- 2 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 20:57:51.34 ID:33XFToiJO
-
とおォりゃんせ とおりゃんせェ
此ォ処は何ォ処の 細道じゃ
東のまァちの 細道じゃ
ちィっと通して くだしゃんせ
西のあやかし 通しャせん
四方の砦ば 崩さん為に
おぬしら殺めに 参ります
逝くはよいよい
彼岸へ辿れ
( ^ω^)百鬼夜行のようです。
【十一話 百花繚乱 恋せよ乙女。 前】
閲覧注意
この身が砕け 散ろうとも
通しゃァ致せぬ 通しゃせぬ
- 3 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:00:05.68 ID:33XFToiJO
-
ぱたぱたと、軽い三人分の走る音。
そこかしこで西のあやかしが、家屋を崩して人々を喰らおうと跋扈している。
そんな中を走るのは、十の中頃、三人娘。
桃色の髪と紫の髪、青い髪をした三人娘は、可愛屋看板娘の一部。
||リ;゚ヮ゚ノル「だから云ったのにぃ! りりちゃんなら大丈夫だってぇ!」
ハソ; ゚−゚リ「だ、だってあんなちっちゃい子ほっとけないよ!」
ヽiリ,;゚ヮ゚ノi「でもお狐様が来て良かったねー!」
||リ;゚ヮ゚ノル「あはははぁ、本当だねぇ!」
ハソ; ゚−゚リ「良かったけど、今度は私たちがだいじょばなーい!」
ヽiリ,;゚ヮ゚ノi「うっひゃーい! 誰か助けてー!」
- 5 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:03:34.22 ID:33XFToiJO
-
並んで走る娘は、向かって右から、花瓶の付喪神、雨女、濡れ女の三人。
名は花瓶、なち、すぱむと云う。
控え目ながらも働き者の三人娘は、
可愛屋に食事を頂きに来たりりを心配し、後を追って可愛屋を出て行ったのであった。
しかし危ないかと思われたりりも、狐によって助けられた。
これで安心だと笑い合った三人。
その背に迫る、あやかしの爪と牙。
<゚Д゚=>「待てくらぁあああああ!!」
(=゚д゚)「喰ったるぁああああああ!!」
二匹の虎のあやかしが、三人に襲いかかった。
が、するりと逃げられ走り出し、追いかけっこが始まった。
- 9 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:06:32.81 ID:33XFToiJO
-
戦う力を持たぬ、妖怪小娘達。
それは腹を減らした獣にとっては、格好の獲物であった。
しかし二匹の虎に気付いて逃げ出した三人は、予想以上に足が早い。
小娘相手と油断し、二匹の虎は人の姿をしたまま。
獣の姿となれば容易く追い付けるのだが、今ここで姿を戻していると、その間に見失ってしまう。
そして何より、あの無力そうな小娘達。
ハソ; ゚−゚リ「うらぁ! 部分雨!」
ヽiリ,;゚ヮ゚ノi「解説しよー! 部分雨とは雨女なちちゃんが一部分だけに雨を降らせる事であーる!」
<゚Д゚=;>「うげっ、また雨か!」
(;=゚д゚)「ひぃっ、雨うざい!」
ヽiリ,;゚ヮ゚ノi「おまけに濡れ女のぬかるみ攻撃どぞー!」
< Д =;>「とるぁっ!?」ズルーン!
(;= д )「らぎぃっ!?」ビターン!
意外と、手強い。
- 10 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:09:38.14 ID:33XFToiJO
-
ハソ; ゚−゚リ「ど? いけた!?」
ヽiリ,;゚ヮ゚ノi「いけてるいけてるぅ!」
||リ;゚ヮ゚ノル「あはははっ! だっせ! 転んでる!」
ハソ; ゚−゚リ「転んでるとかwwwwざまぁかんかんwwwwww」
ヽiリ,;゚ヮ゚ノi「らぎぃってwwwどんな鳴き声wwww」
||リ;゚ヮ゚ノル「らぎぃwwww」
ハソ; ゚−゚リ「らwwwぎwwwぃwwwww」
ヽiリ,;゚ヮ゚ノi「とるぁ(笑)」
||リ;゚ヮ゚ノル「とるぁ(苦笑)」
ハソ; ゚−゚リ「とるぁ(暗黒微笑)」
年頃の娘と云う物は、発言に容赦が無い。
- 15 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:12:30.73 ID:33XFToiJO
-
<;Д;=#>「ぐぎゃあああああああいつらむかつくううううううう!!」
(#=;д;)「鳴き声くらいほっとけぢぐじょおおおおおおおおおお!!」
<;Д;=#>「らぎぃよりましだっつーのちくしょおおおおおお!!」
(#=;д;)「とるぁよりましだっつーのちくしょおおおおおお!!」
<;Д;=#>
(#=;д;)
,_
<゚Д゚=#>「あ?」
_,
(#=゚д゚)「あ?」
,_
<゚Д゚=#>「んだとおい、あ? やんのかとるぁ?」
_,
(#=゚д゚)「んだよおい、あ? やんのからぎぃ?」
- 17 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:16:00.42 ID:33XFToiJO
- ,_
<゚Д゚=#>「大体てめぇ虎柄の猫じゃねぇか、虎じゃねぇじゃねぇか」
_,
(#=゚д゚)「てめぇこそ『ぎこの様な虎』とか設定が微妙すぎんだよ」
,_
<゚Д゚=#>「るっせーよパチモン虎」
_,
(#=゚д゚)「るっせーよ存在が微妙虎」
,_
<゚Д゚=#>「あ?」
_,
(#=゚д゚)「あ?」
,,_
<゚Д゚=#>
_,,
(#=゚д゚)
ヽiリ,*-3-ノi「とるぁwwwwwwwwらぎぃwwwwwwwwwwww」
<;Д;=#>「むっぎゃあああああああ!! ぜってー食い殺おおおおおおおおす!!!!」(#=;д;)
- 19 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:20:49.00 ID:33XFToiJO
-
,_
<゚Д゚=#>「てめぇは気に食わねぇが今はおいといてやるよ」
_,
(#=゚д゚)「それはこっちの台詞だビミョメン」
,_
<゚Д゚=#>「食い殺すぞ猫が」
_,
(#=゚д゚)「黙れやビミョメン」
ヽiリ,*゚3゚ノi「あるぇー、仲間割れー?」
<゚Д゚=>「はい捕獲」(=゚д゚)
ヽiリ,*゚3゚ノi「え」
ヽiリ,;゚3゚ノi
ヽiリ,;゚ヮ゚ノi「ありゃーん……?」
||リ;゚ヮ゚ノル「なちちゃん、すぱむちゃんが捕まってる」
ハソ; ゚Д゚リ「え、あ……ば、馬鹿かお前はぁああああああああ!?」
ヽiリ,;^ヮ^ノi「あっはー……たっすけてー……」
- 21 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:24:34.34 ID:33XFToiJO
-
<゚Д゚=>「ふっ、俺たちの芝居にも気付かんとはな……」
(=゚д゚)「これだから小娘は困るぜ……」
ヽiリ,;゚ー゚ノi(この人たちはおけつつねり合いながら何いってんのかしらー……)
<゚Д゚=>「さあこいつの命がイテッ惜しければイタッ大人しくこっちに来るんだなイタタタタ」
(=゚д゚)「逆らうとアデッこいつの首がぽんと飛んアダダでっちまうぜアイタタタタ」
<゚Д゚=#>(いてぇよまがいもん)
(#=゚д゚)(こっちこそいてぇよビミョメン)
||リ;゚〜゚ノル「……」
||リ;゚ヮ゚ノルノ゙「えいやっ」
lill lill
_ ガ ゴ _
)( ィ ィ )(
Σ(_) ン ン (_)そ
< Д =;>「ぎゃっ!?」(;= д )
- 22 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:26:54.83 ID:33XFToiJO
-
||リ ゚ヮ゚ノル「おっしゃ食らった! だっせ!」
ハソ; ゚−゚リ「そういや花瓶だもんね……ほらすぱむ、行くよ!」
ヽiリ,;゚ヮ゚ノi「お、おう!」
ハソ; ゚−゚リ「よし、じゃあ逃げ……」
_,
(#=゚д゚)「逃がすかあああああああああ!!」
ハソ; − リ「なっ……!? ぐぇ、うっ!!」
,_
<゚Д゚=#>「雌ガキがぁ……調子に乗りやがってぇ……!!」
_,
(#=゚д゚)「良いぜぇ……そこまでおちょくるってんなら、俺らも本気で殺しにかかってやる……」
ハソ; − リ「げほっ、げっ……ぅ……すぱむ、花瓶……逃げ……」
||リ;゚听ノル「なちちゃんっ!!」
ヽiリ,;゚−゚ノi「大丈夫なちちゃんっ!?」
ハソ; − リ「逃げろっちゅーねん……」
- 24 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:28:53.11 ID:33XFToiJO
-
<゚Д゚=#>「一ヶ所にかたまるって事は、食われても良いって事だな?」
(#=゚д゚)「あーあー美しい友情だなぁ、お陰でこっちは入れ食いだぜ」
ヽiリ,;゚−゚ノi「……ごめんね、私がおちょくったから」
ハソ; − リ「いや、私もおちょくったから……」
||リ;゚听ノル「おちょくり甲斐がありすぎて、つい……」
<゚Д゚=#>「本当むかつくね君たち」
(#=゚д゚)「何だよおちょくり甲斐って」
ハソ; − リ「う…………ぶ、部分」
(#=゚д゚)「らぎぃっ!!」
ハソ; − リ「ぎゃうっ!?」
ヽiリ,;゚−゚ノi「なちちゃんっ!!」
||リ;゚听ノル「じょ、女子殴るとかさいてー!」
_,
(#=゚д゚)「喧しいわ!!」
- 27 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:32:11.53 ID:33XFToiJO
- ,_
<゚Д゚=#>「あーもー良い! さっさと食っちまうぞ!」
_,
(#=゚д゚)「おう、これでこいつらの生意気が聞けなくなると思うと清々するな」
ハソ; − リ「だーから逃げろつったのに……」
ヽiリ,;゚−゚ノi「いや、友達おいて逃げるほど薄情じゃないし」
||リ;゚听ノル「死ぬ時は一緒ってねー……」
ハソ; − リ「ばーかばっか……」
<゚Д゚=#>「お喋りはもう良いな?」
(#=゚д゚)「んじゃ、いただきまー」
「楽しそうやなぁ自分ら────うちも混ぜてくれへんか?」
<゚Д゚=;>「……へ?」
(;=゚д゚)「……え?」
- 30 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:35:04.47 ID:33XFToiJO
-
<゚Д゚=;>「……なあ、らぎ……この声……」
(;=゚д゚)「……うん、これ……前に話した……」
「ド畜生共、聞こえへんかったか? うちも混ぜろて、云うたんやけどなぁ」
< Д =;>「この関西弁に、どすのきいた声……」
(;= д )「は、あ、あははは……」
「返事、せぇや? ボケが」
< Д =;>「ひっ!」
(;= д )「ご、ごめ、なさっ!」
「こっち向いて、何や云う事は、あらへんか?」
::< Д =;>::「は……ひ……」
::(;= д )::「ずび……ばぜん……」
o川*^ー^)o「素直でええ子らやなぁ、屑が」
- 35 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:38:40.20 ID:33XFToiJO
-
||リ;゚ヮ゚ノル「うぁ、あ……おかみ、さ……!」
ヽiリ,;゚ヮ゚ノi「おかみさんだぁあああああああ!!」
ハソ; ゚−゚リ「きゅうさん、何でここに……!?」
o川*゚ー゚)o「よう見てみ、ここはうちの店の前やろが」
||リ;゚ヮ゚ノル「え、まじで?」
ハソ; ゚−゚リ「あ、本当だ」
ヽiリ,;゚ヮ゚ノi「走りまくったからねー」
o川*゚ー゚)o「はいはい、大人ししとり。…………で、自分ら」
::< Д =;>::「はひっ!」::(;= д )::
o川*^ー^)o「ええ度胸やなぁ……うちの店の子ォらに、手ぇ出すかい?」
::< Д =;>::「ちちちちが、まさか、あの、」
::(;= д )::「ききききゅうさんの、店の子、なんて」
- 40 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:41:04.03 ID:33XFToiJO
-
o川*゚ー゚)o「あん? あんた、前に姉様んち襲ったど阿呆やないか」
::(;= д )::「はひっ! そそそその節は大変失礼しまひたっ!」
::(;= д )::←結構前にボコられた人
::< Д =;>::←その話を聞いた人
o川*゚ー゚)o「ふん…………自分らは、西のモンやねんな」
::< Д =;>::「は、はいっ」
::(;= д )::「そ、それはもうっ」
o川*゚ー゚)o「ほんなら、聞いた事は無いか?」
::< Д =;>::「へ……」
o川*゚ー゚)o「西には昔、鉄壁堅牢堅固な鎧を持つ妖怪がおった、と」
::(;= д )::「あ、ああ……俺らその、若いので……言い伝えくらいでなら……」
::< Д =;>::「た、たしか……清姫の如き美しさと長さを誇る、百の足……」
o川*゚ー゚)o「あらま、照れるやないの」
- 44 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:43:25.61 ID:33XFToiJO
-
::< Д =;>::「……え?」
::(;= д )::「……へ?」
o川*^ー^)o
::< Д =;>::「おい待て、まさか百の足って……」
::(;= д )::「百足の……きゅう、さん……?」
o川*^ー^)o「ほなそろそろ、うちも名乗りをあげようか?」
にっこし、歳を感じさせぬ、若く愛らしい顔が笑みを作る。
そして、組まれた四本の腕がほどかれ、そっと着物の帯を解き始めた。
二匹の虎は、その様子をただ震えながら眺めるばかりで。
あらわになる白い肩と鎖骨の形の良さに、少しだけ恐怖を忘れたのは秘密である。
- 47 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:46:18.60 ID:33XFToiJO
-
o川*--)o「うちは百の足を持つ、鎧を纏う蟲の妖怪」
はらり、帯が解かれて地面に落ちた。
形の良い首筋は白く、すべやかな手触りだと見るだけで解る。
o川*--)o「毒の壷へと放り込まれるその前は、それなりにやんちゃしとったもんや」
着物がすとんと落ち、大きく抜いた襟から、胸の上までがあらわとなる。
多少は控えめではあるが、形の良い胸の膨らみが覗いていた。
二本の腕が胸元を押さえ、もう二本の腕が襦袢を留める腰紐をゆっくりと解く。
裾の隙間から覗く太股は、白く美しくて。
思わず恐怖を手放して、きゅうの姿に魅入る二匹。
それを見て、含み笑いや苦笑い、吹き出しそうになるのを堪えて肩を竦める三人娘。
はらり、と、腰紐が落とされた。
- 48 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:49:15.10 ID:33XFToiJO
-
襦袢一枚だけを纏う、裸身と云ってももはや問題ではない、きゅうのその姿。
突然着物を脱ぎ出したきゅうに、始めこそは戸惑ったが。
今となっては、もうそんな事はどうでも良い。
童顔で小柄ながらも、その肉体は成人した女のそれ。
小娘の様に青くはない、しかし老いてもいない身体。
ゆっくりと襦袢を下ろして行き、白い肌が徐々に視界へと流れ込む。
o川*--)o「そら歳は食うたけど……未だ未だ若い子ぉらには負けへんと思うとる」
<゚Д゚=*>「は、はい……」(うん全然負けてない、つか美脚! 勝ってる!)
(*=゚д゚)「お、お若いです……」(なにこのさぁびすしょっと! 美乳!)
||リ -ヮ-ノル(あほだねぇ)
ハソ --リ(あほだね)
ヽiリ,,-ヮ-ノi(あほだねー)
- 50 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:52:06.75 ID:33XFToiJO
-
o川*--)o「うち、未だ……十分に戦える身体、やろ?」
<゚Д゚=*>「はい! それはもう!」
(*=゚д゚)「いやもうそれはもう!」
o川 )o「ほんなら、お相手して……貰おうかなァ……」
<゚Д゚=*>「え」
(*=゚д゚)「へ」
めき。
めきめきめき。
めきめきめきめきめき。
きゅうの体が、宙を舞った。
否、否、正しくは、持ち上げられたのだ。
百の足を持つ蟲の、下半身に。
- 55 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:55:33.59 ID:33XFToiJO
-
牙の生えた口許には笑みを、栗色の癖毛の隙間からは角を。
あらわになった上半身、胸を隠すは蟲の足。
腹の下から爪先までは、もはや人のそれではなく。
ttp://imepita.jp/20100613/442620
_,,
o川#゚Д゚)o「老いさらばえどもうちは百足、百たる足を持ち毒を持つ
この鎧を貫ける物は無し、この牙から逃れられる者は無し!
槍も矢もこの身を傷付ける事は叶わん、百足の堅固な鎧を知れ、全てを砕く牙を知れ!!
さあ掛かって来てみぃ下衆共がァ!! 西にて敵無しと謳われた、鎧百足がきゅう様よォ!!
さあさあさあさあうちの子ぉらを喰らおうとする不届きもんらは何処やろなァ!?
町を襲い店の子らを襲う屑共は、このきゅう様が咬み砕いたらァアアアアアアアアアアッ!!!!」
||リ*>ヮ<ノル「きゃあああ! おかみさぁんすってきぃ!!」
ハソ* >ヮ<リ「よっ! 町一番の色女!!」
ヽiリ,*>ヮ<ノi「おかみさんかっこいー! そこに痺れるあっこがれるー!!」
< Д =>
(= д )
- 57 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 21:58:31.52 ID:33XFToiJO
-
< Д =>「……え……」
(= д )「きゅうさん……西の……言い伝え……?」
< Д =>
(= д )
< Д =>(死んだ)
(= д )(俺らもう死んだ)
< Д =>(最後に……良いもん、見れたな……)
(= д )(眼福……させて、頂きました……)
||リ -人-ノル ナム
ハソ -人-リ ナムナム
ヽiリ,,-人-ノi ナムナムナム
- 60 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:01:31.53 ID:33XFToiJO
-
押し寄せる西の妖怪、その数が最も多いは、西の門。
娘は数匹のあやかしを従えて、店の屋根に登っていた。
黒い波がどうと流れる様に、迫り来る様子がよく見える。
(゚、゚トソン「……来やがったな」
/ ゚、。 /゙
(゚、゚トソン「てめぇら、準備は良いな」
( <●><●>)「はいはい」
( ><)「銃の補充は任せろなんです!」
(*‘ω‘ *)「ぽ!」
(゚、゚トソン「よし……もう少し、もう少しこっちに来たら、一気に仕掛ける」
- 61 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:03:23.98 ID:33XFToiJO
-
門の側まであと少し。
火縄銃を構えたとそんが、照準を合わせながら、乾いた唇を嘗める。
気が強いだけの、ただの人間。
口が悪いだけで力なんてありゃしない。
あの、山の様なあやかしを、相手にしきれる訳もない。
正直な話、怖くて怖くてしょうがない。
死ぬだろうと、解っていながら戻って来た。
しかし死ぬのは怖いし、痛いのも怖い、手が震えて止まらない。
冷たい汗がぽたりと落ちる。
恐怖に負けじと噛み締めた奥歯が痛い。
でも、ああ、でも、
今さら逃げる訳にはいかないんだ。
- 62 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:06:39.99 ID:33XFToiJO
-
もっと店を繁盛させたかったな。
もっと年頃の娘らしい事をすれば良かったな。
もっと店の妖怪達に優しくしてやれば良かったな。
もっと素直になれば良かったな。
もっと遊べば良かったな。
もっと笑えば良かったな。
もっと可愛くなれば良かったな。
もっと、もっと、もっと。
もっと、生きたかったな。
恋の一つや二つも重ねてみて。
あいつに、好きだと云えば良かったな。
ああ、くそ、前がにじむ。
- 66 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:09:32.60 ID:33XFToiJO
-
でも、店を守りたかったんだ。
祖父さんの遺した店が、大好きだったから。
店に遺されたこいつらが、大好きだったから。
寂しい時、泣いてる時、子供の時、いつも側で頭を撫でてくれたから。
ああ、どうしよう、涙が出る。
どうして、ああ、ああ、もっと。
(-、-トソン
止めよう。
未練の数を数えても、今さらどうしようもない。
今は、引き金を引く事に、集中すれば良い。
そして、鮮やかに死んでやろう。
- 67 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:12:06.34 ID:33XFToiJO
-
胸の中をぐるぐると回る、人間とそんの思い。
それはいずれもが、後悔とも云える未練ばかり。
もっとああすれば、こうすれば、と出口の存在しない思い。
それでも死の間際なのだと思えば、思わずには居られぬ思い。
未だ若い、破瓜の痛みも知らない小娘。
色恋沙汰にはとんと無縁、と云うよりも、無縁だと思い込んでいた。
けれど本当は胸の底、小さな小さな幼い想いを抱えている。
そのお相手は秘密だけれど、その想いも、今となってやっと受け入れられた。
ああ、こんな思いは、今は邪魔でしか無いと云うのに。
未練と後悔がうず高く、しんしんと積もってしまう。
でも、もう、ひたすらに立ち塞がると決めたから。
とそんはそっと目蓋を持ち上げ、僅かに笑って見せた。
そして、引き金を引いた。
- 68 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:15:09.66 ID:33XFToiJO
-
たあん、と軽く乾いた発砲音。
ひょいと銃を交換し、再び構えて引き金に指を掛ける。
更に引き金を引こうとした、その時。
空から、有翼のあやかしが飛び掛かる。
(゚、゚トソン「ちっ、邪魔しやがって!」
ぎゃあぎゃあと喚く烏共は、とそん達をついばみつつき、狙撃の邪魔をする。
目々連と家鳴が、換えの銃を振り回して払い除けるも、烏共は一度退くだけですぐに戻る。
高い位置から狙う方が、有利になれると云うのに。
こんな奴等を相手にしていては、下がお留守になってしまう。
それでは意味が無いのだ、砦でも何でもない役立たずだ。
(゚、゚トソン「…………てめぇら降りるぞ! 気ぃ付けろ!」
( <●><●>)「はいはい全く……えいやっ」
( ><)「妖怪使いが荒いんです……そいやっ!」
(*‘ω‘ *) フヨ
っ/ ゚、。 / フヨ
- 69 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:18:44.53 ID:33XFToiJO
-
すたんと地面へ飛び降りたとそんは、そのままの体制で銃を構え、引き金を引く。
妖怪に何処まで効くかは解らぬが、何もしないより余程良いはず。
続いて降りてきた店妖怪に銃を差し出され、それを受け取り更に撃つ。
火縄銃では、そこまで精密な狙撃は出来ない。
距離も短く威力も弱い。
手入れが行き届いているとは云え、これらは年代物でもあるのだ。
大きな力は期待していない、ただ威嚇し、足止めが出来ればそれで良い。
,_
(゚Д゚#トソン「うらぁあああああっ!! 落ちろぉおおおおおおおぉっ!!」
此方の気迫で少しでも、奴等を退かせてやろう。
一発一発を撃つ時間は掛かるが、絶え間無く引き金を引く。
近くを飛び回る妖怪は、その銃身で殴り飛ばす。
お前らの敵は私だと、叫ぶように攻撃を放った。
- 71 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:21:39.71 ID:33XFToiJO
-
ぱん、ぱん、と音が途切れる事はない。
一発撃っては家鳴に渡し、新たな銃を受け取って、ひたすらに撃ち続けた。
空を飛び回っていた妖怪は、あらかた殴り落とした。
短く綺麗に切り揃えられたおかっぱと、白い鉢巻きが風に靡く。
袖は襷で上げてはいるが、前掛けもしたままの店娘。
ただの小柄で可愛らしい小娘だと侮って居たのか、進軍の動きが僅かに止まった。
,_
(゚−゚#トソン(このままなら、いけるか……?)
動きを止めずに引き金を引くとそんの目が、僅かに後退る妖怪共をとらえる。
それなほんの少しだけ心に余裕が出来たのか、銃を抱えて店から離れ、門へと近付く。
このまま退かせるのも良いが、今までの弾は殆ど当たっては居ない。
もう少し怪我をさせて、怯えさせる事が出来れば。
少しだけ、勝機が顔を覗かせた気がした。
- 73 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:24:45.40 ID:33XFToiJO
- ,_
(゚Д゚#トソン「おらぁあっ!! 退きやがれ糞がぁああああっ!!」
『あやや、動きが止まったと思ったら、こんな女の子が居たなんて』
,_
(゚Д゚#トソン「ッ!? 誰だッ!!」
『ややや、名乗りはそっちからして下さいね? 礼儀ですよね?』
,_
(゚−゚#トソン「ッ…………私はとそん、都村とそん! 西門を守る砦が一人!! 都村屋店主とそん!!」
『やや、これはこれは律儀にどもども』
,_
(゚Д゚#トソン「おら名乗れ! そんで面見せろッ!!」
『あやや、せっかちな女の子ですね』
高い、女とも男とも云えない声が響く。
その声が聞こえた瞬間、進軍はぴたりと止まって辺りは静寂に包まれた。
そして、とそんが声高らかに名乗りを上げると。
ぶわり、黒い影が、地中から滲み出した。
- 75 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:27:56.07 ID:33XFToiJO
- ,_
(゚−゚#トソン「なっ……地面から……ッ!?」
『お初にお目にかかっちゃいます、僕は鬼、異端の鬼』
( ^^)「牛鬼の山崎、どぞどぞよろしくお願いしますね」
,_
(゚Д゚;トソン「牛……鬼……?」
( ^^)「あやや? 驚きましたか女の子、牛鬼くらい居ますです」
,_
(゚Д゚;トソン(嘘だろ……おい……)
滲み出した影は徐々に姿を人の物へとゆらり変化し、時間を掛けずに立体化する。
そうして現れたものは、濃い桃色の髪に巨大な角。
長い襟巻きで口許を隠し、地を摺る程に長い着物。
目元には、気味が悪い程の笑みを浮かべた、とそんと変わらぬ程の小柄なそれ。
牛鬼の山崎。
朝日と並ぶ、力の持ち主。
- 76 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:30:34.00 ID:33XFToiJO
-
妖怪には、さして詳しくはない。
しかし牛鬼と云うものは、そんなとそんすらも聞いた事がある。
牛鬼は、牛の頭に蜘蛛の体。
その性質は非常に残忍で、獰猛で、凶悪で、毒を持ち人を喰らう事を好む。
伝承にもなる程の、恐ろしいもの。
それが、目の前に居る。
とそんはさあっと顔色を無くし、銃を持つ手が、嫌でも震えた。
相手が悪い、悪すぎる。
烏合の衆たる魑魅魍魎共なら、このまま勢いで押し返せたかもしれない。
だがその希望も、たった今、潰えてしまった。
,_
( − ;トソン(こんなのが居るなんて……聞いてねぇぞ……)
顔を覗かせた勝機は、雨の前の太陽の様に、すっくり姿を隠してしまわれた。
- 80 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:33:54.06 ID:33XFToiJO
-
( ^^)「牛鬼は地から水から這い上がり、人を喰らって傷付けられれば祟るもの
人間の女の子が相手にするのは、怖いですね? ね? 怖いならそこ退いて?」
,_
( − ;トソン「今なら……見逃すってか……?」
( ^^)「ですです、今日は見逃しますです」
,_
( − ;トソン「はっ……今日は、準備の段階だからか」
( ^^)「あやや、ご存じ? 本当の進軍はまた今度、女の子は運が良いですよ」
,_
( − ;トソン「…………」
今度ばっかりは、本当に逃げ出したかった。
こんな奴を相手にして、悲惨な死に様を晒すのは、恐ろしくてしょうがない。
雑魚と違って、こいつは笑いながら今にも喰い殺さんばかりの殺気を放つ。
敵うわけがない。
流石に、敵うわけがありゃあしない。
- 83 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:36:34.06 ID:33XFToiJO
-
不意打ちで撃ち殺すか?
いいや不意打ちなんか効くわけがない。
いっそ退いた振りをするか?
いいやこんな奴を謀れるわけがない。
じゃあ本当に道をあけるか?
いいやそんな事は自尊心が許すものか。
じゃあ 死ぬか?
ああ、それにしよう。
( ー トソン
- 86 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:39:09.21 ID:33XFToiJO
-
派手に死のうと決めたんだ。
死なんと見栄をはって見せたが、死ぬに決まっている。
こちとら、内藤みたいに力のある奴は従えていない。
側に居るのは固唾を飲んでこちらを見守る家鳴に目々連、座敷童子に巻き付き守る一反木綿。
それに、餓鬼や蟒蛇みたいに力なんざ持っちゃいない。
ただの人間に出来る事は、見栄をはって意地をはって、火縄銃で撃つ、殴る程度。
この西の門を守ると決めたその時から。
死ぬと解っていたのだから。
( ^^)「女の子、どうします?」
答えなんて、とっくに出していたじゃないか。
そう。
(^ー^トソン「死んでも、断る」
- 90 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:42:30.36 ID:33XFToiJO
- ,_
(゚Д゚#トソン「私はとそん、都村屋とそん!! 命を捨てる覚悟で此処に立つ!!
此処の砦は私らの勤めッ!! 手足が千切れ様が死に転がろうが退くものかッ!!
さあかかってきやがれ雑魚共が、誰一人として此処から先へは進ませねえッ!!!!」
( ^^)「ちぇ、やっぱり退きませんですね」
,_
(゚Д゚#トソン「ほざけ牛鬼ッ! ────絞め殺せ、だいッ!!」
/ ゚、。 /
/`、、 /゙
するり、座敷童子を二匹の店妖怪に任せ、一反木綿が勢い良く舞った。
生まれて初めて、そして最後の大見せ場。
巻き付き絞め殺す事が一反木綿の成すべき事。
とそんの手により産み出され、ぬくぬく育った死に布故に、一度もらしい事をしていなかった。
けれど今度ばかりは、一反木綿としての仕事を全うする。
人を殺す事が、仕事だから。
- 91 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:45:29.06 ID:33XFToiJO
-
( ^^)「あやや、一反木綿が人間の味方ですか」
(゚、゚トソン「それは私の子、味方に決まってんだろ」
( ^^)「我が子に人殺しをさせるんですか?」
(゚、゚トソン「てめぇは、人じゃねぇ」
( ^^)「えへ」
首に巻き付こうとするだいを、軽く往なしながら山崎は笑う。
長い袖をぶんと振り、容易く弾き飛ばしては払い除ける。
それでも向かって行くだいに、山崎は僅かに鬱陶しそうな表情を見せ、だいの尾を踏みつけた。
しかしそれを気にする素振りも見せずに、執拗に山崎へ巻き付くだい。
少しでも攻撃をしたいのか、厳しい表情でふわふわと舞う。
- 93 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:48:37.41 ID:33XFToiJO
-
(゚、゚トソン(やっぱり、場数踏んでねぇからな……もう少し、厳しくしとくべきだったか)
(-、-トソン(…………いや、それは無いか。こんな事があるとは、思っても無かったんだ)
(-、゚トソン(少しくらいは、抵抗して死んでやっか)
抵抗らしい抵抗もせずに、赤子の相手をする様にだいを避ける山崎。
意識がだいに向いて居ると解り、とそんはそっと銃を構えた。
だい、穴空いたら、また繕ってやるよ。
口許にだけ笑みを浮かべ、引き金を引いた。
たんたんたん、と複数の発砲音が、重なる。
- 94 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:51:28.16 ID:33XFToiJO
-
( ^^)「わわっ」
(゚、゚トソン「おっし、当たった! ……って、ん?」
乾いた発砲音に顔を上げた山崎の、肩や腹に鉛の弾がめり込んだ。
そのままどさりと背中から倒れる様子を見て拳を握り、とそんは首をかしげる。
引き金を引いたのは一度だけ、それなのに、響いた音は複数。
何が起きたのかと後ろを振り向くと、そこには銃を抱えて転ぶ二匹の妖怪。
( ><)「よっしゃ! 当たったんです!」
( <●><●>)「反動で転びましたけどね」
(゚、゚トソン「……てめぇら、何してんだ」
( <●><●>)「ご覧の通りですが」
( ><)「手助けしたんです、崇めろなんです」
(゚、゚トソン「…………どあほ」
( <●><●>)「ふぁっく」
( ><)「ふぁっく」
- 98 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:55:59.32 ID:33XFToiJO
- (゚、゚トソン「あぶねぇからてめぇらは触るな、反動で吹っ飛ぶだろ」
( <●><●>)「まあぶっ飛びましたが」
( ><)「背中からすてんと」
(゚、゚トソン「どあほ、座敷童子守ってすっこんでろ」
( <●><●>)「ふぁっく、良いからとそんさんは前向いといて下さい」
( ><)「ふぁっく、後ろは任せとけなんですひんぬー」
(゚、゚#トソン「これ終わったらぶっ飛ばす」
「終わると、思ってますです?」
(゚、゚;トソン「!」
( ^^)「ああ、びっくりした。装束に穴が空いたじゃないですか」
(゚、゚;トソン「ちっ……少しは痛そうにしろよ」
( ^^)「そんな玩具がきくわけないでしょ、やれやれ」
(゚、゚;トソン「やっぱ駄目か……でもよ」
( ^^)「はい?」
(゚、゚トソン「何度も同じ場所に食らったら、どうだ?」
- 100 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 22:59:48.94 ID:33XFToiJO
-
たあん、再び引かれた引き金。
今度は間を置かずに、手持ちの銃、全てを一気に叩き込む。
だんだんだんと立て続けに響く銃声、弾き出された弾丸は、全てが山崎の胸へと吸い込まれる。
とそんの後ろから、援護射撃を繰り出す二匹の店妖怪。
立ち込める硝煙と砂ぼこり。
黒衣に包まれた小さな体が痙攣する様に、撃ち込まれる弾に合わせてびくんびくんと跳ねた。
(゚、゚#トソン「次!」
( ><)「あらよっと!」
(゚、゚#トソン「らぁあああっ! くたばれってんだ糞がぁあああああっ!!」
( <●><●>)「はい次」
(゚、゚#トソン「よし来い!!」
引き金を引くとそん、撃つ事を止め、とそんに次の銃を投げて渡す店妖怪。
どうと倒れた山崎に向けて、何度も何度も引き金を引き続けた。
- 104 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:04:11.67 ID:33XFToiJO
-
隙を見せた方が悪い、と一気に畳み掛けるとそん。
銃身が焼け付くまでと云わんばかりに、執拗に鉛の弾を山崎の身に捩じ込んだ。
そして粗方撃ち尽くし、今度は銃を抱えて走り出す。
倒れる体を蹴り上げて起こし、息を吐く音を聞きながら、その顔面を銃身で殴り飛ばした。
ごきん、と固い物がぶつかり合う音。
何かが折れる感触に、鼻辺りの骨を砕いたととそんは笑う。
地面へ叩き付けられた山崎を執拗に追い、何度も蹴り飛ばし、殴り飛ばし、叩き付ける。
これが、牛鬼にどれだけの傷を負わせられるかは解らない。
それでも何もしないよりは、ずっと良い筈だ。
その証拠に、殴られる山崎ととそんの気迫に、門の外の妖怪達が怯えを見せている。
あの牛鬼が、小娘相手に蹂躙されているのだ。
この後で、自分達もああなるのではないか。
そう思うと、思わず一歩、二歩、と後退る。
- 108 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:08:01.26 ID:33XFToiJO
-
ぜぇぜぇと呼吸を荒くし、汗をぽたぽたと地面に落とす。
倒れる山崎の頭を狙って、とそんを折れ掛けた銃を振り上げて。
がし、と、銃身を掴まれた。
(゚、゚;トソン「な……」
( )「ちょっと……おいたが過ぎます、ですね……」
(゚、゚;トソン「ッせぇ! 離せおらぁっ!!」
( )「人間が調子に乗っちゃ……痛い目に会うですよ」
(゚、゚;トソン「なッ! ……あ、ぁあああッ!?」
長い袖から伸びた小さな手が、銃身を握り締め、めきめきと爪を食い込ませる。
そのままゆらりと立ち上がり、銃を一息で握り潰し、とそんの左腕を掴んだ。
みしみし、と食い込む爪に、悲鳴を上げる腕の骨。
肘から先が千切れ落ちそうな痛みに、思わず銃を取り落として呻いた。
- 111 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:11:34.06 ID:33XFToiJO
-
( Д ;トソン「あっ、が……ぃ、ぎぃっ……!!」
( )「あーやや、遊びすぎちゃうから」
( Д ;トソン「ぐぁ、あ、う……いっ……離っ、せ……!!」
( )「お断り、です……よっ!」
( Д ;トソン「ぁあああっ! ぎっ、ぁ、いっ……ひっぎ、ぃあ、あああああああああっ!!」
ごぎゅ。
山崎が、とそんから手を離して、にっこりと笑った。
肘から先が、だらりと力無くぶら下がる左腕。
奇妙な方向へ捻れ、青黒く変色した腕を押さえて、とそんが喉から悲鳴を絞り出す。
焼ける様に、燃える様に、爆ぜる様に、腕が、痛い。
それなのに背中や額には、嫌と云う程に冷たい汗が流れていた。
呼吸が乱れる、痛みで息が出来ない、身体中の神経が痛みに向いていて、涙が嫌でも溢れた。
- 114 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:14:53.66 ID:33XFToiJO
-
左腕が、握り潰された。
ただ折れただけじゃない、肘の先を、潰されたのだ。
奇妙な方向に捻れ、まるで瓢箪の様に括れてしまっている。
砕かれた骨が皮膚を突き破り、血が溢れている。
動かす事などもうかなわないと云うのに、痛みだけが伝わっている。
青黒く、赤く、紫色で、みるみる内に腫れてゆく。
異様な姿になってしまった、白くて細い、少女らしい腕。
そんな己の腕と痛みに、とそんは地面に額を擦り付けて叫んだ。
顔はもう涙と汗と唾液でぐしゃぐしゃになり、呼吸すらもまともに出来ない。
喉が裂ける程に叫ぶ為、僅かな血が口許を濡らす。
丸めて投げ飛ばされていただいが、怒りに任せて牛鬼へと襲い掛かる。
それを容易く受け止めて、鋭利な爪が、だいの体を引き裂いた。
びりびりと縦に裂ける、布。
何処かで子供達の泣き叫ぶ声が聞こえた。
- 116 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:17:08.42 ID:33XFToiJO
-
「とそんさん! だいさん!」
「てめぇ何しやがるんです! ふざけるななんです!」
「だいさん、大丈夫ですかだいさん!!」
「とそんさんから離れろなんです!!」
ああ、涙混じりの怒声が聞こえる。
下手に動くなと、座敷童子に引っ張られているのだろう。
声は遠いままだが、こちらへ来ようともがいている。
けれど座敷童子は冷静な子だから、行ってはいけないと帯を掴んでいるのだろうな。
ああ、泣きじゃくる声が。
子供達の、声が。
あれは、だれの、こえ。
- 120 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:20:05.25 ID:33XFToiJO
-
『おじいさまは、どこにいったの?』
『もう、どこにもいないんです』
『どこに、いってしまったの?』
『極楽浄土へ、旅立ちました』
『どうして?』
『病気で苦しみましたから、そのご褒美にいったのです』
『もう、あえないの?』
『あえないんです』
『どう、して?』
『あなたが、生きているからです』
『どうして、ねぇ、どうして?』
『…………』
『どうして、とそんだけ、いきているの?』
- 122 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:24:03.76 ID:33XFToiJO
-
おじいさまがいなくなって、泣いていた。
寂しい寂しいと、泣いていた。
『とそんをひとりにしないで』
幼さ故の残酷さ。
目の前にいる妖怪達を、家族と認めようとはしなかった。
その事で、妖怪達がどれだけ傷付くかも知らず。
毎日毎日、わんわんと泣いていた。
いつでもいつでも、頭を撫でてそばに居てくれた。
それが嬉しいとは、理解していなかった。
ただ、唯一の肉親がいなくなった事が、悲しかった。
- 126 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:27:49.83 ID:33XFToiJO
-
両親は、物心ついた時には居なかった。
唯一の肉親は、優しく厳しい祖父一人。
店を営む祖父が好きだった。
祖父が営む店が好きだった。
店に憑く妖怪達は、いつでも一緒に居たはずなのに。
それを家族と認識した事は、不思議と無かった。
祖父が病で死に、一人だけになった。
店に憑く妖怪達は、そんな小さな頭を撫でて、いつでも優しくしてくれた。
未だ幼くて、悲しい程に幼くて、何も受け入れたくはなくて。
この妖怪達に微笑み掛ければ、祖父の死も、孤独も、受け入れなければいけない気がして。
逃げる様に、膝を抱えていた。
何も受け入れたく無くて、ひたすら部屋の隅で踞っていた。
唯一心を許していたのは、一枚の布。
祖父に教わって仕立てた、一反の布だった。
- 138 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:40:08.16 ID:33XFToiJO
-
不格好で、決して美しいとは云えない薄い水色の布。
祖父の匂いがする布を抱いて、巻き付けて、孤独に眠る日々。
そんなある日、布が自我を持った。
自分に巻き付き、ふわふわと浮かび、優しく微笑む一反の布。
一反木綿。
その笑顔は、祖父に似ていた。
幼い娘はその日から、めきめきと元気を取り戻す。
祖父に似た妖怪、一反木綿の笑顔のお陰で、孤独ではないと知ったから。
それを境に、店憑きの妖怪達にも、笑顔を向ける様になった。
我が子の様に、きょうだいの様に可愛がっていた子が、元気になった。
少しばかり寂しくはあったが、それ以上に嬉しくて。
その日から、皆が、家族になるために歩み寄り始めたのだ。
- 141 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:43:20.33 ID:33XFToiJO
-
始めこそはぎくしゃくしたが、元気になり、やんちゃになった娘っ子。
もう受け入れる事を怖がらず、明るく元気に笑ってみせた。
そして娘は、祖父が遺した店を継ぐ。
まだまだ子供の娘っ子がやっていける訳がないと、大人達は云う。
それでも、店憑き妖怪達と、数少ない友人に支えられ、娘は立派に店を継いだ。
日々の生活は苦しく、涙に濡れる日もあった。
空腹に喘ぎ、寒さに凍える日もあった。
しかし長かった髪を切り落とし、男勝りになった娘は、どんな事にも立ち向かう。
負けるものか、負けてなるものか。
いつでも歯を食い縛って立ち続ける娘には、もう、あの泣き虫だった頃の面影はなくて。
どんな事にも負けないと、挫けるものかと心に決めた。
それは、何故か?
- 144 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:47:27.15 ID:33XFToiJO
-
守るんだ、家族と、店を。
土を嘗める様に、ぐしゃぐしゃになった顔を歪めて、とそんは片腕で身を起こした。
山崎はとそんから離れ、店妖怪の元へと移動している。
無惨な姿になっただいを抱き締め、ふらふらと立ち上がる。
負けるものか。
ぜったいに、負けるものか。
唇をぎりりと噛み締めて、とそんは腕を掴みながら歩く。
そして、店の壁に立て掛けておいた、太刀に手を伸ばした。
- 148 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:51:11.75 ID:33XFToiJO
-
太刀を握り、鞘からその刀身を引き抜く。
片腕で支えきれる重さではなく、半ば倒す様に、銀色をあらわにした。
その音に振り返る山崎と、目を見開く店妖怪。
とそんは痛みを堪えながら笑ってみせ、太刀を引き摺り、走り出した。
( ^^)「あや、まだ走る元気がありますか」
( ^^)「んーと、それじゃ」
( ^^)「お腕と、さ よ な ら、っと」
にこっ、と、山崎は愛らしく笑った。
そして、こちらへ走るとそんに向かって駆け出して。
ぽん。
細い腕が、宙を舞った。
ttp://imepita.jp/20100613/442750
- 152 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:54:09.06 ID:33XFToiJO
-
走り出した、とそんと山崎。
その擦れ違い様に、抉り取られた体の一部。
不意に、痛みが抜ける。
とそんは折れ砕けていた筈の腕を見下ろし、首を傾げた。
( 、 トソン「あ……」
肘から先は、もうどこにも無かった。
不思議と、痛みは無かった。
腕を砕かれる痛みを、先に味わったからだろうか。
ただ、悲しい迄の喪失感に、涙が溢れた。
太刀を杖の様にして、何とか倒れず、地に足を付ける。
無性に悲しくて、とそんは虚ろに目を見開き、ぽたぽたと涙を流す。
- 156 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/13(日) 23:57:09.55 ID:33XFToiJO
-
あ、腕。
それだけを呟き、とそんを口を閉ざす。
自分がなぜ泣いているのかも解らず、ただ冷たいまでの喪失感に、身を委ねる。
ああ、壊れて行く。
地面に転がる左腕を、山崎がひょいと拾う。
そして、その断面を指先でぐちゃぐちゃとかき混ぜながら、笑いながら、戻ってきて。
倒れそうな体に鞭を打ち、何とか立ち続けるとそんの脇腹に、爪を伸ばした。
ごりゅ。と、腹から、力が抜ける。
勢いよく噴き出すなにか。
急激に抜けてゆく熱。
なにかがだらりと、溢れて、垂れ下がって。
とそんは、ふや、と、わらった。
- 161 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/14(月) 00:00:21.32 ID:33XFToiJO
-
ごぷりと血を吐き出して、とそんの体が傾く。
体から一気に力が、熱が抜けて行く。
もう、重力に任せて、倒れるしかない。
地に足を付けて、立つ力が無いのだから。
しかし、そんなとそんの体を、何かが支えた。
( 、 トソン「ぁ…………」
/# 、 /
( 、 トソン「だ、……ぃ」
縦に裂かれただいは、とそんの腹に強く巻き付き、その身を倒さぬ為に引く。
今倒れてしまえば、もう立ち上がれないと、何となく理解していたから。
ぐ、と強く引き、布の身にとそんの体を凭れさせる。
薄い水色のだいは、怒りと血に染まっていた。
- 165 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/14(月) 00:03:09.86 ID:xYOZQM15O
-
( 、 トソン「……ご、め……な……弱い、親……で」
/# 、 /"
( 、 トソン「腕……なく、な……許し、……て、な」
/# 、 /゙
( 、 トソン「だ……い……」
親を抱き締める、妖怪の子。
着物を裂いて臓物を溢す腹に、二重三重と巻き付き血を止めた。
千切られた腕に強く巻き付いて、こちらにも止血をする。
そして、太刀を握ったままの右手に、優しく重なった。
これ以上、親を傷付けさせるものか。
子を守るが親のさだめと云うのなら、親を守るも、子のさだめ。
そして、親と子は、いつでも共にあるべきだ。
- 168 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/14(月) 00:06:41.06 ID:xYOZQM15O
-
お母さん、一人で死なせるわけにはいかない。
( ^^)「あやや、そんな身体でまだやります?」
あなたは孤独を知るのなら、この身に孤独を遺し死なないで。
( ^^)「良いですけどけど、僕は楽しいだけですし」
だからどうか、生きるならば共に生き。
( ^^)「どぞどぞ、おいでください、一反木綿と女の子」
死するならば、その時も共にありましょう。
そうだね、だい。
- 174 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/14(月) 00:10:19.49 ID:xYOZQM15O
-
とそんはだいに頬擦りをして、とびきり優しく微笑んだ。
血に汚れて血を吐いて、それでも微笑む様は愛らしかった。
じゃ、一緒に、死のうね。
そう頷き合って、一人と一匹が太刀を掲げた。
これが最後になるかも知れない。
でもやっぱり、家族の力があると、少しは踏ん張れるものだなあ。
愛しい我が子と共に、出来る事を動ける内に、やってしまおう。
二人分の力で持ち上げられた太刀。
それを構えて、とそんがたんと地を蹴った。
だいに支えられ、浮かされているからこそ、こうして動ける。
家族が居るからこそ、こうして立ち上がれる。
振り上げられた刃を、山崎は避けようともせずに眺めている。
が、その顔が、僅かに歪んだ。
- 179 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/14(月) 00:12:52.35 ID:xYOZQM15O
-
山崎がはっと、袖を捲って己の腕を見る。
するとそこには、刃物で薄く切れ目を入れた様な跡があり。
ぐぱ、と、目を開いた。
皮膚を引き裂く痛みを、連れて、腕や手の甲に次々と目玉が現れる。
着物の下にも溢れるその痛みに顔を歪め、そちらに意識が向いてしまったのか。
ざくりと、肩に刃が噛みつく。
しまったと思った頃にはもう遅く、
右肩に食い込んだ刃はその重さに任せ、胸の辺りまでを一気に引き裂いた。
襟巻きの下で舌打ちをし、刃を抜こうと左手で太刀を掴む。
と、ぼきん、と何かが折れる音がした。
冷たい汗を僅かに流し、恐る恐る、左手を見た。
そこにあったのは、明後日の方向に捻れた手首だった。
- 186 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/14(月) 00:15:21.49 ID:xYOZQM15O
-
( ^^)「あ、れれ?」
身体中に、ぷつぷつと開く目。
肘を、腕を、曲がらない方向へと曲げられる。
これは、いったい?
「あーあー、家族は此処にも居るんですけどねー」
「だいさんだけが家族じゃねーってんです」
( ^^)「あ」
( <●><●>)「失礼なもんですね、びろーど」
( ><)「全くなんです、わかくん」
( <●><●>)「こちとらどれだけ生きてると思ってるやら」
( ><)「見た目が子供だからと油断したんです?」
- 191 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/14(月) 00:18:25.83 ID:xYOZQM15O
-
( ^^)「あやや……目々連と、家鳴じゃ……?」
( <●><●>)「そう、思います?」
( ><)「それだけだと、思うんです?」
( ^^)「…………これは、百々目鬼、ですね」
( <●><●>)「はいご名答、“目”を統べるのがこの僕」
( ^^)「じゃ、家鳴は? 音、では?」
( ><)「いいえ違うんです、僕は物を動かすもの」
( ^^)「ちっ……神通力でも持ってますか……」
( ><)「物を浮かせる、物を直す、そんな事はお手の物…………壊す事も、易い事」
( <●><●>)「ぽっぽちゃんに怒られるから出来なかったんですけどねー」
( ><)「だって見た目がこんなに可愛いしょたっこぼーいずなんですもんねー」
( <●><●>)「ねー」
- 198 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/14(月) 00:21:23.96 ID:xYOZQM15O
-
( ><)「まあ良くある、これが私の本気です、ってやつなんです」
( <●><●>)「私はその倍強いです」
( ><)「実は実力を隠してました」
( <●><●>)「私もまだ本気ではありません」
( ><)「体に反動が来ますが飛躍的にパワーアップする術を使わせていただきます」
( <●><●>)「ならば私も拘束具を外します」
( ><)「秘められた力が覚醒しました」
( <●><●>)「私は特殊な種族の血を引いており、ピンチになるとその血が力をもたらします」
( ><)「覚悟によって過去を断ち切ることで無意識に押さえ込んでいた力が解放されます」
( <●><●>)「愛する人の想いが私を立ち上がらせます」
( ><)「あ、これじゃ僕がぴんちになるんです」
(#*‘ω‘ *)
( ><)「ごめんなさい」
( <●><●>)「ごめんなさい」
- 206 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/14(月) 00:24:20.02 ID:xYOZQM15O
-
( <●><●>)「さーて、僕らの可愛い孫同然の子をよくまあ虐めてくれましたね」
( ><)「覚悟は良いんです? 僕らは出来てるんです」
( ^^)「……今まで黙って見ていた癖にー」
( <●><●>)「おやおや、僕らが何もせずにぼんやりしてたと思いますか。あんた背中が煤けてるぜ」
( ><)「牛鬼さんは浅はかなんですねー」
( ^^)「……? どう云う……?」
( <●><●>)「店憑きを、甘く見ない方が良い」
( ><)「さあ、やりましょうか」
( <●><●>)「れっつごー! ぽっぽちゃん!!」(>< )
(*‘ω‘ *)「ぽ!!」
( ^^)「え゙」
- 210 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/14(月) 00:27:15.39 ID:xYOZQM15O
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( ><)「説明しよう!、ぽっぽちゃんは座敷童子で住み着いた家に幸を与える!」
( <●><●>)「それはつまりぽっぽちゃんは幸を司ると云う事!」
( ><)「つ ま り!!」(<●><●> )
(*‘ω‘ *)
(*‘ω< *)⌒+ バチーン
(; ^^)「え゙」
(゚、゚;トソン「てめぇの幸……吸い取らせて、もらうぜ……」
(; ^^)「え、えぇぇぇ」
( <●><●>)「れっつ! だいそん!! 吸引力の変わらないただ一つのぽっぽちゃん!!」(>< )
(; ^^)「えぇえぇぇぇぇっ!? ここまで引っ張ってこれぇ!?」
(゚、゚;トソン「いやもう……相手が悪いわ、うん……こいつらがシリアスな訳ねぇ……ゲフッ」
- 214 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/14(月) 00:30:44.67 ID:xYOZQM15O
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(; ^^)「い、いやしかしですよ! それでも直接的なこーげきは出来るし!!」
( <●><●>)「往生際悪いですねー」
( ><)「だーから、何もしてなかった訳じゃないんです」
(; ^^)「え゙?」
( <●><●>)「幸を呼び込んでたから時間がかかったんですよ」
( ><)「勝機がなけりゃこんな事しませんよ、ほら、幸はもうすぐ其処に」
『そこの子達、少しお尋ねしても良いかな?』
立派な狐の尾をふさふさと、一人の男が立っていた。
それを見た店妖怪達はにんまりと笑って、喜んで返事をするのだった。
「お久し振りです、先代九尾様」
- 220 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/14(月) 00:33:51.18 ID:xYOZQM15O
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強いものと、弱いもの。
本当は弱いもの。
本当は強いもの。
その本当を隠しながら、門の砦は立ち回る。
嗚呼、お帰りなさいませ強い方。
嗚呼、お帰り下さいませ弱い方。
この町は、強いものに守られているのだから。
いくさはまだまだ終わらずとも、壊す事はかなわない。
さあ、お次に上がるその幕は。
餓鬼の姫と、恋する乙女の攻防戦。
『十一話前編 おわり。』