- 1 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:12:34.47 ID:/KRYswfvO
-
7xさん
ttp://nanabatu.web.fc2.com/boon/miseri_hennna_mori.html
ブーン文丸さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/forest/forest.htm
まとめて下さってます、ありがとうございます。
ミセ*゚ー゚)リ 女子小学生、いわゆる良い子ぶりっこ。
( ノAヽ) 森の人、心は狭いめ。カタカナ。
<ヽ`∀´> 森の人、どちらかと言うと普通。狩人。
( ´ー`) 恐竜、性格は微妙に良くない。主に乗り物。
( [) 森の妖精。喋れないけど意外とお役立ち。ゴェェ。
最終回です。
投下しきるのにすごい時間がかかると思います、申し訳御座いません。
あと途中でトイレ休憩が入るかも知れません、申し訳御座いません。
それでは、最後に、どうぞお付き合いよろしくお願いします!
- 6 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:18:07.52 ID:/KRYswfvO
-
今までいっぱい怪我をしたね。
今までいっぱい涙を流したね。
今までいっぱい苦しんだよね。
今までいっぱい悲しんだよね。
でも、今までいっぱい楽しかったよね
幸せだった、いっぱい笑ってきたよね。
それだけで、わたし達の間には、切れない何かが出来たよね。
そう
それだけで、じゅうぶん。
それが、わたし達の成長のあかしだよ。
だから、ね、だから
- 7 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:20:35.08 ID:/KRYswfvO
-
【ミセ*%ー^)リ 変な森のようです】
最終話 『ひとりじゃない、ひとりじゃないよ。』
閲覧注意
ごたくはいらない、みんなで笑おう。
- 8 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:22:54.70 ID:/KRYswfvO
-
無口な少女は森の中、子猫を抱いて生きている。
今も変わらず生きている。
誰かと出会って傷付けて、それを繰り返して生きてきた。
あの子と出会って傷を癒され、少し変わった、それも過去。
無口な少女は、妹は、森の奥で生きている。
その心は落ち着いたけれど
あの人への、姉への呪いは、消えはしない。
あんぐり口を開く森の闇。
何かを食って噛み潰し、腹の中の生き物に微笑みかける。
腹から巣立たない少女達。
巣立とうとする一人の少女。
はてさて
森のご加護が、あります様に、?
- 9 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:24:20.13 ID:/KRYswfvO
-
レモナに教えられた、本物の魔女の存在。
それを追い求めて、ずいぶん経った。
時折見付ける村や集落で、ニダーとノーネが情報収集。
その時に、本物の魔女の存在を知る森の人が、多くなってきた。
むかし昔から語り継がれる言い伝え、
お伽噺の様なそれは、森の人達から恐れられていた。
森の最奥に住まう魔女は、森の人達を蹂躙しただの。
森の最奥に住まう魔女は、それはそれはおぞましい姿をしているだの。
森の最奥に住まう魔女は、金色の獅子を飼い慣らして下僕としているだの。
森の最奥に住まう魔女は、長く生きすぎたために魔法を使える様になっただの。
おおよそ事実とは思えない、本当にお伽噺の様な言い伝え。
- 11 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:26:13.74 ID:/KRYswfvO
-
けれどここ二つほどの村では、それらは確かに言い伝えられている。
中には魔女を見たと言う森の人も居て、魔女はクモの様な姿だとか。
それを聞いたニダーとノーネは、困り顔で見合せて、首を傾げるだけ。
鵜呑みに出来る様な情報では決してない。
けれど夢でも見たのだろうと吐き捨てるには、勿体無い。
魔女に対する情報は少なく、取捨選択が難しい状況。
そんな中、年老いた森の人のお伽噺を情報として扱うしかなくて。
<ヽ`∀´>「おまたせニダー」
( ノAヽ)「たでぃまー」
ミセ*%ー゚)リ「おっかえり! お疲れさまー」
( [)
( ´ー`)「わりーな、聞き込み任せちまってヨ」
<ヽ`∀´>「ホルホル、お役に立てて光栄ニダ」
( ノAヽ)「あがめたてまつれなノーネ」
ミセ*%ー゚)リ「わー、言ってる事が真逆だー」
- 12 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:28:18.25 ID:/KRYswfvO
- ( ´ー`)「俺らは村に入れないからヨ、しゃーネーヨ」
ミセ*%ー゚)リ「むむう、不本意ながらみんなお任せしちゃってるでゴザル」
( ノAヽ)「あがめろあがめろでゴザルなノーネ」
ミセ*%ー゚)リ「へへーっ」
( ´ー`)「へへーっ」
( [)「ゴェェーッ」
ミセ*%ー゚)リ「で、どうだった? コロ助なんか聞けた?」
<ヽ`∀´>「相変わらずおとぎ話みたいなコトしか聞けなかったナリ、違うニダ」
ミセ*%ー゚)リ「むー、やっぱりかー……キテレツはー?」
( ノAヽ)「ノーネノーネ、ノーネも変わらんノーネ」
ミセ*%ー゚)リ「んー……魔女はおとぎ話てーどの扱いナリかねぇ……」
<ヽ`∀´>「ナリねぇ……」
( ノAヽ)「ナリ……」
( ´ー`)「オマエらいつまでソレやってんだヨ」
- 13 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:30:19.05 ID:/KRYswfvO
-
ミセ*%ー゚)リ「んで、道は聞けた?」
( ノAヽ)「このままずいーと進めば良いらしいノーネ」
<ヽ`∀´>「途中に大きな岩があるから、それを避ければひたすらまっすぐニダ」
( [)
( ´ー`)「ずーっとまっすぐ来てる気がするヨ……」
ミセ*%ー゚)リ「森のはしっこにつきそーだね」
( ノAヽ)「森の外はどんなんなノーネ……」
<ヽ`∀´>「森の外があるのかも分からんニダ……」
ミセ*%ー゚)リ「激しく忍……同意……」
( [)
( ´ー`)(コイツらのノリは何なんだヨ……)
- 14 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:32:13.47 ID:/KRYswfvO
-
ミセ*%ー゚)リ「ま、ボケるのもほどほどにして……行きましょっか!」
( ノAヽ)「おー!」
<ヽ`∀´>「おーニダ!」
( [)゙
( ´ー`)「はいはいヨ」
( ノAヽ)「おっさんテンション低いノーネ」
(#´ー`)「食うぞ」
ミセ*%ー゚)リ「ネーヨおっさんなの?」
(#´ー`)「もぐぞ」
<ヽ`∀´>「最年長ニダ?」
(#´ー`)「燃すぞ」
( [)「ゴェェ?」
(#´ー`)「ちょっとビコーズ、ツラ貸せヨ」
([;)
- 16 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:34:09.80 ID:/KRYswfvO
-
わちゃわちゃと賑やかしく、何時もと変わらない空気の中。
てっこらてっこら、森を歩いて歩いて魔女の家をひたすら目指す。
アヒャとの戦いから、もう七日近くが経つ。
ミセリの傷はすっかり癒え、
脇腹の一番深い傷でさえ、ひきつった傷痕を残すだけ。
驚異のスピードで治る怪我。
その代償と言わんばかりに、変色した髪。
茶色かった筈の髪は、すっかり鮮やかな森の色。
自然ではない緑色の髪が、どう言う事か、ミセリには分かっていた。
元の世界に戻った時、普通には生きられないであろう体。
奇妙な髪の色に、傷だらけの体。
右目を失い、腕や背中には尋常ではない傷跡。
一生、好奇の目にさらされて生きるだろう。
それも全部、わかっていた。
- 18 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:36:08.72 ID:/KRYswfvO
-
この姿で、仲間達とずっと一緒に居る道も考えた。
そんな事を、仲間達と話した事もあった。
けれどやっぱり、元の世界に帰りたい。
帰って謝りたいんだと、ミセリは笑う。
みんなに、お母さんに、ごめんなさいをしたいなあ。
変わり果てた姿のミセリは、変わらない笑顔を見せる。
じゃあ帰らなきゃな。
みんながそう頷いて、近いであろう別れを受け入れる。
寂しいけど寂しくないよ。
ノーネの背中に座って、ミセリが明るい笑顔を振り撒く。
そんな姿で、そんな朗らかに笑うのはズルいな。
その笑顔を見せられたら、もう、頷くしかない。
だって、口を大きく開けて、天真爛漫な、輝く様な笑顔なんだから。
この顔をされたら、こっちも笑顔になってしまうんだ。
- 20 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:38:17.10 ID:/KRYswfvO
-
結局みんな笑顔で、てっこらてっこら森を行く。
あと少しだね、もう旅も終わるね。
そんな言葉を飲み込んで、最後になるかも知れない今を楽しむ。
くどい程に、笑顔を撒き散らそう。
最後が近いなら最後まで笑い続ければ良いんだ。
強がりでも良い、笑おう。
もう旅を涙で濡らす事のない様に。
そう、笑顔の旅を続けてずいぶん経った。
人に聞き込み、森に聞き込み魔女を探す。
真っ直ぐ真っ直ぐ歩いて二週間ほど経った今。
ついに、見つけてしまった。
見つけてしまった、小さな家。
- 24 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:40:04.95 ID:/KRYswfvO
-
道を作る様に、左右に割れた木々。
その道の奥に存在する、開けた空間。
禍々しくもおどろおどろしくもない、ごく普通の家が、そこにあった。
煙突の伸びる赤い屋根。
煉瓦と木で作られた小さな家の前には、薪を割ったであろう斧や丸太。
大きな扉の側に置いてあるカゴには、夕飯の材料なのか、キノコや野草。
ごく普通の人が住んでる様な、ごく普通の家。
煙突からうっすらと昇る煙が、家の中に誰か居る事を告げている。
耳をすませても自分達の呼吸と鼓動しか聞こえない。
けれど確かに、すぐそこに、魔女であろう人が住んでいる。
胸に広がるのは、見つけてしまったと言う不思議な虚無感。
このまま旅が終わるであろう、孤独感。
嬉しい筈なのに、どうしようもなく寂しかった。
- 25 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:42:07.32 ID:/KRYswfvO
-
誰も、何も言わない。
木々が作った道を進む事もせず、ただ生活感のある家を見つめている。
ああ、終わるんだ。
そこに本当に魔女が住んでいるか分からない、
魔女に、ミセリを元の世界に戻す力があるか分からない。
けれど感じてしまうのだ。
なぜか、分かってしまうのだ。
旅が終わる。
長くも短かった旅が、傷だらけの旅が、終わる。
どうして
どうしてこんなに、悲しい。
笑うと決めたその顔が、自ずと歪む。
溢れかけた涙が、切ない。
- 27 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:44:03.88 ID:/KRYswfvO
-
分かっていた、それを求めていた。
別れを求める様に旅をしてきた。
それなのに悲しくなるのは、なぜだろう。
あの、何のへんてつもない平凡な家に、楽しかった胸の中が壊される。
行きはよいよい、帰りはこわい。
なんてね、とミセリが小さく泣き笑いの表情を作った。
途中は楽しくても、最後は悲しい、どうしようもなく。
それは今まで何度も味わった。
片目との戦いで、いやと言うほど舌に乗せた。
でも、どんなに味わっても慣れないもんだね。
最後はやっぱり、寂しいんだ。
悲しいんだ。
みんなとの別れが、森からの旅立ちが。
一つ大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
さあ、笑おう。
- 29 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:46:19.09 ID:/KRYswfvO
-
ミセ*%ー゚)リ「……行こう」
( ノAヽ)「……ん!」
<ヽ`∀´>「魔女さんと、ご対面ニダ!」
( [)゙
( ´ー`)「さーて、めいっぱい笑いに行くヨ」
ミセ*%ー^)リ「おうさ!」
足並み揃えて、息も揃えて。
ミセリ達が、いつもの順番で足を踏み出す。
一番前にはミセリとノーネ、その後ろにビコーズを乗せたネーヨとニダー。
いつも通り、何があっても笑い飛ばそう。
最後の旅の悲しさも、別れの寂しさも笑い飛ばそう。
みんな一緒なら、何でも出来る。
もう泣かなくても大丈夫。
笑おうぜ、笑おうぜみんなして。
バカみたいに、バカになろうぜ。
- 32 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:48:08.65 ID:/KRYswfvO
-
一歩一歩がひどく重く、沈むように深い。
辿り着いた旅の終わり、魔女の家。
目の前に存在する木製の扉は、とんでもなく大きく見えた。
質素な金属のドアノブに、そっと手を伸ばす。
終わりの扉を開こうと、ドアノブを握ろうとした手。
その手へかけられたのは
重く重く、腹の底に響くような低い声だった。
『其処で、何をして居る』
各人の耳へと流れ込む低い声音に、肩がびくりと跳ねる。
そして硬直した体に、追い討ちをかける様なずっしりした足音が響いた。
- 34 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:50:08.94 ID:/KRYswfvO
-
誰だ何だと強張った視線を巡らせたミセリ達の視界に、金色が入り込む。
家の影からぬぅっと姿を現したのは
( ΦωΦ)
金色の、獅子。
ゆたかな鬣をふさふさと揺らし、太く鋭利な爪が地に食い込む。
両目の上下に黒い模様を描いた獅子が、ミセリ達をねめつけている。
肌の表面を撫でる様な威圧感が、ぞわぞわと背筋を駆け抜けた。
木々の葉の隙間から差し込む光が、金色の鬣を輝かせる。
ネーヨにひけをとらないその体躯。
大きく、美しく
そして恐ろしい、その容貌。
ざわ、と森が揺れた。
- 36 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:52:06.09 ID:/KRYswfvO
-
ミセ;%−゚)リ「ライ……オン、?」
(;ノAヽ)「ぇ、え? な、んなノーネ……?」
ミセ;%−゚)リ「に……にくしょくじゅう……」
<;ヽ`Д´>「お、大きい、ニダ……」
(;[)
(;´−`)「……」
突然現れた獅子に、ミセリ達が戸惑う。
頭に浮かぶのはお伽噺。
金色の獅子を従える森の魔女。
ああごめんね老いた森の人。
それ、お伽噺じゃなくて事実だったみたい。
戸惑い、獅子の姿を目を見開いて見つめるしか出来ない。
そんなミセリ達に苛立ったのか、獅子がずいとこちらへと歩み寄る。
それと同時にミセリ達は一歩後退り、頬に冷たい汗を流した。
- 39 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:54:15.80 ID:/KRYswfvO
-
( ΦωΦ)「……我輩は問うた、其処で、何をして居るのかと」
ミセ;%−゚)リ「ぇ……あ、そ、その……あの……魔女さん、に……」
( ΦωΦ)「去ね」
ミセ;%−゚)リ「……へ、?」
二の句を告げる前に、獅子が言い放つ。
咄嗟にノーネを抱き上げたミセリが、目を真ん丸にする。
今、このライオンは何を言った?
去ねと、ここから立ち去れと言ったのか?
威圧感を撒き散らし、低い低い声で、ミセリ達を突き放す。
ぐる、と一つ唸って威嚇をする獅子。
ざわざわ揺れる鬣が、ミセリ達を敵と見ようとしている。
- 43 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:56:15.04 ID:/KRYswfvO
-
ミセ;%−゚)リ「……」
( ΦωΦ)「立ち去れ、貴様ら如きに、主人は顔を見せぬ」
ミセ;%−゚)リ「…………」
( ΦωΦ)「我輩に喰われたくなくば、去れ、弱き人の子」
ミセ;%−゚)リ「……やだ」
_,
( ΦωΦ)゙ ピク
ミセ;%−゚)リ「ミセリたちは、魔女さんに会うために、ここまで来たんだ」
_,,
( ΦωΦ)
ミセ;%−゚)リ「なのに会わないで、このまま帰れるわけない
ミセリには、帰るとこがここには無いんだから」
_,,
( ΦωΦ)
ミセ;%−゚)リ「だから、魔女さんに、」
_,,
(#ΦωΦ)「去れ小娘ッ! 貴様なぞに主人は会わぬ、今すぐに去れィッ!!」
ミセ;%−゚)リ「っ!」
- 44 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 18:58:11.92 ID:/KRYswfvO
-
体を低くして、ざわり逆立つ毛並み。
声を大にして怒鳴り付けた獅子に、肌がびりびりと逆撫でられる。
なぜか怒りをあらわにして、本格的に威嚇を始めた獅子。
喉の奥でぐるぐると唸り声を捻り出し、大きな口の端から牙がこぼれる。
ミセリが持つナイフと同じくらいに大きな、その牙。
血を嘗める様に燃える金の目が、ミセリ達を真っ直ぐに見据えていた。
ミセ;%−゚)リ「で、も……ミセリたち、」
(#ΦωΦ)「黙れ小娘ェッ!!
我が主人は誰とも会わぬ、人の子なぞに会いはせぬッ!!」
_,
ミセ;%−゚)リ「だっ、だって!」
(#ΦωΦ)「口答えをするな弱者がァッ!!」
_,,
ミセ#%Д゚)リ「うるっせぇ偉そうなことばっか言いやがってッ!!
ミセリたちだって楽してここまで来たんじゃないのよォッ!!」
(#ΦωΦ)「ッ良かろう、ならば掛かって来るが良いッ!!
我が牙、我が爪、我が忠誠でその身を引き裂いてくれようッ!!」
_,,
ミセ#%Д゚)リ「じょーっとおだコラァッ!
ミセリたちだってねぇ! もう、ただ弱いだけじゃねぇのよ!!」
- 48 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:00:10.01 ID:/KRYswfvO
-
売り言葉に買い言葉とは、まさにこの事。
抱き締めていたノーネを地面に下ろして、ミセリがマントを脱ぎ捨てた。
そして腰から小振りのナイフをするりと引き抜き、
今にも飛び掛かろうと身を低くする獅子と、対峙する。
こいつを退けなきゃ、魔女に会えない。
障害になるなら、その壁を蹴っ飛ばしてでも越えてみせる。
話し合いが出来ないのなら、あとは力業。
叩き伏せて捩じ伏せて、屈服させて魔女に会う。
それだけだ。
ミセリが臨戦態勢に入ったのを見て、ネーヨとニダーもそれに続く。
地面に下ろされたノーネが大急ぎでネーヨの荷物を下ろし、
ビコーズを持って、避難する場所を探した。
目に入ったのは、木々や家に絡まるくすんだ灰緑の蔦。
それに駆け足で寄って、よじよじとよじ登る。
- 51 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:02:15.37 ID:/KRYswfvO
-
(#ΦωΦ)「行くぞ小娘、尾を巻いて逃げなかった事を後悔させてやるわッ!!」
_,,
ミセ#%Д゚)リ「残念だけどミセリには尾っぽないのよ!
あんたこそ尾っぽくるくるにしてお腹向ければいーんじゃない!?」
(#ΦωΦ)「ほざけ小娘ェッ!!」
だん、と獅子が重く地を蹴った。
真っ直ぐにミセリを狙う厚い爪を、左腕を支えに白いナイフで受け止める。
重い獅子の力を正面から受け止めて、力を込めて押し返す。
刃から逃れる様に飛び退いた獅子は、直ぐ様体勢を整えて、再びミセリを狙った。
獅子が地に降り立つ度、地響きの様に地面が揺れる。
その体にかなりの重さがあるのは、音を聞いて姿を見るだけで明らか。
それなのに、この巨体は素晴らしく軽い動作で地を駆ける。
まるで片目の様に俊敏で、相手を翻弄する動き。
それでいて、ネーヨの様な重々しい一撃を繰り出す獅子。
素早く、軽く、それなのに重くて強い。
- 53 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:04:11.21 ID:/KRYswfvO
-
現実に居るライオンとは違う、森のライオン。
人語を解し、鮮やかな金色で、動きは早くて、攻撃は重い。
このラスボスってチートじゃない? とミセリが笑った。
でもラスボスを倒したらさ、かんどーてきなエンディングが待ってんだよ。
イベント戦闘じゃない限り、特別アイテムがいらない限り、勝てる。
勝てるもんだよ、ゲームの中では。
ゲームの中では、ね。
_,,
ミセ#%Д゚)リ「うるぁっ!!」
(#ΦωΦ)「ぬるいッ!!」
_,,
ミセ#%Д゚)リ「こちとらぬるま湯が好きなのよっ!
おとめのやわはだですから……ねっ!!」
(#ΦωΦ)「フンッ! 戯けがッ!!」
- 55 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:06:14.22 ID:/KRYswfvO
-
獅子の爪とミセリのナイフがせめぎあい、
がきんがきん、と金属めいた音が火花と共に溢れる。
ネーヨの上では、弾を装填した猟銃を構えて
ニダーが獅子に狙いを定めて、引き金を引いた。
<ヽ`Д´>「せいっ!」
(#ΦωΦ)「我輩に鉛玉なぞ……効くかァッ!!」
<;ヽ`Д´>「ニダッ!?」
(#ΦωΦ)「小賢しい真似をするなッ! 脆弱なる者めッ!!」
ぱんっと言う軽い発砲音を聞いた獅子が、
その太い腕をぶおんと振るい、打ち出された弾を弾き飛ばす。
その隙にとミセリが背後からナイフを掲げる。
しかし、鞭の様にしなる尾が、その腕を力一杯打ち据えて止めた。
腕をばちんと叩かれ、赤い帯状の跡が残る。
ひりひりとした痛みが右の手首を覆い、ミセリは眉を寄せた。
- 58 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:08:23.51 ID:/KRYswfvO
-
咄嗟の判断と計算。
別の方向を向いていても、こちらの事も忘れず攻撃する。
大きなアクションの見かけ倒しではない、それに見合う余りある力。
腕や頬に爪を引っかけられ、びしゃと血が散った。
手の甲で赤く濡れた頬を拭い、ミセリが呼吸も荒く獅子を見据える。
こいつ、強い。
今まで戦ってきたなかで、段違いに強い。
片目も相当な力を持っていたが、違う。
種類が違う。
これ、やべぇ。
嫌な汗が、背中を伝う。
忌々しいほどの力の差を感じて、ミセリが舌を打った。
ふさふさの毛並みに刃を向けても、皮膚までナイフの切っ先が届かない。
蹴ろうが殴ろうが、その体には何の効果もない。
早い動きに翻弄され、ネーヨもニダーも手が出せない。
どうする、どうする、考えろ。
- 61 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:10:09.08 ID:/KRYswfvO
-
(;ノAヽ)「あわわわわ……や、やばいノーネ……負けそうなノーネ……?」
( [)「ゴェェ……ゴェ?」
(;ノAヽ)「ノネ? …………あ、」
( [)「ゴェ!」
(;ノAヽ)「……ノネ、ノーネたちに出来るコト、やるノーネ……!」
木の上にしがみつくノーネとビコーズが、ミセリ達を見て汗を流す。
どうしようどうしようと困惑するノーネが、
小さく呟いたビコーズの手に持たれたそれに、頷いた。
逃げ回るだけが脳じゃない。
戦う術が無くても、何かは出来る。
獅子に気付かれない様に、こそこそと二人が作業を始めた。
- 63 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:12:15.14 ID:/KRYswfvO
-
力自慢のネーヨには、動きの早い相手は不向きだった。
自分より小さい相手なら、多少は何とかなる。
しかし自分と変わらぬ大きさで、異様な素早さと力を誇る獅子。
それは、攻撃のしようもない相手。
あの強靭な爪と牙は、この厚い皮膚にも受け止めきれない。
攻撃も出来ず、盾にもなれない。
なんて嫌な相手だと、ネーヨが奥歯を噛み締める。
自分の上で銃を構えるニダーも、素早い獅子に狙いがつけられなくなっている。
銃の先をふらふらと泳がせて、合わない照準に困り果てた顔。
視線の先では、ミセリがただ一人で獅子と向かい合っている。
少しずつ引き裂かれる小さな体、汚れた服が赤で塗り潰される。
駄目だ、駄目だ、守れないのは駄目だ。
嫌なんだ、守らせろ、もう傷付けんな、大人げねーぞ。
一つ息を飲み込んでから、ネーヨが大きく息を吸った。
- 66 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:14:10.38 ID:/KRYswfvO
-
揺れたネーヨに、ニダーが気付いて飛び降りる。
そして、視界の邪魔になる帽子を投げ捨てて、叫んだ。
<;ヽ`Д´>「ミセリっ!! どくニダッ!!」
_,,
ミセ#%−゚)リ「っ!!」
ニダーの言葉に、飛び退くミセリ。
よくやったと言わんばかりに、ネーヨが胸に溜めた熱を、一気に吐き出した。
ゴ
ォッ
从 从
,;⌒ミ彡~″シ从
(#´凵M),τ彡 彡ミ
ヾミ~⌒ミ彡从
, 从 ⌒,ミ从
'⌒″ミ从
- 68 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:16:18.66 ID:/KRYswfvO
-
全身全霊、全力の炎が、視界を埋め尽くす。
明るい赤とオレンジに染められた、熱い世界。
飛び退いたミセリの頬までもが、ちりっと焼かれた。
踏み潰す事も、尾を叩き付ける事も出来ないなら、残された武器はただ一つ。
恐竜だけが持つこの特技、穏和な恐竜族に授けられた、唯一の特殊能力。
この炎で全てを焼き尽くす以外、道を作れない。
獅子が、炎に飲み込まれて姿を消した。
金色の鬣も、爪も牙も長い尾も、全てが炎の中。
やったか、とネーヨが吐ききった炎に呼吸を乱しながら笑った。
その瞬間、炎から飛び出した影が
ネーヨの身に、襲いかかった。
- 72 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:18:05.65 ID:/KRYswfvO
-
長い首に深々と突き刺さる、鋭い刃物に似た三日月型。
ごり、と抉り込む様に力を込めてから、ネーヨを解放する。
ずしん。
地面を揺らして崩れ落ちた、緑の巨体。
その体を血に濡れた前足で押さえ込む金色が、鬣を逆立たせていた。
(; 凵@)「か……っは、……ぁ゙」
ミセ;%−゚)リ「……ネー、ヨ……?」
(#ΦωΦ)「賢しい真似を……その様な小手先がァ……我輩に効くかァッ!!」
(; 凵@)「あがっ……ぅ、げぅ……っ」
(#ΦωΦ)「弱い、弱い弱い脆弱であるぞォッ!!
ようもその様な力で我輩と牙を交えようと思うたなッ!!」
(; 凵@)「ぐぇっ……ぇ、ぅ」
- 74 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:20:09.65 ID:/KRYswfvO
- ネーヨの体を踏みつけ、牙を食い込ませる獅子。
長い首から血を流し、踏みつけられる苦しみにネーヨが喘ぐ。
あのネーヨが、力負けした、?
想像も出来なかったその図に、ミセリが表情を無くす。
苦しそうに身悶えるネーヨ。
声高らかに怒鳴り付ける獅子が、苛立ちをあらわにしてネーヨを蹴り飛ばした。
嘘だ。
なんだ、これ。
ネーヨが血を吐く様に、横たわっている。
荒く浅い呼吸を繰り返して、震えている。
なんだよこれ。
なんだよ、なんなんだよ。
頭を殴り付けられた様な衝撃がミセリを襲い
その手を、腰まで持って行かせる。
何かを握ったミセリの左手。
はらりと地面に落ちる、何かに巻き付けていた襟巻き。
頭の芯が、冷たい。
- 78 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:22:05.89 ID:/KRYswfvO
-
ネーヨから離れた獅子が、ぎらりとミセリを睨む。
それに答える様に、ミセリが両手を持ち上げて、構えた。
右手には小振りなナイフ。
左手には、大振りの刃物。
出刃包丁に似たそれはずっしりと重く、不思議と、ミセリの手に馴染む。
両手に握られた刃がぎらぎらと、共鳴する様に輝いている。
血を嘗めさせろと光を反射させる刃に従い、ミセリが地を蹴った。
たん、と軽い音をさせて駆け出したミセリが
顔を歪めて、獅子に向けて牙を剥く。
よくも仲間を傷付けたなと、怒りが外へと溢れ出していた。
_,,
ミセ#%Д゚)リ「お前えぇえええぇええッ!!!!」
何かを考える事は止めた。
こいつだけは、捩じ伏せなければ気が済まない。
- 83 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:24:15.58 ID:/KRYswfvO
-
感情に任せて振りかぶったミセリが、獅子に向けて刃を振り下ろす。
獅子が後ろへ飛び退き、僅かに体毛を切り離された事に顔を歪める。
続けて仕掛けようとするミセリに、後ろ足に力を込めて飛び掛かる。
それを二本の刃でがきりと受け止め、弾いた。
先程よりも激しく、がむしゃらに動くミセリ。
その肌に刺さる様な空気に、ニダーが猟銃を抱いて下がる。
的は大きいが、早い動きで走り回って接近戦をする二人。
銃を構えても目標を捉えきれず、下手に撃てばミセリに当たる。
出来る事が無くてニダーが眉を寄せる間にも、ミセリはどんどん傷を負う。
流しきれなかった爪が、尾が、ミセリの体に叩き付けられる。
何も出来ない自分の無力さに苦虫を噛み潰した様な顔をして
そっと、ニダーがノーネ達の姿を探した。
- 86 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:26:08.29 ID:/KRYswfvO
-
ニダーがふと視線を外したその瞬間、だん! と、大きな音が響く。
慌てミセリ達の方に顔を向けると、そこには、獅子に押し倒されたミセリの姿。
獅子の爪を弾いた時、ミセリの体が傾いた。
その隙を見逃さずに体勢を整えた獅子が、傾くミセリをその巨体で押し倒す。
両腕を前足で押さえ付けられ、体重を掛けられる。
みし、と軋む腕の痛みに、ミセリが息を吐いた。
眼前まで迫った獅子の顔。
軽いミセリの体を押さえ付けるのに苦労はせず、余裕を浮かべた表情を見せる。
そして、ぐわと大きく裂けた口を開いて、牙をあらわにした。
_,,
ミセ;%−゚)リ「っ! 離、せっ……っの野郎ッ!!」
ミセリの頭を一口でもぎ取れる様な、大きな口。
唾液に濡れた牙がぬらりと光り、今にもミセリを噛み砕こうとしていて。
- 90 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:28:16.62 ID:/KRYswfvO
-
自分の目の前で開いた口、突き出された牙に背筋が凍る。
それでも諦めるものかと、押さえられた腕を引き抜こうと身を捩る。
しかし、がっしと押さえ込まれた両腕はぴくりとも動かず、
獅子の牙は鼻先に触れそうな距離にまで近付く。
それを見ていたニダーやノーネが、悲鳴を上げかけて、途中で止まった。
ミセリがふっと息を吐き、自由のきく下半身を持ち上げる。
そして、スカートがばさりと捲れるのを気にする事もなく
顔の側まで持ち上げた両足で、獅子の両肩を押し返す。
ミセリの柔軟な体と、獅子の巨体。
獅子が大きくなければ下半身を持ち上げられなかったし、体が固ければ出来ない。
細い体にのし掛かるのではなく、腕だけを押さえていた事が獅子の敗因か。
突然肩を押さえられて思わず口を閉じた獅子の鼻っ面に、
振りかぶったミセリの広い額が、叩き込まれた。
- 93 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:30:26.23 ID:/KRYswfvO
-
めき、と鼻っ面にめり込んだミセリの頭突き。
腕は押さえられ、細い足には獅子を蹴飛ばす力はない。
ならば僅かにでも言う事をきくこの頭で、頑丈な石頭で迎え撃つしかない。
見事に命中した頭突きに、獅子がきゃんと高い声を上げて身を引いた。
その拍子に解放された腕を支えにミセリが身を起こし、
勢いに任せて、両手の刃を持ち上げ、降り下ろす。
ざしゅ、と獅子の顔に痛みが駆け抜ける。
薄く肉を切る音を聞くと同時に、両目から血が溢れた。
目の上下にある模様にぴったり沿う様に、刻まれた傷。
頭を抱えて唸る獅子。
続けてその身に撃ち込まれるのは、鉛玉。
- 96 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:32:04.65 ID:/KRYswfvO
-
跳ね回らず駆け回らず、その場で動かない獅子は良い的でしかなく。
ネーヨの首に薬を塗っていたニダーが銃を構え、脚を狙って引き金を引いた。
ぱん、と弾ける軽い音。
がっしりとした太股に撃ち込まれた弾丸に、獅子が吼えた。
しかしそんな事を気にする余裕はニダーにも無く、
素早く弾丸を装填し、再び脚を狙って引き金を引く。
三回ほどそれを繰り返した時、ニダーの側で何かが揺れた。
ふっと落ちる影に顔を上げれば、そこには首から血を垂らすネーヨの姿。
のそりと立ち上がったネーヨは身を低くし、痛みに震える獅子に照準を合わせる。
そして、ふらふらと足を引き摺りながら立ち上がった獅子めがけ
真っ直ぐに、突進した。
ずしん、ずしん、と揺れる地面。
獅子がその音に目を見開き、音の元へ視線を向けた時にはもう遅く。
ネーヨの巨体が、獅子の体に重く激しい体当たりを食らわせていた。
- 101 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:34:05.23 ID:/KRYswfvO
-
ネーヨの突進をまともに食らった獅子の体は
ぽんと吹き飛ばされて、家と木の間にずんと倒れ込む。
重々しい音をさせて倒れた獅子は、ネーヨの体重をその身に受け
あまりの衝撃に、息をする事も出来ずに震えていた。
ごうと吼える事も、立ち上がる事すらも出来ない。
ただ弱々しく口を開き、ぜっぜっと息を吐くばかり。
そのだらしなく開いた口に、何かが噛まされた。
(;ΦωΦ)「む、……ぐっ!? あぐ、がっ、もがっ!?」
猿ぐつわの様に噛まされた何かは、緑臭く草の味がした。
一体何事だと血に濡れた目を見開き、辺りを見回す。
すると、そこには
( [)
( ノAヽ)「よ、にくしょくじゅー」
- 103 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:36:18.27 ID:/KRYswfvO
-
獅子の傍らに立つのは、先折れ耳の緑の森の人と
薄い緑をした、小さな小さな森の妖精。
その小さな両手に握られているのは、蔦を編んで作った縄。
たっぷりの長さと強度を誇る縄を作り上げた二人は、
自分達のそばに飛んできた獅子に、今だと猿ぐつわを噛ませた。
猿ぐつわの先端を握り、獅子の側にある木に巻き付け、きつく結ぶ。
力の抜けた獅子を引き摺り、頭を木に押し付けるのに苦労はしなかった。
頭をがっちりと縄で押さえ込まれ、喋る事も出来ない。
ネーヨの突進を食らって牙が数本折れたのか、縄を噛み千切る事も出来なくて。
目を白黒させる獅子の前に、ちょんとノーネとビコーズが立って。
( [)ニキ
( ノ∀ヽ)ニキッ
_,
(;ΦωΦ)!?
笑った。
- 106 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:38:08.40 ID:/KRYswfvO
-
にやりと笑ったノーネとビコーズが、縄を持って飛び跳ねる。
そして、それはもう楽しそうに、縄を獅子と木にぐるぐると巻き付け始めた。
( ノ∀ヽ)「おらおらおらぁー!!
ノーネ達がナニも出来ないと思ったらオオマチガイなノーネ!!」
( [)「ゴェェェ!!」
_,
(;ΦωΦ)「むがっ、むぐががががっ!!?」
( ノ∀ヽ)「うっひゃほーい! こいつユダンしてやがったノーネー!!」
( [)「ゴェゴェゴェェェ!!」
_,
(;ΦωΦ)「むががーっ! もがむぐががっ!!」
( ノAヽ)「あとこれネーヨのぶん」
パーン
( ノAヽ)
⊂彡☆))ω )そ
- 109 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:40:10.53 ID:/KRYswfvO
-
( ノAヽ)
( [)
(ノAヽ )σ
( [)゙
パパパパパーン
☆))ω )
宦))ω )
( [)彡☆))ω )
⊂彡☆))ω )
☆))ω )
パーン
パーン パーン
( [)
( [)U☆ミ([ )
⊂彡☆));ω((☆ミ⊃
屆c☆☆ミ
( ) パーン ( )
パーン パーン
( [)スッキリ
- 112 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:42:11.52 ID:/KRYswfvO
-
( [)
( ノ∀ヽ)「うらっしゃあ! ライオンのヒョーホンいっちょあがりなノーネ!!」
_,,
ミセ;%д゚)リ「お……おぉう……」
(;´ー`)「……すげーヨ、オマエら……」
<;ヽ`∀´>「らいおんビンタ……」
_,
(;ΦωΦ)「もがーっ!! もごがががっ! むがぐがががーっ!!」
( ノ∀ヽ)「やーいハリツケ! ナニ言ってるかわからんノーネ!」
<;ヽ`∀´>「……ノーネ、輝きまくりニダ」
( ノ∀ヽ)「ぬっへっほーぅ! ガイアがノーネにかがやけ言ってるノーネ!!」
(;´ー`)「ヒトをバカにしておちょくる事に関しては勝てネーヨ……っと」
ミセ;%ー゚)リ「よ、よっしゃあ! ライオン捕獲ーッ!!」
最後の仕上げに、とネーヨがロープを力一杯締め上げて。
見事に、獅子の間抜けな姿を完成させた。
- 116 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:44:08.51 ID:/KRYswfvO
-
ぐるぐる巻きの身動き出来ない獅子を、ノーネがけらけらと笑って馬鹿にする。
ミセリ達がそれを見て苦笑していると、不意に、背後から音がした。
がちゃり。
扉の開く音。
はっと振り返り、音がした方へミセリ達が顔を向けた。
するとそこには、長いローブを纏った人物が家から出て来たところで。
ローブの裾は引き摺る程に長く、
童話の中のドレスに似た、下半身の後ろが大きく膨らんだシルエット。
つんと尖ったフードを深く被ったその人は、口許だけしか肌が見えない。
けれど形の良い厚めの唇が、
豊かに膨らんだ胸元が、その人物が女である事を物語る。
ローブの隙間から、するりと手袋に包まれた腕が伸び
僅かにフードを持ち上げて、ミセリ達を見詰める。
そして、ふぅっと、優雅に微笑みを浮かべて、口を開いた。
- 118 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:46:06.50 ID:/KRYswfvO
-
『……無様ねロマネスク、カッコ悪いわ』
_,
(;ΦωΦ)「む、が……」
『まあ良いわ子猫ちゃん、お疲れさま』
_,
(; ω )「もがー……」
ミセ;%−゚)リ「……あ、の」
『はいな?』
ミセ;%−゚)リ「…………魔女、さん?」
『はいな』
ミセ*%ー゚)リ「あっ……やっと会えた……っ!」
『あらあら、喜ばれちゃった』
_,
(;ΦωΦ)「もごぐー……」
- 121 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:48:10.15 ID:/KRYswfvO
-
『まあそれより、ロマネスク』
_,
(;ΦωΦ)「むが?」
『おいで、椅子がほしいわ』
_,
(;ΦωΦ)
『……』
_,,
(;ΦωΦ)
『いや、来いよ』
_,,て
(; ω )そ
_,
ミセ;%Д゚)リ(無茶ゆった……!!)
- 124 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:50:06.34 ID:/KRYswfvO
- 『間抜け、マヌケスク』
_,
:(; ω ):
『間抜けヘタレ唐変木ウドの大木アンポンタンにゃんこ』
_,,
:(; ω ):
『おたんこなすヘタレ間抜けヘタレ間抜けヘタレ肉球肉球肉球ごはん食べたい』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「その辺で! その辺でやめてあげて!? 最後のはなに!?」
『あなたはパン派? ごはん派?』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「は、はい!? パンよりごはん派!!」
『よろしい、こんな元気な女の子に会うのは久々だわ。で、なあに?』
_,,
ミセ;%Д゚)リ
『おむすびにしちゃうわよ』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「!? ……あ、あのぅ……魔女さんは、ミセリを元の世界に……」
『戻せるわ』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「はえぇ!!」
- 129 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:52:04.93 ID:/KRYswfvO
-
『ご用件は、それだけかしら?』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「ぇ、あ、は、はひ……ところで、女の子って……?」
『あなたも知ってる白い女の子よ。で?』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「…………え? ……あ、レモナ?」
『そうレモナ。
私、お腹空いたの。だからロマネスクにご飯にしてもらいたいのだけれど』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「あ、そ、そうなんだ……ご、ごはん作れるんだね……」
『そりゃあもう、食べてく?』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「あ、はい喜んで……じゃなくってね!?」
『ノリツッコミ、64点』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「きびしっ!!」
(;ノAヽ)(ミセリがツッコミに徹してるノーネ……)
<;ヽ`∀´>(珍しい図ニダ……)
- 131 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:54:07.08 ID:/KRYswfvO
-
『……あなたに、その資格があるかしら?』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「え……」
『私があなたを元の世界に戻す、理由は?』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「ぁ……ぅ、その……」
『値踏み、させてもらうわ』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「……」
『……』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「…………」
『よく見えん』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「フード外せよ! ローブ脱げよ!!」
『やだエッチ』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「ほわっつ!?」
(;´凵M)(ミセリもボケ時とツッコミ時の差が激しいヨ……)
- 133 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:56:05.51 ID:/KRYswfvO
-
『まあ、ボケの祭典はこれくらいにしましょうか』
_,,
ミセ;%Д゚)リ(分かっててやってたのか……つか、ホントにこの人、レモナと旅した人……?)
『試させてね、あなた達を
あなた達が、私が力を貸すだけのヒトなのかを』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「…………うん」
『キモの座った子、嫌いじゃないわ
さ、始めましょ……向かい風の中、前を向いて目を開けた子の勝ちよ』
かつん。
ヒールを履いているのか、魔女が踵を鳴らした。
土の地面にも響く、不思議な音。
奇妙を具現化した様な、露出の少ない魔女の姿。
微笑みをたたえたままの唇が、歌う様に言葉をつむぎ始めた。
- 136 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 19:58:07.55 ID:/KRYswfvO
-
魔女はゆっくりと、高くも低くもない声を吐き出す。
フードの下から僅かに覗く目は、何も見てはいなくて。
『足りない協調性、文句ばかりで何も努力する事はない。
すぐに拗ねて我儘ばかり、誰もあなたを愛さない』
一瞬、魔女が何を言っているのか、理解できなかった。
何の事を言っているのかとミセリが辺りを見回すと、
獅子の前でノーネが俯き、肩を震わせながら拳を握っていた。
『何かに流されてばかり、受け入れられず我を持たず、大人の顔を真似するだけ。
自分は加害者と良い子の仮面が素顔に貼り付く、彼女はあなたを許さない』
今度は、ニダーが俯く。
今にも泣き出しそうな顔をして、猟銃ごと胸を押さえている。
まさか、とミセリは魔女に向き直る。
魔女は変わらず、うっすらと開いた目に何も映さずに
ただ、歌をうたう様に言葉を吐くばかり。
- 141 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:00:07.47 ID:/KRYswfvO
- 『冷めた子供の大きな体、斜に構えては突き放す。
何かを守ると背中に乗せても一歩離れて毒を吐く、あなたは誰も守れない』
ネーヨが、傷を負った長い首を、だらりと垂らした。
そこでやっと、ミセリは理解する。
魔女は、自分達の事を言っている。
『弱い弱いと嘆いては、その手で力を得ようとしない。
誰かに守られ寄り集まらねば生きられない、あなたは何も変えられない』
今度は、ビコーズ。
ノーネの肩にしがみついて、体をぷるぷると震わせている。
次は自分か、とミセリの背中や頬に冷たい汗が流れた。
けれど次に魔女が溢した言葉は、目の前に立つ少女に対する物でなく。
『私は罪人と寂しく笑う、その手についた血は落ちない。
人を殺した仲間を殺したと嘆くだけ、あなたは罪を償えない』
魔女のかつての仲間。
その場には居ない、レモナに対してだった。
- 144 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:02:30.61 ID:/KRYswfvO
-
がっくり項垂れ、聞きたくないと耳を押さえそうなノーネ達。
それを見たミセリが、ぎり、と奥歯を噛み締めて、魔女を睨み付けた。
これ以上、何を言って誰を傷付けるのかと、思わず憤りあらわにした。
目の前に居る自分達ではなく、その矛先をレモナにまで向ける。
その必要がどこにあるんだと噛み付くべく、怒りを吐き出そうと口を開いた。
が、その怒りはすぐに、崩れ落ちる。
『自分は良い子と我を通す、反発しては自分の意思を押し付ける。
それは自分の我儘を押し通す事、誰もあなたに守られたいとは思わない。
ちっぽけな正義、自分だけの正義、誰もそれを正義としない。
あなたはただの子供、それはただの子供の我儘』
ぞく、と背中と胸が、激しく痛む。
魔女が吐き出す言葉は、どれも自覚していた。
けれど改めて叩き付けられた現実は、あまりにも、あまりにも、
- 151 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:04:46.20 ID:/KRYswfvO
- それでも、魔女の言葉は止まない。
ミセリ達が俯き、言葉を無くしても、魔女は決して口を閉ざす事はなく、
ただ涼やかに、ミセリ達の痛々しい過去の姿を見せつける。
不意に、穏やかな微笑を浮かべていた魔女の顔が、歪む。
そして今までよりも強い言葉で、その中に刺を含ませながら吐き捨てる。
『私が一番、その他は下劣な民と見下した。
あなたに付けられた傷は癒えない、あなたが犯した罪は消えない。
あなたは何も変わらない、あなたは何も理解しない。
私はあなたを許さない、あなたの顔など見たくもない』
あ、と、ミセリが耳に流れ込む言葉に、顔を上げた。
『大嫌い、大嫌い、私は今でもあなたを憎んでいる。
憎らしい、腹立たしい、あなたは何故生きているの。
何も変わらない、私もあなたも何も変わらない
大嫌い、大嫌い、大嫌い、この気持ちも変わらない。
あなたは、姉でも何でもない、大嫌いな、双子』
けれど現実は残酷な物。
魔女が、歪んだ笑みを浮かべた。
- 155 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:06:44.35 ID:/KRYswfvO
- 忌々しそうな顔で吐く言葉の矛先は、やはりこの場に居ない。
当たり前だ。
その相手は、海の底なのだから。
今までよりも感情を込めた言葉に、顔を上げたミセリ。
それに気付いたのか、ふと、魔女の表情が和らぐ。
穏やかな顔を取り戻した魔女が、
手袋に包まれた手で、自分の豊かな胸を押さえた。
『醜い。何よりも、誰よりも。
あなたに植え付けられた憎しみが、この地にて溢れ出した。
傷付けて、傷付けて、傷付けて、私は笑った、喜んだ。
ああ忌まわしい、汚ならしい、けれど心が、満たされた』
自分の事を歌っているのか、魔女は俯きがちに口を動かす。
その言葉から見え隠れする感情は、彼女自身に対する怒りや何か。
けれど魔女の表情は穏やかで、言葉とその顔はひどく不釣り合いに見えて。
胸をえぐられた様な痛みに顔を歪めながら、ミセリは真っ直ぐ魔女を見つめる。
この女が何を考えているのか、言葉にしているのに中身が見えない。
その中身を見付けたくて、ミセリは目をそらせずにいる。
- 160 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:08:58.98 ID:/KRYswfvO
-
『どうして許せるの?
あんなに悪逆非道な人を、あんなに憎んでいたのに
どうして簡単に許せるの?』
魔女が笑う。
フードの下から覗かせた顔を、歪めて。
『どうして殺せるの?
あんな気持ちを抱いたまま、あんなに苦しんでいながら
どうしてそれでも殺せるの?』
魔女が楽しそうに、踵を踏み鳴らす。
かつかつと、ローブに隠されたヒールが声を上げた。
『どうして求めるの?
今さら何を求めても、どうにもならない何も変わらない。
なのにどうして求めるの?』
楽しげだった魔女の声が、一気に落ち着く。
不安定に上下していた声のキーが落ち着いて、低く絞り出すように問う。
- 162 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:10:09.15 ID:/KRYswfvO
- そしてやっと、魔女は項垂れるミセリ達を視界に入れた。
口の端をゆっくり持ち上げてローブから二本の腕を伸ばし、ミセリに差し出す。
その手の意味が理解出来ず、ミセリは訝しげな顔で視線を揺らす。
どこを見て、何を見付ければ良いのか分からない。
ミセリには、魔女が分からない。
金色の獅子を従える魔女。
異様なまでの威圧感を放つ女は、何故だか魔が相応しく見える。
それでも、俯いて喋る事すら出来ずに居る仲間達に代わり、
ミセリはまた俯きかけていた顔をぐっと上げて、魔女を睨んだ。
訳の分からない威圧感、手を差し出されただけでなぜか気圧される。
人間とは違う何かを醸し出す魔女。
フードの隙間から紫の髪を垂らした魔女が、頭を傾けて、小さく声を洩らした。
『どこを見ているの?
ちゃんと見ていなきゃ足元をすくわれて、落ちちゃうわ……底無し沼に』
くすくすと笑う魔女の声。
すらりとしたしなやかな声が遠くに聞こえて
世界が、とぷん、と闇に飲み込まれた。
- 168 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:12:10.01 ID:/KRYswfvO
-
四方を闇に包まれた、生暖かくて泥の匂いがする場所に立っていた。
自分の手すら見えない闇の中で、ノーネが力無く辺りを見回す。
誰も居ない。
何も見えない。
ずんと胸にのし掛かる様な、重くてまとわりつく空気。
息苦しくてしょうがない、とノーネはその場に蹲った。
生暖かい孤独が、体の表面をずるずると這い回る。
ここはどこなんだと言う疑問を持つ事すら億劫で、奇妙な吐き気をおぼえた。
暗いところは好きじゃない。
母を亡くした時を思い出して、嫌な気分になる。
レモナの事は許せたが、トラウマとして確かに根付く恐怖。
ああ、体が重い。
- 170 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:14:03.87 ID:/KRYswfvO
-
暗闇にぽつんと、一人で存在するノーネ。
ざわざわと肌を撫でる闇は、嫌な事ばかりを思い出させる。
あの魔女が、魔女が、嫌な事を言うから。
頭に浮かぶのは生まれ故郷、もう存在しないラムダ族の村。
その次に浮かんだのは、モナーが村長を勤める村。
住人に嫌われ、いじめられていたあの場所。
あの村に住む様になっても、ノーネはそこに馴染もうとしなかった。
不馴れな環境、違う耳。
人付き合いは、もともと苦手だった。
それに重なるレモナへの憎しみと、母を失った悲しみ。
でも幼馴染みであるネーノは、新しい環境にすぐ馴染む事が出来た。
人付き合いは上手いし、人当たりも良く優しい。
そんなネーノは、ノーネのコンプレックスでもあった。
- 173 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:16:09.91 ID:/KRYswfvO
-
寂しかったのだろう、幼馴染みが自分の傍から離れて行くみたいで。
同じ境遇の筈なのに、ネーノは打ち解けている。
それなのに自分は、誰とも仲良くなろうとしなかった。
いつしかネーノに対するコンプレックスと嫉妬は肥大して
なぜか、裏切られた様な気分に陥ってしまって。
村の住人から距離を置く内に、向こうも離れて行った。
最初は幼く哀れな子供として見ていたけれど、
心を開かないノーネに、愛想を尽かしたのだろう。
そんなノーネは、唯一だったネーノすら、遠ざけた。
モナーはそんなノーネを気遣っていた。
それでもノーネは一人で居る事を選んでしまった。
他に道なんか無かったから。
なかった、?
ふと、ノーネが膝に埋めていた顔を上げた。
- 177 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:18:12.63 ID:/KRYswfvO
-
無かったのか?
本当に?
あの状況を作り上げたのは誰だ?
紛れもない、自分じゃないか。
ふら、とノーネが立ち上がる。
俯かせた顔は、混乱している様に歪んでいた。
ネーノだけなら良かったのに。
それを言わせたのは、自分だ。
拗ねて、むくれて、自棄になって。
みんなみんな近付くなとはね除けて、一人で泣いたのは自分の責任?
ああ、何をしてるんだ。
拗ねて泣いて逃げ出して、外部のヒトにすがり付いたんだ。
何、してるんだ。
- 182 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:20:03.38 ID:/KRYswfvO
-
一緒に行こ。
寂しくないね。
ふざけんな。
お前─────ッ!!
ぶわ、と沸き上がるのはミセリの顔。
小さな手のひら、血だらけの体。
腹が立つほどに、明るい笑顔。
行こう。
ミセリのもとに、ミセリ達のもとに、戻らなきゃ。
こんなとこでうじうじしてる暇はない。
自分を掬い上げたミセリの手、最後まで離さないようにしなきゃいけないのに。
目元をごしごしと擦り、ノーネが顔を上げて、闇の中を歩き出した。
その耳に、生暖かい風と共に、女の声が舞い込む。
- 186 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:22:05.51 ID:/KRYswfvO
-
『────幼く小さな森の人、貴方は何を得られたかしら?』
( ノAヽ)「……誰かを好きになるコト」
『好きになって何が出来る? それは本当に為になる?』
( ノAヽ)「誰かのためにノーネが出来るコトを探すようになった
それがワルいコトあるノーネ?」
『それは彼女に与えられたもの? 貴方だけでも得られたもの?』
( ノAヽ)「ミセリがいなきゃ旅はなかったノーネ
それと、ミセリだけにもらったモノじゃないノーネ」
『そう……それだけ、かしら?』
( ノAヽ)「……」
『……』
( ノAヽ)「…………素直に、誰かを、許せるようになったノーネ」
- 190 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:24:09.55 ID:/KRYswfvO
-
気が付くと、辺りが闇に囲まれていた。
さっきまで森に、魔女の家の前に居た筈なのに、とニダーが辺りを見回す。
けれど周囲には誰も居らず、それどころか、何の色も見えない。
ただひたすらな黒。
黒よりも濃い闇の色に、背中が冷たくなる。
抱いていた筈の猟銃は無く、脱いだ筈の帽子が頭にある。
これは、いったい?
心細げに眉を寄せたニダーは、足元を見下ろした。
地面は見えない、深い深い穴に、落ち続けている様な錯覚。
本能的に感じ取ったのは、恐怖。
闇の色に、孤独に、奇妙さに
そして、何故だか暖かいと感じてしまう闇に、恐怖を抱いた。
- 193 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:26:07.62 ID:/KRYswfvO
-
小さく、ミセリの名を呼んだ。
無論、返事はない。
ただ小さな声が、虚しく暗闇に溶けるだけ。
どうしようもない心細さ。
続けてノーネを呼び、ネーヨを呼び、ビコーズを呼ぶ。
行き場も受け取り手も存在しない言葉は、揺らめく様にして消えて行く。
言い様のない寂しさが胸に広がり、両手で顔を覆った。
一人は嫌だ。
悲しそうに歪んだ顔。
その口から、ぽつり、と名前がこぼれ落ちた。
「…………のーちゃん……」
誰よりも何よりも大事な友達。
この手からすり抜けていった、彼女の名前。
- 199 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:28:09.86 ID:/KRYswfvO
-
顔色を無くした友達。
沈んで行く友達。
届かない自分の手。
泣き叫んだあの時。
悲しいほどに咲き誇る、白い花。
次々に流れ出す過去の映像が、頭の中でぐるぐる回る。
助けられなかった大好きなひと。
冷たい水の温度が、自分から何もかも奪い去る。
ぐ、と込み上げる涙を、慌て乱暴に拭った。
駄目だ泣いちゃ。
ミセリと、みんなと約束したんだ。
泣かないで、笑って、乗り越える。
約束したんだ、この約束は破っちゃいけないんだ。
約束。
やく、そく。
- 202 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:30:05.37 ID:/KRYswfvO
-
あ。
顔から手を退けて、その手を見つめた。
見えないけれど、そこにあるのは感じる。
指先に、手のひらに、自分の血が通っているのが分かる。
とくん、とくん。
静かに確かに打つ、鼓動。
一つの鼓動を、この手で奪ってしまった。
けれど、一つの鼓動を、この耳で確かに聞いた。
ミセリの心臓。
確かに動いている、懸命に動き続けている、命のあかし。
約束したじゃないか、ミセリと、みんなと。
みんなで乗り越えようぜ、って。
強くなるって、決めたんだ。
帽子の鍔をぐいと持ち上げて、前を向き、足を踏み出す。
少し赤くなった目元を撫でる様に吹く暖かい風が、女の声を耳へと運ぶ。
- 207 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:32:07.24 ID:/KRYswfvO
-
『────罪を抱いた森の人、貴方は何を得られたかしら?』
<ヽ`Д´>「まだ上手くは出来ないニダ……けど、ちゃんと受け入れるコト、ニダ」
『受け入れたからと何が出来る? それは本当に為になる?』
<ヽ`Д´>「ウリは今まで逃げてたニダ、のーちゃんを殺したって
でも逃げるだけじゃいけない、全部受け入れて謝罪しなきゃ駄目ニダ」
『それは彼女に与えられたもの? 貴方だけでも得られたもの?』
<ヽ`Д´>「ミセリに怪我をさせて、みんなに慰められたニダ
慰められたコトでやっと気付けた、ウリだけじゃできなかった」
『そう……それだけ、かしら?』
<ヽ`Д´>「……」
『……』
<ヽ`Д´>「上っ面だけじゃない、本当の謝罪が出来るようになったニダ」
- 213 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:34:18.95 ID:/KRYswfvO
-
ずきずきと、首が痛む。
薬を塗っては貰えたが、さすがにすぐ治るわけではなく
うっすらと血が滲む、牙と爪の痕。
痛みに顔を歪めるだけで、ネーヨは自分を包む闇に、何の反応も見せない。
暗いのは慣れっこだ。
そう言う様に、そっと目蓋を閉ざす。
ゴム質な皮膚をぬるりと撫でる、暗闇独特の温もり。
それは何度も感じてきたもので、今さら何も思わない。
辺りには誰も居ない。
何も見えないし、生温い呼吸の様な風を感じるのみ。
ああ、なんか懐かしいな。
口の端を持ち上げて、いつものように笑った。
- 219 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:36:12.67 ID:/KRYswfvO
-
暗いのには慣れている。
自分が家族の死骸と共に過ごした場所が、生臭い闇だったから。
不意に浮かぶ、家族の姿。
少しずつ死んで行く母の痩せこけた体。
冷たい骨の感触。
腐った肉の味を思い出し、ネーヨを吐き気が襲った。
ぐ、と込み上げる胃液を飲み込んで、深く息を吐く。
大丈夫、もうこれは乗り越えた壁なんだから。
自分を生かす為に死んで行った家族、残された自分に差し出された手。
手は、二つ。
いや、三つか。
最初の二つは、タカラとでぃ。
全部捨てて生きていた自分に運ばれる食事。
それと同時に見えるのは、痩せて行く二人の手。
後悔はしてる、ひどく。
もっと早く、自立すべきだったと。
- 222 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:38:07.94 ID:/KRYswfvO
-
三つめの手は、見慣れないニンゲンの手。
手と言っても実際に差し出されたわけではなく、
手の代わりに、痛ましいほどの現実を込めた怒鳴り声をぶつけられた。
二人から叩き付けられた現実のお陰で、気付けた。
今まで自分を叱る者など居なかったからこそ、あの言葉はよく効いたのだ。
二人のお陰、みんなのお陰で、自分は今ここに居る。
もうどこにも居ない家族の影を追い求めるのではなく、
すぐ傍に居た家族の存在を受け入れる事が出来た。
斜に構えて突っぱねるんじゃない、誰かに守られ続けるんじゃない。
この体で全てを受け入れ、家族を守るのが自分のすべき事。
垂らしていた頭を持ち上げて、ネーヨがのっそり歩き出す。
そろそろ動かなきゃ、また文句言われるな。
そんな事を考えて歩くネーヨの首に、ぬるい風と女の声が絡み付く。
不快だとは思わない、現実ってのはいつだって痛いもんなんだ。
- 227 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:40:14.57 ID:/KRYswfvO
-
『────大きく幼い森の人、貴方は何を得られたかしら?』
( ´ー`)「誰かを守りたいと思えるようになったヨ」
『守りたいと思うだけで何が出来る? それは本当に為になる?』
( ´ー`)「シラネーヨ、俺はまだガキだ
だから今ぜんぶ出来て分かるわけじゃねんだヨ、でもやりたいんだヨ」
『……それは彼女に与えられたもの? 貴方だけでも得られたもの?』
( ´ー`)「あのバカ共に怒鳴られてなきゃ、俺はずっとあのままだったヨ」
『……そう……でも、それだけ、かしら?』
( ´ー`)「……」
『……』
( ´ー`)「仲間に対して、シラネーヨって、突っぱねねぇコトを覚えたヨ」
- 230 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:42:17.08 ID:/KRYswfvO
-
世界は闇に埋め尽くされていた。
けれど自分にとって、闇とは自分が生まれた場所。
だから恐怖は感じない、嫌な気分にもなりはしない。
夜に生まれた森の妖精は、薄い緑色。
朝に生まれた森の妖精は、薄い青。
夜生まれであるビコーズにとって、闇は母の胎内と変わらないのだ。
暖かくて懐かしい母体の中に居る気分になり、ビコーズはそっと目を瞑る。
誰も居なくても、見えなくても、感じる事は出来る。
何も怖くはない。
生まれた時と同じ様に、そっと扉を開けるだけ。
怖くは、ない。
- 232 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:44:04.20 ID:/KRYswfvO
-
目を開こうとしたビコーズの瞼に、仲間の顔が浮かんだ。
ミセリ達ではなく、集落の仲間達。
大きな力に踏み潰されて行く仲間達。
抗う事も何もせず、ただ冷たい死を受け入れていた。
自分達が弱い事を理解していた。
だから、抵抗は無駄だと諦めきって全てを受け入れる。
それはきっと、変化を恐れているからだろう。
長い間、弱い者として苦痛を受け止め続けてきた。
誰かに助けを求めて、自分では何もしない。
狭い狭い自分達の世界で、それが運命だと。
自分もそうだった。
ただ逃げ惑って、抵抗らしい抵抗をしない。
弱い弱い、諦めと言う逃げ道。
長い時を経て作り上げた、舗装された綺麗な道。
その先にあるのは、死と言う闇の口。
- 237 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:46:04.58 ID:/KRYswfvO
-
あの時まで、自分もその道を歩もうとしていたんだ。
小さな仲間達と、親友であるゼアフォーと共に。
けれど、本当は他にも違う道があった。
それが荒れ果てた獣道で、そんな所を歩くのが怖くて嫌で、大きな道を選ぶ。
でもその道を歩む勇気をくれたのは、あの不思議なニンゲン達。
何をしても無駄だと諦めきっていた小さな生き物に差し伸べられた手。
自分達を守る為に、傷付いて傷付いて、泣いて悔しがってくれた人達。
その姿は、とても輝いて見えたんだ。
見た事もない事ばかりで、胸が震えた。
だから僕は、彼らと共に、広い世界を知りたくなった。
僕は変化を求めて、旅立ったんだ。
置き去りにしていた好奇心が、小さな体いっぱいに満ち溢れた。
たくさん見たい、たくさん知りたい。
そして、このちっぽけな手に少しでも力がほしかった。
- 243 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:48:13.68 ID:/KRYswfvO
-
言葉は話せなくても、思いは伝わった。
恐竜の彼が居たからと言う事もあるけれど、通じ合えた。
心の底から楽しい旅。
自分は無力だし、大して役にはたたない。
けれど誰もそれを嫌だとは思わず、笑顔で自分を受け入れてくれた。
ああ、この人達は強いんだ。
そして僕は、とことんまで弱いんだ。
それを知れただけでも、十分だった。
そこから変化を始めれば良いのだから。
頭を左右に振り、心に残るマイナスの気持ちを振り払う。
そして前を向いたビコーズは、小さな足を懸命に動かし、歩いた。
世界を教えてくれた人達との別れは近い。
でも彼らに与えられた勇気と好奇心は、胸でたぎり続ける。
最後まで見つめ続ける、大きな世界。
生温い風と誰かの声がこの身にまとわりついても、その決心は揺らがない。
- 246 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:50:11.33 ID:/KRYswfvO
-
『────小さな小さな森の妖精、貴方は何を得られたかしら?』
( [)(せかいをしること、こうきしん)
『好奇心だけで何が出来る? それは本当に為になる?』
( [)(ぼくらはへんかがこわかった、それはしんかをやめること
でもぼくはせかいをしった、それでぼくのせかいがひろがった)
『それは彼女に与えられたもの? 貴方だけでも得られたもの?』
( [)(みんながこなきゃ、ぼくはなにもかわらなかった
ぼくのへんかはなかまのあかし、なかまがいたからせかいをしれた)
『……そう……でも、それだけ、かしら?』
( [)(……)
『……』
( [)(ひとのつよさ、ぼくらのよわさ
でも、ぼくらだってつよくいきられることをしった)
- 250 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:52:13.73 ID:/KRYswfvO
-
視界の真ん中にあった筈の腕が、見えなくなっていた。
沼に沈む様にして訪れた闇に気付いたのは、ミセリがふと我に返った時。
のろい動きで辺りに視線をやり、何も見えない事に首を傾げた。
右目をそっと撫でれば、指先にはなめした革の感触。
左目に手をやると、持ち上がった瞼と睫毛が指先に触れた。
目は開けている。
けれどその目に触れた手が、見えない。
なぜ何も見えないのかが、分からなかった。
もしかして左目も視力を失ったのではないかと思い、瞬きをする。
けれど世界は何の変化もみせない、ただ暗闇。
頬に触れれば、手にも頬にも暖かさを感じた。
自分は存在している事だけは、理解できる。
なのに視力はその機能を発揮しない。
色をとらえようとしない。
- 253 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:54:06.93 ID:/KRYswfvO
-
ブラウス越しに、生暖かい風が背中をぬるりと撫でた。
短めの髪を揺らし、ぼろぼろのスカートを揺らす風。
自分の呼吸音しか聞こえない闇を、ミセリがふらふらと歩く。
体の痛みも疲れも感じない。
気味が悪いまでに暖かなそこは、本当に沼の様な感触で。
全身をぬるい泥に浸しているみたいで、ミセリは奇妙な不安感を抱く。
ノーネはどこ、ニダーはどこ、ネーヨは、ビコーズは、魔女と獅子はどこ。
何かに触れようと手を動かすが、その手のひらを泥臭い風が撫でるだけ。
森の匂いがしない。
緑の匂いも血の匂いも、鼻孔をくすぐる事はない。
ここはどこなんだと、ミセリの足が止まった。
何をどう見れば良いのかも分からなくて、何も映さない眼球が揺れ動く。
何だか心細くて、ふと顔を俯かせる。
暖かい、暖かいのに、何だか冷たい。
誰かに触れたいと言う気持ちが、体温が恋しくなったミセリを覆い込む。
- 255 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:56:07.71 ID:/KRYswfvO
-
誰か、誰かいないの。
誰でも良い、温もりがほしい。
小さな手が握りこぶしを作り、微かに震えた。
誰か。
浮かぶ顔は、今まで知り合ってきた記憶に残る顔ばかり。
それは森で出会った者だけではなく、元の世界の住人の顔も含まれる。
いじめられてたところを、ミセリが割って入った時のショボンの顔。
そんなショボンをいじめていた、自分に標的を変えたジョルジュの顔。
ミセリを遠巻きから見て、くすくすと嘲り笑ったクラスメイト達。
泣きながら帰って来たミセリを叱り飛ばした、母の顔。
どれもこれも元の世界で見た顔、起きた出来事。
遠くを見る様に光をなくしたミセリの目が、ぼんやり揺れる。
- 260 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 20:58:09.71 ID:/KRYswfvO
-
闇が、続けざまにミセリへと過去の出来事と顔を思い返させる。
良くはない思い出、本当は投げ捨てたい過去ばかり。
ノーネが居た村で投げられた石の痛み、恐怖を傍らに置いた森の人達。
初めて出会った赤い森の人の笑顔と悲鳴、それに背を向けて逃げ出した弱さ。
声もあげずに泣いた森の人に、何も言えなかったあの時。
考え無しに怒鳴り付けた無知さ、叩き付けられたニンゲンと言うモノの過去と現実。
守れずに殺した多くの妖精、痛みと悔しさに泣き叫んだ記憶。
悲しみに満ちた仲間とその義母、気のきいた言葉をかける事も出来なかった悔しさ。
海で出会った人魚を理解出来ず、それなのに陥ったホームシック。
右目を奪った異世界の機械、その悲しみを取り除けず傷を覆わせた心臓。
赤い森の人との戦いと繋がり、不思議な関係、不思議な感情。
- 266 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:00:08.80 ID:/KRYswfvO
-
次々に溢れ出すのは悔しさ、痛み、悲しみ、涙、嫌な物ばかり。
それらは全て、自分が肌で感じてきた過去。
悲しいまでに流した血と涙が、この身に刻み付けた弱さの証が
どうしようもなく、闇に飲まれたミセリを追いやり、追い詰めるのだ。
ごめんなさい。
弱くて、ごめんなさい。
わたしは強くなんかない、弱いのに強いふりをしてるバカでしかない。
だって、だってわたしは、ミセリはまだ
─────まだ?
まだ、何だと言うの?
まさか、いまだにわたしは子供だと泣けば済むと思ってるの?
ふざけんな
そうじゃない、そうじゃないだろうが。
- 271 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:02:05.73 ID:/KRYswfvO
-
へっ、とミセリが馬鹿にした様に笑った。
ゆるりと顔を上げて、前髪を持ち上げるカチューシャを外す。
カチューシャを外したら、ノーネ達に馬鹿にされたなあ。
そんな事を思いながら乱れた髪を適当に整えて、
再びカチューシャで、前髪を持ち上げた。
広いめの額に、緑色の髪。
傷が残る頬、不釣り合いなまでに黒い眼帯。
そして、にっと明るく笑った。
これがわたし、これがミセリ。
よわっちくてバカで、もはや笑うしか能のないガキ。
それが、自分だ。
うじうじ悩むなんて、バカらしくない。
そう言ったじゃないか、みんな引っくるめて無理をしてでも笑い飛ばすんだ。
だってミセリ、バカだし。
- 278 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:04:07.40 ID:/KRYswfvO
-
どうしようもないガキで、どうしようもなく頭が悪い。
だからまだまだこれから成長するんだよ。
このぺったんこの胸も、ネジがいくつか抜けた頭も。
人の為だと押し付けていた自分の為を、もう繰り返さない様に。
ミセ*%ー゚)リ「……もっと強くなるんだ、子供だからは逃げ道にしちゃ駄目なんだ」
晴れ晴れとした笑顔が戻り、ミセリは何も見えない世界を再び歩き始める。
立ち止まってちゃ、余計に抜け出せなくなる。
無茶だと分かってても、もがいてもがいて足掻き続けるんだ。
それでこそバカ、ミセリの本領発揮だぜ。
すっきりした顔で、闇を練り歩くミセリ。
変わらずその髪を、スカートを揺らすのは生暖かい風。
さっきと少しだけ違ったのは、その風に女の声が含まれている事だけだった。
- 284 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:06:05.87 ID:/KRYswfvO
-
何度も何度もぐるぐると回り続けた自問自答。
結論は出ていた筈なのに、それをうまく受け入れられなくて繰り返した。
同じ気持ち、同じ言葉、まわりまわって辿り着いたのはやっぱり笑顔。
そんな顔を撫でる風が、問い掛ける。
『────外からやって来た無知の子供、貴方は何を得られたかしら?』
ミセ*%ー゚)リ「自分がどれだけバカか、自覚出来たよ」
『自覚したからと何が出来る? それは本当に為になる?』
ミセ*%ー゚)リ「無自覚のバカと自覚のあるバカ
扱いにくさは一緒だけど、自覚があるなら抜け出せんじゃない?」
『それは誰に与えられたもの? 貴方だけでも得られたもの?』
ミセ*%ー゚)リ「みんな。みんなが居たから、ミセリは笑える」
『そう…………』
- 292 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:08:07.03 ID:/KRYswfvO
-
きっぱりと答えるミセリの言葉に、風が止んだ。
静かになった世界に、ミセリが あれ、これだけ? と首を傾げる。
しかし風が止んだのはほんの一瞬で、
すぐに、生温くて生臭い風が勢いを増して吹き始めた。
『あなたは今どこに居る? あなたは本当に森に居る?
あなたの側には誰が居る? あなたの側には誰か居る?
あなたに出来る事がある? あなたに何が出来ると言うの?』
ミセ;%ー゚)リ「お、おぉっ!?」
『あなたなんて要らないわ、誰もあなたを求めない
あなたは要らない、要らない子』
ミセ;%ー゚)リ「な、何よいきなり……びっくりしたぁ……」
『答えて、答えて、答えなさい、私に応えなさい、さあ、さあ』
ミセ;%ー゚)リ「わかってるよ……えと、ミセリが求められてる、か?」
『そう、そうよ、あなたは要る子? 要らない子?』
- 296 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:10:08.06 ID:/KRYswfvO
-
ミセ;%ー゚)リ「せっかちだなー……えと、求められたよ、ミセリは
これだけは胸をはって言える、要る子」
『嘘ばかり、嘘ばかり、あなたは要らない子、みんなあなたを疎ましく思う』
ミセ;%ー゚)リ「しっけーな……これじゃ嘘つきはそっちでしょ?
ミセリは求めて求められた、みんなに」
『それは、だあれ?』
ミセ*%ー゚)リ「ノーネもニダーも、ビコーズもネーヨも……片目も
みんな、やくたたずのミセリを求めてくれてた」
『それは確か? 本当の本当?』
ミセ*%ー゚)リ「本当だよ、嘘つきな魔女さん。
そうじゃなきゃ、ミセリはここに居ないもん」
『……なぜ、分かるの?』
ミセ*%ー゚)リ「わからいでか。みんなとの付き合い、けっこー長いんだよね」
- 304 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:12:17.05 ID:/KRYswfvO
- 『…………あなたは、友達が目の前で虐げられていたら、どうする?』
ミセ*%ー゚)リ「助ける。ミセリはバカだから、同じ事をもっかいするよ」
『それが求められた事でなくても?』
ミセ*%ー゚)リ「それでもミセリは、自分に嘘はつかない。
て言うかつけない。もう守れないのは、助けられないのはいやだし」
『その結果、あなたがいじめられたとしても?』
ミセ*%ー゚)リ「もちろん」
きっぱりさっぱり、切り捨てる様な即答。
女の声はその反応を予想していなかったのか、少し、困った様に黙り込む。
そして少しの間をあけてから、再び女が言葉を洩らした。
『もう一度問うわ…………あなたは、求められてる?』
ミセ*%ー゚)リ「求められてる」
『ホント、に?』
ミセ*%ー゚)リ「ホントに」
『そう……羨ましい、わ』
- 307 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:14:17.03 ID:/KRYswfvO
-
不意に、世界に色が戻る。
トンネルを抜けた様に、ざあっと視界が機能する。
目を真ん丸にして、ミセリ達が周囲を見回してから、顔を見合わせた。
ミセ*%ー゚)リ「……戻ってきた」
( ノAヽ)「ノネ」
<ヽ`∀´>「みんなも、ニダ?」
( [)
( ´ー`)「おうヨ」
風の冷たさ、緑の匂い。
側に感じる誰かの体温と、色鮮やかに映る世界。
ああ戻ってきたんだと、ミセリ達が安堵の息を吐いた。
そして、木に縛り付けていた獅子が居ない事に、気付く。
- 311 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:16:03.55 ID:/KRYswfvO
-
あれ、と頭を揺らして金色の獅子を探すと
その姿は、意外にもすぐそば、目の前に存在していた。
『……お帰りなさい、底無し沼から』
( ΦωΦ)「……」
ミセ*%ー゚)リ「あ……」
魔女の家の前。
解放された獅子が、その背に魔女を座らせて寝そべっていた。
魔女の気分が、何だか少し沈んでいる様に見える。
弱々しい語尾、ミセリ達の帰還に微笑むが、その言葉に覇気がない。
獅子の鬣を、細い女の手が撫でる。
ふさふさの毛並みを擽る指先。
こそばゆいのか、獅子は顔を伏せる。
そんな獅子の後頭部を見つめたまま、魔女がゆらりと口を開いた。
- 314 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:18:27.47 ID:/KRYswfvO
- 『……長かったわ、森で生きて幾百、幾千年、やっと、人間に出会えた』
ミセ*%−゚)リ「……え、」
『この子と、ロマネスクと二人で生きてきた……
人の形を保った人間なんて、初めて見たわ……』
ミセ*%−゚)リ「へ……ぁ、あの……どう、?」
『……森に迷い込むのは、幼く弱い人間と無機物だけ。
他にも森に食われた人間は、もっと居る筈よ』
ミセ*%−゚)リ「ぇ、あ……そ、なの? その人たちは、戻れたの?」
『いいえ、死んでしまうのよ
普通は、幼子一人でこの森を生きられる訳がないんだもの』
ミセ;%−゚)リ「え? ぇ、え? な、ぇ?」
『……私にはロマネスクが居た……そして村を見つけ
森の人と行動を共にする事が出来た。だからこう、だらだらと生きている』
ミセ;%−゚)リ「…………」
『あなたは森に入ってすぐ森の人と出会い、村を見つけ、
生きる術を知り、仲間を見つけた』
ミセ;%−゚)リ「……う、ん」
- 320 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:20:15.05 ID:/KRYswfvO
-
深くうつむく魔女が、顔を上げる事もなく淡々と話し続ける。
まるで全てを見ていたかの様な魔女の言葉に、ミセリが戸惑う。
魔女の口から告げられる、森と人間の話。
迷い込んだ人間の、その末路。
それは、多少は想像していたものの、実際に聞かされればどこか信じがたい物で。
『それに……もし森で生きられたとしても、
森の毒牙にかかれば、人間の姿をなくしてしまう』
ミセ;%−゚)リ「姿を、なくす……? クーさん、みたい……に?」
『そう……あなたが出会ったあの女の様に。そして、私の様に』
ミセ;%−゚)リ「へ、」
す、と魔女が獅子から降りて、立ち上がる。
そして手袋を着けた手で、ローブを止めていたリボンをほどき
地面へと、ぱさり、薄い素材のローブが落ちた。
- 326 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:22:22.69 ID:/KRYswfvO
-
lw´‐ _‐ノv
ローブの下から現れたその姿に、ミセリ達は息を飲んだ。
微風に、魔女の髪が揺らされる。
紫色の長い髪が、その身に絡み付く。
その体は、異形と言うに相応しい姿。
魔女は、蜘蛛の姿をしていた。
美しい女性の上半身が、巨大な蜘蛛の胸部から生えている。
腕は四本、脚も、四本。
頭の左右から、髪の間から生えるのは、大きく鋭い、尖った角。
整った顔立ちだけれど、本来あるべき場所以外にも二つ、目がある。
長い手袋を纏う四本の腕。
踵の高い靴を履いた四つの足。
黒と濃紫の横縞模様をした、蜘蛛の腹部。
目を疑う様なその姿は、なぜだか、ひどく美しく感じた。
- 332 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:24:15.60 ID:/KRYswfvO
-
やっと見る事が出来た、魔女の素顔。
細い目に整った顔立ち、綺麗な女の人だった。
前髪に隠れて普段は見えない、四つの目以外は。
ミセ;%−゚)リ「魔女……さん……」
lw´‐ _‐ノv「……おぞましいでしょう
あの女は魚に、私は女郎蜘蛛と成り果てた」
ミセ;%−゚)リ「や……あ、の……魔女さん、て……いったい、何、なの……?」
lw´‐ _‐ノv「魔女よ、長く生きすぎた元人間」
ミセ;%−゚)リ「ぇ、あ、う、その……」
lw´‐ _‐ノv「……シュール、あなたが会ったクールの、双子の妹」
ミセ;%−゚)リ「あ……やっぱ、り……」
lw´‐ _‐ノv「あら、分かっていたの?」
- 337 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:26:12.19 ID:/KRYswfvO
- ミセ;%−゚)リ「なんか、そんな気が……した」
lw´‐ _‐ノv「そう、あなたって何だか素敵ね」
ミセ;%−゚)リ「え? あ、ど、どうも……」
lw´‐ _‐ノv「バカで」
_,
ミセ;%−゚)リ「自覚してるけどしっけーだ」
lw´‐ _‐ノv「あらごめんなさいな、褒め言葉よ?」
_,
ミセ;%−゚)リ「……マジで?」
lw´‐ _‐ノv「マジで」
_,
ミセ;%−゚)リ「ぱねぇ」
lw´‐ _‐ノv「つか、この体に対する感想は?」
_,
ミセ;%−゚)リ「ぱねぇ」
lw´‐ _‐ノv「三行で」
_,
ミセ;%−゚)リ「ぱ
ね
ぇ」
lw´‐ _‐ノv「良い度胸だ」
- 346 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:28:29.58 ID:/KRYswfvO
-
(;ノAヽ)「……ミセリー」
_,
ミセ;%−゚)リ「ん、んん?」
(;ノAヽ)「ノーネたちおいてけぼりなノーネ、手短にすませろなノーネ」
_,
ミセ;%−゚)リ「おう、ごみん」
(;ノAヽ)「あー久々にしゃべったノーネ……」
_,
ミセ;%−゚)リ「……そんなわけで魔女さん、説明よろです」
lw´‐ _‐ノv「よし来た」
lw´‐ _‐ノv
lw´‐ _‐ノv「どこまで話したっけ?」
_,
ミセ;%−゚)リ「そこボケるとこじゃない」
lw´‐ _‐ノv「分かったわよ、もう」
_,
ミセ;%−゚)リ(なんなんだこのひとわ)
- 349 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:30:18.43 ID:/KRYswfvO
-
lw´‐ _‐ノv「で……えー……あぁ、普通の人間は体の変化に気付くと絶望し、
自らその命を絶ってしまうのが、殆ど」
ミセ;%−゚)リ「う、うん……」
lw´‐ _‐ノv「けれど私にはロマネスクが居た、
あの女には彼らが居た……だから、生きていられた」
ミセ;%−゚)リ「……」
lw´‐ _‐ノv「あなたは、ホントに珍しい。
肉体能力や精神面、髪の色は変われども、あなたの姿は人間」
ミセ;%−゚)リ「あ、え、ご、ごめん……なさ、い?」
lw´‐ _‐ノv「何で謝るのよ、バカね……安心なさいな、別に羨ましいとは思わないわ
私は森に、少し感謝をしているから」
ミセ;%−゚)リ「感謝?」
lw´‐ _‐ノv「ロマネスクと、
ただ一人の愛しい者と、会話が出来る様になったのだから」
ミセ;%−゚)リ「あ……そういやライオン、も?」
lw´‐ _‐ノv「ええ、ロマネスクも私と同じ様に、私と一緒に森に食われた。
だから長すぎるほどの時を生き、言葉を交わせる様になったわ。何故か」
- 354 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:32:15.60 ID:/KRYswfvO
-
ミセ;%−゚)リ「……ねぇ、何で、森に居ると……その、変わっちゃう、の?」
lw´‐ _‐ノv「森は、歪んだ住人を増やしたがる。
異形を育て、いやな目で愛でるのよ……まあ、性格悪いんじゃない?」
ミセ;%−゚)リ「うわ最後がてきとー…………あれ、ちょい待って」
lw´‐ _‐ノv「はいな?」
ミセ;%−゚)リ「じゃ、じゃあ森の人って……もともとは、人間?」
lw´‐ _‐ノv「それはないわー」
ミセ;%−゚)リ「もうちょっと何かあるべきでしょそこ」
lw´‐ _‐ノv「空気読めない子に突っ込まれたわロマネスク、どうしましょ」
_,
( +ω+)「もごがー」
_,
ミセ;%−゚)リ「猿ぐつわ取ってやって!?」
lw´‐ _‐ノv「まあそれはさておき」
_,,
ミセ;%Д゚)リ「自由すぎやしませんか!?」
- 358 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:34:08.64 ID:/KRYswfvO
-
( ノAヽ)「……」
<ヽ`∀´>「なかなか話が進まないニダ……」
( ´ー`)「腹減ったヨー……」
( ノAヽ)「あの魔女、自分からハナシのコシをべっきぼきなノーネ……」
( [)「ゴェェ……」
( ´ー`)「暇だヨー……」
( ノAヽ)「黙ってろなノーネこのケガニン」
( ´ー`)「まだかヨー……やだヨー……」
<ヽ`∀´>「……ネーヨ、薬のんだニダ?」
( ´ー`)「おうヨー……首が痛かったんだヨー……」
(;ノAヽ)「ぅゎぁ」
( [)「ゴェァ」
- 364 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:36:04.48 ID:/KRYswfvO
-
lw´‐ _‐ノv「はい仕切り直し」
_,
ミセ;%−゚)リ(仕切り直しがいるよーな状況にしたのは誰だ)
lw´‐ _‐ノv「えーと……あ、そうそう。
いいえ、森の人々は元からその姿を持つ。
だから、その仲間を増やそうと、森は人間の姿を壊すのよ」
ミセ;%−゚)リ「じゃあ……その、森に迷い込んだ人間、は」
lw´‐ _‐ノv「その内のほとんどが命を絶ち、残った者は、この様」
ミセ;%−゚)リ「ぅ、あぅ……シュールさん、は……その、あの……」
lw´‐ _‐ノv「この姿も、今となってはそんなに悪くないものよ」
ミセ;%−゚)リ「へぁ……?」
lw´‐ _‐ノv「もう、人間で居るのにも飽きてきてたから」
ミセ;%−゚)リ「あ、飽き……シュールさん……」
lw´‐ _‐ノv「まあ、森に良いように動かされていると思うわ、この姿を受け入れて
けれど私は、幸せよ、ロマネスクが居るんだもの」
- 368 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:38:09.18 ID:/KRYswfvO
-
ミセ;%−゚)リ「……ライオン、大好きなんだね」
lw´‐ _‐ノv「そりゃあもう、椅子にもなるしご飯も作れるし」
ミセ;%−゚)リ「わーなんか間違ってるーう」
lw´‐ _‐ノv「はい次の話題に移りましょうか、あなたのお仲間ぐにゃぐにゃよ」
_,,
ミセ;%−゚)リ「……シリアス、貫けません?」
lw´‐ _‐ノv「貫けません」
_,,
ミセ;%−゚)リ「努力、しません?」
lw´‐ _‐ノv「努力しません」
_,,
ミセ;%−゚)リ(なんかもう駄目だこりゃ)
lw´‐ _‐ノv「…………だから、こんな体になったのよね、私は」
ミセ;%−゚)リ「へひ?」
- 373 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:40:05.10 ID:/KRYswfvO
-
lw´‐ _‐ノv「……森は、成長しない魂を食う。だから私達は、食われた」
ミセ;%−゚)リ「シュールさん、と……クーさん……?」
lw´‐ _‐ノv「ええ、そうよ。でもあなたの場合は、少し違うみたいね」
ミセ;%−゚)リ「違う、? ミセリは、成長してるってこと?」
lw´‐ _‐ノv「そりゃ成長してるでしょ、自覚あるんじゃない?」
ミセ;%−゚)リ「ま、まあ……多少、は……」
lw´‐ _‐ノv「おっぱいぺったんこだけどね」
_,,
ミセ#%Д゚)リ「怒らせたいのかなごませたいのか突っ込ませたいのかどれだァ!!」
lw´‐ _‐ノv「答え:ごはんがたべたい」
_,,
ミセ#%Д゚)リ「ワケわからんッ! そろそろいーかげんにせんかーいッ!!」
lw´‐ _‐ノv「ぅゎ ょぅι゙ょ っょぃ」
_,,
ミセ#%Д゚)リ「そのおっぱいねじって取るぞッ!!?」
lw´‐ _‐ノv「ごめんって、ごめ、ちょ、顔が怖い」
- 377 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:42:31.36 ID:/KRYswfvO
- _,,
ミセ#%Д゚)リ「じっ……自分がでっかいからってェッ!!」
lw´‐ _‐ノv「うふふ、セクハラ? 負け惜しみ?」
_,,
ミセ#%Д゚)リ「ミセリは成長期なの! 9歳なんです! これからなんですぅ!!」
lw´‐ _‐ノv「分かったからもう……話の腰を折らないでちょうだいな?」
_,,
ミセ#%Д )リ
lw´‐ _‐ノv「本当ごめん、真面目に話します」
ブブ
ン ン
(;ノAヽ)彡
⊂彡
lw´‐ _‐ノv
lw´‐ _‐ノv「ああ、まいてまいてって意味ね……何かが乗り移ったのかと……」
lw´#)_‐ノv「分かったから、もう腰折らないから」
- 383 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:44:10.75 ID:/KRYswfvO
- lw´‐ _‐ノv「あなたは、私達とは根本的に違う……前向きに、森に生きられた」
ミセ;%−゚)リ「……うん、元の世界に戻る、ために……頑張った、の、かな?」
lw´‐ _‐ノv「頑張ったんでしょうね、森に嫌われるくらい、前向きに」
ミセ;%−゚)リ「でも、やっぱりミセリも……こうなった」
lw´‐ _‐ノv「そうね……それは、何故だか分かるかしら?」
ミセ;%−゚)リ「……森が、ミセリを……認めた?」
lw´‐ _‐ノv「惜しいわ。正解は、あなたが傷だらけになったから」
ミセ;%−゚)リ「傷? ……腕とか、目?」
lw´‐ _‐ノv「ええ、その身に残る全ての傷痕」
ミセ;%−゚)リ「な、なんで?」
lw´‐ _‐ノv「だって常識的に考えなさいな? 腕を切り落とされ、右目を失い、
全身ずたぼろボロ雑巾で、
誰が元の世界に戻れると思うかしら?」
ミセ;%−゚)リ「あ……もしかして」
lw´‐ _‐ノv「そう、森はあなたが元の世界には戻れないと踏んだ」
- 387 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:46:20.58 ID:/KRYswfvO
-
lw´‐ _‐ノv「あなたが傷を負えば負うほど、森はあなたを愛する様になった
それはぱっと見て、もう戻れなそうな体になったから」
ミセ;%−゚)リ「…………嬉しくないし、ミセリ、諦めてない」
lw´‐ _‐ノv「……それが、森の誤算じゃないかしら?
まさか、その状態でまだ諦めてないなんて、思わなかったんじゃない?」
ミセ;%−゚)リ「……でもミセリ、まだ髪の毛しか変わってないよ?
怪我は、森がやった事じゃないし……」
lw´‐ _‐ノv「気付かない?」
ミセ;%−゚)リ「へ?」
lw´‐ _‐ノv「あなた、変わったじゃない……急激に、普通じゃない速度で」
ミセ;%−゚)リ「……?」
lw´‐ _‐ノv「普通、幾つもの修羅場を潜り抜けたからって笑える?
普通の小学生だった子が、ナイフ一本で戦いを楽しみ立ち向かえるの?」
ミセ;%−゚)リ「っ!」
- 394 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:48:11.03 ID:/KRYswfvO
-
lw´‐ _‐ノv「その髪の色が変わったのも、妙に大人びた考え方になったのも
あの赤い子達を相手に大立ち回りが出来たのも……森の影響よ?」
ミセ;%−゚)リ「…………うそ、そんな、」
lw´‐ _‐ノv「だから言ったでしょ、あなたは珍しいって
普通、外見ではなく内部から森の愛を受けるなんて、無いもの」
ミセ;%− )リ「あ…………じゃあ……ミセリ、……」
lw´‐ _‐ノv「……でも大丈夫、あなた、まだ初期だもの」
ミセ;%−゚)リ「初期?」
lw´‐ _‐ノv「ええ、時の流れだって変わってない。基本は変わってないわ」
ミセ;%−゚)リ「じゃっ、じゃあっ!」
lw´‐ _‐ノv「あなたの変化は、基本的に成長
森の影響は思い切り受けてるけれど、まだまだ人間」
ミセ;%−゚)リ「あぁ……よか、よかったぁ……」
lw´‐ _‐ノv「ごめんなさい、怖がらせちゃったみたいね」
- 399 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:50:05.74 ID:/KRYswfvO
-
ミセ;%д-)リ「あー……ビックリした……ミセリ、もう駄目かと……」
lw´‐ _‐ノv「大丈夫、まだまだ私達みたいにはならないわ」
ミセ;%−゚)リ「あっ、ご、ごめんなさいっ!」
lw´‐ _‐ノv「気にしないの、私はこの体になって結構経つから」
ミセ;%−゚)リ「どれくらい経つの? ……て言うか、さっきの時の流れって?」
lw´‐ _‐ノv「ああ、やっぱり知らないのね」
ミセ;%−゚)リ「ん……」
lw´‐ _‐ノv「これはあまり関係ないけど、教えておきましょうか」
ミセ;%−゚)リ「は、はいっ」
lw´‐ _‐ノv「んん、と……森に迷い込んだ人間には、それぞれの時が流れるの」
ミセ;%−゚)リ「それぞれ?」
lw´‐ _‐ノv「そ。それぞれ」
- 403 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:52:07.41 ID:/KRYswfvO
-
lw´‐ _‐ノv「意思が……弱ければ弱いほど、
時の流れは個人の物となり、その流れは早くなる」
ミセ;%−゚)リ?
lw´‐ _‐ノv「簡単に言うと、後ろ向きで性格が悪い奴ほど長い間生きられる」
ミセ;%−゚)リ「よ……よく分かんないな……」
lw´‐ _‐ノv「んー……あなたは前向き、だから時の流れは変わってない」
ミセ;%−゚)リ「はぁ……」
lw´‐ _‐ノv「あの女は性悪、だから時の流れが変わった」
ミセ;%−゚)リ「ふぇ……」
lw´‐ _‐ノv「そして私はもっと性悪、だから時の流れがひん曲がった」
ミセ;%−゚)リ「ぬぇっ?」
lw´‐ _‐ノv「もう、説明しづらい現象ね……」
- 407 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:54:02.82 ID:/KRYswfvO
- _,
ミセ;%−゚)リ???
lw´‐ _‐ノv「つまりね、森は性格が悪いでしょ?」
ミセ;%−゚)リ「うん」
lw´‐ _‐ノv「だから、性格の悪い人間を長生きさせて苦しめたいの」
ミセ;%−゚)リ「うわ」
lw´‐ _‐ノv「性格の悪い森によって、
性格の悪い人間の時が、早く流れる様になるの」
ミセ;%−゚)リ「え、と? ……時間が早く流れたら……すごい歳をとる?」
lw´‐ _‐ノv「そうそう。で、私みたいに姿が変わった人間は
ここまで来たら、不老不死……つまり?」
ミセ;%−゚)リ「……ずっと、そのまんま? なのに、歳をとる?」
lw´‐ _‐ノv「そ。見た目は変わらないし死なないのに、歳をとり続ける」
ミセ;%−゚)リ「…………森の性格わっる!」
lw´‐ _‐ノv「そゆ事」
- 413 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:56:09.57 ID:/KRYswfvO
-
ミセ;%−゚)リ「あり、でもシュールさん……見た目が変わるまでは歳とらないの?」
lw´‐ _‐ノv「とるわよ、結構な速さで」
ミセ;%−゚)リ「でもそれじゃあ、早くに死んじゃわない?」
lw´‐ _‐ノv「体が変化し始めると、体の成長が遅くなるのよ
まあ時の流れはどんどん加速して行くから、最初はそうでもないし」
ミセ;%−゚)リ「へー…………えと、シュールさん」
lw´‐ _‐ノv「はいな」
ミセ;%−゚)リ「…………いくつ?」
lw´‐ _‐ノv「……幾つ、かしら?」
ミセ;%−゚)リ「い、いや、知らないから聞いたんだよ?」
lw´‐ _‐ノv「たぶん、何千歳……? もう忘れちゃった、分からないわ」
ミセ;%−゚)リ「へぁ……物凄い、時の流れ……早いんだね」
lw´‐ _‐ノv「そりゃあもう、森には季節が無いに等しいから分かりにくいけど」
( ノAヽ)(どんだけ性格ワルいノーネ……?)
- 415 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 21:58:21.52 ID:/KRYswfvO
-
ミセ;%−゚)リ「……ミセリはまだ、見た目とかそんなに変わってないんだよね?」
lw´‐ _‐ノv「鏡、見る? 変化は髪の色にしか見られないけれど」
ミセ;%−゚)リ「あ、や、その……もしかしたら、ミセリも歳とらないのかなって」
lw´‐ _‐ノv「ああ……まあ、普通より若々しいってくらいじゃないかしら?」
ミセ;%−゚)リ「……なら、まぁ……いっか?」
lw´‐ _‐ノv「良いんじゃない? もう20年したら、その有り難みが分かるわ」
ミセ;%−゚)リ「あー……」
lw´‐ _‐ノv「まあ、何にせよ前向きって大事ね、やっぱり
森に嫌われたら、見た目も時の流れも変わらないし」
ミセ;%−゚)リ「あ、せんせー」
lw´‐ _‐ノv「はいな?」
ミセ;%−゚)リ「何でこんな事が起きんの?」
lw´‐ _‐ノv「そんなの私が知りたいし……バカね、あなた
未だにこの森で、常識が通用するとでも思ってるの?」
ミセ;%−゚)リ「……そうでした」
- 418 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:00:04.14 ID:/KRYswfvO
-
lw´‐ _‐ノv「さて、まあ長々色々言ったけれど」
ミセ*%−゚)リ?
lw´‐ _‐ノv「私、嘘を吐くのが大好きなのよね」
_,,
ミセ;%Д゚)リ
lw´‐ _‐ノv「どの言葉がどう嘘なのかは言わないけれど……どうしたの?」
_,,
ミセ;%Д゚)リ「……じ、時間を返せっ! うう嘘なの? 嘘なの!?」
lw´‐ _‐ノv「あら、あなたが私に言ったんじゃない、嘘つきって」
_,,
ミセ;%Д゚)リ(根に持たれてる!?)
lw´‐ _‐ノv「ああ疲れた、久しぶりに沢山ボケて沢山喋ったわ」
_,,
ミセ;%Д゚)リ
lw´‐ _‐ノv「ロマネスク、ごはん」
( ΦωΦ)「もが」
- 420 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:02:14.35 ID:/KRYswfvO
-
lw´‐ _‐ノv「あなた達もおいでなさいな、もう暗いし夜は冷えるわ」
( [)
( ノAヽ)
( [)
(;ノAヽ)「んぇっ? え、あ、あぁ……ノーネたちなノーネ?」
lw´‐ _‐ノv「別に存在忘れてたわけじゃないのよ?
長話は終わったから、ここからはあなた達のターンね」
( [)
(;ノAヽ)「あ゚ー……影、ついてるノーネ? 消えてないノーネ?」
.,;:ヽ`∀´>「ホルホル! ちゃんとあるニダ!」
( [)
(;ノAヽ)「ニダー影! 影!! それどころか存在ヤバいノーネ!!」
.,,';;:ー`)
([;) て
(ノAヽ;)そ「ネーヨぉぉぉぉぉぉう!!?」
- 424 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:04:06.93 ID:/KRYswfvO
-
ああ疲れた、と魔女が首や肩を回してぱきぱき鳴らしながらドアを開ける。
話し続けていた魔女とミセリ、それをぼんやり聞きながら待っていたノーネ達。
長い間喋っていたのか、まだ明るかった筈の森がずいぶん暗くなっていた。
( ノAヽ)「あ゙ー……長時間のセツメーブンおつかれなノーネ」
lw´‐ _‐ノv「疲れたし喉からから、ごはんにしましょ」
<ヽ`∀´>「……」
lw´‐ _‐ノv「大丈夫よ、もう何もしないから」
<ヽ`∀´>「そう、ニダ?」
lw´‐ _‐ノv「さすがに用心深いわね……
大丈夫、もうあなた達に勝てる気がしないもの」
ミセ*%ー゚)リ「何で?」
lw´‐ _‐ノv「若さ」
- 427 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:06:04.32 ID:/KRYswfvO
-
長い時間待っていたノーネ達が、だるそうに腰を叩いて立ち上がる。
そして魔女の言葉に従い、お邪魔しますと呟いて家の中に足を踏み入れた。
薄暗い室内に明かりが灯され、部屋を照らす。
大きな家具に高い天井。
幾つもある部屋、外から見るより広い部屋。
ほへぇ、とノーネとニダーが声を洩らした。
( ノAヽ)「すげーノーネ……」
<ヽ`∀´>「広いニダ……」
( ノAヽ)「まさか最後にキャラ食われるとは思わなかったノーネ」
<;ヽ`∀´>「何の話ニダ?」
ミセ;%ー゚)リ「ネーヨ、ネーヨ? だいじょぶ?」
( [)
( ´ー`)「おうヨー……」
- 431 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:08:15.02 ID:/KRYswfvO
-
ミセ*%ー゚)リ「取り敢えず、荷物とネーヨをここに……」
<ヽ`∀´>「あ、手伝うニダ」
ミセ*%ー゚)リ「あんがと、荷物持ってきてくれる?」
<ヽ`∀´>「把握ニダ」
ミセ*%ー゚)リ「ネーヨ、ほら、もちっと移動すれ?」
( [)
( ´ー`)「んー……」
( ノAヽ)「さすがに持ち運べないから大変なノーネ……」
( [)
( ´ー`)「おっさんじゃねーヨー……」
(;ノAヽ)「根に持ってたノーネ……」
- 456 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:22:14.38 ID:/KRYswfvO
-
元通りとは言えないが、魔女に乱されたペースがやっと戻って来た。
ネーヨを壁際まで移動させてから寝かせて、
その傍らにニダーが荷物を運ぶ。
ふと、この荷物ももう必要ないんだなと気付いて
少し悲しくて、少し、嬉しくもあった。
やっとミセリが元の世界に戻れるんだ、喜んであげるべきだ。
荷物を持って寂しそうに俯くニダーの頭を、ノーネがぺちんと叩いた。
<;ヽ`Д´>「ニダっ?」
( ノAヽ)
( ノ∀ヽ)
<;ヽ`Д´>!?
<ヽ`Д´>
<ヽ`∀´>
( ノ∀ヽ)
( [)
- 459 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:24:03.58 ID:/KRYswfvO
-
はい、合い言葉。
その内容を言葉ではなく顔で示してからニダーの手にあった荷物を奪い、置いた。
家の前に置いてあった荷物を全て運び終え、
ノーネ達は疲れた様に、ネーヨにもたれて座った。
ミセリが食事の手伝いをしている。
魔女がいつの間に着込んだのか、ローブの裾を翻して食器を出している。
獅子がその姿を変えて、エプロンをつけて料理を作っている。
あー、変な光景だ。
ノーネもニダーもビコーズも、ぼんやりしたネーヨですらもそう思った。
本当に、ミセリは変だ。
ついさっきまで敵対してた相手にでも、すぐにへらへら笑って接する。
敵だった誰かが死んで悲しむし、無関係の誰かが笑えば喜ぶ。
さすがはバカだなぁ。
人のコトは言えないけど。
- 461 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:26:18.95 ID:/KRYswfvO
-
( ノAヽ)「……バカなノーネ」
<ヽ`∀´>「バカ、ニダ」
( [)「ゴェ」
( ノAヽ)「頭ワルいのに無理したり」
<ヽ`∀´>「頭悪いから無理したり」
( [)「ゴェェゴェ」
( ノAヽ)「すぐ泣いて」
<ヽ`∀´>「すぐ笑って」
( [)「ゴェェェェ」
( ノAヽ)「まあ」
<ヽ`∀´>「まあ」
( ´ー`)「そんなミセリが好きだヨー……」
([*) <`∀´r*> (ノAヽ*)
( ´ー`)「こっち見んなー……」
- 467 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:28:20.36 ID:/KRYswfvO
-
( ノAヽ)「……バカはうつるノーネ」
<ヽ`∀´>「良い意味で、ニダ」
( [)「ゴェ?」
( ´ー`)「ミセリまみれー……」
(;ノAヽ)「それはこえーノーネ」
<ヽ`∀´>「ホルホル、賑やかそうニダ!」
( [)「ゴェァ」
( ノAヽ)「ビコーズ今ひどいコト言ったノーネ?」
([ )
<ヽ`∀´>「ホルホルホル!」
( ´ー`)「うへはぁ」
- 475 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:30:25.69 ID:/KRYswfvO
-
ああ、なんかいつも通りだなあ。
体も気持ちも疲れきってるけれど、不思議と嫌じゃない。
こんな気持ちになれるのは、きっとあのバカが居るから。
バカが居たから、みんなバカになれた。
影響力の強いバカは、元気に手足や顔から血を垂れ流したまま手伝いをしてる。
( ノAヽ)
(;ノAヽ)「ミセリ! 血! 血!!」
ミセ*%ー゚)リ「ん? ……あ、出てる」
<;ヽ`Д´>「傷薬ー! 衛生兵ー!!」
( [)っ薬
ミセ*%ー゚)リ「別に気にしなくていいよー、そんな痛くないし」
(;ノAヽ)「オマエ色々と麻痺しすぎなノーネ!!」
lw´‐ _‐ノv「ロマネスク、床が血まみれだから掃除しといてー」
- 480 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:32:23.47 ID:/KRYswfvO
-
いつもは静かな魔女の家は、とても賑やかだった。
それは魔女にとって、初めてに近い温もり。
側には猫しか居なかった、今も、それで満足している。
けれど誰かの温もりは、やっぱり気持ちが良いものだ。
大きな椅子に腰掛けて、四本の腕を組みながら実感する。
そして、人らしさを思い出す。
たまには、情けとか、かけようかな。
くすりと笑って、きゃいきゃいと騒がしいミセリ達を見つめる。
ちょびっと羨ましいなあ。
_,
( ΦωΦ)「夕食が出来……おい貴様ら、床を汚すな」
(;ノAヽ)「オマエが原因なノーネ!!」
_,
( ΦωΦ)「知らん」
(;ノAヽ)「心の底からハクジョーモン!?」
- 483 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:34:19.57 ID:/KRYswfvO
-
別に構わないと渋るミセリに手当てをして、汚れた床を掃除する。
魔女はそれを見て笑うだけだし、獅子は気にせず食事を運ぶ。
痛そうな顔すらしないミセリに呆れた顔で、
ノーネ達が魔女に促されて、クッションを乗せた椅子に座った。
机に並べられた白いシチューやサラダにパン。
ネーヨの分を大きな皿に入れて差し出し、みんなが席につく。
なぜか並ぶ料理に魔女が不服そうな顔をしていたが、気にせずに手を合わせた。
lw´‐ _‐ノv「……いただきます」
ミセ*%ー゚)リ「いただきまーす!」
( ノAヽ)「ノネ!」
<ヽ`∀´>「いただきますニダ!」
( [)「ゴェ!」
( ΦωΦ)「食え」
( ´ー`)「食うヨー……」
- 486 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:36:18.70 ID:/KRYswfvO
-
獅子の作る料理は非常に美味で、
しっかりと味を堪能しても、おかわりが出来る程の味だった。
いくらでも食べられるだの美味しいだの、きゃいきゃい騒ぎながらの食事。
どうやらそう言った事に不馴れなのか、
獅子は少し戸惑っていたが、魔女が何だか幸せそうな顔をするので、嬉しくなった。
まあ悪くはない、と獅子がほんのちょびっとだけ笑う。
それに気付いた魔女も、笑う。
お腹いっぱいになるまでおかわりをして、全員が食事を終える頃には
ミセリやノーネは、満たされた腹を撫でながら転がっていた。
食事の手伝いをしなかったから、とニダーとビコーズが洗い物をする。
その小さな背中を見つつ、獅子は魔女の椅子となっていた。
ミセ*%ヮ`)リ「ほへぁー……美味しかったー……」
(*ノAヽ)「マンプクー……」
- 491 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:38:07.76 ID:/KRYswfvO
-
( ΦωΦ)「喰ろうてすぐに寝ると肥えるぞ」
ミセ*%ヮ`)リ「現実みえませーん……」
(*ノAヽ)「のぎゃー……」
( ´ー`)「げふ」
_,
( ΦωΦ)
lw´‐ _‐ノv「良いじゃない、美味しいと言ってもらえたんだから」
_,
( ΦωΦ)「しかし……ぬぅ」
lw´‐ _‐ノv「敗者は大人しくしてなさいな」
_,
(; ω )そ
lw´‐ _‐ノv「ほら邪魔よ、お退きなさいなあなた達」
ミセ*%ヮ`)リ「あーい……」
(*ノAヽ)「ノネー……」
- 493 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:40:02.94 ID:/KRYswfvO
-
魔女が獅子の背中から降り、近くにある部屋のドアを開ける。
そしてそこを指差して、ミセリ達に向き直った。
lw´‐ _‐ノv「今夜はここで眠りなさいな、ベッドは無いけど毛布を用意させるわ」
ミセ*%ー゚)リ「んぁ、あっ、ありがとうございます!」
( ノAヽ)「ノネ」
lw´‐ _‐ノv「はいはい、ほら恐竜さんもよ」
( ´ー`)「はいはいヨ」
lw´‐ _‐ノv「はい、は一回で良いわ」
(;´ー`)「えぇ……は、はいヨ……」
<ヽ`∀´>「洗い物終わったニダ!」
( [)「ゴェ!」
lw´‐ _‐ノv「はいはい、ありがとうね」
( ´ー`)
lw´‐ _‐ノv「何か?」
- 495 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:42:02.78 ID:/KRYswfvO
-
ミセリ達が最低限の荷物を別室に移動させ、眠る準備に入る。
魔女は腕を組みながらそれを見て、ちら、と獅子に視線をやった。
視線を感じた獅子が起き上がり、のそりと家の奥へと消えて行った。
それを確認してから魔女はミセリ達に視線を戻し、口を開く。
lw´‐ _‐ノv「しっかり……満喫しなさいね」
ミセ*%ー゚)リ「へ?」
lw´‐ _‐ノv「最後の夜よ、あなた達が、一緒に過ごす」
ミセ*%−゚)リ「っ!」
( ノAヽ)「……」
<ヽ`∀´>「……どう言う事、ニダ?」
lw´‐ _‐ノv「明日の朝、戻してあげる……あなた達が元居た場所へ」
( ´ー`)「……ありがと、ヨ」
lw´‐ _‐ノv「…………どういたしまして」
- 498 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:44:13.95 ID:/KRYswfvO
-
穏やかだった空気が、瞬時に凍り付いた。
誰もが予想していた事、誰もが求めていた言葉。
だけれど、胸の中に寂しさがあふれだす。
それを分かっていてか、分からずか、魔女は無口になったミセリ達に言葉を続けた。
lw´‐ _‐ノv「別れを惜しむ時間は、今夜だけ……分かった?」
ミセ*%−゚)リ「……はい…………シュールさん」
lw´‐ _‐ノv「はいな?」
ミセ*%−゚)リ「ありがとう……元の世界、戻してくれて……」
lw´‐ _‐ノv「……私は蜘蛛、私は魔女、あなた達に糸を垂らして地獄から導く
それが私に課せられた役目なのなら、私はそれを全うする」
ミセ*%ー゚)リ「……うん……ありがとう」
lw´‐ _‐ノv「良いのよ……あなた達に意地悪をする理由、もう、無いから」
- 500 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:46:04.26 ID:/KRYswfvO
-
口々に小さくお礼をのべて、俯く。
部屋の前で言葉を無くしたミセリ達。
戻ってきた獅子が、頭や背中に毛布などを乗せてするりと部屋に入った。
小さなランタンだけがぽつんと置かれた狭い部屋、
その真ん中に毛布や枕と言った寝具を置き、部屋から出る。
ちらり、魔女を見上げて、そこから離れた。
ミセ*%−゚)リ「……」
lw´‐ _‐ノv「……もう遅いわ、お休みなさい」
ミセ*%−゚)リ「…………はい、おやすみなさい」
ミセリがぺこりと頭を下げて、部屋に入る。
それに続いてノーネ達も移動して、そっと、扉を閉めた。
さっきまでの賑やかさを消し
どこか悲しい静寂が、ぼんやりと流れていた。
- 505 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:48:14.50 ID:/KRYswfvO
-
表情を無くしたまま、ミセリは獅子が置いて行った布団を敷き、毛布を広げる。
ノーネが枕をぽんぽんと並べ、ニダーはマントと帽子を部屋の隅に置く。
まだ少しぼんやりとするネーヨの上で、ビコーズがそれらを見ていた。
誰も口をきかないし、表情は暗い。
ミセ*%−゚)リ「……」
<ヽ`Д´>「……ミセリ、」
ミセ*%−゚)リ「ん……?」
<ヽ`Д´>
<ヽ`∀´>「おめでとう、ニダ」
ミセ*%−゚)リ?
<ヽ`∀´>「やっと戻れるニダ、もっと、喜ぶニダ」
ミセ*%−゚)リ「ぁ……そ、う……だね」
- 506 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:50:05.70 ID:/KRYswfvO
-
ニダーが敷かれた布団の上にちょんと座って、笑顔でミセリに言った。
それを聞いたミセリは少し複雑そうな顔をして、しゅんと項垂れる。
前髪を上げるカチューシャと眼帯を外し、枕元に置く。
手櫛で軽く髪の毛を整えて、布団の上で足を投げ出した。
お布団、久しぶりだなぁ。
ふかふかの手触りを最後に感じたのは、レモナの家。
それまでもそれからも、ずっと野宿だったから、少し嬉しい。
嬉しいけれど、悲しい。
窓から差し込む月明かりに、ちらとランタンを見て、火を灯すのを止める。
別に無くても良いやと頭の隅っこで考え、ボロボロのスカートに視線を落とした。
何度も洗ったけど落ちない汚れ。
つぎはぎに繕った跡まみれ。
お気に入りだったんだけど、もう着れないだろうな。
- 508 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:52:04.54 ID:/KRYswfvO
-
丸い襟のブラウスも、元が白かったとは思えないくらいに汚れた。
左の袖は切れたのを繋いだから少し短いし、色んなところが裂けてる。
脇腹も、背中も、胸も肩も、体と同じ分だけ傷付いた。
森に来てすぐに貰ったマントだって、あちこちすり切れてボロボロだ。
襟巻きにしてた布も、色褪せて手触りが悪くなってる。
留め具のついた赤い靴は、底がべろんとなったから布で縛ってる。
白地に小さな黄色い花のポイントが入った靴下だって、穴が開いた。
お気に入りのオレンジのカチューシャも、よく見たら細かい傷がいっぱい。
スカートについてるサスペンダーは一回ちぎれたのを直したし、
留め具が壊れちゃったから、今はスカートに縫い付けてる。
ああ、この体と一緒に傷付いてきたミセリの物が
森で過ごした短くはない時を、しっかりと物語っている。
この森に来てどれだけ経つんだろう。
シュールさんが言ってた様に、森は季節があまり無い。
来た時は、まだ少し肌寒い春だった。
クーさんのとこに着いたのが、確か三ヶ月くらいだったかな。
もう、ずいぶん前に感じる。
- 511 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:54:02.47 ID:/KRYswfvO
-
ある程度は日数を数えてたけど、もう数えるのがめんどくさくなった。
だから、今がいつなのか分からない。
みんな、元気かな。
お母さん、元気かな。
会いたいけど、森から、出たくない。
早く帰りたいは、いつの間にか戻りたくないと言う気持ちが横に並ぶ様になった。
今でも元の世界に帰りたいとは思ってる、強く強く。
けれどみんなと、森と離れるのは、寂しい。
かと言って森に居続ければ、二度と戻れなくなってしまう。
シュールさんが元居た場所に戻すと言ってくれた。
その機会を、今を逃したら、ミセリはもうどこにも行けなくなる。
帰る場所を、本当に失ってしまうんだ。
それは、嫌だ。
- 515 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:56:05.11 ID:/KRYswfvO
-
ミセリが俯いて物思いに耽っていると、つんつん、と横から肩をつつかれる。
緩慢な動きで顔を上げれば、そこにはノーネが顔を覗き込んでいた。
イル* −゚)リ「……ノーネ?」
( ノAヽ)「ミセリ、」
イル* −゚)リ「ん、?」
( ノAヽ)「ミセリが森を旅したのは、なんでなノーネ?」
イル* −゚)リ「……帰る、ため」
( ノAヽ)「…………なら、もっと喜べなノーネ」
イル* −゚)リ「……う、ん……」
( ノAヽ)「……」
イル* −゚)リ「……」
- 518 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 22:58:03.61 ID:/KRYswfvO
-
( ´ー`)「ミセリ?」
イル* −゚)リ「う、?」
( ´ー`)「俺らだって、ミセリが居なくなるのは嫌だヨ」
イル* −゚)リ「……」
( ´ー`)「でも、オマエが変なかわり方するのは、もっと嫌だヨ」
イル* −゚)リ「ネーヨ……」
<ヽ`∀´>「だから、ミセリ」
( ノAヽ)「……ミセリは、戻れなノーネ」
イル* −゚)リ「ぁ……」
( [)「ゴェ」
イル* −゚)リ「ビコ……みん、な……」
- 522 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:00:07.29 ID:/KRYswfvO
-
どんより沈んでいるミセリを気にしてか、
ノーネとニダーがミセリの前と横に座り、ネーヨが膝に顎を乗せる。
ぴょん、とミセリの肩にビコーズが飛び乗り、顔を見上げる。
みんなが、ミセリとの別れを惜しむ。
その場に居る全員が、本当は一緒に居たいと言う気持ちを抱えていた。
けれどそれを、何度も口に出すわけにはいかない。
何度も一緒に居たいと言えば、ミセリの気持ちが余計に揺らいでしまうから。
お人好しで楽天的で、どうしようもない寂しがり屋のバカな少女。
そんな少女との別れが、目の前にある。
目の前に存在する物から目をそらし、背中を向けてしまいたい。
でもそれをすれば、今までの旅が無駄になってしまう気がして。
泣きそうな顔をしたミセリが、唇を噛む。
何でこいつらは、こんなにもかわいいんだ。
- 526 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:02:04.21 ID:/KRYswfvO
- _,
イル* − )リ「……っ」
( [)「ゴェェ」
_,
イル* − )リ「な、に? ……ビコ」
( [)「……ゴェェゴェゴェェェ」
( ´ー`)「……オマエが幸せなら、ビコーズも幸せだってヨ」
_,
イル* − )リ「ッ!!」
( [)「ゴェェゴェゴェェ?」
( ´ー`)「オマエはニンゲンじゃなくなっても幸せか?」
_,
イル* − )リ「あっ……ぅ、う」
( [)「ゴェェァゴェゴェェゴェ」
( ´ー`)「……幸せじゃなきゃ、ぶっとばすからな……だってヨ」
_,
イル* − )リ「ビ、コ……っ」
- 529 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:04:06.12 ID:/KRYswfvO
-
( ノAヽ)「ミセリぃ……」
_,
イル* − )リ「ん……」
( ノAヽ)「ミセリが、言ったノーネ……笑えって」
_,
イル* − )リ「うん……」
( ノAヽ)「…………ミセリ、ノーネはスキなノーネ?」
_,
イル* − )リ「好きだよ……みんな、大好きだっての……」
( ノAヽ)「……ノーネ、ミセリが笑うのスキなノーネ
だからミセリ、笑えなノーネ、ノーネを喜ばせろなノーネ」
_,
イル* − )リ「っ……う、ぁ……っ!」
<ヽ`∀´>「みんな寂しいニダ、みんな、ミセリが大好きニダ
だから、ミセリに頼り続けられないニダ」
( ´ー`)「……せっかく前に進めたんだヨ
けどヨ、いつまでもオマエに頼っちゃ、こっから進めネーヨ」
( ノAヽ)「こっから先は、ミセリのフタンになるだけなノーネ」
- 531 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:06:05.45 ID:/KRYswfvO
- _,
イル* − )リ「みんな……な、で……そ……な、」
( ´ー`)「分からねーのかヨ?」
<ヽ`∀´>「さっき言ったニダ」
( [)「ゴェ」
( ノAヽ)「恥ずかしいから何度も言わせんなノーネ」
_,
イル* − )リ「……好き……だか、ら?」
( ´ー`)「他にあるのかヨ、アホ」
<ヽ`∀´>「ホルホル、ミセリは忘れっぽいニダ」
( [)
( ノAヽ)「アンポンタン」
愚問だと、ノーネ達が笑ったり呆れたりしてミセリに寄り添う。
好かれてると言う事実が
思われてると言う事実が
たまらなく、たまらなく、嬉しかった。
ただ、どうしようもなく涙を誘い出すのが、困る。
- 534 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:08:08.40 ID:/KRYswfvO
-
( ノAヽ)「……ミセリはアホだし、料理ヘタだし、すぐ泣くノーネ」
<ヽ`∀´>「すぐにカッとなって暴走して、わざわざいっぱい傷付きに行くニダ」
( ´ー`)「腕は取れるし目は取れるし、ガキだし押し付けるしワガママだしヨ」
( [)「ゴェェェゴェェ」
( ´ー`)「……わざわざ危ない橋は渡るし、すぐ怒るし」
( ノAヽ)「メーワクなんかどれだけかけられたか分からんノーネ」
_,
イル* − )リ「あ、ぁう……」
( ノAヽ)「良いコトばっかなんかじゃないノーネ」
<ヽ`∀´>「でも全部引っくるめて、それがミセリニダ」
( ´ー`)「欠点いっぱいのミセリが、みんな好きなんだヨ」
( [)「ゴェェェ」
( ノAヽ)「だから恥ずかしいから何度も言わせんなノーネ」
- 539 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:10:07.11 ID:/KRYswfvO
-
ぺんぺん、と俯くミセリの頭を叩く小さな手。
みんなの言葉に、体温に、涙が込み上げる。
泣くな、泣くな。
必死でそれを飲み込んで、ミセリは奥歯を噛み締めた。
力が緩めば泣いてしまう。
もう泣かないんだ、決めたんだ。
自分から言い出した事を、破りたくない。
でも、みんなの言葉はまるでミセリを泣かそうとしてるくらい、優しくて。
イル* ー )リ
へら、と、口の端が持ち上がった。
- 541 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:12:09.67 ID:/KRYswfvO
-
( ノAヽ)「まあ……ノーネたちも、やったらメーワクかけてるノーネ」
<ヽ`∀´>「ウリだって欠点だらけニダ、なかなか直せなくて困ってるニダ」
( ´ー`)「悪いとこは山ほどある……それは、自分もだヨ」
( ノAヽ)「でも、ここまで来れたノーネ
それはミセリの、アホのミセリのお陰なノーネ」
<ヽ`∀´>「ミセリには、お礼言っても言い切れないニダ……」
( ´ー`)「だから…………ミセリ?」
イル* ー )リ「…………ありがと……みんな」
( ノAヽ)「あ、笑った」
イル* ー )リ「……みんなごめんね、ミセリ、」
( ´ー`)「チッ」
イル; −゚)リ「え?」
- 545 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:14:18.94 ID:/KRYswfvO
-
<ヽ`∀´>「あー……負けたニダ」
( ノAヽ)「ビコの一人勝ちなノーネ……」
( ´ー`)「あーあー、あとちょっとだったのにヨ」
( [)「ゴェッ」
イル; −゚)リ「え、え? ちょ、え? 何? 何なの?」
( ノAヽ)「あったかいコトバで」
<ヽ`∀´>「ミセリが泣くか」
( ´ー`)「賭けてたヨ」
( [)「ゴェ」
( ノAヽ)「みんなで泣かせるコトバをかけて、笑ったらそこでおわりなノーネ」
_,,
イル; Д゚)リ
- 552 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:17:06.34 ID:/KRYswfvO
- <ヽ`∀´>「負けたもんはしょうがないニダ、ビコーズの勝利ニダ」
( ノAヽ)「あ゚ー、この木の実サイゴの一個なノーネ……」
( ´ー`)「でも一番泣かせかけたのビコーズだヨ」
( [)「ゴェェッ♪」
_,,
イル# Д゚)リ
<ヽ`∀´>「はいビコーズ、賭け木の実ニダ」
( ノAヽ)「惜しいけど賭けだからしゃーねーノーネ……」
( ´ー`)「良いセン行ったのにヨー……」
<ヽ`∀´>「かなり惜しかったニダ……」
_,,
イル# Д )リ ミヂッ
- 556 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:18:13.75 ID:/KRYswfvO
- _,,
イル# 皿゚)リ「うううぅぉおおぉおまえるぁああああああああああッ!!!!」
( ノ∀ヽ)「ぬっへっほぅ! バカがキレたノーネー!!」
<ヽ`∀´>「逃げるニダー!!」
( ´ー`)「バーカだヨー!!」
( [)「ゴェェェェェ!!」
_,,
イル# 皿゚)リ「待たんかこらぁああああああああああああッ!!!!」
( ノ∀ヽ)「うひひひひひひ!! イルリ泣きかけてやんのプーッ!!」
<ヽ`∀´>「泣き虫イルリが来るニダー!! 逃げろ逃げろー!!」
( ´ー`)「やーいやーいルイセンゆるゆるー!!」
( [)「ゴェゴェゴェェェェェ!!」
_,,
イル# 皿゚)リ「ミセリの胸キュン返せごるぁあああああああああああ!!!!」
- 564 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:20:07.53 ID:/KRYswfvO
-
( ノ∀ヽ)「イルリにしんみりなんか似合うワケないノーネー!!」
<ヽ`∀´>「アイゴー!!」
( ´ー`)「あ、部屋せまくて逃げれネーヨ」
イル* ワ^)リ (´ー` )
<イルワリーッ!!
([ )
(ノAヽ )「あ、ネーヨ死んだノーネ」
<`∀´r>「安らかに眠るニダ……」
_,
( ΦωΦ)「すこぶる喧しい」
lw´‐ _‐ノv「ま、ほっときなさいな」
- 568 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:22:11.59 ID:/KRYswfvO
-
_,,
イル# ー゚)リ「…………何か言う事は?」
( メA(#)「すんませんなノーネ」
<ヽ#)∀キ>「失礼しましたニダ」
(メメ#)ーメ)「ごめんヨ」
( #)「ゴェ」
_,,
イル# ー゚)リ「結構ガチでムカつくわー……」
( ノAヽ)「ま、そろそろ寝るノーネ」
<ヽ`∀´>「ニダ」
( [)
( ´ー`)「暴れて疲れたヨ」
_,,
イル# ー゚)リ「あんたら反省ってコトバ知ってる?」
- 573 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:24:06.58 ID:/KRYswfvO
-
たっぷり暴れまわって、良い具合に疲れた体を横たわらせるノーネ達。
ミセリは頬を膨らませながらそれを見て、
渋々カーテンを引いて同じ様に寝転がる。
大きい一枚の毛布をみんなでかぶり、枕に頭を乗せた。
みんなが無言で寝転がって少しすると、全身から疲れがどっと流れ出す。
まさかここまで来てこんなに疲れるとは、と思いながら、ミセリは目を瞑った。
( ノAヽ)「…………ミセリー……」
_,,
イル#- _-)リ「あにさ」
( ノAヽ)「……さっきの、」
_,,
イル# -゚)リ「……」
( ノAヽ)「別に……誰も、嘘はついてないノーネ」
イル -゚)リ「っ」
- 576 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:26:20.42 ID:/KRYswfvO
-
( ノAヽ)「……別れたくない、ホントなノーネ…………」
イル -゚)リ「ノーネ……」
( ノAヽ)「…………」
イル* ー゚)リ「……ありがと、ノーネ……みんな」
<ヽ`∀´>「……ぐ、ぐーぐー」
( ´ー`)「す……すやすや」
( [)「ゴェッゴェッ」
イル* ー゚)リ「…………ありがと……」
隣で転がるノーネをひょいと持って、胸に抱いた。
その向こう側に寝たフリをするニダーとビコーズを、腕枕をする様にして抱き寄せる。
のそ、と頭を持ってきたネーヨの頬に額を押し付けて、そっと瞼を下ろした。
「……最後まで、泣かない……約束、ね?」
「…………うん」
- 579 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:28:20.01 ID:/KRYswfvO
-
賑やかしかった部屋が、やっと静かになった。
静かになってから一時間ほど経ってから、魔女が部屋の扉を静かに開く。
きぃ、と微かな音をさせて開いた扉から中を覗き
全員がよく眠ってるのを確認してから、そっと室内に蜘蛛が滑り込む。
lw´‐ _‐ノv(ええと…………んん……あ、あったあった)
何かを探す様に、四本の腕がミセリの荷物をごそりとあさり
目的の物を見つけたのか、ひっそり小さな声で笑う。
手袋を外した女の手のひら。
そこでころりと揺れたそれを胸に抱き、口をそっと開いて。
ふう、と
息を吹き掛ける様に、それを蜘蛛の糸で包んだ。
数分後、魔女は満足そうな顔で部屋から出て来る。
その手には何も乗って居らず、にんまりと笑った。
lw´‐ _‐ノv「好きなんだもの、欲しいんだもの……しょうがないじゃない……?」
- 586 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:30:14.37 ID:/KRYswfvO
-
朝の鳥がか細く囀ずり、朝日独特の眩しさが森を照らしていた。
少し明るい魔女の家。
その前で、ミセリが荷物と装備のチェックをしている。
服もマントも襟巻きも、ナイフもカチューシャも水筒も持った。
眼帯はしてるし、もう忘れ物は無いかな?
ネーヨの背中には食料の半分だけが乗っている。
もう半分はノーネとニダーが引き取って、
持っていた毛布やらは、魔女の家に置いて行く事にした。
あとは個人の物を忘れず持って、別れの挨拶の言葉を考えるだけ。
よし、これで大丈夫。
眠ったのは少し遅かったけれど、目が覚めたのは朝早くだった。
ゆっくり眠るつもりでリラックスしていたが、体は正直に緊張している様だ。
指先が、少し震えて冷たくなってる。
- 591 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:32:21.25 ID:/KRYswfvO
-
思ったよりも、あっさりしたものだ。
ノーネ達もミセリと同じ様に身支度をして、魔女の家から出て来た。
目が合うと笑顔で挨拶を交わし、隣に並んで見えない空を見上げる。
背の低い木々に覆われた空。
下からしか見えない森の外。
そこからやって来たミセリが、そこへと戻る、朝。
家から、獅子を従えた魔女が姿を現した。
lw´‐ _‐ノv「……準備、出来たかしら?」
ミセ*%ー゚)リ「うん……」
lw´‐ _‐ノv「じゃあ、お嬢ちゃん……そこに立って」
ミセ*%ー゚)リ「はい」
- 595 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:34:17.81 ID:/KRYswfvO
-
魔女に言われるがまま、ミセリが家から少し離れて立つ。
す、と一歩踏み出した魔女はフードを外し、呼吸を整える。
( ノAヽ)「……一人ずつ、なノーネ?」
lw´‐ _‐ノv「ええ、みんな……帰る場所が違うから、ね」
( ノAヽ)「……」
少しの荷物を持ったノーネが、離れた場所に立つミセリを見上げる。
ミセリは少し困った様な笑顔で、何か言葉を探していた。
そしてしばらく迷ってから、ミセリが口を開いた。
ミセ*%ー゚)リ「ん、と……今まで、お世話になりました」
( ノAヽ)「……」
ミセ*%ー゚)リ「みんなのお陰で、わたしは、戻れるから……その……」
- 599 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:36:03.78 ID:/KRYswfvO
-
ぺこんと一度頭を下げて、再び言葉を探す。
ちゃんと別れの挨拶をしたい、気持ちを全部伝えたい。
でも、その気持ちをあらわす言葉はなかなか見つからなくて。
諦めた様に、にっと笑って手を振った。
ミセ*%ー^)リ「みんな、あんがとっ!
元気でね、ミセリも元気でいるからっ!!」
その言葉を口にした瞬間、蜘蛛の糸が足に絡まった。
挨拶をするのを待っていたのか、魔女が糸を吐いてミセリを包み始めた。
( ノAヽ)「ミセリ……」
<ヽ`∀´>「……元気で、ニダ!」
( [)ノシ
( ´ー`)「達者でな、ミセリ」
ミセ*%ー^)リ「うんっ! みんなもね!!」
- 609 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:38:19.04 ID:/KRYswfvO
-
言葉を交わす内に、蜘蛛の糸はもう膝までミセリの体を包んでいた。
ゆっくり森から消え行くミセリは笑顔で、ひたすら笑顔で手を振る。
ニダーとビコーズもそれに答えて手を振り、ネーヨは尾を振っている。
俯きがちに、控えめに手を振るノーネの姿にミセリがくすりと笑った。
本当に、あっさりしてるなぁ。
もう胸まで蜘蛛の糸に覆われたミセリの手は、見えない。
すると突然、ノーネが、顔を上げて走り出した。
蜘蛛の糸は顔に触れようとしていた。
(; A )「ミセリっ、ミセリぃっ!!」
ミセ*%−゚)リ「ぁ……ノーネ、」
(; A )「ミセリぃいっ!!」
あ、約束破ったな、こいつ。
- 615 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:40:08.86 ID:/KRYswfvO
-
でも泣くなと言う約束は、簡単に守れるものではなくて。
ミセリに飛び付こうと地を蹴ったノーネを、抱き締めようと手を差し伸べた。
けれどミセリの両手は、もう森には存在しない。
困った様に参った様に、泣きそうな顔でミセリは笑った。
ミセ*%ー^)リ「ノーネ……ばいばい」
(; A )「っ!!」
ノーネの小さな体は、ミセリに触れる事なく地面に叩き付けられた。
最後に聞こえた言葉。
慌てて顔を上げてミセリを探せども、
そこには蜘蛛の糸が数本、きらりと輝きながらゆらめくだけ。
ミセリは、もう居なかった。
- 627 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:42:02.91 ID:/KRYswfvO
- _,
(; A )「あ……あ、あぁぁっ……」
_,,
(;つA)「ぅ、あっ……あぁっ……!!」
ノーネがその場に崩れ落ちて、両手で顔を覆った。
もっとたくさん話せば良かった、もっとたくさん触れれば良かった。
でもどうすれば良いか、分からなかった。
口ではどんなに強がっても、本当は別れたくなかった。
ずっと、一緒に居たかった。
それはノーネだけではなく、全員の胸にあった事。
_,,
( ;A)「ミ゙ゼ、リ……っミセリ、ミセリぃっ……!」
<ヽ`∀´>「……ノーネ、」
_,,
( ;Д;)「っぅ……うわぁあぁぁぁぁああぁんっ!!
うぁああああぁあああぁああんっ!!!!」
受け入れきれない現実が、約束を破らせる。
- 632 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:44:21.79 ID:/KRYswfvO
- わんわんと泣きじゃくるノーネの頭を、ニダーが撫でる。
この場で泣けるのは、幼い者だけ。
泣きながら名を呼べるのは、一番長く居たノーネだけ。
それは少し羨ましくもあり、どうしようもなく切なくもあって。
ニダーは静かに魔女を振り返り、目配せをした。
目が合った魔女は小さく頷き、ニダーがノーネから離れると、糸を吐き出す。
_,,
( ;Д;)「うわあぁああんっ!! ああぁぁあぁあああああああんっ!!」
( ´ー`)「……チビ」
_,,
( ;Д;)「っ! ……ひっ、ぃぐっ……ぇっ、!!」
( ´ー`)「俺らは、またな、だヨ」
_,,
( ;A;)「ネ、ヨ……」
<ヽ`∀´>「大丈夫ニダ、ノーネ……ウリ達はいつでも会えるニダ」
_,,
( つA;)「うっん、……また、な……ノーネっ!」
( [)
( ´ー`)「またな、チビ」
<ヽ`∀´>「またニダ、ノーネ」
- 637 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:46:15.39 ID:/KRYswfvO
-
ノーネの姿が消えて、ニダーが魔女の前に立つ。
悲しみはあれども、どこか清々しい気分だった。
帽子を持ち上げて笑い、手を振る。
<ヽ`∀´>「さっきも言ったけど……ウリ達は、いつでも会えるニダ」
( [)
( ´ー`)「おうヨ」
<ヽ`∀´>「だから、また今度ニダ!」
( [)「ゴェ!」
( ´ー`)「またな、ニダー」
あっさりとした、無駄の少ない別れだった。
蜘蛛の糸がしゅるしゅると巻き付くのを感じて、目を瞑る。
孤独じゃない旅、みんなとの生活。
とてもとても楽しくて、幸せだったなあ。
- 644 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:48:05.86 ID:/KRYswfvO
-
( ´ー`)「……さて、俺らだヨ」
( [)「ゴェ」
( ´ー`)「…………なあ、魔女」
lw´‐ _‐ノv「ん、?」
( ´ー`)「俺、ビコーズと一緒に、」
( [)「ゴェェェ!」
( ´−`)「ッ!」
( [)"
( ´−`)
( ´ー`)゙
小さいモノを守りたいけど
守られるだけじゃいけないってコトも、あるんだな。
- 651 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:50:25.38 ID:/KRYswfvO
-
体が大きいからか、先程までより強い勢いで糸が吹き付けられる。
細い蜘蛛の糸がその巨体を飲み込むのにさして時間はかからず、
ネーヨは尾を揺らしながら、糸にとけて消えた。
( [)
lw´‐ _‐ノv「……あなたが、最後ね」
( [)゙
lw´‐ _‐ノv「大丈夫、かしら?」
( [)゙
大丈夫だよ。
そう言う様に頷くビコーズを、手のひらにちょんとのせる。
ゆっくりゆっくり、傷付けない様に優しく糸を吹き掛ける。
白く透明な糸に包まれながら、ビコーズは魔女に手を振った。
- 657 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:52:12.37 ID:/KRYswfvO
-
ぽつりと残された魔女が、静かになった世界でぼんやりと空を見上げる。
その顔はどこか穏やかで、どこか、寂しそうだった。
lw´‐ _‐ノv「…………面白かったわ、あの子達、すごくキラキラしてて」
( ΦωΦ)「……」
lw´‐ _‐ノv「もう、誰かが森に食われないように、私が巣を張り巡らせる
もう、誰も孤独を感じない様に……一人は、寂しいもの、ね?」
( ΦωΦ)「主人は一つ間違っている」
lw´‐ _‐ノv「?」
( ΦωΦ)「主人は我輩に求められている、主人は独り等では無い」
lw´‐ _‐ノv「あら……あらあら、っふふ……ありがとう、ロマネスク」
_,
( ΦωΦ)「我輩と云う存在を忘れられては、困る」
lw´‐ _‐ノv「ごめんなさいな、ロマネスク……忘れてたんじゃあ無いのよ?」
_,
( ΦωΦ)
- 665 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:54:31.24 ID:/KRYswfvO
-
lw´‐ _‐ノv「…………ふ、ふふっ……
人を許して、謝罪をしたがり、突っぱねず、自己を持つ……うふふふっ」
( ΦωΦ)?
lw´‐ _‐ノv「この森は、やっぱり可笑しいわ……
アイデンティティーの崩壊が……いとも容易く起こるんだもの」
_,
( ΦωΦ)?
lw´‐ _‐ノv「それでもこの森は、楽しいのよ、ね?
ふっ、うふふっ……うふふふっ……燃えてしまえば良いのに、こんな森」
_,
( ΦωΦ)「主人、?」
lw´‐ _‐ノv「…………大丈夫、何もしないわ……
だって私は、この森に生かされてるのだから
私、まだ生きたいもの…………しぶとく、ね?」
_,
( ΦωΦ)「……ぬ」
- 670 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:56:07.08 ID:/KRYswfvO
-
lw´‐ _‐ノv「さあ、二人で生き続けましょうロマネスク
森が私達を別つまで」
消えたミセリ達に背を向けて、魔女が家へと戻って行く。
蜘蛛の腹部を揺らし、踵を鳴らせて魔女が笑った。
lw´‐ _‐ノv「何も変わらない、それは、悪い事ばかりじゃない」
( ΦωΦ)「主人……」
lw´‐ _‐ノv「成長はしない、けれど、
何も失わずに済む…………姉さん……私は、あなたを─────」
────失いたくは、ないの。
ぱたん。
- 676 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/21(日) 23:58:03.80 ID:/KRYswfvO
- 安西先生……うんこがしたいです……ッ!!
10分ほどトイレ休憩してきます、すみません。
残り70レスくらいです、すみません。
あと閲覧注意は蜘蛛の絵で終わりました、すみません。
>>633が読みたいです、すみません。
指先ひとつでダウンされてきます。
- 697 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:08:58.84 ID:rvgtkGkVO
- ただいま戻りました、ありがとうございます。
元気な子を産んで流して来ました。
では、再開させて頂きます。
- 701 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:10:36.69 ID:rvgtkGkVO
-
ふと、世界が明るくなった。
閉ざしていた目を開けると、そこは見知った場所だった。
僕らだけの、狭い世界。
ここは、妖精の集落。
旅立ってから何も変わらず、変化を見せていない集落。
ビコーズがとことこと歩いて、辺りを見回す。
相変わらずだなぁ。
お気に入りだった木のうろを覗き込むと、そこには赤いひらひらが見えた。
何だろうと手を伸ばし、引っ張る。
するとそのひらひらは、いとも容易く引き寄せられて
それと一緒に、薄い青がこっちにやって来た。
( [)っ(∴$)゙
- 706 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:12:12.24 ID:rvgtkGkVO
-
見覚えのあるひらひら、薄い青。
それは、旅立ちを見送ってくれた子。
ゼアフォーは驚いた顔でビコーズを見上げ、木のうろから飛び出す。
そしてビコーズの頬やら腕をぺたぺた触ってから、しがみついた。
(おかえり、おかえり!)
(ああ、びっくりした)
(いつもどってきたの? どうだった? そとはどんなせかいだった?)
(ついさっき、すごくすごく、たのしかった)
(よかった……きみも、すこしかわったね)
(かわった?)
(うん、つよそうなかおしてる)
(……)
(?)
- 713 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:14:04.45 ID:rvgtkGkVO
-
(ねぇ)
(ん?)
(かわろう、みんなで)
(え、)
(ぼくらだって、よわいだけじゃないはずなんだ)
(あ……)
(みんなでつよくなろう、いたいのもこわいのも、むりにうけいれず)
(……)
(……やっぱり、だめ……かな)
(…………そとのせかいは、すごいんだね)
(えっ)
(きみは、すごく、かわった)
- 718 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:16:07.22 ID:rvgtkGkVO
-
(そう、かな?)
(うん……きみみたいに、ぼくも、かわりたい)
(え……)
(きかせて、ぼくにもみんなにも、たびのおはなし)
(……うんっ)
(ねぇ)
(?)
(…………おかえり)
今は小さくひ弱でも、いつかはきっと強くなれる、
その未来は決して遠くはないんだと、信じて行こう。
- 723 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:18:05.70 ID:rvgtkGkVO
-
ふっと、閉ざした瞼に光を感じた。
ゆっくり瞼を持ち上げて、首を伸ばして見回す。
よく知る岩場。
自分がくさっていた場所、自分が飛び出した場所。
茶色と灰色、緑色。
面白味のない地味な色合いの世界だけれど、
相変わらず、川にさらさら流れる水は綺麗なままだった。
数ヶ月じゃ、そんなに変わりはしないか。
あの二人は元気だろうか、自分が居なくなったからご飯は食べられたと思うけど。
のそ、のそ、とネーヨが歩く。
目指すのは、二人が住む岩場の洞穴。
場所は分かってる。
二人が元気なら、そこに居る筈だ。
- 728 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:20:14.35 ID:rvgtkGkVO
-
タカラとでぃの住み処である洞穴を見付けて、
のんびり近付き、覗き込もうとした
その瞬間。
( ´ー`)(゚-;;゚#)
でぃが、ひょこっと洞穴から顔を出した。
(;´ー`)「うお近っ」
(#゚;;-゚)「……ネーヨ?」
( ´ー`)「他にいんのかヨ?」
(#゚;;-゚)「…………ネーヨが……仲間、見つけてたら」
( ´ー`)「ないない」
(#゚;;-゚)「ない、の?」
( ´ー`)「ゼツメツキグシュに何言ってんだヨ」
_,
(#゚;;-゚)「なんて言って、出てったか……分かってる、?」
- 733 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:22:13.11 ID:rvgtkGkVO
-
(,,^Д^)「でぃさーん、どうしたんで」
( ´ー`)(^Д^,,)
(;,^Д^)「うわ近っ」
( ´ー`)「おいーす」
(,,^Д^)
(;,^Д^)「ネーヨ!?」
( ´ー`)「ネーヨ」
(;,^Д^)「いいいいつ帰って来たんですか!? 怪我はありませんか!?」
(;´ー`)「ネーヨ……今帰って来たんだヨ」
(;,^Д^)「ああ……良かった、心配してたんですよ……」
_,
(#゚;;-゚)「タカラは……かほご」
- 738 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:24:04.56 ID:rvgtkGkVO
-
タカラが嬉しそうにはしゃいで、ネーヨの首を撫でている。
そんなタカラを咎める様に、でぃがタカラの耳を引っ張る。
けれどでぃも嬉しそうに、にこ、と小さく微笑んだ。
ああ、優しいなあ。
なんて優しく出迎えてくれるんだろう。
ネーヨが少し戸惑った顔で、首を傾げる。
もう、良いのだろうか、家族と呼んでも。
自分にその資格はあるのだろうか。
それを感じたのか、タカラとでぃがネーヨの首にしがみついて、口を開く。
「おかえり、ネーヨ!」
すぐ近くに居た家族には気付いていた、
それを認める事が出来なかった過去は、もう遠いから。
- 742 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:26:05.90 ID:rvgtkGkVO
-
いつのまにか、景色が変わっていた。
最後に魔女の家が見えた筈の景色は、ゆらりと溶ける様にして消え
ふと気が付いた頃には、目の前に自分の小屋があった。
ああ戻ってきた、小さな我が家。
孤独でお手玉をする様な場所。
ニダーは疲れた様に、肩を落として息を吐いた。
帽子を脱いで、マントを歩きながら外す。
少し疲れたけど、幸せな毎日だった。
すごく有意義で、忘れられない日々だった。
そう思いながら、我が家のドアノブに手を伸ばして
足元に落ちている物に、気が付く。
- 745 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:28:03.96 ID:rvgtkGkVO
-
マントと帽子、猟銃を抱いたまましゃがみこむ。
これは何だろうと手を伸ばして、
落ちているものを拾おうとしたところで、体が硬直した。
白い、花びら。
ドアの前に一枚、ひらりと薄い花びらが落ちていて。
ニダーはばっと後ろを向いて、荷物を投げ捨てて池へと駆け寄る。
池の真ん中に白と紫の花が、ぽつんとまるっこい花がそこにある筈。
ある筈、なのに。
どうして、花が、存在しない?
<;ヽ Д >「ぇ……え、?」
- 746 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:30:04.61 ID:rvgtkGkVO
-
<;ヽ Д >
どうして、どうして?
枯れてしまったのか?
いやそれはない筈だ、何年もあの花はそこに存在し続けていた。
どうしてどうしてと頭を抱えるニダーが、ふらふらと池に背を向ける。
なぜ、どうしてこうも悲しくなる、胸が苦しくなる。
きゅうと胸を押さえ、頭を横に振ったその時、
視界の端に、白が写り込んだ。
<;ヽ Д >「……あ、れ?」
森へと続く獣道。
そこにてんてんと、白が落ちている。
まるで雀を誘い込む罠の様に、てんてんと。
- 753 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:32:07.00 ID:rvgtkGkVO
-
罠だとか何だとか、考える余裕は無かった。
気が付けばニダーは、道しるべの様に落ちる花びらを辿り、走っていた。
意味は分からない、わけも分からない。
けれどこの先を、花びらの先にあるものを見なければいけない気がして。
呼吸が乱れる、汗が流れる。
あの時と同じ様に、何度も転びかけながらひたすら走った。
自分が走っている道が通いなれた道だと気付いたのは
世界が、白に埋め尽くされた時。
ニダーの足が止まる。
溢れんばかりの白、咲き誇る白い花。
毎日欠かさずに花を供えていた場所。
のーちゃんのお墓は、白い花に埋もれるようにして存在していた。
そこに、紫の後ろ姿を乗せて。
- 759 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:34:04.44 ID:rvgtkGkVO
-
小さく粗末なお墓に腰掛け、ニダーに背中を向けている。
真っ白の世界、木にも地面にも白い花が咲き乱れる中
その紫色の後ろ姿は、ととも映えていて。
ニダーが震えながら、口を開く。
歯の根が合わない、身体中が震える。
けれど、必死に、声を絞り出して。
_,
<ヽ;Д;>「のー……ちゃ、ん……?」
涙まじりの声に、
紫の背中が、ゆっくりと後ろを振り返り。
(*^A^)「おかえり、ニダやん」
孤独と引き換えに与えられたのは唯一の奇跡
やっと触れられるその手は、涙が出るほどに温かかった。
- 773 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:36:11.21 ID:rvgtkGkVO
-
てっこらてっこら、ノーネが赤くなった目元を擦りながら歩いていた。
少し場所がずれたのか、ノーネが送られた場所は村の近く。
まあ良いか、と涙を出しきってから立ち上がり、歩き出したのだった。
約束、破ってしまった。
がくりと項垂れて、自分の手を見る。
小さいけど、意外と傷だらけの手。
この手で、旅で、何を掴めただろう。
そんな事をぼんやり考えていると、村に辿り着いた。
二つ目の故郷。
血の繋がった人は居ないが、限りなく家族に近い人が居る場所。
なんとなく正面からは入りづらくて、うろうろしてから、こっそり村を覗いた。
相変わらず、よく知る村人たちがこまごま動いている。
- 775 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:38:34.51 ID:rvgtkGkVO
-
どうしよう、別にもういじめられるとか嫌われるとかどうでも良いが
まだここに居場所があるのか分からなくて、入りづらい。
少し、怖い。
ノーネが村に入ろうかどうするかを悩んでいると、その姿を村人が見つけた。
(*゚ー゚)「あ……」
(;ノAヽ)「あ゙」
(*゚−゚)「……ノーネ?」
やべぇ見つかった。
こっちに気付いたピンクの森の人が、目を丸くしてノーネを見る。
それを見た他の森の人も、ノーネへと視線を向けた。
どうする、逃げるか?
いや、逃げちゃ意味ないだろアホか。
頭の中でぐるんぐるんと回る自問自答。
ノーネが戸惑っている内に、村人たちが側までやって来た。
- 779 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:40:04.19 ID:rvgtkGkVO
-
(,,゚Д゚)「ノーネ……だよ、な?」
(;ノAヽ)「あ……あうあう」
(,,゚Д゚)「セフセフ。うらぁっ!!」
(; A )「のぎゃっ!?」
青い森の人がノーネに声をかけて
ぶん殴った。
突然頬へと叩きつけられた手のひらに、
ノーネが声を上げて尻餅をつく。
一瞬、恐怖に身を縮めて頬を押さえるが
続いてやって来たのは、ノーネを抱き締める腕だった。
(; A )「ノ、ネ……?」
(* − )「どこ、行ってたの……」
(;ノAヽ)「ぇ……」
- 782 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:42:06.31 ID:rvgtkGkVO
-
(*;−;)「っいきなり居なくなったら心配するでしょっ!? どこ行ってたのよっ!?」
(;ノAヽ)「え、ぇ、ぇぅ?」
(,つД;)「オマエはアホかゴルァッ! いきなり消えてんじゃねぇよ!!」
(;ノAヽ)「ぇ、ぇぇぇ?」
(*;−;)「っ……ごめ、ね……ノーネ」
(;ノAヽ)!
(;・∀・)「ノーネ帰ってきたのかっ!?」
(;´_ゝ`)「生きてるのかっ!?」
(´<_`;)「し……心配させるなよ……」
(;ノAヽ)「ぅえ……?」
座り込んだノーネに駆け寄り、
村人たちがその頭を叩いたり小突いたりしながら声をかける。
ノーネは目を白黒させて、何が起きたか分からずに居た。
- 789 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:44:03.55 ID:rvgtkGkVO
-
( `ー´)「お、ノーネじゃネーノ?」
(;ノAヽ)「ね……ネーノ……」
( `ー´)「アホだろそいつら、ノーネが居なくなって凄い混乱してたんだぜ」
(;ノAヽ)「んぇ……?」
桶を片手に家から出てきた幼馴染みが、てこてこノーネに近付いて言った。
ノーネにしがみついて泣きじゃくる村人たちの頭を、桶の底で叩いて笑う。
バカだろ、いじめてた癖にとけらけら笑って、ノーネの頭を撫でる。
村の奥では、村長宅から村長夫妻が出てきて嬉しそうな顔をしている。
その腕には、赤子を抱いて。
( ノAヽ)「……」
居場所は、ここ、だったんだ。
ずっと、ずっと。
- 796 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:46:18.87 ID:rvgtkGkVO
-
口々にごめんを紡ぎだし、泣きじゃくりながらノーネにくっつく村人たち。
それを見て、ノーネが少しだけ笑った。
( ノAヽ)「……ごめんなノーネ、黙って出てって」
( `ー´)「おー、すなおすなお」
( ノAヽ)「うっせバカ、つーか誰にも言わんかったんかい」
( `ー´)「いろいろ思い知らせてやろうと思いまして」
|゚ノ ^∀^)「ノーネ君っ! お帰りなさいっ!」
( ノAヽ)「何でいてんねん」
( ´∀`)「モナの嫁だから」
( ノAヽ)「ぅゎぁ……バカ夫婦ナリぃ……」
|゚ノ ^∀^)「あら、ノーネ君もそのバカ夫婦の息子よ?」
( ノAヽ)「現実はきびしーノーネ……」
|゚ノ ^∀^)「あ、ひどーい!」
- 802 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:48:21.61 ID:rvgtkGkVO
-
( ノAヽ)「……それ」
( ´∀`)「赤ちゃんモナ?」
( ノAヽ)「オマエ、産めないんじゃ……」
|゚ノ ^∀^)「うん、この子は事故で家族をなくした子。産めなくても、子供は出来るわ」
( ´∀`)「引き取って、育て上げるって決めたモナ」
( ノAヽ)「うわお人好し」
( `ー´)「いじめんじゃネーヨ? かわいい妹なんだから」
( ノAヽ)「このシスコンめ」
( `ー´)「オマエもなるわ」
( ノAヽ)「だろうなノーネ」
( `ー´)
( ノAヽ)
- 809 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:50:23.63 ID:rvgtkGkVO
-
にっと笑い合って、お互いの顔面にクロスカウンターでビンタを食らわせる。
それでも笑って、笑いながら取っ組み合いのケンカを始めた。
誰かと喧嘩して、罵り合って笑い合える。
その方法を教えてくれたのは、ミセリ。
意地をはって逃げ出して、ある筈の居場所を求めた。
その場所を認識できる様になったのも、ミセリのお陰。
ありがとう、心の中で囁いた。
もう会えない親友に。
( #)ー´)「うらっ! ぅおかえりノーネぇっ!!」
幼馴染みの兄弟から、拳と一緒に叩き付けられた優しい言葉。
居場所は最初からここにあった、
みんなみんな温かい、その温かさに気付けた。
許さないじゃない、許すじゃない、手を取って心から、
- 812 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:52:14.41 ID:rvgtkGkVO
-
森の中。
明るかった朝の森ではなく、暗くて背の高い木々が並ぶ森。
足元を見ても変な形のキノコや植物はなく、ごくごく普通の雑草が生い茂るだけ。
ここは、森だけど森じゃない。
道の先にある明かりを見つけて、ミセリが歩き出す。
足の裏から伝わる土や草の感触も、全然違った。
戻って来たんだ。
元の世界に、本当の居場所に。
居なくなってどれだけ経ったんだろう。
もうお葬式も済んでたりしてね。
くすりとミセリが笑って、自分の手を見下ろした。
- 819 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:54:03.82 ID:rvgtkGkVO
-
抱き止められなかったノーネの涙。
あいつ約束破りやがって。
くすくすと、胸に広がる寂しさを飲み込んで笑う。
ふぅ、と小さく息を吐いた時。
森から抜け出して、足が舗装された道につく。
目の前には、明かりの灯った家が並んでいる。
どこも賑やかで、家族の笑い声なんかが聞こえてきた。
わたしの家はどっちだっけな。
ミセリがきょろきょろと首を巡らせ、暗い町の中を見回す。
すると、後ろから男の声がかけられた。
(´・_ゝ・`)「君、こんなところでどうしたんだい?」
ミセ*%ー゚)リ「ん?」
(´・_ゝ・`)「もう遅いから早く帰らなきゃいけないよ」
ミセ*%ー゚)リ「あ、はーい」
- 827 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:56:06.95 ID:rvgtkGkVO
-
後ろを振り返って声の主を見上げると、そこには制服を来た長身の男が立っていた。
街灯の明かりに照らされて、男の制服が青い事を知る。
どうやらその男は警察らしく、
箱のついた自転車を押しながら、ミセリの前にやって来た。
がしゃんと自転車を止めると、しゃがみこんでミセリの顔を覗き込む。
目の大きい人だなぁとぼんやり思うミセリの頭を撫で、優しげに微笑んだ。
(´・_ゝ・`)「お家まで送るよ、お名前は?」
ミセ*%ー゚)リ「あ、ありがとうございます」
(´・_ゝ・`)「駄目だよこんな時間に外に出ちゃ、何歳だい?」
ミセ*%ー゚)リ「芹澤ミセリ、小三の9歳です」
(´・_ゝ・`)「うんうん、ミセリちゃ…………え?」
ミセ*%ー゚)リ「ん?」
- 833 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 00:58:05.46 ID:rvgtkGkVO
-
パトロール中らしかった警官が、ミセリの言葉に驚いて目を見開く。
どうしたんだろうとミセリが首を傾げると、
警官はあわてふためき、ミセリを片腕で抱き上げて無線連絡を始めた。
(;´・_ゝ・`)「あ、盛岡です……いえ、あの、行方不明中の女の子を……」
警官の肩にしがみつきながら、ミセリはぼんやりと空を見上げた。
ぽっかり浮かぶ満月。
頭の中に浮かぶ顔。
仲間たちを思い出すと同時に、自分の置かれた状況にやっと気付いた。
ミセ*%ー゚)リ(あー……わたし、しっそーしたじどーってやつか……)
(;´・_ゝ・`)「いえ、人違いではなく……はい、はい、本人が……」
ミセ*%ー゚)リ(別に捕まえとかなくても逃げないのになー……)
(;´・_ゝ・`)「はい、顔や身長も、写真と一致してます……はい」
ミセ*%ー゚)リ(こーむいんさんはたいへんだー……)
- 843 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:00:06.32 ID:rvgtkGkVO
-
ミセ*%ー゚)リ(んー……)
(;´・_ゝ・`)「はい、はい……身長は130少しに、オレンジのカチューシャ……」
ミセ*%ー゚)リ(森のこと言っても、誰も信じないよなー)
(;´・_ゝ・`)「ええと、白いブラウスに赤のつりスカート……はい、」
ミセ*%ー゚)リ(つか頭がおかしい扱いされるよな……むう)
(;´・_ゝ・`)「靴も……はい、赤いです、ポイントの入った靴下……」
ミセ*%ー゚)リ(しゃーない、もーしわけないけど色々としらばっくれよう)
(;´・_ゝ・`)「はい……あ、い、いえ……胸のリボンだけありません、はい」
ミセ*%ー゚)リ(何にも覚えてませんでつらぬいてー……マントとかは帰ったら隠そ)
(;´・_ゝ・`)「はい、はい分かりました、はい、ご両親をお待ちします、はい」
ミセ*%ー゚)リ(あんたも大変だな、盛岡巡査)
- 849 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:02:03.23 ID:rvgtkGkVO
-
(;´・_ゝ・`)「ふぅ…………えっと、ミセリちゃん?」
ミセ*%ー゚)リ「はい?」
(;´・_ゝ・`)「怪我なんかは無……物凄いあるっ!?」
ミセ*%ー゚)リ「ん? ……あー、そっすね」
(;´・_ゝ・`)「い、いやそっすねって軽く言わないで! うわ、酷いな……」
ミセ*%ー゚)リ「んー? でも痛くないよ」
(;´・_ゝ・`)「いや、痛い痛くないの問題……もあるけど、女の子なんだから……」
ミセ*%ー゚)リ「ふぇー」
(;´・_ゝ・`)「傷は塞がってるけど……酷い傷だ……
だ、誰にされたんだい? ……って聞いても良いのかなこれ……」
ミセ*%ー゚)リ「わかんね」
(;´・_ゝ・`)「軽っ!!」
- 855 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:04:03.79 ID:rvgtkGkVO
-
ミセ*%ー゚)リ「おかーさん、元気?」
(;´・_ゝ・`)「え? あ、あぁ……ずいぶん参ってるとは聞いたけど……」
ミセ*%−゚)リ「…………そっか……」
(;´・_ゝ・`)「あ、ご、ごめん! 元気だよ、大丈夫だからっ!」
ミセ*%ー゚)リ(あんた面白いな、盛岡巡査)
(;´・_ゝ・`)「下手な事を聞いたら……トラウマがあったら……ああああ……」
ミセ*%ー゚)リ(しんけー細いなー、からかい甲斐あるわー)
(;´・_ゝ・`)「え、ええと……み、ミセリちゃんは帰ったら何をしたい?」
ミセ*%ー゚)リ「んー……お風呂はいりたい、ぺたぺたする」
(;´・_ゝ・`)「そ、そっか、さっぱりすると気持ち良いしねっ」
ミセ*%ー゚)リ(あんた子供の扱い下手だな、盛岡巡査)
- 859 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:06:09.28 ID:rvgtkGkVO
- ミセ*%ー゚)リ(んーんーんー……んっ)
ミセ*%ー゚)リ「盛岡巡査」
(;´・_ゝ・`)「はいっ!?」
ミセ*%ー゚)リ「あ、まちがえた。お巡りさん」
(;´・_ゝ・`)(今なんかすごい流暢に盛岡巡査って聞こえた様な……
つか良く見たら服装なんか凄い……)
ミセ*%ー゚)リ「お巡りさんはいくつー?」
(;´・_ゝ・`)「に、29歳……です」
ミセ*%ー゚)リ「あははっ、ハンザイな歳だー」
(;´・_ゝ・`)「これただの保護だからね!? 別に変な趣味ないからね!?」
ミセ*%ー゚)リ「ムキになると怪しく見られるぜ?」
(;´・_ゝ・`)「何この子すごい怖いっ!!」
- 870 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:08:03.71 ID:rvgtkGkVO
-
ミセ*%ー゚)リ「ま、それはさておき独身巡査」
(;´・_ゝ・`)「何で独身ってバレてるんだ……な、何だい?」
ミセ*%ー゚)リ「おかーさん……まだ、?」
(;´・_ゝ・`)「あ……大丈夫、お家が少し遠いから時間がかかってるだけだよ」
ミセ*%−゚)リ「んー……」
(´・_ゝ・`)「……大丈夫だよ、もう怖い事は無いから」
ミセ*%−゚)リ「うん……」
(´・_ゝ・`)(大人びてはいるけど、子供だからな……怖かったんだろうな)
ミセ*%−゚)リ(やべー……おかーさんにバカって言ったからぶっとばされそう……)
塀にもたれる警官に抱っこされたまま、ミセリがその肩に顔を埋める。
警官の思いとは全く違う方向に恐怖を抱くミセリは、静かに溜め息をついた。
良い人に見つけられたわー、面白いし。
そんな事を考えながら空を見上げていると、後ろから車の音が聞こえた。
- 875 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:10:13.30 ID:rvgtkGkVO
-
エンジンの音、急ブレーキの音、がちゃと開けたドアを乱暴に閉める音。
そして、ばたばたとこちらへ駆けてくる足音の後に。
('、`;川「ミセリッ!!」
ミセ*%−゚)リ「っ!」
('、`;川「ミセリ、ミセリっ! ミセリなのっ!?」
ミセ*%−゚)リ「あ……おかーさん……」
('、`;川「ミセリ……ッ!!」
(´・_ゝ・`)「大丈夫ですよお母さん、
怪我はしているみたいですが、元気な様です」
('、`;川「あ……あぁっ……ありがとうございます、ありがとうございますッ!!」
(´・_ゝ・`)「いえ、自分は保護しただけですので」
ミセ*%ー゚)リ(盛岡巡査、ちょっと格好良いじゃないか)
- 881 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:12:07.38 ID:rvgtkGkVO
-
警官に下ろされて、ミセリが母親と向き合う。
母はずいぶんと痩せていて、疲れきった様な顔をしていた。
泣いた後が残る頬や目元に、ミセリは胸が苦しくなるのを感じた。
そっと、母の手がミセリの髪や頬を撫でる。
そしてぎゅうと、小さな体をその胸に抱いた。
,,_
(;д;*川「ごめんねミセリっ……ごめんね……ッ!!」
ミセ*%−゚)リ「おかーさん……」
,,_
(;Д;*川「お母さんがあんな事言ったから……っ!
こんな、こんなに傷だらけになってっ!!」
ミセ*%−゚)リ「……泣かないで、おかーさん……」
泣きながら何度も何度も謝る母の顔を見上げて、ミセリは困った顔をする。
それと同時に、
似てないと思ったけど、わたしはモロおかーさん似なんだな、と笑った。
- 889 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:14:09.52 ID:rvgtkGkVO
-
泣きじゃくる母にしがみついて、ミセリはそっと目を閉じる。
久しぶりに感じた母の温もりは、たまらなく心地よかった。
ミセ*%−゚)リ「……ねぇ、お母さん」
,,_
(;д;*川「な、に……?」
ミセ*%−゚)リ「ミセリ、悪い子だけど……良いの?
ミセリ……お母さんの子で、良いの……?」
,,_
(;Д;*川「そんなの関係ないでしょっ!? ミセリは、私の子供なんだからッ!!」
ミセ*%ー゚)リ「ぁ……お母さん……」
,_
(;、;*川「…………ミセリ……おかえり、なさい……っ!!」
良い子も悪い子も関係なく抱き締めるその腕は、少し苦しくて温かい
ああ、わたしは良い子になりたがってたのかな
それに気付けたのなら、すべてを受け止められるなら、口にするのはただ一つ
- 893 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:16:09.24 ID:rvgtkGkVO
-
みんなと一緒に、同じ気持ちでこう言おう。
自分を迎えてくれた、たまらなく大好きな人たちへ。
泣きながら、それでも笑って。
「ただいま」
- 903 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:18:21.63 ID:rvgtkGkVO
-
季節は、少し肌寒くなり始めた秋。
長袖の上着を着る子供たちが賑やかに登校する、小学校。
緑の髪を茶色に染めて、ミセリは校舎を見上げていた。
ミセリが森に迷い込んで、半年が経っていた。
肌寒い春に居なくなったミセリを待っていたのは、残暑厳しい秋の始まり。
そんなに森に居たのかと驚いたが、すぐにまあいっかと適当に笑った。
あの夜、母の手により半年ぶりに自宅に戻ったミセリは
お腹が空いたでしょと母が食事を作り始めると、慌て自室に飛び込んだ。
そして大慌てで自分が着ていたマントや服、眼帯
ナイフやら何やらをごそごそ外して、埃の積もった空の段ボール箱に叩き込む。
ガムテープで封をしたら、クローゼットの一番奥に押し込んで肩を落とす。
- 914 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:20:28.02 ID:rvgtkGkVO
-
母はまだ混乱しているのか、ミセリの格好に突っ込みはしなかった。
だが家の中であれを見られたら、さすがに突っ込まれるだろう。
傷や髪はどうしようもないが、ナイフを持っているのを気付かれれば危ない。
どうせ事実を話しても、誰も信じやしない。
なら、森の事は誰にも言わない。
誰かに話しても馬鹿にされたらと思うと、そんな事は出来やしない。
はー、と疲れた息を吐いてパジャマとタオルを取り出し、部屋から出る。
とんとん下着姿で階段を降りると、台所から良い匂いが漂っていた。
一言、先にお風呂に入るねとミセリが告げると
台所からは嬉しそうな母の返事。
これが我が家が一番ってやつかな、と
いくら洗っても洗っても綺麗にならない頭や体を洗いながら、ミセリは笑う。
半年間、軽い水浴びしかしてなかったため
身体中についた汚れは、そう簡単には落ちてはくれなかった。
- 917 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:22:20.78 ID:rvgtkGkVO
-
それからは大変だった。
警察は来るわマスコミは来るわ医者は来るわ。
テレビや新聞には、でかでかと半年間も行方不明だった少女が発見される
と言った具合の事ばかりが書かれ、変態に拐われただのと言う嘘が飛び交っていた。
ミセリとしては非常にどうでも良く、しょうがないと思いつつも
ゆっくり休みたいのを邪魔されて、非常に不機嫌な日が続いた。
交番の巡査がちょくちょく様子を見に来るので
彼でそのストレスを発散していたが、落ち着かない日々が暫く続くのに変わりはなく。
ミセリが再び学校へ行ける様になったのは、更に一ヶ月後だった。
_,,
ミセ#HД-)リ「デリカシーとかさぁ……ないのかなぁ……」
('、`*川「ま、無理も無いでしょ」
_,,
ミセ#HД-)リ「くたくたの女の子おっかけまわすとかさー……ねー……」
('、`*川「常識が無いのはマスコミの基本だと思ってたわ、お母さん」
_,,
ミセ#HД-)リ「わーしんらつー」
- 922 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:24:10.15 ID:rvgtkGkVO
-
('、`*川「……ね、ミセリ?」
_,,
ミセ#H−゚)リ「んー?」
('、`*川「何も、覚えてないのね?」
_,,
ミセ;H−゚)リ「……それ何回め?」
('、`*川「だって、目玉ひっこぬかれて腕切られて身体中ぼろぼろで?
何故か髪の地色が緑になってて? どぉ言う事ですか?」
_,,
ミセ;H−゚)リ「…………し、知らんてば……」
('、`*川「ミセリ」
_,,
ミセ;H−゚)リ「あい」
('、`*川「お母さんはあんたには怒りません、あんたの言う事を信じたいの
だからミセリ、教えて? もしかして、犯人を庇ってるの?」
_,,
ミセ;H−゚)リ(いや、まずその犯人が居ないよ……腕切ったのとか死んだし……)
- 924 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:26:04.25 ID:rvgtkGkVO
-
('、`*川「……お母さんは、我が子がこんなぼろぼろなの……辛いのよ……」
_,,
ミセ;H−゚)リ「ぅ……」
('、`*川「…………教えて?」
_,,
ミセ;H−゚)リ
_,,
ミセ;H−゚)リ「おかーさん、ミセリが不思議の国いったとか……信じる?」
('、`*川
_,,
ミセ;H−゚)リ「そこで仲間と旅して戦ってましたーとか、信じる?」
('、`*川
_,,
ミセ;H−゚)リ「んで魔女に会って仲間と感動的な別れを告げて戻ってきたとか、信じる?」
('、`*川「ゲームやり過ぎじゃね?」
_,,
ミセ#H−゚)リ(だから言わんのじゃあああああああああ!!!!)
- 926 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:28:08.25 ID:rvgtkGkVO
-
そりゃ信じられませんよね、と事実を告げる事を完全に諦めて
取り敢えずと母に髪を染められ、ミセリは学校の前に立っていた。
二番目にお気に入りの赤いカチューシャで前髪を上げて、
目には白い眼帯を着け、赤のランドセルを背負っている。
他の生徒はほとんど教室に入ってしまい、周りには誰もいない。
どうしようと悩むのも面倒になり、ミセリが紺のスカートを翻す。
すたすたと三年の教室がある校舎に入ろうとした瞬間、
校舎の奥から何かが走ってくるのに気付いた。
落ちた視力に眉を寄せて、それが何かを見極める。
すると、それは
(;´・ω・`)「芹澤さんっ!!?」
ミセ*Hー゚)リ「あ、ショボンくん、おいっす」
(;´・ω・`)「お、おいっす……や、そんな普通にかえされても……」
- 931 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:30:09.96 ID:rvgtkGkVO
-
(;´・ω・`)「そっ……それよりっ!」
ミセ*Hー゚)リ?
(;´・ω・`)「……ごめんなさいっ! 僕、芹澤さんにたすけてもらったのにっ!」
ミセ*Hー゚)リ「あー」
(´;ω・`)「僕……芹澤さん、いじめて……それでっ……」
ミセ*Hー゚)リ「ショボンくん……」
(´ぅω;`)「ほんと、に……ごめんなさい…………ごめん、芹澤さん……」
ミセ*Hー゚)リ「良いよそんなの、ミセリも悪かったんだし」
(´;ω;`)「ぇ……」
ミセ*Hー゚)リ「無理に良い子になろうとしてたんだ、ミセリ
だからショボンくんを助けたつもりになって、ちょーし乗ってた」
(´;ω;`)「そんなっ、こと!」
ミセ*Hー゚)リ「良いの、ホントだから。……これから、ちゃんとした良い子になりたいね」
(´ぅω;`)「…………うんっ」
- 933 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:32:28.58 ID:rvgtkGkVO
-
ミセ*Hー^)リ「……仲直りっ」
(´・ω・`)「……うんっ」
ミセ*Hー゚)リ「これで、本当の友達ね?」
(´・ω・`)「うんっ、よろし」
「あ、」
ミセ*Hー゚)リ「ん?」
_
( ゚∀゚)「……」
(´・ω・`)「長岡、くん……」
_
( ゚∀゚)「……」
ミセ*Hー゚)リ「……よ、眉毛」
_
( ゚∀゚)「ん……んだよ、戻ってきたのかよ? 別に帰って来なくても良かったのに」
(;´・ω・`)「長岡くんっ!?」
- 938 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:34:13.08 ID:rvgtkGkVO
-
ミセ*Hー゚)リ「……」
_
(;゚∀゚)「……んだよ、何」
ミセ*Hー^)リ ニコッ
_
(;゚∀゚)「ぇ……」
ショボンと指切りをしていると現れた、いじめっこだった少年、長岡。
ミセリの姿に戸惑ったのか、顔をそらして悪態をつく長岡に
にこりとミセリは笑いかけて、その顔面に拳を叩き込んだ。
めきりと鈍い音をさせて、長岡が僅かに吹っ飛び倒れ込む。
右の頬に突然訪れた痛みに、目を白黒させながらミセリを見上げて叫んだ。
_,
(;#)∀゚)「おま、ちょ、い、良い子になるんじゃないのかよ!?」
ミセ*Hヮ^)リ「えー? ミセリ良い子のてーぎがわかんなーい」
_,
(;#)∀゚)「取り敢えず良い子はいきなりぶん殴ってきたりしねぇよ!!」
ミセ*Hヮ^)リ「えー、でも良い子イコール怒らないじゃないでしょー?」
- 944 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:36:19.07 ID:rvgtkGkVO
- _,
(;#)∀゚)「あと何だよ今の! めちゃくちゃ重かったぞそのパンチ!!」
_,,
ミセ*Hー゚)リ「ミセリだってね、だてに修羅場くぐってきてないのよ」
_,
(;#)∀゚)「は!?」
_,
ミセ*Hー゚)リ「うだうだ言うよりかかって来いよ、ヘタレ眉毛」
_,
(;#)∀゚)「今この場は眉毛だらけって分かってねぇだろ!!」
(;´・ω・`)ビクッ
_,
ミセ*Hー゚)リ「……女の子にケンカ売られて、買えないくらい腰抜けさん?」
_,
(#)∀ )" ビキッ
_,
ミセ*Hー゚)リ「タイマンはれないよーな奴が、誰かの上に立てるとでも?」
_,,
(#)∀ )" ビキビキッ
_,
ミセ*Hー゚)リ「……ママに抱きついて、ミセリちゃんがいじめるぅーとでも泣く?」
_,,
(#゚∀゚)「かかってこいやコラアアアアアアアアアアッ!!!!」
_,
ミセ*Hー゚)リ「それはこっちのセリフよ、ぶぁぁぁぁぁぁかっ!!!!」
(;´・ω・`)「ちょ、ま、せ、せんせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
- 963 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:40:20.98 ID:rvgtkGkVO
-
言葉で語るのはめんどくさかった。
それに、変に身構えてる状態では、何を言っても良くは受け取りづらい。
だからミセリはわざわざ長岡を挑発して、喧嘩へと持って来る。
手っ取り早くお互いを理解する為には、
喧嘩して仲直りするのが一番だと、ミセリは知っていた。
ノーネと仲良くなったのは、喧嘩したから。
みんなと仲良くなったのは、一緒に戦ったから。
ここではあんな戦いなんて、そうあるもんじゃない。
だったら、そう、
拳と拳で、語り合おう。
マントを脱ぐみたいにランドセルを投げ捨てて
ナイフを振り上げるみたいに拳を振るった。
長岡も手加減無しで、それに応え様と拳を振るう。
結果は、ミセリの圧勝だったが。
- 974 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:42:07.94 ID:rvgtkGkVO
-
_,,
(メ#)∀メ)「げほっ、ぇほっ……い、ってぇ……」
_,,
ミセ#)T゚)リ「痛いのがあんただけだと思わないでくれる?
ミセリだってちょっと食らったんだから」
_,,
(メ#)∀メ)「何だよお前……マジつえーし……バカじゃねーの……」
_,,
ミセ#)T゚)リ「そのバカと殴りあったあんたはどんだけバカなの?」
_,
(メ#)∀メ)「…………すごいバカだと思う」
_,,
ミセ#)T゚)リ
ミセ#)ー^)リ「じゃ、お互いただのバカだね」
_
(メ#)∀゚)「……おう」
ミセ#)ー^)リ「保健室、いこっか?」
_
(メ#)∀゚)「おう」
- 987 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:44:06.66 ID:rvgtkGkVO
- _
(メ#)∀゚)「つーかよぉ」
ミセ#)ー゚)リ「ん?」
_
(メ#)∀゚)「何でお前そんなに強いわけ?」
ミセ#)ー゚)リ「いや、弱いけど」
_,
(メ#)∀゚)「マジふざけんな」
(;´・ω・`)「あ、芹澤さん! 長岡くんっ!」
_
(メ#)∀゚)「よぉ、お前もやるか?」
(;´・ω・`)「や、僕は素直に仲直りできたから」
_,
(メ#)∀゚)「悪かったな、見つめあうと素直におしゃべり出来なくて」
_,
ミセ#)3゚)リ、「べっ……うわ、口の中きれてる」
(;´・ω・`)「それより、二人とも大丈夫?」
- 25 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:50:05.67 ID:rvgtkGkVO
- _
(メ#)∀゚)「余裕」
ミセ#)ー゚)リ「しゃくしゃく」
(;´・ω・`)「えー……」
_
(メ#)∀゚)「にしても芹澤」
ミセ#)ー゚)リ「ん?」
_,
(メ#)∀゚)「乳ねーなぁ……」
_,,
ミセ#)ヮ )リ「らくにしねるとおもうなよ」
(;´・ω・`)「何してるの……」
三人がきゃいきゃいと、授業中と言う事も忘れて賑やかに話している。
それは、何となくみんなと過ごした森での生活を、ふっと思い出させた。
- 36 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:52:08.56 ID:rvgtkGkVO
-
ああ、これが友達なのかな。
腫れた頬っぺたを撫でながら、心の隅っこで呟く。
本当に、色んな事を教えられた。
もう忘れたりしない様に、この身に刻み付けよう。
長岡がミセリの隣でたんこぶの出来た頭を撫で、
その反対側ではショボンが心配そうな顔をして、何かに気付いた様に顔を上げた。
どうしたのかとミセリと長岡も顔を上げると
そこには、気まずそうな顔をしたクラスメイト達の姿。
ミセリ達を遠巻きに見つめて、謝ろうと口を開くが言葉が出てこない。
困った顔でもじもじしているクラスメイトを見て、ミセリがにっと笑った。
ミセ*#)ワ^)リ「お前らみんなかかってこーいっ!! ミセリをダウンさせてみろーっ!!」
拳を突き上げて叫んだミセリに、みんなが駆け寄って来る。
長岡とショボンは驚いて目を見開くが、すぐに笑顔に変わった。
- 45 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:54:03.54 ID:rvgtkGkVO
-
一クラス分の生徒が寄ってかかって来たところで、
それなりの場数を踏んできたミセリにとっては、遊びでしかない。
自分を狙って振り上げ、突き出す拳。
それを軽くかわして、ミセリは楽しげに笑った。
一応は乱闘だった筈のそれは、いつの間にかただのじゃれ合いに変わる。
ミセリの笑顔につられて、みんなが笑った。
みんなでけらけらと、楽しそうに笑い転げる。
転んで膝を擦りむいても、足を打ってアザが出来ても
担任の先生にこっぴどく叱られて、全員で正座する事になっても
不思議と、みんな笑っていられた。
教室の窓から、正座をしながら空を見上げた。
空は青くて雲は白い、それは見辛いけれど、森でも見れる光景。
会えたら、きっと甘えちゃう。
だから、これで良かったんだ。
甘えちゃったら、なんか、恥ずかしいから。
- 61 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:56:03.79 ID:rvgtkGkVO
-
本当はちょっと考えを変えるだけで、全てが変わっていた。
けれど彼らは皆子供で、それが出来なくて
その所為で人を傷付け、自分を傷付けてしまった。
そんな彼らが出会ったのは、自分に似ていて自分と違う仲間達。
傷付けあって泣いて笑って苦しんで。
それでも出会った仲間達との触れ合いは、彼らを確かに変えていった。
それが良い方向に向かうか、悪い方向に向かうか
どちらかへ続く道を選ぶのは、彼ら。
もう間違った道を選ばずに済む様にと成長を遂げた彼ら。
- 72 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 01:58:09.01 ID:rvgtkGkVO
-
楽しくて悲しくて幸せだった森の中。
緑色の世界は少し湿っぽくて、草木と土の匂いが溢れている。
その節々からまろびでる奇妙なモノ
不思議な形の植物、奇妙な色のキノコ、異様な雰囲気を放つ木の実。
奇妙で不思議で異様でも、そこに住まう生き物達は、幸せを片手に生きている。
ぬいぐるみみたいな見た目、大きいの、小さいの、不思議で溢れる森の人。
人間と変わらない心を持つ、森の人。
今日も誰かが悲しむし、明日は誰かが喜ぶ。
童話的で現実的な森の中、普通なモノは一つもない。
そう、ここは変な森。
普通も常識も通用しない、人をも変にさせる変な森。
誰かと誰かが触れ合って、不思議を抱いて歩く場所
とても温かくて冷たくて、幸せで恐ろしいその場所は
それは 変な森のようです。
『ミセ*゚ー゚)リ変な森のようです』 おわり。
- 88 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:00:02.61 ID:rvgtkGkVO
-
目覚まし時計が鳴っている。
半分寝たままそれに気付き、ベッドから腕を出して、時計を叩いて止めた。
今日は古典の小テストかー……やだなー……。
布団の中でもそもそと動いてから、渋々這い出て伸びをする。
あーっと欠伸をしながら背筋を目一杯伸ばして、
寝癖のついた髪の毛をぐしゃぐしゃにして立ち上がった。
_,
イル*--)リ「んあー……あーっ…………あぁぁぁー……ねむー……」
ミセリが目を閉じたまま、パジャマのボタンを外す。
前の開いた上を脱ぐと、ぽいとそれをベッドに投げた。
続けてズボンを下ろすと、緑のチェック模様があらわになる。
- 113 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:02:04.58 ID:rvgtkGkVO
-
目を擦りつつ、枕元に置いてあった下着を取って、身に付ける。
必要があるとは到底思えない平らな上半身が、下とお揃いの下着に包まれた。
そして壁にかかる、やっと着なれたブレザーを下ろして袖を通す。
と、まだ寝ぼけるミセリの視界に、赤い光が届いた。
_,
イル*-−゚)リ「んー……? ……何これ……何か光ってる?」
羽織った白いブラウスに赤いタイを引っ掛けると、
目を擦りながら、クローゼットの中を覗き込んだ。
クローゼットの一番奥で、段ボール箱のはしっこが赤く光っていた。
何かの電源を切り忘れたのかな、と半裸の状態でその箱を引きずり出す。
古くてぼろぼろになった箱に首を傾げつつ、
箱の蓋を閉じるガムテープをひっぺがして、ぱこんと開けてみた。
その瞬間、ぶわりと広がる緑の匂い。
- 131 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:04:08.91 ID:rvgtkGkVO
-
イル* −゚)リ「あ……これ……」
箱の中には、マントやらナイフやら
ぼろぼろになった服などが乱雑に詰め込まれていた。
イル* ー゚)リ「懐かしい……もう…………七年前、か」
9歳だったあの頃から、季節が七回ぐるりと巡った。
高校に入学して、もう一年近くになる。
16歳になったミセリは、身長こそ伸びはしたが、他に大きな変化は見られない。
それでも、七年の歳月が過ぎれば内面的な変化は多少あるもの。
あれからミセリはいじめられる事もなくなったが、
奇異の目で見られる事は変わらなかった。
存在しない右目も、身体中の傷もそのまま。
染める事を止めた髪は、相変わらず鮮やかな緑。
- 144 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:06:03.93 ID:rvgtkGkVO
-
けれどミセリはその姿を嫌だと思う事は、一度も無かった。
人から腫れ物扱いをされるのは少し慣れないが、しょうがないと諦めた。
この体があるから、今ここに居られる。
そう思うと、傷だらけの体も緑の髪も、嫌いになれない。
片目生活にもすっかり慣れたが、頭痛は慢性的。
けれど、生きて居られる事が嬉しかった。
箱の中に手を入れて、何が光っているのかを探した。
指にこつんと触れたそれをつまんで持ち上げれば、それは赤いガラス玉。
光を放つそれを見て、ミセリはまた懐かしそうな顔をした。
イル* ー゚)リ「あ……これ、歯車王の……」
ずいぶん小さく感じる赤い玉を、手のひらで転がした。
森で出会った機械の、心臓。
- 153 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:08:02.61 ID:rvgtkGkVO
-
イル* ー゚)リ
イル* ー゚)リ「いや待て、何で光ってるのよこれ」
『─────す』
イル* −゚)リ「? ……なんか、聞こえ……」
『───い────す』
_,
イル* −゚)リ?
|::━◎┥『オイッス』
_,,
イル; Д゚)リそ
|::━◎┥『アア……やっト繋がっタカ』
_,,
イル; Д゚)リ
|::━◎┥『何ダ』
- 171 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:10:07.47 ID:rvgtkGkVO
- _,,
イル; Д゚)リ「……あれ、まだ寝てるのかな」
|::━◎┥『?』
_,,
イル; Д゚)リ「……夢、じゃ…………無いな」
|::━◎┥『元気カ?』
_,,
イル; Д゚)リ「う、うん……もうバリバリ……」
|::━◎┥『ナラば、良い…………背ガ伸びたナ』
_,,
イル; Д゚)リ「そりゃ、まあ……七年経ってますから」
赤い玉から声がすると思ったら、そこから小さな歯車王が、にょき、と生えた。
しかし触ろうとしても指は歯車王を突き抜けて、何にも触れない。
ミセリが驚いた顔のまま目を擦っても頬をつねっても、目が覚める様子がない。
つまり、これは現実。
- 181 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:12:02.54 ID:rvgtkGkVO
- _,,
イル; Д゚)リ「……エピローグでこの顔すると思わなかったんだけど……」
|::━◎┥『? 実はナ、少し頼ミガあるのダガ」』
_,,
イル; Д゚)リ「はぁ…………何?」
|::━◎┥『ちょっと森に来い』
_,,
イル; Д゚)リ「普通に喋った! 何!? 何いきなり!?」
|::━◎┥『煩い』
_,,
イル; Д゚)リ「あ、ごめん……あれ……しっとり系エピローグ……」
|::━◎┥『森から遠い為、接続に時間が掛かった』
_,,
イル; Д゚)リ「……はぁ……いや、何が何だかなんだけど……?」
|::━◎┥『魔女が呼んでいる』
_,,
イル; Д゚)リ「え、えぇ……いや、あの……何でまた」
- 189 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:14:03.95 ID:rvgtkGkVO
-
|::━◎┥『来られるか』
_,,
イル; Д゚)リ「……うん、行く」
|::━◎┥『ならば今から来い』
_,,
イル; Д゚)リ「今日古典の小テストなのに!」
_,,
イル; Д゚)リ
イル* ヮ゚)リ「やったあ!!」
|::━◎┥『?』
イル* ー゚)リ「で、何でまた?」
|::━◎┥『魔女が』
イル* ー゚)リ「シュールさんが?」
|::━◎┥『曰く『ごはん食べたい』と』
イル* ー゚)リ「つまり米を持ってこいと」
- 200 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:16:04.53 ID:rvgtkGkVO
-
イル* ー゚)リ「相変わらず自由だなぁシュールさん……ところで歯車王?」
|::━◎┥『む』
イル* ー゚)リ「歯車王の存在に、色々突っ込み入れたいんだけど」
|::━◎┥『断る』
_,,
イル; Д゚)リ「断るの!? 何で喋れるの!? 死んだんじゃなかったの!?
ミセリの涙を返して!?」
|::━◎┥『断る』
_,,
イル; Д゚)リ「森の頑固者め……取り敢えず、何で話せるかは教えてよ?」
|::━◎┥『魔女が、この心臓に手を加えた』
_,,
イル; Д゚)リ「え」
|::━◎┥『心臓には歯車王のデータが込められている、それを何かしたらしい』
_,,
イル; Д゚)リ「シュールさん、いつの間に……つか魔女すっげぇ、マジすっげぇ」
- 206 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:18:04.54 ID:rvgtkGkVO
- _,,
イル; Д゚)リ「……で、何で七年も経ってから?」
|::━◎┥『此処は森から遠い、魔女が遠過ぎて起動に時間が掛かった』
_,,
イル; Д゚)リ「ああ……シュールさんの謎パワーで動いてるからか……」
|::━◎┥『だが起動に成功した、今後はこう言った事は起きない』
_,,
イル; Д゚)リ「……つまり、これからはいつでも話せると?」
|::━◎┥『そうなる』
_,,
イル; Д゚)リ「ちょっと感動返して、泣いたのに」
|::━◎┥『断る。良いから、早く来い』
_,,
イル; Д゚)リ「分かったよ、森の頑固者……取り敢えず着替えるから」
|::━◎┥『……』
_,,
イル; Д゚)リ「……何?」
|::━◎┥『…………無いな』
_,,
イル# Д゚)リ「お前それ今どこ見て言った」
- 216 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:20:09.89 ID:rvgtkGkVO
- 取り敢えず、と歯車王の映像らしき物が生える赤い玉を置いて、着替えを再開。
ブラウスを着てタイを結び、スカートと靴下を履いてから上着を着た。
歯車王を胸ポケットに入れると、
段ボールからマントやナイフを取り出し、鞄にぎゅっと詰め込む。
あの頃の格好を今したらどうなるのかな。
そんな事を考えつつ、鞄を持って部屋を後にした。
洗面所で顔を洗い、歯を磨いて髪をとかす。
落ち着いた髪の毛に満足したのか、オレンジのカチューシャで前髪を持ち上げた。
('、`*川「あ、ミセリ朝ごはんは?」
ミセ* ー゚)リ「んっとね、今日は一緒に食べる約束してるから良いや。ごめんね」
('、`*川「あら、お友達と?」
ミセ* ー゚)リ「んー……そんな感じ」
('、`*川
('、`*川「……もしや、男の子と……?」
ミセ; ー゚)リ「は? あ、や……ライオンはオスだったから……一応男の子とも」
- 222 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:22:09.78 ID:rvgtkGkVO
-
('、`*川「あらあらあらあら……ミセリにもそんな相手が……!」
ミセ; ー゚)リ「……お母さーん?」
('、`*川「作ってあげたりするの?」
ミセ; ー゚)リ「あー……うん、多分……料理マシになったし」
('、`*川「よし、じゃあこれ持ってきなさい、新米ほどでは無いけど良いお米よ」
ミセ; ー゚)リ「お母さん……あの、?」
('、`*川「まさか……泊まってくるのっ?」
ミセ; ー゚)リ(どうなの? 歯車王)
|::━◎┥(好きにしろ、歯車王が有れば何時でも帰られる)
ミセ; ー゚)リ「……うん、泊まる」
('、`*川「ッ!! ……決めてらっしゃい、ミセリ……ッ!!」
ミセ; ー゚)リ「……よく分かんないけど、行ってきます」
('、`*川「行ってらっしゃい! 今度紹介するのよーっ!!」
- 234 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:24:07.46 ID:rvgtkGkVO
-
鞄を肩から下げて、10キロの米袋を担ぎながらミセリは歩いていた。
力は多少あるから重いのは平気だけど、と眉を寄せて
学校に行くフリをして、そそくさと森の方に移動する。
_,
ミセ; −゚)リ「普通……登校しようとしてる娘に、米持たすかなぁ……」
|::━◎┥『普通は無いだろう』
_,
ミセ寐-)リ「ですよねー……さっさと行って渡したい」
|::━◎┥『ああ、』
_,
ミセ;%−゚)リ「ん?」
|::━◎┥『奴等も呼んだぞ』
ミセ %−゚)リ「ぇ……ノーネ、達?」
|::━◎┥『魔女の計らい、だろう』
ミセ*%ヮ゚)リ「嘘……っマジで、マジでっ!? やったーっ!!」
|::━◎┥『煩いぞ』
- 241 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:26:06.79 ID:rvgtkGkVO
-
ミセ*%ヮ゚)リ「だって……もう会えないと思ってたから……っ!!」
|::━◎┥『……良かったな』
ミセ*%ヮ^)リ「うんっ、有り難う歯車王っ!!」
_,
( ゚∀゚)「何してんだお前」
_,, て
ミセ;%Д゚)リそ「ヒッポリト星人ッ!!?」
(´・ω・`)「芹澤さん、どうしたの? こんな所で」
_,,
ミセ;%Д゚)リ「いいいいえ何にもっ!!」
_,
( ゚∀゚)「んだよヒッポリト星人って……で、何にアリガトーつってたんだ?」
(´・ω・`)「何とか王って聞こえたけど……」
_,
( ゚∀゚)「んだよ、また神隠しされてぇわけか? 森の前でよぉ」
_,,
ミセ;%Д゚)リ(この眉毛コンビが……こんな時に……ッ!!)
|::━◎┥(貴様も眉毛だぞ)
- 249 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:28:03.12 ID:rvgtkGkVO
-
森の入り口で歯車王と話していたところで、後ろから掛けられた声。
二人分の男の声に慌てて振り返ると、そこにはよくよく見知った二人の姿。
みんな揃って同じ高校に進んだ、今となっては幼馴染みの二人。
ずいぶんと背が伸びて声も低くなり、体つきも男らしくなっている。
片方は優等生、片方はヤンキーにしか見えない幼馴染みを見上げて、
じり、とミセリが米袋を抱えて後退る。
しかし二人は、過去に失踪した事のあるミセリをじぃっと逃げない様に見ていて。
_,
( ゚∀゚)「……どうなんだよコラ」
(´・ω・`)「もしかして、またどこかに行くの?」
_,,
ミセ;%Д゚)リ「あ、いえ……その……あの……」
_,
( ゚∀゚)「あ゙?」
(´・ω・`)「むぅ……」
|::━◎┥『未だか、魔女が拗ねて居るぞ』
_,,
ミセ;%Д゚)リ「あ、ばっ!!」
- 258 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:30:03.42 ID:rvgtkGkVO
- (´・ω・`)「? ……今の声は?」
_,
( ゚∀゚)「……おい芹澤、お前」
_,,
ミセ;%Д゚)リ「あーもーめんどくせーっ!! ジョルジオこれ持って!!」
_,
(;゚∀゚)「ジョルジュだアホッ! ちょ、な、何だこの米っ!?」
_,
ミセ*%Д゚)リ「歯車王、人が増えるって言っといて!!」
|::━◎┥『把握』
ミセ*%ー゚)リ「よし、んじゃみんなで行くぞ! ほら手ぇ繋ぐ! はぐれるよ!!」
(;´・ω・`)「うわっ、た、わわっ! い、行くってっ!?」
_,
(;゚∀゚)「ど、どこにだよっ!?」
ミセ*%ー゚)リ「どこにって……そーだなー」
7年前の前言撤回、たまには甘えたい時もある。
ミセ*%ー^)リ「……変な森っ!!」
おしまい。
- 280 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:32:06.70 ID:rvgtkGkVO
- 最後に人物紹介 旅の仲間編。
ミセ*%ー゚)リ 芹澤ミセリ 9歳 女の子
人間。ちょっと髪の毛が伸びてたのに、誰にも気付かれなかった。
( ノAヽ) ノーネ 10歳 オス
森の人。彼のビンタの威力は、黄金の左手の異名を持つほどだとか。
<ヽ`∀´> ニダー 13歳 オス
森の人。老け顔を気にするキングオブ普通の人、微妙に心が弱いのは仕様です。
( ´ー`) ネーヨ 14歳 オス
恐竜。実は若い。生きる化石であり、動く事を止めたその時が死ぬ時とかはない。
( [) ビコーズ 四ヶ月 オス
森の妖精。妖精は夜生まれは緑で朝生まれは青なんだって、別にいらない情報。
- 295 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:34:03.99 ID:rvgtkGkVO
- サブメイン編。
( `ー´) ネーノ 10歳 オス
森の人。ノーネと名前を間違われやすいのが悩みのタネ。
(゚A゚*) のー 12歳 女の子
森の人。関西弁の可愛いあの子、ドロップキックとか得意です。唯一の黄泉返り。
(#゚;;-゚) でぃ 15歳 女の子
森の人。ネーヨ達と一緒に暮らしてる、今のところタカラに恋愛感情はない。
($∴) ゼアフォー 五ヶ月 女児
森の妖精。リボンをつけてる実は女の子。
|゚ノ ^∀^) レモナ 24歳 貴婦人
森の人。素晴らしき人妻、意外と若いんだから!
川 ゚ -゚) 直野クール 当時10歳 女の子
元人間。ぴっちぴっちのお魚さん、シスコーン。
|::━◎┥ 歯車王(故/仮) 製造から29年 オス?
異世界のロボット。別名メカ沢、その姿はドラム缶の如し。
( ゚∀メ) 片目(故) 11歳 オス
森の人。本名はセルゲイ・アヒャグノフ。最後まで名前呼んでもらえなくて寂しい。
lw´‐ _‐ノv 直野シュール 当時10歳 女の子
元人間。魔女で蜘蛛の人、おっぱい最強伝説。
- 301 ◆XCE/Wako2nqi 2009/06/22(月) 02:36:15.37 ID:rvgtkGkVO
- サブ編。
( ´∀`) モナー 26歳 オス
森の人。実は純血種って凄い長命なんだってさ。
(,,^Д^) タカラ 17歳 オス
森の人。でぃに恋して早10年、春が訪れない。
∬´_ゝ`) 姉者(故) 当時23歳 淑女
森の人。歳の離れた弟が居る、有髪族では寿命な年。
( ^^ω) マルタスニム 年齢不詳 オス
珍獣。ぷるぷる ぼく わるい珍獣じゃないよ!
( ΦωΦ) ロマネスク 年齢不詳 オス
森の人。別に格好良くなりきれなくて悲しいとか無いから。マジで。
_
( ゚∀゚) 長岡ジョルジュ 9歳 オス
人間。よくあるツンデレな小学生、おっぱい小さいのを見ると悲しくなる。
(´・ω・`) 眉山ショボン 9歳 オス
人間。今はみんな良い友達です、おっぱいは小さくても良いんじゃない?派。
(´・_ゝ・`) 盛岡デミタス 29歳 男
人間。どちらかと言うと気弱で、ミセリの魔性に弄ばれる哀れな男。