1 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:24:21.32 ID:L/YEYVZFO

7xさん
ttp://nanabatu.web.fc2.com/boon/miseri_hennna_mori.html
ブーン文丸さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/forest/forest.htm

まとめて下さってます、ありがとうございます。



あらすじ

・ミセリが
・喧嘩して
・タカラでぃと会う


三話後編ハジマルヨー

2 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:26:19.07 ID:L/YEYVZFO

 分かってた。
 もう誰も居ないと。

 分かってる。
 家族はここに居ると。


 けれど今は言えないから
 もっともっと大きくなる。


 行ってきますは、居場所のアカシ。



3 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:28:17.69 ID:L/YEYVZFO


 【ミセ*゚ー゚)リ 変な森のようです】


  第三話 後編 『ひとりぽっち。』



 大きな体に満ちる孤独は、きっと誰にも理解できないけれど。



4 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:30:20.26 ID:L/YEYVZFO


(#゚;;-゚)「ミセリ、これ」

ミセ*゚ー゚)リ「ん、食べれる実?」

(#゚;;-゚)「うん……いっぱい集めて、お菓子に、しよ?」

ミセ*^ー^)リ「うん! いっぱい出来たら、ノーネとニダーにもあげて良い?」

(#゚;;-゚)「ノーネと、ニダー?」

ミセ*゚ー゚)リ「わたしの友達、一緒にね、旅してんの」

(#゚;;-゚)「旅……うん、あげて」

ミセ*゚ー゚)リ「あんがと、でぃ!」

(*#゚;;-゚)「……でぃも、いっぱい出来たら、あげる」

ミセ*゚ー゚)リ「タカラに?」

(#゚;;-゚)「ん……タカラと、」

(,,^Д^)「でぃさーん、ミセリさーん」


5 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:33:12.91 ID:L/YEYVZFO

ミセ*゚ー゚)リ「あ、タカラだ」

(#゚;;-゚)「どう、したの? タカラ」

(,,^Д^)「ちょっと魚取りに行ってきますー!」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい!」

(#゚;;-゚)「はーい」

ミセ*゚ー゚)リ「……で、タカラと誰に?」

(#゚;;-゚)「んと……後で、会わせる、ね?」

ミセ*゚ー゚)リ「んー……うん、わかった! あ、これキレイ」

(#゚;;-゚)「わ、キレイな、石」

ミセ*゚ー゚)リ「……もらっちゃえ!」

(#゚;;-゚)「どうする、の?」

ミセ*^ー^)リ「友達にあげる! 誕生日だったから、少し遅いプレゼント」

(#゚;;-゚)「ミセリ、いいこ」

ミセ*゚ー゚)リ「もー、くすぐったいよでぃ」

7 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:36:11.01 ID:L/YEYVZFO

(#゚;;-゚)「……でぃ、女の子の友達……はじめて」

ミセ*゚ー゚)リ「そうなの?」

(#゚;;-゚)「ん……だから、嬉しい、です」

ミセ*^ー^)リ「えへへっ、わたしも嬉しいよ!」

(*#゚;;-゚)

ミセ*゚ー゚)リ「あー、でも……」

(#゚;;-゚)?

ミセ*゚ー゚)リ「ノーネとニダー探さなきゃ、心配してるだろうし、謝りたい」

(#゚;;-゚)「ぁ…………うん……そう、だね」

ミセ*゚ー゚)リ「……大丈夫、ここ出てっても、わたしとでぃは友達だよ」

(#゚;;-゚)「あ、ぅ……うんっ」



8 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:37:14.51 ID:L/YEYVZFO
書き忘れてた、閲覧注意です

9 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:39:08.67 ID:L/YEYVZFO


 てっこらてっこら。
 森を歩く、二人の森の人。

 小さな緑の足は忙しなく動き、仲間の名を呼んでいた。


( ノAヽ)「ミセリー!」

<ヽ`∀´>「ミセリーっ、どこニダーっ!」

( ノAヽ)「むぃいせるぃいいいい!!」

<;ヽ`∀´>「ノーネ、こわいニダ」

( ノAヽ)「エフン」


 二人で三人分の荷物を分けて持ち、ミセリを呼びながら森の中を歩き回る。

 ノーネの目は少しだけ赤く腫れていて、ニダーはそれに気付かないふり。


11 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:42:05.68 ID:L/YEYVZFO

 朝になり、二人は軽い食事をしてから、いそいそとミセリを探し始めた。
 まだ少し寝ぼけた目を擦りながら、大きな声でミセリを呼ぶ。

 足はだるいし、寝不足で頭が重い。
 ろくに物も食べていないから空腹で、お腹は今にも鳴りそうで。

 それでも、空腹よりも眠気よりも、ミセリが心配。

 ミセリがタカラに助けられた事を知らない二人は、
 せっせと木の上や草むらを覗いてはミセリを探す。


( ノAヽ)「居ないノーネ……」

<ヽ`∀´>「まだまだ、探し始めてちょっとしか経ってないニダ!」

( ノAヽ)「ん。みーせりー!!」

<ヽ`∀´>「どこニダー!!」


13 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:45:16.97 ID:L/YEYVZFO

 森をうろうろ、あてもなくミセリを探して歩く二人は
 いつの間にやら、小さな川が流れる岩場へと辿り着いて居た。

 そこは昨日、ミセリが大きな影を見た岩場。
 そして、タカラとでぃが住む岩場。


 足元に転がる大小の、石ころとも言える様な物がごろごろ転がる道。
 そんな足場の悪い道をよたよたと歩く二人は、喉の渇きを覚えて立ち止まる。


( ノAヽ)「……みず」

<ヽ`∀´>「飲むニダ?」

( ノAヽ)「飲むノーネ、のどカラカラなノーネ」

<ヽ`∀´>「ん、じゃあ飲むニダ。ウリも喉カラカラニダ」


17 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:48:16.58 ID:L/YEYVZFO

 ノーネの一言で、ニダーは荷物の中から木の器を取り出す。
 それを川の水面にそっと入れて、透明な水を器に満たした。

 ニダーが水の入った器をノーネに差し出すと、小さな手がそれを受けとり
 器に口を付けて水をぐいぐい飲み込めば、胸いっぱいに冷たさを感じた。

 潤った喉に、ぷはあと息を吐き、ノーネは空になった器をニダーに返す。


 そして同じようにもう一度水を汲み、今度はニダーが喉を潤して


( ノAヽ)「イキカエルー」

<ヽ`∀´>「ルー」


 気の抜けた顔と声で、潤った喉に少しだけ満たされた腹に喜ぶ二人。

 数秒だけ気の抜けた顔をして、すぐに表情をしゃんとさせ
 そそくさと荷物を片付け、再びミセリを探す。

 互いの切り替えの早さには何も言わず、二人は川沿いを歩き始めた。


が、その足は、すぐにぴたりと動きを止める。

18 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:51:04.41 ID:L/YEYVZFO

( ノAヽ)「ミセリー!」

<ヽ`∀´>「どこニダー!」

( ノAヽ)「ミーセリー!」

<ヽ`∀´>「どーこニダー!」

( ノAヽ)「ミセ、」

<ヽ`∀´>「どこ…………ん?」

( ノAヽ)

<ヽ`∀´>?

(;ノAヽ)

<ヽ`∀´>「どうしたニダ? ノーネ」

(;ノAヽ)「…………ニダー、うしろ……」

<ヽ`∀´>「うしろ?」


19 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:54:07.60 ID:L/YEYVZFO

 ノーネがふと、自分の後ろを歩いていたニダーを振り返ると、
 ノーネは言葉を途中で切り、冷たい汗を流しながら固まってしまった。

 それを訝しく思ったニダーが、首を傾げてノーネに問い掛けるも
 ただノーネは、ぎこちない動きでニダーの後ろを指差すだけ。


 ん? と軽い動作で後ろを向くと、そこには、

 そこには、ひどく大きな、暗い影。


<;ヽ`∀´>「…………ニダ?」


 ニダーを覆う様に落ちる大きな影、逆光で暗くしか見えないその姿。

 それは、ミセリが言っていた「大きな影」そのもので。
 ああ本当だったんだ、と、二人は妙に冷静な頭の左側で、そう思った。


25 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 20:57:04.62 ID:L/YEYVZFO

 そして、大きな影と暫く見つめあってから、


三(;ノAヽ)「のぎゃ───────っ!!!!」

三<;ヽ`Д´>「アイゴ──────っ!!!!」


 脱兎の如く。


 悲鳴を上げて走り出した二人に、影は驚いた様に少しだけ揺れ、
 のそり、と岩場をよじ登って、その奥の草むらへと潜り込んで行った。

 背を向けて走る二人の目には、そんな光景は写らない。
 ただ妙な威圧感から逃げよう逃げようと、全速力で走って、

     ドンッ
Σ<  ;ヽ>そ ;ノ)゙そ コケッ


 転んでいた。


27 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:00:13.01 ID:L/YEYVZFO

(;ノAヽ)「どどどどうするノーネ食われるノーネ!!」

<;ヽ`Д´>「くくくくく食われると決まったわけじゃないニダ!!」

(;ノAヽ)「ミセリが言ったのホントだったノーネっ! やばいノーネっ!!」

<;ヽ`Д´>「ととととと取り敢えず逃げげげげげげ」

(,,^Д^)「大丈夫ですか?」

(; A )そ「ヒィっ!!」

<;ヽ Д >そ「アイゴォっ!!」


(; A )

<;ヽ Д >


(; A )?

<;ヽ Д >?

(,,^Д^)?


31 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:03:17.44 ID:L/YEYVZFO

(,,^Д^)「…………大丈夫ですか?」

(;ノAヽ)「……ノネ?」

<;ヽ`Д´>「……ニダ?」

(,,^Д^)「ええと……お怪我、は?」

(;ノAヽ)

<;ヽ`Д´>


( ノAヽ)+「ナイノーネ」

<ヽ`∀´>+「ないニダ」


(,,^Д^)?


 すい、と平静を装い、爽やかに格好を付けながら言う二人に
 タカラは不思議そうに首を傾げて、小さく頷いた。


34 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:06:03.75 ID:L/YEYVZFO

 転んだ状態のまま混乱していたノーネとニダーに、のんびりと声をかけたのは
 釣具を肩に担いだ、水色の森の人、タカラだった。

 地面に俯せで倒れたまま必死な顔をする二人の姿は、ひどく滑稽に見えて
 けれどタカラは不思議そうな顔のまま、そんな二人を立ち上がらせるだけで。


(,,^Д^)「……どうしたんですか? こんなところで」

<ヽ`∀´>「その、さっき大きいかモルスァ」

( ノAヽ)「ヒトを探してるノーネ」

<;ヽ#)Д`>

(,,^Д^)「ヒトを、ですか? それより大きいのとは?」

<;ヽ#)Д`>「お、大きい影ヘギョミツ」

( ノAヽ)「ニンゲンのコムスメ探してるノーネ、でこっぱちの」

<;ヽ#)Дメ>

(;,^Д^)? ?


39 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:09:11.36 ID:L/YEYVZFO

(;,^Д^)「え、ええと……?」


<;ヽ#)Дメ>(ノーネ、何で殴るニダ……)

( ノAヽ)(タニンに言ったらおかしく思われるにきまってるノーネ)

<;ヽ#)Дメ>(で、でも確かに見たニダ?)

( ノAヽ)(よけーなコトは言うなノーネ、さわらぬカミになノーネ)

<;ヽ#)Дメ>(アイゴー……)


(;,^Д^)? ? ?

( ノAヽ)「あ、なんでもないノーネ」

(;,^Д^)「はぁ……で、その……?」

( ノAヽ)「ニンゲン、探してるノーネ。デコムスメ」

(,,^Д^)「デコ……」

<ヽ`∀´>「赤と白の服で、ウリたちを縦に2、3個かさねたくらいの大きさニダ」


42 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:12:16.03 ID:L/YEYVZFO
(,,^Д^)「赤と白で、大きさが2、3個……」

ミセ*゚ー゚)リ「タカラー! でぃがお昼食べるのかってー!」

(,,^Д^)「あ、あんな感じですか?」

( ノAヽ)「あーそうそう、あんな感じなノーネ」

<ヽ`∀´>「そうそう、あんな感じニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「タカラー!?」

(,,^Д^)「あ、食べますー!」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい!」


( ノAヽ)

<ヽ`∀´>

ミセ*゚ー゚)リ

  _,,
(;ノAヽ)そ
   _,,
<;ヽ´Д`>そ
  _,,
ミセ;゚Д゚)リそ

45 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:15:19.79 ID:L/YEYVZFO
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「ノーネとニダ───────っ!!?」
  _,,
(;ノAヽ)「ミセリ──────っ!!?」


(,,^Д^)「あ、やっぱりミセリさんでしたか」

<;ヽ`∀´>「す、すみませんニダ、ご迷惑おかけしてませんニダ?」

(,,^Д^)「いえいえ、無事お会い出来て良かったです」


ミセ*゚ー゚)リ「ノーネにニダーっ! 良かったぁ会えて!」

( ノAヽ)「の、ノネ……」

ミセ*゚ー゚)リ「ん? どったの?」

(;ノAヽ)「あー……うー……」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、そうだ。昨日はごめんね、ムキになって
      ノーネが嫌いとか、本当じゃないから、好きだかんね?」

(;ノAヽ)「ぐぇ」

<;ヽ`∀´>(タイミングが……)


49 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:18:30.29 ID:L/YEYVZFO

(;ノAヽ)「の…………ノーネもワルかったノーネ……キライは嘘なノーネ……」

ミセ*゚ー゚)リ!

ミセ*^ー^)リ「えへ……あんがとノーネ、大好きよ、ごめんね!」

(;つA)「の、のぎゃー……」


 ようやく再会出来た、ミセリとノーネとニダー。

 ミセリはぼそぼそと不器用な謝罪をするノーネを抱き締めて、
 ノーネは不慣れな事をした為、戸惑いがちに顔を手で覆う。

 ニダーはミセリとの再会を噛み締める暇もなく、
 タカラに頭を下げて、お礼と謝罪を口にしていた。

 それでも何とか再会を果たした三人。
 その事実だけで、三人は安堵する事が出来た。


51 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:21:14.25 ID:L/YEYVZFO

<ヽ`∀´>「ミセリ、怪我とかしなかったニダ?」

ミセ*゚ー゚)リ「してないよ、あんがとっ」

<ヽ`∀´>「ん、ああそうニダ」

ミセ*゚ー゚)リ?

<ヽ`∀´>「さっき、か」

( ノAヽ)「影を見たノーネ」

<ヽ´Д`>

ミセ*゚ー゚)リ「影?」

<ヽ´Д`>「お、大きいか」

( ノAヽ)「デカイ影なノーネ」

<;ヽ´Д`>


56 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:24:10.40 ID:L/YEYVZFO

ミセ;゚ー゚)リ「ノーネ、セリフ取ってやんないの」

( ノ3ヽ)〜♪

<ヽ´Д`>

ミセ;゚ー゚)リ「もー……で、おっきい影? わたしが見たやつ?」

( ノAヽ)「たぶんそうなノーネ、ぎゃっこーでよく見えなかったノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「……」

( ノAヽ)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「見間違い?」

(;ノAヽ)「……ワルかったノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、ニダーこれあげる」

<ヽ`∀´>「? 青くて透明な石、ニダ?」

ミセ*゚ー゚)リ「誕生日、過ぎちゃったけどプレゼント」

<*ヽ`∀´>


57 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:27:16.26 ID:L/YEYVZFO
( ノAヽ)「で」

(,,^Д^)「大きい影ですか」

( ノAヽ)そ

ミセ*゚ー゚)リ「あ、これがノーネであっちがニダーだよ、タカラ」

( ノAヽ)「ノーネなノーネ」

<ヽ`∀´>「ニダーニダ」

(,,^Д^)「ご丁寧にありがとうございます、私はタカラと申します。
     ところで、大きい影と言うのはネーヨの事ですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「ネーヨ?」

<ヽ`∀´>「……あの大きさは……
      ……まさか、絶滅したって言われてる、恐竜ニダ……?」

(,,^Д^)「あ、そうです、それそれ」

( ノAヽ)「きょーりゅー?」

ミセ*゚ー゚)リ「おっきくて凄いのだよ、トカゲの凄いやつ」

(;ノAヽ)「トカゲ……」


63 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:30:32.85 ID:L/YEYVZFO

(,,^Д^)「トカゲと言うより、森の生き物を大きく長くした感じですね。
     ネーヨはその唯一の生き残りで、人見知りが激しい性格なんです」

ミセ*゚ー゚)リ「へー……」

<ヽ`∀´>「何でその恐竜が、ここに居るニダ?」

(,,^Д^)「私たちが保護した、と言うか……何と言うか……」


 むむ、と腕を組んで言葉を濁すタカラ。
 それは言葉をうまく見付けられないと言った具合で、困った様に頭を傾ける。

 三人な不思議そうにその姿を見つめて、同じように首を傾げた。


 絶滅したと言われている、森の恐竜。

 どうやらそれが、ミセリ達の喧嘩の発端である、大きな影らしい。

 しかしミセリが知る恐竜よりも、影は小さくて雰囲気も違った。
 森と元の世界では、恐竜にも違いがあるのかな、とミセリは頭の片隅で思う。

 それよりも、もし本当に恐竜なのだとしたら、ちゃんとその姿を見てみたくて。


67 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:33:09.93 ID:L/YEYVZFO

 うんうん唸りながら言葉を探すタカラと、それを黙って見守る三人。

 ふと、タカラがいつのまにか釣った魚が入った魚籠を持ち、歩き出す。


ミセ*゚ー゚)リ「タカラ?」

(,,^Д^)「もうお昼ですから、そろそろご飯にしましょうか。皆さんもどうぞ」

<ヽ`∀´>「いや、それは流石に」

ミセ*゚ー゚)リ グーキュルキュル

( ノAヽ) モゲァァァァァァァ

<ヽ`∀´> アイゴォォォォォォ


<;ヽ`∀´>「……申し訳ないニダ、ろくに食べてなかったから……」

(;,^Д^)「え…………あ、あぁ……今のお腹の音ですか……」


70 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:36:37.14 ID:L/YEYVZFO


 結局、三人はタカラの後ろをついて、洞穴の中へと入って行った。

 中の部屋に戻り、昼食の用意をしていたでぃはひどく驚き
 ノーネとニダーの姿に、ミセリの時と同じ様に隠れてしまった。

 けれどミセリが声をかけたらば、でぃはおずおずと姿を現して頭を下げる。
 森の人が相手なら、まだ受け入れやすいのだろう。

 そしてタカラとでぃの好意によって頂いた、質素な昼食。

 みんなで手を合わせてごちそうさまの後、
 でぃは別枠で置いていたパンや木の実を、小さなカゴに詰め込んでいた。

 ミセリは不思議そうな顔でそれを見ていて、首を傾げながら、口を開く。


ミセ*゚ー゚)リ「それは、食べないの?」

(#゚;;-゚)「はい、です……ネーヨの、ごはん」

ミセ*゚ー゚)リ「ネーヨに残してあったんだ、パンとか」

(#゚;;-゚)「ん……ネーヨ大きいから、たくさん、食べなきゃ」

ミセ*゚ー゚)リ「……それで、でぃ達は自分のご飯、少なくしてるの?」

(#゚;;-゚)「……でぃとタカラは小さいけど、ネーヨは大きい、から……」

73 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:39:26.23 ID:L/YEYVZFO

 タカラとニダーが談笑し、ミセリとでぃが小さく話す。
 そのミセリの頭の上に乗り、何も言わずにそれらを見つめるノーネ。


(#゚;;-゚)「タカラ」

(,,^Д^)「はい?」

(#゚;;-゚)「ネーヨのごはん、いってくる」

(,,^Д^)「あ、はい。分かりました、じゃあ僕は夕飯の準備をしておきますね」

(#゚;;-゚)「ん……ミセリ、ノーネ、いく?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん!」

( ノAヽ)「行くノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「ニダーは?」

<ヽ`∀´>「大勢で行くと迷惑ニダ、ウリは待ってるニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「ん、わかった」


75 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:42:12.69 ID:L/YEYVZFO

 行ってきます、と三人が洞穴を出て行く

 その後ろ姿を見つめて、タカラは小さく息を吐いた。
 それを聞いたニダーは不思議そうに首を傾げるが、何も問う事はしなかった。


 ぽつり。
 静かな空気の中で、タカラの呟き。


(,,^Д^)「…………ひとりは、どれだけ苦しいんでしょうか」

<ヽ`∀´>「……?」

(,,^Д^)「……ネーヨはもう、一人しか存在しないんです。
     同じ種族が居ないと言う事は、ひどい孤独だと思います」

<ヽ`∀´>「あ……」

(,,^Д^)「それに、彼は……彼は、」

<ヽ`∀´>「彼、は?」

(,,^Д^)「……仲間の死骸の中で、生きて、きたんです」


76 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:45:04.03 ID:L/YEYVZFO


ミセ*゚ー゚)リ「ねぇでぃ、どこら辺にネーヨって居るのー?」

(#゚;;-゚)「んと、あの上の方……」

( ノAヽ)「岩場のうえなノーネ?」

(#゚;;-゚)「はい、です」

ミセ*゚ー゚)リ「ん、よいしょっと……ね、でぃ?」

(#゚;;-゚)?

ミセ*゚ー゚)リ「ネーヨって、どんな子なの? やっぱり怖い?」

(#゚;;-゚)「少しだけ、怖い、かも…………でも本当は、穏和な性格」

ミセ*゚ー゚)リ「そうなんだ……ノーネと大違いだね?」

(#ノAヽ)「うるせーノーネ」

ミセ*゚ー゚)リ「ほら、そーゆーとこ」


79 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:48:06.63 ID:L/YEYVZFO

 ノーネを頭に乗せたまま、でぃと共に岩場をよじ登り、
 戻ってきた自分のマントを羽織り、草むらを掻き分けて奥へ奥へと進むミセリ。

 時折、木の枝や石ころに引っ掛かっては小さな怪我をし
 それでもガサガサと、慣れた足取りのでぃについて進んで行く。


 その胸には、少しの恐怖と大きな好奇心。
 恐竜に会ってみたい、見てみたい、話してみたい。

 本来ならば恐竜が喋る訳が無いのだが、森に慣れたミセリにすれば
 全ての生き物が人語を解し、話すと言う事は、ほぼ常識に近かった。

 森に慣れたと言う意識も、それを不思議に思う事もなく。
 ただミセリはその柔軟な頭で、異様な筈の森を、あっさりと受け入れていた。


 テレビもゲームも何もない筈なのに、何故かミセリはそれらを恋しく思わない。
 それが何故か、ミセリにはもちろん理解できなくて。気付きすらしなくて。

 ただ、森を満喫する。危機感も持たずに。

 自分はもう元の世界に帰れないと言う事実を、忘れかけて。


81 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:51:15.24 ID:L/YEYVZFO

 がさり。
 ミセリが目の前の草むらを手で押し退けて、その奥を覗いた。

 すると、そこには


( ´ー`)


 大きな体、長い首に、長い尾。
 優しそうな顔をして、とぐろを巻く様に横たわる何か。

 それはミセリが知る恐竜とは、全く違った。
 鱗も牙も爪もない、森の人のまるっこいフォルム。

 本当に、森の人を大きく長くしたような、その姿。

 背中に小鳥をとまらせながら、その恐竜はゆっくりと細い目を開いた。


ミセ*゚ー゚)リ「ネー……ヨ……?」

( ノAヽ)「なノーネ……?」


83 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:54:13.28 ID:L/YEYVZFO

ミセ*゚ー゚)リ「すごい……ちょっと違うけど、恐竜だ……」

(;ノAヽ)「で……でけーノーネ……」

( ´ー`)

ミセ*゚ー゚)リ「ね……ねぇっ、わたしミセリ、あんたがネーヨだよね?」

( ´ー`)

ミセ*゚ー゚)リ?

( ´凵M) = @ ボッ
  _,,
ミセ;゚Д゚)リそ

  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「なななな何!? あっちぃ!!」

(;ノAヽ)「火のタマはいたノーネ! こいつ火はいたノーネ!!」

( ´凵M) = @ @ @ ボボボッ
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「ぎゃーっ!! 燃える燃える火事になるっ!!」

(;ノAヽ)「マントに火ぃついた! 消すノーネ!! 消すノーネ!!」


84 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 21:57:11.41 ID:L/YEYVZFO

 ミセリが声をかけると、何の躊躇いもなく火を吐き出した恐竜、ネーヨ。

 火の玉一つ一つは小さいものの、その内の一つがミセリのマントに当たり
 少しだけ燃え上がったところで、ノーネが土を被せて鎮火させる。

 けれど不思議な事に、火の玉は木に当たっても燃える事はなく、
 じわじわと少しだけ燃えたかと思うと、すぐに火は消えた。

  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「か……火事には、なんないの?」

(;ノAヽ)「木、水分いっぱいだから燃えないノーネ、じゃなきゃ山火事なノーネ……」
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「ま、まぁ……そりゃそうか……」

( ´凵M) = @ ボッ
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「またぁっ!?」

(;ノAヽ)「のぎゃーっ! あぢぢぢぢっ!!」


88 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:00:19.56 ID:L/YEYVZFO

(#゚;;-゚)゙「あ、ネーヨ、居た?」
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「でぃ逃げてーッ!?」

( ´凵M)

(#゚;;-゚)

( ´ー`)

(#゚;;-゚)?

  _,,
ミセ;゚Д゚)リ

(;ノAヽ)


(#゚;;-゚)「ネーヨ……もしかして、火、はいた?」

( ´ー`)

(#゚;;-゚)「……めっ」

(´ー` 三 プイス


90 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:03:07.13 ID:L/YEYVZFO

(#゚;;-゚)「あの、あの、怪我……ない?」

ミセ;゚ー゚)リ「だ、だいじょぶ……ね、ノーネ」

(;ノAヽ)「お……オウフ……」

(#゚;;-゚)「ごめん、ね……ネーヨ、人見知りで……」

ミセ*゚ー゚)リ「んー……ううん、へーきだから! ご飯あげるんだよね?」

(#゚;;-゚)「ん」

ミセ*゚ー゚)リ「よいっしょ……はいネーヨ、あーん」

(´ー` )

ミセ*゚ー゚)リ「あーん!」

( ´ー`)

ミセ*゚ー゚)リ!

( ´凵M) = @ ボッ
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「んぎゃっ!?」


92 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:06:26.24 ID:L/YEYVZFO
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「あぶねー! 顔面コースだったよ今の!?」

(;ノAヽ)「ミセリふく! 焦げてるノーネ!」
  _,,
ミセ;゚Д゚)リ「うわあああスカートがあああああ!!」

(;#゚;;-゚)「ね、ネーヨめっ! めっ!」

(´ー` )

  _,,
ミセ;゚Д゚)リ

  _,,
ミセ#゚Д゚)リ

  _,,て
ミセ; Д(⊂(ノAヽ;)モギ


(;ノAヽ)「ミセリおちけつなノーネ」

ミセ#゚ー゚)リ「……おうよ」


94 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:09:04.85 ID:L/YEYVZFO

(;#゚;;-゚)「で、でぃ……そろそろ戻らなきゃ、だけど……」

ミセ#゚ー゚)リ「ミセリ残る」

(;#゚;;-゚)「わ……わかった……まっすぐ戻ったら、帰ってこれるから、ね?」

(;ノAヽ)「把握なノーネ……」

(;#゚;;-゚)「み、ミセリおねがい、ね……」

(;ノAヽ)「ノネ……」


 ミセリとネーヨの様子を気にしながら、
 でぃは空になったカゴを持って、来た道を戻って行く。

 そのまま立ち去ろうとしたでぃの足が、ぴたりと止まり、振り返る。

 そして、ちょいちょい、と二人を手招きして。


97 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:12:10.14 ID:L/YEYVZFO

ミセ*゚ー゚)リ「どしたの?」

(#゚;;-゚)「あの、あのね、ネーヨ……ね、」

( ノAヽ)「ノネ?」

(#゚;;-゚)「……ずっとひとりだったの。
     恐竜の仲間の、骨にかこまれて……ひとりだったの」

ミセ*゚−゚)リ「え……?」

(#゚;;-゚)「恐竜ね、お肉が美味しいって、ランカクされて……
     人が来ないところに、残った恐竜、みんなでこもって」

( ノAヽ)「……」

(#゚;;-゚)「でも、そこは恐竜のごはん、なくって……
     子供のネーヨだけ、何か食べれるようにしてて」

ミセ ゚−゚)リ「あ、」

(#゚;;-゚)「……けっきょく、ネーヨだけ残して……みんな、ガシして
     それでもネーヨだけ、生きてて……ずっとずっと、ひとりだったの」


99 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:15:11.98 ID:L/YEYVZFO

(#゚;;-゚)「でぃたちがネーヨ見つけた時、痩せ細ってて……
     誰も、なんにも、信じられなく、なってて」

ミセ ゚−゚)リ「……寂しかったん、だね」

(#゚;;-゚)「だから、だからね……でぃたちには、やっと慣れてくれたけど
     初めての人には、すごく、怖くなるの……ごめんね」

( ノAヽ)「なんでオマエが謝るノーネ?」

(#゚;;-゚)「……でぃたち、ネーヨ、家族って……思ってるから
     ……まだ一方的、だけど」

ミセ*゚ー゚)リ「……わかった、ミセリ気にしてないから
      あんまり、怖がらせないようにする」

(#゚;;-゚)「ありがと…………じゃあ、後で」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、またね」

( ノAヽ)「…………ノネ」


102 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:18:09.70 ID:L/YEYVZFO



(,,^Д^)「恐竜は、どちらかと言うと肉付きが良いのは知ってますか?」

<ヽ`∀´>「知ってるニダ、長く生きるからその分の栄養を蓄えてるって、
      むかし、本で読んだ事があるニダ」

(,,^Д^)「はい、それなのに私たちがネーヨを見付けた時、彼はひどく痩せていて
     本当に、目も落ち窪んで、骨と皮だけと言うほどに痩せていました」

<ヽ´Д`>「アイゴー……本当に長い間、何も食べれてなかったんニダ……」

(,,^Д^)「けれど、私たちが彼を保護しようと手を伸ばすと
     彼は細くなった尾を振って私たちを睨み、自分と家族を守ろうとして」

<ヽ´Д`>「ニダ……でも、家族はもう……」

(,,^Д^)「……はい、もう骨になっていました。
     本当に、本当に長い間、そこでそうしていたんでしょうね」

<ヽ´Д`>「……」

(,,^Д^)「恐竜自体、めったに見る事はありません。
     けれど、恐竜が化石などではなく、骨になっているなんて」

106 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:21:08.52 ID:L/YEYVZFO

<ヽ´Д`>「ネーヨは、家族の骨にうもれて生きてたニダ……?」

(,,^Д^)「はい……ほんの少しの食料と、……家族の肉を食んで
     彼は、たったひとりで生きていたんです、他の生き物から身を守り」

<ヽ´Д`>「…………むかし、恐竜をランカクしたからニダ……」

(,,^Д^)「私たち森の生き物によって仲間を失い、危険を感じたんでしょう。
     ネーヨがひとりになったのは、私たちの所為でもあるんですよね」

<ヽ´Д`>「……」

(,,^Д^)「それから、私たちはネーヨに食事を持っていって
     少しでも、彼が心を開いてくれるように、毎日」

<ヽ´Д`>「……心、開いてくれてる、ニダ?」

(,,^Д^)「はい、まだ少しではありますが……
     口をきいてくれるようには、なりましたよ」

<ヽ`∀´>!

(,,^Д^)「私たちは争うのが嫌で、村から離れてここに住んでいます
     ですので、ネーヨや皆さんとも争う事なく、手を取り合いたいんです」

<ヽ`∀´>「……きっと、なるニダ」

(,,^Д^)「……そうですね、そう信じています」

108 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:24:23.67 ID:L/YEYVZFO


 すべすべとした、弾力のある厚い皮膚。
 それは柔らかな森の人とは違って毛もなく、どちらかと言えばゴム質。

 体の大きさも森の人とは段違いに大きくて、
 人間であるミセリよりも、ずっと大きい。

 けれど頭の形は森の人とよく似た、穏和そうな顔につんと立った耳を持つ。

 手足は太く短めで、ずっしりとした重量感。
 尾も長く太く、森の人ならば何人も乗せられる様な大きさ。


 恐竜は本来、人懐こく穏和で優しい性格を持つ。
 森の人の道具が発展し、乱獲されるまでは共存していた。

 けれど恐竜の生き残りであるネーヨは、どちらかと言うと、排他的な性格。
 何も信じず、寄せ付けようとしない。


 けれど彼は、恐竜の中ではまだまだ子供で。
 溢れんばかりの孤独が、今なお強く、まとわりつく。


114 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:28:09.72 ID:L/YEYVZFO

 生まれて間もないネーヨは、家族に連れられてこの岩場へと辿り着いた。

 けれどこの岩場には木が少なく、木の実もなかなか実らない。
 実ったとしても小動物などを優先して、その大きな体に入る事は無かった。


 ほんの少しだけ持ってきた食料は、あっと言う間に底をつく。

 食べなくても暫くは生きていられるからと、
 大人の恐竜は、これから大きくなる幼いネーヨに食料をほとんど与えて。



(おかあさん、どうしてそんなにほそくなったの)

(おかあさん、どうしてこんなにゴツゴツしてるの)

(おかあさん、どうしてあまりうごかなくなったの)

(おかあさん、どうしておとうさんはおきないの)

(おかあさん、どうしてめをさまさないの)



 痩せ細った家族は、もう動かない。


116 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:30:09.77 ID:L/YEYVZFO

 動かなくなった母にすがりながら、ネーヨは空腹に堪えていた。

 けれど耐えきれなくなって、動かない母に噛み付いた。

 ぐずりとした肉はひどく臭って、苦さすら感じた。
 けれど屍肉を食まねば生きられなかった。

 だからネーヨは目を瞑って、腐敗する母を食む。
 何度も吐き出しては、泣きながら食む。


 いつの間にか母は骨になっていて、
 父も、皆も、骨になっていた。

 もうどれだけ腹が減っても、腹を満たそうとすら思わなくなった。
 胃液を吐きながら体を震わせ、痩せこけた体のまま、生き続ける。

 それでも何故か、死にたいとは思わなくて。
 ただただ何も考えず、母の骨に寄り添い、息を潜めて生きていた。

 胸には一つ、もう何も要らないと言う思い。
 もう何も要らないから、このまま眠り続けたい。


119 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:32:17.40 ID:L/YEYVZFO

 朝も昼も、何もせずに眠る。
 けれど夜になると、目が覚めた。

 そうしてネーヨは、少しだけ大きくなった体を震わせて
 夜の闇と共に押し寄せる孤独に、泣く。


 悲痛な泣き叫ぶ声は、森に響いて木々を揺らす。


  オオオオオオオ───────オオオォォォォォォ────

 岩や木々に反響して、地の底から響くようなその声
 それはまるで、大きな大きな獣の遠吠え。


 聞いた森の人を怯えさせ、小動物は逃げて行く。

 けれどネーヨ毎夜毎夜、たったひとりで、慟哭する。
 木々を揺らして、水を震わせ、子供は寂しいと泣き叫ぶ。


123 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:34:11.51 ID:L/YEYVZFO

 ぱたりと泣き声が途絶えたその日。
 タカラとでぃが、ネーヨを見付けたその日。

 ネーヨは怯えて、怒って、側に寄るなと威嚇して。
 それでも根気強く話し掛け、
 何とか食べ物を与えようと、タカラとでぃは足繁く通う。


 いつの間にか、ネーヨは夜に泣かなくなった。

 いつの間にか、ネーヨはそこから離れていった。

 いつの間にか、ネーヨはタカラとでぃの手から物を食べるようになった。

 いつの間にか、いつの間にか


(いつの間に、こんなに大きくなったのだろう)


 家族の元から離れて、屈折しながらもタカラとでぃに心を開いて。
 これが本当に良い事なのか、ネーヨは疑問を抱く。

 何も成長していない。


127 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:36:20.06 ID:L/YEYVZFO

ミセ*゚ー゚)リ「ご飯、美味しかった?」

( ´ー`)

ミセ*゚ー゚)リ「ね、美味しかった?」

( ´ー`)゙ コク

( ノAヽ)「口で言えなノーネ」

( ´ー`)

ミセ*゚ー゚)リ「むぅ、口下手め」

( ´ー`)

( ノAヽ)「……」

( ´ー`)

( ノAヽ)「……」


128 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:38:20.51 ID:L/YEYVZFO

ミセ*゚ー゚)リ「ねぇネーヨ……やっぱり、寂しい?」

( ´ー`)

( ´ー`)「シラネーヨ」

ミセ*゚ー゚)リ「お、しゃべった」

( ´ー`)

ミセ*゚ー゚)リ「……寂しいんでしょ」

( ´ー`)「ウルセーヨ」

ミセ*゚ー゚)リ「いじっぱり?」

( ´ー`)「ウルセーヨ」

( ノAヽ)「……」


131 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:40:22.86 ID:L/YEYVZFO

( ノAヽ)「……ネーヨいじっぱりなノーネ」

( ´ー`)「ウルセーヨ」

( ノAヽ)「ガキー」

( ´ー`)

( ノAヽ)「デカイのは態度とずーたいだけなノーネ、中身はガキなノーネ」

ミセ;゚ー゚)リ「ちょっと、ノーネっ」

( ´ー`)

( ノAヽ)「オマエ、うけいれてナイだけなノーネ
      一人がイヤなクセにいっぴきおーかみきどってるノーネ」

( ´ー`)「ウルセーヨ」

( ノAヽ)「ウルセーじゃないノーネ、ふざけんなノーネ」

( ´ー`)

ミセ;゚ー゚)リ「ちょっとノーネやめなよっ、何ケンカ売ってんのっ?」

(#ノAヽ)「やめないノーネ、こいつイライラするノーネ」


133 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:42:37.28 ID:L/YEYVZFO

 ぐるりと横たわり、ミセリとノーネに顔を背けていたネーヨが、
 のっそり重い動作で長い首を持ち上げて、ノーネに顔を向けた。

 何故かネーヨに対して憤りをあらわにするノーネ
 それを宥めようと、ノーネの頭に手を乗せるミセリ。

 ぱちん、とミセリの手を払い除けて、横たわるネーヨの側まで近付く。
 先端の垂れた耳を揺らしながら、ノーネは僅かに肩を震わせて、ネーヨを睨む。


(#ノAヽ)「オマエ……ナニサマなノーネ?
      オマエ、ホントにひとりだと思ってるノーネ?」

( ´ー`)「……ウルセーヨ」

(#ノAヽ)「ノーネとネーノもカゾクみんな死んだノーネ!
      でもノーネもネーノもオマエみたいになってないノーネ!!」

( ´ー`)「……」

(#ノAヽ)「ノーネとネーノ、カゾクみんな殺されたノーネ!
      ノーネはせーかくワルいけど、でもっ!!」

ミセ;゚−゚)リ「……ノ、ネ……?」


135 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:44:48.06 ID:L/YEYVZFO

(#;Aヽ)「ノーネはっ、ネーノと……ミセリと、ニダー居るから!!
      でもっ、でも、ひとりでも!!」

(#つA;)「ノーネはオマエみたいにっ! いじはるの、してないノーネっ!!」

(#つA)「ちゃんと、……っさみしい時は、さみしいって言うノーネっ!!
      ノーネ、ミセリに謝れたしっ……ひとり慣れるの、嫌でっ!!」

ミセ;゚−゚)リ「ノーネ、ストップ! もう良いから、やめれっ!」

:(#つA):「ノーネいじっぱりやめたノーネっ!! オマエ、ひとりじゃっ」


 感情を抑えきれなくて、支離滅裂になっているノーネの言葉。
 それは何を伝えたいのか、何故怒っているのかすら分からなくて。

 けれどミセリには、込み上げる涙を隠しながら怒鳴るノーネの姿が、
 どうしようもなく痛々しくて、切なくて、胸が痛くて。

 ネーヨに掴み掛かろうとするノーネを、後ろから抱き締めて止めた。

 紡がれる言葉は、ノーネとその幼馴染みであるネーノの過去とか、
 その小さい胸に溜め込んだ感情や、今まで出せなかった言葉で。

 それを聞いたミセリは、何故か、胸が苦しく感じた。


137 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:46:44.29 ID:L/YEYVZFO

 がくりと項垂れて、肩を上下させるノーネは顔を手で覆ったまま。
 ミセリの腕に抱かれたままで、声を上げないようにと奥歯をぎゅっと噛み締めた。

 そんなノーネとネーヨを見比べ、困った顔で戸惑いを隠せずに居て。


( ´ー`)「……一人じゃないのに、言うなーヨ」


 けれどその戸惑いは、ネーヨの言葉によって取り払われる。


 ふい、と顔を反らしてそう呟いたネーヨに、ミセリの表情が固くなり。
 ノーネをそっと解放して、その手に自分の手を少しだけ当てた。

 そして、つかつかとネーヨに歩み寄り。


ばちん


139 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:48:20.28 ID:L/YEYVZFO

 そっぽを向いたネーヨの頬に、ミセリの平手が飛んだ。

 その衝撃に俯いたネーヨが驚いて顔をあげると、
 そこには怒りに顔を赤くしたミセリが、拳を震わせながら立っていて。


(;´ー`)!?
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「謝れっ!」

(#´ー`)?
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「タカラとでぃに謝れっ!
      ネーヨも一人じゃないのに、バカな事言わないでっ!!」

(;´ー`)「……う、ウルセーヨ……」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「うるさいのはあんたでしょ!? どの面下げてひとりだって!?」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「タカラとでぃに助けられてっ! それで生きてて!!」

(;´ー`)「ぁ、う」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「それに感謝もせずに、自分はひとり!?
     ノーネにはわたしたちが居て、ひとりじゃない癖にって!?
     あんたにもタカラとでぃが居る癖に何いってんの!!?」


143 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:50:13.77 ID:L/YEYVZFO

( つAヽ)「ミセリ……」

(;´ー`)「……ぅ」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「ふざっけんな! そりゃあんただって苦しかっただろうけど!
     家族が居なくなって、苦しかっただろうけど!!」

(;´ー`)「…………」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「それでもあんたが今そーして生きてんの、
     タカラとでぃのお陰でしょ!?
     それとも何!? そんなの要らなかったってわけ!!?」

(;´ー`)「ぅ……い、いら、な……」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「黙れ!! 本当は嬉しいんでしょ!?
     あんたタカラとでぃが好きなんでしょ!?
     それなのにそんな事言うの!? あんたバカぁっ!!?」

(;ノAヽ)「ちょ、ちょミセリ……」


145 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:52:11.61 ID:L/YEYVZFO

 ミセリの強い言葉は、ノーネが伝えたかった物とほぼ同じだった。

 けれどその言い方が余りにも強すぎて、高圧的すぎて
 先ほど怒鳴り散らしたノーネが、思わず止めようと手を伸ばす程。

 その甲高い叫びに似た声を、真正面から受けるネーヨは 少しばかり戸惑った顔で
 けれど的確に図星を突かれて、どうすれば良いのか分からずに居た。

 そうして、絞り出した言葉は、


( ´ー`)「…………シラ、ネーヨ……」


 こう、否定に近い拒絶をする事しか、ネーヨは知らない。

 確かにミセリの言う通り、タカラとでぃが側に居る。
 それに対して、感謝を口にした事も、特に感じた事も無かった。

 無理はない。
 家族を失い、何も信じられなくなって、全てに関わりたくないと思っても。

 けれど、それはネーヨの非でもあって。


148 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:54:30.28 ID:L/YEYVZFO

 それでもミセリは、叱られた事のないネーヨを、頭ごなしに叱り飛ばす。

 甘ったれるなと甘ったれが言う姿は、滑稽にも見えるのだろうか。

  _,,
ミセ#゚−゚)リ「っ!! …………じゃあなに?
     ……タカラとでぃが、偽善でやってるとでも言いたいの?」

(;´ー`)「う、ぁ……」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「……っタカラとでぃが偽善であんたを助けるわけないでしょ!?
     そんな事で自分のご飯を減らして!!
     毎日あんたにご飯届けると思うわけ!!?」

( ´ー`)「……減らし、て……?」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「そうよ!! ネーヨは大きいから少しじゃ足りないって!!
     自分たちは少ないご飯で我慢してんのよ!! 偽善でそんな事する!?」

(; − )「…………ぁ……」


150 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:56:19.16 ID:L/YEYVZFO

 叩き付けられた言葉は、知らなかった事実。
 知ろうともしなかった事実。

 ミセリの怒声に、ネーヨは首をだらりと垂らし、俯いた。


 その脳裏には、自分に食料を与えて死んで行った、家族の姿。

 痩せ衰え、動かなくなる母の体。
 満たされない腹に、腐った肉の味。
 冷たく固い白骨。

 孤独に泣き叫んだ夜の冷たさが、背筋を駆け抜ける。


 でぃの少し怯えた指先。
 タカラの困った様な笑顔。
 小さな手の暖かさ、その手から物を食べた時の、溢れんばかりの幸福感。

 自分を見て微笑む二人に、薄れた孤独。

 そう言えば最近、でぃは前に比べると、痩せた。


 空腹が、何より恐ろしい。


154 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 22:58:41.05 ID:L/YEYVZFO

 俯いたまま、ネーヨは口を開く。
 けれど吐き出す言葉が見付からなくて、金魚の様に口を開閉させるだけ。

 そしと俯くネーヨに、なおも降り注ぐミセリの怒声。

  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「それなのにっ! それなのにあんたは一人だって言うの!?
     タカラとでぃは、あんたを家族みたいに思ってるのに!!」

(; − )「…………」
  _,,
ミセ#゚Д゚)リ「あんたはっ!!」

(;ノAヽ)「み、ミセリっ! もう止めろなノーネっ! もうダメなノーネ!!」
  _,,
ミセ#゚−゚)リ「っ、…………ミセリ、謝んない……
     ……今回は、ミセリ間違ってないんだから……」

(;ノAヽ)「ミセリ……」
  _,,
ミセ#゚−゚)リ「だって間違ってない、タカラとでぃはネーヨが心配で、
     家族みたいに思ってる、これは確かなんだから」

(;ノAヽ)「ミセリー……」


156 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:00:05.58 ID:L/YEYVZFO

(; − )「……」

  _,,
ミセ#゚−゚)リ「っなんとか言いなさいよネーヨっ!
     否定できんならしてみなよ!?」

(;ノAヽ)「今はそっとしとけなノーネ、ホントもうやめとけなノーネ……」
  _,,
ミセ#゚−゚)リ「……わかった、行こう。そろそろ出発しなきゃダメだし」

(;ノAヽ)「の、ノネ……」


(; − )


 ぷい、とネーヨから顔を反らして歩き出すミセリ。

 早歩きでその場から離れようとする背中を追いながら、
 ノーネは項垂れるネーヨを何度か振り返り、肩を落としてその場から離れた。


158 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:02:15.57 ID:L/YEYVZFO

 草むらを抜けて、岩場を滑り降りると、難なく元の場所に戻る事が出来た。

 ミセリとノーネが降りて来るのを見付けたニダーが、荷物を片手に駆け寄ってくる。


<ヽ`∀´>「おかえ……り……? ……何か、あったニダ?」

(;ノAヽ)「あー……うー……それがー……」
  _,,
ミセ#゚−゚)リ

(;ノAヽ)「…………た、タカラとでぃはどーしたノーネ?」

<ヽ`∀´>「もうすぐ出てくるニダ…………何かあった、ニダ?」

(;ノAヽ)「んあー……んー……ちょっとー……」

<ヽ`∀´>「言いなさい、ニダ」

(;ノAヽ)「ノネー……」


163 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:05:01.87 ID:L/YEYVZFO
 少しばかり厳しい口調で言われてしまえば、ノーネはそれに従うしかなくて。

 怒った顔でそっぽを向くミセリの様子を伺いながら、
 ノーネはぽつぽつと、先ほど起きた出来事をニダーに説明する。

 それを聞けば聞くほどに、ニダーは困った様な、疲れた様な顔になり。


<;ヽ´Д`>「アイゴー…………ミセリ?」

ミセ#゚−゚)リ「……なに」

<;ヽ´Д`>「言い過ぎ、ニダ……
      ……ネーヨもよくはないけど、ミセリ言い過ぎニダ
      それじゃ反省する暇がないニダ……しかも下手すると逆効果ニダ」

ミセ ゚−゚)リ「ぅ……」

<;ヽ´Д`>「気持ちは分かるけど、もっと冷静にならなきゃニダ……」

ミセ ゚−゚)リ「……そこ、は……ごめん、なさい」

<;ヽ´Д`>「ノーネも、もっと落ち着くニダ……
      いきなり喧嘩売っちゃ、話し合いにもならなくなるニダ……」

(;ノAヽ)「…………すまんノーネ……かっとなったノーネ……」


<;ヽ´Д`>=3 (子供なんだから……)

166 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:07:15.98 ID:L/YEYVZFO

<;ヽ´Д`>「タカラ、でぃ……申し訳ないニダ」

(,,^Д^)「いえ、確かにネーヨも良くないところがあります。
     それに、子供のネーヨに何も教えていない私たちにも非はあります」

(#゚;;-゚)「ん……ミセリとノーネ、でぃたちのためにも、怒ってくれたから……」

<;ヽ´Д`>「それでも申し訳ないニダ……」


( ノAヽ)

(;ノAヽ)そ


(;ノAヽ)「いや、オマエらいつから居たノーネ」

(,,^Д^)「さっきからです」

(#゚;;-゚)「言いなさいニダ、から……」

(;ノAヽ)「モルスァ」


170 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:09:36.86 ID:L/YEYVZFO

(#゚;;-゚)「……ミセリ?」

ミセ ゚−゚)リ「なに、でぃ?」

(#゚;;-゚)「ごめんね、と……ありがとう、と…………めっ」

ミセ ゚−゚)リ「ぁ……」

(#゚;;-゚)「怒らせてごめんねと、怒ってくれてありがとうと……怒ったら、めっ」

ミセ*゚ー゚)リ「……わかんないよ、それじゃ」

(#゚;;-゚)「あ、あの、あの……んと……」

ミセ*゚ー゚)リ「じょーだん、ミセリも、ごめんね
     これでネーヨと仲が悪くなったら、ミセリの所為だもん……」

(,,^Д^)「ネーヨもそこまで子供では無いと思いますよ
     ミセリさんのお陰で、少し成長出来るかも知れませんし」

(#゚;;-゚)「ん……だから、いいの」

ミセ*゚ー゚)リ「……ん、ありがと……」


172 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:11:26.42 ID:L/YEYVZFO

<ヽ`∀´>「あ……ミセリ、ノーネ」

( ノAヽ)「んー」

ミセ*゚ー゚)リ「ん、そろそろ行かなきゃね……
     んじゃ、またね二人とも……お世話になりました、ありがとっ」

(,,^Д^)「いえ、久し振りに賑やかで、楽しかったです。お気を付けて」

(#゚;;-゚)「また、ね……三人とも……いってらっしゃい」

ミセ*゚ー゚)リ「……うん、行ってきます!」

<ヽ`∀´>「お世話になりましたニダ」

( ノAヽ)「ジャマしたノーネ」


 ニダーが用意しておいた荷物を身に付けて、
 ミセリとノーネは二人へ手を振り、歩き出した。

 お世話になった二人に頭を下げてから、ニダーもその後を追う。


177 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:13:20.85 ID:L/YEYVZFO

 そのまま後ろ姿を見つめて手を振っていたでぃが、
 何かを思い出した様に洞穴へと走って行った。

 どうしたのかとタカラが首を傾げると、でぃは慌てて洞穴から出てきて
 何かを胸に抱きながら、三人を呼びつつ後を追う。


(;#゚;;-゚)「ミセリっ! みんな、待っ、て!」

ミセ*゚ー゚)リ「ん? ……あれ、でぃ……どったの?」

(;#゚;;-゚)「これ、あげるの……忘れて、て……」

ミセ*゚ー゚)リ「お……おぉ、クッキーだ! 良いのっ?」

(#゚;;-゚)「んっ…………はふ、……朝、ミセリと拾った木の実の……だから」

ミセ*^ー^)リ「……ありがと、でぃ! 大好きー!」

(*#゚;;-゚)「わ、わぁ……でぃも、好きー……」


(,, Д )


( ノAヽ)「なんか遠くでショック受けてるノーネ……」


181 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:15:34.80 ID:L/YEYVZFO

(#゚;;-゚)「……」

(,,^Д^)「……行っちゃいましたね」

(#゚;;-゚)「ん…………楽し、かったね」

(,,^Д^)「はい、ニンゲンには驚きましたが、良い人で安心しました」

(#゚;;-゚)「……少し、さみしい、ね」

(,,^Д^)「……こうなるのを分かって、私たちは村を出たんです」

(#゚;;-゚)「だから……でぃ、泣いたり……しない。離れても、ともだち……」

(,,^Д^)「そう、ですね……友達です、みんな」

(#゚;;-゚)「ん…………行こう、タカラ」

(,,^Д^)「はい、まだ間に合いますからね」

(#゚;;-゚)「間に合わなくても、行く」

(,,^Д^)「もちろん。…………ま、ネーヨの性格なら、大丈夫でしょうし」


184 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:17:50.63 ID:L/YEYVZFO


(  − )


 もう居なくなったのだろうか。
 あんなに怒っていたニンゲンは、もう居ないのだろうか。

 怒られた理由は理解して、納得もしている。
 受け入れる事も出来た。

 けれど、そこからどうすれば良いのか分からない。
 いいや、分かっている筈なのに、分かりたくない。

 分かってしまうと、離れる。


 もぞりと寝かせていた体を持ち上げて、長い首を巡らせて辺りを見回す。

 がさがさ、草むらが揺れていた。
 その隙間から覗く体は、よく知る色。


188 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:19:27.99 ID:L/YEYVZFO

 けれど、分からなければいけない。
 何時までも二人に頼る、情けない生き方をしてはいけない。

 だから、だから、


(,,^Д^)「あ、居た居た」

(#゚;;-゚)「ネーヨ、みっけ……」

( ´ー`)「……」

(,,^Д^)「ネーヨ?」

(#゚;;-゚)「……ネーヨ、」


 目に焼き付けよう。
 自分の為にと痩せた二人の姿を。

 目に焼き付けたなら、一歩、踏み出そう。



193 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:21:25.04 ID:L/YEYVZFO

( ´ー`)「行ってくるヨ」


 この大きな体は、何の為にある?
 誰かに守られる為の物じゃあない。


(#゚;;-゚)「どこ、に?」


 母や父の、大きな体。
 あの大きな体で守られていた小さな体は、大きくなった。

( ´ー`)「……家族、探すヨ」


 じゃあ、守ろうか。
 小さな人と、この馬鹿馬鹿しい自尊心。


(,,^Д^)「……ネーヨ、」


 守れよ、俺。

 俺は、大きな恐竜なんだから。


198 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:23:20.01 ID:L/YEYVZFO

 別にいい格好をしたいんじゃなくて。
 別にいい子になったんじゃなくて。
 ただ、分かってたんだホントは。

 分かってるんだホントは。


( ´ー`)「他に生きてるの、居るかもだヨ。ひとりは、逃げだヨ」

(#゚;;-゚)「……ネーヨ、でぃたち、」

( ´ー`)「今は、イワネーヨ」

(,,^Д^)「……ネーヨ、行ってらっしゃい」

(#゚;;-゚)「…………行ってらっしゃい、です、ネーヨ」

( ´ー`)「…………おう、ヨ」


 もう恐竜はたったひとりしか存在しないと知ってても
 今は、二人を家族と呼ぶわけにはいかないから。


200 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:25:18.30 ID:L/YEYVZFO

 別に、何も変わってないけれど。
 箱の蓋がやっと開いたから、外に出ただけ。

 ミセリの怒声は、意地っ張りの箱を開けた。
 だからミセリは大事な切っ掛け。
 それの引き金となったノーネの言葉も、大事な切っ掛け。

 本当はいつでも歩き出せたのに、ネーヨは孤独を盾に自分だけを守っていた。
 何もしなくても物が食べられる、生きられる。
 けれど食べ物を持ってくる人の手は、どんどん細くなっていって。


 家族を殺して生きるくらいなら家族から離れて生きる。

 それにこんなひねた気持ちじゃ、意地っ張りのままじゃ
 タカラとでぃを、家族と呼んじゃいけないから。

 だから二人に背を向けて、泣かないように我慢しながら走るんだ。



 ああちくしょう、大きくなるって痛くて苦しいヨ。


203 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:27:17.33 ID:L/YEYVZFO


 てっこらてっこら、森の中。
 川沿いの道を歩く、三人分の足。


 赤い靴を履いたミセリは、でぃから受け取ったクッキーの包みを
 そっと、壊さないように気を付けながら、荷物の袋に入れる。

 ニダーは歩きながら猟銃の具合を見つつ、弾の数を確認していた。


ミセ*゚ー゚)リ「はー……足だるーい……」

( ノAヽ)「のんびりし過ぎたノーネ……」

<ヽ`∀´>「ガマンがまんニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「んー……」

( ノAヽ)「のぎゃー…………うん?」


205 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:29:28.27 ID:L/YEYVZFO

 小さな荷物を背負って歩くノーネが、ふと、顔を上げる。

 何か気配がする、と後ろを振り向いた、その時。

 ふわ、とミセリの体が持ち上がった。


ミセ;゚听)リ「うわっ!? わ、わわっ!?」


 突然地面から離れた自分の足に、驚き声を上げるミセリ。

 けれどその尻が、ぺたんと固いような柔らかい様な、
 暖かい不思議な何かに乗った所で、自分に何が起きたのか理解した。

 すべすべしてて少し固い、でも柔らかくて暖かいそれ。
 それは、


ミセ;゚听)リ「ね……ネーヨ……?」

( ´ー`)「……おうヨ」


 恐竜の、生き残り。


208 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:31:36.56 ID:L/YEYVZFO

 ミセリを持ち上げて、自分の背中へと乗せたネーヨは、小さな挨拶をする。

 つい先ほど一方的な大喧嘩をしたものだから、ミセリは口を閉ざしてしまって。
 それを見つめるノーネとニダーも、はらはらして何も言えずに居る。


 思わず止まった足の動き、みんながみんな立ち止まり、大きなネーヨを見る。
 そんな中で、ネーヨがぽつり、口を開いた。


( ´ー`)「……俺も、つれてけ、ヨ」

ミセ;゚−゚)リ「……へ?」

( ´ー`)「悪かった、ヨ……さっき…………ごめん」

ミセ;゚−゚)リ「ぁ、え、その……み、ミセリ、こそ……ごめんなさい……」

( ´ー`)「……」

ミセ;゚−゚)リ「ぇ、えっと……」


210 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:33:10.75 ID:L/YEYVZFO

 素直にあっさりと謝罪をするネーヨに、
 ミセリは目を丸くして、思わずぽろりと謝罪を溢した。

 ついさっき謝らないと言ったのに、等と思うより
 ただただ、自分を乗せて同行させろと言うネーヨが不思議で。


 けれどミセリもまた、単純ににっこりと笑って。


ミセ*゚ー゚)リ「……良いよ、一緒にいこ」

( ノAヽ)「お」

<ヽ`∀´>「お」

( ´ー`)「良いのか、ヨ?」

ミセ*゚ー゚)リ「良くなかったら、良いって言わないよ」

( ´ー`)「お……おう……ヨ」


213 ◆tYDPzDQgtA 2009/03/22(日) 23:35:21.01 ID:L/YEYVZFO

ミセ*゚ー゚)リ「これから、よろしくね? ネーヨ」

( ´ー`)「……荷物、乗せろヨ」

( ノAヽ)「……んじゃ、これ乗せろなノーネ」

( ´ー`)「んー」

<ヽ`∀´>「……」

( ´ー`)「オマエも乗せろヨ」

<ヽ`∀´>「わ、分かったニダ…………よろしくニダ、ネーヨ!」

( ´ー`)「……ん」


 早く、大きくなりたい。
 この変な奴らと、大きくなりたい。

 ネーヨは荷物を背中に乗せながら、小さく小さく呟いた。


  「これから、よろしく」


三話、おわり。

inserted by FC2 system