1 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:18:38.02 ID:cpbWT6G4O

7xさん
ttp://nanabatu.web.fc2.com/boon/miseri_hennna_mori.html
ブーン文丸さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/forest/forest.htm

まとめて下さってます、ありがとうございます。



ミセ*゚ー゚)リ 女子小学生、いわゆる良い子ぶりっこ。

( ノAヽ) 森の人、心は狭いめ。カタカナ。

<ヽ`∀´> 森の人、どちらかと言うと普通。狩人。

( ´ー`) 恐竜、性格は微妙に良くない。主に乗り物。

( [) 森の妖精。喋れないけど意外とお役立ち。ゴェェ。

5 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:20:14.96 ID:cpbWT6G4O
───────────────

 あなたの側に居るのが嫌で、私はそこから逃げ出した。

 あなたにつけられた傷、たくさんの傷。

 あなたに与えられた痛みも苦しみも屈辱も、忘れた事は一度もない。

 耐えていたわ、何をしても無駄だと分かっていたから。
 耐えていたわ、いつかあなたに復讐したくて。


 だから私は逃げ出した。
 あなたの側から逃げ出した。

 それがあなたへの復讐。

 私が側に居ないあなたは、きっと崩れてしまうから。

 足元から、積み上げてきた全てが崩れてしまうの。
 私と言う存在で積み上げてきた全てが。


 一番陰険なやり方で、あなたを壊すの。


8 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:22:08.22 ID:cpbWT6G4O


 むかしむかし、表情の少ない少女は、一人で居るのが好きだった。
 あの人に傷付けられずに済む、一人の時間。

 学校からの帰り道、寄り道をして孤独を貪った。
 唯一、自分が自分で居られる時間が好きだった。


 そんなある時、少女は子猫を拾った。

 雨の日の帰り道、箱に入れられた金色の子猫を見つけたのだ。

 少女はそれを見付けて、目の前でしゃがみ込む。
 そして小さな頭を指先で撫でて、少し困った顔をした。

 家に連れて帰れば、きっとあの人に殺されてしまう。
 けれど、みぃみぃと心細げに鳴く子猫を放ってはおけない。

 悲しいくらいに声をあげる子猫。
 可哀想な子猫。

 自分より弱くて小さなそれ。

 助けたい。


11 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:24:07.53 ID:cpbWT6G4O

 少女は子猫を抱き上げて、森の近くに向かった。
 雨風をしのげて、誰にも見つからない場所。

 無人の神社の片隅、小さな社に、自分のハンカチと子猫を入れた。
 すぐに食べ物とタオルを持ってくるわ、呟いて。


 出来た物は、少女と子猫の密なる時間。
 少しずつ元気になる子猫、一人の時間が一人と一匹の時間に変わった。

 一人の時間が好きだった。
 けれど、これも悪くない。


 少女は満たされる。
 あの人に傷つけられても、子猫の存在が少女の心を保たせる。

 大丈夫、あの子が居る。
 大丈夫、一人じゃない。
 大丈夫、大丈夫、私はまだ大丈夫。


 大丈夫、言い聞かせる。


13 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:26:14.92 ID:cpbWT6G4O

 子猫は戸惑う。
 自分を助けた人間が、傷だらけで笑う姿に。

 弱々しくて、今にも折れてしまいそうな笑顔。
 本人は気付いていない、限界まで雪を積もらせた小枝の様な笑顔。

 いつ折れるかわからないその笑顔に、子猫は戸惑う。

 けれど子猫は子猫でしかなく、
 どうすれば良いかも、少女に何が起こっているかも分からない。


 日に日に雪を積もらせる小枝。
 しなって、軋んで、いつ弾ける様に折れてしまうか分からない。

 顔に絆創膏を貼った少女は、それでも笑っていた。
 笑顔は少しずつ色を無くして行き、自分と遊ぶ指先には力が無い。

 それでも、それでも、少女は笑う。


 そしてある日、枝がぱきん、と折れてしまった。


15 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:28:10.19 ID:cpbWT6G4O

 額から血を流したまま、少女は虚ろな顔でやって来た。

 すっかり元気になり、体も少し大きくなった子猫は驚いた。
 社から出て境内に転がっていた子猫、その前に現れた少女。

 少女は泣き笑いで子猫を抱き上げて、告げる。


「ねぇ、行こう」


 どこへ、とは言わなかった。

 どうなるかは、分からなかった。


 けれど子猫は、頷く代わりに頬をざらりと舐める。
 お前について行くと、言葉を口に出来ないから。

 子猫はまだ、喋れないから。


19 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:30:05.57 ID:cpbWT6G4O


 少女は子猫を連れて、歩いていた。

 不思議な景色、森の中。
 子猫を引き摺る様に連れて、清々しい顔をして。

 今まで自分を押さえ付けていた物から抜け出し
 解放された少女は、ひどく清々しい気持ちに満たされていた。

 そんな少女を襲うのは、反動。


 頭を踏みつけられる様にして、全てを押さえ込まれていた。
 その押さえ込まれていた全てが、少女と一緒に解放される。

 ずっとしたかった事、あの人に対してしたかった事。
 傷付けて傷付けて、崩して壊して、蹂躙する。

 狭い場所から這い出した欲望は、好き勝手に暴れ回る。


 カゴの中から飛び出した少女の胸には、黒くどろどろとした物だけが渦巻く。


20 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:32:12.85 ID:cpbWT6G4O

 目に映る、全ての物が輝いて見えた。
 外の世界、あの人に征服されていない世界は素晴らしい。

 だからこそ壊したい。
 自分にはない輝き、触れられない輝き。
 いくら渇望しても手に入らない煌めく物。

 ぐろりぐろりと真っ暗歪む少女には、到底手に入らない物だから。


 羨ましくて傷付けた。
 妬ましくて傷付けた。
 そして笑った、宝かに。

 何かを奪われる気分はどうだと、歪んだ矛先を向けて。


 少女の目は、片目の彼女達よりも歪んでいる。

 何も真っ直ぐには映らない、綺麗なままには見られない。

 歪んだ視界、目。
 壊れた目。

 もう取り戻せないから。

────────────────

24 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:34:06.90 ID:cpbWT6G4O


 この目にうつる全てのもの

 とてもとても大好きで、悲しいくらいにキレイなんだ。


 色んな物を見た、本当に色んな物を。

 本当はキレイなだけじゃない、色んな物。


 でも、それらをキライになるコトは出来なかった。



 大事にしたい、でも、壊したい。

 この手から逃げて行く、そのマエに。

 この目にうつるもの、みんなみんなを抱き壊したい。


25 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:36:13.39 ID:cpbWT6G4O


 【ミセ*゚ー゚)リ 変な森のようです】


  第八話 『ひずむせかいうつるせかい。』



 だから遊ぼう、ねぇ遊ぼう。



28 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:38:07.02 ID:cpbWT6G4O

 てっこらてっこら、森を歩くミセリ達。

 ミセリが右目を失って数日が経ち、慣れない片目生活が少し苦になり始めた。
 酷使する左目に、溜まる疲れ。
 慢性的な頭痛を持つ様になったミセリは、具合の良い時だけ自分の足で歩く。

 誰もそれに文句は言わないし、寧ろ気を使って無理に歩くなと言う。
 けれど出来る限り、自分の足で歩きたい。

 何故か感じる、終わりに近付く旅、残された時間。
 土の感触を足で感じ、全てを踏み締めていたい。

 誰かに頼るだけなんて嫌。


 けれども頭痛は時として酷く、頭を締め潰す様な痛みをもたらす。
 その痛みが来ると、歩くどころか立つ事さえ難しい。

 結局ネーヨの背に乗り、ゆらゆら揺らされて進む事が多くなった。
 自分はなんて弱いんだろう、ミセリを襲うのは自己嫌悪。


29 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:40:05.39 ID:cpbWT6G4O

 しかし今は調子が良く、自力で歩く事が出来る。
 それだけで嬉しくなるのか、ミセリの足取りは軽い。

 それに比べて、ニダーの足取りは、ひどく重い。

 沈んだ表情、重い足取り、口数少なく俯いたその顔。
 どんよりとした何かを背負うニダーに、隣を歩くネーヨは困った顔ばかり。


 ニダーはミセリの目の件を、ずうっと引き摺ったままだった。

 頭の痛みにミセリが顔を歪める度、がくんと落ちた視力に眉を寄せる度
 ネーヨの背中でぐったりと横たわる姿を見る度、胸がひどく痛んだ。

 自分の所為でミセリが苦しんでいる。
 自分の所為で皆に迷惑がかかっている。

 間接的に傷付けた、大事な仲間を傷付けた。
 もう傷付けるものかと決めたのに、誰も失うまいと決めたのに。

 何で、成長していない。
 大人ぶって偉そうな事を言って、結局ミセリを傷付けた。

 何で、何でこんなに、この手は誰かを助けられない。


31 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:42:08.67 ID:cpbWT6G4O

 あの時は混乱しきっていたし、それ以降は気まずくて
 きちんと謝罪も出来ていない、胸の辺りをぐるぐると、ごめんなさいが回る。

 けれどそのごめんなさいは、何だか軽い。
 思い悩んでいる筈なのに、言葉はどこか虚ろになる。

 まだ気持ちの整理が出来ていないのか、言葉の中身がどこにもない。

 空っぽの、外側だけの言葉。
 そんな謝罪に意味はない。


 ふと、ニダーが思い出す。
 こんな気持ち、前にもあった気がする、と。

 そんなに遠くはない、前。
 少し前、何年か前に感じた筈。
 いや、ずっと感じていた様な気もする。

 これは何だろう、このふわふわと落ち着かない胸の中。
 言葉に中身がこもらない、前にも感じた事のある何か。


 いつ、感じていたんだろうか。
 最近は感じていなかった、これは。


34 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:44:34.25 ID:cpbWT6G4O

 あ、とニダーが口の中で呟いた。


 そうだ、これは、のーちゃんに対して口にし続けていた、謝罪。
 それと全く同じの、魂のこもらない言葉の軽さ。


 ああ、自分は、ずっとこんなだったのか。
 ニダーは息苦しそうに顔を歪めて、深く俯く。

 魂の無い言葉。
 それは、現実を受け入れきれていないから。

 どこか遠くで起きた出来事に対して、謝罪をする。
 確かに罪悪感は感じているし、後悔もしている。
 この謝罪や気持ちに嘘はない。

 それは確かだ。
 確かだ、けれど。


<ヽ Д >


 頭の後ろ側、その奥が、何だか冷たく感じた。


36 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:46:26.24 ID:cpbWT6G4O

 受け入れられていない、のか。
 何もかも、受け入れられていない。

 今回の、ミセリの事も。
 のーちゃんの、事も。

 自分の所為でまた、何かを失ったと言うのに。
 現実を受け入れきれていない。

 重すぎて重すぎて、現実を遠くから見つめて逃げている。
 数年前、のーちゃんを失ったあの時から、今でも。
 ずっとずっと、逃げ続けている。


 のーちゃんのお墓の前で口にした謝罪、摘んだ花、流した涙。

 みんな本物、偽物ではない本当の気持ち。
 心の底から絞り出すような謝罪だった。


 けどその謝罪に、中身はあったか?

 その言葉に、魂はこもっているのか?


 こもっていない、空っぽだ。
 スカスカの、スポンジみたいな言葉だ。


39 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:48:12.63 ID:cpbWT6G4O

 ぴたり、とニダーの足が止まる。
 数歩前へ歩いてから、ネーヨがそれに気付いて振り返る。

 項垂れるニダーは猟銃を抱き締めて、微かに震えている。
 ネーヨは一度、前を歩くミセリ達を見てから、ニダーの元へ戻ってきた。


( ´ー`)「…………どしたヨ?」

<ヽ Д >「ぁ……」

( ´ー`)「大丈夫、かヨ? 顔、真っ青だヨ」


 ネーヨの長い尾が、帽子越しにニダーの頭を撫でる。
 カタカタと震えるニダーにとっては、その優しさが悲しい程に痛く感じた。

 こんな自分に、優しくしないでくれ。
 こんな腰抜けに、ちゃんと謝る事も出来ない自分に。

 大きくて優しくて、でも厳しいネーヨ。
 たまに見せる、みんなみんな包み込むみたいな優しさは、とても暖かい。

 その長い首にしがみついて、泣きたかった。
 でもそんな事は出来やしない。


42 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:50:17.87 ID:cpbWT6G4O

 大きくて優しい旅の仲間、とても頼りになる仲間。
 その頭の上に乗ってたビコーズが、心配そうに覗き込む。

 小さくても好奇心旺盛で、歯車王を相手に逃げる事なく威嚇した。
 見知らぬ相手にも平気で近付ける、小さいのに強くて勇敢な妖精。

 その強さが羨ましい、全てを真っ直ぐに見据える、澄んだつぶらな目。
 こんなに小さいのに、小さいのに、自分よりずっと強い。

 そんな心配そうに見ないでくれ。
 痛くて痛くてしょうがない、涙が滲んでしまう。


( ノAヽ)「んぁ? どしたノーネー?」

( [)「ゴェゴェェ」

( ノAヽ)「わからんノーネ」

( ´ー`)「んー、ニダー大丈夫かヨ? 乗るか?」

( ノAヽ)「ニダーぐあいワルいノーネ? ムリすんなノーネ」


44 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:52:04.56 ID:cpbWT6G4O

 二人が後ろをついてきていない事に気付いたノーネが、引き返してくる。
 一緒にミセリもやって来て、心配そうな顔をしていた。

 誰も許さない、何も許せない。
 ヒト嫌いだったノーネは、我が儘ですぐに拗ねる、子供っぽい性格だった。

 けど今のノーネは、誰かを気遣う事が出来るし、我が儘も言わなくなった。
 レモナの件から立ち直ったノーネは、
 会った時に比べると、ずいぶん大人っぽくなった。

 成長している、前を向いて、ちゃんと。地面に足をつけて進んでる。
 止めてくれ、そんな、こんな自分を見ないでくれ。

 どこにも進めていない自分を。


ミセ*%ー゚)リ「ニダーどしたの? 調子悪い?」

( ノAヽ)「このへんできゅーけーするノーネ?」

ミセ*%ー゚)リ「そだね、んじゃネーヨ、あっちの方に広いとこあったから」

  ( [)
( ´ー`)「はいヨ」


47 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:54:05.29 ID:cpbWT6G4O

( ノAヽ)「ノーネにもつおろすノーネ、だから乗せてけ」

  ( [)
( ´ー`)「あーはいはいヨ」

ミセ*%ー゚)リ「先行っといてー」

( ノAヽ)「ミセリは大丈夫なノーネ?」

ミセ*%ー゚)リ「ミセリ今日は具合いいもーん」

( ノAヽ)「ぬっへっほぅ、んじゃ先いくノーネ」

ミセ*%ー゚)リ「うーい、ほらニダー行こ? 大丈夫?」


 傷だらけの小さな白い手が、緑の手を優しく握って引く。
 その手のひらの暖かさが、堪らなく涙を誘い出す。

 しゃがんで顔を覗き込むミセリ。
 右目を覆う黒い眼帯に、小さい傷だらけの顔。

 綺麗な透き通る茶色をした、くりくりと大きな左目。残された片方の目。

 木々の隙間から差し込む光、透かされる茶色の髪に、違和感を覚えた。


50 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:56:06.61 ID:cpbWT6G4O

<ヽ Д >「ミセ、リ……?」

ミセ*%ー゚)リ「うん? どったの?」

<ヽ Д >「ミセリ、髪の……色、」

ミセ*%ー゚)リ「ん? なんか変か……な…………あれ?」

<ヽ Д >「…………みどり、ニダ?」

ミセ;%ー゚)リ「だ……ね、これ…………え、えぇぇぇ……ヤバいぜおい……」


 顔の横に流れる髪の束をつまんで、よくよく見つめる。
 すると髪の毛は、少し色が変わっていた。

 茶色い髪に、緑の塗料を塗った様な色。
 ぱっと見はその変化に気付かないが、よく見たら、確かに色がおかしい。

 茶と緑を混ぜた様な、少し灰色にも見える緑。
 毛先をよく見れば、かなり緑色に近付いている。

 やべーな、とミセリが呟く。
 髪の変化の意味に気付いているのか、困ったように笑っていた。

 笑って、いた。


51 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 20:58:04.85 ID:cpbWT6G4O
<ヽ Д >「……」

ミセ*%ー゚)リ「ま、いっか」

<ヽ Д >!?

ミセ*%ー゚)リ「緑になったもんはしょーがないし、まだぱっと見はわかんないし」

<;ヽ Д >「で、でも、ミセリ……」

ミセ*%ー゚)リ「ん? 森もミセリを認めたのかなー、嫌われてたのにね」

<;ヽ Д >「なん、で……そんな、笑える、ニダ……?」

ミセ*%ー゚)リ「だって、なっちゃったんだからしょうがないでしょ?」

<;ヽ Д >「そ、だけど……」

ミセ*%ー゚)リ「別に好きでこーなったわけじゃないけどさ、
      今さらどーこー言っても、こうなった事はかわんないもん」

<;ヽ Д >「ッ!」

ミセ*%ー゚)リ「だから、いっそ気にしない! これはこれで悪くない色だし、
      過ぎた事をずっと気にしててもね、時間もったいないし」

<;ヽ Д >「……」

ミセ*%ー゚)リ「どーせ時間つかうなら、今を楽しむべき、でしょ?」

52 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:00:07.28 ID:cpbWT6G4O

 それは、自分が言った事。
 残された時間、いっぱい楽しもう。

 そう、自分が言ったんだ。

 なのに、その事を忘れていた。
 自分は逃げるのに精一杯で、人に言った事すら出来ていない。


 大人でも何でもない。
 子供、ひたすらに、子供だ。

 何も出来ない受け入れられない、そう、泣くばかりの。


ミセ*%ー゚)リ「ニダー、行こ? みんな待ってるよ?」


 ミセリが手を引く。
 子供が、大人ぶる子供の手を引く。

 何故だろう、こんなに、悲しい。


56 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:02:08.38 ID:cpbWT6G4O

 ふらふら、とミセリに引かれながらニダーが歩く。
 少し先には荷物を降ろして、お茶の用意をするノーネ達の姿があった。

 近付いてきた二人を見付けて、ノーネが二人の元へと駆け寄る。

 そして、


  _,,  パーン
( ノAヽ)
 ⊂彡☆))Д >そ


<;#)Д >「ぇ……え?」

(#ノAヽ)「遅い! ちゃっぱどれかわからん!」

<;#)Д >「あ、ご、ごめんニダ……」

ミセ;%ー゚)リ「あーもー、ミセリがお茶いれるからー」

(#ノAヽ)「ヌン!」


59 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:04:10.30 ID:cpbWT6G4O

(#ノAヽ)

( ノAヽ)

( ノAヽ)「ニダ」

<;ヽ Д >「ニダ?」


((    )Д r>"そ ムギュ
     つ

( ノAヽ)「……はよ行ってお茶のむノーネ、飲んだらきっとすっきりなノーネ」

<ヽ Д >「ぁ、ぅ……ニダ……」

( ノAヽ)「気にしすぎんじゃねぇようばーろぃなノーネ」

<ヽ Д >「…………アイ……ゴー」


62 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:06:14.21 ID:cpbWT6G4O

 ぎゅう、とニダーを抱き締めたノーネは、
 ぷいと顔をそらして、ネーヨ達の元へと戻って行った。

 叩かれた頬を撫でながら、ニダーがゆっくり皆の元へと足を運び。



  i メ
 i| ゴ
 ‖| ッ
 ‖|i !
 ‖||
 | K| 从//
 ( [);<
<ヽ Д >そ


 上空から、何かが降ってきた。


65 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:08:06.99 ID:cpbWT6G4O

  Ω" ズキズキ
:<;ヽ Д >:「あぁぁぁぁぁいごぉぉぉぉぉぉ……っ!!」

( [)「ゴェ!」
  Ω
<;ヽ Д >「び……ビコー……ズ……?」

( [)「ゴェゴェェゴエ!」
  Ω
<;ヽ Д >?

( [)っ◎


 降ってきたのは、木の枝から飛び降りたビコーズだった。

 固い何かが頭に当たって出来た、たんこぶを撫でていると
 ビコーズがその何かを差し出す。

 固い殻の木の実、食べるのに難儀するが美味しいそれ。

 どうやら、ニダーの頭に当たったのはその木の実らしい。
 少しだけ殻にヒビが入っていた。


68 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:10:06.08 ID:cpbWT6G4O

  Ω
<;ヽ Д >「ウリ……に?」

( [)「ゴェ!」
  Ω
<;ヽ Д >「あ……ありがと、ニダ」

( [)「ゴェゴェェ」


 ニダーが木の実を受け取ると、ビコーズはとことこと皆の元に走って行った。

 それと入れ違いに、今度はネーヨがやって来る。

 痛そうに頭を押さえるニダーを見て、心配そうな顔をした。


(;´ー`)「……大丈夫かヨ?」
  Ω
<;ヽ Д >「だ……大丈夫、ニダ……」

(;´ー`)「無理すんなヨ、乗ってけ」


69 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:12:06.43 ID:cpbWT6G4O

 ひんやりとした、ゴムっぽい手触りの尾がニダーの頭を撫でる。
 そして、ひょいとニダーを持ち上げて自分の背中に乗せた。

 少しの距離ではあるものの、ネーヨに揺らされて進む。
 のんびりした足取りと振動が、心地よい。


 みんなに気を遣わせている。

 いつもより優しい皆の行動に、ニダーは俯く。

 気にするな、元気出せ、無理するな。
 そんな気持ちを強く感じれば感じるほど、
 ニダーは、穴にでも入りたくなってしまう。

 ミセリを傷付けて、気を遣わせて、自分は何をしているんだ、と。


 ぺたんと俯せに倒れ、ネーヨの首にしがみつく。

 低い体温が、気持ちよかった。


73 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:14:04.92 ID:cpbWT6G4O

 考えれば考えるほど、泥沼にはまって行く。
 自分の悪い所と人の良い所ばかりが見えて、羨ましくて悲しくてしょうがない。

 誰も逃げてない、現実に向き合って受け入れて前に進んでいる。
 ミセリ達の言葉はとても素直で、心から発せられたものばかり。

 中身のある言葉、前を向ける勇気。
 自分に無くて皆にある物。

 ああ、もう。
 もう、どうしようもないほどに落ち込んでしまう。

 どうすれば良いんだろう、どうすれば。


ミセ*%ー゚)リ「お茶入ったよー」

( ノAヽ)「おちゃうめー」

( [)「ゴェェ」

ミセ;%ー゚)リ「ちっとは待とうよ……」


75 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:16:06.99 ID:cpbWT6G4O

 ネーヨがミセリ達の元に辿り着き、ニダーを地面に降ろす。
 お茶ではなく、木に生える葉をもしゃもしゃ口にしている。

 そんなネーヨを見てから、ニダーは少し離れた位置に座った。

 何となく、皆の側には居づらい。


 ミセリがお茶をカップに注いでいる。
 ビコーズが荷物の中からお茶請けを出している。
 ノーネがそれをつまみ食いしている。
 ネーヨがそれを咎めている。

 その輪に、入れない。

 帽子を脱いで胸に抱き、それをぼんやりと見るしか出来ない。
 無性に寂しい。

 でも輪には入れない。
 悲しいくらい、遠く見える。


 ニダーが俯いて帽子の鍔を噛んでいると、何かが近付くのを感じた。

 ふと顔を上げれば、そこにはミセリの笑顔があった。


77 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:18:12.75 ID:cpbWT6G4O

ミセ*%ー゚)リ「お茶、飲もうぜ?」

<ヽ Д >「ミセリ……」

ミセ*%ー゚)リ「そんなとこに居ちゃ飲めないよ、こっち来なよ?」

<ヽ Д >「……ウリは、良い、ニダ……」

ミセ*%ー゚)リ「そんな事言わないで、ね?」

<ヽ Д >「……良い、ニダ」

ミセ*%ー゚)リ「む、強情な」

<ヽ Д >「ごめんニダ……でも、」
  _,,
ミセ*%Д゚)リ「わたしの茶が飲めねぇってか!」

<;ヽ Д >!?


79 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:20:05.99 ID:cpbWT6G4O
<;ヽ Д >「ぁ、や、違っ、その」

ミセ*%ー゚)リ「まあそれは冗談として、はいきょーせーれんこー」

<;ヽ Д >「アイゴー!?」

ミセ*%ー゚)リ「わたし空気読むの下手だから、ニダーをほっとくとか出来ないの
      なんたってほら、ミセリだから」

<;ヽ Д >「ぇ、ぁ、あうあう」

ミセ*%ー゚)リ「セフセフ。はいお茶どーぞ」


 ミセリにがっしと持ち上げられて、そのままノーネ達の元へと連れて行かれる。
 そして荷物の側に降ろされ、すぐにお茶の入ったカップを差し出された。

 目の前に突き付けられたお茶を咄嗟に受け取り、
 ニダーはがくりと、諦めた様に肩を落とした。


( ノAヽ)「さすがミセリなノーネ」

ミセ*%ー゚)リ「痺れて憧れる?」

( ノAヽ)「ぜんぜん」
  _,,
ミセ*%ー゚)リ「分かってたけどムカつくわー」

81 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:22:16.23 ID:cpbWT6G4O

( )´ー`))゙「つーかヨ、ニダー」

<ヽ Д >?

( ノAヽ)「悩みすぎなノーネ」

<ヽ Д >!

( ´凵M)=3「げふ。本人が気にしてねー事、いつまで引きずってんだヨ」

( ノAヽ)「むしろミセリはガンタイカッケー! とか言ってたノーネ」

(;´ー`)「アホじゃねーかヨ」

( [)゙

( ノAヽ)「まったくもってアホミセリなノーネ」
  _,,
ミセ#%Д゚)リ「あんたら耳ひっこぬくぞ!!」

廈[)

( ´ー`)「ビコーズ耳どこだヨ?」


84 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:24:16.52 ID:cpbWT6G4O

<ヽ Д >「……」

( ノAヽ)「ま、なんにせよオマエは悩みすぎなノーネ」

<ヽ Д >「で、でも、その、」

( ノAヽ)「しかも一人で」

<ヽ Д >「あ、ぅ……」

( ノAヽ)「アホ」

( ´ー`)「アホ」

( [)「ゴェェ」

<ヽ Д >「……アイゴー……」

( ノAヽ)「そーだん出来ないほどノーネ達はタヨリナイノーネ?」

<ヽ Д >「っ!」

( ´ー`)「あーあ、恐竜ショックー」

( ノAヽ)「ノーネもショックー」

( [)「ゴェェゴェェェ」


86 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:27:12.01 ID:cpbWT6G4O
<;ヽ Д >「あ……ぅ……」

ミセ*%ー゚)リ「……ニダー、わたしが言ったの、覚えてる?」

<;ヽ Д >?

ミセ*%ー゚)リ「ミセリはへーきだから、大丈夫だからって、言ったじゃん」

<;ヽ Д >「……あ」

ミセ*%ー゚)リ「だいたい、アレはわたしの不注意もあったんだから」

<;ヽ Д >「でも、ウリが、」

ミセ*%ー゚)リ「もしニダーのせいだとしても、事故なんだよ?」

<;ヽ Д >「……」

ミセ*%ー゚)リ「事故なんていつどうやって起きるかわかんない
      しかもあんなの、起きるなんて思いもしない事故だもん」

<;ヽ Д >「で、でも、」

ミセ*%ー゚)リ「誰も悪くない事故を、全部しょいこむのはやめて」

<;ヽ Д >「ッ!!」


89 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:30:06.04 ID:cpbWT6G4O

ミセ*%ー゚)リ「ミセリ、無理してじゃなく、ホントに大丈夫なんだよ?
      それなのに、そんなに思い詰められたらミセリも困っちゃうよ」

<;ヽ Д >「……ぅ」

ミセ*%ー゚)リ「だからニダー、それでも自分が悪いって思うなら
      ミセリのために、悩むのをやめて」

<;ヽ Д >「ミセ、リ、」

ミセ*%ー゚)リ「忘れないのは大事だけど、引きずるのは大事じゃないんだよ?
      それが事故なら、なおさらだよ」


 ずん、と、ミセリの言葉が頭に響いた。

 いつの間にこの少女は、こんな言葉を口にする様になったのか。
 いつの間に、こんなに成長していたのか。

 小娘が口にするには重すぎる言葉が、ニダーの胸をつつく。
 またずきずきと痛み出した胸を押さえて、俯いた。


91 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:32:07.17 ID:cpbWT6G4O

 誰も悪くない、不慮の事故。
 これほど扱いづらい物は無い。

 ミセリは手にしていたカップをノーネに渡して、ニダーを抱き上げる。
 そして自分の膝に乗せ、頭を撫でた。


ミセ*%ー゚)リ「ねぇ、ニダー」

<;ヽ Д >「……」

ミセ*%ー゚)リ「こーゆー時はね、自分が悪いって思うより
      自分は悪くないって思う方が、むずかしいんだよ」

<;ヽ Д >「……ニダ」

ミセ*%ー゚)リ「だからねニダー、そのむずかしい、乗り越えてみようよ
      ミセリと一緒に、みんなと一緒にさ」

<;ヽ Д >「…………」

ミセ*%ー゚)リ「ミセリも乗り越えるから、一緒に頑張ろうよ」


92 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:34:14.33 ID:cpbWT6G4O

<;ヽ Д >「ミセリ、も……?」

ミセ*%ー゚)リ「うん、ミセリも」

<;ヽ Д >「何でミセリ、も、ニダ?」

ミセ*%ー゚)リ「だってミセリはたくさん殺してきた、守れなくて殺してきたから
      ミセリがもっと強かったら助かったのに、ミセリが弱いから死んだ」

<;ヽ Д >「ぁ、っ」

ミセ*%ー゚)リ「だからミセリは、強くなるって決めたの
      ミセリは悪くないってみんな言ったけど、それじゃ嫌だったから」


 脳裏に浮かぶ、妖精の集落。
 みんなが傷だらけになっても、守りきれなかった妖精達。

 それに対して強い強い後悔を持つミセリの、今の力強さの理由。


 ああ、一緒、じゃないか。


95 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:36:07.16 ID:cpbWT6G4O

 後悔して後悔して、泣いて謝って、後悔して。
 それを道にしたミセリの、強さ。

 忘れてはいない、けれど引きずってる訳じゃない。
 自分は悪くない、でも弱かったから、良い方の可能性を潰した。

 だからもう悲しい方を選ばないで済む様に強くなりたい。
 みんな助けられる様に、強くなる。

 だから、ミセリは笑えるんだろう。


 ぎゅ、とミセリの胸にしがみついた。

 とくん、とくん。
 小さな心臓の音が、はっきりと聞こえる。

 そうだ、強くなれる筈だ。
 みんな、強くなれる筈なんだ。

 強くなれないのは、逃げてばかりいる奴だ。


98 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:38:12.06 ID:cpbWT6G4O

<ヽ Д >「…………ミセリ……」

ミセ*%ー゚)リ「うん?」

<ヽ Д >「ひとつ、聞いて……良い、ニダ?」

ミセ*%ー゚)リ「ん、なに?」

<ヽ Д >「何で、ミセリ……そんなに、笑えるニダ? 強い、から、?」

ミセ*%ー゚)リ「んなわけないじゃん、ミセリ弱いもん」

<ヽ Д >「ぇ……」

ミセ*%ー゚)リ「笑うのにはね、強がるの
      例えば怪我したとき、痛くないしへーきだって強がって笑うの」

<ヽ Д >「強、がって……」

ミセ*%ー゚)リ「うん、そしたらミセリ単純だから、強がりがホントになる」

<ヽ Д >「…………それだけ、ニダ?」

ミセ*%ー゚)リ「そんだけ」


(;ノAヽ)(ハナシだけ聞いてたら、ミセリ生粋のアホなノーネ……)


101 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:40:14.26 ID:cpbWT6G4O

ミセ*%ー゚)リ「腕がとれても、目がとれても、髪の毛が緑になっても
      強がって笑ってりゃ、ホントにどーでも良くなんの」

<ヽ Д >「ミセリ……」

ミセ*%ー゚)リ「まーミセリがバカなだけだと思うけど」

(;´ー`)(自覚あったヨ……)

ミセ*%ー゚)リ「でも、バカは楽だよ?
      痛いのも苦しいのも、すぐにどーでも良くなるから」

(;ノAヽ)(アホの権化なノーネ……)

ミセ*%ー゚)リ「いっそみんなバカになっちゃえば楽なのにねー」

(;´ー`)(増殖するミセリ……)

(;ノAヽ)(しーきゅーホラー……)
  _,,
ミセ#%ー゚)リ「さっきから何かムカつくデンパ感じるわー」

(´ー` )(ノAヽ )


105 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:42:07.19 ID:cpbWT6G4O

ミセ*%ー゚)リ「だから、ね? ニダー」

<ヽ Д >「ニダ……?」

ミセ*%ー゚)リ「いっぱい笑おう、でしょ?
      大事な事は忘れないで、今はいっぱい笑おうよ」

<ヽ Д >「わら、う……」

ミセ*%ー゚)リ「重い物は、引きずるより背負う方が楽なんだから
      重いのを引きずって何か言っても、気持ちがそっちに向かないよ」

<ヽ Д >「……ミセリは、時々、大人ニダ」

ミセ*%ー゚)リ「普段は?」

( [)「ゴェェ」
  _,,
ミセ*%ー゚)リ「なんとなくムカつく事言ったのは分かるぞー?」

([;)
  _,,
ミセ*%Д゚)リ「ズボシかい!」


110 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:44:05.82 ID:cpbWT6G4O

( ノAヽ)「アホなコドモ?」

( ´ー`)「ちょっと惜しい」

( ノAヽ)「アホの子?」

( ´ー`)「ちょっと惜しい」

( ノAヽ)「アンポンタン?」

( ´ー`)「正解」

( ノAヽ)「ビコーズなかなかやるノーネ」

( [)「ゴェ」
  _,,
ミセ#%Д゚)リ「あんたらねぇっ!!」

( ノAヽ)「わーアンポンタンが来たノーネー」

( ´ー`)「にーげろー」
  _,,
ミセ#%Д゚)リ「待てこらぁっ!!」


112 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:46:07.90 ID:cpbWT6G4O

 ニダーを膝から降ろして、ノーネと追いかけっこを始めるミセリ。
 怒っているのか楽しんでいるのか、ミセリもノーネも、次第に笑顔に変わる。

 ぽん、と頭に何かを乗せられる。
 その何かを見上げると、ネーヨの尾っぽが乗っていた。

 膝の上に飛び乗るビコーズと、頭を撫でるネーヨ。
 追いかけっこをするミセリとノーネに、何だか、笑ってしまった。


<ヽ`∀´>「……ホルホルホル」

( ´ー`)「おー笑った笑った」

<ヽ`∀´>「ホルホル、ご迷惑お掛けしましたニダ」

( ´ー`)「かけられた記憶がネーヨ」

<ヽ`∀´>「……ウリも、逃げるのやめるニダ」

( ´ー`)「あん?」

<ヽ`∀´>「ちゃんと全部受け入れて、もっと、ちゃんとした謝罪するニダ」

( ´ー`)「……おうヨ」


114 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:48:07.26 ID:cpbWT6G4O

<ヽ`∀´>「もう少し時間がかかるかも知れないニダ
      でも、ウリもバカになってみるニダ」

( ´ー`)(それは向かないと思うヨー……)

<ヽ`∀´>「中身のある謝罪を出来るように、頑張るニダ!」

( ´ー`)「ほー」

<ヽ`∀´>「よし、取り敢えず……ミセ」ゲシッ

( #)「ゴェ!?」

<;ヽ`Д´>「アイゴー! ビコーズごめんニダ! 大丈夫ニダ!?」

( #)「ゴェェ……」


( ´ー`)=3(……あるじゃんヨ、中身)


115 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:51:24.00 ID:cpbWT6G4O
<;ヽ`Д´>「ごめんニダ、ビコーズ……」

ミセ*%ー゚)リ「あ、ニダー復活してる!」

<ヽ`∀´>「ニダ! 復活ニダ!」

ミセ*%ー゚)リ「よしよし、んじゃお茶いれて! 冷めた!」

<ヽ`∀´>「把握ニダ!」

( ノAヽ)「茶菓子もぷりーずなノーネ」

<ヽ`∀´>「把握ニダー!」

 ( [)
ミセ*%ー゚)リ「やっぱニダーのお茶のが美味しいもんねー」

( ´ー`)「あーやれやれ」

( ノAヽ)「オッサンお疲れなノーネ」

(#´ー`)「燃やすヨ」


117 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:53:11.32 ID:cpbWT6G4O

 やっと戻ってきた、和気あいあいとした賑やかな空気。

 ニダーがなんとなく、小さな壁を越える事が出来た。
 それはミセリだけではなく、皆のお陰でもある。

 けれどニダー以外、誰もそれには気付かない。
 だからこそ、ニダーの胸は暖かくなる。


 子供ばかりの仲間達。
 けれど時々大人っぽくて、ひどく鋭い事を言う。

 でも普段は明るくて、賑やかで、優しくて。
 とんでもなく、お人好しな仲間達。


 着いてきて良かったなあと、
 ニダーはカップにお茶を入れながら、心からそう思った。

 みんながみんな、旅をして良かったと思う事が出来る。
 それは、とんでもなく幸せな事だった。


119 ◆tYDPzDQgtA 2009/06/07(日) 21:55:19.86 ID:cpbWT6G4O
 追いかけっこ、お喋り、お茶。
 のんびり穏やか、それでも賑やか。

 そんな、いつも通りの空気の中。


 いつも通り、それを壊しにやって来る。


 赤い群れが、静かに草むらに潜んでいた。

 誰も、まだそれには気付かない。
 じわりじわりと迫り来る、赤い狂気。

 ぎらり、無数の刃物が光を放つ。

 穏やかな空気を血に染めようと、
 赤い群れが甲高く笑いながら、勢い良く草むらから飛び出した。


(  ゚∀゚ )「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!」



八話 前編、おわり。


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