3 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:14:33.19 ID:JBIm/XGeO
代理ありがとうございます、のろのろ投下してこうと思います。


7xさん
ttp://nanabatu.web.fc2.com/boon/miseri_hennna_mori.html

まとめて下さってます、ありがとうございます。



ミセ*゚ー゚)リ 女子小学生、いわゆる良い子ぶりっこ。

( ノAヽ) 森の人、心は狭いめ。カタカナ。


5 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:16:16.42 ID:JBIm/XGeO


 声が聞こえていた。
 どろりとした暗くて赤い世界に、柔らかい声。
 それは少女独特の、蜘蛛の糸の様に高くて柔らかい声。

 その声はひたすらに、自分を追い詰めるのだ。
 ただただ、自分を責め続けるのだ。


『なぁ…………何で、うちを殺したん……?』


 違うんだ、違うんだ。
 あれは事故だったんだ、態とじゃなかったんだ。

 いくら弁解しても、謝罪をしても、彼女の声は止まない。
 ひたすら、ひたすら、自分に言い続ける。



7 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:18:24.55 ID:JBIm/XGeO


『なんでぇ…………なんでなん……うち、死にたぁなかったのに……』


 ああ、ごめんなさい、ごめんなさい。
 君は大事な友達だ、殺すつもりなんてなかった、ごめんなさい、ごめんなさい。

 これは夢の中だと分かっている。
 けれど目覚められない、悪夢はいつまでも追いかけてくる。

 だから何度もごめんなさいを繰り返して、君を思う。夢が早く覚める様に。

 君は責め続ける。
 だから謝罪を続ける。


 けれど、本当は許されてはいけないのだ、
 自分は罪人だから、許されてはいけないのだ。

 事故だ何だと自分を守って逃げていても、この手で君を殺した事に変わりは無い。

 だから自分は、君に出来る限りの謝罪と賠償を、送り続ける。



9 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:21:10.85 ID:JBIm/XGeO



 【ミセ*゚ー゚)リ 変な森のようです】


  第二話 『ひとごろし。』
      閲覧注意。


 森の池のほとりには、ひとごろしが住んでいる。



11 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:23:10.73 ID:JBIm/XGeO


 鬱蒼とした森の中。

 てっこらてっこら、小さな足が計4つ、忙しそうに動いている。

 二つは靴を履いていて、二つは緑の小さな裸足。
 人とは違う構造をしているからか、裸足で歩いても痛まないらしい。

 薄茶の外套を羽織った少女は、自分の足元でよちよち歩く不思議な生物に、微笑む。

 オレンジのカチューシャで前髪をあげている少女は、ミセリ。
 この変な森に迷い込んだ、人間の少女。

 変わった形の不思議な生物は、ノーネ。
 性格に少しばかり難のある、森の人。ハムの人。


ミセ*゚ー゚)リ「ハム?」

( ノAヽ)「ハムって言うかしいたけなノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「結局なんだったのよシイタケ……」


12 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:25:10.78 ID:JBIm/XGeO

( ノAヽ)「すぽぇーす」

ミセ*゚ー゚)リ「へ?」

( ノAヽ)「すぽぇーすしいたけ、なノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ

ミセ*゚ー゚)リ「サッパリだよ?」

( ノAヽ)「うっさいノーネ」

ミセ;゚ー゚)リ「す、すぽぇーす? すぽぇーすって何? 言いにくくない?」

(#ノAヽ)「そう言うモンなノーネ! ノーネに言われても困るノーネ!」

ミセ;゚ー゚)リ「なんかキレられた! りふじんだ!」

(#ノAヽ)「しいたけはしいたけなノーネ! あーもうゾウゴなノーネ、ゾウゴ!!」

ミセ;゚ー゚)リ「ゾウゴ!? あ、造語!? 造語で全部すませよーとしてやがる!?」

(#ノAヽ)「アタマワルいクセにつっこむなノーネ!!」


 賑やかである。


17 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:27:23.39 ID:JBIm/XGeO

 歩いても歩いても、広がる景色は大きな変化を見せない。
 時間によって変化するのは、草木の色くらいの物で。

 朝は黄緑、昼は緑、夕方は赤、紫、黒。
 朝方以外は薄暗い、重い色彩の森の中。

 毒々しい植物の色、背の低い木々、空をも隠す繁る緑。
 不思議な世界、そう言わざるをえない世界。
 その世界を、ミセリとノーネはただただ歩いて、今日で三日目を迎える。


 足が疲れたら休憩し、喉が乾いたら川を探す。
 陽が落ちれば木の根本で寝転がり外套を被って眠り、腹が減れば木の実を集める。

 森の人であるノーネのお陰で、水を探すのに苦労する事はなく
 ミセリとノーネは水筒に水を汲むと、そのまま川に沿って歩き出した。

 二人が歩く道は、もう村から随分離れた場所。
 細くて苔がふわふわ地面をうめつくす、本来は道ではない道だった。


 ちゃぷちゃぷ、腰から提げた水筒の中で、水が踊る。
 さらさらさら、すぐそばを流れる川の音は、森の暗さを忘れさせるほどに涼やか。


 川寄りを歩くミセリは、自分の横をてこてこ歩くノーネを見下ろして
 ふと、口を開いた。


19 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:29:10.04 ID:JBIm/XGeO

ミセ*゚ー゚)リ「ね、ノーネ」

( ノAヽ)「ノネ?」

ミセ*゚ー゚)リ「ノーネ、いじめられてたの?」

( ノAヽ)「……ノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「……どう、して?」

( ノAヽ)「…………ぇうふ……ノーネとネーノ、
      もともとはあの村のジュウニンじゃないノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「ん」

( ノAヽ)「ノーネとネーノが住んでた村、なくなったノーネ
      住むトコ無いから、あの村に住ませてもらってたノーネ」

ミセ*゚−゚)リ「……ん」

( ノAヽ)「ネーノはイイコでノーネはワルイコなノーネ
      ノーネ性格ワルくて顔が変だから、嫌われてたノーネ」

ミセ*゚−゚)リ「……」

( ノAヽ)「どーせネーノはイイコなのにノーネはヤナヤツなノーネ
      だからノーネ、イタズラとかいっぱいしたノーネ」


21 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:31:09.27 ID:JBIm/XGeO

 黙って聞いていたミセリは神妙な顔をし、首を傾げる。

 そして、がっくり項垂れて呟くノーネの耳を、ひょいとつまんだ。
 先端が垂れる形の耳を、上にぴんと引っ張って立て、にっと笑う。


(;ノAヽ)「ちょ、な、なにするノーネ!?」

ミセ*゚ー゚)リ「バカ!」

(;ノAヽ)「バカに言われたノーネ!?」

ミセ*゚ー゚)リ「うっせこんなろ。んじゃさ、んじゃさ、次に会うとき
     みんなにゴメンナサイして、仲直りしたら?」

( ノAヽ)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「ね?」

( ノAヽ)「タニンがそう言うのはカンタンなノーネ」

ミセ;゚ー゚)リ「え、」

(#ノAヽ)「だからミセリはギゼンシャなノーネっ
      上っ面だけじゃなんにもならないノーネ!」


24 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:33:06.39 ID:JBIm/XGeO

ミセ;゚ー゚)リ「え、そ、そんな、でも謝ったら楽な」

(#ノAヽ)「出来るならとっくにしてるノーネ!
      だいたいソレはネーノにミミタコなくらい言われたコトなノーネ!」

ミセ;゚ー゚)リ「そ、そんな事言われても……」

(#ノAヽ)「アンイにカンドウすると思ったら大間違いなノーネ!!
      ゴメンナサイ出来るヤツはこんなコトになってないノーネ!!」

ミセ;゚ー゚)リ「うあああごめんっ、ごめんってばぁっ!」

(#ノAヽ)「スナオにゴメンナサイできたらこじれてないノーネ─────っ!!」


 がさり。


ミセ;゚ー゚)リ「ん?」

(#ノAヽ)?

ミセ*゚ー゚)リ「今なんかガサッていわなかった?」

( ノAヽ)「ノーネは聞いてないノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「んー、聞き間違いかなぁ……」


26 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:35:29.12 ID:JBIm/XGeO

 て言うか逆ギレだよねこれ、とミセリは腰から水筒を外し、
 今度はミセリが、がっくり項垂れた。

 自分の性格に問題があると、ノーネ本人も理解はしている。
 何度も謝ろうとしては謝れず、それを繰り返したのだろう。
 だからこそ、ノーネはかんしゃく玉の様に気持ちを爆発させたのだ。

 肩で息をして、ミセリから水筒を受けとるノーネ。
 乾いた喉と口の中を潤して、深い深いため息を吐いた。


( ノAヽ)「だからノーネはダメなノーネ…………」

ミセ;゚ー゚)リ「み、ミセリも悪かったよ……デリカシーなくてごめんね……」

( ノAヽ)「はぁぁぁぁぁあぁ…………」


 『アヒャヒャヒャ』


( ノAヽ)?

( ノAヽ)「ミセリ、なんか言ったノーネ?」

ミセ*゚ー゚)リ「? 言ってないよ?」


29 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:37:48.99 ID:JBIm/XGeO

( ノAヽ)「でもいま、」

 『アヒャヒャヒャヒャ』

( ノAヽ)「ほらっ、なんか聞こえるノーネ!」

ミセ*゚ー゚)リ「うぇ、本当だ…………お腹すいたな」

( ノAヽ)「木の実食べるノーネ? 登って取るノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「うー……お肉食べたい……」

(;ノAヽ)「ミセリ、トサツできるノーネ?」

ミセ*゚ー゚)リ「トサツ?」

(;ノAヽ)「カチクをコロすコトなノーネ」

ミセ;゚ー゚)リ「ごめん無理お肉あきらめる」

( ノAヽ)「サカナは?」

ミセ;゚ー゚)リ「……動物よりは……マシ、かも」


30 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:40:15.86 ID:JBIm/XGeO

( ノAヽ)「じゃああとで釣りするノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「そんな餌に釣られクマー」

( ノAヽ)

ミセ*゚ー゚)リ「ごめん」

 『アヒャヒャヒャヒャヒャ』

ミセ;゚−゚)リ「うぇっ、な、何なのよぉこれ……」

(;ノAヽ)「こ、こわいノーネ……」

ミセ;゚−゚)リ「と……とりあえず、行こっか」

(;ノAヽ)「そうなノーネ……」


 森から聞こえる謎の声。
 高く笑うそれは、異様な空気を放っていた。


 それが何かと言うならば、それは、そう

 狂気。


31 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:42:22.45 ID:JBIm/XGeO

 奇妙な笑い声を聞きながら、ミセリとノーネは止まっていた足を働かせる。

 てっこらてっこら、少し早歩き気味に歩く二人を、笑い声は追い掛ける。


 『アヒャヒャヒャ』


ミセ;゚ー゚)リ「の、ノーネ? この先って何かあんのかなっ」

(;ノAヽ)「よ、よく分からないけど、小屋があるらしいノーネ」

 『アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ』

ミセ;゚ー゚)リ「ここ、小屋かぁ、じゃあそこで休めるかなー」

(;ノAヽ)「ひひ、人が住んでるらしいノーネ」

 『アヒャヒャヒャヒャヒャ』

ミセ;゚ー゚)リ「ひひひ一晩泊めてくれないかなー、どんな人かなー」

(;ノAヽ)「そそそそこに住んでるの、ひとごろしってウワサなノーネ」


ミセ;゚−゚)リ「へ?」


33 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:44:08.26 ID:JBIm/XGeO

(;ノAヽ)?

ミセ;゚−゚)リ「ど、どんな格好なの? その人」

(;ノAヽ)「し、知らんノーネ……」

ミセ;゚−゚)リ「…………じゃ、ちょ、ま、」

(;ノAヽ)??

ミセ;゚−゚)リ「……この声って、もしかして……」

(;ノAヽ)???


ミセ;゚−゚)リ「だから、この声が…………ひとごろし……?」


    て
(;ノAヽ)そ


34 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:46:12.67 ID:JBIm/XGeO

 ミセリの言葉に、ノーネはぴたりと動きを止めた。
 そして持ったままだった水筒を返し、辺りを見回す。
 相変わらず、暗い森しか見えなかった。

 水筒に蓋をして、慌てて腰から提げ直したミセリは、
 外套の紐をしっかり結び、同じ様に辺りを見回す。

 すると、

  ガサガサガサッ


ミセ;゚−゚)リ「!!」

(;ノAヽ)「!!」


 後方の草むらから聞こえた音に、二人は勢い良く振り返った。

 背の低い木々の足元に繁る、草むら。
 そこはガサガサと動いてから、少しの間を空け、ぴたりと止んだ。

 止んだ音と動きに、少しだけ安堵したミセリとノーネ。


 しかしその安息は、あの笑い声によって打ち砕かれた。


35 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:48:03.36 ID:JBIm/XGeO

 動きと音が止み、安堵したその瞬間、
 草むらから、勢い良く飛び出してきた物は。


( ゚∀゚ )「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」


 あの村の住人と同じ形をした、不思議な生き物だった。

 全身は真っ赤で、見開いた目に光は見えない。
 死人の様な目をしているにも拘わらず、その生き物は高らかに笑う。

 赤い生き物の右手には、鋭利な刃物が握られている。
 そして小さな二本の足は、真っ直ぐ、ゆっくり、ミセリとノーネの元へと。


ミセ;゚−゚)リ「……なん、か……話、とか……できなさそ……」

(;ノAヽ)「まぁ……ムリだと思う、ノーネ」

ミセ;゚−゚)リ「ど、しよ……」

(;ノAヽ)「……どうする、ノーネ?」


37 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:50:02.85 ID:JBIm/XGeO

 ゆらりゆらり、左右に揺れながらこちらへと向かってくる赤い生き物。

 右手に握られた刃物は、木々の隙間から僅かに射す光を浴びて、
 ぎらりぎらりら、生きている様に、笑う様に、光を反射させていた。

 ミセリとノーネは赤い生き物を見つめたまま、何とか距離をとろうと後退る。
 しかし向こうの歩くスピードと、後退るスピードに差は無く、
 ろくに距離をとれず、5メートル程の間を維持するしか無かった。


 ノーネと大して変わらない大きさで、外見は村の住人達とほぼ一緒。

 それなのに、それなのにあの赤い生き物は、二人に異常な迄の恐怖を与えていた。


 どろりと濁った目、形だけの笑み。
 握られた刃物は、何かを求める様に輝くばかり。

 背筋をきんと凍らせて、後退り続けるミセリとノーネ。
 距離は開かないし、どうすれば良いのかも分からない。
 そして与えられる恐怖、狂気。


 冷たい汗が、ぽとり。
 二人の頬から滴った。


40 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:52:15.97 ID:JBIm/XGeO

 はりつめた空気に流れる汗、早鐘を打つ心臓に、目眩を感じる。

 暫くの間、じりじり睨み合いを続けていた三人だったが、
 その終止符が、とん、と打たれる。


 ついに、


三( ゚∀゚ )「アヒャァヒャヒャヒャヒャッ!!」


 赤い生き物が、地面を蹴って走り出した。



43 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:54:17.77 ID:JBIm/XGeO

ミセ; Д )リそ「うゃあぁあぁぁああああっ!!?」

(; A )そ「ノネぇぇえぇぇぇええぇっ!!?」


 突然こちらへと走り出した赤い生き物に、二人は素っ頓狂な悲鳴を上げた。
 そして大慌てで前を向き、全速力で走り出す。

 背後から迫り来る笑い声、もつれながらも必死で足を動かし大きく腕を振る。
 全身にひやっこい風を受けながら走る二人。

 ミセリの髪や外套が風に流され大きく靡き、
 ノーネの耳も同じように、風を受けて後ろへぴこぴこ靡いていた。


ミセ;゚−゚)リ「何だあれ! 何だあれぇ!?」

(;ノAヽ)「こっちが聞きたいノーネっ!!」

ミセ;゚−゚)リ「まだ来てる!? ついてきてる!?」


 (ノAヽ;三 クルッ

三( ゚∀゚ )=iニニフ (ノAヽ;)


Σ( A ;)「のぎゃ──────っ!!!!」

44 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:56:26.28 ID:JBIm/XGeO

( A ;)「死ぬノーネ! ノーネ死ぬノーネ!!」

ミセ;゚−゚)リ「なんですとぉ!?」

 セ(゚−゚;リ三 クルッ

三( ゚∀゚ )=iニニフ セ(゚−゚;リミ


Σセ( Д ;リミ「ぬわ──────っ!!!!」


(;ノAヽ)「死ぬノーネ! マジ死ぬノーネ!!」

ミセ;゚−゚)リ「しにたくない! マジしにたくないよ!!」


 ( ゚∀゚ )=iニニフ「アーッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」

  _,,
ミセ ;Д;)リ「うびゃあああああああああ!!!!」
  _,,
( ;A;)「のぎゃあああああああああ!!!!」


48 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 21:58:31.46 ID:JBIm/XGeO

 赤い生き物の足は早く、走れども走れども、ぴったり後ろについて追い掛けてくる。
 鋭利な刃物を突き出しながら、あからさまに二人の命を狙って笑っていた。

 しかし足が早いと言っても、その体はミセリに比べると小さくて。
 元より運動神経の悪くないミセリは、少しずつ赤い生き物との距離を開いていった。

 が、


(;ノAヽ)「のにゃああああああ!!」


 ノーネはどちらかと言うと、運動神経はあまり良くないらしい。

 何度も何度も転びかけ、それでも必死に走ってはいるのだが
 赤い生き物との距離を開くどころか、少しずつ縮められている。

 刃物の切っ先が背中をつつくのを感じ、ノーネは更に悲鳴をあげる。

 ミセリはノーネのずいぶん前を走っていて、それに気付いていない様で、


( ノAヽ)(ノーネは……死ぬノーネ……)


 静かに、ノーネは死を覚悟した。


50 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:00:25.39 ID:JBIm/XGeO

ミセ;゚ー゚)リ「そっ、そろそろ大丈夫かな、ノーネ!」

ミセ;゚ー゚)リ

ミセ;゚ー゚)リ?

 セ(゚−゚;リ三 クルッ


( ゚∀゚ )=iニニ);ノAヽ)


Σセ( Д ;リミ「アミバァ──────っ!!!!」


51 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:02:07.10 ID:JBIm/XGeO

ミセ;゚−゚)リ「刺さってる刺さってるノーネ死ぬぅっ!!」

ニニ); A )「ノーネの事は……忘れな……ノーネ……」

ミセ;゚−゚)リ「しなさないよ! しなせないよ!? くそおぉぉぉっ!!」


 漸くノーネの身に惨劇が起ころうとしている事に気付き、
 ミセリは勢い良くターンし、ノーネと赤い生き物の元へと走った。

 恐怖が消えた訳では無いけれど、足は勝手にターンして、
 まっすぐにノーネを助けようと、地面を蹴っていた。

 赤い生き物に馬乗りにされ、ぐったりしているノーネ。

 少しだけ刺さっていた刃物を抜いて、赤い生き物は、それを振りかぶ

  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「やらせはせんぞぉおおおぉぉっ!!!!」


 ったところで、ミセリのドロップキックが突っ込んできた。


54 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:04:11.72 ID:JBIm/XGeO

 めぎゃり、と顔面にミセリの両足を叩き込まれた赤い生き物は
 短い悲鳴をあげて、仰向けに倒れ込む。

 その拍子に刃物は赤い生き物の手から離れて、くるくると宙を舞った。


ミセ;゚−゚)リ「ノーネっ! 怪我は!?」

(;ノAヽ)「見てのとーりなノーネ……」

ミセ;゚−゚)リ「ああぅえっとえっと血が出てるから止めて、えっと」

(;ノAヽ)「おちけつなノーネ……」

ミセ;゚−゚)リ「だってだってだってあああぁぁぁう」

(;ノAヽ)「おちけつー……」


ざしっ

 『アギャッ!!』


ミセ;゚−゚)リ「っ!?」


57 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:06:08.05 ID:JBIm/XGeO

 ノーネの背中についた傷を、襟巻きの布で拭いて右往左往している時、
 背後から、ごく短い、濁った悲鳴が聞こえた。

 それを聞いたミセリは肩をびくりと震わせて、俯せに倒れるノーネを抱き上げて
 恐る恐る、ゆっくりと後ろを振り返れば。


:(  Д(ニニi=


 そこには、左目に刃物の刺さった、赤い生き物が横たわっていて。

 ビクビクと痙攣する赤い生き物は、左目から溢れる赤に濡らされて行く。


 それを見たミセリは、さっと顔色を無くした。

 そして唇を震わせながらその光景を呆然と見つめ、ぐらり、視界が歪む。

 目を見開いて立ち上がったミセリは、ふらふら覚束無い足取りで
 笑う膝を叱咤しながら、じりりと後退った。

 未だ息がある赤い生き物は顔を更なる赤で濡らし、ぜいぜい呼吸を荒くしている。

 そして、ぐるりと目玉を動かして、
 残された右目でミセリを見ると、にたぁり、笑った。


58 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:08:15.14 ID:JBIm/XGeO

ミセ; д )リ「ぁ、あ、あぁぁあ…………」

(;ノAヽ)「ミセリどうしたノーネ? 何かあったノーネ?」

ミセ; д )リ「なっ、で……も……
      ……や、ぁ…………いやぁぁぁぁああああぁああぁあッ!!!!」

(;ノAヽ)「どうしたノーネ!? なんなノーネ!?」


 ノーネの問いに答える余裕も無く、ミセリは絹を裂くような悲鳴をあげ
 血にまみれて笑う赤い生き物をそのままに、前を向いて走り出した。


 強くノーネを抱き締めて、熱い目頭に眉を寄せ、ミセリはひたすらに走る。

 その頭の中はひどく混乱していて、同じ単語ばかりがぐるぐると、
 まとまる事もせず、ただかき混ぜた色とりどりの絵の具の様に絡まっていた。


62 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:10:09.75 ID:JBIm/XGeO

 赤い、赤い。
 赤い生き物が、真っ赤な何かに染まって行く。

 左目から不格好に突き出る刃物の柄。
 ぬらぬら、ぎらぎら、赤い、赤い、あか、い。


 転びそうになりながらも、ミセリはがくがく震えながら走った。
 背後から、かすれた声で、小さく小さく『アヒャ』と笑う声。

 ノーネを抱いているから押さえられない耳に、涙がぶわりと込み上げる。
 頬を濡らして、がちがち合わない歯の根に真っ白な顔。

 ミセリは初めて死に近付いて、ひどくひどく混乱する。
 目から血が出るなんて光景は、生まれて初めて見る物で。

 訳の分からない恐怖は、ミセリを後ろから抱き抱えて離そうとしない。
 恐怖の隣に存在する罪悪感は、ミセリの胸を突き刺していた。


 笑い声は、もう聞こえない。


65 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:12:08.46 ID:JBIm/XGeO


 ああ死んだのだろうか、あの赤い生き物は死んだのだろうか。
 あれは自分が殺した事になるのだろうか。

 いや違う、違う、殺していない。
 あれは赤い生き物が勝手に、自滅しただけ。

 けれど、ああ、あの目。
 どろりとした目、腐った魚の様なあの目。

 心配もせず、手を差し伸べる事もせず、ただただ恐怖に身を翻した。
 それは紛れもなく自分自身なのだ。

 ああ、ああ、ああ、

 あれは自分が殺したんじゃない何も殺していない自分は悪くない。
 悪くない悪くない悪くない。


 頭の中は、そんな自己弁護でいっぱいだった。

 ミセリはただ、自分は悪くないのだと、自分自身に言い聞かせる。

 それが正しいやら正しくないやら、ミセリ自身には分からない。
 自分は子供だと言う逃げ道が、すぐそばに存在するから、目を背けてひたすら逃げた。


66 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:14:07.62 ID:JBIm/XGeO

 地面に生えるキノコや草花を蹴散らし、踏みつけてミセリは走っていた。

 呼吸なんて物はとうの昔に上がりきっていて、ひどく乱れている。
 ぜっ、ぜっ、とうまく肺に送り込まれない酸素を求め、喉が鳴いた。

 視界は涙と目眩でぐにゃぐにゃに歪んでいて、
 詰まった鼻から流れる鼻水をすすり、ミセリはしゃくりあげる。

 強く強くノーネを抱くその腕に、抱き潰されそうになりながらも、
 ノーネは何があったのか事態をうまく飲み込めずに居た。

 それでもノーネは、もう問う事を止めている。

 震えながら、泣きながら走るミセリの外套にしがみつき、
 ほんの少しの暖かさを、ミセリに与えていた。


 薄暗いけれどまだ昼間、緑の草木がそよ風に揺らされ、ざわざわざわ。
 必死に走るミセリの背中を撫でる様に、森の薄暗さが靡いていた。

 走って、走って、喉や胸がはち切れ潰れんばかりに走って。

 右側に繁る木々と、左側の川、その向こうからこちらへと覆い被さる様に生える木々

 その木々が、不意に、途切れた。


68 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:16:10.34 ID:JBIm/XGeO

ミセ − )リ「あっ、ぎゃうっ!」

(;ノAヽ)「ノネっ!?」


 がくん、どしゃり。

 突然明るくなった世界に、ミセリは強く目を瞑った。
 その拍子にバランスを崩したミセリは、左肩から地面へと叩きつけられてしまった。

 弾みでミセリの腕から飛び出したノーネは、ぽん、とゴムマリの様に飛び
 地面に落ちて、数回跳ねてから、見事に顔面着地した。


(;ノAヽ)「うぎ……痛いノーネ……」


 少しの間を置いてから、顔を撫でつつ立ち上がるノーネ。
 ぽんぽん、と顔や体についた砂ぼこりを払って、ぐるりと辺りを見回した。


70 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:18:15.01 ID:JBIm/XGeO

 森の中とは思えない程に明るい、光に溢れた空間。
 光と、小屋と、池のある、円形に近い空間。

 空を見上げると、空があった。
 天井の様に世界を包む木々ではなく、薄い青に白が浮かぶ、きらきらした空だった。

 ノーネは細い目を更に細くして、その眩しさを見つめる。
 太陽は見える位置には無いけれど、ひどく明るい、透明。

 顔を正面に向け直してから右を見ると、池があった。
 近付いてその中を覗き込むと、透明で冷たそうな水の中を魚が泳いでいる。

 ゆらゆら揺れる水草から視線を外して左を向けば、自分達が入ってきた“入り口”。
 背の低い木々がアーチ状に繁るそれの向こうは暗く
 本当に、入り口としか言い表せない存在だった。


 再び池に視線を戻すと、川と池が繋がっている事に気付いた。

 それと同時に、池の真ん中辺りに生えている、白と紫の花にも気付く。


( ノAヽ)?


72 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:20:14.15 ID:JBIm/XGeO

 まあ良いや、とノーネは花から目を反らしてミセリの姿を探す。
 きょろきょろ首を巡らせると、その姿は簡単に見つけられた。

 入り口から少し離れた場所で、またも俯せで倒れ込んでいる。
 それを見付けたノーネは、一回跳ねてから駆け足でミセリの元へ走った。


( ノAヽ)「ミセリ、怪我ないノーネ?」

ミセ − )リ

(;ノAヽ)「ミセリっ、どーしたノーネっ?」

ミセ − )リ

(;ノAヽ)「ミセリ、ミセリ! ニンゲン! 起きろなノーネ! ミセリ!!」

ミセ − )リ「ノ……ネ、……」

(;ノAヽ)!

ミセ − )リ「ど、しよ……どう……し、よ……」

(;ノAヽ)?


ミセ − )リ「ミセリ……ひと、ころした……」


74 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:22:22.22 ID:JBIm/XGeO

( ノAヽ)「……へ?」

ミセ − )リ「ミセリ、あの赤いの……殺したんだ……ミセリが……」

( ノAヽ)「何があったノーネ? ノーネが見てないとこで、何があったノーネ?」

ミセ − )リ「ミセリが蹴った、から……赤いのが持ってた、の……」

( ノAヽ)「……」

ミセ − )リ「目に……目、に……赤いの、の……目……刺さっ……ぁ、あ」

(;ノAヽ)「っも、うイイノーネ! 黙れなノーネ!」
  _,,
ミセ ;д;)リ「ミセリが殺したんだぁっ! ミセリがっ、ミセリがしたからっ
      だから目にっ、刺さってっ、うわぁああぁぁぁあぁあんっ!!」

(;ノAヽ)「もうイイから黙れなノーネ! 黙れなノーネっ!!」
  _,,
ミセ ;д;)リ「だって血っ、いっぱい出てた! 目に、刺さったんだよ!?
      しんじゃうよ! あんなのっ、しんじゃうじゃんかあっ!!」

(#ノAヽ)「だっからもう黙れなノーネッ!!」
  _,,
ミセ ;−;)リ「っ!」


76 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:24:26.03 ID:JBIm/XGeO

 俯せに倒れたまま、腕に額を乗せて叫ぶミセリ。
 地面にぽたぽた落ちる涙は、暗い染みを作るばかり。

 そのすぐ側までやって来たノーネは、自分の問いに答えようと叫ぶミセリを
 目一杯に叩いて、怒鳴って、黙らせた。

 あー、やらかした。
 心の中でそう呟き、自分の言動と行動に、ノーネは後悔する。
 けれど黙らせなければ、ミセリが潰れてしまうんじゃないか。
 よくは分からないけれど、そう思ってしまって。

 顔を上げたミセリの頭を小さな手で撫でながら、
 ノーネはミセリにかけるべき言葉を探す。


「気にするな」
 気にしないなんて出来ない。

「殺してないかも知れない」
 そんな不確かな事は言えない。

「ミセリが悪いんじゃない」
 無責任だ。


 ああもう何も言えない。
 ノーネはがっくり項垂れて、言葉を発する事ができなかった。
 何を言っても、ミセリを追い詰めるばかりだと。

78 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:26:06.63 ID:JBIm/XGeO

 取り敢えず、とミセリの顔をごしごし拭いてやり、ため息を吐いた。
 ミセリは変わらず泣き顔で、拭いても拭いても涙は溢れる。

 死は怖い。
 森の人、動物を狩ったり魚を釣って生きる。
 けれどそれくらいの事は、死が恐ろしい事は、ノーネにも分かっていた。

 誰かに怪我をさせたら罪悪感を感じるし、動物を殺せば胸を痛ませる。

 しかもミセリはそんな事とは無縁の世界で生きていた。
 森に比べれば、死に遠い世界。
 ノーネにはミセリの世界は分からないが、
 死に免疫が無いことは、見ればすぐに分かった。


 だからこそ、何をどう言えば良いのか分からなかった。


( ノAヽ)「すこしは落ち着いたノーネ?」

ミセっ−゚)リ「……うん」

( ノAヽ)「ノーネに世話かけさせるとは、なかなかやるノーネ」

ミセっ−゚)リ「ごめん……なさい」


80 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:28:09.57 ID:JBIm/XGeO

 起き上がったミセリは手の甲で顔を拭き、鼻をぐずっと鳴らしてから息を吐く。
 そして、何故か申し訳なさそうな顔をするノーネの頭をぐりぐり撫で
 無理に、にっこり笑った。

 子供らしくない笑顔だった。


ミセ ゚−゚)リ「……わたしね」

( ノAヽ)「ん」

ミセ ゚−゚)リ「ノーネが危ないと思って、赤いの蹴ったの」

( ノAヽ)「ん」

ミセ ゚−゚)リ「そしたら赤いの、自分が持ってたやつ、刺さって」

( ノAヽ)「ん」

ミセ ゚−゚)リ「目に刺さって、動かなくなって」

( ノAヽ)「ん」

ミセ ゚−゚)リ「あれ、ミセリが、殺した、の?」

( ノAヽ)「知らんノーネ」

ミセ ゚−゚)リ「へ」

82 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:30:15.22 ID:JBIm/XGeO

( ノAヽ)「んなこた知らんノーネ
      せーとーぼーえーだったて言ってほしいノーネ?」

ミセ ゚−゚)リ「ぁ、や、ちが、」

( ノAヽ)「んじゃ、考えるなノーネ」

ミセ ゚−゚)リ「でも、ミセリ、」

( ノAヽ)「今さらどーしよーもないノーネ」

ミセ ゚−゚)リ「そ、だけど」

( ノAヽ)「じゃあどうしたいノーネ」

ミセ ゚−゚)リ「……わかん、な、い」

( ノAヽ)「それがミセリのコタエなノーネ」

ミセ ゚−゚)リ「う、ぇ? へ?」

( ノAヽ)「ミセリがしたいよーにすればイイノーネ」

ミセ ゚−゚)リ「……ぁ、う」

( ノAヽ)「ノーネにヘンなコトもとめるなノーネ、ノーネにもわからんノーネ」


85 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:32:09.27 ID:JBIm/XGeO

 つん、と突き放すような言葉。
 ノーネはもう、思った事を言葉にしようと口を開く。

 このままズルズルとミセリの懺悔を聞いていても、何にもならない。
 うじうじ悩むミセリの言葉は、そこはかとなくノーネを苛つかせるのだ。

 自分で出そうとしない答えをノーネが出せる訳がない。
 ならば、ばっさりと自分で考えろと切り捨てた方が良い。

 ノーネに説教まがいの事をするならば、自分も迷うのを止めろ、と。


 表情を無くしたミセリは一度俯き、顔をあげてから、頷いた。


ミセ ゚−゚)リ「ごめん、ノーネ……ミセリ、わたし、考える」

( ノAヽ)「……」

ミセ ゚−゚)リ「よく、分かんないけど……ちゃんと、考えなきゃ駄目な気がする」

( ノAヽ)「じゃあ、マッスグしてろなノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「……うん、あんがとね、ノーネ」

( ノAヽ)「知らんノーネー」


89 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:34:27.40 ID:JBIm/XGeO

 にっ、といつも通りの笑顔を見せるミセリに、ノーネは息を吐いた。

 まだ心の中ではぐるぐる嫌な物が巡っているけれど、それだけではいけない、と。
 ミセリは気持ちを切り替える様に、笑う。

 ちゃんと考えて、死に対する事をちゃんと考えて、受け止めなきゃいけない。
 森を旅するならば、きっとこれからも死に触れるから。

 それでも胸の痛みを忘れないように、ミセリは大きくならなければ。


ミセ*゚ー゚)リ「……ところでさ」

( ノAヽ)「んあ」

ミセ*゚ー゚)リ「ここ、どこ?」

( ノAヽ)「知らんノーネ」
  _,,
ミセ*゚д゚)リ「えー」

(#ノAヽ)「えーじゃないノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「びー」

     ビッシ
Σミセ; д(⊂=(ノAヽ#)
   モルスァ!

91 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:36:09.21 ID:JBIm/XGeO

ミセ;゚ー(#)リ「し、(*゚ー゚)」

(#ノAヽ)「もっかいモルスァするノーネ?」

ミセ;゚ー(#)リ「ごみんなさい」

ミセ*゚ー゚)リ「まあそれは置いといてさ!」

(#ノAヽ)イラッ

ミセ*゚ー゚)リ「ここ、」

(#ノAヽ)「知らんノーネ」

ミセ;゚ー゚)リ「や、そーじゃなくてね」

(#ノAヽ)?

ミセ*゚ー゚)リ「ここ、ひとごろしの小屋?」

(#ノAヽ)

( ノAヽ)

(;ノAヽ)

(;ノAヽ)「モルスァ」


96 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:38:43.61 ID:JBIm/XGeO

 立ち上がったミセリが明るい空間を見回して、
 そこの中央に存在する小屋を指差して、首をかしげながらノーネに聞いた。

 小屋は木製で、村にあった小屋と同じような作りと大きさ。
 小さな煙突と竈があるが、火や煙は見えない。
 竈の隣には小さく切られた木が積み重なっていて、
 釣具や鉈なんかも置いてある。
 この小屋に誰かが住んでいる事は、明らかだった。


ミセ*゚ー゚)リ「……誰か居るかな」

(;ノAヽ)「い、いた、いたらあぶないノーネっ?」

ミセ*゚ー゚)リ「んー、会ってみなきゃ分かんないよ?
     赤いのが住んでるなら、今は誰も居ないだろーし」

(;ノAヽ)「ででででも」

ミセ*゚ー゚)リ「ミセリもひとごろしだし、仲間仲間ー」

(;ノAヽ)「キズを自分でほじくるなノーネ!」

104 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:48:05.90 ID:JBIm/XGeO

ミセ*゚ー゚)リ「もしもーし、ご飯わけてくださーい!」

(;ノAヽ)「止めろなノーネ! あぶないノーネ!」

ミセ*゚ー゚)リ「ドア開かないね、留守かな」

(;ノAヽ)「だから!」

ミセ*゚ー゚)リ「ふほーしんにゅー良くないしなー、お腹空いたー」

「何か食べるニダ?」

ミセ*゚ー゚)リ「食べる!」

(;ノAヽ)「そーゆーモンダイじゃナイノーネ!」


ミセ*゚ー゚)リ ( ノAヽ)

<ヽ`∀´>

  _,,
ミセ;゚д゚)リ「うわあああああああああ!!?」

(;ノAヽ)「のぎゃああああああああ!!?」

<;ヽ`∀´>「ニダっ!?」


106 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:50:04.07 ID:JBIm/XGeO

 小さな小屋の小さなドアをノックするミセリと、それを止めるノーネ。
 その後ろからかけられた低めの声に振り返ると、そこには尖った何かが居た。

 緑色で尖った形の、不思議な生き物。
 しかしノーネと違い、ぴんと立った耳の形は、村の住人と同じ。

 細い目に痩けた頬をした不思議な生き物は、肩から皮袋をぶら下げていた。
 皮袋の紐を握る反対側の手には、茶色と銀色の、細長い何か。


(;ノAっミセ;゚ー゚)リ「あ、ぇと、その、あの」

<;ヽ`∀´>「な、何……ニダ?」

(;ノAっミセ;゚ー゚)リ「ご、ごめんなさい、その、なんか」

<;ヽ`∀´>「いえ、その、ご丁寧に……」

(;ノAっミセ;゚ー゚)リ「わわ、わたし達その、迷い込んだと言うか、その」

<;ヽ`∀´>「は、はぁ……それはそれは……」

(;ノAっミセ;゚ー゚)リ「ところで、その、それ……は?」

<;ヽ`∀´>「さ、さっき狩ってきた、うさぎニダ……」

(;ノAっミセ*゚ヮ゚)リ! ギンッ


109 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:52:14.08 ID:JBIm/XGeO

<;ヽ`∀´>「……食べる、ニダ……?」

(;ノAっミセ*゚ヮ゚)リ「食べる! ます!」

(;ノAっミセ*゚ヮ゚)リ『ミセリ……』

<;ヽ`∀´>「ど、どぞ、入ってくださいニダ……」

(;ノAっミセ*゚ヮ゚)リ「あんがとござます!」

(;ノAっミセ*゚ヮ゚)リ『ミセリー……』


 目をらんらん輝かせるミセリは、うさぎ、と言う単語に
 何の躊躇いも疑問も抱かず、「肉だ」と言う反応を示した。

 うさぎは可愛いし、食べるのは可愛そうだと思うけれど
 ミセリの頭の中は、食欲でいっぱいで。

 動物を食べると言う行為が、いかに死に近いかと気付かずに。
 ただただ自分の腹を満たしたい、今はそんな獣と変わらない欲望ばかりだった。

 それが自然であり、本能である事にも、もちろん気付きはしない。


111 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:54:16.96 ID:JBIm/XGeO

 小屋の主はミセリ達を小屋へと迎え入れてから、「血抜きをする」と小屋の裏に足を運んだ。

 突然の来客に戸惑いはしているが、ミセリの真っ直ぐな欲望に
 半ば呆れながらも、身体にまとわりついた緊張感が解けるのを感じた。


 ミセリとノーネは小屋の中、ミセリは床に座り込み、ノーネは小さな椅子に腰掛ける。
 小屋の中は殺風景で、飾りらしい物は何もない。

 唯一ある物は、小さなベッドの脇に置かれた棚。
 そこに乗せられた花瓶、少し萎れた白い花だけだった。


 ミセリが興味津々で小屋を見回す姿を横目で見て、
 ノーネはため息混じりに、大きめの机に広げられている何かに、目を落とす。


 白い布を敷いた机の上には、くすんだ金色をした、先端の丸い円柱。
 ノーネが親指と人差し指でそれを挟み、持ち上げてじっと見る。

 窓から射し込む光がそれを照らし、鈍くじんわり輝いた。

 何だこれは、と首をかしげて疑問符を飛ばすノーネ。

 ミセリがそれに気付き、膝立ちになってノーネの手元を後ろから覗き込む。
 そして首をかしげるノーネの指の間で輝く物に、目を丸くした。


113 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:56:12.05 ID:JBIm/XGeO

ミセ*゚ー゚)リ「たまだ」

( ノAヽ)「タマ?」

ミセ*゚ー゚)リ「ピストルのたま、拳銃だよ」

( ノAヽ)「ピストル?」

ミセ*゚ー゚)リ「ん、ここには無いんだ?
     んっとね、引き金? を引いたら、これが飛び出す道具の事」
  _,,
( ノAヽ)?

ミセ;゚ー゚)リ「難しいよせつめー……
     て言うか、ピストル無いのになんでここにピストルのたま?」
  _,,
( ノAヽ)? ?


 がちゃ。


115 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 22:58:09.35 ID:JBIm/XGeO

<ヽ`∀´>「お、遅くなりましたニダー……」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、お邪魔してます!」

(;ノAヽ)「……ノネ」

<;ヽ`∀´>「な……何もありませんが、ごゆっくりニダ……」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、ねぇねぇ、これは?」

<ヽ`∀´>「ニダ? ああ、ジュウのタマですニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、やっぱしピストルのたまなんだー」
  _,,
( ノAヽ)? ? ?

ミセ*゚ー゚)リ「でも、なんでピストルが? フツーにあるもんなの?」

<ヽ`∀´>「や、たぶん滅多にないと思うニダ
      これは森に落ちてたのを拾ったニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「落ちてたんだ……色々あるんだねぇ、森」

<ヽ`∀´>「ニダ、この弾も一緒にいっぱい落ちてたニダ」


118 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:00:05.50 ID:JBIm/XGeO

ミセ*゚ー゚)リ「へー……使い方って難しくない? 簡単?」

<ヽ`∀´>「最初は使い方もわからなかったし、ケガもしたニダ
      でも根気強く使ってたら、扱えるようになったニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「ほへー………………」

<;ヽ`∀´>「に、ニダ?」

ミセ*゚ー゚)リ「大人っぽい」

<;ヽ`∀´>?

ミセ*゚ー゚)リ「しゃべり方、モナーさんみたい」

<;ヽ`∀´>「モナー……って、あの、村のモナーニダ?」

ミセ*゚ー゚)リ「そそ、ね、ノーネ」

( ノAヽ)「ノネ?」

ミセ;゚ー゚)リ「聞いとこうよそこはぁ……」
  _,,
( ノAヽ)「……むつかしーハナシしてるから暇だったノーネ……」


120 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:02:04.71 ID:JBIm/XGeO

ミセ*゚ー゚)リ「ノーネ拗ねた?」
  _,,
( ノAヽ)「うっさいノーネ」

ミ人*^ヮ^)リ ミ☆「ごめーんー、おいてけぼりにしてーっ、許してっ?」
  _,,
(#ノAヽ)イラッ
  _,,
(#ノAヽ)「ずぇったい許さないノーネ」
  _,,
ミセ*゚3゚)リ「そんな事言わないでよー、ねっ?」
  _,,
(#ノAヽ)イララッ


<;ヽ`∀´>

<;ヽ`∀´>「……す、スープ温めてきたの、温まったと思うから……食べるニダ?」

ミセ*゚ヮ゚)リ「食べる!」
  _,,
(#ノ皿ヽ)ギリッ


<;ヽ´Д`>


121 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:04:13.91 ID:JBIm/XGeO

ミセ*゚ー゚)リ「よいしょっと、んじゃマント脱いで……」

<ヽ`∀´>「外にあるから、みんなで外に」


<;ヽ`∀´>そ

(;ノAヽ)そ

ミセ*゚ー゚)リ?

(;ノAヽ)っ゙ミセ*゚ー゚)リ

ミセ*゚ー゚)リ? ?

Σ人;ノAヽ)

(;ノAヽ)v

(;ノAヽ)p

(;ノAヽ)ゝ


123 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:06:18.09 ID:JBIm/XGeO

  _,,
ミセ ゚−゚)リ?
  _,,
ミセ ゚−゚)リ

  _,, て
ミセ; д )リそ

  _,,
ミセ;゚д゚)リ「スカート裂けてるううううう!!?」

(;ノAヽ)「か、隠せなノーネっ」
  _,,
ミセ;゚д゚)リ「どどどどやって!?」

(;ノAヽ)「マント! マント着ろなノーネ!」
  _,,
ミセ;゚д゚)リ「はうあっち!!」


<;ヽ/Д\>ミェンミェン


125 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:08:14.49 ID:JBIm/XGeO


ミセ;゚ー゚)リ「いつの間にスカート裂けたんだろ……」

( ノAヽ)「裂けたってゆーか切れてるノーネ」

ミセ;゚ー゚)リ「まさか、赤いのが……?」

(;ノAヽ)「あー……」

<ヽ`∀´>「赤いの?」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、さっき赤いのに追っかけられて」

( ノAヽ)「アヒャアヒャゆってたノーネ」

<ヽ`∀´>「あー、アヒャ族ニダ?」

ミセ*゚ー゚)リ「あひゃぞく?」

<ヽ`∀´>「小さいグループで村や集落を持たずに生きてる種族ニダ
      刃物を持って追いかけてきて、ヒトも獣も関係なくコロシて食うニダ」

ミセ;゚ー゚)リ「こえぇっ!!」

(;ノAヽ)「あぶぬぇっ!!」


127 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:10:13.48 ID:JBIm/XGeO

<ヽ`∀´>「森で会ったら迎え撃つしか無いニダ、アヒャ族は足が早いニダ。
      はいスープ、熱いから気を付けるニダ」

ミセ*゚ヮ゚)リ「わっ、あんがとー! いただきまっす!」

(;ノAヽ)「……の、ノネ」
  _,, て
ミセ;゚д゚)リそ フォォォォォォ!!

(ノAヽ;)「ど、どしたノーネ?」
  _,,
ミセ;゚д゚)リ「う、うさぎの足がごろっと……!」

(;ノAヽ)「んぎぃっ!? あ、ノーネのとこにも入ってるノーネ!?」

<ヽ`∀´>「食べれるとこは食べるべきニダ、うさぎさんに感謝ニダ」
  _,,
ミセ;゚д゚)リ「お、おぅ…………いただきます!!」

  _,,
ミセ;)−゚)) モギモギ
  _,,
ミセ;)−゚)リ

ミセ*゚ヮ゚)リ+ テカッ

(;ノAヽ)そ


130 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:12:10.56 ID:JBIm/XGeO

(;ノAヽ)「……ミセリ?」

ミセ*゚ヮ゚)リ「美味しいよ! これ美味しいよ!?」

<ヽ`∀´>「ホルホルホル、なら良かったニダ!」

(;ノAヽ)「……」


(;ノAヽ)っ゙ウサ肉 ツンツン

(;ノAヽ)

( )ノ∧ヽ)モギュ

( )ノ∧ヽ)) ムギュムギュ

( )ノ∧ヽ)

(*)ノ∧ヽ)+ テカッ


131 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:14:26.94 ID:JBIm/XGeO

(*ノAヽ)「……ま、まあ悪くないノーネ」

ミセ*゚ヮ゚)リ「おいしーよねっ! ちょっとグロいけど!」

(*)ノ∧ヽ)) ボリボリボリ

ミセ;゚ー゚)リそ「ボリボリ!? 」

<ヽ)`∨´>> ボリボリボリ

  _,, て
ミセ;゚д゚)リそ「ボリボリが普通!?」

( ノAヽ)「ミセリ、ホネ食べないノーネ?」
  _,,
ミセ;゚д゚)リ「ぇ、えぇ!? ホネ!?」

<ヽ`∀´>「ニンゲンはウリ達より歯が弱いニダ?」
  _,,
ミセ;゚д゚)リ「お、おぅふ……ホネは……無理、かな……」

( ノAヽ)「ならヨコセなノーネ」
  _,,
ミセ;゚д゚)リ「おぉう……」


134 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:16:13.96 ID:JBIm/XGeO

ミセ*゚ー゚)リ「あ、スープも美味しい」

<*ヽ`∀´>「ホルホルホル」

ミセ*゚ー゚)リ「そだ、えっと……名前は?」

<ヽ`∀´>「? あ、ウリはニダーニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「んっ、あんがとねニダーさん! わたしミセリ!」

( ノAヽ)「ノーネなノーネ」

<ヽ`∀´>「よろしくニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「……」

<ヽ`∀´>?

ミセ*゚ー゚)リ「ニダーさんは石投げないんだね」

<ヽ`∀´>「? ……あぁ、ニンゲンだからニダ?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、人間って嫌われてるみたいだから……」

(*)ノ∧ヽ)) ボリボリボリ


137 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:18:31.62 ID:JBIm/XGeO

<ヽ`∀´>「……ニンゲンみんなが悪いワケじゃないニダ
      森のイキモノにだって、悪いヤツはいるニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「そっか……あんがと」

<ヽ`∀´>「ホルホルホル、最初は驚いたけど無害そうだし、問題ないニダ」

ミセ*^ー^)リ「わたしもビックリしたよ、でも良い人でよかったぁ」

<ヽ`∀´>?

ミセ*゚ー゚)リ「小屋の人はひとごろしって聞いてたから、ちょっと怖かったから」

<ヽ`∀´>

<ヽ´Д`>

ミセ;゚ー゚)リ「あ、ご、ごめんなさい!」

<ヽ´Д`>「……良いニダ、事実ニダ……」

(*)ノ∧ヽ)) ボリボリボリ


141 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:20:17.47 ID:JBIm/XGeO

ミセ;゚−゚)リ「ぇ……」

<ヽ´Д`>

<ヽ`∀´>「器空っぽニダ
      おかわりまだまだあるニダ、食べるニダ?」

ミセ;゚−゚)リ「あ、い、いただきます……」

<ヽ`∀´>「ホルホル、はいどーぞニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「……あんがと」

(*)ノ∧ヽ)) ボリボリボリ

ミセ;゚ー゚)リ「食べるねぇノーネ……」

(*ノAヽ)「おかわり」

<ヽ`∀´>「どうぞニダー」

(*)ノ∧ヽ)) ボリボリボリ

ミセ*゚ー゚)リ=3


143 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:22:15.93 ID:JBIm/XGeO


ミセ*´ヮ`)リ「お腹いっぱーい……ごちそうさまー……」

(*ノAヽ)「ぐぇぽ、ごちそさまなノーネ……」

<ヽ`∀´>「ホルホル、お粗末様ニダ。
      ところで、今日の宿は決まってるニダ?」

ミセ*´ヮ`)リ「のじゅくー」

(*ノAヽ)「なノーネー」

<ヽ`∀´>「なら泊まってくと良いニダ
      アヒャ族もうろうろしてるかも知れないから、野宿は危ないニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「良いの!?」

<ヽ`∀´>「狭くても良ければ、どうぞどうぞニダ」


146 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:24:17.67 ID:JBIm/XGeO

ミセ*゚ー゚)リ

ミセ*゚ー゚)リ「食べる?」

<ヽ`∀´>「何をニダ?」

ミセ*゚ー゚)リ「わたしとノーネ」

<ヽ`∀´>「ホルホルホル、ウリもお腹いっぱいだし、
      干し肉なんかの保存食もいっぱいあるから、間に合ってるニダ」

ミセ*^ー^)リ「あははっ、だよねー。もーノーネったら!」

(;ノAヽ)「ノーネかんけーナイノーネ!?」

ミセ*゚ー゚)リ「何かお手伝いするよ!」

<ヽ`∀´>「ん? じゃあ洗い物お願いするニダ
      ウリはさっき狩ったうさぎの様子見てくるニダ」

ミセ*^ー^)リ「はーい! そこの池で洗うの?」

<ヽ`∀´>「ぉぅぃぇニダ」

     ξ
(;ノAヽ)


148 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:26:20.96 ID:JBIm/XGeO

ミセ*゚ー゚)リ「ざっぷざっぷ洗い物ー」

( ノAヽ)「ちめたいノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「ん、あり? あれって、花?」

( ノAヽ)「? ……あぁ、花なノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「なんて花?」

( ノAヽ)「知らんノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「んー……白、と……紫? 水の中からはえてるんだね、あれ」


 ざぷざぷ、スープを入れていた器とスプーンを洗いながら、ミセリは首を傾げる。
 池の水は冷たくて、指先をきんと冷やす。

 手が痺れる様な感覚をおぼえながら、ミセリは池の真ん中に存在する花を見ていた。


 広くて大きな葉が数枚浮かぶ池の中央。
 その隙間からするりと伸びる、紫と白が混ざった様な色合いの、花。

 形はチューリップの様な、蓮の花の様な、
 花びらが幾重にも重なり、まるっこい形を作っていた。


151 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:28:13.17 ID:JBIm/XGeO

 ミセリが手を伸ばせば届きそうな、そんな距離に存在する花。
 それはそよ風を受けてはふるんと揺れ、頼りなく花びらを靡かせる。

 不思議な花だな、と思いながら
 ミセリは洗い終わった食器を襟巻きの布で拭いて、水気を払った。



ミセ*゚ー゚)リ「んー……暗くなってきたねぇ」

( ノAヽ)「ノネ、今日は寒くなさそうなノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「ニダーさんに感謝だねっ」

( ノAヽ)「ん」

ミセ*゚ー゚)リ

( ノAヽ)

ミセ*゚ー゚)リ「思ったより良い人だったね」

( ノAヽ)「こちょーひょーげんだったのかもなノーネ
      ウワサにはオヒレが付き物なノーネ」

ミセ;゚ー゚)リ「おぉ、難しい事いった」


152 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:30:23.57 ID:JBIm/XGeO

<ヽ`∀´>「終わったニダ?」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、終わったよー」

( ノAヽ)「ちめたかったノーネ」

<ヽ`∀´>「じゃあ今度は暖まるニダ?」

ミセ*゚ー゚)リ?

( ノAヽ)?

<ヽ`∀´>「御飯の用意するニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「手伝う!」

( ノAヽ)「ノネ!」

<ヽ`∀´>「ホルホルホル、じゃあカマドのとこに来るニダ
      うさぎと野菜のシチュー作るニダ」

ミセ*゚T゚)リ ジュルリ

(;ノAヽ)「ヨダレ拭けなノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「あら失礼っ」


154 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:32:06.90 ID:JBIm/XGeO



ミセ*^ヮ^)リ「うまぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

(*ノAヽ)「ウマ───(゚д゚)───!!」

<ヽ`∀´>「ほふほふ、美味しく出来たニダ」


ミセ*゚ー゚)リ「シチューって大柴なくても出来るんだ……知らなかった……」

(*)ノ∧ヽ))ボリボリボリ

<ヽ)`∨´>>ボリボリボリ

ミセ;゚ー゚)リ「やっぱりうさぎのホネまで食べてる……」

(*ノAヽ)「うまー」

<ヽ`∀´>「ホルホル」

ミセ*゚ー゚)リ「お、野菜もなかなか……あちち、パンと合うなー……」

ミセ*´ヮ`)リ「あー……おいしー……しあーわせー……」


157 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:34:44.41 ID:JBIm/XGeO

 早い夕食を終えた二人は、ニダーが用意した小さなお風呂に浸かり
 ここ数日の疲れを癒し、久し振りのその心地よさに、息を吐いていた。

 辺りがすっかり暗くなった頃、スカートを繕って貰ったミセリは
 小屋の中、与えられた小さな毛布にくるまって幸せそうな顔をする。


<ヽ`∀´>「さすがにミセリは床で寝る事になるニダ……申し訳ないニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「ううんっ、毛布貸してくれただけでも十分!」

( ノAヽ)「風も虫もナイノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「そうそう、ありがとうニダーさん!」

<ヽ`∀´>「困った時はお互い様ニダ、さあそろそろ寝るニダー」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい!」

( ノAヽ)「ノネー」


159 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:36:23.36 ID:JBIm/XGeO

 ほう、ほう。
 夜の鳥が鳴く時間。

 ミセリとノーネは小屋の床に寝転がり、小さな毛布に包まれながら眠っていた。

 そんな中、ニダーは出来るだけ音を立てない様に、慎重な動きで小屋を出て行く。

 そっと扉を閉めたニダーは小屋の横手に周り、己が使う猟銃と外套を見つめ
 小さく小さくため息を吐くと、何かの準備を始めた。

 暫くの間そうして準備をしていたニダーの動きが止んだ頃、
 小さな手には、小さなカンテラ。

 カンテラに火を灯したニダーは、窓から小屋の中を覗き
 二人がよく寝ている事を確認してから、小屋から離れて行った。

  _,,
ミセ*- -)リ「うー……」

ミセっ−`)リ「……背中いたい……」

ミセ*゚−`)リ「んー……ん? ……あり、ニダーさん居ない……」


161 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:38:59.68 ID:JBIm/XGeO

ミセ*゚−゚)リ「ノーネ、ノーネ」

( −A−)「のぎゃー……」

ミセ*゚−゚)リ「ねぇノーネ、ニダーさんは?」

( −A−)「んあー? ……知らんノーネ……」

ミセ*゚−゚)リ「ニダーさん居ないの、どこ行ったんだろ」

( つAヽ)「しらんがーなー……」
  _,,
ミセ*゚−゚)リ「もぉっ、起きてっ!」

( ノA⊂)「むぎゃー…………んぁ、あそこにいるノーネ」

ミセ*゚−゚)リ「んぇ?」


 身体を起こしたミセリに揺り起こされたノーネは、目を擦りながら起き上がり
 窓から見える外の景色、ぼんやりとした灯りが森の中へ入って行くのを見付けた。

 ノーネに指差された方に目を凝らし、ミセリは自分の外套を引っ掴むと
 慌てて小屋から飛び出した。


162 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:40:29.53 ID:JBIm/XGeO

( ノAヽ)「ミセリー?」

ミセ*゚−゚)リ「追っかけよっ」

( ノAヽ)「何でなノーネ?」

ミセ*゚−゚)リ「もしかしたら、もしかしたらだよ?」

( ノAヽ)?

ミセ*゚−゚)リ「ニダーさんが、本当に悪い人だったら……?」

( ノAヽ)!

ミセ*゚−゚)リ「追っかけよ、こんな気持ちで明日、ありがとうって言いたくない」

(;ノAヽ)

ミセ*゚−゚)リ「お世話になったのに、変に疑ったの残したままなんてやだ」

(;ノAヽ)「……わ、わかったノーネ」

ミセ*゚−゚)リ「ん、行こうっ」


165 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:42:23.85 ID:JBIm/XGeO

 ミセリに言われ、ノーネも小屋を飛び出して
 静かにドアを閉めたなら、二人はそろって出来るだけ静かに静かに走り出す。

 草や土を踏む音は微かな物の筈なのに、二人の耳にはひどく大きく聞こえた。

 木々の隙間を縫って、森の中へ足を踏み入れる。
 それは言い様も無い暗さで、前方にぼんやりと見える
 カンテラの小さな明かりと、ニダーの後ろ姿を頼りに走っていた。


 ほう、ほう。
 夜の森は、恐ろしい。

 何時もは寝ているこの時間、夜の闇はひどく濃い。
 何が居るかも分からない程の暗闇は、まるで大きく開いた獣の口。

 すぐ後ろにぬらりとした牙があろうとも
 首筋にぎらりとした爪が掛けられていても、気付かなそうな闇の中。

 夜は落ち着く、けれど闇は恐ろしい。
 飲み込まれそうな、食い付かれそうな、言い様の無い世界。

 二人は闇に押し潰されないように、必死で明かりを追っていた。


166 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:44:28.38 ID:JBIm/XGeO


 走る足を歩くに変えて、ずいぶん近くなったニダーに見付からないように
 ある程度の距離を置き、二人は背中を追っていた。

 ふと、その背中がぴたりと止まり、その場にしゃがみこんでしまった。

 それを見たミセリとノーネは首を傾げ、木に隠れながら、そっとその背中を見詰め


<ヽ`∀´>「また来たニダ」

ミセ;゚−゚)リ!
(;ノAヽ)!


<ヽ`∀´>「今日も花を持ってきたニダ、アレとは違うのが、申し訳ないニダ」

ミセ;゚−゚)リ?
(;ノAヽ)?


169 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:46:27.28 ID:JBIm/XGeO

<ヽ`∀´>「昨日はお客さんが来たニダ、誰かに会うのは久しぶりで緊張したニダ
      でも嬉しかったから、ウリ、精一杯もてなしたニダ」


ミセ*゚−゚)リ
( ノAヽ)


<ヽ´Д`>「……でもやっぱり、寂しいニダ
      のーちゃん居ないと、寂しいニダ……」

<ヽ´Д`>「分かってるニダ……これは、ウリの罪ニダ
      だからこの罰、忘れないように、…………ニダ」


<ヽつД⊂>「……一人は寂しいニダ、だからのーちゃんも寂しいはずニダ
      いつかウリもそっちに行くニダ……だからその時は、その時は」


がさっ


<ヽつД⊂>!


171 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:48:32.11 ID:JBIm/XGeO

ミセ;゚−゚)リ(のののノーネのばかっ、動いちゃダメでしょっ!?)

(;ノAヽ)(のののノーネじゃなくてミセリなノーネ!)


<ヽ´Д`>「……誰か、居るニダ?」

ミセ;゚−゚)リ

(;ノAヽ)


ミセ;゚−゚)リ「……ごめんなさい」

(;ノAヽ)「ノーネ……」

<ヽ´Д`>「二人とも……」

ミセ;゚−゚)リ「あの、あの、森に入ってくの見付けて、それで……」

(;ノAヽ)「怖くなって、追っかけたノーネ……」

<ヽ´Д`>「……気にしなくて良いニダ、それが当たり前ニダ」


174 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:50:10.35 ID:JBIm/XGeO

ミセ;゚−゚)リ「……ごめんなさい」

(;ノAヽ)「……ノネ」

<ヽ´Д`>「大丈夫ニダ、それより獣とかには会わなかったニダ?」

ミセ;゚−゚)リ「……はひ」

(;ノAヽ)「へーきなノーネ……」

<ヽ`∀´>「ん、なら良かったニダ」

ミセ ゚−゚)リ「……ニダーさん」

<ヽ`∀´>「ニダ?」


ミセ ゚−゚)リ「……それ、は……お墓、?」

(;ノAヽ)「ぁ」


175 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:52:09.52 ID:JBIm/XGeO

 丸くて小さな、ノーネの頭くらいの大きさの石。

 それには何も書いては居ないが、石の前に添えられた白い花が、それを物語っていた。

 丸い石に目を落としたニダーは小さく頷き、その石をつるりと撫でる。


<ヽ`∀´>「ウリの、友達のお墓ニダ」

ミセ ゚−゚)リ「ぁ……」

<ヽ`∀´>「ウリがひとごろしって言われる、その、理由ニダ」

ミセ ゚−゚)リ「……じゃあ、ニダーさん、」

<ヽ`∀´>「ウリはのーちゃんを、この友達を、殺してしまったニダ」

( ノAヽ)「…………」

ミセ ゚−゚)リ「……聞いて、も、良い……の?」

<ヽ`∀´>「……誰かに話したいと、思ってたニダ
      そうすれば、少しは楽になれるかと思って」


179 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:54:17.88 ID:JBIm/XGeO

ミセ ゚−゚)リ「わたしたちでも良いなら、聞く、ます」

( ノAヽ)「聞かせて、なノーネ」

<ヽ`∀´>「……ありがとう、ニダ」


 ミセリとノーネがニダーの後ろに座り、話を聞く体勢に入った。

 それを見たニダーはひとつだけ頷いて、小さな墓石を撫でながら、
 俯きがちに口を開く。

 ニダーの友達の話。
 ニダーが過去に犯した罪の話。

 話すにも、なかなか喉から声を出せず
 細い目を更に細くして、一度だけ、こつり。咳をした。

 そうしてやっと紡がれる、過去の話とその言葉。


183 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:56:23.44 ID:JBIm/XGeO


 ある村に、仲の良い、二人の森の人が居た。

 片方は、緑の体をしたニダー。
 もう片方は紫の体をした、のーちゃんと言う女の子。

 ニダーは昔はワガママで、すぐに怒る、短気な性格だった。
 それをいつもドロップキックで黙らせるのーちゃんは、面倒見の良い優しい性格。
 会った頃はよく喧嘩をして、まるで漫才の様なやり取りをしていたもので。

 けれど二人はとても仲が良く、ある日ニダーが森を一人で生きてみたいと言った時
 それにくっついて、のーちゃんも一緒に村を出た程で。


(゚A゚*)「ニダやんほっとかれへんもん、一人にしたら寂しぃて死んでまうやろ?」

(^A^*)「それにうちも、村出て生きてみたかってん
    せやから一緒に暮らしてみよ? 二人やったら、大変なコトも半分ずっこや」


186 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/08(日) 23:58:18.28 ID:JBIm/XGeO

 のーちゃんは手先が器用で、裁縫や料理が上手だったが、泳ぎや狩りは苦手。
 ニダーはその頃どちらかと言うと不器用で、薪を割ったり動物を狩る方が得意だった。

 そんな二人は相性が良いのか、二人で暮らすようになってからは、
 喧嘩も滅多にしなくなり、上手い具合に互いの短所を補う様に。


 そんなある日、のーちゃんが見付けた物は、あの白い花。

 池の中からするりと生える、白い花だった。


(゚A゚*)「ニダやんニダやん」

<ヽ`∀´>「んぇ?」

(゚A゚*)「あの花、キレイやなぁ」

<ヽ`∀´>「ん、あぁ、確かにキレイニダ」

(゚A゚*)「……」

<ヽ`∀´>「……」


188 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:00:16.84 ID:iaI8COtDO

(゚A゚*)「……」

<ヽ`∀´>「欲しいニダ?」

(゚A゚;)「や、いや、い、いらんよっ!?」

<ヽ`∀´>「ホルホルホル、なら我慢ニダー」
 ,_
(゚A゚*)「ぬぅ……」

<ヽ`∀´>「それよりのーちゃん、今日はブタの鍋ニダー」

(゚A゚*)「ブタ狩ったん? ほんに狩りはうまいんやねぇ、ニダやん、狩りは」

<;ヽ`∀´>「強調せんでくれニダ……」

(゚A゚*)〜♪

<;ヽ´Д`>

<;ヽ´Д`>「か、カナヅチのくせに……」

(゚A゚#)「なんやゆうた?」

<;ヽ´Д`>「ごめんなさい何も言ってないニダ」


190 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:02:04.76 ID:iaI8COtDO

 その日を境に、のーちゃんは池の淵で白い花を見詰める様になった。

 自分の仕事を終えると、特に何をするでもなく、ただただ花を見詰める。
 そしてニダーが狩りから帰ってくると、食事を作ってはまた花を見詰める。

 まるで花に恋をしているみたいだと思いながらも、ニダーは何も言わず
 何時もと変わらずに狩りをするために森へと入って行く。

 花を取ってあげる事も出来たけれど、本人が欲しいと言わない限り
 勝手に咲いてる花を摘んではいけない、そんな気がして、何もせずに居た。


 そんなある日、


<ヽ`∀´>「狩ってくるニダー」

(゚A゚*)「いってらっしゃーい」

(゚A゚*)

(゚A゚*)「……キレイやなぁ……ほんに」


193 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:04:17.67 ID:iaI8COtDO

(゚A゚*)「…………欲しい、かも……」

(゚A゚*三*゚A゚) キョトキョト

(゚A゚*)「ニダやんにゆうのは忍びないし…………よっし!」


 池の縁に四つん這いになり、右手を花へと伸ばす。
 指先までぴん、と伸ばしても、花にはあと少しと言うところで届かなくて。


(゚A゚#)「んぎぎぎぎっ……あと、ちょっと……やのにっ!」


 身を乗り出して、花の茎を掴もうと手を伸ばして。


 ずるり、体を支える左手が滑って。

 ぐらり、視界が傾いた。



194 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:06:32.47 ID:iaI8COtDO

(゚A゚;)「きゃああああっ!?」


 ざぱん、と小さな体が水の中に投げ出された。

 全身を包む冷たい水に抱いた激しい恐怖が、のーちゃんの頭を混乱させる。

 落ち着いていたならば、力を抜いて水に浮かべば助かった。
 けれどのーちゃんは泳げなくて、水に落ちたと言う事だけで、パニックに陥り。


(゚A゚;)「あぶっ、げほっ……ニダやっ、ニダやんっ! 助、けっ! ごほっ、ぇほっ」


 ばしゃばしゃともがいて、もがいて、友人の名前を必死に呼びながらもがいて。

 少しずつ少しずつ、体力を消耗するその体は、沈んで行く。

 恐怖と苦しさで溢れ出る涙は水に溶け、沈む口許からは空気が溢れる。


197 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:08:18.17 ID:iaI8COtDO


<ヽ`∀´>「────ん?」


 猟銃を肩に担いでいたニダーが、ふと、来た道を振り返る。

 なんだか呼ばれた気がする。

 そう思ったニダーは、首を傾げながらも来た道を戻って行った。
 狩りはまだ時間に余裕があるし、保存食もある。

 のーちゃんに怒られるかも知れないが、夕飯にはありつけるだろう。


 そう、鼻唄混じりに歩くニダー。
 その耳に、水面を叩く奇妙な音が届いた。


<ヽ`∀´>「水の音……? 洗濯にしては、音が……」

<;ヽ`∀´>「…………まさか」


 頭に駆け巡った想像は、ひどくひどく、嫌な物だった。


200 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:10:25.09 ID:iaI8COtDO

 あの花を摘もうとしたんじゃ。

 足を滑らしでもしたんじゃ。

 溺れてしまっているんじゃ。


 そんな事がぶわりと頭に浮かび、ニダーは担いでいた猟銃を投げ捨てて
 息を切らしながら、小屋のある空間まで走って戻った。

 全速力で走って、走って、水の音が弱々しくなった頃
 やっとたどり着いた、小屋の前。


 池の水面からは、小さな紫色の手だけが、覗いていた。


<;ヽ`Д´>「のーちゃんっ!!」


 池に駆け寄って、水面から出る手に自分の手を伸ばす。

 けれど、けれど、その手は、



 とぷん。

203 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:12:53.34 ID:iaI8COtDO

 指先同士が触れようとしたその時に、水に沈んだ紫の手。

 こぽこぽと浮かんでくる泡で、池を覗き込んでものーちゃんの姿は見えない。

 ニダーが慌てて大きく息を吸い、池の中へと飛び込んだ。
 けれど慌てているからか、なかなか何時もの様に上手く泳げなくて。

 水底へ向かって水をかくニダーの口から、ごぽり、空気が溢れる。
 突然押し寄せた息苦しさに眉を寄せて、水面へ上がろうとした瞬間。

 一瞬だけ見えた物は、

 ゆっくりと沈んで行く、青い顔をしたのーちゃんの姿で。


 水面に上がって呼吸を整え、再び水の中へ。

 けれどそれ以降、泳げども泳げども、のーちゃんの姿は見付からなくて。


 のーちゃんが沈んで十分以上が経った頃、やっとニダーは池の淵へと上がった。
 全身を震わせながら、びしょ濡れの自分の体を抱く。


205 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:14:32.63 ID:iaI8COtDO

 だらりとした、力の抜けた手足が水に揺れながら沈んで行った。

 真っ青になった顔が、閉ざされた瞼が、酸素を吐き出す事をやめた口が。


 のーちゃんはもう、見つからなかった
 もう、どこにも居なかった。

 自分がころした。


:<ヽつД⊂>:「ぁ、あ……あぁっ…………の、ちゃ……」


 この体はどうして震えているのだろう。

 寒いからか、怖いからか、寂しいからか。

 わからない、わからない、
 けれど体が震えて、途切れ途切れの声ばかりが、口から溢れ出た。

   _,,
:<ヽ;Д;>:「の、ぢゃ……のーちゃんっ、のーちゃんっ!!
       ウリがっ、のーちゃ、をっ……!!
       ッうぁああああぁぁあぁあああああっ!!!!」



206 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:16:15.90 ID:iaI8COtDO


 それからニダーは、何も入っていない墓を森の中に作った。
 そして毎日、毎日、白い花を供えに行く。
 欲しがっていた花では無いけれど、白い花を。


 ある時二人の様子を見に訪れた村人が、のーちゃんの死を聞かされる。

 その時、村人はニダーを励まして村に戻るか聞いたけれど
 ニダーは首を横に振り、償いの為にも一人で生きると、そう答える。

 その話しに尾ひれがついて、森の池のほとりには
 ひとごろしが住む、と言われる様になった。

 風の便りでそれを聞いたニダーは、これも罰だと俯くだけ。

 毎日毎日、花を届ける
 それが賠償だと自分に言い聞かせて。

 毎日毎日、謝罪する。
 これが自分の罪だと胸を痛めて。


 あの時、花を摘んであげていれば。
 のーちゃんは苦しまなくて、済んだ筈なのに、と。

 渦巻く後悔の海から、抜け出せやしない。

208 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:18:37.26 ID:iaI8COtDO


<ヽ`∀´>「……と、言う事ニダ」

ミセ ゚−゚)リ「……ぁ、う」

( ノAヽ)「……」

<ヽ`∀´>「申し訳ないニダ、こんな湿っぽい話。
      ぼちぼち寒くなってきたニダ、そろそろ小屋に戻るニダ」

ミセ ゚−゚)リ「は、い…………あの、ニダーさん」

<ヽ`∀´>「どうしたニダ?」

ミセ ゚−゚)リ「わたし、ミセリ、どう言えば良いかわからない、けど……その」

<ヽ`∀´>「……」

ミセ ゚−゚)リ「……いっぱい泣いて、良いと、思う……の……
     ……ごめんなさい、行こうノーネ」

( ノAヽ)「……ノネ、先に戻るノーネ……ニダー、また、朝、ノネ」

<ヽ`∀´>「ホルホルホル、先に寝ててニダ」

ミセ ゚−゚)リ「はぅ、い……」

( ノAヽ)「……おやすみなノーネ」

210 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:20:26.80 ID:iaI8COtDO

<ヽ`∀´>「……」

<ヽ`Д´>

<ヽ;Д´>

<ヽつД;>

<ヽつД⊂>



 暗い暗い森の中、しゃくりあげる声ばかりが響いていた。

 ミセリとノーネはそれを背中で聞きながらも、聞こえない顔で森を歩く。

 絶えず聞こえる泣き声と謝罪は、ずっと聞いてなんて、居られなかった。


212 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:22:07.35 ID:iaI8COtDO

ミセ ゚−゚)リ「……ミセリ、ひと、殺したよね」

( ノAヽ)「……」

ミセ ゚−゚)リ「でも、でもね、ミセリには、ニダーさんの気持ちはわかんない」

( ノAヽ)「……ノネ」

ミセ ゚−゚)リ「だって、全然ちがう、ちがうんだよ、気持ちとか、ぜんぶ」

( ノAヽ)「……」

ミセ ゚−゚)リ「だから、だからね…………ミセリ、
     ミセリにもその気持ちわかるよ、とか……言っちゃいけないんだ」

( ノAヽ)「……ん」

ミセ ゚−゚)リ「どんなに苦しいか、ミセリにはわかんない
     だから余計なことは言っちゃダメなんだよ、失礼なんだ」

( ノAヽ)「じゃあ、ミセリはどうするノーネ?」

ミセ ゚−゚)リ「わかんない、けど……ミセリが殺した赤いのの事
     忘れないように、ちゃんと、ちゃんと、覚えとこうと……思う」

( ノAヽ)「ん……あとは、もっといっぱい、悩めばイイと思うノーネ」


215 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:24:32.16 ID:iaI8COtDO

ミセ ゚−゚)リ「……ミセリ、がんばる、がんばって、いっぱい考えるから」

( ノAヽ)「ノネ」

ミセ ゚−゚)リ「だからさ、ノーネ……ミセリ、怒ってよね」

(;ノAヽ)「むぁぁたノーネに世話かけさせるノーネ?」

ミセ*゚ー゚)リ「……ん!」

(;ノAヽ)「めいっぱいうなずくなノーネ……」

ミセ*^ー^)リ「えへへ、ミセリ……ノーネと会えて良かったかも」

(;ノAヽ)「オマエ、まだ会ってスウジツってわかってるノーネ……?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん!」

(;ノAヽ)=3

( ノAヽ)

( ノAヽ)(アホにひっかかったノーネ……)

( ノAヽ)(……まあワルくナイノーネ)


216 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:26:12.12 ID:iaI8COtDO


 翌朝、ミセリとノーネが起きて顔を洗い終わった頃、
 朝食の用意を終えたニダーが、大きめの皮袋を二人に差し出した。

 天気も良く、気温も少し高めで暖かい。
 そんな中で差し出された袋を、ミセリは受け取って首をかしげる。


ミセ*゚ー゚)リ「これ、は?」

<ヽ`∀´>「保存食ニダ、二人でなら暫くはもつと思うニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「え、う、うわぁっ! 干し肉とかいっぱいだっ!」

(*ノAヽ)「フォォォォウ……」

<ヽ`∀´>「ホルホルホル、育ち盛りなんだから肉は大事ニダ。
      さ、ご飯にするニダー」

ミセ*^ー^)リ「うわぁっ、あんがとっ! ごっはん、ごっはん!」

(*ノAヽ)「メシメシ」


218 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:28:07.30 ID:iaI8COtDO


ミセ*´ヮ`)リ「お腹いっぱい……しあーわせー……」

(*ノAヽ)「ぐぇぽ……ごちなノーネ……」

<ヽ`∀´>「ほら、そろそろ用意するニダ
      ずっとそうしてたら日が暮れるニダ?」

ミセ*´ヮ`)リ「はぁーい……」

(*ノAヽ)「ノネー……」


 朝食を食べ終わり、満たされたお腹を撫でるミセリとノーネ。
 その背中をぽんぽんと叩いて、ニダーは出発の準備を促す。

 言われるがままに服装を整え、マントを羽織って布を首元に巻くミセリ。
 保存食を詰めてもらった皮袋を背負い、紐を肩に巻き付けるノーネ。

 出発の準備が終わり、ミセリが靴を履き直した頃。
 んっ、と腕を上げて背筋を伸ばしたミセリとノーネは、ニダーに向き直った。


221 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:30:21.88 ID:iaI8COtDO

ミセ*゚ー゚)リ「……ニダーさん、色々ありがとうございましたっ!」

( ノAヽ)「ノネ」

ミセ*゚ー゚)リ「ご飯と毛布と、食べ物まで、ホントにありがとうございましたあっ!」

( ノAヽ)「ノネ」

ミセ;゚ー゚)リ「ちゃんと言おうよノーネ……」

(;ノAヽ)「の……のね……」

<ヽ`∀´>「ホルホルホル、構わないニダ!
      ウリも久々に楽しかったニダ、じゃあ、行ってらっしゃいニダ!」

ミセ*゚ー゚)リ「あの、ニダーさんも…………ううん! 行ってきます!」

( ノAヽ)「い……行ってくるノーネ!」


223 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:32:04.36 ID:iaI8COtDO

<ヽ`∀´>ノシ

<ヽ`∀´>ノ

<ヽ`∀´>

<ヽ`∀´>「…………はふ」


 森の中へと入って行く二人を、手を振って見送ったニダー。
 腕を降ろして溜め息を吐き、池の真ん中に生える花に目をやった。

 あの時は白かった花は、いつのまにか白と紫に変化していた。
 それに気付いたのはずいぶん前で、けれど、あえて何も考えずにいたのだ。

 余計な事は考えまいと、頭のどこかに蓋をしていたのだろう。


 けれどそれは、間違いだったのかも知れない。


226 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:34:22.84 ID:iaI8COtDO

 池の淵に立ち、真っ直ぐに花を見つめる。
 たった一人、誰よりも大事な友人を思い出して、拳を強く強く握った。


<ヽ`Д´>「…………のーちゃん」


 ぽつり、小さく名を呼んだ。
 当たり前の様に、返事は返ってこない。

 けれどニダーはもう一度、口を開く。

 そんな権利は無いと追いやっていた気持ち、ずっと胸に秘めていた気持ち
 孤独に負けたのではなくて、自分を成長させたくて。

 一度強く目を瞑り、真剣な顔で、花を見つめた。


<ヽ`Д´>「……ウリ、行ってくるニダ
      少しの間、花を供えられないけど、ごめんニダ」

<ヽ`Д´>「帰ってきたら、ずっと、ここに居るニダ
      だから、だから!」


 『もう、気にせんで』



228 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:36:15.80 ID:iaI8COtDO

 ニダーは駆け足で小屋の横手に向かい、帽子とマントを大慌てで着込んだ。

 そして猟銃と荷物を肩に抱き、花に向き直って、めいっぱい頭を下げる。

  _,,
<ヽ;Д;>「っ……行ってくるニダ! のーちゃん!
      少しだけ、少しだけっ、留守を頼むニダっ!!」


 『行ってらっしゃい、ニダやん』

  _,,
<ヽ;Д;>「行って、っきますッ!!」


 そしてニダーは、二人の後を追い、森の中へ走って行った。
 涙を手の甲で拭いながら、肩を震わせて。



 誰も居なくなった、池のほとりにある小さな小屋。

 池の中央では、白と紫の花が、風にゆらゆら揺れていた。


 (^A^*)『ほんに、ニダやんは手ぇかかるなあ』


230 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/09(月) 00:38:08.63 ID:iaI8COtDO

「待ってニダー!」

「あ、ニダーさん」

「どうしたノーネ?」

「ウリも、連れてってほしいニダ!
 邪魔にならない様にするニダ、だからっ」

「……」

「……ミセリ、」

「にひひっ、いいですとも! 一緒に行こう!」

「ぁ……ありがとうニダ! これから、よろしくニダ!」

「こちらこそ、ニダーさん!」

「よ、よろしくなノーネっ」



二話、おわり。

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