- 2 ◆tYDPzDQgtA[sage] 2016/10/23(日) 21:09:13 ID:S8ux2uyA0
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声。
刃を振るい、歌声を響かせ、路銀を稼いで進むのは二人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
【道のようです】
【第一話 たぶんこいつはだめだな。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
- 3 ◆tYDPzDQgtA[sage] 2016/10/23(日) 21:10:40 ID:S8ux2uyA0
てくてく、がらがら。
てくてく、がらがら。
二人分の足音と、荷車を引く音。
不機嫌そうな顔で前を歩く少女と、疲れたように荷車を引く男。
一言も発しないまま歩く二人は、左右を森に挟まれた街道を進んでいた。
少女は身の丈よりも遥かに大きな斧槍を担いでおり、その小柄な体を包むのは白銀の軽鎧。
金の巻き髪をひとつに束ねて、整った顔立ちを不愉快そうに歪めている。
歳のくらいは十代の半ばくらいに見えて、首元には上級冒険者の証である金の証明章。
その隣には、真新しい銅のパーティ証明章がちょこんと存在する。
一方、その少し後ろで荷車を引く長身の男は、見てわかるような吟遊詩人の出で立ち。
今は楽器や荷物を荷車に乗せているが、頭には羽飾りのついた鍔広の帽子。
少女とは対照的に装飾や模様の多いやや派手な装いで、胸元の証明章は銀と銅。
濃く長い金髪と鮮やかな碧眼、どことなく軽薄そうな顔立ちで、
吟遊詩人には相応しくない物を口に銜えている。
その整った顔を疲労に歪めつつも、押し黙ったまま荷車を引くばかり。
- 4 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:11:45 ID:S8ux2uyA0
ごとごと、荷車には大きな箱。
伝票や宛名の貼られた箱は軽く、荷車を引くのに難儀はしない。
しかしもう一日中、ろくな休憩もなしに歩き続けているのだ。
さすがに吟遊詩人はぐったりと、息を上げながら額に浮かぶ汗を拭った。
爪'ー`)y‐「つーんーちゃあーん……」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「そろそろ許してよぉーう……」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「騙したのは悪かったからさぁ……謝ったじゃんかぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「うぅー……」
情けない声音で言葉を投げ掛けても、前を歩く少女はぴくりとも反応しない。
駄目かあ、と肩を落として項垂れて、吟遊詩人は乾く唇を湿らせながら歩き続けた。
- 5 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:13:08 ID:S8ux2uyA0
元はと言えばこの吟遊詩人、フォックスが問題で。
事の発端は、遡る事一日と半分ほど。
ある町の酒場で、彼らは出会った。
ざわざわ、がやがや。
昼間にもかかわらず、酒気と熱気がこもる場所。
金の胡桃亭と言う小さな酒場には、その日も銅や銀ランクの冒険者が集まっていた。
酒場は冒険者にとって憩いの場でもあり、大切な情報収集の場でもある。
そんな酒場のカウンター、端の席にぽつんと腰掛ける小柄な少女。
場にまるでそぐわないその存在は、客達の目を引いた。
しかしそれと同時に、見る人みなが彼女の持つ金の証明章には驚きを隠せなくて。
冒険者と言うのは、組合と行政により、ランク付けされて管理されている。
下位の冒険者には相応の簡単な依頼を、上位の冒険者には難易度の高い依頼を。
その依頼は多岐にわたり、溝さらいから薬草の採取、魔物や盗賊の討伐など。
それらをまとめて、依頼はクエストと呼称される。
- 6 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:13:59 ID:S8ux2uyA0
冒険者のランクとは、七つに分けられる。
最上位は伝説上の英雄だけが存在するアダマンタイトの位。
この世に四人しか存在しない、省いても問題の無いランクだ。
例えるなら、一晩で国を焦土に変えるくらいのバケモノでなければいけない。
上から二番目のオリハルコンの位は、いわゆるおとぎ話にならない程度の英雄クラス。
まだ現実味はあるが、数は少なくお近づきにもそうそうなれない。
例えるなら、偉大な功績を残した王国騎士団長みたいな感じ。
三番目はミスリルの位。
こちらはぐっと現実味が増す、上級者を越えた玄人のランク。
オリハルコンに比べれば数はまだ多いが、これでも憧れの対象となる存在。
例えるなら酒場の隅にいつもいるけど実はすごい凄腕のオッサンみたいなアレ。
四番目が金の位。
簡単に言えば上級者、信用するに十分な冒険者、ミスリルに比べれば数は一気に増える。
長く安定した冒険者をしていたり、高難度クエスト完了率が高かったり、大手柄をあげる等。
例えるならなんか序盤で「20代半ばと言う若さで金とは」とか言われるイケメン先輩冒険者みたいなあれ。
- 7 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:14:49 ID:S8ux2uyA0
五番目が銀の位。
いわゆる中級者。普通。
のびしろが無ければ銀止まりの冒険者も少なくはないだろう。
しかし金への足掛かりでもあるため、向上心とやる気のある冒険者も居る。
例えるなら、まあその辺にいる冒険者の大半がそうだ。
下の二つが銅と鉄。
ここからはもう特筆する必要もない、腕の立たない冒険者だ。
そこらじゅうにごろごろ居る、破落戸みたいな連中も含まれる。
つまりはまあ、金のランクはなんかそこそこつよいと覚えれば良いだけだ。
つらつらと並べはしたが、それ以下のランクについて覚える必要はさして無い。
で、巻き髪の少女は年若く、十代の中頃に見える。
そんな少女が、金の証明章を身に付けているのだ。
本物の証明章であれば、ある程度とんでもない存在と言えるわけで。
- 8 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:15:51 ID:S8ux2uyA0
年若い上級冒険者はの前にはいくつかの木の実の殻が置いてある。
店名にもある通り、この店は胡桃を料理に使ったりサービスで二つほど貰える事があった。
巨大な斧槍を立て掛ける彼女は、渋い顔でお冷やを睨む。
酒場に来ておいて一杯の酒も飲まず、食事も注文せず、何かを待つように唇を噛み締めていて。
(*゚ー゚)「はいお嬢さん、胡桃はいかが」
ξ゚⊿゚)ξ!
店の女将に声をかけられた少女は勢いよく顔を上げて、期待に満ちた眼差しを向ける。
すると女将の手に下げられたカゴから、二つの胡桃が手渡された。
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとう……ございます……」
(*゚ー゚)「まぁ良いけど……よく待てたね二時間おきのサービスを……」
ξ゚⊿゚)ξ「いただきます!」バキィ
(*゚ー゚)「実ごと潰してない?」
- 9 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:17:00 ID:S8ux2uyA0
差し出された堅い堅い胡桃の殻を指で挟んで潰す。
中からややつぶれた実を取り出すと、噛み締めるようにゆっくりと咀嚼し始めた。
(*゚ー゚)「それにしても、噂は本当だったのねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「噂?」
(*゚ー゚)「若い怪力の女の子」
ξ゚⊿゚)ξ「なにその雑な噂」
(*゚ー゚)「金の巻き髪の年若い少女冒険者は英雄に滅ぼされた怪力の怪物の末裔である、とか」
ξ゚⊿゚)ξ「人間です」
(*゚ー゚)「人間だったねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「待ってなにその……なにその雑なアレ……ひどい……」
(*゚ー゚)「噂はあてにならないねー」
ξ゚⊿゚)ξ「私冒険者になって3年くらい経ちますけど……そんな噂立ってたの……」
(*゚ー゚)「知らなかったんだ……」
- 10 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:17:54 ID:S8ux2uyA0
少女冒険者の名はツン。
職業は戦士で年齢は18歳、小柄なのもあり実年齢よりも幼く見える。
生まれつきの怪力で、その力を見込まれてとある元戦士の元で師事してきた。
しかし手におえなかったので、力のコントロールと武者修行も兼ねて旅に出たのが3年ほど前。
今では立派な上級冒険者として旅をしている。
なおそのやたらに強い握力などの制御は未だに出来ていない。
ちなみに人間の頭くらいなら握り潰せる。
本来ならば金のランクの冒険者は、クエストの報酬は金額が上がる。
真面目さと腕力だけが取り柄の彼女は、仕事だけはちゃんとやってきた。
ξ゚⊿゚)ξ「それなのにですよ」
(*゚ー゚)「何でパンを買うお金も無いかなぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「わからない……なぜ……」
(*゚ー゚)「残金いくら?」
ξ゚⊿゚)ξ「銅貨二枚」
(*゚ー゚)「銅貨してるわー……」
ξ゚⊿゚)ξ「それムカつくわー……」
- 11 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:18:44 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「ところで、誰か来るんですよね?」
(*゚ー゚)「そうそう、吟遊詩人があなたに用なんだって」
ξ゚⊿゚)ξ「まだ来ませんね」
(*゚ー゚)「娼婦でも買って遊んでるんじゃない?」
ξ゚⊿゚)ξ「帰って良いですかね」
(*゚ー゚)「あなた今日の宿は閉店後の酒場のベンチではなくて?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうでした帰るための宿を取る金がなかった」
(*゚ー゚)「まぁナンパな人だけど、恐らくはまあたぶんそこそこ悪い人じゃないと良いなって」
ξ゚⊿゚)ξ「八割悪い人だ……」
(*゚ー゚)「大丈夫よ銀の冒険者だから」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫な要素とは……」
からんころん。
(*゚ー゚)「いらしゃー……あら、噂をすれば」
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
- 12 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:19:17 ID:S8ux2uyA0
酒場の女将とツンが言葉を交わしていると、入り口の方からベルの音。
からんころん、と軽やかな音を立てて入ってきたのは一人の男だった。
濃赤の外套に羽飾りの帽子と、背負われた弦楽器、飾りや模様の多い服。
あからさまな吟遊詩人の風体をした男は、さらさらの金髪を揺らし、青い目を巡らせる。
そして年若い冒険者である巻き毛の彼女を見付けると、真っ直ぐに早歩きで近付いてきて。
(*゚ー゚)「これが八割悪い人」
ξ゚⊿゚)ξ「はあ、どうも」
爪'ー`)y‐「見付けた……君だよね……」
ξ゚⊿゚)ξ「は?」
爪'ー`)y‐「君が噂の怪力娘だよね!?」
ξ゚⊿゚)ξ「何をいきなr」
爪'ー`)y‐「僕を殺してくれないか!?」
ξ゚⊿゚)ξ(キチガイかよ)
(*゚ー゚)(引くわー)
- 13 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:20:18 ID:S8ux2uyA0
爪'ー`)y‐「頼むよねぇ君なら僕を殺せるかも知れないんだよねぇってばお願いだよねぇ!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと触んないで揺すらないでこわい!」
爪'ー`)y‐「君の噂を聞き付けてここまで来たんだよお願いだよちょっとで良いから少しで良いから!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「や、止めてキモい! 触んないでってば! や、やめ」
爪'ー`)y‐「死ねなくなって久しいんだよいや厳密には死ねるんだけどああもう良いからお願いだから!!」
「あああうっぜぇ!!!」
ξ#゚⊿゚)ξ三つ)Д`)y‐ メギャアアアア
「へぶしッ!!」
(*゚ー゚)「あっ」
ξ;゚⊿゚)ξ「あっ」
爪#;,)Д ) ドサァ…
(*゚ー゚)
ξ;゚⊿゚)ξ
(*゚ー゚)「あーお客様ー! 困りますお客様! 店内でお客様の頭蓋骨粉砕は困りますお客様ー!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「余裕ありますね女将!?」
- 14 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:21:05 ID:S8ux2uyA0
(*゚ー゚)「一回やってみたかったのこれ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「えぇ……あの……つか何で皆さん平然と……?」
(*゚ー゚)「でも脳漿は片付けてね、はい雑巾」
ξ;゚⊿゚)ξ「えぇぇ……」
(*゚ー゚)「その人は放っておいても大丈夫だから」
ξ;゚⊿゚)ξ「何なのこの人……殺しちゃったんだけど……どうしよう……」
(*゚ー゚)「大丈夫大丈夫、少しすれば分かるから」
女将が平然と厨房へ戻って行き、ツンは今しがた自分が産み出した男の亡骸を見下ろす。
頭部の右半分がへしゃげて潰れ、中身がはみ出している。
ひとまず手についた内容物を男のマントで拭い、
誰も男の死に対して騒がない現状に困惑しながら、渡された雑巾で床を拭き始めた。
冒険者と言う仕事柄、人の死体も見慣れてはいる。
時には依頼によって、盗賊討伐などで人を殺す事もある。
とは言え、やっぱり人の死体は気持ちの良いものではないし、良くない事故で殴り殺してしまったのだ。
ただでさえしかめてきた顔を、更に歪めながら男の顔にマントを被せる。
- 15 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:22:05 ID:S8ux2uyA0
もぞ。
ξ;゚⊿゚)ξ?
もぞもぞ。
ξ;゚⊿゚)ξ
爪'ー`)゙「あー死ぬかと思った」ムクリ
ξ; ⊿ )ξ!?
(*゚ー゚)「あらー起きるの早かったわね」
爪'ー`)y‐「損傷が少なかったからね、ところでお嬢さん」
ξ; ⊿ )ξ
爪'ー`)y‐「お嬢さん?」
「ばけものぉぉぉお!!?」
ξ; ⊿ )ξ三つ)Д`)y‐ メギャアアアア
「たわばッ!!」
(*゚ー゚)「あらー」
- 16 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:23:22 ID:S8ux2uyA0
ξ; Д )ξ「わーっ! わーっ!? 魔物!? 魔物!!?」
(*゚ー゚)「違う違う」
_,
爪 Д;,,「うう、ぐ……」ジュルジュル
ξ; □ )ξ三つ「ぎゃーっ! いやーっ!!」ヒュボッ
爪;;#,,∴',「あわびゅっ」ボッシャア
(*゚ー゚)「あーあー大惨事」
その後、ツンは落ち着くまで五回くらい吟遊詩人をリスキルした。
それから少し。
ξ゚〜゚)ξ゙ モグモグ
(*゚ー゚)「はい名物クルミパイおまちどー」
ξ゚〜゚)ξ゙ ガツガツ
(*゚ー゚)「名物ナッツソースとローストビーフのサンドもおまちどー」
ξ゚〜゚)ξ゙ モシャモシャ
(*゚ー゚)「名物チョコサンデーとアップルパイおまちどー」
爪'ー`)y‐「ねぇ最後もう名物関係ないよね……」
- 17 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:24:47 ID:S8ux2uyA0
ξ゚〜゚)ξ「おいひい」
爪'ー`)y‐「うん……だろうね……人の金で食う飯だもんね……」
ξ゚⊿゚)ξケプ
爪'ー`)y‐「満足したかな……?」
ξ゚⊿゚)ξ「取り乱して申し訳ないです」
爪'ー`)y‐「うんまぁ仕方が」
(*゚ー゚)「しょうがないわよねー目の前で死体が甦ったら」
爪'ー`)y‐「そうなんだけどーそうなんだけどさーぁ女将さーん」
(*゚ー゚)「はい伝票」
爪'ー`)y‐「何で落ち着かせるために与えた食事の代金がすべて僕もち……?」
(*゚ー゚)「この子の残金がヤバイから」
爪'ー`)y‐「えぇー……」
突然蘇った死体に混乱した彼女は、ノータイムで頭蓋骨を叩き潰した。
起き攻めの様にリスキルを五回繰り返してから女将に止められ、
ツンを落ち着かせるために与えられた食事代は全て吟遊詩人持ちとなり
財布の中身と積み上がる皿の枚数を見比べて、吟遊詩人は顔を青くした。
当の彼女は、くちくなったお腹にやっと落ち着いたのか口を拭ってから満足そうにお腹をさする。
- 18 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:25:46 ID:S8ux2uyA0
爪'ー`)y‐「まぁ良いや……宿賃くらいはあるし……」
ξ゚⊿゚)ξ「何から何までご迷惑を」
(*゚ー゚)「いきなり女の子の肩掴んで揺すられたらひっぱたきたくもなるけどねー」
爪'ー`)y‐「女将さん僕の頭それで吹き飛んだんだけど」
(*゚ー゚)「女の子に優しくしないから……」
爪'ー`)y‐「あーもーはいはい僕が悪い僕が悪い……ところで、話なんだけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
爪'ー`)y‐「僕は、君を追ってここまで来たんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ怖……」
爪'ー`)y‐「えぇ……ま、まあ良いや……前に寄った街からここまで来るのにルートが違ったみたいでね
僕は君を追い越しちゃって、先にこの街に到着しちゃってたんだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「はあ」
爪'ー`)y‐「だからまぁ女将さんはあの塩対応なんだけど……」
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱ死んだんだ……」
爪'ー`)y‐「三回くらい……客もみんな慣れてやがんの……」
ξ゚⊿゚)ξ「なぜそんなに……」
- 19 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:26:18 ID:S8ux2uyA0
爪'ー`)y‐「それより!」
ξ;゚⊿゚)ξ「はいっ?」
爪'ー`)y‐「僕は君を見込んで! 信じてここまで来たんだよ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「は?」
:爪'Д`)y‐:「君なら僕を殺せると信じて! ここまで来たのに!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、えっ!?」
爪∩∩)「失望した! やっぱ僕は死ねないんだ!! 巷で噂の怪力娘ならいけると思ったのに!!
体型ははんぺんみたいだし容赦なくリスキルするし人の話聞かないしあんまりだぁ!!」
_,
ξ#゚⊿゚)ξ「く、クッソ失礼だな!? 勝手に雑な情報で雑な信じ方して雑に絶望してるな!?」
:爪'Д`)y‐:「だってそうじゃないかはんぺんとかホームランバーみたいな体型だろ!?」
_,
ξ#゚⊿゚)ξ「そっちじゃねぇよお前ェ!! ブッサイクな顔しやがってェエ!!」
:爪'Д`)y‐:「イケメンですぅ普通にモテますぅ!!!」
_,
ξ#゚⊿゚)ξ「残り二割を期待したのに八割の方だった! 八割の方だったクソが!!」
爪'ー`)y‐「だから俺が死ぬまで一緒に旅しない?」
ξ゚⊿゚)ξ「えっやだ無理キモい……」
爪'3`)y‐「あっ傷付いたー今の傷付いたー悲しいーお兄さん心ない一言に傷付いたー」
- 20 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:27:26 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「だって冷静に考えて、見知らぬ吟遊詩人」
爪'ー`)y‐「そうだねすごい美男子だね」
ξ゚⊿゚)ξ「名前も知らない変な体質の人」
爪'ー`)y‐「フォックス君ピチピチの26歳☆ミ」
ξ゚⊿゚)ξ「信用に値しない……」
爪'ー`)y‐「なんで!? ご飯奢ったよ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや信用に値しない……」
爪'ー`)y‐「信用できない男の飯を食ったの!?」
ξ゚⊿゚)ξ「いやだって……ご飯は女将さんが作ったし……」
- 21 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:27:52 ID:S8ux2uyA0
爪'ー`)y‐「えっ……じゃあタダメシ食って逃げるの……?」
ξ゚⊿゚)ξ「それはまぁ……」
爪'ー`)y‐「親御さんに顔向け出来るの!?」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、私ちょっと親居なくて……」
爪'ー`)y‐「あっ……ごめん……」
ξ゚⊿゚)ξ「良いけど……」
爪'ー`)y‐「ご親戚の元か何かで育って……?」
ξ゚⊿゚)ξ「孤児院育ちで師匠の元に住み込みを」
爪'ー`)σそ「なるほど、コホン…………師匠に顔向け出来るの!?」
_,
ξ#゚⊿゚)ξ「ああクソ余計な事言った!! 出来ないクソ!!」
_,
爪'ヮ`)y‐「ふはははははは! さぁどうする困った人にタダメシ奢らせてトンズラするのか!!」
_,
ξ#゚⊿゚)ξ「あー! 勝ち誇った面ー!! あー!! 腹立つー!!」
- 23 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:29:52 ID:S8ux2uyA0
爪'ー`)っ「ほら僕って細腕じゃない」スッ
ξ゚⊿゚)ξづ「そうですね」グッ メキボリ
爪; Д )そ「アッダァイァッ!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ脆い」
爪;'Д`)「人の手を!? 握り潰して!? それ!? 本当に血の通った人間かな君は!?」
ξ゚⊿゚)ξ「いやその……死なないし……つか本当ブッサイクだなその顔……」
爪;'Д`)「死ななくても痛いし怪我するし寧ろ死なないから余計痛いよ!? イケメンだよ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「お前のそのよくあるイケメン設定なんなんだよ……顔面偏差値低そうな顔の癖に……」
爪;'ー`)+「実際イケメンですので……と言うかもう素だね君……」
ξ゚⊿゚)ξ「っざ……なにこの人……」
爪;'ー`)「お兄さんキメ顔までしたのに心折れそう」
ξ゚⊿゚)ξ「……で、何? 旅? 何で?」
爪ノ'ー`)「あーえっとねー、僕ってほら細腕じゃない」
ξ゚⊿゚)ξづ「握り」
爪'ー`),,「やめて」
- 24 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:31:07 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「チッ……それで?」
爪'ー`)「いやまぁ程よく引き締まった見映えの良い身体ではあるんだけどねうん女の子からも評判が」
ξ゚⊿゚)ξ「女将さんお世話になりました失礼します」
爪'ー`)「あーでもなー! 戦うのに適さないんだよなー! 吟遊詩人ぼっち旅は危険だなー!」
ξ゚⊿゚)ξ「今までよく無事だったなぁこの人……」
爪'ー`)「いやー……素っ裸で谷底で目覚めたりとかよくあって……」
ξ゚⊿゚)ξ「うわ……」
爪'ー`)「自衛しようにもね……うん……吟遊詩人は攻撃スキルほぼ無いし……」
ξ゚⊿゚)ξ「スキル言うな……」
爪'ー`)「だからお金稼いでは用心棒を雇い……お金稼いでは剥ぎ取られた荷物を新調……」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、うん……悲惨……」
爪'ー`)「君ならさ……ほら……信用出来そうだし……金バッチだし……雇いたいなって……」
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃまあ……金だけど……」
爪' -`),シュン「僕もさ……こんなデタラメな身体もう嫌なんだ……普通の人間に戻りたいよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)「だから、もう君に賭けたいんだ……今まで雇った用心棒とは、かけ離れてる君に」
- 25 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:32:02 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「う……」
_,
ξ-⊿゚)ξ゙「ううう」
_,
ξ-⊿-)ξ(面倒だしなんか気持ち悪いし関わりたくない……)
_,
ξ-⊿-)ξ(でも確かにリスキルしたしご飯は奢って貰った……恩はある……)
_,
ξ-⊿-)ξ(師匠の言葉を思い出せ……師匠ならこんな時……)
( ΦωΦ)『えっ……貴様ちょっと……野良試合で相手の頭蓋骨陥没させたの……?』
( ΦωΦ)『素手で……? えぇ……怖……その怪力どうにかならんのか……マジで……』
_,
ξ-⊿-)ξ(違うこれじゃない……)
_,
ξ-⊿-)ξ(とにかく師匠は、ご飯と義理を大事にした……)
_,
ξ-⊿-)ξ(あとご飯がすごくおいしかった……)
_,
ξ-⊿-)ξ
ξ゚⊿゚)ξパチリス
- 26 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:32:40 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「…………わかった、雇われてあげる」
爪'ー`)「うっそマジで」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、リスキルした事は謝ります、すみませんでした」
爪'ー`)「あ、いえこちらこそ」
ξ゚⊿゚)ξ「ご飯の代金は雇用の給金から引いてください」
爪'ー`)「はいはい、後腐れなく」
ξ゚⊿゚)ξ「……と言うわけで」
爪'ー`)「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「言っとくけど、金ランクの冒険者は高い……けどまぁ……経済状況アレだし良いか……」
爪'ー`)「なんて優しいんだ………まるで女神のようだよ君は……」
_,
ξ゚ -゚)ξ「師匠に顔向け出来ないから雇われるだけだし……」
爪'ー`)(くっそチョロいなこの子……土下座すればヤれそう……)
- 27 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:33:10 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「しかしこの場合は護衛契約……? それともパーティ契約……?」
爪'ー`)「パーティにしようよパーティ」
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ良いけど……あんた旅の目的は? 何か説明された記憶無いんだけど」
爪'ー`)「説明した記憶もないね、目的はこの体質の治し方だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「何で死ななくなったのあんた……」
爪' -`)「ちょっとね……魔女の呪いを受けちゃって……」
ξ゚⊿゚)ξ「魔女のって……ガチのやつじゃんそれ……えぇ……」
爪' -`)「身に覚えがない訳じゃないんだけどさ……でも少し理不尽な事でね」
ξ゚⊿゚)ξ「ど、どんな……?」
爪' -`)「旅の途中、出会った魔女が困っていたから手助けしたんだ……」
ξ゚⊿゚)ξ「う、うん」
爪' -`)「そうしたら勘違いされたみたいで、求婚されて……それを断ったらこうなっちゃって」
ξ゚⊿゚)ξ「えぇ……なにそれ、えぇ……」
爪' -`)「それ以降、彼女は見付からず……だから解呪は彼女ではなく高名な魔導師に頼もうかなって」
- 28 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:33:50 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「な、なるほど……惚れっぽい魔女の恨みをうっかり買って呪われたと……」
爪' -`)「そう、だから解呪のための旅に同行してほしいんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「む、むむ……なら尚更断れないわね……分かった、付き合うわ……」
爪' -`)「ありがとう……まず目指すのは、かの高名な大魔導師が住むと言う王都の森なんだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「ふむ、ここから王都は距離があるけど……途中村や街に寄りながら行けば」
爪'ー`)「回り道になっても問題ないよ、仕事をこなしながら進もう、のんびりでも良いから」
ξ゚⊿゚)ξ゙「分かった、当面の目標は王都ね
……まぁ久々に王都にも行きたかったし、道中で討伐の仕事でもすれば私の目的は問題ないか」
爪'ー`)「ありがとう、それじゃあ護衛の料金はこれくらいで」パチパチ
ξ゚⊿゚)ξ「いやもうちょい」
爪'ー`)「こう」パチパチ
ξ゚⊿゚)ξ「もう一声」
爪'ー`)「これなら」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、これなら」
- 29 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:34:39 ID:S8ux2uyA0
爪'ー`)「ところで君の旅の目的は?」
ξ゚⊿゚)ξ「力加減の制御と武者修行」
爪'ー`)「ああうん、なるほど」
ξ゚⊿゚)ξ「ところであの、あんたさ」
爪'ー`)「フォックス君☆って呼んで」
ξ゚⊿゚)ξ「クソ狐」
爪'ー`)「程々に傷付く」
ξ゚⊿゚)ξ「でも護衛契約じゃなくて良いの?」
爪'ー`)「パーティ契約の方が君の旅も果たせるだろ? 護衛契約だと君の自由が無くなっちゃうから」
ξ゚⊿゚)ξ「はあ、なるほど……」
爪'ー`)「パーティ契約でも大丈夫だよ、ちゃんと護衛料は支払うから」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
爪'ー`)「パーティ契約だと最短で一年だけど大丈夫?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
爪'ー`)「パーティ名はどうしようか、歩きながら決めようか」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
爪'ー`)(脳みそ本当に動いてるのかなこの子)
- 30 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:35:19 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「えっと、それじゃあ役所?」
爪'ー`)「そうそう、女将さん代金はここに」
(*゚ー゚)「はーい」
ξ゚⊿゚)ξ「ごちそうさまでした」
爪'ー`)「どんなパーティ名が良い? したい名前があるならそれでも良いけど」
ξ゚⊿゚)ξ「パーティ組むの初めてだからよくわからない……」
爪'ー`)「そっかぁ、じゃあ詩人として頑張らないとなー」
ξ゚⊿゚)ξ「恥ずかしいのはきついからほどほどで」
爪'ー`)「†漆黒の剣†とか」
ξ゚⊿゚)ξ「漆黒の剣は関係無いでしょやめなさいよ」
爪'ー`)「初心者的に†は外せないかなって……」
ξ゚⊿゚)ξ「やめてよ恥ずかしいよつらいよ……」
からんころん。
ばたん。
(*゚ー゚)「まいどー」
(*゚ー゚)
(*゚ー゚)「苦労しそうねぇあの戦士ちゃん……」
- 31 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:36:09 ID:S8ux2uyA0
爪'ー`)「そうだ、改めて自己紹介をしない?」
ξ゚⊿゚)ξ「ん? あぁ、まだ名乗ってなかったっけ」
爪'ー`)「僕はフォックス・ユースレス、26歳の吟遊詩人だよ、ランクは銀」
ξ゚⊿゚)ξ「ツン・グランピー、18歳の戦士、ランクは金」
爪'ー`)「ツンちゃんっ☆」
ξ゚⊿゚)ξ「死ね」
爪'ー`)「早くも脊髄反射で死を望まれた……あ、そうそう」
ξ゚⊿゚)ξ「うん?」
爪'ー`)「折れたままの腕がクッソ痛いから一回死にたい」
ξ゚⊿゚)ξ「デスベホマ使ってんなよ……」
爪'ー`)「もうずっと痛い」
ξ゚⊿゚)ξづ「オラァッ」ゴブシャッ
爪 :;#,∴。「ベビュッ」ボシュッ
- 32 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:36:55 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ(簡単に頭弾け飛ぶなこの人……)
爪 :;#。゙ ジュル
ξ゚⊿゚)ξ(しかしパーティ組むとは言ったけど、出会ったばかりで距離感がわからない……)
爪 :,,。゙,, ジュルジュル
ξ゚⊿゚)ξ(一年組む事になるんだし、もうちょい砕けた方が良いのかな)
爪 ;。,,゙),ジュルジュル
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇすごくきもいんだけど」
爪:;。ー`)「ひど……ぉい゙……」ジュルジュル
ξ゚⊿゚)ξ「魔物と間違って討伐された事ない……?」
爪'ー`)「あります」
ξ゚⊿゚)ξ「大変ね……」
爪'ー`)y‐「イケメンフォックス君復活☆ 待たせたね、行こっか」
ξ゚⊿゚)ξ「きもいからのうざい」
爪'ー`)y‐「ひーどーぉいー☆」
- 33 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:38:33 ID:S8ux2uyA0
酒場を出た二人は、とりとめのない会話を交わしながらてくてくと、
さして遠くは無い場所にある役所を目指す。
片や長身の優男、片や小柄な少女。
互いの得物を持っていなければ、兄妹か何かに見えたかもしれない組み合わせ。
同業者である銅や銀のバッジ持ちからの視線を受けながら、時おり露店を横目で眺め歩く。
果物、パン、串焼き、装飾品、魔法術式。
そう言えば術式をまた買っておかないとな、とツンは荷物と財布の中身に思考を巡らせる。
いやでも他の消耗品の事を思うと、しかし必要な物ではある。
とは言え財布の中身が非常に厳しい、なぜ仕事をこなしても手元にほとんど残らないのだろうか。
むしろ術式を買う金すら無かった、冷静に考えて薬草しか買えない、つらい。
ただでさえ眉間に刻まれた皺を更に深くしながら考え込む。
すると斜め上の方から、くすくすと笑い声が聞こえた。
ξ゚⊿゚)ξ「……何よ」
爪'ー`)y‐「やー……ツンちゃんめっちゃ渋い顔してたから……」
ξ゚⊿゚)ξ「こっちだって財布事情が良くないのよ」
爪'ー`)y‐「金の戦士様が何でまた?」
ξ゚⊿゚)ξ「わからん……なぜか手元に全然残らん……」
爪'ー`)y‐「えぇー……」
- 34 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:40:43 ID:S8ux2uyA0
たどり着いた役所の扉をフォックスが押し開けて、ツンを先に入れてから後ろ手に閉める。
ツンはぼんやりと王都に思考をやりながら、等間隔で並ぶ書類記入用の机を指でなぞる。
役所の中は、相変わらず整然としている。
窓口のカウンター、クエスト用の掲示板、記入机に休憩スペース。
まだ昼間と言う事もあり、冒険者が何人か掲示板に貼られたクエスト依頼用紙を値踏みしたり
窓口で何やら職員と言い争ったり、払い込みをしたり、説明を受けたり。
奥の方には二階への階段、きっとその先には講習等に使う多目的室がいくつかあるのだろう。
そういや初めて役所に行った時に、一時間半の講習を受けたものだ。
ほとんど覚えていないけど。
爪'ー`)y‐「ツンちゃん、パーティのランクは分かる?」
ξ゚⊿゚)ξ「金銀銅のやつでしょ」
爪'ー`)y‐「そうそう、講習ちゃんと覚えてたんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そ、それくらいは覚えてるわよ……」
爪'ー`)y‐「ほとんど忘れるよね講習の内容」
ξ゚⊿゚)ξ「忘れる」
- 35 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:41:32 ID:S8ux2uyA0
爪'ー`)y‐「じゃあ護衛契約とパーティ契約とクエスト契約は?」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、あ、ご、護衛は期間は自由の、あの、護衛の、契約、商人とかの、」
爪'ー`)y‐(めっちゃキョドってる)
ξ;゚⊿゚)ξ「パーティはあの、えと、最短一年の、あの、冒険者の、仲間の、あれ」
爪'ー`)y‐(ふんわりしてるなー)
ξ;゚⊿゚)ξ「く、クエストはその、受託したクエストが終わるまでの、間の、やつ、」
爪'ー`)y‐「うんまぁ……ふんわりとは合ってたよ、うん」
ξ;゚⊿゚)ξホッ
爪'ー`)y‐「ま、契約は義務付けられてるけど実際には契約せず適当にみんなやってんだけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「え、駄目じゃない」
爪'ー`)y‐「駄目なんだけどねー……まだ冒険者の制度って色々発展途上と言うか」
ξ゚⊿゚)ξ「難しいのね」
爪'ー`)y‐「ま、僕らはちゃんとやろうねっと……はい、名前と証明章押してね」
ξ゚⊿゚)ξ カリカリ ペタン
爪'ー`)y‐「…………」
ξ゚⊿゚)ξ?
- 36 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:42:57 ID:S8ux2uyA0
爪'ー`)y‐「ちゃんと読んだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
爪'ー`)y‐「これ婚姻届だよ? 書類は一応見よう?」
ξ゚⊿゚)ξ「何持ってきてんだお前」
爪'ー`)y‐「確認せずに名前書くの良くない」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「きをつける」
爪'ー`)y‐「うん、こっちがパーティ申請用紙」
ξ゚⊿゚)ξ ジッ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「パーティ申請用紙……一年契約……二人……」
爪'ー`)y‐(ちゃんと読んでる読んでる)
- 37 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:43:39 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξジッ
爪'ー`)y‐(ほんとこの子よく今まで無事だったな、信用第一の仕事だろうに)
_,
ξ゚⊿゚)ξ?
爪'ー`)y‐(いや、無事じゃ無かったのかもな)
_,
ξ゚ -゚)ξ゙
爪'ー`)y‐(まあ悪いのは頭だけみたいだし、上手いこと使わせて貰おうかな)
_,
ξ゚∧゚)ξ
爪'ー`)y‐(これでもうちょっと出るとこ出た体型なら良かったんだけどなー、はんぺんみたい)
ξ゚⊿゚)ξ「読んだ」
爪'ー`)y‐(理解できてんのかな)
ξ゚⊿゚)ξ「名前ここ?」
爪'ー`)y‐「うん」
ξ゚⊿゚)ξ カリカリ ペタン
爪'ー`)y‐(まあ組んでりゃお金になるだろうし、僕が得をするならちゃーんと守ってあげましょ)
爪'ー`)y‐(騙そうとしてくる僕みたいな人からねー)
- 38 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:44:49 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
爪'ー`)y‐「うんうん、パーティ名の案はある?」
ξ゚⊿゚)ξ「ない」
爪'ー`)y‐「だよねぇ、どうしよっか……この名前経歴にはずっと残るからなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「歴代の偉大な功績を残したパーティってずっと貼り出されてるじゃない」
爪'ー`)y‐「あーるねー、あれに載れたらカッコいいんだけどなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「一番上のやつさ」
爪'ー`)y‐「ああ、伝説のアレ……だっさいよなぁアレ……」
ξ゚⊿゚)ξ「チームおだいどころ……」
爪'ー`)y‐「チームおだいどころって何を思って付けたんだろう……」
ξ゚⊿゚)ξ「知り合いに夫婦円満って言うパーティ組んでた人が居る」
爪'ー`)y‐「ご夫婦で冒険者だったのかな……」
ξ゚⊿゚)ξ「男二人だったような」
爪;'ー`)y‐「嫌なパーティ名だなぁ!?」
- 39 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:45:49 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「簡単なので良いんじゃないの?」
爪'ー`)y‐「えーつまんなーいやーだぁ☆」
ξ゚⊿゚)ξづ グッ
爪'ー`)y‐「やめて」
ξ゚⊿゚)ξ「決めなきゃ用紙提出も出来ないでしょ」
爪'ー`)y‐「うーん……でも詩人的にここは頑張りたい……詩的でカッコいいやつ……」
ξ゚⊿゚)ξ「張り切ると痛い感じになるやつでしょそれ……」
爪'ー`)y‐「趣味とかは」
ξ゚⊿゚)ξ「鍛練」
爪'ー`)y‐「共通するわけもなく」
ξ゚⊿゚)ξ「でしょうね、一応パーティ名変えられるし適当に決めたら?」
爪'ー`)y‐「変えるの手続き面倒なのに」
ξ゚⊿゚)ξ「中には決められなくて数字だけのパーティとかあるでしょ」
爪'ー`)y‐「やだよーカッコ悪いよーつまんないよー」
ξ゚⊿゚)ξ「めんどくさい」
- 40 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:47:15 ID:S8ux2uyA0
爪'ー`)y‐「共通するもの……」
ξ゚⊿゚)ξ「金髪」
爪'ー`)y‐「くらいしか無いね……目の色は違うし」
ξ゚⊿゚)ξ「金……き…………金麦……」
爪'ー`)y‐「喉ごしが良さそう」
ξ゚⊿゚)ξ「スーパードライ……」
爪'ー`)y‐「スードラって略されるやつ」
ξ゚⊿゚)ξ「早く決めてよー」
爪'ー`)y‐「待ってよー」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「うーん詩的でインパクトがあって覚えやすいやつ……」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「金を絡めてみるか……月とかの……」
ξ゚⊿゚)ξづ カリカリ
爪'ー`)y‐「うーんうーん……美男美女的にも……」
,,,ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「ツンちゃんどう思 居ないな!?」
,,ξ゚⊿゚)ξつ「パーティ証明章貰ってきた」
爪'ー`)y‐「勝手に決められたな!?」
- 41 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:47:56 ID:S8ux2uyA0
爪'ー`)y‐「えぇ……えぇぇ……勝手に出したの……」
ξ゚⊿゚)ξ「長くかかりそうだったから……」
爪'ー`)y‐「えぇぇー……名前何にしたの……?」
ξ゚⊿゚)ξ「朝飯」
爪'Д`)y‐「朝飯!?」
ξ゚⊿゚)ξ「証明章つけよう」
爪'Д`)y‐「待って朝飯!? 文字通り!? そのまま!?」
ξ゚⊿゚)ξ「うまくつけられない」
爪'Д`)y‐「貸してもう小さい子じゃあるまいし!!」
ξ゚⊿゚)ξ「鎧が邪魔で……」
爪'Д`)y‐「ほらもうつけたから!! 朝飯!?」
ξ゚⊿゚)ξ「うるさいのとすごいブサイク」
_,
爪'Д`)y‐「イケメンだよ!!!」
- 52 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:59:45 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「道中で出来そうなクエスト受けない?」
爪'ー`)y‐「良いけどー……えー……朝飯ー……?」
ξ゚⊿゚)ξ「早く決めないから……」
爪'ー`)y‐「だからって朝飯になると誰が思うだろうか……」
ξ゚⊿゚)ξ「あそこに新しいパーティ貼り出されてるわよ」
爪'ー`)y‐「朝飯が……」
ξ゚⊿゚)ξ「しつこいなぁ……確認してきなさいよもう」
爪'ー`)y‐「だってなー……」
爪'ー`)y‐
爪'ー`)y‐「『焼きたてパンと溶かしバター』って書いてあるのは気のせいかな」
ξ゚⊿゚)ξ「いや別に」
爪'ー`)y‐「今後長らく焼きたてパンと溶かしバターって呼ばれるんだよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「お腹空きそう」
- 42 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:51:11 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「パーティも名前で管理されるんだし呼ばれるのはしょうがないじゃない」
爪'ー`)y‐「だからかっこよくしたかった……」
ξ゚⊿゚)ξ「……どうやって冒険者やパーティを管理してるのかしら」
爪'ー`)y‐「パソコンと事務ソフトで」
ξ゚⊿゚)ξ「魔道具の事パソコンって言うのやめて」
爪'ー`)y‐「無線LANで全国と情報のやり取りが可能」
ξ゚⊿゚)ξ「魔力を用いた伝達手段をインターネットって言うのやめて」
爪'ー`)y‐「言ってない言ってない」
鈍い銅のパーティ証明章を職業証明章の隣に付けて、その新鮮さにどこか浮足立つツン。
しかし銅の証明章とまばゆい金の証明章は、なんともちぐはぐな印象で。
それを見てフォックスは子供を見るような目で笑い、
パーティ名については諦めたのか、溜息混じりに自分の証明章を身に付ける。
ああやれやれ、まったく小さな子供みたいにパーティ証明章を眺めて。
それなのに、不釣り合いにすら見える上級冒険者の証を付けて。
- 43 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:51:42 ID:S8ux2uyA0
隣に立つ少女は、18歳と言う若さでその証を身に付けている。
あどけなさすら残す顔立ちに、小柄な身体、手足も細く肌は白い。
太陽をミルクに溶かしたような眩しい金髪には、枝毛の一つも無いのだろう。
傷の少ない白銀の軽鎧を纏う彼女は、いったい何者なのだろう。
いったい何があって、その金の証明章を身に付けるようになったのか。
なんて、考えるだけ無駄か。
この少女は人を疑う事もろくに出来ないし、頭も良くないお人好し。
それだけは間違いないし、腕が立つ事も間違いない。
ならばそれだけで十分だ。
傍らに侍らせておくのに十分な容姿と実力なら、利用するに越した事はない。
二人でひと気のなくなった掲示板を見上げながら、良さそうな条件のクエストは無いかと探す。
木製で横広の掲示板には、裏表にクエスト依頼用紙が貼られている。
用紙には必要な人数や報酬額、簡単な依頼内容が記入されており、詳細は窓口で聞く形だ。
ツンは目一杯に顔を上に向けるが、一番上の用紙は下からでは読めやしない。
眉を寄せるそんな彼女の傍らで、フォックスはひょいと用紙を掴んで剥がした。
- 44 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:52:05 ID:S8ux2uyA0
爪'ー`)y‐「近くの村まで荷物の運搬だってさ、荷車も貸し出してる」
ξ゚⊿゚)ξ「んー……目的地は王都だけど、寄り道と回り道するなら……」
爪'ー`)y‐「次の目的地がこの村でもいい感じ」
ξ゚⊿゚)ξ「あー、街道沿いだとそうなるか……」
爪'ー`)y‐「村までは2、3日くらいでつくかなー」
ξ゚⊿゚)ξ「2、3日か……何運ぶの?」
爪'ー`)y‐「お祭りがあるみたいだから、それに使うやつだってさ」
ξ゚⊿゚)ξ「その情報だと木箱の中に生け贄の人間詰まってそうなんだけど」
爪'ー`)y‐「何それ怖い、あるけどそう言うの」
ξ゚⊿゚)ξ「荷車貸し出し……ふむ、じゃあ受けるか」
爪'ー`)y‐「雑に受けるねぇ……まぁ良いや、受託してくるよーん」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
- 45 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:52:34 ID:S8ux2uyA0
その後、無事にクエストを受託した二人は役所を後にして、フォックスの泊まる宿へと向かった。
一人泊まるも二人泊まるも変わりはしない。
パーティを組んだのだから、とツンは宿泊費をフォックスに立て替えて貰う事となる。
これまでの会話と、同じ時を過ごした結果。
ツンから見たフォックスは『胡散臭いが大変そうな身の上だし、手助け出来れば良い』と言った物。
フォックスから見たツンは『バカでお人好しの世間知らず、最大限に利用しよう』だった。
それから日が落ちるまでフォックスとこれまでの旅の話を交わしたり、他愛のない会話をして。
日が落ちれば簡素な夕食を共に口にして、フォックスはぶどう酒を飲みながらけらけらと笑う。
そして夜半には、フォックスは相棒とも言える楽器をつま弾いて控えめな声で歌をかなでてみせた。
ぽろんぽろんとたゆたう音に、良く澄んだ男の優しい声音。
先程ぶどう酒で笑っていた男と同一人物とは思えないその姿に、ツンは目を丸くした。
- 46 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:53:43 ID:S8ux2uyA0
金の月と銀の星
さざめく風は夜明けの空
金の冠、銀の声
ざわざわなみうつ草の色
花の冠、夜の腕
幼い娘と王たる男
夜空に浮かぶ上弦の月のように、ぴんと張りのある歌声。
それでいて、空からそそぐ月明かりみたいに、包み込むような優しいその声。
弦をはじく指先も、歌をこぼす口許も、どこか物憂げな眼差しも、腹が立つほど様になる。
胡散臭くて軽薄で、変な体質で、胡散臭い上に胡散臭い。
そんな男ではあるが、フォックスは、吟遊詩人としての腕は十二分に一流で。
不幸な身の上で、こんなにきれいに歌うのなら、少々胡散臭くても信じるしか無いじゃないか。
ツンは唇を尖らせながら、財布に残った銅貨の一枚をフォックスに投げて寄越した。
- 47 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:54:32 ID:S8ux2uyA0
翌朝、身支度を整えた二人は役所へ荷車を引き取りに行く。
交代で引けば良いだろう、と言う事になり、ツンが荷車を引いて町を発った。
小さな身体からは想像も出来ない体力と腕力により、ツンは易々と荷車を引いて歩く。
その傍らを歩くフォックスは、機嫌が良さそうに笑って話しかける。
一度目の休憩の時までは、穏やかな時が流れていた。
爪'ー`)y‐「はー、歩くだけでも疲れるねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた歩いてるだけでしょ……」
爪'ー`)y‐「まぁまぁ、はいお水」
ξ゚⊿゚)ξ「どーも」
爪'ー`)y‐「いやー、しかしツンちゃんと組めて良かったなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「あっそ……ところでさ」
爪'ー`)y‐「んー?」
- 48 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:55:42 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「魔女って、どんな人?」
爪'ー`)y‐「魔女? 呪いをかけた?」
ξ゚⊿゚)ξ「う、うん、見付けた時に顔知ってないと困るし……」
爪'ー`)y‐「あー別に良いよそんなの、普通に今は人妻してるし」
ξ゚⊿゚)ξ「は?」
爪'ー`)y‐「一般男性と結婚して幸せになってるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「…………行方知れずでは……?」
爪'ー`)y‐「いや? 結婚式見に行ったけど」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「あれ……?」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「理不尽な、呪いは……?」
爪'ー`)y‐「呪われてはいるよ?」
- 49 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:56:20 ID:S8ux2uyA0
ξ゚⊿゚)ξ「……あれ……?」
爪'ー`)y‐「呪われた理由は僕が魔女を一晩だけの恋人にして翌朝逃げ出したからだけど」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「ん……?」
爪'ー`)y‐「大丈夫? 無いけどおっぱい揉もうか?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「騙したな……?」
爪'ー`)y‐「うんっ☆」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ#゚⊿゚)ξ゙ ミシッ
爪>ー<)y‐ キャー
- 50 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:57:40 ID:S8ux2uyA0
- _,
ξ#゚Д゚)ξ「おぉぉまぁぁぁえぇぇぇぇえ!!!!」
爪'ー`)y‐「わーい顔が怖い顔が、ごーめんってー騙してごーめんってーばー
いやー賭けではあったよ? 死なないのは事実だし剥ぎ取りくらうのも事実だしー」
_,,
ξ#゚皿゚)ξフシャーッ
爪'ー`)y‐「だから君が僕を襲わないか、賭けだったんだよ?
でも君は賭けに値しないほど誠実だった」
_,
ξ#゚ -゚)ξ
爪'ー`)y‐「用心棒が欲しいのも死なないのも本当、騙したのは悪かったよ、でも君を信じて良かった」
_,
ξ#゚ -゚)ξ
爪'ー`)y‐「だからお願い、僕と一緒に旅しよ?」
_,
ξ#゚ -゚)ξ「むかつく」
爪'ー`)y‐「ごめんね」
_,
ξ゚ -゚)ξ「今さら契約取り消せないし、組んだからにはちゃんとやるわよ」
爪'ー`)y‐「これからよろしくね、可愛い相棒さん」
_,
ξ゚ -゚)ξ「しね」
爪'ー`)y‐(何も良くないのにすげー雑に言いくるめられててこの子今までよく無事だったな)
爪'ー`)y‐(と言うか騙されたって役所に相談すれば良いのに)
爪'ー`)y‐(格安で金ランクの護衛雇えて僕としては大満足だけどねー)
- 51 名無しさん[sage] 2016/10/23(日) 21:58:52 ID:S8ux2uyA0
がらがら、ごとごと。
がらがら、ごとごと。
荷車を引く吟遊詩人と、その前を無言で歩く戦士。
なぜ信用したのかと己を恥じる戦士と、疲労にぐったり足を引きずる吟遊詩人。
重苦しい沈黙の中、吟遊詩人が口を開いた。
爪;'ー`)y‐「ねーツンちゃーん」
_,
ξ#゚ -゚)ξ「……」
爪;'ー`)y‐「ついでに言うとさー、急いで呪い解きたいとも思ってないんだよねー」
_,
ξ# - )ξ
爪;'ー`)y‐「だーからのんびりやろーよー、急がなくて良いじゃーん」
直後、吟遊詩人の頭の潰れる音が響いた。
姑息な男と愚かな女の二人旅は、まだまだ始まったばかり。
おわり。