2 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:26:35.88 ID:ggcD1QkYO
代理ありがとうございます。

http://stupidrabbits.web.fc2.com/
http://nagixnagi.blog38.fc2.com/
総合で投下した短編をまとめて下さってます、ありがとうございます

http://nanabatu.web.fc2.com/boon.html
まとめて下さってます、本当にありがとうございます。


くそーがっくしめ…使えないなんて…。
あ、今回はなんか少し短いですぞー。

4 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:28:30.47 ID:ggcD1QkYO

  丸竹夷二押御池
 (まるたけえびすにおしおいけ)

  姉三六角蛸錦
 (あねさんろっかくたこにしき)

  四綾仏高松万五条
 (しあやぶったかまつまんごじょう)

  雪駄ちゃらちゃら魚の棚
 (せった)  (うおのたな)

  六条三哲とおりすぎ
 (ろくじょうさんてつ)

  七条こえれば八九条
 (しちじょう) (はっくじょう)

  十条東寺でとどめさす
 (じゅうじょうとうじ)



 lw´- _-ノv春の日々、のようです

  『(#゚;;-゚)でぃの日々、のようです』



6 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:30:19.08 ID:ggcD1QkYO


 かっつんこっつん下駄を鳴かせちゃ、今日も今日とて神社にお参り。
 姉様“はいん”に行き先告げず、毎度のお出掛けお稚児は参る。

 長い長い黒髪を垂らしたまま、真っ赤な襤褸(ぼろ)の振り袖で。
 静かにからから鈴を鳴らして、手を合わせてから暫し黙。

 少しの間を開けてから顔を上げ、砂利を踏みしめてお社の裏へと向かった。


 西のお稚児、でぃが毎日そこへ行くには訳がある。

 友人とまでは言えなくて、他人と言うには距離が近い。
 そんなあの子に会う為に。


12 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:32:12.65 ID:ggcD1QkYO

(#゚;;-゚)「未だァ……居てへん、なァ」


 でぃが小さく囁いて、定位置でもある柱の足元に座り込む。

 耳を澄ませても神社の石階段を登る足音は聞こえず、風がさやさや木々や草を揺らすだけ。
 静かな静かな世界にぽつり、たった一人だけ。

 膝を抱えて瞼を閉ざし、でぃの呼吸は風の囁きに合わせようと潜められる。


 このまま溶ける様に、風の仲間に入れたら。


 そんな静寂を愛おしむでぃの耳へ、砂利を踏む音が舞い込んだ。


13 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:34:39.14 ID:ggcD1QkYO


(´・ω・`)「あぁ、もう来てたんやね、でぃちゃん」

(#゚;;-゚)「あ……へェ、しょぼんはん……」


 神社の裏の生け垣を飛び越えて、現れたるは、少しばかり長い黒髪に大人しそうな顔の男児。
 男児と言っても十の中頃に近い歳で、紺の着物がよく似合っていた。


(´・ω・`)「けど毎日ここに来てええんかい? 花魁の禿(かむろ)っ子やったら忙しいンやろうに……」

(#゚;;-゚)「あ、う、うちは、その……花魁について歩ける顔やァ……あらしまへんから……」

(;´・ω・`)「あ、ち、違っ、そう言う意味で言うたんやなくて……その……あ、あぁう……」


 男児しょぼんの言葉に、顔を隠す様に少し俯いて答えるでぃ。
 その姿を見たしょぼんはハッと口を押さえて、己の言葉にがくんと項垂れてしまった。

 でぃを傷付けるつもりで言ったのではなかったのに。
 袖を噛みながら、しょぼんはどうにかでぃに謝罪し場の空気を良くしようと思案する。


17 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:36:24.60 ID:ggcD1QkYO

 当のでぃは少し困った顔で膝を抱き、袖でそっと顔を隠してしまわれた。
 おんなのことして、顔の傷は少しばかり気にしている事。
 その話題は余り好ましい物ではないのだ。


 しょぼんが袂に手を突っ込んで何かないかと探っていると、指先に何かが触れた。

 それを掴んで引っ張り出せば、それは袋を被せた飴細工。
 先日夜店で買って、忘れていた物だった。

 お、と少し口の端を持ち上げてにんまり笑ったしょぼんが、精一杯の笑顔ででぃに顔を向けて。


(*´・ω・`)「はい、でぃちゃ」


 飴を差し出そうと手を伸ばしたらば、

 でぃの口には小判の形の飴細工。


(´・ω・`)

(´;ω;`)


 垂れ下がった眉が、更に下がった。


19 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:38:10.35 ID:ggcD1QkYO

 そんなしょぼんに気付いたでぃが、口から飴を出して顔を向ける。
 しかししょぼんは飴を胸に抱いて地面に“の”の字を書いていて。

 頭にぽ、と疑問符を浮かべて首を傾いだ。


(#゚;;-゚)「しょぼんはん……のないしはりましたん?」

(´;ω;`)「ううん、ううん何でもあらへんよ……飴ちゃん美味しいかい?」

(*#゚;;-゚)「へぇ、はいん姉様にいただいたんどすっ」

(´;ω;`)「そっか、良かったなぁでいちゃん……うっうっ」

(#゚;;-゚)「しょぼんはん……何持ってはりますん?」

(´;ω;`)「何もあらへん、何もあらへんよ……」


 胸に抱いていた飴細工をそっと袂に仕舞って、しょぼんはへにゃりと笑顔を見せる。


20 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:40:03.85 ID:ggcD1QkYO

 不思議そうに首を傾げたままのでぃだったが、何もないと言う言葉に頷き、ならばそうなのだろうと納得した。
 それは幼さ故の残酷さと言うか、未だでぃはそこまで疑う事は知らなくて。


 口の中に広がる優しい甘さに微笑むでぃと、膝を抱えて遠くを見るしょぼん。

 二人は何と無くこの神社に来て、出会って、毎日の様に会っている。
 別に大した事はない、特別な会話も何もない。
 ただ隣り合って座り、ちらほらと言葉のやり取りをするだけ。

 そんなゆるやかな時の流れが、二人は好きだった。


(´・ω・`)「……はぁ」

(#゚;;-゚)「のないしはったん? しょぼんはん」

(´・ω・`)「ん、うん……お世話させて貰っとった庄屋の息子さんが、こないだ亡くなりはったんよ」

(#゚;;-゚)「まぁ……」

(´・ω・`)「結婚を前提に……って人もおったらしくて、悲しかったなぁ……」


22 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:42:07.59 ID:ggcD1QkYO

(#゚;;-゚)「うちのはいん姉様も、先日お友達を亡くされて……ずうっと泣いてはった」

(´・ω・`)「そっかぁ……なんや悲しい事が、続くんねぇ」

(#゚;;-゚)「……悲しいんは、ややわぁ……」


 二人揃って溜め息はらりと転がして、膝を抱いて空を見上げる。
 空には白い雲がぷっかり、すんと染まった青い空に浮かんでいた。


(´・ω・`)「あ、せやでぃちゃん」

(#゚;;-゚)「?」

(´・ω・`)「暑くなったら、甘酒でも飲」


 じゃり


(#゚;;-゚)?
(´・ω・`)?


lw´- _-ノv


23 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:44:34.96 ID:ggcD1QkYO

 砂利を踏む音を聞いた二人が言葉を切ってそちらに顔を向けたなら。

 お社の裏をこっそり覗く、花魁しゅうの姿。


(;´・ω・`)「うわわわわっ!?」

(#゚;;-゚)「しゅう、花魁? こないな所で何を……?」

lw´- _-ノv「……これは失敬、まさかまさか逢瀬の最中とは露知らず、お邪魔な虫はそそくさ退散致そうか」


 見知らぬ女の顔がすぐ近くにあって慌てふためく男児しょぼんと、慌てる事なく問う女児でぃ。
 そんな二人の見て分かる相性の良さに、しゅうはほくそえんで背中を見せる。

 すると案の定しょぼんは顔を赤くして、でぃは平気な顔で


(*#;;///)


 おや、


25 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:46:14.19 ID:ggcD1QkYO

lw´- _-ノv「ほうほう、ふむむ、にやにや」

(´・ω・`)「口でにやにや言いはりな」

lw´- _-ノv「憎いのう、この色男」

(´・ω・`)「へ?」


 立ち上がったしょぼんを肘でうりうりとつついて茶化すしゅうに、しょぼんは首を傾げる。
 しゅうがしょぼんの背後に立つでぃを指差すが


(#゚;;-゚)


 でぃの顔は元通り。


27 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:48:04.21 ID:ggcD1QkYO

(´・ω・`)「? 何です、お姉さん?」

lw´- _-ノv「……わっちの見間違い…?」

(*#;;///)

lw´- _-ノv「いな違う、ほら」

(#゚;;-゚)

lw´- _-ノv「顔を戻すの早いぞお稚児や」

(#゚;;-゚)「なんの事ですやろォか……」

lw´- _-ノv「うへぇ」


 しょぼんがこっちを向くと赤面して、あっちを向くと元通り。
 しかも無意識らしく、でぃ本人も首をかしげている。

 これにはしゅうも溜め息だ。


31 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:50:07.38 ID:ggcD1QkYO

 やれやれ、と肩を竦めてしゅうが二人に背を向けて、ゆっくり砂利を踏み締めて歩き出した。

 しょぼんとでぃは顔を見合わせて首を捻るばかりで。


lw´- _-ノv「ああ男児よ、しっかりおやりね」

(´・ω・`)「何をですんや」

lw´- _-ノv「にやにや」

(´・ω・`)「せやから口で言いはりな」

lw´- _-ノv「ではではお稚児よ、また会おう」


 ひらひらと手を振って二人の前からゆったり姿を消した花魁しゅう。

 暫し顔を見合わせていた二人も、くすりと笑って歩き出す。


32 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:52:07.83 ID:ggcD1QkYO

(#゚;;-゚)「ほなァ……また、しょぼんはん」

(´・ω・`)「うん、また」

 階段を降りて神社の前にて立ち止まり、二人は手を振って逆方向にそれぞれ足を踏み出した。
 少しばかり暗くなった空はほんのり赤く、風は冷たく二人の頬を撫でる。
 二人の足は各々の家へと向かっていた。

 しかしすぐに足を止めて振り返り、とたとた近寄り。


(´・ω・`)「あの、これ」
(#゚;;-゚)「あの、これ」


 同時に、飴細工を差し出した。


33 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:54:07.69 ID:ggcD1QkYO

 反射的にそれを受け取ったしょぼんとでぃは、にっこり微笑んで。
 今度は本当に、帰路に就いた。



(´・ω・`)「おう、小判の飴ちゃん……渋いなぁ」


 しょぼんが歩きながら飴に掛かっていた袋を外し、出てきた小判の形をした飴。

 それは昼にでぃが嘗めていた物と同じ形で、自然と頬が緩んでいくのが自分でも分かった。


(´・ω・`)

(*´・ω・`)


(*´・ω・`)「……へへっ」



34 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:56:10.95 ID:ggcD1QkYO


 こつん、こつん、下駄を鳴らして九羽屋に戻ってきたでぃを待っていたのは


从#゚∀从


 姉女郎はいんの、仁王立ち。


从#゚∀从「まぁああああた手前は行き先も告げずによォ……」

(#゚;;-゚)「え……えろぅ、すんません……」

从 ゚∀从「ッたく、こォンのガキゃあ……あン? また飴食ってンのか」


 でぃの小さな頭を軽く叩いて溜め息を吐くはいんが、でぃの口に銜えられた飴に気付く。
 しかしその飴ははいんが渡した物ではなく、愛らしい猫の姿をしていた。

 はいんの視線に気付いたでぃは、ほんのり頬を赤くして俯く。


35 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 22:58:08.62 ID:ggcD1QkYO

从 ゚∀从「しゅうに貰ったのか? 先刻そこで会ったが」

(#゚;;-゚)「あ、いえ、そのゥ……」

从 ゚∀从「最近出番が少ねェとか何とか……って違うのか、誰に貰った?」


(#゚;;-゚)

(*#;;///)


从 ゚∀从「……米屋のガキか」

(*#;;///)「へ、へぇ……

(#゚;;-゚)「え?」

从 ゚∀从「あのショボくれ眉毛が、ほら晩飯食えなくなるから置いときなァ! さっさと入るッ!」

(#゚;;-゚)「は、はぃっ」


36 ◆tYDPzDQgtA 2008/06/01(日) 23:00:29.72 ID:ggcD1QkYO

 頭をわっしゃわしゃと掻き回されたでぃが慌てて九羽屋の暖簾を潜り、はいんが大声でその小さな背中に問いかける。


从 ゚∀从「でぃッ! 手前は今ァ幸せかいッ!?」

 そして、それに負けないくらいの大声で


(#゚;;-゚)「へぇっ! うちは毎日しあわせですぇっ!!」


 笑顔を見せながら答える、お稚児でぃ。


 その笑顔はとても幸せそうに、飴を片手に輝いておられた。



おしまい。

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