3 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:21:30.47 ID:Vgqsgj6FO

 風はまだ少しつめたい。
 自然が多い、ちょびっと田舎の町。

 わたしは、ミセリは、転校生です。

 お父さんの都合でこの町に引っ越してきた、わたし達。
 にほどき、とかあいさつ、とかで忙しかった数日間。

 そんな忙しい日々が過ぎて、新しい学校にも少しだけ慣れた。
 最初はとまどったけど、なれてしまえば楽しい、この町での生活。

 転校生って事もあって、学校のみんなの中心になったりしたけれど
 今はもう、お友だちも少し出来た。
 勉強はここでも前の町でも好きじゃないけど、みんなと遊ぶのは楽しい。
 今まで知らなかった事、気づかなかった事を知れるのは楽しい。

 ようするに、ミセリは、わたしは、新しい町が気に入ってる。


 気に入って、た。


4 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:23:34.19 ID:Vgqsgj6FO

 田んぼがある。
 畑がある。
 山がある。
 森がある。

 都会の方から引っ越してきたわたしにとって、この世界はとてもシンセン。
 目にうつるの、みんな楽しくて面白くて。

 花かんむりを作るのも、虫をつかまえるのも、みんなみんな楽しかった。
 学校の友達とお喋りするのも、校庭を走り回るのも、みんな楽しかった。


 なのにどうしてなんだろう。
 みんな仲良しに見えたのに。

 どうしてなんだろう。



(;´・ω・`)「や、やめて、よ……」

( ^Д^) 「ショボくれ顔がなんか言ったぞー!」
  _
( ゚∀゚)「きこえませーん!」


5 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:25:16.10 ID:Vgqsgj6FO

(;´・ω・`)「や、やめ、」

( ^Д^)「また喋ったぞこいつ! ショボくれ顔のクセに!」
  _
( ゚∀゚)「くっせー! 喋ったらショボくれ菌がくっつくだろ!」



 どうして、なんだろう。
 男子の一人が、いじめられてるのは。

 クラス中のみんなして、彼を無視したり物を隠したりするのは。


 むしょうに、ムカムカした。
 ワケがわからなくて、イライラした。

 いじめてる理由とか知らないし、知りたくもないし
 でも、ムカムカイライラしたから、無視できなくて。

 わたしは良い事をしたいんじゃない、悪い事もしたくない。
 なのに、何でなんだろう。


8 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:27:43.29 ID:Vgqsgj6FO
 どうして、


ミセ#゚−゚)リ「やめなさいよ! ショボン君がなにしたっての!?」


 どうして、


( ^Д^)「おい転校生がショボンのミカタしたぞ、どーするー?」


 どうして、

  _
( ゚∀゚)「おいお前らー! 転校生に近づいたらバイキンうつるぞー!」


 どうして


( ・∀・)「ほらショボン、お前もボールぶつけろよ!」


 どう、して


(´・ω・`)「う、うん……」

9 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:30:08.03 ID:Vgqsgj6FO

 ねぇ、ちょっと、神様。

 わたしが、そんなに悪い子だっての?

 そりゃ良い事をしたつもりはないよ。
 でも、悪い事をしたつもりもないよ。

 なのに神様、あんたはわたしをこんな目にあわせるわけね。
 それとも、わたしがした事は悪い事だって言いたいわけ?

 バカにしないでよ、そりゃ頭はよくないけど、バカにしないでよ。
 友達がボールぶっつけられたり、悪口言われて泣いたりしてるのよ。
 それを無視するのが良い事だっての?

 ねぇそうなんでしょ神様。
 そうじゃなきゃ、そうじゃなきゃ、

 そうじゃなきゃ、


( ^Д^)「うらっ! 泣け泣けー!」
  _
( ゚∀゚)「泣き虫転校生ー! おらぁっ!」



 わたしがいじめられる理由、わかんないよ。


10 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:33:18.62 ID:Vgqsgj6FO

 どうしてよ神様、あんた何がしたいのよ。
 友達が、友達、友達を、わたし、


ミセ#;−;)リ「〜〜〜〜ッ!!」
  _
( ゚∀゚)「転校生が泣いたぞー! だっせー!!」

( ^Д^)「はははっ! 泣き虫ミセリー!」

(´・ω・`)「あ、はは……は」



 なんなんだよ、なんなんだよう。

 わたし、そんな、こんな、悪い子、な、わけ。

 くそう、くそう、くそう、バカにしないでよ、バカにしないでよ、くそう。

 わけ、わかんないよ。もう。


12 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:36:08.92 ID:Vgqsgj6FO

 男子はわたしにボールをぶつけて笑う。
 女子はわたしを指差して笑う。

 なんなん、だよ。くそう。



(´・ω・`)「え、いっ!」

ミセ − )リ「ぎゃうっ!? ……あ……い、た……っ、」

( ^Д^)「あ、顔面はいった」
  _
( ゚∀゚)「うわやっべー、ちょっとまじーんじゃねー?」

( ^Д^)「しーらねっ」

(;´・ω・`)「あっ、ご、ごめっ」

ミセ − )リ「……」



 みんな、みんな、でっきらい。


14 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:39:13.76 ID:Vgqsgj6FO

 顔が痛くて、熱くて。
 顔をあげたら涙とか、もっと溢れそうで。
 わたしは、何も言わずにうつむいてた。

 でも、わたしはそんなに我慢強くないから。
 頭、よくないから。

 足元に転がってるボールを拾って
 向こうをむいた男子の背中めがけて

 思いっきり、投げつけた。


  _
(#゚∀゚)「っでぇ!? なっにすんだよ!!」
  _,,
ミセ#;Д;)リ「あんたが言ってんじゃねー!!
     わたしがなにしたっての!? こんな目にあうよーな事したの!?」

( ^Д^)「うっわ転校生がキレた! 逃げろー!!」


 くすくす笑う声、わたしを指差して笑うみんな。

 見て泣いてる、ひどい顔、よくやるわ、バカみたい。


15 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:42:39.82 ID:Vgqsgj6FO
  _
(#゚∀゚)「いてぇじゃねーかッ
  _,,
ミセ#;Д;)リ「うるさいうるさいうるさい!! うるさいバカぁ!!
     嫌い嫌い、でっきらい!! あんたらみんなでっきらいだあ!!!」



 大きな声で、声をひっくり返しながら叫んだ。
 顔を真っ赤にして、涙と鼻水でぐちゃぐちゃにして、みんな吐き出した。

 みんな吐き出したわたしはそのまま回れ右をして、校庭から飛び出す。
 荷物をみんな置いたまま、わたしは学校から出ていった。

 あんなとこ居たくない。
 みんな、きたない。
 あんなとこ、でっきらい。


 みんな驚いた顔をしてた。
 でもそんなの知らない。

 みんな、嫌いになっちゃったから。


16 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:45:54.82 ID:Vgqsgj6FO

 走って家に帰ってたわたしは、疲れて走るのをやめた。
 とぼとぼ歩きながら、泣きじゃくりながらの帰り道。
 昼間だけど、近所の人はいなかった。

 誰にも見付からないのは嬉しい事なのか、そうじゃないのか、わからない。
 でも、泣いてるとこはあんまり見られたくないから、嬉しい事なのかも。


 どろどろに汚れた服。
 あちこちに出来た傷。
 それがどんな意味を持つカッコかなんて、わたしは知らない。

 わたしは頭はよくないし、考え事はニガテ。
 けど、勇気とか根性とかは、ちょっとは持ってるんじゃないかと思う。
 それがイコール強さって事じゃないし、わたしは弱いし、すぐ泣くし、子供。

 でも、子供には子供なりの意地みたいなのが、あるんだと思う。
 難しい事はわかんないけど、負けたくないって気持ちは、あるんだ。


 でも、子供だからすぐ泣いて、怒って、ムキになる。
 わたしは、ミセリは、まだ小学三年生だから。


18 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:48:56.60 ID:Vgqsgj6FO

 だから、家に帰ったわたしがお母さんに泣きつこうとして、


('、`#川「まぁ! 学校はどうしたのミセリ!?
     こんな時間に、またそんなに服を汚して! いい加減になさい!!
     そんな悪い子はどっか行っちゃいなさい!!」


 お母さんに思いっきり叱られて、わたしの中いっぱいに詰まった嫌なものが。
 気持ち悪い暗くて黒いぐろぐろしたものが爆発してしまうのも、
  しょうがないと、思う。

 お母さんに叱られるのはいつもの事。
 だからお母さんも、いつもの感じで怒ったんだと思う。

 でも、今のわたしには、それがとんでもなく嫌で。
 嫌で嫌で。

  _,,
ミセ#;Д;)リ「お母さんのばかぁあっ! でっきらいだぁぁあっ!!」


 こうなるのも、しょうがないんじゃないか、なんて。
 でもきっと、これはわたしが悪い子。


21 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:51:46.72 ID:Vgqsgj6FO

 玄関でお母さんに叱られたわたしは、きびすを返して、今度は家を飛び出す。
 そして疲れたはずの足が向かった先は、家の裏手にある、森だった。

 誰もいない、泣ける場所。
 頭のはしっこでそう思っただけだったのに、わたしの足はまっすぐ森に。

 ただ大きな声でわんわん泣きたかった。
 それだけだった。


 そうして、わたしは森の中に飲み込まれてゆく。

 昼間でも薄暗い森の中は、とても静か。
 鳥の声も聞こえないくらいに静かな森の中、わたしの声や足音ばっかり響く。

 森の奥に走っていって、走っていって、息が切れて走れなくなった頃。
 わたしはその場に突っ立って、上を向いて、声を上げて泣いた。

  _,,
ミセ#;д;)リ「うわあぁあぁぁぁあんっ!! うああぁぁぁぁあぁあんっ!!」


 バカみたいに、泣いた。
 涙はどんどん溢れて、止まらなかった。


24 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:54:04.11 ID:Vgqsgj6FO

 ムカムカする。
 わけわかんないけど、ムカムカする。
 みんなにムカムカしてるのか、お母さんにムカムカしてるのか
 わかんないけど、ムカムカする。

 だから大声で泣いて、泣き叫んで、泣きじゃくって。
 胸の空気がなくなるまで泣いて、頭がくらくらして痛い。

 静かな森の中には、鳴き声ばっかりがあふれてた。

  _,,
ミセ#;д;)リ「うわああぁぁぁぁぁあん!!」

 『うわーん うわーん!』
  _,,
ミセ#;д;)リ「ひっ、ぇぐっ、えうっ、う、うあぁぁぁぁぁん!!」

 『うわーん うわーん!』
  _,,
ミセ#;д;)リ「みんなみんなっ、でっきらいだあぁぁぁぁあ!!」

 『みんな嫌いなノーネ! 大っ嫌いなノーネ!』



 あれ。


27 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 20:57:06.15 ID:Vgqsgj6FO

 わたしの泣き声にかさなって聞こえる、泣き声。

 上に向けてた顔を前に向けなおして、わたしは服の袖で顔を拭いた。
 鼻水をすすって咳をして、泣くのを止めたけど、まだ声は聞こえる。


 『うわーん! うわーん!』


 子供みたいな、高い声。
 わたしのほかに、ここで泣いてる子がいる。

 それに気づいたわたしは、赤くなった顔を撫でて、声のする方へ歩き出した。
 誰だろう、こんな場所で泣いてるの。
 何かあったのかな、わたしみたいに、いじめられたのかな。

 もしそうなら、なんか、ほっとけない。

 ひたひた、草の生えた地面を歩く。
 声がする方に、声がする方に。

 振り返ることもせず、わたしは森の中、奥へ奥へと。



29 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:00:16.28 ID:Vgqsgj6FO



 さっきよりも緑色が明るい。
 変な模様のキノコがいっぱい生えてる。
 よくわかんない生き物の声も聞こえるようになった。


 ここはどこ
 泣き声が近い

 わたしは、ミセリは、森の奥へ奥へ進んで、変なところに来てしまった。



  【ミセ*゚ー゚)リ 変な森のようです】



 泣き声が、ちかい。



32 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:02:54.52 ID:Vgqsgj6FO


 ミセリが歩けば歩くほど、周囲の景色は異様な物へとなって行く。

 深い緑の木の根本には、ゼンマイに似た、紫の植物。
 その隣には、赤に白い斑点のあるキノコ。
 樹になる物は、青くて四角い木の実。
 背の低い木々の隙間からミセリを見つめる、無数の目玉。

 ミセリはそれに気付いてはいるが、見向きもせずに、ただ歩くだけ。
 奇妙としか言い様の無い景色よりも、泣き声の主が気になる。
 そう言わんばかりの、真っ直ぐでしっかりした足取り。

 時折躓いて転びそうになるが、それでも真っ直ぐに進む足。
 声に近付いては居るのだが、なかなかその声の主に辿り着けない。

 ミセリは自身の赤いスカートをぎゅっと握り、疲れた足を動かしていた。


 そして、見付けた。



   wwWwwww
,,,w(_(_wWwww
,,wwしし'wwwWwww,,,


 なんだこれ。

35 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:05:46.90 ID:Vgqsgj6FO

ミセ*゚−゚)リ「……」

 『うわーん! うわーん!』
  _,,
ミセ*゚−゚)リ

 草むらから突き出された、尻。
 緑色の尻。

 ミセリはその尻の前にしゃがみ込んで、まじまじと見詰めてみた。

  _,,
ミセ*゚−゚)リ(なんじゃこりゃ)

 眉間にシワを寄せ、尻を見つめる。穴があくほど。
 尻は震えていて、草むらの中からはわんわんと泣き声が聞こえている。
 奇妙だった。

  _,,
ミセ*゚−゚)リ(泣き声の正体……だよね、これ…………なんじゃこりゃ)

 『うわーん! うわーん!』
  _,,
ミセ*゚−゚)リ(みちとのそーぐー……)

 『うわーん! うわーん!』
  _,,
ミセ*゚−゚)リ(……こんな時どんな顔すればいーかわかんないよ……)

37 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:07:42.01 ID:Vgqsgj6FO

 暫くの間、そのまま尻が泣くのを見つめていたミセリだったが、意を決して
 そろそろ、と手を伸ばして、指先を尻へと近づけて。

 つん、と尻たぶを人差し指で押した。


三 ノAヽ)そ ガサッ
  _,,
ミセ*゚−゚)リそ

( ノAヽ)

ミセ*゚−゚)リ

(;ノAヽ)

ミセ*゚ー゚)リ

(;ノAヽ)

ミセ*゚ヮ゚)リ「何こr

(;ノAヽ)「人間なノーネ──────ッ!!?」

ミセ;゚−゚)リ「ぇあっ!?」


39 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:10:16.50 ID:Vgqsgj6FO

 尻をつつかれて、草むらから顔を出した、緑色の生命体。
 50cmほどの大きさのそれは、
 猫とも犬とも言えない、少し変わった形の耳が丸い頭に生えていた。

 そして細くて垂れた様な目、口。不思議な顔。
 初めて見る奇妙な姿、人の言葉を話せる、何か。

 目を真ん丸にしたミセリを見るや否や、甲高い声で叫んだそれは、
 勢い良く立ち上がって、ぴゃーっと走り出した。


ミ(   ノ)そ「あだっ!」


 が、転んだ。


43 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:12:26.92 ID:Vgqsgj6FO

ミセ*゚ー゚)リ「……大丈夫?」

(;ノAヽ)「こ、こっち来んなノーネ! ノーネはまずいノーネ!」

ミセ*゚ー゚)リ「まずいの? 食べたことあるの?」

(;ノAヽ)「な、ないけど、たぶんまずいノーネ……」

ミセ*゚ー゚)リ「……」

(;ノAヽ)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「足ズッコケしてたけど、怪我ない?」

(;ノAヽ)「……あるノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「見せてみ」

(;ノAヽ)「イヤなノーネ! 油断させてノーネを食べるきなノーネ!」

ミセ*゚ー゚)リ「まずいんでしょ、食べないよ」

(;ノAヽ)「まずくないなら食べるノーネ!?」

ミセ*゚ー゚)リ「だってお肉は美味しいよ?」

(;ノAヽ)「……美味しいけど……」


46 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:14:20.45 ID:Vgqsgj6FO

 地面にへたり込んだまま後退りをする緑色の生物に近付き、
 ミセリはひょい、とその顔を覗き込んだ。
 手を伸ばして、垂れた目元に涙の後が残る生物の頭をつつく。
 つつかれる度にビクンと身体を震わせて、怯えた顔でミセリを見上げる生物。

 なんだかおかしいの。
 いちいち怯えた様な反応を見せる生物にミセリは笑い、頭をぐりぐり撫でた。

 そして視線を落としてみれば、緑の膝に赤い血がうっすらと滲んでいる。
 転んだ時に擦りむいたのか、血と肉が顔を覗かせていた。


ミセ*゚ー゚)リ「擦りむいてる、痛くない?」

( ノAヽ)「……痛いに決まってるノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「そりゃそうだ」

(#ノAヽ)イラッ


48 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:17:13.21 ID:Vgqsgj6FO

 ポケットからティッシュと絆創膏を取り出したミセリは、
 座ったままミセリを見上げる生物の膝を、ティッシュで拭いてから
 ぺたり。ファンシーなピンクの絆創膏を、傷にはっつけた。

 消毒も何もしていないから、逆効果になるかも知れないが。
 ミセリは傷に絆創膏を貼ったと言う事に、満足げに笑う。


ミセ*゚ー゚)リ「はい、これでオッケー」

( ノAヽ)「痛いし動きにくいからなんにもオッケーじゃないノーネ」

ミセ;゚ー゚)リ「あんたワガママね」

(#ノAヽ)「うるさいノーネ、ギゼンシャ」

ミセ#゚ー゚)リ「怒るよわたし」

(#ノAヽ)「オマエが怒るのはスジチガイなノーネ」
  _,,
ミセ#゚д゚)リ「何だとこんなろ!」


50 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:19:58.71 ID:Vgqsgj6FO

(#ノAヽ)「何なノーネ! ギゼンシャなんかあっちいけなノーネ!」
  _,,
ミセ#゚д゚)リ「別にわたしは良い事したつもりなんかねーわよ!」

(#ノAヽ)「そー言っててもそれはただのイイコトの押し売りなノーネ!」
  _,,
ミセ#゚д゚)リ「ぬあっ!? あ……あんた性格悪いわよ!?」

(#ノAヽ)
  _,,
ミセ#゚д゚)リ

( ノAヽ)

ミセ ゚−゚)リ

( つA)

ミセつ-)リ


 ミセリと緑の生物は、静かに静かに項垂れた。


53 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:23:33.81 ID:Vgqsgj6FO

( つA)「……ノーネは性格わるいノーネ……だからこんなんなノーネ……」

ミセつ-)リ「偽善者……じゃないもん、違うもん……」

( ノAヽ)「で、ニンゲン」

ミセ*゚−゚)リ「何? 変なの」

(#ノAヽ)「変なのじゃないノーネ、ノーネはノーネなノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「ノーネって名前?」

(#ノAヽ)「名前いがいに何なノーネ!?」

ミセ*゚ー゚)リ「わかんないよそんなの」

(#ノAヽ)イラッ

ミセ*゚ー゚)リ「変なのー」

(#ノAヽ)「もう黙れなノーネ、オマエ嫌いなノーネ」
  _,,
ミセ*゚Д゚)リ「えー」

(#ノAヽ)「えーじゃないノーネ」


56 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:25:52.37 ID:Vgqsgj6FO

ミセ*゚ー゚)リ「びー」

(#ノAヽ)「黙れなノーネ、アタマの中スッカスカニンゲン」

ミセ ゚−゚)リ

(#ノAヽ)

ミセ ゚−゚)リ「ごめんなさい」

(#ノAヽ)「許さないノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ許してもらうためにお家まで送ってくね!」

(#ノAヽ)「さわるなノーネ! ニンゲン臭いノーネ!
      その前にオマエみゃくらくってわかるノーネ!?」

ミセ*゚ー゚)リ「難しい言葉はわかんない、お家どっちー?」

(#ノAヽ)「オマエ、アタマ悪いノーネ!?」
  _,,
ミセ#゚д゚)リ「どーせ頭よくないわよ!」

(#ノAヽ)「むぎー! なんかこいつイライラするノーネ!」


58 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:28:13.58 ID:Vgqsgj6FO

 膝に可愛らしい絆創膏を貼られた生物、ノーネをひょいと持ち上げる。
 にいぐるみの様な大きさのノーネは、ミセリから逃げようともがいていた。

 人間が嫌いらしいノーネのその反応に、ミセリは眉を寄せて、言葉を荒くする。
 けれどノーネの態度は変わる事なく、ミセリの頭を叩いて罵倒するばかり。

  _,,
ミセ#゚д゚)リ「怪我人はじっとしてなさいよ!」

(#ノAヽ)「怪我させたの誰なノーネ!」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、わたしか」

(#ノAヽ)「ほんとにスッカスカなノーネこいつ」

ミセ#゚ー゚)リ「もースカスカで良いからじっとしてなさいよー」

(#ノAヽ)

( ノAヽ)「じっとしてやらない事もないノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「よしよーし」


59 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:30:44.40 ID:Vgqsgj6FO

 ぴたり、と動きを止めて、ノーネは大人しくなった。

 両腕でノーネを抱き抱え、歩き出すミセリ。
 その振動を感じながら、ノーネは細い目をつむって
 ミセリの細い腕に頭を押し付け、僅かに甘えるような仕草を見せる。


 不思議な生物であるノーネ、それを抱えるミセリは、
 少しだけ誇らしい気分になっていた。

 犬でも猫でもない、人の言葉を話す不思議な生物。
 それと触れ合い、会話をした事。
 それらはミセリの好奇心等をほんのりと満たし、
 自分が他の人間よりも少し、特別な事をしていると言う、奇妙な充実感。

 子供らしい、意味のないエゴ。
 しかしそのエゴは、ミセリの自信。

 意識していなくても溢れる自信は、ミセリをひたひた満たしていた。

 怖がられてると思ったけど、何だかんだで仲良くなれる。
 こうなら、他の誰とでもきっと仲良くなれる。


 そんな、勘違い。



61 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:32:33.04 ID:Vgqsgj6FO

ミセ*゚ー゚)リ「ねぇ、あんたみたいなの、いっぱい要るの?」

( ノAヽ)「いるノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「へー、そうなんだ。みんなあんたみたいな顔?」

( ノAヽ)「……違う、ノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「? そうなんだ」

( ノAヽ)「それよりオマエ、なんていうノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「わたし? わたしはミセリだよ」

( ノAヽ)「変な名前なノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「何だとこんなろ」

( ノAヽ)「ニンゲン臭いノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「人間だもん」


63 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:34:46.74 ID:Vgqsgj6FO

 とことこ、ミセリの足音が森に響く。
 景色はやはり、森の入り口とはまるで違う、奇妙な物。
 鬱蒼と繁る背の低い木々、時折見かける奇妙な生き物、奇妙な植物。

 けれどミセリの目は奇妙なそれらを追う事はなく、異様なまでに落ち着いていた。


( ノAヽ)「なんでニンゲンがここに居るノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「あんたの声が聞こえて、森に入ってったらここに居たの」

( ノAヽ)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「ん?」

( ノAヽ)「何でもないノーネ、静かにしてろなノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「あのさ」

(#ノAヽ)「オマエ、ノーネのハナシ聞いてないノーネ?」

ミセ*゚ー゚)リ「なんで泣いてたの?」

( ノAヽ)

( ノAヽ)「でりけいとなコトを聞くななノーネ」


64 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:36:40.82 ID:Vgqsgj6FO

ミセ*゚ー゚)リ「んー、わかった」

( ノAヽ)

( ノAヽ)「なんかキモチワルいノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「失礼だ」


 腕の中でそっぽを向くノーネと会話をし、道案内をされながら歩く。

 暫く歩くと、森の中の獣道は少しずつ広くなって行き、
 最終的には普通の道と変わらない程の広さと平らさになった。

 森に入ってすぐに比べると、非常に歩きやすくなった道。
 見て分かる、しっかりとした、草の生えない一本道。

 その道を黙々と歩き続けていると、ミセリの耳に声が届く様になった。
 ノーネの声に似た、甲高い声は複数。
 その声はノーネにも聞こえたのか、顔と身体が強張るのが分かった。


ミセ*゚ー゚)リ「もうすぐつくの?」

( ノAヽ)「……つくノーネ」


66 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:38:42.37 ID:Vgqsgj6FO

 微妙に歯切れの悪いノーネの返事に首を傾げて、ミセリが木の枝を避けた時。

 ミセリの目に飛び込んできた物は、小さくてまるっこい、奇妙な生物達。

 色とりどりのまるっこい、ノーネに似た形の生物達は
 短い手足を動かして、せこせこ忙しそうに動き回っている。
 耳の形はノーネとは違うが、ミセリは目を丸くして、嬉しそうに声をあげた。


ミセ*゚ヮ゚)リ「わー! 何これ、かわいー!」

(;ノAヽ)「あっ、バっ」

(*゚ー゚)「……ニン、ゲン……?」

(;ノAヽ)「あ」

(;゚ー゚)「いやー! ニンゲンっ、ニンゲンだよっ!」


ミセ;゚ー゚)リ「え? え?」

(;ノAヽ)「あー……」


67 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:41:11.03 ID:Vgqsgj6FO

(;,゚Д゚)「おい逃げろ! ニンゲンだぞ!」

(;´_ゝ`)「ノーネがニンゲンをつれてきたぞ!」

(´<_`;)「あいつ、また余計なコトを!」


 ミセリが姿を見せた瞬間、悲鳴をあげて散り散りになって逃げて行く生物達。
 その口々には、ミセリやノーネに大しての罵倒等が含まれていて。

 嬉しそうにしていたミセリは、突然の事に焦りを隠せず
 ただただ困惑した顔で、逃げて行った生物達を見詰めていた。


ミセ;゚ー゚)リ「な、なに? なにこれ?」

(;ノAヽ)「……なノーネ……」

ミセ;゚ー゚)リ「へ?」

(;ノAヽ)「……ニンゲン、嫌われてるノーネ……」

ミセ;゚ー゚)リ「んぇぇっ? それ先に言わないっ?」

(;ノAヽ)「言えなかったノーネ……」

ミセ;゚ー゚)リ「うぇぇぇぇ……ど、どう、しよ……」


68 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:44:02.26 ID:Vgqsgj6FO

ミセ;゚ー゚)リ「え、え、ちょっと待って、何で」

(;・∀・)「で、出てけニンゲン! ここに何の用だ!」

ミセ;゚ー゚)リ「あの、その、用って言うか、あの……」

(;・∀・)「うううるさい! ニンゲンなんかに負けないんだからな!」

ミセ;゚ー゚)リ「ちょ、ちょっと助けてノーネ、あいたっ!」


 小さくまるっこい、猫に似た姿の生物が投げた小石は、ミセリの顔に当たる。
 それを皮切りに、逃げて遠巻きにミセリを見ていた生物達は、
 次々にミセリへと小石を投げ始めた。


ミセ;゚ー゚)リ「いたいっ、痛いってば! ミセリが何したのよぉっ!」

(;ノAヽ)「や、やめ、やめるノーネっ! このニンゲンワルくないノーネ!」

(;・∀・)「うるさい! オマエがニンゲン連れてきたんだぞ! あっち行けっ!」

(;ノAヽ)「あでっ! やめるノーネ! いたいノーネ!」

ミセ;゚ー゚)リ「ちょ、ノーネは悪くないでしょ! ノーネ怪我してんだか痛っ!」


70 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:46:28.13 ID:Vgqsgj6FO

 帰れ、出て行け、と言う甲高い叫び達を聞いたミセリは、
 腕の中のノーネを庇うようにうずくまり、ぶつけられる小石に小さく悲鳴を上げる。

 色とりどりの生物達が罵声と小石を浴びせる中、
 ある一匹が、輪の中へと入ってきた。


(;`ー´)「おい何してるんだ! コイツらワルいコトしてねーんじゃネーノ!?」

( ノAヽ)「ぁ……」

(;`ー´)「大丈夫かノーネ、怪我してるんじゃネーノ?」

( ノAヽ)「……へーきなノーネ、あっち行けなノーネ!」

ミセ;゚ー゚)リ「いやいや平気じゃないよ! やだもー助けて!」

(;`ー´)「オマエらもうやめろって言ってんじゃネーノ!
      ワルさして無いのにそれはひどいんじゃネーノ!?」


73 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:49:13.86 ID:Vgqsgj6FO

(;・∀・)「け、けど……」

(;`ー´)「ニンゲンだからってイジメるのは違うんじゃネーノ?
      おいニンゲン、ノーネ、大丈夫か?」

( ノAヽ)「……」

ミセ;゚ー゚)リ「う、うん……ありがと……ほらノーネも」

(ノAヽ 三 プイス

ミセ;゚ー゚)リ「ノーネっ」

(ノAヽ )「……」

( `ー´)「……構わネーノ、大丈夫なら良いや」

ミセ;゚ー゚)リ「ありがと……わたしミセリ」

( `ー´)「オレはネーノ、ノーネをありがとな」

ミセ*゚ー゚)リ「……ううん」


74 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:52:29.27 ID:Vgqsgj6FO

 ノーネによく似た、他の生物よりもノーネに近い姿の、ネーノ。
 同じ形の耳を持つノーネとネーノは緑色で、背丈や大きさもよく似ている。

 そんなネーノの一喝でおさまった、小石の雨。
 ネーノに助けられたミセリはノーネを地面におろして立ち上がり、にっこりと笑った。

 他の誰よりも好意的な言葉を投げ掛けてくれたネーノの頭を撫で、
 ミセリは周囲を見回して、少しだけ表情を曇らせた。


ミセ*゚−゚)リ「……嫌われてんだね、ミセリ」

( `ー´)「オマエがじゃなくて、ニンゲンが好かれてネーノ……」

ミセ*゚−゚)リ「……なんで?」

( `ー´)「……え、と…………あ、村長んとこ、行かなきゃいけネーノ」

ミセ*゚−゚)リ「村長?」

( `ー´)「ん、ミセリもついてこい」

ミセ*゚−゚)リ「わかった、行ってくんね、ノーネ」

(ノAヽ )「……」


75 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:54:42.00 ID:Vgqsgj6FO

(ノAヽ )「……」

『イヤなヤツ』

(ノAヽ )!

『ノーネは余計なコトばっかり……』

(ノAヽ )

『ネーノと大違いだ』

( A  )

『どっか行っちゃえばいいのに』
  ,,_
( A  )

『ノーネなんかキライだ』
  ,,_
(つA宦@)


『ネーノだけならよかったのに』
  ,,_
:(つA宦@):


77 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:57:08.20 ID:Vgqsgj6FO

 ネーノに連れて行かれた場所は、ミセリから見ると、小さな小さな小屋だった。
 けれど他の小屋よりも少しばかり大きなそこ。

 こんこん、小さな木製のドアをノックしてから、ネーノはがちゃりとドアを開けた。

 ログハウスの様な、木で作られた小屋。
 その中にある、机や椅子といった家具も、全てが木製。
 一見、人のそれと変わらない小屋、家具、内装。

 けれどもそれら全ては非常に小さく
 子供のミセリでも、小さなドアをくぐるのに身体を縮めなければいけなかった。


 小さなドアから狭い小屋に入ると、小屋の中央には小さいけれど大きな机。
 机の向こう側には椅子。
 その椅子に座るのは、白くてまるっこい、柔和そうな顔をした生物だった。


( ´∀`)「……騒がしいと思ったら、ニンゲン、モナか……」

( `ー´)「ん、森に迷い込んじまったらしくて……」


79 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 21:59:12.45 ID:Vgqsgj6FO

ミセ*゚ー゚)リ「あ、ぇと、その……」

( ´∀`)「申し遅れましたモナ、モナはモナー……ここの村長モナ」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、み、ミセリ……です」

( ´∀`)「……よろしくモナ」

ミセ*゚ー゚)リ「……こちら、こそ」

( ´∀`)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「……」

( `ー´)「オマエら喋れ」


 椅子に座る白い村長、モナー。
 それに向かい合う様にして、床に正座するミセリ。
 二人から少し離れた場所に立つネーノは腕を組み、二人の様子を見守っていた。

 モナーは何かを探るような目でミセリを見詰め、言葉を発しない。
 そんな眼差しを受けるミセリは、喋るに喋れず、居心地悪そうに視線を外す。

 そうしてたっぷりの間を空けてから、モナーが口を開いた。


81 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:01:14.68 ID:Vgqsgj6FO

( ´∀`)「みんなが、ご迷惑をお掛けしましたモナ
      お怪我はありませんモナ?」

ミセ*゚ー゚)リ「は、はひっ、わたしは大丈夫れすっ」

( ´∀`)「なら良かったモナ、どうかみんなを嫌わないでやって下さいモナ
      みんな、突然ニンゲンがやってきて、驚いたんですモナ」

ミセ*゚ー゚)リ「は、はぁ……」

( ´∀`)「……ところでミセリさん、は……どうしてここに?」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、それが、その」


 ゆったりと、それでもしゃんとしたモナーの喋り方に、ミセリは思わずかしこまる。
 モナーの問いに肩をきゅっと縮めながら口を開き、
 ミセリは辿々しく、モナーに事の経緯を話始めた。


 森に入ったら聞こえた泣き声。
 その泣き声の主を探して進んだ森の中。
 ノーネと出会い、さらに進んだ森の中。
 そうして見つけた村と住人。


83 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:03:58.30 ID:Vgqsgj6FO

 全てを聞き終えた頃、静かにミセリの声を耳から頭へ納めていたモナーは
 小さな手で頭を抱え、がっくりと項垂れてしまった。


( ´∀`)「……ノーネを助けていただいて、ありがとございますモナ」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、や、その、怪我させたの……ミセリ、だから……」

( `ー´)「でも、手当てしてくれたんじゃネーノ?」

ミセ*゚ー゚)リ「そう、だけどぉ……」

( ´∀`)「…………ミセリさん、言わなきゃいけない事がありますモナ」

ミセ*゚ー゚)リ「は、ひ?」

( ´∀`)「一つ、ここはミセリさんの世界とは違う世界モナ」

ミセ*゚−゚)リ「へ?」

( ´∀`)「それと、もう一つ」


( ´∀`)「元の世界には戻れませんモナ」



84 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:06:33.97 ID:Vgqsgj6FO

ミセ*゚−゚)リ「……は、?」

( ´∀`)「これはモナたちが原因ではなく
      そして、モナたちにどうこう出来る事でもありませんモナ」

ミセ*゚−゚)リ「……ちょ、待っ、て……よ」

( ´∀`)「けれどミセリさんがここに来た原因は、ノーネ
      その事に関しては、非常に申し訳なく思いますモナ」

ミセ*゚−゚)リ「へ……ぅ、あ……?」

( `ー´)「ミセリ、大丈夫…………じゃ、無さそうじゃネーノ……」

ミセ*゚−゚)リ「わたし……ミセリ……どう、なるの……?」

( ´∀`)「……この世界で生きる、しか……ありませんモナ」

ミセ*゚−゚)リ「……ぁ……ぇ……?」

( `ー´)「ミセリ、とりあえず落ち着いたら良いんじゃネーノ……
      ……や、落ち着けねーか……」

ミセ*゚−゚)リ「……は、ぅ……ミセリ……ここ、で……?」


88 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:09:33.93 ID:Vgqsgj6FO

 突然モナーに告げられたそれは、ミセリの背筋をきん、と冷やした。

 あまりにもあっさりとした言葉、その意味をなかなか理解できなくて
 ミセリは目をまんまるに見開き、赤いスカートの裾を、ぎゅうう、と握りしめた。

 頭の芯から走り抜ける、冷たくて静かでぼんやりとした何か。

 その何かはミセリの頭の中をぐちゃぐちゃに冷たくかき混ぜて、
 言葉にすらならない、自問自答を繰り返させる。


 違う世界? もう帰れない? 何、それ 何それ?

 ミセリはもう、お家に帰れないの?
 お家に、お家に 帰れ、ない?

 うそ、うそうそ、うそだよそんな
 ミセリ、ミセリは、お家に

 お母さんに



  ( ('、`#川『そんな悪い子はどっか行っちゃいなさい!!』 )



 ぁ─────。

89 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:12:11.66 ID:Vgqsgj6FO

 頭の中をぐるぐる巡っていた絶望感は、
 不意に思い出した母の言葉と顔によって、煙の様に掻き消えた。

 そうしてがくりと項垂れ、目を見開いていたミセリの口許は、へらり。
 ひどく子供らしくない笑みを浮かべて、ミセリは顔を上げた。


ミセ*^ー^)リ「ぁ、あは、あはははっ、べっ……別に平気だよっ!」

( `ー´)「ミセリ……?」

ミセ*^ー^)リ「べ、つに、ほらっ! 森の中も悪くないしさっ!
     ほら、えと、その……探してみるっ! 元の世界に帰る方法!」

( ´∀`)「……」

ミセ*^ー^)リ「だからっ、そんな顔しないでさ! ミセリへーきへーき!
     もし元の世界に帰れなくたって、ミセリ平気っ! ねっ!」

( ´∀`)「ミセリ、さん」

ミセ*^ー^)リ「あはっ、あはははっ! ここのが元の世界より楽しそうだしっ!
     あははははっ! あははははははっ! あはははははぁはははっ!!」


91 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:14:21.52 ID:Vgqsgj6FO

( `ー´)「ミセリ、」

( ´∀`)「ネーノ」

( `ー´)「……ん」

( ´∀`)「…………ミセリさん、元の世界に戻る方法を探すなら、
      森の中を歩いてみると、良いかもしれませんモナ」

ミセ*^ー^)リ「ぁは、は、あははっ、森? 森を歩くの?」

( ´∀`)「はいモナ、森の中には色んな物がありますモナ
      この世界のモノ、別の世界のモノ、モナ達にも把握しきれない、色んなモノ」

( `ー´)「その何かの中に、ミセリが帰る手掛かりになる物があるかもしれネーノ」

( ´∀`)「……しかし森の中は広くて果てしないモナ
      夜になれば真っ暗で寒く、肉を食う獣もうろうろしてますモナ」

( `ー´)「つまり、元の世界に戻るために森をうろつくのは、危険がイッパイだ」

( ´∀`)「ミセリさん、どうしますモナ?
      この世界で生きて行くなら、モナ達が家を建てて暮らせる様にしますモナ」


93 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:17:04.62 ID:Vgqsgj6FO

 モナーとネーノの言葉は真摯で、ミセリの事をひどく気遣っての言葉だった。

 けれどミセリの頭には、
 自暴自棄となって笑い転げるミセリには、その言葉達はろくに届きはしなくて。

 今はただ一人になりたい。

 無性に泣きじゃくりたいと思ったミセリは、へらりへらり
 上っ面ばかりの笑みを浮かべて、手を振った。


ミセ*^ー^)リ「あんがとっ! でもミセリは森を歩いてみる!
     色んなモノを見たいし、危なくなったら走って逃げるし! あはははっ!」

( `ー´)「ぁー、……ぅ」

( ´∀`)「ネーノ」

( `ー´)「わぁってるよ……」

( ´∀`)「じゃあミセリさん、ミセリさんは危険を省みずに、森を彷徨くモナ?」

ミセ*^ー^)リ「うんっ!」

( ´∀`)「……なら、これらを持っていってくださいモナ
      モナが渡せる、精一杯の餞別ですモナ」


94 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:19:13.74 ID:Vgqsgj6FO

 かたり。
 椅子から降りたモナーは、小屋の隅に据え置かれた箱の前まで足を運び
 蓋を持ち上げ、箱の中に上半身を入れて、ごそごそ何かを探す。

 そしてモナーが箱の中から出てくると、その短い腕いっぱいに、
 大きな布や小さめの布、まん丸くて固そうな何か等を抱き締めていた。

 床に座り込んで笑うミセリの前までやって来たモナーは、
 それらをそっと、ミセリに差し出した。


ミセ*^ー^)リ「? なーに?」

( ´∀`)「防寒具と、これは水筒モナ。これは体を拭いたりする布で、これが」

ミセ*^ー^)リ「おー、あんがとっ! んで、これが?」

( ´∀`)「……これが、ナイフですモナ。ひとつあると、重宝しますモナ」

ミセ*^ー^)リ「ん、ちっちゃいけど鋭いねっ。あんがとっ!」

( ´∀`)「どういたしまして、モナ」


95 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:21:33.03 ID:Vgqsgj6FO

( ´∀`)ホッ

ミセ*^ー^)リ「じゃ、ミセリ行ってくんね!」

( ´∀`)「ひ、一晩くらいお休みになってはどうですモナ?
      これから暗くなるし、危険ですモナ」

ミセ*^ー^)リ「へーきへーきぃっ! 色々あんがとねっ! 行ってきまーす!」

(;`ー´)「え、お、おいっ!? あー……行っちまった……
      引き留めた方が良かったんじゃネーノ?」

( ´∀`)「多分、泣きたいんだモナ」

( `ー´)「え?」

( ´∀`)「んーよいしょっと……家、建てるモナ」

( `ー´)「建てるの?」

( ´∀`)「モナ」

( `ー´)「オレらが?」

( ´∀`)「ネーノはおつかい行ってもらうモナ」

( `ー´)?


97 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:23:37.35 ID:Vgqsgj6FO

( `ー´)「と言うか、よくナイフ渡したな村長」

( ´∀`)「モナ?」

( `ー´)「ニンゲン、ケイカイしてるのに」

( ´∀`)「あー」

( ´∀`)

( ´∀`)「まあ」

( `ー´)「何だ今の間」

( ´∀`)「渡す時はビクビクしたけど、何も無かったモナ」

( `ー´)「ん」

( ´∀`)「前に来たニンゲンとは違ったモナ、同じ子供でもずいぶん穏やかモナ」

( `ー´)「前のニンゲンは何かしたのか?」

( ´∀`)「自分を刺したモナ」

(;`ー´)「ぅお!?」


99 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:26:06.01 ID:Vgqsgj6FO


 モナーに渡された物を抱えて小屋から出ると
 小屋の周りに居たらしい生物達は、ミセリの姿を見るや否や
 草むらや建物の影に、ひょいと隠れてしまった。

 嫌われてるなあと頭の端で思うも、ミセリは笑顔のままで身支度を始めた。


 厚いめの布で出来た、少しばかり丈の短い外套を羽織る。

 固くて大きな木の実の殻で作られた水筒、
 水筒に巻き付けられた紐を腰に回して、強く縛った。

 手触りの良い、四角くて長い布を襟巻きの様に巻いて
 小さな鞘に納められたナイフを、スカートのサスペンダーにしっかりと縛り付ける。


 まるでゲームの主人公になったみたい、とミセリは笑う。
 くるりと一回転し、こんな格好してみたかったんだよね、と。

 ひどく不自然な顔で、笑った。


ミセ*^ー^)リ「あは、あははっ、冒険するヒロインみたーい」


100 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:28:27.63 ID:Vgqsgj6FO

 小屋の前でまろび出た独り言。
 両腕を上へ伸ばして伸びをしたミセリは、笑ったまま歩き出す。

 見かけばかりは元気そうに、大きく腕を振って。
 遠巻きにミセリを見つめる生物達には手を振って、小さな村を出て行った。


 ぱた、ぱた、ぱた。
 てこ、てこ、てこ。

 草の生えていない、ある程度整った道に響く、軽い足音。
 両脇に広がる世界は、鬱蒼とした暗い色合いの森ばかり。

 枝分かれした、いくつもの道。
 来た道から一本ずれた道を選び、ミセリは未だに笑顔のまま、大きな動きで歩く。


 早く早く、誰にも近くないところに行きたい。
 ひとりぼっちになって、なって、


ミセ*^ー^)リ「きゃっ!」


 足を木の根っこに引っ掛けたミセリは、傾く体に甲高く小さい悲鳴をあげた。

 そうして、どさり。
 そのまま、顔から地面へと倒れ込んでしまった。

101 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:30:32.06 ID:Vgqsgj6FO

 鼻の奥がつん、と痛む。
 胸の辺りがぎゅう、と痛む。
 擦りむいたらしい膝が、胸が、顔が、身体中が痛む。

 ミセリは俯せに倒れ込んだまま、額を地面に押し付けて肩を震わせる。
 そして、モナーと話している時から堪えていた涙が、ぐ、と込み上げて来て。
 目頭と鼻の奥が、ひどく痛んだ。

 その痛みと同時に、顔を濡らす暖かな体液。
 暖かくて塩っぽい涙が、ぼろぼろ、溢れて、溢れて。

  _,,
ミセ ;д;)リ「う、ぅ、あ、うわぁあああぁぁああんっ! うわあああああぁあぁあああんっ!!」


 胸に広がる、よく分からない痛みに似た何かは
 ミセリの孤独と絶望を、より強い物にした。

 地面に倒れ伏したまま、声をあげて泣きじゃくった。
 痛くて痛くてしょうがなくて、ただひたすらに泣き叫んだ。


 自分が何に絶望しているのか、ミセリにはよく分からない。
 それは、もう元の世界に帰れないからなのか。
 それとも、母にどこかへ行けと怒鳴られたからなのか。


102 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:33:37.74 ID:Vgqsgj6FO

 ミセリにしてみれば、母の言葉は「自分を捨てた」と同じ意味だった。

 帰る場所も無く、帰る方法も分からない。
 それでも帰りたくて、本当は帰りたくて、ミセリはただただ寂しくて。

 次々に姿を現す涙は、なかなか止まらない。
 顔を濡らして、声を嗄らして、地面に染みを作るだけ。

  _,,
ミセ ;д;)リ「お母さん、お母さぁん! おがあ、ざ、ぁ、あ、うわあああああっ!!
     おかーさぁんっ! おがーざぁあんっ!! うわあああぁあぁんっ!!」


 ミセリはひたすら、母を呼び続けた。
 目の前に現れる事も、抱き締めてくれる事も、あり得ないと分かっていても。

 どんなに酷い言葉をぶつけられたとしても、ミセリにとっては、
 誰よりも何よりも愛しい、たった一人の母だから。

 嫌いだ何だと叫んでも、母が愛しくて、愛しくて。


 頭を撫でてほしかった。

 大丈夫? と、困った顔で。

 今はそれだけが、欲しかった。


104 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:35:39.16 ID:Vgqsgj6FO


 ぽふん。

 地面に伏していたミセリの頭に、何かが乗った。

 ミセリは鼻水をすすりながら、ゆっくり顔をあげて。


  ┯
( ノAヽ)「大丈夫なノーネ?」


 あ、

  _,,
ミセ ;−;)リ「の、ね?」
  ┯
( ノAヽ)「転んだノーネ? 怪我したノーネ?」
  _,,
ミセ ;−;)リ「な、で……ノーネ、が?」
  ┯
( ノAヽ)「ついてきたノーネ」


106 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:37:36.57 ID:Vgqsgj6FO

 ぐりぐりぐり。
 小さな手が、ミセリの頭を撫でる。

 ミセリの顔の前にしゃがみ込むノーネは、頭に何か生えていたけれど。
 けれど、心配そうに頭を傾けて顔を覗き込むその姿が、たまらなく

 たまらなく、嬉しくて。

  _,,
ミセ ;Д;)リ「ぅ、あ、あぁあっ、うわああぁあぁあああああんっ!!」
  ┯
(;ノAヽ)「ノネっ!?」


 ノーネにしがみついて、抱き締めて、また泣きじゃくった。
 少しだけ大人しくなっていた涙は、また次々に溢れ出す。

 身体中の水分を持っていかれるんじゃないかってくらい、涙は止まってくれなかった。


107 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:39:31.26 ID:Vgqsgj6FO

 わんわん泣いて、ひたすら泣いて。
 ミセリは柔らかくて暖かいノーネに、余計に涙腺が緩むばかり。

 抱き締められるノーネは、困った顔で暴れていたが、すぐに暴れる事を止めた。
 小さな手でミセリの頭を撫でて、短い腕で抱き返す。
 何かを言うよりも、こうしていた方が良いと、本能的に察していた。


  ┯
(;ノAヽ)
  _,,
ミセ ;д;)リ
  ┯
(;ノAヽ)ノシ
  _,,
ミセ ;Д;)リ
  ┯  ξ
(;ノAヽ)



  暗くなった森の中で、緑の生き物を抱き締めて泣きじゃくる少女が一人。
  それはひどく心細い情景で、少女の声が掠れて行くのが、切なかった。
  少女の頭を撫でる以外は動こうとしない緑の生き物が、嬉しくて。

  ふと、その情景に、笑みを溢した。


110 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:41:39.69 ID:Vgqsgj6FO


  ┯
( ノAヽ)「落ち着いたノーネ?」

ミセっ−゚)リ「うー…………あんがと、ノーネ……」
  ┯
( ノAヽ)「泣き虫ミセリなノーネ」
  _,,
ミセ*゚д゚)リ「ノーネが言うない」
  ┯
( ノAヽ)「うへ、鼻水ついたノーネ」

ミセ;゚ー゚)リ「うぇ、ごめん」
  ┯
( ノAヽ)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「ん?」

  ┯
( ノAヽ)「ノーネ、ついてってもイイノーネ?」


112 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/01(日) 22:43:31.55 ID:Vgqsgj6FO
 鼻をすするミセリは襟巻きにしていた布を外し、自分とノーネの顔をぐいと拭いた。
 ノーネは頬を押されて顔を変形させながらも、恐る恐る、ミセリに問いかける。

 それを聞いたミセリは目をまん丸くして、
 子供らしく、にいっこり。


ミセ*^ー^)リ「もちろん、ノーネが良いなら、一緒に行こ!」
  ┯
( ノAヽ)「ぁ……りがと……なノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「えへへ、これで寂しくないね!」
  ┯
( ノAヽ)「……ノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「ところでノーネ」
  ┯
( ノAヽ)「ノネ?」

ミセ*゚ー゚)リ「頭のそれ、何?」

  ┯
( ノAヽ)

  ┯
( ノAヽ)「しいたけ」


 おわり。

inserted by FC2 system