- 2 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 20:56:14.42 ID:jzbI9pYlO
-
ねぇ猫さん、どうしてこっちに来ないの?
ねぇ猫さん、どうして悲しそうに鳴くの?
ねぇ猫さん、どうして町が襲われてるの?
ねぇ猫さん、ねぇ、ねぇ。
( ^ω^)百鬼夜行のようです。
【十一話 百花繚乱 恋せよ乙女。 後】
閲覧注意
ねぇ猫さん、どうしてお姉ちゃんが、あんなに怒っているの?
ねぇ猫さん、どうして?
どうして、
- 4 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 20:59:17.66 ID:jzbI9pYlO
-
雷獣邸。
人々の避難先の一つである其処は、内藤宅や盛岡屋のよりは人が少ない。
それも、家主の存在に怯えてだろう。
疎らに避難する人々の世話も、大変と云う程でもなく。
雷獣邸に奉公に来ている幼子は、やる事もなく、ぼんやりと外を見ていた。
ζ(゚−゚*ζ「……」
(´<_` )「外に出ると、危ないぞ」
ζ(゚−゚*ζ「あ、弟者さん……」
(´<_` )「戸を開けていても、良いのか?」
ζ(゚−゚*ζ「奥様が……巣を張り巡らしてるって」
(´<_` )「ああ……なら、大丈夫か」
ζ(゚−゚*ζ「……」
(´<_` )「…………どうしたんだ?」
ζ(゚−゚*ζ「ん……でれには、何も出来ないと……思って」
- 6 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:02:11.33 ID:jzbI9pYlO
-
(´<_` )「君は子供だ」
ζ(゚−゚*ζ「……はい」
(´<_` )「だから、無理に何かをしようとしなくても良い」
ζ(゚−゚*ζ「…………でも、悔しいです」
(´<_` )「……俺もだ」
ζ(゚−゚*ζ「お姉ちゃん……東の通りを、守ってるらしいです」
(´<_` )「つんが……?」
ζ(゚−゚*ζ「たった一人で……守ってるらしいです……」
(´<_` )「……」
ζ(゚−゚*ζ「お姉ちゃん、ちっちゃくて、ほんとはさみしがり屋で、弱いです」
(´<_` )「……」
ζ(゚−゚*ζ「でも、頑張って、立ち向かってる……」
(´<_` )「何故、立ち向かえると思う?」
ζ(゚−゚*ζ?
- 9 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:06:40.43 ID:jzbI9pYlO
- (´<_` )「つんは、愛する奴が居るからだ」
ζ(゚−゚*ζ「内藤さん……ですか?」
(´<_` )「ああ……あれの為なら、つんは何でも出来るんだろうな」
ζ(゚−゚*ζ「…………愛、ですか」
(´<_` )「君には、未だ好いた男は居ないだろう」
ζ(゚−゚*ζ「……はい」
(´<_` )「もう少しすれば、それも解る筈だ」
ζ(゚−゚*ζ「…………弟者さんには、居ますか?」
(´<_`;)「え?」
ζ(゚−゚*ζ「弟者さんは、好きな人はいますか?」
(´<_`;)「ぇ、あ……や……」
ζ(゚−゚*ζ「いない、ですか?」
(´<_`;)「や、その……あの……」
- 11 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:09:21.09 ID:jzbI9pYlO
-
(´<_`;)(やべぇ格好良い事云ったのに居ないとは云えねぇ……)
(´<_`;)(しかし仕事ばっかしてたから出会いなんてねーよ……どうするよ……)
(´<_`;)(ええと、好きな女……好きな女……)
(´<_`;)
(<_宦G)(居ねぇよ!! そんなもん居ねぇよ!!!!)
(<_宦G)(畜生! この歳になって童貞だよこちとら!! 畜生!! 出会いくれよ!!!!)
(<_宦G)
(<_宦G)(兄者も童貞だろうし……まあ良いか……)
(<_宦G)(いやそうじゃなくて何て答えれば……)
(<_宦G)
(<_宦G)
(<_宦G)(何とかはぐらかすか……)
- 13 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:12:27.50 ID:jzbI9pYlO
- (´<_`;)「ええとだね、俺の好きな人h」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、猫さんだ!」
(´<_` )
ζ(゚ー゚*ζ「猫さんおいでー、そっちいると危ないよー」
(´<_` )
ζ(゚、゚*ζ「あれー……こっち来ないなー…………ちちちちー、おいでー」
(´<_` )
ζ(゚ー゚*ζ「んー……ほら弟者さん、猫さんですよ!」
(´<_` )「ア、ウン、ソウネ」
ζ(゚ー゚*ζ「どしたんですか?」
(´<_` )「ウウン ナンニモ」
ζ(゚ー゚*ζ「? 猫さーん、おいでー」
(´<_` )(死にてー)
- 18 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:15:03.71 ID:jzbI9pYlO
-
ζ(゚ー゚*ζ「んしょっと……おいで猫さん」
(´<_` )「あ、外に出るのは流石に危ないと思うぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「んー、黒くてふわふわだー」
(´<_` )「聞いちゃいねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「猫さん避難しないの? 危ないよー」
(´<_` )「……それ、普通の猫か?」
ζ(゚ー゚*ζ「へ?」
(´<_` )「……何か怪しいぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「そう、ですか?」
(´<_` )「…………こっち来いよ、猫」
ζ(゚ー゚*ζ「猫さーん」
(´<_` )(屋敷に上がらない……いや、上がれないのか……?)
ζ(゚ー゚*ζ「猫さん、どうしたのー?」
- 20 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:18:23.81 ID:jzbI9pYlO
-
(´<_` )「余り近付かない方が良い」
ζ(゚ー゚*ζ「へ……でも、」
(´<_` )「無理に上がらせなくても良いだろう、止めておけ」
ζ(゚ー゚*ζ「……わかりました……」
(´<_` )(下手に近付かせて、何かあっては危険だ)
ζ(゚ー゚*ζ「猫さん……」
(´<_` )(一応は、年上として守っておかなきゃならんしな……)
にゃあん。
ζ(゚ー゚*ζ「あ」
(´<_` )「ん?」
ζ(゚ー゚*ζ「猫さん……」
- 23 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:21:07.27 ID:jzbI9pYlO
-
川д川「にゃあん」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
川д川「……」
ζ(゚ー゚*ζ「弟者さん、猫さんが変体しました」
川; д川そ
(´<_` )「変化と云ってあげなさい」
川; д川「に、にゃん」
(´<_` )「お前も無理に猫語を使うな」
川; д川「にゃ……」
(´<_` )
川; д川
(´<_` )「未だ媚びるか」
川; д川「す、すみません……」
- 24 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:24:10.97 ID:jzbI9pYlO
-
ζ(゚ー゚*ζ「猫さんが女の人になっちゃった……」
(´<_` )「化け猫か、どうして上がらない?」
川; д川「あ、その……蜘蛛とは、相性悪くて……」
(´<_` )「ほー」
川; д川
(´<_` )
川; д川「にゃ」
(´<_` )「俺はそうやって媚びた物が何よりも嫌いだ」
川; д川「すみませっ」
ζ(゚ー゚*ζ「だめですよ弟者さん、猫さんいじめちゃ」
(´<_` )「ん、あ、ああ、すまん」
(´<_` )
(´<_` )(何故だ、この子供に頭が上がらん……)
- 26 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:27:13.31 ID:jzbI9pYlO
-
ζ(゚ー゚*ζ「猫さん、きれいなくろぎぬですねー」
川* д川「あ、ありがと……」
ζ(゚ー゚*ζ「触ってみても良いですか?」
川* д川「え、えぇ……」
(´<_` )(くろぎぬ……黒衣…………)
(´<_` )(黒衣に、黒髪……帯の色は…………赤……?)
ζ(゚ー゚*ζ「んしょっと、失礼しま」
(´<_` )「でれ下がれ! そいつに触るなッ!!」
ζ(゚−゚;ζ「ふぇっ!?」
川; д川!?
ζ(゚−゚;ζ「ど、どうしたん、ですか……?」
- 29 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:30:08.38 ID:jzbI9pYlO
-
(´<_` )「……おい化け猫、お前、西の猫だな」
川; д川「え……」
ζ(゚−゚;ζ「そ、そうなん、ですか……?」
(´<_` )「西の妖怪は黒の装束を好む、そして赤帯は、朝日や周りの連中が締めていた物だ」
川; д川「ぁ……」
(´<_` )「今すぐ此処から出て行け、毒婦の君を呼ばれたいか?」
川; д川「あ、ま、待ってぇ……私は……」
(´<_`#)「出て行け西の妖怪がッ! 未だしらをきるかッ!?」
川; д川「ひんっ」
ζ(゚−゚;ζ「お、弟者さんっ! いじめちゃだめです!」
(´<_`#)「下手をすればお前が殺される事もあるんだぞっ!?」
ζ(゚−゚#ζ「だからってお話くらい聞いてあげても良いでしょっ!?」
(´<_`;)「すみませんっ!?」
- 32 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:33:48.27 ID:jzbI9pYlO
-
ζ(゚ー゚*ζ「猫さん、こっからでも良ければ、お話聞かせてもらえませんか?」
川; д川「あ……ぅ、うん……」
(´<_`;)(もうやだ何なの……何なのこの子、普通に強いよ……)
ζ(゚ー゚*ζ「猫さん、西の人ですか?」
川; д川「……うん」
ζ(゚ー゚*ζ「でれ達を、殺しに来ましたか?」
川; д川「ち、違うの……私は、誰かを殺しに来たわけじゃ……」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、なぜですか?」
川; д川「あ……その……あの……」
ζ(゚ー゚*ζ「なぜですか?」
川; д川「ぅ……」
(´<_` )(誰かー、この幼女怖いぞー)
- 34 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:36:26.06 ID:jzbI9pYlO
-
川; д川「……私の、好きな人が……ね」
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
川; д川「この町に、執着してて……」
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
川; д川「それで、もしかしたら……好きな女でも……出来たのかと思って……」
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
川; д川「だから、それっぽい人を……探してて……」
ζ(゚ー゚*ζ「それだけですか?」
川; д川「は……はい……」
ζ(゚ー゚*ζ「この進軍に、参加は?」
川; д川「形だけ、参加を……」
- 35 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:38:58.55 ID:jzbI9pYlO
-
ζ(゚ー゚*ζ「弟者さん、あぶない人じゃないみたいです」
(´<_` )「あ、うん、そうね」
川; д川
ζ(゚ー゚*ζ
(´<_` )
ζ(゚ー゚*ζ「どうします?」
(´<_` )「一応は敵だからなぁ、放り出すか」
ζ(゚ー゚*ζ「それはかわいそうだなー……」
川; д川「あ、あの……それっぽい人が見付からなかったので……私、もう行きます……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
川; д川「あの……?」
ζ(゚ー゚*ζ「今は、通りに出ない方がいいです」
川; д川「へ」
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんの、声がするから」
ttp://imepita.jp/20100620/066400
- 38 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:41:06.76 ID:jzbI9pYlO
-
ξ゚听)ξ「……多い、ですね」
親指の爪をこり、と噛んで、つんはくるりと巻いた髪を風に靡かせ、立っていた。
門の方は、騒ぎも収まった。
自分はただ、この通りを守る事に徹しよう。
そう、冷たい迄の無表情で前を睨む。
溢れんばかりの西のあやかし。
それらの相手を片手間にしつつ、つんは何かを待つように厳しい表情を見せる。
くすんだ緑の着物に、前掛けと襷を外して身構えるつん。
蛇の目で襲い掛かるあやかしの手足を石にし、動きを止める。
相手を傷付けずに、動けなくする蛇の呪い。
初めて役に立ったと小さく笑い、つんは其処から微動だにしない。
ただ、睨むだけで良いのだから。
- 40 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:43:31.56 ID:jzbI9pYlO
-
端から見れば阿鼻叫喚とも云える、その状況。
己の肉体が石と化し、恐怖に叫ぶ妖怪共。
つんを口汚く罵れば、きっと睨んで口を動かせなくした。
それでも命に別状はない蛇の攻撃に、妖怪達は恐怖に叫んだ。
そのあたりにごろごろと転がる、半ば石像と化したあやかし。
殴るでも蹴るでも、怒鳴るでもなく、ただただ静かな暴力。
ξ゚听)ξ「……未だか」
ぎり、と強く爪を噛む。
噛みすぎて形の崩れた親指の爪。
そこから口を離し、苛立たしげに舌を打った。
その瞬間。
通りの向こうから、女の影が近付くのが、見えた。
- 41 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:46:06.20 ID:jzbI9pYlO
-
ξ゚听)ξ(…………来た)
遠目にも解る、鋭く伸びた二本の角。
薄汚れた白い着物、長い黒髪。
俯きがちにふらふらと、ゆっくりと、こちらへと歩いて来る。
きゅっと唇を噛み、背筋を伸ばした。
こちらへとやって来る女の姿に身構え、拳を強く握る。
もう少し。
あと少し。
迎え撃つべき女が、目の前に立つまで。
あと、少し。
川 ゚ -゚)
来た。
- 44 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:49:10.69 ID:jzbI9pYlO
-
川 ゚ -゚)「……ん…………」
ξ゚听)ξ「あなたが、くうさん、ですね」
川 ゚ -゚)「お前……は……?」
ξ゚听)ξ「私はつん、この通りを守る蛇」
川 ゚ -゚)「…………どうして……守る……?」
ξ゚听)ξ「この先へ、あなたを行かせない為に」
川 ゚ -゚)「なぜ、だ……?」
ξ゚听)ξ「この先には、私が守るべき方が居るからです」
川 ゚ -゚)「……」
話に聞いた通りの、美貌だった。
美しく、虚ろな鬼。
これが、餓鬼の姫、餓神くう。
- 46 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:54:01.61 ID:jzbI9pYlO
- 川 ゚ -゚)「……な、あ」
ξ゚听)ξ「はい」
川 ゚ -゚)「どくお…………知らない……か?」
ξ゚听)ξ「存じています」
刺激をせずに流す事は出来たかも知れない。
けれどこれを、そのままにしていても、結局は同じ事。
ならば、挑発して、相手にしてやろう。
ξ゚听)ξ「この先に、居ます」
さあ、乗れ。
ξ゚听)ξ「私の愛しい人と共に、居ます」
挑発に乗ってみろ、愚かな神。
ξ゚听)ξ「あなたの憎むどくおさんは、主人である内藤さんと共に、居ます」
この私を、喰い殺せるか?
- 50 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:56:53.52 ID:jzbI9pYlO
- 川 - )
ξ゚听)ξ「さあ、この先に進みたいでしょう」
川 - )
ξ゚听)ξ「先に進み、どくおさんを殺したいでしょう」
川 - )
ξ゚听)ξ「やれるものなら、やりなさい、愚かな神様」
川 - )「どく……お……」
かかった。
川# - )「あ゙あ゙ぁ゙ぁあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああッ!!!!」
ξ゚听)ξ(簡単な挑発に乗る、元より理性はほんの欠片しか持ち合わせていないか)
川# - )「私を捨てて見殺したあいつが、あいつがあ゙あ゙あ゙あ゙ああああぁああああああッ!!!!」
ξ゚听)ξ(可哀想、恨まれているどくおさんが、恨んでいるこの人が)
ほんの小さな擦れ違いから、こんなに醜悪になれるだなんて。
- 51 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 21:59:48.20 ID:jzbI9pYlO
-
ξ゚听)ξ(内藤さんからお話を伺った通り、綺麗だけど可哀想な人)
ξ゚听)ξ(どくおさんは会いたがっていたらしいけれど、会わせる訳にはいきませんね)
ξ゚听)ξ(存在を聞いただけでこうなのだから、実際に会えば、話し合いなんて出来やしない)
ξ゚听)ξ(…………なら、私が冷静に、させてあげます)
通りを守る者として、今の状態の彼女を、通す訳には行かないから。
この命をかけて、この暴れん坊の相手をし、通せる状態にしてみせよう。
川# - )「退け小娘ぇええええッ!! 貴様も私に食われたいかぁああああああああッ!!」
ξ゚听)ξ「お断りします
私が此処を退けば、あなたは内藤さんとどくおさんの元に行きますから」
川# - )「当たり前だッ!! 私が、このくうがッ!!
この様な姿で狂い生きていると云うのにッ!! 奴は、奴はのうのうとッ!!
私の事など忘れて主を持ち、幸せそうに……ッあああああああああッ!!!!」
- 52 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:02:26.98 ID:jzbI9pYlO
-
ξ゚听)ξ「私は」
川# - )「ッ」
ξ゚听)ξ「私は、ここから退きません、あなたに八つ裂かれようとも」
川# - )「何故だッ!? 何故そう云えるッ!?
所詮は男など、女を捨てて裏切り逝くのだッ!! 何故全てを賭せるのだッ!?」
ξ゚听)ξ「愛していますから
私は、内藤さんを愛しています、それはもう、心から、あの頃から
私が見続けてきたのは内藤さん、あの方こそが、私の至高、私が愛する殿方」
川# - )「それが何だと言うッ!? その様な感情はすぐに消え去るッ!!
そんな事の為に命を捨てるかッ!?」
ξ )ξ「…………そんな事、ですか」
川# - )「ああそんな事だ、くだらん世迷い事だッ!!
一時の迷いで全てを失い子を捨て世を捨て逝くのかッ!! 愚かなッ!!」
ξ )ξ「黙りなさい」
川# - )「な……ッ」
- 56 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:05:24.15 ID:jzbI9pYlO
-
冷静に相手を勤めようとしたけれど、腹の底から、何かが沸き上がる。
言葉には気を付けよう、感情を出さずに挑発しよう。
そう決めていた筈なのに、怒りがふつふつとたぎる。
理由は解っている。
この女が、私の想いを、そんな事と、下らないと、吐き捨てたからだ。
そんな事だと?
私が十余年抱き続けた心の支えである全てが、そんな事だと?
この想いがどれだけ私を救い私を支え私を満たし私を抱き私を包み私を壊し私を狂わせたかも知らずに。
ふざけるなよ、この無知なる神。
恋する女を、甘く見るな。
- 59 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:08:18.17 ID:jzbI9pYlO
-
もう、良い。
私は其処まで、出来た女ではない。
私は自分が何よりも大事にしている想いを吐き捨てられ、冷静で居られるほど大人じゃない。
解ったよ、解った。
私が売った喧嘩を、売り直す。
恋する乙女を舐めるなよ。
ξ# )ξ「これ以上、私の思いを下らないと吐き捨てるな。
私はあの方になら全てを捧げる覚悟で居る、その覚悟があるから此処に来た
この思い、この覚悟、この決意は蛇眼で出来た石などよりも遥かに固い
お前にそれを打ち崩す言葉なんて吐けはしない、愛する人の居ないお前などに負けはしない
文句があるのならこの愛を崩してみせろッ!! この私を喰らってみせろッ!!
私は内藤さんを愛してるッ!! だから私はお前を殺してでも私が死んででも此処を守るッ!!
さあ掛かって来い哀しい女ッ!! 私の愛で打ち砕けろ餓鬼の姫ッ!!!!
私はつん、蟒蛇であり蛇蠱の頭元つんッ!! 全てを石と化しその腹から打ち壊してくれるッ!!!!」
- 61 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:11:24.55 ID:jzbI9pYlO
-
川# - )「くうに喧嘩を売るか……小娘ぇ……ッ!!」
ξ#゚听)ξ「だから何だ愚か者ッ!! お前如きが私に勝てると思うのかッ!?」
川# - )「愚かだとッ!? このくうを愚かだと云うのかッ!? たかが蛇風情がぁああああッ!!」
ξ#゚听)ξ「ほざけ蛇の恐ろしさも知らぬ愚図がッ!!
蛇を怒らせるその恐怖ッ!! 身を持って知れ愚か者おおおおおおおおッ!!!!」
川# - )「黙れ黙れ黙れ黙れ小娘がぁああああああああッ!!!!
くうを罵る事など許されるものかああああああああああああああッ!!!!」
怒りに任せた蛇と鬼が、地を蹴って走り出した。
その恐ろしさたるや、般若と夜叉とも云えようか。
髪を逆立たせて怒り狂う、二人の女。
腹の底から炎を吐く様に怒りを撒き散らし、固く握った拳を、互いの顔へと叩き付けた。
- 63 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:14:54.65 ID:jzbI9pYlO
-
めぎり、と頬へ叩き付けられる拳。
真っ直ぐにそれを受け止めた二人は、怯む事もせず、更に腹へと拳をめり込ませる。
頬を殴られた時に切れた口の中。
腹を殴られ、血と息を吐いて僅かに呻く。
しかし鬼の方が先に体勢を建て直し、蛇の肩へと噛み付いた。
鋭い牙がごりと皮膚を裂き、薄い肉を突き破って骨を抉る。
その痛みに目を見開くも、蛇は直ぐ様、鬼の首へと腕を振り抜く。
拳と腕が直撃し、鬼は鈍い悲鳴を上げて肩から離れる。
肩の痛みに眉を寄せながらも、続けて胸ぐらを掴んで引き寄せ、顔面へと拳を叩き付けた。
ごふ、と再び血と息を吐く音。
背中から倒れた鬼に飛び掛かり、馬乗りになって拳を掲げ、降り下ろす。
怒りに燃える蛇の目には、恐れなどは、微塵も存在しなかった。
- 66 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:17:17.87 ID:jzbI9pYlO
-
顔へと降り下ろされる拳。
それから逃れる為に腕で顔を覆う。
しかし蛇の拳はそんなちっぽけな防御など無視して、腕ごと目一杯に殴り付ける。
ξ#゚听)ξ「お前如きにッ!! あの方への想いをッ!! 馬鹿にさせるものかぁッ!!」
川# - )「ぐっ、げふっ……ほざけ小娘がぁッ!! 恋など、想いなどッ!! 下らんッ!!」
ξ#゚听)ξ「黙れ愚か者ッ!! お前に恋の偉大さなど解るものかぁあッ!!」
川# - )「げほっ……ああ解らんッ!! 解るものかッ!! そんな下らん幻想などッ!!」
ξ#゚听)ξ「黙れ無知がぁああああああああッ!!!!」
川# - )「ほざけ下朗がぁああああああああッ!!!!」
ttp://imepita.jp/20100620/066520
愛する者への想いの為に。
憎む者への怒りの為に。
二人の女は、一歩も退かずに、ただただ殴り合う。
- 69 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:20:48.93 ID:jzbI9pYlO
-
馬乗りになる蛇を蹴り飛ばし、髪を掴んで引き起こす。
その腹へと膝を叩き込み、地面へ放り投げた。
膝がめり込んだ瞬間、腹からみしりと嫌な音がした。
地面に転がると息が出来ず、鋭い痛みに脂汗が滲む。
しかしふらふらと立ち上がり、鬼を睨んで唇を噛む。
殴られ、地面を転がり、蹴飛ばされ。
二人は血を吐き、顔を腫らして息も荒い。
流れる鼻血を乱暴に拭って、蛇が駆ける。
通りを守れない事よりも、愛しい想いを吐き捨てられ、負け転がる事の方が腹立たしくて。
このまま負ける事など、絶対に許されない事で。
殴り掛かる蛇の拳を受け止めて、首を掴んで地面へ叩き付ける。
憎い相手を野放しにするよりも、今は己を散々愚かだと罵ったこの女を放置する事が出来なくて。
このまま放置すれば己が無知だと認めるみたいで、それだけは絶対に許されない事で。
- 71 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:23:09.82 ID:jzbI9pYlO
-
ξ# )ξ「がっ……ぐ、げぅっ……!」
川# - )「取り消せ……ッくうが愚かだと云う言葉を取り消せッ!!」
ξ# )ξ「誰ッ……がッ! この、愚図が……ッ!!」
川# - )「くうを罵るなッ!! このくうを罵る事など許されんのだッ!!
くうは誰よりも強くある、くうは誰よりも美しいッ!! くうは誰よりも聡明だッ!!」
ξ# )ξ「何処が……ッただの餓鬼が……おつむはがきのままが……ッ!!」
川# - )「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇええええッ!!!!
くうはお嬢様なんだッ!! くうは誰よりも偉いんだッ!! くうは、くうはぁあああああッ!!!!」
ξ#゚听)ξ「…………黙れ、愚か者」
川# - )「あ゙あ゙あ゙あ゙ああああぁああああああああああああああぁああああああああッ!!!!」
子供だ。
大きい体の、ただの子供だ。
- 75 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:26:12.17 ID:jzbI9pYlO
-
この餓神は、図体だけが大人になってしまった子供に過ぎない。
神と呼ばれているものの、それはこの子供さ故の力から。
手加減を知らず、強い自尊心。
邪魔な物は壊して進み、感情だけが全ての力となる。
こんな子供に、神の聡明さも慈愛も何もありはしない。
ただ無理矢理に叩き起こされ、神と崇められてしまった哀れな子供。
可哀想だ事。
ひねくれた子供が、泣きじゃくっている。
お嬢様なんだ、誰よりも可愛いんだ、誰よりも偉くて聡明なんだ。
ええそうね。
でもそれは、あなたが人間だった、子供の頃のお話。
悲しいけれど、今のあなたはただの愚か者。
- 77 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:29:42.90 ID:jzbI9pYlO
-
孤独の悲しみ。
生への苦しみ。
餓えへの恐怖。
いたい、かなしい、くるしい、こわい、さみしい。
全てを感じない様に、憎しみと怒りに身を任せる子供は泣く。
この人も、この子もまた、一人は嫌だと泣いているのだ。
ただただ、叫ぶように泣いているのだ。
まるで昔の私の様に、あの方の様に。
孤独が巣食うその魂。
ねじ曲がってしまったその魂。
私が 叩き直してあげます。
- 79 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:32:15.70 ID:jzbI9pYlO
-
ご、と額を額へ叩き付けた。
その衝撃で尻餅をついた鬼の長い髪を掴み、お返しをする様に、顔へ膝を叩き込む。
骨の折れる感触を膝に感じ、そのまま頭を蹴り飛ばした。
どうと倒れる体に飛び付き、片手で首を掴み、もう片手で頬を張り飛ばす。
左右の頬を何度も、血に濡れた顔を、何度も殴る。
ξ#゚听)ξ「お前は子供だ、ただの子供だッ!! 何も解らずにただ吼えるだけのッ!!」
川# - )「黙れッ! 黙れぇえッ!! くうを殴るな、あいつらみたいにくうを殴るなぁあああッ!!」
ξ#゚听)ξ「何故殴られているかも理解できないのか愚か者ッ!!
全てがお前の思い通りになるとでも思っているのかッ!?」
川# - )「うるさいッ! 黙れ黙れ黙れッ!! 殴れればそれで良いのだろうッ!!」
ξ#゚听)ξ「だからお前は愚図なんだぁあああああッ!!
拳の意味も理解せずに恨み言を云うしか能の無い愚図がぁあッ!!」
川# - )「意味なんてあるものかッ!! くうを殴る拳なんて知るものかッ!!
ただくうを殴った癖にッ!! ただどくおを殴った癖にぃいいいいいッ!!!!」
ξ゚听)ξ「ッ!」
- 80 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:35:10.94 ID:jzbI9pYlO
-
川# - )「みんな嫌いだみんなみんなみんな嫌いだぁあッ!!
くうを殴る奴もどくおを殴る奴もみんなみんなみんな死んでしまぇええッ!!!!」
ξ゚听)ξ「餓神くう」
川# - )「うえがみなんて呼ぶなぁあああああッ!! くうは、くうはお嬢様なんだッ!!
神なんているものかッ!! そんなものくうは絶対に認めるものかぁあッ!!」
ξ゚听)ξ「お前は、何故どくおさんを憎む」
川# - )「あいつがくうを捨てて逃げたからだッ!! 死ぬも生きるも共にと約束したのにッ!!」
ξ゚听)ξ「本当に、憎んでいるの?」
川# - )「当たり前だッ!! あいつはッ!!」
ξ゚听)ξ「どくおさんを殴った相手に、怒るのに?」
川# - )「ッ!!」
ξ゚听)ξ「憎むべき相手が殴られるのに、怒るの?」
川# - )「ぁ……あっ……?」
- 83 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:39:52.08 ID:jzbI9pYlO
-
ξ゚听)ξ「餓神……いいえ、くう」
川# - )「あ……」
ξ゚听)ξ「あなたは、勘違いをしている」
川# - )「かん……ちがい……?」
ξ゚听)ξ「そう、勘違い。どくおさんがあなたを捨てたと云う、勘違い」
川# - )「な……ッ!?」
ξ゚听)ξ「あの人は、あなたを捨てていない、あなたを救いたがっていた」
川# - )「どう云う、事……だ……ッ!?」
ξ゚听)ξ「落ち着いて、聞きますか? 私の話を、噛み付かずに聞きますか?」
川# - )「…………」
ξ゚听)ξ「あなたが噛み付くならば、私は話す事を止める
そして今度は、あなたを石像にして噛み砕きます」
川# - )「…………聞……く」
- 84 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:42:13.80 ID:jzbI9pYlO
-
くうの上から退き、前に座って身を起こさせる。
着物の袖を裂いてくうに渡し、鼻を押さえさせながら、つんは口を開いた。
ふ、と互いの目から怒りが少し失せ、冷静さが宿る。
これなら、話が出来そうだ。
ξ゚听)ξ「あなたとどくおさんは、仲が良かったんですね?」
川 ゚ -゚)「友達で、家族だった」
ξ゚听)ξ「あなたはどくおさんが好きでしたか?」
川 ゚ -゚)「……うん」
ξ゚听)ξ「でも、今は嫌いなんですね?」
川 ゚ -゚)「…………うん」
ξ゚听)ξ「それは、どくおさんがあなたを捨てて逃げたから?」
川 ゚ -゚)「うん」
- 88 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:45:14.50 ID:jzbI9pYlO
-
ξ゚听)ξ「どうして、逃げたと思ったんですか?」
川 ゚ -゚)「くうが苦しんでる時に、あいつはくうを置いて村から出ていった、そして一人で死んだ」
ξ゚听)ξ「その理由を、考えた事はありますか?」
川 ゚ -゚)「りゆう……?」
ξ゚听)ξ「はい、あなたを置いて村から飛び出した理由を」
川 ゚ -゚)「……嫌になったから、逃げたんじゃないのか」
ξ゚听)ξ「生きていた頃のあなたには、考える余裕はなかったかも知れません」
川 ゚ -゚)「……」
ξ゚听)ξ「でも、今は?」
川 ゚ -゚)「いま……」
ξ゚听)ξ「……お腹は、空いていますか? 一人が、怖いですか?」
川 ゚ -゚)「…………おなかは、……すいてる」
- 91 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:48:12.82 ID:jzbI9pYlO
-
ξ゚听)ξ「なら、どうぞ」
川 ゚ -゚)「?」
ξ゚听)ξ「私の腕でも喰らって、お腹を満たして下さい」
川 ゚ -゚)「ぇ……」
ξ゚听)ξ「それであなたが満たされるなら、私はあなたを満たします」
川 ゚ -゚)「どう……して、?」
ξ゚听)ξ「あなたが、子供だからです」
川 ゚ -゚)「……」
ξ゚听)ξ「体は大きくなっても、あなたは死んだ時から心がそのまま
子供を満たすのが、年上としての勤めです、さあ、どうぞ食べてください」
川 ゚ -゚)「……で、も……」
ξ゚听)ξ「…………あなたは良い子です」
川 ゚ -゚)「っ」
- 93 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:51:19.34 ID:jzbI9pYlO
-
ξ゚听)ξ「先刻までは、怒って混乱していただけ、私が怒らせたから」
川 ゚ -゚)「……ごめん、なさい」
ξ゚听)ξ「いいえ、怒らせて殴ったのは、私です」
川 ゚ -゚)「…………くう、は……悪い子だ……だから、殴られる……のか」
ξ゚听)ξ「今は、良い子です」
川 ゚ -゚)「……うん」
ξ゚听)ξ「だから、良い子には優しくします……どうぞ、お腹を膨らませて下さい」
川 ゚ -゚)「…………良い、のか?」
ξ゚ー゚)ξ「……はい」
くうの頭を優しく撫でて、胸へと抱いた。
心持ち縮んだ角を指先で撫でてやれば、くうは戸惑いながらも口を開く。
そして、柔らかい肉へと牙を立てた。
- 95 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:54:40.81 ID:jzbI9pYlO
-
着物越しに、ぷちぷちと皮膚が裂ける音が体に響く。
脂肪を裂いて筋肉を噛み切り、わき腹の肉を、ぷちり、噛み千切った。
痛みに眉を寄せるが、つんは脂汗を流しながら、くうの頭を撫でる。
ああ、落ち着いている。
きっと、もう大丈夫。
けれどもう少し、もう少し、この子を壊す事になる。
未だ、事実を告げていない。
ξ;゚−゚)ξ「っ……」
川 ゚ -゚)「だい、じょうぶ……か?」
ξ;゚ー゚)ξ「……はい、一口で満たされますか?」
川 ゚ -゚)「…………どうして……?」
ξ;゚ー゚)ξ「たくさん殴ってしまったけれど……こうすれば、私を信用してくれるでしょう?」
- 98 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 22:57:46.28 ID:jzbI9pYlO
-
川 ゚ -゚)「……つ、ん」
ξ;゚ー゚)ξ「はい」
川 ゚ -゚)「…………おい、しい……よ」
ξ;^ー^)ξ「有り難う御座います」
川 ゚ -゚)「へびの、にく……」
ξ;゚ー゚)ξ「……食べながらで構いません、聞いてくれますか?」
川 ゚ -゚)「……うん」
ξ;゚ー゚)ξ「今のあなたなら、考えられますか? どうしてどくおさんが、村から出たか」
川 ゚ -゚)「……」
ξ;゚ー゚)ξ「食べ物がなくて、あなたが床に臥せった……どくおさんは、あなたが好きだった」
川 ゚ -゚)「…………」
ξ;゚ー゚)ξ「それまでに、どくおさんはあなたを嫌った様子は、ありましたか?」
川 ゚ -゚)「なかった……いつも、くうのしんぱい……してくれた……」
- 100 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:00:12.76 ID:jzbI9pYlO
-
ξ;゚ー゚)ξ「じゃあ……何故、村を出たと思いますか? 村の外には、何があると信じてましたか?」
川 ゚ -゚)「たべもの……ある、と…………ぇ……?」
ξ;^ー^)ξ「答えの尻尾、見付けましたね」
川 ゚ -゚)「…………どくお……くうの、ため……ぇ……えっ……?」
ξ;^ー^)ξ「どくおさんは……あなたを裏切ってはいないんです……先に、死んでしまったけれど」
川 ゚ -゚)「……どくお……くうのために、外に……出たのか……?」
ξ;゚ー゚)ξ「はい……あなたを、助けたくて、食べ物を探しに行ったんです」
川 ゚ -゚)「ぁ…………どくお……怪我……して……」
ξ;゚ー゚)ξ「食べ物を探している時に、妖怪に襲われたんです」
川 - )「あ……っ」
ξ;゚ー゚)ξ「あなたを助けたい一心で……あなたの事を思って、死んだんですよ……」
川 - )「どく……お……」
- 103 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:03:19.56 ID:jzbI9pYlO
-
川 - )「…………くう……かんちがい……して……?」
ξ;゚ー゚)ξ「どくおさんは、何か持っていましたか?」
川 - )「……花……ちいさい、花……」
ξ;゚ー゚)ξ「それは、薬草の花」
川 - )「…………」
ξ;゚ー゚)ξ「唯一見付けた、口に出来る物、あなたの病を治す為に手にした、唯一の物」
川 - )「……ぅ、あ…………あぁ、あっ……」
ξ;゚ー゚)ξ「あなたを置いて死んでしまった、あなたを忘れて生きてしまった……
それは、事実だけれど……どうか、どくおさんを許してあげて下さい……」
川 - )「ど、く……ぉ……ぁ、う……うぁあああっ……!」
ξ;^ー^)ξ「泣いても良いですよ、食べても良いですよ……私があなたを、受け止めます」
川 -;)「ぁっ……あ、あぁぁぁぁっ……うわぁああああああああああっ!!」
- 106 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:06:12.56 ID:jzbI9pYlO
-
寂しいなら、満たします。
お腹が空いたなら、満たします。
あなたの空っぽの部分、満たしてあげます。
だからもう、悲しい事をしないで。
あの優しい人を、憎んだりしないで。
もう憎しみと怒りに任せて、あの人を責めないであげて。
私を、食べても良いから。
肋骨が、肉の隙間から覗く。
ぷちりぷちり、くうは泣きながら肉を貪った。
受け入れ切れない悲しみから目を反らす様に、蛇の肉を食む。
口許を血で汚し、顔を涙で濡らし、つんに抱きついたまま、つんを喰う。
つんが血を吐く事にも気付かず、ただ、肉を噛んだ。
- 111 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:09:30.29 ID:jzbI9pYlO
-
川 -;)「あっ、ぅあ、あ、ああぁっ……ひっ、……ぃ、ぐ……うっ……!」
ξ;^ー^)ξ「大丈夫、大丈夫……もう一人じゃありません、もうお腹を空かさなくても良いです」
川 -;)「どくおっ……どくお、あっ……うわぁぁあああああんっ!!」
ξ;^ー^)ξ「……どくおさん……許して、くれましたか……?」
川 -;)「ゆるっ……す……! ちがっ、ゆるして、もらっ……くう……っ!」
ξ;^ー^)ξ「どくおさんは、あなたに許されたがっていました……あなたを忘れて、しまってたから」
川 -;)「そ、なっ……そんな、ことっ! くう、が……悪いっ……!!」
ξ;^ー^)ξ「誰も、悪くないです……」
川 -;)「ちがっ……ちがうぅっ……くうがわるいっ、わるい、のっ……」
ξ;^ー^)ξ「……じゃあ、どくおさんに、ごめんなさいしましょう?」
川 -;)「う、ん……うんっ」
ξ;^ー^)ξ「お互いにごめんなさいして、もう、終わりにしましょうね?」
川 -;)「うんっ……うんっ!」
- 115 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:11:57.72 ID:jzbI9pYlO
-
腹の肉を抉られ、もう、ふと見て肋骨が見える。
内臓までは喰われてはいない、なら、大丈夫。
この薄い肉だけを喰ったのなら、すぐに治る筈だ。
こぽ、と血を吐く。
耐え難い痛みも、この幼子の涙に比べれば、易いもの。
体も幼子に戻ってしまった、小さなくう。
つんの腕の中にすっぽりと収まってしまう、幼いくう。
脇腹から口を離させ、そっと抱き上げる。
そして肩へと噛み付かせ、ふらふらと、青い顔をしてつんは立ち上がった。
随分と、荒療治をしてしまった。
たくさん殴ってしまったし、罵ってしまった。
感情的になってしまった自分が、全て悪いのだろう。
けれどこの子は、やっと戻れたから。
数本の骨と腹の肉だけで、この子を救えたのだから。
もう、何だって良い。
- 119 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:15:45.67 ID:jzbI9pYlO
-
ξ;^ー^)ξ(あはは……何で、こんなに必死なんでしょう……見ず知らずの子の、為に……)
ξ;^ー^)ξ(……似てた……私に、あの方に…………泣いてる子供を放って、おけるものか……)
ξ;^ー^)ξ(ふふっ…………小さく、なっちゃって……もう、ただの子供ですね……)
小指ほどの大きさまで縮んだ角。
鋭かった牙も、もう小さな犬歯と変わらない。
噛み付かれる痛みだって、先程とは比べ物にならないくらいに小さい。
ただ、脇腹からこぼれそうになる臓物を押さえる事が大変で。
一つの脅威は、幼子となって姿を潜めた。
この通りは、もう大丈夫。
ああ、私は。
私は文字通り、この身を呈して、此処を守ったのだ。
何故だろう、不思議と、誇らしい気持ち。
- 125 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:18:42.67 ID:jzbI9pYlO
-
飛び掛かる妖怪を石にして、つんはくうを抱いたまま東門へと向かう。
ごうごうと風の音がする、何かを殴る金属の音がする。
二人の背中が見える。
わらわらと居るあやかしを退ける為に、二人が戦っている。
ああ、ああ。
愛しい人。
あなたの為に、この身をやつして戦いました。
そしてあなたの愛する方の、愛する方を、この身をもって救いました。
ああ、頭を撫でて。
よくやったねと、微笑んで、ほめて。
私の恋い焦がれる、何物にもかえがたい、愛しいお方。
内藤さん、私はあなたを、愛しているから、今こうして立っているの。
- 129 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:21:32.89 ID:jzbI9pYlO
-
(;^ω^)「むがーっ! 敵多すぎるお! 何だおこれ!!」
(;'A`)「本当多いなァ……殴っても殴っても湧いて来やがる」
(;^ω^)「ええい西の妖怪は化け物かっ!!」
(;'A`)「そのまんまじゃねェか……」
扇をぶわりと翻し、坊っちゃんが西の妖怪を吹き飛ばす。
その取りこぼしをどくおが殴り飛ばして外へと追いやり、走り回る。
すっかり立ち直った坊っちゃんは、汗を流して立ち回る。
ぜぇぜぇ肩で息をしながら、日頃の運動不足を呪った。
( ^ω^)「つかお、どくお」
('A`)「あん?」
( ^ω^)「主人公すげえひさびさ」
('A`)「そうね」
- 134 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:24:19.14 ID:jzbI9pYlO
- ('A`)「つか、影薄いよなァ俺ら……主人公こんびなのに」
( ^ω^)「お前さんはまだマシだお」
('A`)「ん?」
( ^ω^)「お前さんは……まだマシだお……」
(;'A`)「ど、どうしたよ坊っちゃん……」
( 寃ヨ)「この……人気投票一位が……」
(;'A`)「あ、一位だったの俺……」
( 寃ヨ)「主人公を差し置いて……一位……とか……」
(;'A`)「ぼ、坊っちゃんは!? 二位とかだろ!?」
( 寃ヨ)
(;'A`)「…………坊っちゃん?」
( 寃ヨ)「…………無投票……」
(; A )そ
( 寃ヨ)「投票……ぜろ…………だお……」
(; A )
- 145 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:27:15.12 ID:jzbI9pYlO
-
( 寃ヨ)「もう良いお……今度からお前さんが主人公やれお……どうせ僕は無投票男だお……」
(;'A`)「俺が! 俺が投票してくるから! 俺が坊っちゃん一位にするから!!」
( 寃ヨ)「投票期間とうに終わったお……」
(;'A`)「じゃあ俺がもう一回坊っちゃんの良いところ投票開催するから!!」
( 寃ヨ)「ねえお……どうせ「太い」で終わるお……」
(;'A`)「終わらないって! 俺ァ坊っちゃんの良いところ煩悩の数くらい上げられるし!!」
( 寃ヨ)「いやそれもそれで怖いけど……」
(;'A`)「自分で云っといて怖かった!!」
( 寃ヨ)イジイジ グスグス
(;'A`)「な、泣くなよ坊っちゃん……俺の中ではぶっちぎり一位だから……」
( 寃ヨ)「投票ではお前さんがぶっちぎり一位だったお……」
(;'A`)「いじけるなよォ……こないだの過去編ではね上がっただけだって……」
( 寃ヨ)「僕の過去編もどくおの人気の底上げだったんだお……流石の僕もこれは泣くわ……」
- 150 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:30:12.91 ID:jzbI9pYlO
-
(;'A`)「ほ、ほら……人間には坊っちゃんの良さが解らなかったんだって……」
( 寃ヨ)「それの方がきついだろうお……」
(;'A`)「あ、や、まァ確かに……坊っちゃん人間だしな……」
( 寃ヨ)「そりゃ僕だってどくおは好きだけど……一位でも平気だけど……」
(;'A`)「……無投票」
::( 寃ヨ)::
(;'A`)「泣かないで! 坊っちゃん泣かないで! ほらまた和菓子作ってあげるから!!」
(*^ω^)+
(;'A`)(可愛いやら面倒やら……)
(*^ω^)「あんみつ! あんみつ食べたいお!」
(;'A`)「はいはい、何でも作るよ……」
(;'A`)(……ま、良いか)
- 155 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:33:19.55 ID:jzbI9pYlO
-
( ^ω^)「うっし、もう一踏ん張り…………お?」
('A`)「ん?」
( ^ω^)「あれ、つん……かお?」
('A`)「つん? ……あ、本当だ、誰か抱いてんな」
( ^ω^)「お…………おおっ!?」
(;'A`)「ど、どした!?」
(;^ω^)「つん怪我してるお! ちょっと行くお!!」
(;'A`)「え、え? 怪我って…………よく見えるなおい、まだ影くらいしか見えねェぞ……」
(;^ω^)「つーんっ! つーんっ!! 大丈夫かおーっ!?」
ξ;^ー^)ξ「ぁ……内藤、さん……」
- 160 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:36:13.21 ID:jzbI9pYlO
-
(;^ω^)「つん!! どうしたんだお、怪我だらけだおっ!?」
ξ;^ー^)ξ「えへ……この子の、相手……してました」
(;^ω^)「この子は……?」
ξ;^ー^)ξ「くう、ですよ……餓鬼の……」
(;^ω^)「う、うえがみのっ!?」
ξ;^ー^)ξ「いいえ……この子は神なんかじゃありません、ただの子供です……」
(;^ω^)「お……? それよりひどい怪我だお、大丈夫かお?」
ξ;^ー^)ξ「はい……ちょっと、骨と肉持ってかれただけですから」
(;^ω^)「ちょっとじゃないお!! 何したらこんな事になるの!?」
ξ;^ー^)ξ「話せば、長くなりますね……」
(;^ω^)「ああ話しは後で良いお! とにかく手当てするお!!」
ξ;^ー^)ξ「あ、あは……ごめんなさい……」
- 164 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:39:22.46 ID:jzbI9pYlO
-
(;^ω^)「んっしょっと……で、何があったんだお?」
ξ;^ー^)ξ「えっと……ちょっと、叩き直しました……」
(;^ω^)「…………」
ξ;^ー^)ξ「それで、お腹が空いたって云うので……」
(;^ω^)「食べさせた、と?」
ξ;^ー^)ξ「は、はい……」
( ω )そ
ξ;^ー^)ξ「……内藤、さん?」
( ω )「お前さんは……また……」
ξ;^ー^)ξ「ぇ……えっ……」
- 167 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:42:05.53 ID:jzbI9pYlO
-
(# ω )「……っ馬鹿たれえっ!! また無茶して、もし死んだらどうすんだお!!」
ξ; )ξ「っ!」
(# ω )「つんは向こう見ず過ぎるお! 命あってこそなのにそれを直ぐに捨てようとするっ!!
いつもいつも突っ走って傷だらけになってッ! 僕らがどれだけ心配するかも知らずにッ!!」
ξ; )ξ「あ……」
(# ω )「どくおに噛み付いた時も! 自分が殴られるかも知れないのに突っ走ってッ!!
僕の為と云いながらいつも傷だらけになるッ!! 僕が心配しないとでも思うのかッ!?」
ξ; )ξ「ない、と……さ……」
(# ω )「少しはッ!!」
ξ; )ξ「はひっ!」
(# ω )「少しは僕にもッ!! 僕にもつんを守らせてくれおッ!!
好きな女に守られてばかり、守る隙も与えてくれないッ!!
これじゃあ情けないばかりだッ!! どうしてつんは僕に君を守らせてくれないッ!!?」
ξ゚听)ξ「内藤……さん……」
- 174 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:45:06.85 ID:jzbI9pYlO
-
(# ω )「好きな女が僕の所為で怪我を負う事が、どれだけ苦しいかッ!!
僕は君を守りたいと、支えたいと思いながら大人になったと云うのにッ!!!!」
ξ゚听)ξ「……ごめんなさい、内藤さん…………」
(# ω )「一人で全部背負い込むのは止めてくれおッ!! 君の重荷は僕にも分けてくれおぉッ!!!!」
ξ゚ー゚)ξ「ごめんなさい……ごめんなさい、内藤さん……私、全部、抱えすぎました……」
(# ω )「はぁ……はぁ…………っ……すまんお、つん……」
ξ゚ー゚)ξ「いえ……私を叱ってくれて、有り難う御座います……」
(# ω )「すまないお……すまないお、怪我をして、僕のためにしてくれたのに、怒鳴って……」
ξ゚ー゚)ξ「……私を叱ってくれるのは、内藤さんだけですから…………有り難う、御座います」
(# ω )「僕は……僕の弱さに、腹が立つんだお……いつまで経っても子供のままで、弱い……」
ξ゚ー゚)ξ「…………私は、そんな内藤さんが好きです」
(# ω )「つん……?」
ξ*^ー^)ξ「弱くても、泣き虫でも、私の足である内藤さんを、私は愛していますから」
( ^ω^)「……つん…………」
- 182 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:48:05.67 ID:jzbI9pYlO
-
ξ*^ー^)ξ「強くなる事に、急がないで下さい……あなたが強くなるまで、私が支えますから」
( ^ω^)「お……でも……」
ξ*^ー^)ξ「あなたを支える幸せを、奪わないで下さい……」
(*^ω^)「おっ…………強くなったら、支えては、くれないのかお?」
ξ*^ー^)ξ「あなたが望むなら……いくらでも」
(*^ω^)「つん……守れなくてすまないお、強くなって、君をちゃんと守るお……」
ξ*^ー^)ξ「はい……内藤さん」
(*^ω^)「おっ……」
('A`)
('A`)「ねぇ、もう入って良い?」
(^ω^;)「うおびっくりしたあっ! どくおいつからそこに!?」
('A`)「うん、馬鹿たれの所から」
(^ω^;)「すげえ最初!!」
- 185 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:51:20.91 ID:jzbI9pYlO
-
('A`)「あのね二人とも、ばかっぽぅするのは良いけどね、今はいくさの真っ只中なの」
(;^ω^)「はい……」
('A`)「そうやってね、安易に死亡ふらぐに見せかけた幸せをふらぐ立てるの止めて? 折るよ?」
ξ;゚听)ξ「ご、ごめんなひゃい……」
('A`)「大体ね、何で道の真ん中でいちゃいちゃしてるの? 馬鹿なの? 死ぬの? まじ何なの?」
(;^ω^)「す、すみません……」
ξ;゚听)ξ(内藤さん、どくおさんが怖いです……)
(;^ω^)(たぶん親馬鹿だお……)
ξ;゚听)ξ(ああ……)
(#゚A゚)「戦場でいちゃつくなぁああああああああああああああッ!!!!」
(;^ω^)「はひぃいっ!!」
ξ;゚听)ξ「ごめんなさぃいっ!!」
- 191 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:54:25.15 ID:jzbI9pYlO
-
('A`)「ッたく……何考えてんだ…………ん?」
ξ;゚听)ξ「は、はひ?」
('A`)「それ、何だ?」
ξ゚听)ξ「あ、この子ですか?」
ξ゚听)ξっ川 - -)スヤスヤ
( 'A`)
(;゚A゚)そ !?
(;゚A゚)「くくくくくうううううううううッ!?」
ξ゚听)ξ「はい、くうさんです」
(;゚A゚)「何で!? 何で居るの!? 何で縮んでるの!? 何これどう云う状況なの!?」
ξ゚听)ξ「かくかくしかじかしかくいむーぶ」
(;゚A゚)「全く解らんッ!!」
- 194 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/20(日) 23:57:08.25 ID:jzbI9pYlO
-
川 - -)゙
川 ゚ -)゙ パチ
川 ゚ -゚)゙ パチクリ
(;゚A゚)
川 ゚ -゚)
(;゚A゚)「く……う?」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)゙ ?
(;゚A゚)!?
川 ゚ -゚)「つん……このおっさんは……?」
ξ゚听)ξ「それがどくおさんですよ」
川 ゚ -゚)「ぇ……おっさん……」
:(; A ):
- 199 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/21(月) 00:00:09.75 ID:a5BMhVF5O
-
ξ゚听)ξ「あなたが先刻まで大人だった様に、どくおさんも大人になっちゃったんですよ」
川 ゚ -゚)「えー……あんなにかわいかったのに……」
:(; A ):
川 ゚ -゚)「なにこのさえないおっさん……」
:(; A ):「坊っちゃん……言い過ぎたの謝るから……あの子、何とかして……再会一言目が……」
( ^ω^)「…………おっさん」肩ポン
:(; A ):「おっさんじゃないよ!? 外見は青年だよ!? 言い過ぎましたごめんなさい助けてッ!!」
( ^ω^)「お嬢ちゃん、大人はね、ある程度の歳になるとおっさんとか云われると傷付くのよ」
川 ゚ -゚)「うん……わかったおにいちゃん」
:(; A ):「差!? この差!? 何この差!?」
川 ゚ -゚)「おにいちゃんはわかい、おっさんはおっさん」
:(>; A )>:「ぐぎゃあああああああああんッ!!」
- 210 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/21(月) 00:05:05.04 ID:a5BMhVF5O
-
川 ゚ -゚)「…………で、どくお?」
(;'A`)「あ、はい、どくおです」
川 ゚ -゚)「……しばらく見ないうちに、老いたな」
(;'A`)「まだ引っ張るの……?」
川 ゚ -゚)「…………くうは、子供のままだ」
(;'A`)「え……」
川 ゚ -゚)「心が、子供のままだ……死んだときから、かわらない」
('A`)「くう……」
川 ゚ -゚)「でも、さっき……少し、大人になったぞ」
('A`)「?」
川 ゚ -゚)「……ごめんな、どくお」
('A`)「ッ!」
川 ゚ -゚)「おまえのこと、裏切ったとおもってた……でも、違ったんだな」
('A`)「くう……何で……」
- 217 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/21(月) 00:08:18.71 ID:a5BMhVF5O
-
川 ゚ -゚)「さっき、つんが教えてくれた……おまえはくうのために村を出て、死んだと」
('A`)「……そっか、知ったのか…………ごめん、くう」
川 ゚ -゚)「どうして、謝る?」
('A`)「おまえと一緒だって、約束したのに勝手に死んだから」
川 ゚ -゚)「……くうのためだ……そんなの、どうでも良い」
('A`)「……でも、後悔したし、悔しかった」
川 ゚ -゚)「くうも、後悔した」
('A`)「…………今度は、お前を置いては死なない」
川 ゚ -゚)「……うん」
('A`)「今度こそ、約束だ」
川 ゚ -゚)「…………後悔、するなよ?」
('A`)「ああ、勿論だ」
- 221 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/21(月) 00:11:39.99 ID:a5BMhVF5O
-
二度目の指切り。
小さな体を抱き締めて、髪を撫でながらの指切り。
今度はもう離れない様に。
今度こそ、約束を破らずに済む様に。
大好きだよと、言葉に出さなくても伝わる。
数年、数十年、数百年越しの想いを、やっと交わし合えた指切りげんまん。
指切りげんまん
嘘吐いたら
その身を喰らい尽くす
ゆぅびきった
呪いとも云える約束が、再び廻り出す。
- 226 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/21(月) 00:14:14.52 ID:a5BMhVF5O
-
('A`)「……もう、俺を殺したくはないか?」
川 ゚ -゚)「うん……もう、平気だ」
('A`)「そっか……あの頃のままだな、くうは」
川 ゚ -゚)「くうはこのままで、体だけ大人になってたからな……」
('A`)「うん……無理矢理、起こされたんだろ?」
川 ゚ -゚)「ん……眠っていたのに、外から恨み言がいっぱい聞こえて……
いらいらしてたら、起きろ起きろって、甲高い声で云われた……」
('A`)「……朝日、か」
川 ゚ -゚)「あいつの声は、うるさい……嫌いだ……」
('A`)「…………なあ、くう」
川 ゚ -゚)「ん……?」
('A`)「何で、鼻の骨折れてるんだ?」
川 ゚ -゚)
ξ゚听)ξ
- 231 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/21(月) 00:17:07.80 ID:a5BMhVF5O
-
川 ゚ -゚)「つんと おんなのたたかいを しょうしょう」
ξ゚听)ξ「ね」
川 ゚ -゚)「ね」
( ^ω^)「つん、わき腹抉られて骨折られて殴られまくった跡があるお
くうさんも骨とかめきめき折れて殴られまくった跡があるお」
('A`)「お前らどんだけ肉体的な殴り合いしたの、普通女は言葉で戦うんじゃないの」
ξ゚听)ξ「妖怪ですから」
川 ゚ -゚)「妖怪だからな」
( ^ω^)
('A`)
( ^ω^)「取り敢えず二人とも鼻血拭こうか」
('A`)「鼻血だらだら流す二人のひろいん……」
- 238 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/21(月) 00:21:03.56 ID:a5BMhVF5O
-
( ^ω^)「はー……しかし、何とか丸く収まったおね……」
ξ゚听)ξ「です、べふっ、ね」
( ^ω^)「つん、鼻血止めながら無理に喋らないで」
('A`)「ま、くうも元に戻った……と云うか、正気には戻ったし」
川 ゚ -゚)「そう、ごべっ、だな」
('A`)「くう、鼻血止めるか喋るかどっちかにしなさい」
川 ゚ -゚)「ごべぶっ」
('A`)「鼻血止めなさい」
( ^ω^)「お」
('A`)「ん?」
( ^ω^)「朝日、だお」
(;'A`)「え、どこ?」
( ^ω^)「いや、お日様の朝日」
- 244 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/21(月) 00:24:21.70 ID:a5BMhVF5O
-
(;'A`)「ああ……あの朝日かと思った」
( ^ω^)「最初に漢字間違えたお陰でややこしくてしょうがねえお……」
('A`)「旭の筈だったからなァ……」
( ^ω^)「いやあ誤字怖い怖い、あと朝御飯も怖い」
('A`)「んー…………あ、朝日につられて西の奴等が退いてく」
( ^ω^)「はーん……夜明けと共に退くつもりだったのかお」
('A`)「……明日からまた、大忙しだなァ」
( ^ω^)「だおね……被害は少ないけど、えれぇ疲れたお……」
('A`)「っしょ、と……たからん所にでも行くか」
( ^ω^)「つん、くうさん、お医者さん所に治療して貰いに行くおー」
ξ゚听)ξ「ぐげぶっ」
川 ゚ -゚)「ごべぶっ」
( ^ω^)「本当にひろいんかね君達は」
- 249 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/21(月) 00:27:11.25 ID:a5BMhVF5O
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('A`)「安心したらぶり返したんだろ、ほら行くぜ」
( ^ω^)「つん、背中に乗れおー」
('A`)「ほれ坊っちゃん、皆に知らせろ」
( ^ω^)「はいよっと…………西の第一進軍! これにて終了だおーっ!!
此度のいくさは我らが東の守り勝ちである!!
次に迫るはいくさが為に!! 皆々様!! 暫しのご自愛をおーっ!!!!」
お日様が顔を出すその時に、黒がわらわらと西の空へと帰り行く。
東の町の四方が砦は、壊れる事は無かった。
されど被害は少ないとは云え、家屋は壊され、妖怪人間、構わず皆が傷付いた。
お次に迫る進軍に備え、皆は傷を癒す事に専念する事に致しましょう。
さあさ、さあさあ皆々様。
一つ目のいくさは、これにて仕舞いで御座います。
次いで訪れるいくさにも、どうかどうか、お付き合いを。
『十一話後編 おわり。』