- 1 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 20:57:52.41 ID:VmKZdeNcO
-
7xさん
ttp://nanabatu.web.fc2.com/boon/miseri_hennna_mori.html
ブーン文丸さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/forest/forest.htm
まとめて下さってます、ありがとうございます。
六話後編はじまるよー。
- 6 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:00:18.41 ID:VmKZdeNcO
-
あるところに、仲の悪い双子がいました
上の子は、下の子が嫌いで
その理由はとくに無いにもかかわらず
上の子は、下の子をいじめていました
じぶんが上の立場にいることが、とても大好きでした
そしてある日
とつぜん、下の子がいなくなりました
上の子はいなくなってから気付きます
下の子がいなければ、じぶんは誰の上にも立てない
- 11 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:03:11.23 ID:VmKZdeNcO
-
【ミセ*゚ー゚)リ 変な森のようです】
第六話 『ひたんにくれる。』 後編
閲覧注意?
そうしていつしか上の子も、いなくなってしまいました。
- 13 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:06:06.80 ID:VmKZdeNcO
-
貝殻が開ききると、揺らめく髪が顔を覆い人魚は軽く目を瞑った。
そして青い髪がゆらりと落ち着き、その姿がはっきりとミセリ達にさらされる。
川 - -)゙
川 ゚ -゚)パチ
閉ざされていた瞼が持ち上がれば、姿を現すのは薄い青の目。
水の中で涙をぽろぽろ溢しながら、彼女は視線を泳がせる。
見目麗しい彼女こそが、森の海を統べる人魚だった。
ミセリ達はぽかんと間抜けた顔で人魚を見つめ
人魚もまた、ミセリの姿に目を丸くした。
血色の悪い唇が開き、しゃんとした声が溢れる。
- 17 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:09:07.75 ID:VmKZdeNcO
-
川 ゚ -゚)「君は、人間……?」
ミセ*゚ー゚)リ「へ、はひ? み、ミセリ?」
川 ゚ -゚)「ミセリと言うのか……珍しいね、人間だなんて」
ミセ*゚ー゚)リ「は、はぁ……あの、あなた、は?」
川 ゚ -゚)「私はクール、君には、どうかクーと呼んでほしい」
ミセ*゚ー゚)リ「クー……さん?」
川 ゚ -゚)「…………あぁ、懐かしい響きだね……」
<ヽ`∀´>「えっと……クールさん、ニダ?」
川 ゚ -゚)「ああすまない……人間の姿に、ぼんやりしていたよ」
( ノAヽ)「ほへぇ……」
川 ゚ -゚)「ようこそ、森の海へ、どうかゆっくりして行ってほしい」
- 21 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:12:11.47 ID:VmKZdeNcO
-
<ヽ`∀´>「クールさんは……その……ニンゲン……?」
( ´ー`)「にしか見えネーヨ」
川 ゚ -゚)「間違っては、いないね」
( ノAヽ)「にしては尾っぽがサカナなノーネ、かみのけも青いノーネ」
川 ゚ -゚)「似合ってるかい?」
( [)「ゴェ」
川 ゚ -゚)「ありがとう、妖精さん」
ミセ*゚ー゚)リ「あの、その……クーさん……」
川 ゚ -゚)「なんだい? 小さな旅人さん」
ミセ;゚ー゚)リ(なんかすごいやりにくい……)
(;ノAヽ)(コイツめんどくせぇノーネ……)
<ヽ`∀´>(不思議なヒトニダ……)
( [)
( ´ー`)(変だヨ)
- 24 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:15:05.26 ID:VmKZdeNcO
-
ミセ*゚ー゚)リ「あのぅ……人間、なんです……か?」
川 ゚ -゚)「そう、だね……折角のお客様だ、お話ししよう、かな?」
<ヽ`∀´>「あ、ご、ご迷惑でなければ……」
川 ゚ -゚)「構わないよ、……クラゲ君、お茶を淹れて、くれるかい?」
( ^^ω)「把握ホマ! でも名前で呼んでほしいホマ!」
川 ゚ -゚)「有り難う、クラゲ君……じゃあ、お話、しようか?」
( ´`ω)
ミセ;゚ー゚)リ「へ……へぃ……」
( ノAヽ)(かわいそうに)
( [)
( ´ー`)(オマエが言うなヨ)
- 27 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:18:11.53 ID:VmKZdeNcO
-
ふよふよとクラゲが来た道を戻って行き、人形クーがぼんやりと宙を見る。
どこから話すかを考える様に、頭を傾けて髪をゆらめかせた。
海底に正座しながら、ミセリ達はクーの言葉を待つ。
そして、クーはゆっくりと口を開いた。
川 ゚ -゚)「私、はね……元々、人間だったんだ」
ミセ*゚−゚)リ「……へ?」
川 ゚ -゚)「人間だったんだ……昔、はね」
<;ヽ`∀´>「ど、どう言う事、ニダ?」
川 ゚ -゚)「昔、むかぁし、ね……森に迷い込んだんだ、この森に
そして私は、森に愛された……だから私は、森の生き物になったんだ」
ミセ;゚−゚)リ「ぇ、え? へ?」
- 29 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:21:17.38 ID:VmKZdeNcO
-
川 ゚ -゚)「私の昔話でよければ、聞いてほしい、私がこんな姿になった理由を」
( ´ー`)「それは構わねぇけどヨ……」
ミセ;゚−゚)リ「うん……でも、その」
( ノAヽ)「ちゃんと説明もしろなノーネ」
川 ゚ -゚)「ああ、もちろん、もちろんさ
さあ、どこから話そうか……そう、そうだね……私は、人間だった」
(;ノAヽ)「それは聞いたノーネ……」
川 ゚ -゚)「ああ、ああそうだったね、すまない、すまない
ええ、と……ガルガリンの事、だったかな……?」
ミセ;゚ー゚)リ「ち、違う違う、クーさんのお話」
<;ヽ`∀´>(このヒト、モノスゴクじょうちょふあんていニダ……?)
( [)
(;´ー`)(シラネーヨ……)
- 33 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:24:13.05 ID:VmKZdeNcO
-
どこか虚ろな目をしたクーが、何を見るでもなく
ぼやあ、とその辺りを見上げながら言葉を探す。
けれどどんなに言葉を探しても、クーはふわふわした言葉しか吐き出さない。
意味の繋がらない言葉や同じ言葉を繰り返して、美しい無表情を揺らしていた。
いまひとつ安定しないクーの気持ちと言葉に、
ミセリ達はうっすらと不安を抱く。
このヒトは大丈夫なのだろうか、と虚ろなクーを見ながら思った時。
トレイを頭に乗せたクラゲが、ひろひろとこちらへと戻ってきた。
( ^^ω)「ただいまですホマー!」
ミセ;゚ー゚)リ「あ、ぉ、お、おかえり……」
<;ヽ`∀´>「おかえりなさいニダ……」
(;ノAヽ)「ノネ……」
( ^^ω)「ホマ? 皆さんどうしたホマ?」
- 36 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:27:10.52 ID:VmKZdeNcO
-
ミセ;゚ー゚)リ「それがー……そのー……」
(;´ー`)「アイツ、ちょっと変だヨ……?」
( ^^ω)「ホマ?」
川 ゚ -゚)「やあ、クラゲ君、お茶を持ってきてくれたの?」
( ^^ω)「はいホマ!」
川 ゚ -゚)「そう、ありがとう、言われずに持ってくるなんて、賢いね」
(;^^ω)「ホマ?」
川 ゚ -゚)「ほら皆さんに…………ところで、クラゲ君」
(;^^ω)「は、はいホマ……」
川 ゚ -゚)「君は、どうして、ここに?」
(;^^ω)「ホマァ!?」
- 40 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:30:21.80 ID:VmKZdeNcO
-
ミセ;゚ー゚)リ「……ね?」
(;^^ω)「お嬢様……久しぶりのお客様にビックリするのはわかるホマ……」
川 ゚ -゚)「う、ん?」
(;^^ω)「でもちょっと落ち着くホマ、シリメツレツなってるホマ」
川 ゚ -゚)「そう、かい? クラゲ君」
(;^^ω)「お嬢様は混乱するとより変になるホマ、申し訳ないホマ……」
ミセ;゚ー゚)リ「あ、よくある事なんだ……これ……」
(;ノAヽ)「普段はもっとマシなノーネ?」
(;^^ω)「落ち着いたらマシになりますホマ、すみませんホマ……。
お嬢様、お茶ホマ! 飲んでのーんびりするホマ!」
( ´ー`)「昆布茶ウメーヨ」
<ヽ`∀´>「ちょっとしょっぱいニダ」
- 43 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:33:08.26 ID:VmKZdeNcO
-
( ^^ω)「ホマホマ! お嬢様が落ち着くように踊るホマ! ホマホマホマ!!」
川 ゚ -゚)「ん、ぁ……ああ、可愛いね……可愛いね、クラゲ君……」
(( ( ^^ω)
(( ノルリノルリ フヨフヨ
フヨヨン (ω^^ )彡
ノルリノルリ 彡
パーン
( ^^ω)
ノ彡☆)) - )そ
_,,
ミセ;゚Д゚)リ!?
- 48 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:36:19.50 ID:VmKZdeNcO
-
川#)-゚)「先刻はお恥ずかしいところをお見せしたね、申し訳ない。
改めて挨拶しよう、私はクール、ご覧の通りの人魚だよ」
ミセ;゚ー゚)リ「は、はぁ……」
川#)-゚)「混乱して少しおかしくなっていたんだ、お恥ずかしい。
それで、私の話だったね? 長くなるけど、大丈夫かい?」
<;ヽ`∀´>「ど、どうぞどうぞニダ……」
川#)-゚)「ああマルタスニム、お茶菓子を彼らに」
(メメ#メ)ω(#)「把握ホマ!」
( [)
(;´ー`)「……変だヨ」
(;ノAヽ)「……まごうことなき、変なノーネ」
ミセ;゚ー゚)リ「……あんたらが言うな」
- 50 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:39:28.69 ID:VmKZdeNcO
-
やっと落ち着きを取り戻したらしいクーが、湯飲みを片手にミセリを見る。
その視線はさっきの様に、ふわふわとした物ではなく
幾分しっかり、はっきりとした意思のある眼差しだった。
クーがしゃっきりしたのが分かると、ミセリはため息混じりに肩を落とす。
そして自分もお茶を飲んで、話を聞く体制に入った。
川 ゚ -゚)「じゃあ話そうか、元は人間だった私の事を」
ミセ*゚ー゚)リ「はいっ」
( ノAヽ)「来いなノーネ」
<ヽ`∀´>「聞くニダ」
( [)
( ´ー`)(最近、昔話ばっかり聞いてるヨ……)
ミセ;゚ー゚)リ(言わないの……)
- 53 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:42:08.76 ID:VmKZdeNcO
-
川 ゚ -゚)「そう、だな……私には双子の妹が居たんだ
仲は悪かった、私が彼女を毛嫌いしていたからね」
ミセ;゚ー゚)リ「え、」
川 ゚ -゚)「嫌いだったんだ、私より劣っている妹の存在が
だから私は彼女を、血の繋がった妹をいじめていた」
ミセ;゚ー゚)リ「ええ、え?」
川 ゚ -゚)「けれど喧嘩をする事は無かったよ、私が一方的にしていたから。
食べ物の好みが違えば罵倒し、勉強が出来なければ嘲った」
ミセ;゚ー゚)リ「えぇぇぇ……」
川 ゚ -゚)「けれど彼女は何も言わずに、ふわふわへらへら
何を考えてるかわからなくて、それが嫌でまた罵倒した」
ミセ;゚ー゚)リ「…………」
川 ゚ -゚)「……昔の話だよ?」
ミセ;゚ー゚)リ「は、ぁ……」
- 56 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:45:07.70 ID:VmKZdeNcO
-
嫌いな理由は分からない。
どうせ、子供特有の下らない事だ。
けれどクーは昔、妹を嫌っていた。
それだけは事実なのだ。
妹が何かをすれば、クーはそれに文句を言う。
妹が何かを言えば、クーはそれを馬鹿にする。
そんな事は当たり前。
クーは心の底から、妹を見下していた。
妹は自分より劣ると思い込み、常に高飛車な態度で。
多忙な親は何も言わず、妹も何も言わない。
我が儘で高飛車で、変に大人びたクーは自分が一番だと信じていた。
- 58 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:48:07.01 ID:VmKZdeNcO
-
幼い頃から可愛らしい容姿をしていたクーは、自分でもそれを理解していた。
自分は愛らしく頭の良い完璧な人間、人の上に立つのが当然。
そう信じて疑わなかった彼女にとって、妹は自分の下でしかない存在。
妹の容姿も愛らしかった、頭も良く、方向は違えどもクーに劣る事は無かった。
けれどもクーの中には、妹イコール格下と言う方程式があって。
無口で何を考えているか分からない妹。
親が留守にする事が多い家の中、クーはそんな妹と二人きり。
誰にも咎められる事なく、妹を踏みにじれる環境。
始まり等はもう記憶にない。
気が付けば、クーは妹をいじめていた。
嘲って、罵って、言葉の暴力を嫌と言うほど叩き付ける。
暴力はいつしか蹴り、殴り、踏みつけて傷付けると言う、肉体的な物に変わった。
- 61 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:51:19.01 ID:VmKZdeNcO
-
格下の人間を傷付ける事が、悪いとは思わなかった。
だからクーは欲望のままに、妹を虐げた。
そしてある日、妹が家を出た。
どうせすぐに戻ってくると、クーは一人、家の中で転がっていた。
けれど夜になっても妹は戻らず、クーは苛つく。
夜が明けても妹は戻らず、クーは怒りを抱く。
三日経ち、五日経ち、一週間が過ぎても妹は戻らなかった。
クーは怒りを通り越し、不安を抱く様になった。
そして久々に戻ってきた両親に、やっとその事を打ち明ける。
両親はクーを殴り飛ばして、怒鳴り散らした。
何故もっと早く言わなかったと涙しながら叫ぶ親に、クーは何も思わない。
ただ生まれて初めて殴られた痛みに、目を丸くするだけ。
- 66 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:54:06.40 ID:VmKZdeNcO
-
警察が集まり、人が集まり、妹を探す大人達。
両親は行方知れずの妹にむせび泣き、クーを罵倒した。
お前の所為で妹が居なくなった、お前さえ居なければ。
頭に血の昇った大人達に、クーが何かを言える訳もなく。
やっと、自分が子供である事を理解した。
自分は人の上には立てないし、今、自分は悪者だ。
妹をいじめて行方不明にした、鬼の様な姉。
自分にはられたレッテルと、何も出来ないこの現実。
人の輪から弾き出されたクーは、暗い部屋に閉じ込められる。
孤独を感じたクーの頭には、妹の後ろ姿。
そしてクーは、やっと妹の帰りを望んだ。
妹が居なければ、自分には何も無い。
そう感じて、クーはそっと窓を開けた。
- 69 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 21:57:10.09 ID:VmKZdeNcO
-
開け放たれた窓の外は、闇だった。
一階のリビングでは、両親が泣いている。
泣かせたのは自分だと分かっていたが、理解しようとはしなかった。
水色のカーテンを鋏で裂いて、ロープの形にする。
そして簡易ロープを窓から垂らし、クーはパジャマのまま、家から飛び出した。
幼い頭に、はっきりした理由などは存在しなかった。
ただ家から出て、解放されたかった。
それだけのために家を出たクーは、家の近くの森へと走る。
道にも森にも警察が見回りをしていたが、
その目を潜り抜けて、クーは森の奥へとひた走る。
小さな白い裸足が、土に汚れる。
うっすらと汗をかき、長い髪が額に張り付く。
森へ足を運んだ理由はない、足が勝手に動いただけ。
それでもひたすら走り続けたクーは、景色の変化には気づかない。
- 71 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:00:05.92 ID:VmKZdeNcO
-
息が上がり、足がもつれた。
その拍子に転んだクーは、痛そうに眉を寄せて身を起こす。
そしてやっと、自分がどこに居るか分からない事に気付いた。
暗い暗い森の中、うっすら見える奇妙な植物。
濃い緑に紫、不思議と毒々しいオレンジ。
白い水玉、赤いキノコに低い木々。
時折聞こえる鳥の声、風が揺らす木々のざわめき。
クーを見つめる無数の目玉。
変な場所に迷い込んだ、そう気付いた時には遅すぎて。
帰り道はどこにもなく、来た道は闇に食われた後だった。
ここはどこ?
疑問を吐いても答えは見当たらない。
- 75 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:03:11.91 ID:VmKZdeNcO
-
闇の中、擦りむいた膝から血を流して、クーは立ち上がり歩く。
こんなところに寝転がっていても、座り込んでいても意味がない。
どうせ迷ったのだから、ふらふら歩いても大して変わらない。
自分の置かれた立場がどんな物かも理解せず、子供の頭は歩く事にしか向かない。
まっくら森の中でひとりぼっち。
まるで小鳥が水の中を泳ぎ、魚が空を飛んで鏡が歌い出しそうな闇。
何が起きてもおかしくはない森の中、クーは無感動に歩くばかり。
自分が遭難している事には気付かず、小さな素足が土を踏み、キノコを蹴飛ばす。
ギチギチと虫に似た鳴き声、ほうほう鳴く夜の鳥。
木の実を真似た生き物が、枝からぶら下がりクーを見る。
それらに目もくれず、クーはあてどもなく歩く。
- 77 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:06:14.40 ID:VmKZdeNcO
-
歩いて、休んで、歩いて、休んで、眠って。
また歩いて、休んで、歩いて、休んで、眠って。
そんな事を何度も繰り返している内に、クーが森に迷って数日が経っていた。
空腹を感じて、その辺りの木の実やキノコを口にしては吐き出す。
どれが食べられるか食べられないかを、見分けられないクーには
森の植物を口にするには、命を賭けなければならない。
下手をすれば命を落とす、そう理解する前に赤い木の実をもいで口にした。
すると数分後、激しい嘔吐に痙攣、目眩。
胃の中身も黄色い胃液も全て吐き出して、
汗を流しながら痙攣し、がくんと意識を失った。
それから数時間後に目覚めたクーは、
自分が生きている事に気付き、恐怖に身震いした。
お腹が空いても何を食べれば良いか分からない。
下手な物を食べると死ぬかも知れない。
空腹に対して、初めて恐怖した。
- 83 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:09:24.41 ID:VmKZdeNcO
-
それから何かを口にする時は、慎重に少しだけかじる様にした。
けれど結局は食べられた物ではなく、すぐに吐き出す。
何も食べられないのに胃の中身をぶちまけて、内臓を傷付けた。
空腹と傷つけられた事による、激しい胃の痛み。
小石を踏み、木の根を蹴っては傷付く足もまた、痛む。
その辺りに転がって眠る時は背中や肩が痛いし、
枕も無いから首と肩がひどく凝り、頭痛に悩まされる。
そして何より、喉が渇いた。
クーは川を見付ける事が出来ず、ここ数日、何も飲めていなかった。
排泄する体液を飲もうと思った事もあったが、プライドが邪魔をして出来ない。
体から失われて行く水分、水分不足から来る頭痛や目眩が、更にクーを襲う。
今にも倒れそうな状況で、五日が過ぎようとしていた。
- 87 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:12:12.54 ID:VmKZdeNcO
-
ミセリや“彼女”と違い、
クーは森の人を見付ける事も、森の人に見付けられる事も無かった。
それは運が悪いとしか言えず、クーが歩いていた場所は、
森の人の集落や村から大きく外れた、森の妖精の集落近くを歩いていたのだ。
運の悪さは更に続き、本来は異質な存在を敏感に感じ取る、森の妖精は
直前に赤い森の人に虐殺されたところで、クーの存在に気付かなかった。
まるでバチが当たったかの様な運の悪さを背中にのせたクー。
その小さな体は、ついに地面に倒れ伏す。
飲まず食わずで一週間。
頬は痩け、顔色は悪く目は虚ろ。
どろどろに汚れた体にパジャマ、ばさばさになった長い黒髪。
それはもう、元の美少女の面影すらなく
自分が賢く愛らしいと思い込んでいた、プライドなんかも崩れ落ちた。
- 90 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:15:24.14 ID:VmKZdeNcO
-
倒れたクーは、息も絶え絶えにそっと瞼を下ろす。
もう死ぬのかと、幼い頭でも理解した。
そして妹の名を小さく呼び、あきらめた様に体から力を抜いた。
そんな時、耳に届いたのは奇妙な音。
ふわふわホマホマと不思議な音が聞こえて、クーは瞼を持ち上げようとする。
けれど重い瞼は持ち上がらず、代わりに体が浮くのを感じた。
不思議な感触が体に絡み付き、どこかへと運ばれて行く。
複数の細い腕がクーの体を持ち上げて、ゆったりホマホマ移動する。
その移動先は、自然に出来た地面の亀裂。
深い深い谷底へ、クーを連れた何かが降りて行った。
- 93 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:18:14.10 ID:VmKZdeNcO
-
クーが目を覚ますと、そこは不思議な空間だった。
クラゲの様な生き物がふよふよと動き、全体的に茶色、土の家具が並んでいる。
土を固めて作ったベッドに、葉っぱをあわせて作った布団。
机も椅子も土で出来ており、食器なんかは土を焼いて作った物。
茶色の世界に浮かぶクラゲ。
その黄緑の頭と深緑の足を揺らして、目を覚ましたクーに近付く。
( ^^ω)「起きたホマ? ゴハンはもうすぐ出来るホマ、も少しまつホマ!」
人の良さそうな笑顔、不思議な語尾。
クラゲによく似た生き物は、クーの頭を触手で撫でる。
撫でられた頭に手をやりながら、クーは目を丸くした。
クーがやっと出会えた森の人は、珍獣マルタスニムだった。
- 97 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:21:37.22 ID:VmKZdeNcO
-
( ^^ω)「ゴハン美味しいホマ?」
首を縦に振る。
( ^^ω)「キノコは嫌いホマ?」
首を横に振る。
( ^^ω)「じゃあいっぱい食べるホマ! お茶もあるからゆっくり食べるホマ」
首を縦に振る。
( ^^ω)「……君は、喋れないホマ?」
首を横に振る。
( ´`ω)「じゃあ喋ってほしいホマ……」
首を縦に振る。
( ^^ω)「ホマホマ! じゃあ、じゃあ、君のお名前を教えてほしいホマ!」
- 100 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:24:20.07 ID:VmKZdeNcO
-
( ^^ω)「君はクールちゃんって言うホマ?」
( ^^ω)「ホマたちはマルタスニムだホマ! よろしくホマ!」
( ^^ω)「クールちゃんは、どうしてここに居るホマ?」
( ´`ω)「ホマ……妹さんが……」
( ´`ω)「そんなのよくないホマ、カゾクはダイジにしなきゃホマ」
( `´ω)「ホマ! 誰かを傷つけるのはよくないホマ!! めっホマ!!」
( ^^ω)「ホマホマ……わかってくれたならいいホマ、怒鳴ってごめんホマ!」
(;´`ω)「な、泣かないでホマ! クールちゃん泣いちゃだめホマ!!」
- 104 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:27:14.89 ID:VmKZdeNcO
-
(;´`ω)「クールちゃん泣き止むホマ……
そんなに泣いてちゃ喉がからからになるホマ……」
(;´`ω)「な、何でそんなに泣くホマ?
ホマそんなに悪いコトいっちゃったホマ?」
(;´`ω)「そうならホマ謝るホマ……ごめんなさいホマ……
だからもう泣かないでホマ、そんなに泣かれたら困っちゃうホマ……」
(;´`ω)「ホマ? ホマたちのせいじゃないホマ?
じゃ、じゃあ……どうしてホマ……?」
(;´`ω)「…………よく、わからない……?
そ、そんなコト言われても……ホマたちのがわからないホマ……」
緑のクラゲにしがみついて、クーは静かに泣きじゃくる。
顔を歪める事もせず、静かに静かに、無表情を涙で濡らした。
その涙は何分何時間何日経っても止まる事は無かった。
- 106 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:30:08.90 ID:VmKZdeNcO
-
クラゲの谷に連れてこられて、一週間が経った。
谷の住人である緑のクラゲ、マルタスニムはとても人がよく
見慣れぬ姿のクーにも友好的な態度で接し、食事や必要な物を与えてくれた。
キノコや山菜が主な食料だが、マルタスニムは思いの外料理が上手い。
スープやソテー、包み焼き。
様々な森の幸を、様々な調理法でごはんにする。
味も良く体にも良い食事のお陰で、
命を落としかけていたクーは、みるみる内に体調が良くなった。
悪かった顔色も、痩けていた頬も元通り。
少し痩せてしまったが、体によくない程ではない。
行く宛も無いクーに、ならここに住めば良いとマルタスニム達は笑った。
その優しさに、クーの涙は余計止まらなくなった。
- 108 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:33:10.35 ID:VmKZdeNcO
-
あの時、飢えと乾きに倒れた時からクーの中で何かが変わった。
それは改心したと言う訳ではなくて、ただ、自分の無力さに気づいただけ。
自分は妹が居なければ、誰の上にも立てない。
この自分より小さなマルタスニム達の上にすら立てない。
マルタスニム達は心がひどく大きくて、とんでもなく優しいお人好し。
こんな優しい彼らが、自分より劣っている訳がない。
自分はろくに料理も出来ない
もちろん一人旅も出来ないし、誰かに頼らねば生きられない。
そんなカスの様な生き物だ。
そんなカスが、誰かの上に立てる訳がないんだ。
妹が居なければ、あの子が居なければ、自分には本当に何もない。
悲しい、悲しい、悲しい。
どうしようもなく悲しい
クズの様な自分が悲しい、彼らのクズにすら与えてくれる優しさが悲しい。
そう、クーは涙を流し続けた。
根本的には何も変わっておらず、
自分が歪んだ形で妹に依存している事には気付かずに。
- 113 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:36:18.42 ID:VmKZdeNcO
-
たぷ、と水の上を漂いながら、マルタスニムが料理を運ぶ。
表情を変えずに泣き続けるクーに多少慣れたし、会話は出来る。
けれどやっぱり、女の子が泣いているのは悲しくて。
マルタスニムは毎日、ベッドで泣き続けるクーに食事を持って行き
クーを笑顔にしようと、くるくるその場で踊ってみせた。
( ^^ω)「ホマホマ、クールちゃん笑うホマ!」
( ´`ω)「…………笑わないホマ……」
( ^^ω)「あ、ゴハンおかわりホマ? ちょっとまつホマー!」
毎日繰り広げられる光景。
日常となってしまったそれは、なんだかひどく不思議な物だった。
- 115 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:39:14.27 ID:VmKZdeNcO
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何もせず、ベッドから動かず泣き続ける少女。
その少女を泣き止ませようと、踊って見せる不思議な生き物。
マルタスニムと言うのは心の底からお人好しで、
誰も疑問を抱く事もせず、ただただクーを笑わせようと踊っていた。
彼らはクーを笑わせる為に、クーに従った。
いつの間にかそれが当たり前になり、クーに従う事が幸せへと変化した。
クーは悲しみを抱いているため幸せではなかったが、
小さなマルタスニム達の優しさは、幸せにひたすら近かった。
出来上がった奇妙な主従関係。
けれど彼らは、意外と幸せ同士。
その幸せを傍らに、谷はしょっぱい水に沈んで行く。
- 119 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:42:05.35 ID:VmKZdeNcO
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ベッドの縁までクーの涙が溜まった。
土で出来た家が、少しずつ崩れ始めた。
土の家がクーの涙に沈んだ。
不思議と、涙の中でも息が出来た。
不思議な事に、マルタスニムの色が変わった。
青い体に黄色い足、悲しみの青と喜びの黄色だった。
青く染まった、クーの髪と目。
涙の青が黒を飲み込み、クーは人間らしさを捨て始めた。
( ^^ω)「おじょーさまキレイだホマ、青いかみのけ似合うホマ!」
とっぷり涙に沈んだ谷底で、マルタスニムはにこにこ笑う。
悲劇やなんかに限りなく遠い場所に居る様な、朗らかな笑顔だった。
その笑顔が嬉しくて悲しくて、クーの涙は止まらない。
- 122 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:45:07.26 ID:VmKZdeNcO
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谷の上に生える木々へ、有り余る涙をかけてみた。
せっかくたくさんあるのだから、森の木々に水分をあげよう。
そう思って涙をばしゃりとかけてみたらば
涙をかぶった木々は、あっと言う間に萎びて、干からびて、枯れ木へと。
塩気を含んだ水をかければ、木が枯れるのは当たり前。
けれどそれを知らなかった幼いクーは、更に泣く。
自分は何の役にもたたない、森の木々にも嫌われた。
自分は毒だ、どうしようもない、疫病神だ。
ひく、ひく、とクーがしゃくりあげる。
その頭を撫でて、すっかり青くなったマルタスニムが困った様に踊る。
そんなコトないよ、そんなコトないよ。
そう何度も言って聞かせ、涙の海をひらひら泳いだ。
- 125 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:48:18.30 ID:VmKZdeNcO
-
自分は皆に嫌われる。
マルタスニムだけ、彼らだけが自分を嫌わない。
森にすら嫌われた自分に優しくしてくれるのは彼らだけ。
幼いクーは、その体が大人になっても中身が変わる事は無かった。
閉鎖されたと言っても過言ではない世界。
クーの支えは居たけれど、クーを育てる人は居ない。
そう、彼女の頭の中は、幼い小娘の頃から成長を止めているのだ。
どんなに美しい成人女性になろうとも、頭の中身はあの頃のまま。
何かに依存しなければ生きられない、誰かに支えられなければ生きられない。
ひどく不完全で未完成で、中途半端な生き物。
それは、彼女の体にも現れた。
- 129 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:51:06.30 ID:VmKZdeNcO
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いつしか白くしなやかな細い脚が、魚の尾へと変貌を遂げていた。
手のひらの、指の間には薄い水掻き。
耳があった場所には濃い青のヒレが生え、全身の色素が薄くなった。
白かった肌は更に青白く、血の気の失せた様な色。
涙を流し続け、涙で海を作り。
深い深い、彼女にしか理解できない悲しみに飲み込まれた。
その結果、彼女はヒトの姿をなくした。
魚の尾、水掻き、ヒレ、青い髪に目、青白い肌。
自分の姿を見たクーは、声も上げずに泣いた。
この森は、どれだけ自分を嫌えば気が済むのか。
自分から人間の姿まで奪い去り、これ以上何を奪うのか。
どうして、どうして、森は自分を嫌う。
それは大きな間違いだけれど、まだ誰も気付かない。
- 133 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:54:07.92 ID:VmKZdeNcO
-
クーが異形、人魚の姿になって数年が経った。
マルタスニムが寿命で死に、生まれ、繰り返される。
クーが森にやって来て、数十年が経った。
もうクーとの出会いを知っているマルタスニムは、一人も居ない。
クーが生まれて、数百年が経った。
もはや何も分からないし、何がどう分からないのかも分からない。
ただただ涙を流し続けて、谷底の世界は海底の世界になっていた。
森へやって来て、もうどれだけ経ったか分からない。
それでもクーは泣き続け、妹の帰りを願っていた。
その理由は相変わらずで、彼女はまるで成長していない。
人間でなくなった事が、知る者がいなくなった事が、
何の役にも立たない自分が、相も変わらずカスの様な弱い自分が
悲しくて悲しくて、しかたがなかった。
けれどクーは、自分から変わろうとなんてしない。
だから彼女は泣き続ける。
- 140 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 22:57:16.03 ID:VmKZdeNcO
-
川 ゚ -゚)「と、言うお話だったのさ」
ミセ;゚−゚)リ「…………え……オチ、は?」
川 ゚ -゚)「無い、けど?」
ミセ;゚−゚)リ「……え……? う、嘘でしょ……?
ここはもっと、こう……ビダン、的な……?」
( ノAヽ)「ノブオはおいといて、お前サイテーなノーネ」
_,,
ミセ;゚Д゚)リ「ぅおういっ!!?」
( ノAヽ)「いや、だってサイテーなノーネ、なんなノーネこいつ」
( [)
( ´ー`)(チビ……世の中には言っていいタイミングと悪いタイミングがヨ……)
( ノAヽ)(ヌッヘッホー)
<;ヽ`∀´>「あ、と、とりあえず! お話はおわりニダ!?」
- 144 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 23:00:17.10 ID:VmKZdeNcO
-
川 ゚ -゚)「ああ、暇くらいは潰せたかい?」
_,,
ミセ;゚〜゚)リ「いや、つぶせたけど……あの、話し始めたりゆー……覚えてる?」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「暇潰し、だったかな?」
_,,
ミセ;゚Д゚)リ「人間じゃなくなったりゆーじゃなかったっけぇ!!?」
川 ゚ -゚)「ああ、そんな事もあったね。失念していたよ」
_,,
ミセ;゚Д゚)リ(誰かなんとかして……このひと……ぜんぜんクールじゃねぇ……)
<;ヽ`∀´>(言っちゃだめニダ……ニダ……)
_,,
ミセ;゚−゚)リ(ニダーももう限界じゃん……)
川 ゚ -゚)「ああそうそう、私は一つ、勘違いをしていたんだ」
_,,
ミセ;゚−゚)リ「へひ?」
- 146 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 23:02:19.87 ID:VmKZdeNcO
-
川 ゚ -゚)「私はね、森に嫌われていると思っていたんだ」
_,,
ミセ;゚−゚)リ「……そう、でひゅね……」
川 ゚ -゚)「けどね、本当は、私は森に愛されていたんだ」
ミセ;゚−゚)リ「…………あ、最初に、言ってましたね」
川 ゚ -゚)「森がね、私を森から出さない様に、森の生き物にしてしまったんだ」
ミセ;゚−゚)リ「…………」
川 ゚ -゚)「ほら、だからもう私は元の世界に戻る術があっても
こんな体じゃあ、戻れないだろう?」
ミセ;゚−゚)リ「そう、だけど……でも、愛……?」
川 ゚ -゚)「嫌いなモノを、もう森から出られないような姿にするかい?」
ミセ;゚−゚)リ「あ、……う」
- 148 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 23:04:14.85 ID:VmKZdeNcO
-
川 ゚ -゚)「だから私は、森に愛された
森の生き物は、森に愛されているからこんな姿なんだ」
ミセ;゚−゚)リ「……」
川 ゚ -゚)「どこかに行きたくてもどこにも行けない、森は、ひどく意地悪だ」
ミセ;゚−゚)リ「じゃ……じゃあミセリも……?」
川 ゚ -゚)「君がここに来て、どれくらい経つ?」
ミセ;゚−゚)リ「え? え、と…………2、3ヶ月……?」
川 ゚ -゚)「なら、大丈夫さ」
ミセ;゚−゚)リ「へ?」
川 ゚ -゚)「それくらいの頃には、私はもう青くなっていた
でも君は、ミセリは変わっていない」
ミセ;゚−゚)リ「あぅ……う……」
- 152 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 23:06:17.84 ID:VmKZdeNcO
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ミセ;゚−゚)リ「じゃあ、じゃあ、ミセリは……」
( ノAヽ)「森に、きらわれてるノーネ?」
ミセ;゚−゚)リ「ぁ……」
川 ゚ -゚)「……きっと、ね。きっとミセリは、森に嫌われているんだろうね」
ミセ;゚−゚)リ「……なんかショックだな、それ……」
<ヽ`∀´>「でもミセリ、それは」
( [)
( ´ー`)「それは、ミセリが変にやる気があるからだヨ」
<ヽ`∀´>「ニダ」
川 ゚ -゚)「ああ、それだねきっと」
ミセ;゚−゚)リ「いやさっぱりわかんないよ?」
- 154 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 23:08:05.80 ID:VmKZdeNcO
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川 ゚ -゚)「森はね、ミセリみたいに元の世界に戻るために
森を楽しんで、精力的に生きる人間が嫌いなんだ」
ミセ;゚−゚)リ「ぇあ…………や、何で知ってんの?」
川 ゚ -゚)「元の世界に戻るため?」
ミセ;゚−゚)リ「うん、言ってないよね?」
川 ゚ -゚)「分かるよ、流石の私でもね」
( ノAヽ)(だから答えになってないノーネ……)
<;ヽ`∀´>(もう海でのツッコミは諦めるニダ……)
川 ゚ -゚)「だからミセリ、君はきっと、元の世界に戻れる
なんたって、君は森に嫌われているんだから」
ミセ;゚−゚)リ「……嬉しいはずなのに、なんか嬉しくないなぁ……」
- 156 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 23:10:16.70 ID:VmKZdeNcO
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川 ゚ -゚)「私はもう戻れない、だからミセリ、君は戻るんだよ」
ミセ ゚−゚)リ「…………はい、クーさん」
川 ゚ -゚)「うん……うん…………ああ、人間って、良い、よね……」
全てを諦めた顔で微笑んだクーは、変わらず涙を溢している。
それを見たミセリは、クーに抱いたもやもやを押し退け、俯く。
この人は歪んでる、どうしようもないくらい。
大人なのに子供っぽいし、わけはわからないし、どこかおかしい。
けどこの少し変な人は、悲しんでいる。
その理由もまた歪んでいるけれど、それはとても悲しい事。
それに悲しいだけじゃなくて、すごくすごく、寂しいのだろう。
なんだかんだ言いながら、もう戻れないと呟いた彼女の顔は
とんでもなく、寂しそうだったから。
胸の辺りが、ざわざわ、きゅう、とした。
ミセリは平らな胸を押さえて、体をちぢこめる。
頭に浮かぶ、ぶわりと広がる、元の世界の景色。
- 159 ◆tYDPzDQgtA 2009/05/10(日) 23:12:12.23 ID:VmKZdeNcO
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新しい家、学校、教室、友達、お母さん、お父さん。
いじめられて飛び出した学校、叱られて飛び出した家。
思い出せば思い出すほど、ミセリの目に涙が浮かんだ。
そんなミセリを見上げながら、ノーネがぴたりとしがみつく。
その反対側にはニダー、後ろにネーヨ、
ネーヨから降りたビコーズは、ミセリの肩にぺた、とくっついた。
何も言わないし何も言えない、けれどなんとなく察する。
胸が痒い様に痛む。
ぎゅうと握りしめられた様な胸に、ミセリは顔をくしゃくしゃにした。
クーの言葉によって、ミセリの胸に沸き上がった物。
それはホームシックで、頭の中には元の世界の、良い記憶ばかりが開かれる。
久々に実感した、戻りたいと言う感情。
けれどミセリの側で、ミセリにくっつく仲間達の側には居続けたい。
地上では、森の海の水嵩が、少しばかり上がっていた。
六話 後編、おわり。