風でみんな吹き飛ばしたい。
何もかも無にしたい。
そうすれば、そうすれば。
見たくないもの聞きたくないもの、なくなる。
_
( ゚∀゚)「自己紹介してやるよ、内藤よ」
止めて、云うな。
_
( ゚∀゚)「俺は、西の森山、妖怪の」
止めて、止めろ、聞きたくはない。
_
( ゚∀゚)「西の荒くれ共の頂点に立つ、西の頭である、長岡だ」
ああ、あああああ。
- 21 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:36:05.11 ID:YfFgcskbO
-
(; ω )「嘘、だ、お……そんな……長岡……」
_
( ゚∀゚)「嘘だと思うか? じゃあ、お前を殺して証明しようか?」
(; ω )「そんな、だって、そんな……友、達……っ」
_
( ゚∀゚)「言葉ってのは捕まえておく事が出来ねぇふわふわした不明瞭な物だよな、内藤」
(; ω )「お……」
_
( ゚∀゚)「嘘を嘘だとも、見抜けないのか?」
(; ω )「…………お、ぉ……ぁっ……」
_
( ゚∀゚)「楽しいなぁ内藤……お前がそうやって絶望すんのは楽しいなぁ?」
(;寃ヨ)「あっ…………うぁ、あっ……あああああっ……!」
_
( ゚∀゚)「はっ、ひゃは、あはははははははっ! ざまぁねぇなお坊っちゃんよぉ!!」
げらげらと、友が、嘲笑った。
- 23 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:39:32.81 ID:YfFgcskbO
-
(;寃ヨ)「どうして、ど、してっ……! 友達、だって……!!」
_
( ゚∀゚)「お前には解らねぇよ内藤、甘ったれなお前にはなぁ! あっはははははははっ!!」
(;寃ヨ)「嘘だお、嘘だお! 友達って、お前さんの、初めてのっ!」
_
( ゚∀゚)「……」
(;寃ヨ)「お前さんも云ったお! 僕が、初めての友達だって!」
_
( ゚∀゚)「…………」
(;寃ヨ)「お前さんは僕を親関係なく僕として見てくれた、友達なんだおぉっ!!」
_
( ゚∀゚)「気持ち悪いんだよ」
(;寃ヨ)「ぉ────」
_
( ゚∀゚)「気持ち悪いんだよ、何が友達だ、鬱陶しい」
(;寃ヨ)「そ、な……なが……」
_
( ゚∀゚)「呼ぶな、気味が悪い。俺はな、友達なんざ、要らねぇよ────お前なんか、要らねぇよ」
胸が、えぐれる、音がした。
- 25 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:42:20.14 ID:YfFgcskbO
-
( ;ω;)「あっ……ぁ、あああっ……!」
要らない。
( ;ω;)「ぼく、は、いら、な……っ!」
『お前なんて誰も要りはしない』
( ;ω;)「うぁ、あっ……ああっ……」
『お前なんて要らねぇよ』
( 寃ヨ)「うぁああああああああっ!! ごめ、なさっ……ごめんなさいお、ごめんなさいおぉおっ!!」
背中の傷跡が、ひどく、ひどく、いたくて。
( 寃ヨ)「ああ゙、あ、あああああああああっ!! 捨てないでくれお、捨てないでくれおっ!!
いいこにするお! だから!! おっかさぁああああああああああんっ!!!!」
- 27 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:45:52.99 ID:YfFgcskbO
-
過去の痛みが襲う。
痛いのと、悲しいのと、苦しいの。
みんなみんなまぜこぜに、涙が溢れて止まらない。
お前なんて要らないと。
お前は捨て子なんだと。
だから捨てられたんだと。
必要とされない事が怖かった。
過去に叩きつけられたことば。
要らない子だと捨てられる。
おっかさんにも捨てられる。
だからいいこになろうとしたのに。
だからいつでもわらっていたのに。
要らない。
要らないと、捨てられる。
捨て、られる。
- 29 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:48:25.34 ID:YfFgcskbO
-
心の一番皮膚の薄い所を、串刺しにされた。
痛い痛い痛い痛い背中が胸が身体中が痛い。
どうして、どうして、どうして。
どうして僕が好きになったものは僕を痛め付けるの。
嘲笑う声が聞こえる。
僕を認めてくれた友が笑ってる。
純粋な友が、僕が泣き叫ぶ姿に笑う。
痛い。
痛い痛い痛い。
怖い。助けて。捨てないで。痛い。痛い。痛い。
- 32 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:54:57.42 ID:YfFgcskbO
-
ああ、僕は。
『いたいお、いたいおっ! ごめんなさいおっ!』
あの頃から、変わらず。
『ごめんなさいお、ごめんなさいお! ごめんなさいお! ごめんなさいおっ!!』
泣き叫んで、許しを乞う、子供の、まま。
どうすれば良いか解らなくて、解らなくて。
ただひたすらに泣いて謝っていたあのころ。
僕は、あの頃から、まるで変わってはいない。
『お坊っちゃん』のまま、大きくなってしまった。
- 34 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 21:57:32.09 ID:YfFgcskbO
- _
( ゚∀゚)「はっ、はは! ざまぁねぇぜよぉ内藤! あはははははっ! ほら踏み潰しちまえ!!」
友が笑い、蹲って泣き叫ぶ体を踏み潰そうと、土蜘蛛を動かした。
けれどそれをどうする事も出来なくて。
ただ、涙で歪んだ視界におさめる事しか出来なくて。
ミ#,゚Д゚彡「ゴルァアアアアアアアアアアアッ!!!!」
突然、火の車が蜘蛛へ猛然と突撃をした。
ミ#,゚Д゚彡「何さらしてんだゴルァアッ! 人のシマ荒らしてんじゃねェぞゴルァッ!!」
( ;ω;)「ふ……さ……?」
ミ#,゚Д゚彡「ビービー泣いてンじゃねぇ! お前はがきかァッ!!」
( ;ω;)「お……ぉ……っ」
- 36 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:00:19.16 ID:YfFgcskbO
-
('A`)「おい、持ち場はどうした」
ミ,,゚Д゚彡「でっけぇのが降りて来んのが見えたから、陰摩羅鬼が様子見に行けってよ」
('A`)「ありがとよ、金棒吹っ飛ばされて困ってたんだ」
ミ,,゚Д゚彡「来たら来たでそいつ泣いてるし、何なんだよこれは」
('A`)「知らん、兎に角、あれが敵だ」
ミ,,゚Д゚彡「見りゃわかる」
金棒をやっと拾えたどくおと、人の姿に変えた火車ふさ。
顔を涙でぐしゃぐしゃにする坊っちゃんの前に立ち塞がり、拳をぺきぺきと鳴らしてみせた。
土蜘蛛の巨体でも、火車の一撃を受けて怯んだのか、後ずさって俯いている。
ならば畳み掛けるのは今だと、二人は地を蹴り、飛び出した。
- 38 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:03:02.15 ID:YfFgcskbO
-
炎を纏った小さな歯車をぽんと出し、それをどくおが金棒で打つ。
勢いを増した歯車は土蜘蛛の目玉へと抉り込まれ、苦しげに吼える。
しかしそれに怯む事もせず、ふさは炎な車を幾つも出し、地を走らせて土蜘蛛を囲ませる。
火車でも色々やり方があるんだよ、と笑うふさ。
長く多い髪を熱風に舞わせ、巨大な車を呼び出して。
ミ#,゚Д゚彡「でっけぇの食らって泡吹いてろよォ……土蜘蛛風情がァアアアアアアアアアッ!!」
ぽんと姿を虎にも似た巨大な猫の姿に戻し、車に飛び乗り特攻した。
土蜘蛛の脇腹に噛みつく炎の車。
ごりごりと柔らかな胸を掻き抉り、炎の熱で肉が焼ける。
そして、ぶしゅりと音をさせ、蜘蛛の胴体が二つに千切れた。
- 40 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:06:06.10 ID:YfFgcskbO
-
ぶしゃっと緑の体液を噴き出させ、土蜘蛛は八足をばたつかせながらもがく。
それでも車は止まる事をせず、腹を縦に引き裂いた。
どろりとした臓物が撒き散らされ、地面や車を醜く汚す。
びくびく痙攣していた蜘蛛が動きを止める頃には、車も止まり、ふさは地面へと降りていた。
(;'A`)「お、おおお……」
ミ,,゚Д゚彡「ンだぁ? 呆気ねぇなあオイ」
(;'A`)「……すげぇなお前」
ミ,,゚Д゚彡「死体奪うだけが取り柄だと思うなってんだ」
(;'A`)「いや、空気から英雄になるとか……」
ミ#,゚Д゚彡「好きで空気してんじゃねェよ、陰摩羅鬼に出番食われてんだよ」
- 43 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:09:24.14 ID:YfFgcskbO
- _
( ゚∀゚)「あーあー……死んじまった、情けねぇな」
ミ,,゚Д゚彡「どうする眉毛、味方はここにはもう居ねぇぞ」
_
( ゚∀゚)「別に、これだってただの蜘蛛を無理矢理大きくしただけだしな」
ミ,,゚Д゚彡「あ?」
_
( ゚∀゚)「わかんねぇ? 俺は、今日は来ただけだぜ?」
ミ#,゚Д゚彡「なっ…………来ただけの癖に、あれを虐めた訳か? ァアッ!?」
_
( ゚∀゚)「そうだよ」
ミ#,゚Д゚彡「ッザケんなゴルァアッ! 焼き殺すぞォオッ!!」
_
( ゚∀゚)「それは次の襲撃までとっとけよ、今はそれどころじゃねぇだろうがよ
あんなもんに執着してっと、いつかお前も殺されるよ?」
ミ#,゚Д゚彡「認めたかねェがあんなもんでも俺様の飼い主なんだよォオッ!
テメェが要らねぇかも知れねぇけどなァ!! この町や俺らには要るんだよォオオオッ!!!!」
- 46 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:12:06.88 ID:YfFgcskbO
-
猫が吼える様に、怒鳴り付けた。
その首に嵌められた車には、赤い紐が結われたままで。
認めたくはないし認める気もない。
与えられる物は屈辱と飯と屋根のある家だけ。
それでも、もう飼われてずいぶん経ってしまったから。
野良猫でも、可愛がられてりゃ情が移る。
それは可愛がる方も、可愛がられる方も。
渋々でも、嫌々でも、飼われてしまってるんだからしょうがない。
猫は、飯をくれる奴にはなついてしまうのだ。
だから、あれは、嫌々渋々、飼い主。
そう、認めざるをえない。
- 47 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:15:10.69 ID:YfFgcskbO
-
飼い主として認めてしまってる以上、それには相応の礼儀を返さねばならない。
それは外の妖怪でも、獣であっても理解している。
飯をくれるのだから、礼をしなければいけないのだ。
家の事は、あの黒いひよこと鬼がしてしまう。
疲れを癒すのは、あのにょろっとした狐がする。
じゃあ、俺様には何が出来る。
俺様は犬だ。
猫だ何だと云われているが、犬なんだ。
犬だったら、あれだ。
番犬に、なってやる。
普段はこっそり家を守ってやるよ。
そんで、飼い主が危なくなったら、突っ込んでって助けてやるよ。
良いか、この俺様が助けるんだよ。
- 49 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:18:03.62 ID:YfFgcskbO
-
鬼は育てるもの。
狐は甘えるもの。
鳥は従うもの。
じゃあ犬は、守るもの。
嫌々だけど、渋々だけど、気まぐれだけど。
俺様は、番犬ふさ。
家も人も飼い主も、嫌々だけど、守るんだ。
だから。
ミ#,゚Д゚彡「あれに要らねぇなんて二度と云うなァアアアアアアアアアッ!!!!」
飼い主を不要だと言う奴には、容赦なんかするもんか。
- 51 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:21:48.80 ID:YfFgcskbO
-
盛岡屋、天守閣。
空から舞い降りる数多の有翼妖怪は、真っ直ぐに盛岡屋へと向かう。
それは恐らく、そこに人間などが避難していると気付いているから。
盛岡屋の上には烏が舞い、狙う妖怪を容易く撃ち落とす。
それはもう、動きの鈍い団子虫を指で弾くよりも容易く。
しかし時には取り零す事もある。
烏は烏であり、鷹や鷲ではない。
そして空をうめつくす様な、この量。
彼方へ此方へ飛び回るのだから無理もない事。
そんな取り零された妖怪が、盛岡屋の窓を突く。
障子を突き破って飛び込んだそれは、ぎゃあぎゃあと喚いて避難する人間へと襲い掛かった。
- 54 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:24:02.69 ID:YfFgcskbO
-
女子供の悲鳴が盛岡屋に響いた瞬間、俊敏な動作で伸ばされた腕。
妖怪の頭をがっしと掴み、畳へと叩き付け、そのまま外へと放り出した。
ぽんと外へと投げ出された妖怪を烏が嘴で貫き、地へ落とす。
そして、窓から外へと出てきた人物に、申し訳なさそうに頭を下げた。
( ´∀`)「済まないモナ、愛しい細君」
|゚ノ ^∀^)「良いのよう、盛岡屋を守るのはれもなのお仕事でもあるんだから」
桃色の振り袖を纏い、長い髪を垂らして微笑む美貌。
花魁れもなはにっこりと、窓を箪笥などで塞ぐ様に人間達に告げた。
慌てて窓を塞ぐ姿を見守ってから、れもなはするりと屋根へと登る。
そして、盛岡屋の天辺へと立った。
- 56 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:28:35.18 ID:YfFgcskbO
-
( ´∀`)「れもな、外に出ては」
|゚ノ ^∀^)「良いのよう…………ふ、うふふっ……良いのよう……」
( ´∀`)「モナ……?」
|゚ノ ∀ )「もなーぁくぅん…………喉が、渇いたわぁ……?」
( ´∀`)「…………」
|゚ノ ∀ )「れもなね……町に住んでから、ずうっと飲んでいないのよう……
町ではいいこにしてたのよう……飲まないようにしてたのよう……ね、もなーぁくぅん……」
( ´∀`)「……御随意に、モナ……愛しい細君」
とん、と巨大な烏の背に乗る女。
その直後から、空から舞い落ちる物は妖怪の鳴き声ではなく。
女のけたたましい笑い声と、血の雨であった。
- 57 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:31:27.18 ID:YfFgcskbO
-
⌒*リ;´・-・リ「はっ……はっ……どぅ、しよう……逃げおくれた……」
空で女が笑う中、一人の幼子がとたとたと町を駆けていた。
それは花魁れもなの禿っ子、露草りり。
藍色の着物を翻し、二つに結った髪を揺らしてとことこと。
こっそりと可愛屋へ皆のご飯を受け取りに行っている間に、始まってしまった大行進。
町を囲む暗い影に涙を浮かべ、きゅうが止めるのも聞かずに走り出してしまったのだ。
盛岡屋に居ない事がばれれば、れもなはきっと、あわてふためき混乱する。
その混乱は、今は命取りとなりかねない。
そうならない様にと急いで走って来たのだが、盛岡屋の程近くで。
イ从゚ ー゚ノi、「何処に逃げる? 小娘ちゃん」
⌒*リ;´・-・リ「ひっ!」
- 60 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:34:39.74 ID:YfFgcskbO
-
イ从゚ ー゚ノi、「逃げられると思う? この獣の足から、人間が」
⌒*リ;´・-・リ「ぁ、う……」
イ从゚ ー゚ノi、「ほら、大人しく、ね? あたしに、食い殺されろ?」
⌒*リ;´・-・リ「やっ……ぃや、こ、来ないで……っ!」
イ从゚ ー゚ノi、「人間は無駄な抵抗が好きだね、馬鹿みたいで可愛いね?」
⌒*リ;´・-・リ「いやっ、いやぁっ! 来ないで、来ないでよぉっ!
りりは、りりはみんなに、ご飯届けるのっ! こっち来ないでぇっ!」
イ从゚ ー゚ノi、「わかんない? あなたがね、あたしのご飯なの、人間の小娘は肉も柔らかく甘いんだよ」
⌒*リ;´・-・リ「……っ! りりは……人間じゃないっ! りりは露草、葉っぱの妖怪なんだからぁっ!」
走るりりを追う、金色狐色の女。
黒衣の女は獣の耳を跳ねさせて、にこにこ笑ってみせた。
- 62 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:37:05.74 ID:YfFgcskbO
-
イ从゚ ー゚ノi、「知らないの? 露草って、食べられるのよ?」
⌒*リ;´・-・リ「ぁ……」
イ从゚ ー゚ノi、「若い肉に変わりは無いし、薬にもなる露草を食べられるなんて、あたしは幸運だね?」
⌒*リ;´・-・リ「ぅ、ぁ、や、ぃや……こない、で……」
イ从゚ ー゚ノi、「妖怪なら、何か抵抗してみたら? ほら、何かしてみたら?」
⌒*リ;´・-・リ「あ、ぅ……ぅ……」
じりじりと迫る女狐は、尾を振りながらりりへと迫る。
りりは風呂敷包みを胸に抱き、女狐を見たまま涙を浮かべて後退る。
二人の間の距離はすぐに詰まる。
もはや逃げる事もどうする事も出来なくて、りりは情けなくも、その場にぺたんと座り込んでしまった。
- 64 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:40:20.58 ID:YfFgcskbO
-
露草の妖怪とは云えど、元は人間。
暑い暑い夏の日に、息絶え掛けていたあの日に。
立派な九尾の美貌の人が、不意に見付けたその姿。
狐は一目で恋に落ち、妻になる事を条件に、幼子を妖怪とし生まれ変わらせる。
あの夏の日に、全てが狂った。
あの夏の日に、人間を捨てた。
けれどそれは、幼子が望んだ事。
狐は笑う。
幼子を抱き締めて、頬擦りをして笑う。
狐は語る。
幼子の頬に口付けて、幸せそうに愛を語る。
露草は、そんな狐に恋をしたから。
みんな狂うと解っていて、すべてを受け入れたから。
- 65 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:43:18.43 ID:YfFgcskbO
-
りりちゃあん、いじめられたら僕を呼んでねぇ。
僕の愛しい愛しい未来の奥さん。
君をいじめるすべてのものを、僕が喰い尽くしてあげるからぁ。
だから、僕を置いて、何処にも行かないでねぇ。
寂しそうに笑う狐との約束は、もう守れそうにない。
親を亡くした幼子は、絶望しか見えなかった。
そんな中に与えられた希望は、恐ろしく美しい恋の味。
絶望を嘗め溶かす狐の舌が、たまらなくいとおしかった。
おきつねさま。
ほんとはだいすきです、おきつねさま。
あなたになら、こわされてもよかったのに。
- 67 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:46:09.13 ID:YfFgcskbO
-
りりの首を女狐が掴み、けらけら笑って力を込める。
小さな手から風呂敷包みは滑り落ち、握り飯がこぼれ落ちた。
みし、と首の骨が鳴る。
息苦しさと痛みに呻き、そのまま持ち上げられ、足は空を蹴る。
露草は悲しいまでに無力で、脆弱で。
ああ、一日で閉じる花の様に、このままこわれてしまうのか。
こわされるなら、あなたの、てで。
⌒*リ´ - リ「ぉき、つね……さ、ま…………」
イ从゚ ー゚ノi、「ん? まだ喋れる? 妖怪だからかな、体力はあるね?」
⌒*リ´ - リ「たす、け、て…………ふぉっくす、さま……」
イ从゚ ー゚ノi、「…………ふぉっくす……?」
- 70 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:49:16.49 ID:YfFgcskbO
-
りりが喉から絞り出した小さな助けに、女狐は眉を寄せた。
ふぉっくす。
それは、嫌と云うほど聞き覚えのある名。
記憶が確かならば、それは、自分達の頭の名。
あのにやにやと鬱陶しい笑い方をする、頭の悪い男の名。
自分がかつて焦がれ、容易く振った忌々しい男の名。
どうしてこんな小娘が、あの名前を─────
「女狐、何してるのかなぁ?」
ぞく、と。
背筋に、嫌な物が走った。
- 76 ◆XCE/Wako2nqi[>>70と72の間] 2010/05/30(日) 23:12:02.04 ID:YfFgcskbO
-
イ从゚ ー゚ノi、「…………誰」
聞かなくても解る。
あの男の声は、一度聞いたら忘れない。
耳の内側にねっとりと染み込む様な、嫌な声。
そして声だけではない。
自分の前方で、狐火漂わせ立つ影。
ぴんと尖った狐耳。
ふわりと豊かな九本尾。
長い髪、白い着物。
ああ、ああ、あれは、あの狐は。
爪'ー`)y‐「その子から、手を離してくれるぅ?」
麗しの九尾の狐。
白面金毛九尾の狐。
由緒正しき、おきつねさま、そのお人。
- 72 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 22:52:07.45 ID:YfFgcskbO
-
イ从゚ ー゚ノi、「…………九尾の狐が御出座し? ずいぶん豪華な町だこと」
爪'ー`)y‐「良いから、その子を返してくれるぅ? その子は、僕のものなんだよねぇ」
イ从゚ ー゚ノi、「へぇ、九尾様がこんなこ汚い露草如きにご執着? 立派な九尾が泣いてるね?」
爪'ー`)y‐「黙れ」
イ从゚ ー゚ノi、「…………ぇ?」
爪'ー`)y‐「いや、黙る前に、一つ訂正して貰おうか」
イ从゚ ー゚ノi、「…………」
爪'ー`)y‐「りりちゃんを、侮辱する事は許さない」
イ从゚ ー゚ノi、「……はっ、何度でも云ってあげるよ? こんな、こ汚い小娘、死んだって構わないでしょ?」
爪'ー`)y‐「…………」
イ从゚ ー゚ノi、「ほら返してあげるよ、そぉんなこ汚い小娘、無理に食わなくても、」
ざん。
- 79 ◆XCE/Wako2nqi[>>78うん間違えた。] 2010/05/30(日) 23:15:48.16 ID:YfFgcskbO
-
イ从゚ ー゚ノi、「…………あれ?」
掴んでいたりりを投げ出そうと腕を持ち上げた、その瞬間。
腕から、感覚が消えた。
次いで訪れたのは、腕が爆発したかの様な熱と痛みで。
女狐は目を見開き、唇を噛んで腕を押さえた。
肘から先が消えた腕。
否、肘から先は、地面に落ちたりりの首に、まだ掴まったまま。
腕からぶしゅりと体液を溢れさせながら、女狐はふぉっくすを睨んだ。
りりを抱き寄せて頬を撫でるふぉっくす。
目だけでちらりと女狐を見たが、その目は、異様なまでに冷たくて。
- 81 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:18:23.27 ID:YfFgcskbO
-
爪'ー`)y‐「りりちゃん、大丈夫?」
⌒*リ;´・-・リ「は、ひ……ふぉっくす、さま」
爪'ー`)y‐「うん?」
⌒*リ´・-・リ「……ありが、とう……ございます……」
爪'ー`)y‐「……うふふははぁ、妻を守るのは、夫の勤めさぁ」
⌒*リ´・-・リ「ふぉっくすさま……」
爪'ー`)y‐「ほら、この先にはもう何も居ない、早く盛岡屋に戻ってねぇ?」
⌒*リ´・-・リ「は、はぃっ」
爪'ー`)y‐「…………見られたく、ないからねぇ……」
風呂敷を拾い上げ、りりがとことこ走って行く。
その背中を最後までしっかりと見届けてから、ふぉっくすは蹲る女狐へと顔を向けた。
- 83 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:21:06.22 ID:YfFgcskbO
-
爪'ー`)y‐「さあ、訂正、聞こうか?」
イ从;゚ ー゚ノi、「……ばっかみたい、あんな小娘に本気になって」
爪'ー`)y‐「……」
イ从;゚ ー゚ノi、「あんながきに熱あげるくらい老い耄れたの? なっさけないの、老い耄れ狐」
爪'ー`)y‐「…………」
イ从;゚ ー゚ノi、「腕を斬るくらいが精一杯なんでしょ? その九尾だってもう飾りのくせに
町に住んでばっかみたいにへらへらして、力ももう無いくせに威張り散らして、老害」
爪'ー`)y‐「……云いたい事は、それだけぇ?」
イ从;゚ ー゚ノi、「殺せるなら殺してみなさいよ? どうせ今のあんたには、そんなの」
爪'ー`)y‐「黙れ女狐風情が」
イ从;゚ ー゚ノi、「な……っ」
- 85 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:24:13.70 ID:YfFgcskbO
-
爪'ー`)y‐「貴様の前に居るのは、何だ?」
イ从;゚ ー゚ノi、「…………老害の、力もない老い耄れ狐だよ、さっさと死ねよ無駄な九尾がっ!!」
爪'ー`)y‐「一尾風情が何を宣く、野狐風情が、図に乗るか」
イ从;゚ ー゚ノi、「ッ……」
爪'ー`)y‐「この九尾が飾りか、見せてやろうか、野狐一尾」
イ从;゚ ー゚ノi、「……ふん、やってみろよ老い耄れ、精々足掻けば?」
爪'ー`)y‐「見せて、やる、と云って居る。図に乗るな、野狐」
イ从;゚ ー゚ノi、「なッ……!」
爪'ー`)y‐「先ずは、そうだな、反対の腕でも落とそうか? 足か? 首か? 何処が良い?」
イ从;゚ ー゚ノi、「……ま、待ッ……く、来るな、っ!」
爪'ー`)y‐「はは、貴様はあの子のその言葉に、どう返した?」
- 86 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:26:54.25 ID:YfFgcskbO
-
爪 ー )y‐「我が名はふぉっくす、狐を統べる九尾の狐!
貴様の様な野狐如きが、我に楯突くその意味を教えてやろうぞ!!
さあ無様に地を這い逃げ惑うが良い! この九尾を怒らせた罪の重さに気付けるか!?」
ぶわ、と巻き上がる風。
それは狐火を纏い、ふぉっくすを中心に舞い踊る。
そしてそれは旋風の様にふぉっくすを包み込み、着物と髪がたなびいた。
けたけたと笑いながら声高らかに名乗るふぉっくす。
その姿が風と狐火の中から再び姿を現した時、ふぉっくすの姿は。
イ从;゚ ー゚ノi、「あ……ぁ、未だ、そんな力……残って……」
「知らないの?」
イ从;゚ ー゚ノi、「ぇ……」
「ずっと人に化けてるのはね────結構、力を使うんだよね」
ふぉっくすの、本来の姿。
それは、獅子をも越える大きさの、獣。
- 89 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:28:50.80 ID:YfFgcskbO
-
爪'ー`)y‐「知らないのか、本当に貴様は愚図なんだね」
イ从;゚ ー゚ノi、「なっ」
爪'ー`)y‐「貴様のその姿を保つには、力を使うだろう?」
イ从;゚ ー゚ノi、「で、でも……元の姿は、ただの……」
爪'ー`)y‐「これがね……僕の、本当の姿だよ?」
イ从;゚ ー゚ノi、「は……そ、そんな大きさの狐が居るものかッ! どうせ幻術で大きく見せてっ!」
爪'ー`)y‐「僕が何十年何百年、人の姿を保っていたと思ってる?」
イ从;゚ ー゚ノi、「なん……百年……?」
爪'ー`)y‐「僕が九尾を得たのは、この余りある力のお陰
僕が狐を統べるこの力、どれだけ甘く見ていた?」
イ从;゚ ー゚ノi、「だ……そ、んな」
爪'ー`)y‐「呪うなら、自分の頭の悪さを呪いなね?」
- 92 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:31:03.03 ID:YfFgcskbO
-
獣が前足を振り上げて、女狐の足を狙う。
女狐はそこから動く事も出来ずに、足が千切れる痛みに耐えようと目をかたく瞑った。
が、訪れた物は痛みではなく。
何かが何かにぶつかる、鈍い音。
そして僅かに呻いた獣の声に、そっと瞼を持ち上げた。
从´ヮ`从ト「もー、きっちゃん、調子に乗って深追いするからー」
イ从;゚ ー゚ノi、「あ……たぬちゃん……」
从´ヮ`从ト「だからこんな怖いの相手にする事になるんだよー?」
イ从;゚ ー゚ノi、「だ、て……」
从´ヮ`从ト「今日は殺す事が目的じゃないのっ、怖がらせる事が目的なんだからー」
イ从;゚ ー゚ノi、「……ごめん」
- 94 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:34:05.04 ID:YfFgcskbO
-
いつの間にか、へたり込んだ女狐の後ろに立っていたのは、黒衣を纏う豊満な体つきの女。
狸の耳と尾を持ち、何処か気の抜けた様な顔をして、女狐を叱っていた。
その手に乗るのは、その辺に落ちている様な小石。
ふぉっくすに投げ付けたのは、この小石らしい。
从´ヮ`从ト「ほら、早くやっつけて次行こう?」
イ从;゚ ー゚ノi、「や、やっつけてって……出来ないよそんなの……」
从´ヮ`从ト「大丈夫だよー、ちょっとやっつけて何とか逃げるの」
イ从;゚ ー゚ノi、「でも……」
爪'ー`)y‐「何を穏やかに話してるの君達は」
イ从;゚ ー゚ノi、「あ、や、その……」
从´ヮ`从ト「九尾に正面から勝てるわけないでしょー? わたし達はただの狐と狸なんだから」
イ从;゚ ー゚ノi、「そんなずんばらばっさり……」
爪'ー`)y‐「緊張感どっか行っちゃったなぁ……」
- 95 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:37:17.00 ID:YfFgcskbO
-
爪'ー`)y‐「まぁ良いけど、どうやっつけるのぉ?」
从´ヮ`从ト「めいっぱい不意打ちして逃げるのー」
爪'ー`)y‐「不意打ち?」
从´ヮ`从ト「うん、煙幕くらいならたけるからー」
爪'ー`)y‐「わぁいしょぼいやり方ぁ…………でも逃げられないと思うなぁ」
从´ヮ`从ト「へ?」
爪'ー`)y‐「後ろ」
从´ヮ`从ト
从´ヮ` 从ト"
(,,゚Д゚)
从´ヮ` 从ト
(,,゚Д゚)
从´ヮ` 从ト「狸の親分だー」
(,,゚Д゚)「何だその間抜けた反応は」
- 97 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:41:16.04 ID:YfFgcskbO
-
爪'ー`)y‐「やっほぉぎこ、どしたのぉ?」
(,,゚Д゚)「手前がぶちぎれてたから様子見に来たんだよ」
爪'ー`)y‐「あ、じゃあ一緒に人間の姿止めようかぁ」
(,,゚Д゚)「へいへい」
爪'ー`)y‐「さぁてお嬢ちゃん達」
(,,゚Д゚)「前門の狐に後門の狸」
爪'ー`)y‐「どうやって逃げようかぁ?」
从´ヮ`从ト
イ从;゚ ー゚ノi、
从´ヮ`从ト「ごめんねーきっちゃん、無理だー」
イ从;゚ ー゚ノi、「何しに来たんだよぉぉぉぉぉ!!」
爪'ー`)y‐「狐の親玉、いっきまーす☆」
(,,゚Д゚)「狸の親玉、行くぞゴルァ」
<ゴメンナサイマッテ ニギャアアアアアアアアアア!!!!
- 99 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:43:53.04 ID:YfFgcskbO
-
( ^Д^)「げこー……南門、暇でありまぁーすぅ」
( ゚д゚ )アリマー
( ^Д^)「あんなかっこいい事云って暇とかぁん……」
( ゚д゚ )ヒママー
( ^Д^)「みるな何か面白い事してよぉぅ」
( ゚д゚ )
⊂( ゚д゚ )⊃ブーン
( ^Д^)「腕無いでしょ」
⊂( ゚д゚ )⊃
⊂(゚д゚ 三 ゚д゚)⊃ヒュババババ
(;^Д^)「怖いよぉぅ! みwwなwwぎwwっwwてwwきwwたwwww怖いよぉぅ!!」
⊂(゚д゚ 三 ゚д゚ 三 ゚д゚)⊃ヒュバラバババババババ
(;^Д^)「律儀にこっち見るなよぉぉぉぉぉぅ!!」
- 101 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:46:42.12 ID:YfFgcskbO
-
::⊂(゚゚д゚゚ 三゚゚д゚゚三 ゚゚д゚゚)⊃::ヒュバラバランバズババババ
(;^Д^)「怖い怖い怖い! レス跨いで引っ張るネタじゃない! 怖い!!」
( ゚д゚ )オツカレチャーン
(;^Д^)「…………もう面白い事しろなんて云わないよぉぅ……」
( ゚д゚ )
( ゚Д゚ )"クワッ
(;^Д^)「何で威嚇したのぉぅ!?」
( ゚д゚ )ノリ
( ^Д^)
( ゚д゚ )
( ^Д^)「げこ」
( ゚д゚ )ゴゲェ
- 104 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:49:40.08 ID:YfFgcskbO
-
( ^Д^)「向こうは忙しそうだねぇん、東も中央も」
( ゚д゚ )ヒマデゴザル
( ^Д^)「暇だねぇん」
( ゚д゚ )ニンニン
( ^Д^)
( ゚д゚ )
( ^Д^)「みるな、何か面白い事してぇん」
( ゚д゚ )
⊂( ゚д゚ )⊃ト
⊂( ゚д゚ )⊃ォ
⊂( ゚д゚ )⊃テ
⊂( ゚д゚ )⊃ム
⊂( ゚д゚ )⊃ポ
⊂( ゚д゚ )⊃ォ
⊂( ゚д゚ )⊃ル
(;^Д^)「分裂しないでぇん!?」
⊂(゚д゚ 三 ゚д゚)⊃ザンゾウダ
- 106 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:52:05.31 ID:YfFgcskbO
-
( ^Д^)「あぁぁぁぁぁぁん暇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」
( ゚д゚ )ポンデリング
( ^Д^)「出番はあっても見せ場が無いとかぁん……」
( ゚д゚ )プゲラッチョ
( ^Д^)「げこげこ、東にはおっきいの来てぇん、盛岡屋付近は忙しそうでぇん
西には大行進来てるみたいだしぃ、北も忙しくなりそうだしぃん」
( ゚д゚ )ゴタンダァ
( ^Д^)「南は……特に何か来る様子は無いねぇん……」
( ゚д゚ )シンッバシッ
( ^Д^)
( ゚д゚ )イバールァギィ?
( ^Д^)「楽しそうだねぇんみるな」
( ゚д゚ )ヒョギフダイトウリョウノ
( ^Д^)「貴重な産卵しぃん」
- 109 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/30(日) 23:55:02.87 ID:YfFgcskbO
-
( ^Д^)「ま、いっかぁ……いずれ何か来るでしょぉん」
( ゚д゚ )ラーメンマン
( ^Д^)「それまで、精々のんびりしとこっかぁん?」
( ゚д゚ )キンニクバスターァ
南の蛙がごろりと道に寝そべり、敵の襲来を待つ。
その脇をこっそりと女が通り抜けて行くのには、気付く事もなく。
始まってしまわれた戦に、各々の思いが交差する。
己らの為に傷付ける者。
愛しい物を守るために駆け回る者。
それらが如何なる結果をもたらすか、未だ誰にも解る筈は無く。
『十話前編 おわり。』