64 ◆tYDPzDQgtA[sage] 2016/10/30(日) 21:00:15 ID:5xEUS5Ks0


 例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。

 騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。

 周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
 聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声。

 刃を振るい、歌声を響かせ、路銀を稼いで進むのは二人。


 一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
 もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。



 【道のようです】
 【第二話 いいじゃんちょっとだけ。】



 彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。

65 名無しさん 2016/10/30(日) 21:01:41 ID:5xEUS5Ks0

 がらがら、ごとごと。
 がらがら、ごとごと。

 秋の花の匂いが漂う街道、幅の広い、左右を森に挟まれた道。

 荷台を引く男と、その前を歩く女。


爪'ー`)y‐「あっれぇこないだもこんな感じじゃなかったっけぇ?」

ξ゚⊿゚)ξ「何言ってんのあんた」

爪'ー`)y‐「やったね今回は口をきいてくれた」

ξ゚⊿゚)ξ「だから何言ってんの……」

爪'ー`)y‐「僕の事許してくれた?」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたのどこに許される要素があるの?」

爪>ー<)y‐「無い☆」

ξ゚⊿゚)ξ「自覚あんなら黙って歩けよ……」

爪'ー`)y‐「やーんツンちゃんが冷たーいお兄さん悲しいぞっ?」

ξ゚⊿゚)ξ「クソみたいにうざい」

爪'ー`)y‐「かなしい」

66 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:02:38 ID:5xEUS5Ks0

ξ゚⊿゚)ξ「騙されるのも問題だとは思うけど、人を騙して契約させるクズが何を」

爪'ー`)y‐「まぁ騙したのもクズなのも自覚してるし否定しないけどぉ」

ξ゚⊿゚)ξ「胸が痛んだりしないのあんた……」

爪'ー`)y‐「いや別に僕は良心が無いわけじゃないし利用できるものはするしその価値があるものは守るし」

ξ゚⊿゚)ξ「清々しいなお前クソが」

,,爪'ー`)y‐+「もちろん、それ以外に愛着を持つ事もあるけどね……?」スッ

ξ゚⊿゚)ξ「うるさい黙れ頭の中身引きずり出すぞ」

爪'ー`)y‐「やめてバイオレンスコミュニケーション」

ξ゚⊿゚)ξ「何が守るよ……腕力無振りの癖に……」

爪'ー`)y‐「いやいやいやー守り方は色々あるんだよーぉ?」

ξ゚⊿゚)ξ「あっそ…………日が落ちてきたな」

爪'ー`)y‐「あー、そろそろ夜営の準備しよっか」

67 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:04:07 ID:5xEUS5Ks0

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、地図は……」

爪'ー`)y‐「もうちょい先に他の冒険者が夜営した跡があるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「何で知ってんの」

爪'ー`)y‐「僕この道通ってあの町に行ったから」

ξ゚⊿゚)ξ「ふぅん……じゃあそこで一晩越すか」

爪'ー`)y‐「初めてのドキドキ二人野宿だね!」

ξ゚⊿゚)ξ「一晩起きられない程度に粉砕すれば良いの?」

爪'ー`)y‐「一晩死体と過ごすメンタルも怖いけど早々に僕を殺す事への躊躇いが消え失せてる事のが怖いな!」

ξ゚⊿゚)ξ「既に八回くらい死んだし……」

爪'ー`)y‐「出会い頭にリスキルされたもんなぁ……」

ξ゚⊿゚)ξ「それは悪かったと何度も……」

爪'ー`)y‐「あーほらついたよ、火を焚かなきゃ暗くなっちゃう」

ξ゚⊿゚)ξ「はいはい」

爪'ー`)y‐「着火道具持ってる?」

ξ゚⊿゚)ξ「マッチなら」

68 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:05:13 ID:5xEUS5Ks0

爪'ー`)y‐「秋は天気が崩れやすいからなぁ、湿気るマッチより別の持ち歩いた方が良いね」

ξ゚⊿゚)ξ「たまにマトモな事言うわよねあんた」

爪'ー`)y‐「普段は?」

ξ゚⊿゚)ξ「しね」

爪'ー`)y‐「わぁい簡素な二文字、一日で扱いの悪さが床抜いてる」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたは雑に扱っても良いって天啓があった」

爪'ー`)y‐「その神様はきっと僕のイケメンさに嫉妬してる」

ξ゚⊿゚)ξ「しね」

爪'ー`)y‐「お代わりいただきました」


 道の脇の、少しだけ開けた場所に荷車を停めて、夜営を準備を始める二人。

 誰かが設置したであろう丸太に腰を下ろし、外套や食事を取り出すフォックス。
 ツンは森に少しだけ踏み入り、薪を拾いながら動物を探す。

 落ち始めた葉を足で退かしながら注意深く地面を見れば、所々に獣の足跡。
 いや、四足の獣にしては足跡の数が少なく、深い。
 水気の残る葉を踏んだ跡もあり、まだ時間がそう経っては居ない事もわかる。

 森の奥に視線をやってから、フォックスの傍らに集めた薪を置いて、代わりに斧槍を掴んだ。

69 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:06:10 ID:5xEUS5Ks0

爪'ー`)y‐「ん? 何かいた?」

ξ゚⊿゚)ξ「二足の獣の足跡、まだ新しい」

爪'ー`)y‐「あーんワーウルフかな……夜営中に来たら困るねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「人里近いのに降りてくるのは良くないわね、少し減らさないと」

爪'ー`)y‐「ほっといたら討伐クエスト貼り出されるんじゃなーい?」

ξ゚⊿゚)ξ「被害が出るのを待つのは嫌なの」

爪'ー`)y‐「ワーウルフの頭数は減らすのに人間の頭数が減るのは嫌?」

ξ゚⊿゚)ξ「嫌よ、私は人間だから」

爪'ー`)y‐「んー…………じゃ、行ってらっしゃーい、火起こしとくねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「ん」

爪'ー`)y‐

爪'ー`)y‐(意外とちゃんと冒険者してるじゃん)

爪'ー`)y‐(理想だけ追っ掛ける甘ちゃんかなーと思ったけど、ふーん)

70 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:07:19 ID:5xEUS5Ks0

 がさがさと草を掻き分けて森へ入って行くツンの背中を見送りもせず、フォックスは薪を組む。

 荷物から湿気取りにくるまれたマッチを取り出して、紙に火を点けて薪のなかに放り込む。
 しばらくちりちりと揺らいでいた小さな炎は、乾いた小枝に燃え移り、夕暮れの迫る街道をわずかに照らした。

 手持ちの小鍋に水を入れて、火にかけてお湯を沸かしつつ耳を澄ませてみた。
 遠くから、草を踏み、風を切る音が聞こえる。
 それと、獣のような断末魔。

 野犬だろうが魔物だろうが、人に害をなすならば狩らねばならない。

 だが異常事態で無い限り、狩り尽くす事はせず数を減らすだけ。
 人は恐ろしいのだと言う印象を、獣のなかに刻み付けるのだ。

 そうすれば、しばらくはまた出てこなくなる。
 時おり仇討ちのような真似をする魔物も居るが、そうなれば巣ごと潰すまでだ。

 魔物も獣も、今となっては自然の一部。
 無駄に巣を荒らしたくはない、と言うのが彼女の気持ちなのだろう。


 ま、潰せば別の魔物が巣を作る可能性もある。
 多少は残ってもらわねば。

 ぱちぱちと揺れる火を見ながら、フォックスは欠伸混じりに荷車から楽器を下ろす。
 退屈を紛らわせる歌はあったかな、と指先で弦を弾いた。

 彼女が妙な情けをかけては、この先は前途多難になる。
 心は残したまま、時に非情になって貰わなければ。

71 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:08:12 ID:5xEUS5Ks0

 すると背後で、がさがさ。
 人の足音と、草の音。


爪'ー`)y‐「お、ツンちゃんおか」

,,ξ゚⊿゚)ξポタポタ

爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ「ただいま」

爪'ー`)y‐「血まみれだぁ……」

ξ゚⊿゚)ξ「あの獣が暴れやがってからに」

爪'ー`)y‐「思ったより慈悲も何もなかったぁ……」

ξ゚⊿゚)ξ「一発で終わらせてあげようと思ってんのにばたばた逃げるからまぁ腕とか足とか飛んで」

爪'ー`)y‐「あーあーグロいグロい」

ξ゚⊿゚)ξ「結局のたうち回って死にやがって……返り血浴び放題かよ……」

爪'ー`)y‐「思ってたより非情だったぁ……」

72 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:09:02 ID:5xEUS5Ks0

ξ゚⊿゚)ξ「そら、肉よ」

爪'ー`)y‐「わぁいお肉、新鮮ですじばって固いお肉」

ξ゚⊿゚)ξ「食う時に手を合わせれば良いでしょ?」

爪'ー`)y‐「死んでくれてありがとって?」

ξ゚⊿゚)ξ「平たく言えばそうなるけど、厳密には殺されてくれてありがとうかな」

爪'ー`)y‐「……ま、どっちでも良いさ」

ξ゚⊿゚)ξ「血抜きにそこに下げとくか」

爪'ー`)y‐「魔物寄ってこない?」

ξ゚⊿゚)ξ「お肉が増えるわよ」

爪'ー`)y‐「わぁいお肉……野性動物は固くて美味しくない……」

ξ゚⊿゚)ξ「少しさばいて焼くか……」

爪'ー`)y‐「ツンちゃんいつもこんな旅を……?」

ξ゚⊿゚)ξ「肉は現地調達するものでしょ」

爪'ー`)y‐「アグレッシヴぅ……」

73 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:09:49 ID:5xEUS5Ks0

 頭から魔物の血をかぶったツンが木の枝に新鮮な肉の塊を吊るし、濡らした布で髪や顔を拭く。
 明日の朝にでも川へ行こう、と鎧に付いた血を拭いながら森の奥を眺めた。

 動植物の繁殖具合で、川の場所はある程度見当がつく。
 恐らく森の奥、さして遠くない場所に川があるのだろう。

 ああ、服まで血まみれだ。
 着替えたいが少々難しい。


 それより日も随分落ちた、夕暮れ夕闇は夜のとばりに姿を沈めている。
 さっさと食事をして一眠りしよう。


爪'ー`)y‐「お肉焼くの?」

ξ゚⊿゚)ξ「食べない?」

爪'ー`)y‐「町で包んでもらったお弁当がまだあるから……」

ξ゚⊿゚)ξ「昼に休まなかった分多く食えるわね」

爪'ー`)y‐「それはツンちゃんが僕を休ませる気が全くなかったからだよね」

ξ゚⊿゚)ξ「明日も一日荷車引きたいの?」

爪'ー`)y‐「わぁい僕お弁当大好きいただきまーす、はいツンちゃんの分」

ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」

爪'ー`)y‐(食べ物に関してはクソ素直だよなぁ……)

74 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:10:44 ID:5xEUS5Ks0

 フォックスは丸太をベンチとして座り、ツンは外套を地面に敷いて直接胡座を掻いて座る。
 適当な骨を割って、削いだ魔物の肉を二つ突き刺し、焚き火に放り込んだ。

 女らしさに無振りだなぁ、と苦笑しながらフォックスが沸かしたお湯を木製のコップに注ぎ、
 簡易のお茶を作ってツンに差し出す。

 礼を言いながら受け取ると、傍らに置いて先に渡された弁当の包みを掴む。


 ぱりぱり、と紙の包みを剥がすと、姿を見せるのは両手で持つ様な大きさのパン。
 半分にスライスされた厚めの粗いパンにはたっぷりのナッツソースと葉野菜、ローストビーフが挟んである。

 ツンは手を軽く拭いてから、いただきます、と手を合わせた後に、勢い良く大きくかぶり付く。


 ざく、と粗い歯応えのパン。
 外側は固めだが、内側はナッツ特有の香ばしく甘い、濃厚なソースのお陰でしっとりしている。

 パンに挟まれたローストビーフは量も多く、食いでがある。
 しっかりとした肉の味、ややもさつきはするが野菜とソースのお陰で喉は擦らずに済んだ。

 しなしなの野菜も所々にしゃきっとした歯触りが残っていて、
 ソースに入っているナッツの粒と共に歯応えを楽しませてくれる。

 ざくざく、もぐもぐ、がつがつ、ごくん。

 あっと言う間に弁当を平らげ、手に付いたソースを舐めながら焚き火に突っ込んだ肉を動かす。
 お腹いっぱい、には程遠そうな顔だ。

75 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:11:51 ID:5xEUS5Ks0

爪'ー`)y‐「はー……本当に健啖だね君は……」

ξ゚⊿゚)ξ「ご飯が美味しいと生きてる実感がある」

爪'ー`)y‐「まぁ確かに……」

ξ゚⊿゚)ξ「肉焼けたけどいる?」

爪'ー`)y‐「いらないって言いたいけど意外と肉の焼ける匂いが暴力的でつらい」

ξ゚⊿゚)ξ「はい」

爪'ー`)y‐「いただきます」

ξ゚⊿゚)ξ「塩とコショウ」

爪'ー`)y‐「この辺は塩が安くて良いよねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「地域によっちゃ金より高いものね……」

爪'ー`)y‐「そう言う所の料理は辛いんだよねぇ……塩の代わりに唐辛子使うし……」

ξ゚⊿゚)ξ「つらいわよねあれ……」

爪'ー`)y‐「あ、流石につらいんだ……」

76 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:13:36 ID:5xEUS5Ks0

 フォックスも弁当のサンドを食みながら、渡された肉を受け取って軽く塩を振る。

 口の中が空いたところで肉を口に運ぶと、案の定の固さ。
 ぐぎぎ、と噛み千切って咀嚼を続ければ、次第に肉の旨味がしみだす。

 固いし獣臭い、決して上質とは言えない肉。
 しかし季節のお陰か、脂の乗りは悪くない。

 ぐぎぐぎ、顎の疲れを感じながらも意外と食える魔物の肉に少し複雑そうな顔をした。


 ちら、とツンの方を見ると、追加の肉を削ぎながら口には焼けた肉。
 もぐもぐと顎を動かす様子を見るに、どうやら歯も顎も丈夫らしい。

 流石だなぁ、と顎の蝶番あたりを撫でながら肉を飲み下した。

 もう少し手を加えれば、十分に美味しく食べられる気がする。
 血抜きが済んだらハーブや果実に浸けてみるか、ヨーグルトに浸ければ柔らかくなるんだったか。

 相棒さんがTHE・男の料理みたいな物しか作りそうにないし、まともな料理は僕担当かなぁ。
 ある程度しか出来ないのになぁ、まさかこんな形で覚える羽目になるとは。

 でもまぁ確かに、美味しい食事は生きている実感がわく。
 幾度も死に続ける僕には、悪くないかもなぁ。

77 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:15:01 ID:5xEUS5Ks0

 ぱちぱち、じゅわじゅわ。
 焚き火に肉の脂が落ちてはぜる音。

 乱雑に削ぎ裂かれた肉を焼くツンの姿は熟練の冒険者、言い方を変えれば何かもうオッサンみたいで。
 本人の外見にまるでそぐわないそれに、フォックスは呆れるやら笑うやら。

 いったいどんな師匠の元に師事していたんだろうな、この子は。


  ──── この時のフォックスはまだ知らない
   ツンの師匠がアダマンタイトの位を持つ元冒険者である事を ────


  ──── なおツンも良く分かってない ────

  ──── なお今後関わっても来ない ────



爪'ー`)y‐「顎がだるい」

ξ゚⊿゚)ξ「さすがに固いわね」

爪'ー`)y‐「よく平気で食うなぁ、顎の力にも怪力って関わってるの?」

ξ゚⊿゚)ξ「顎が強くても歯が弱いと意味無くない?」

78 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:15:59 ID:5xEUS5Ks0

 二人は食事を終えて、後片付けをしながら再び湯を沸かす。

 二杯目のお茶を入れると、今度はフォックスが己の荷物から二つの包みを取り出した。

 何かとツンが首を傾げつつも、差し出されたそれを受け取り、包みを開く。
 するとそこにあったのはクルミのパイ、あの酒場の名物のひとつだった。


ξ*゚⊿゚)ξ「お……ぉぉ……」

爪'ー`)y‐(すげぇ喜んでる)

ξ*゚⊿゚)ξ「神かよ……感謝します……」

爪'ー`)y‐(やや雑な感謝をされた)


 片手で持つにはこぼれそうな大きさのそれ。
 ずっしりと重いパイに目を輝かせて、いただきます、と二度目のかぶり付き。

 粉にしたナッツとバターの風味、無花果とリンゴの甘酸っぱさ、歯応えのある生クルミ。
 かりかりさくさく、もったりとした重い甘さだがくどくはない。

 入れたばかりの熱いお茶を飲むと、洗い流される口の中。
 再びパイを口に運び、甘味と言う幸せの渦に身を沈める。

 見てるだけでお腹が一杯になるなぁ、とフォックスは半分ほど食べたパイを包み直して荷物に戻した。

79 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:16:51 ID:5xEUS5Ks0

ξ*´⊿`)ξ「あー……美味しかった……」

爪'ー`)y‐「食べてる時が一番幸せそうだねぇ君は……」

ξ*´⊿`)ξ「あの町の食べ物は美味しい……」

爪'ー`)y‐「あの町ねぇ、少し前まではただの田舎らしい村だったんだよね」

ξ゚⊿゚)ξ「そうなの?」

爪'ー`)y‐「うん、終戦から経済効果がこー、ちょちょいとね、発展したみたいよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ふーん……」

爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐「なぜ僕の荷物を見ているのかな?」

ξ゚⊿゚)ξ「パイ食わねぇか」

爪'ー`)y‐「用途が違うよ食われる側だよ僕」

81 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:17:27 ID:5xEUS5Ks0

爪'ー`)y‐「だーめですぅーアレは僕の朝食ですぅー」

ξ゚⊿゚)ξ「朝食ならほらここに肉が」

爪'ー`)y‐「重いよ朝から」

ξ゚⊿゚)ξ「パイも重いのでは」

爪'ー`)y‐「とにかく駄目ですもう寝なさい」

ξ゚⊿゚)ξ「おう子供扱いすんな」

爪'ー`)y‐「子供ですぅーお兄さんから見れば子供ですぅー」

ξ゚⊿゚)ξ「青二才が……」

爪'ー`)y‐「なぜ年下に言われなければいけないのか……!?」

ξ゚⊿゚)ξ「んじゃ私が先に寝て良い?」

爪'ー`)y‐「良いよー、お子様には子守唄を歌ってあげよう」

ξ゚⊿゚)ξ、チッ

爪'ー`)y‐「傷付くから」

82 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:18:08 ID:5xEUS5Ks0

 外套を身体に巻き付け、木に背中を預けて目蓋を下ろすツン。
 やっぱり横にはならないんだな、と弦を指先で撫でながら、どんな歌にしようかとフォックスは空を仰ぐ。

 月の浮かぶ闇夜に星は無く、木々の葉擦れと焚き火の音、遠くからは獣と鳥の声。

 秋の匂いは、不思議と夜には薄れて感じる。
 それでも冷たくなり始めた空気が頬を撫でれば、胸が痛むような秋に触れる夜。


 ぽろん。


 最果ての空
 見果てぬ夢

 全てを敵に回しても
 あの人だけを守り抜く

 空浮かぶ月
 夢見た日々

 誓い合ったあの日から
 遠き夢へと成り果てて

 求めたものは互いだけ
 月明かりだけが見届けて

83 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:19:31 ID:5xEUS5Ks0

(今日は、少し悲しい月の歌)

(絵になるのが腹が立つ)


 もぞ、とツンの懐から取り出した銅貨一枚。

 前払いで貰った報酬の一部を、フォックスに向かって投げて寄越した。


「毎回くれなくても良いよ」

「聴いたからには払うわよ」


 ぷい、と顔を背けて眠る姿勢に入ったツンを見て、
 彼女が寝入るまで、フォックスは歌の続きを静かに歌って聞かせた。

 どこか破滅的な二人の若者、その姿を言葉と音に乗せて奏でる。

 その優しげで、どこか寂しげな歌声は、耳には残るが記憶には残らず、
 ツンが目覚めた時に、妙な歯痒さを小さな爪痕として残した。

84 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:20:25 ID:5xEUS5Ks0


 火の番を交代して、うたた寝して、目を覚ますとそこには身支度を整えたフォックスが居た。

 一晩野宿したとは思えない小綺麗な身なりで、二人分のお湯を沸かしていて。


ξ゚⊿゚)ξ「……あんたいつ寝たの……」

爪'ー`)y‐「僕としては寝起きで整えてる姿って一番見られたくないんだよねー」

ξ゚⊿゚)ξ「えー……よくやるわ……」

爪'ー`)y‐「はい顔拭いて」

ξ゚⊿゚)ξ「んー」

爪'ー`)y‐「はいお茶」

ξ゚⊿゚)ξ「んー」

爪'ー`)y‐「川があっちにあったけどどうする? この時期に水浴びすると風邪引かない?」

ξ゚⊿゚)ξ「私風邪引いたことない」

爪'ー`)y‐「あーそっかーバカは風邪引かないもんね! うっかりうっかり!」

ξ゚⊿゚)ξ「喧嘩売ってんのか」

85 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:21:08 ID:5xEUS5Ks0

爪'ー`)y‐「お砂糖一個どうぞー」

ξ゚⊿゚)ξ「ありがと……あー、あったかい」

爪'ー`)y‐「夜間は冷えるようになったねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「冬の支度しなきゃ駄目かしら」

爪'ー`)y‐「今のうちの方が安く済むねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「ふむ……じゃあ次の村で揃え あっつ!」

爪'ー`)y‐「あ、やけどした?」

ξ゚⊿゚)ξ「お茶美味しいけど熱いわね……」

爪'ー`)y‐「大丈夫? キスする?」

ξ゚⊿゚)ξ「拳と爪先どっちが良い?」

爪'ー`)y‐「唇」


< メゴシャーゴリゴリ

86 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:21:54 ID:5xEUS5Ks0

爪 Д#:;, ジュル…ジュル…

ξ゚⊿゚)ξ「着替えるか」

爪 ー:;,ジュル…

ξ゚⊿゚)ξ「確か着替えはここに……」ゴソゴソ

爪'ー`)+ペカッ

ξ゚⊿゚)ξ「よっと……」モゾモゾ

爪'ー`)

ξ゚⊿゚)ξ「血に強い素材だけどやっぱこまめに洗いたいなー」

爪'ー`)y‐

ξ;゚⊿゚)ξ「ふぅ……村についたらしっかり洗 うわびっくりしたぁ!?」

爪'ー`)y‐「僕は結局どっちとキスしたの?」

ξ゚⊿゚)ξ「じめん」

爪'ー`)y‐「この地面擦った跡はもみじおろしの跡かぁ」

87 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:23:15 ID:5xEUS5Ks0

爪'ー`)y‐「あとさぁツンちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ「んー?」ゴソゴソ

爪'ー`)y‐「いくら必要のないサイズだろうと下着は装備しよう」

ξ゚⊿゚)ξ「おいお前人の着替え見てんじゃねえぞ」

爪'ー`)y‐「目の前で脱いだから見えただけだよ僕は無実だよ」

ξ゚⊿゚)ξ「無実が無罪かはまた別なので」

爪'ー`)y‐「なるほど確かに」

ξ#゚⊿゚)ξ三づ「オラァ!!」ビュッ

爪;'Д`)y‐「ギャー!!」ドボォ



爪'ー`)y‐「ねぇツンちゃん……お腹を拳で突き破られると即死しないから頭潰れるよりつらいんだ……」

ξ゚⊿゚)ξ「ごめん」

爪'ー`)y‐「次からは即死させて……」

ξ゚⊿゚)ξ「わかった」

88 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:24:03 ID:5xEUS5Ks0

爪'ー`)y‐「お肉どうにかしないとなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「解体するか」

爪'ー`)y‐「頑張ってね」

ξ゚⊿゚)ξ「手伝う気は」

爪'ー`)y‐「お水汲んでくる」

ξ゚⊿゚)ξ「貴様……」

,,爪'ー`)y‐「行ってきまーす」
 _,
ξ゚⊿゚)ξ=3


 ざくざく、ぎりぎり、ぶちぶち、ごりごり。
 力任せに小さくなって行く元魔物、現食肉。

 腐敗を防ぐ草と共に、乱雑に皮袋に詰められる肉。
 毛皮はある程度綺麗に剥がれたから、小銭にはなるかも知れない。

 骨、はさして使い道は無いか、強度もそれなり加工はしにくい。
 内臓もこいつのは食えたものではない、薬にもならない、その辺に捨てておけば何かが食うだろう。

89 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:24:49 ID:5xEUS5Ks0

 大型犬くらいの大きさか、多少食いではあるが処理が面倒だな。
 血は抜けているから服は汚れないが、さすがに手はべとべとだ。

 魔物の肉は売れないからなぁ、固いし臭いし家畜の肉を食う方がずっと良い。
 まあ場所によっては魔物の肉を売りにする所もあるが、ああ言う所は魔物の種類が違う。

 専門家が捕って処理して加工して、完璧な状態で出てくる。
 素人の冒険者が雑に捌いた肉と比べるべきではない。

 あーそういやドラゴンの肉って今が美味しいんだっけなぁ。
 そろそろ生け贄を出して、その見返りの肉が振る舞われるはず。

 行きたいなぁドラゴンの町。


ξ゚⊿゚)ξグーギュルル

爪'ー`)y‐「ツンちゃん……肉を解体しながら……」

ξ;゚⊿゚)ξ「ち、違う! 誤解よ! これには理由が!!」

爪'ー`)y‐「良いようん……焼いて食べようか……」

ξ;゚⊿゚)ξ「違うから!! お腹は空いたけど違うから!!」

90 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:25:38 ID:5xEUS5Ks0

 じゅわじゅわ、ぱちぱち。

 塩とコショウをすり込まれた肉が火に炙られ、その匂いが胃袋を刺激する。
 口許を擦りながら肉を返し、弁解するツンに、フォックスが頷きながら口を開いた。


爪'ー`)y‐「はぁなるほど、ドラゴンの肉」

ξ゚⊿゚)ξ「秋には肉が美味しくなるのよね……脂が乗って甘くて……」

爪'ー`)y‐「食に関しては貪欲だよね……ドラゴンかぁ、前に一度干し肉を食べたくらいだなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「師匠にご馳走して貰った事があるけど、美味しいわよ」

爪'ー`)y‐「時期も良いなら寄ってみようか、ドラゴンの町」

ξ゚⊿゚)ξ「マジで」

爪'ー`)y‐「うん、道順的にも悪い場所じゃないし」

ξ゚⊿゚)ξg゙ グッ

爪'ー`)y‐「無言で」

91 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:27:00 ID:5xEUS5Ks0

爪'ー`)y‐「肉は焼けたかな」

ξ゚⊿゚)ξ「うん」

爪'ー`)y‐「じゃ、朝食にしようか」

ξ゚⊿゚)ξ「肉しか無いけど」

爪'ー`)y‐「何で君は食事を現地調達以外しようとしないの?」

ξ゚⊿゚)ξ「えっ、だって飯は現地調達するものでしょ?」

爪'ー`)y‐「どんなサバイバル術なの……町で多少の食材を買うのも大事だから……」

ξ゚⊿゚)ξ「師匠達は現地で肉と草を調達したって……」

爪'ー`)y‐「君の師匠はサバイバル名人かよ……良いからほら、お肉どけて」

ξ゚⊿゚)ξ「むー……」

爪'ー`)y‐「大体主食が無いじゃないのこれ」

ξ゚⊿゚)ξ「肉が」

爪'ー`)y‐「人間の主食は肉じゃないから」

92 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:27:47 ID:5xEUS5Ks0

 荷物から取り出した固くてもさつくパンに植物の油を薄く塗り、焚き火で軽く焼いて塩を少々。

 香ばしさと柔らかさが増して、幾分食べやすくなったパンに焼いた魔物の肉を挟む。

 野菜が無いのが惜しいが、次の村で乾燥ハーブでも買って携帯しよう。
 今後絶対あった方が良い。


爪'ー`)y‐「はいどーぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「たったこれだけで料理になりやがった……」

爪'ー`)y‐「料理と言うほどでも無いんだけど、少しの手間が大事なんだよ? わかる?」

ξ゚⊿゚)ξ「いただきます」

爪'ー`)y‐「華麗に無視だよ、僕も食べよ」

ξ゚〜゚)ξモギュモギュ

爪'〜`)y‐モギュモギュ

ξ゚⊿゚)ξ「固いわね」

爪'ー`)y‐「固いわ」

93 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:28:36 ID:5xEUS5Ks0

ξ゚⊿゚)ξ「私は美味しく食べられるけど、あんたには顎痛くない?」

爪'ー`)y‐「すごく顎がだるいね」

ξ゚⊿゚)ξ「無理しなくて良いわよ……」

爪'ー`)y‐「無理と言うほどでも無いんだけど女の子に膝枕で撫でてほしい程度には顎がだるい」

ξ゚⊿゚)ξ「女の子に膝でこめかみを強打されたい?」

爪'ー`)y‐「やめてよ願望すらぶち殺すその姿勢」

ξ゚⊿゚)ξ「その願望なら叶えてやれるけど」

爪'ー`)y‐「やめてよ膝で僕の頭を強打するのは僕の願望ではないよ願い望まないよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ごちそうさま」

爪'ー`)y‐「ほんと食べるの早いな君は」

ξ゚⊿゚)ξ「まだ入る」

爪'ー`)y‐「健啖と言えば聞こえは良いけど君は普通に大飯食らいだよね?」

ξ゚⊿゚)ξ「だからどうした」

爪'ー`)y‐「全力で肯定された……もう僕の分もあげるよ……」

ξ*゚⊿゚)ξ「わぁい」

94 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:30:12 ID:5xEUS5Ks0

爪'ー`)y‐(食えれば何でも良いみたいになってんなこの子)

ξ゚〜゚)ξモギュモギュ

爪'ー`)y‐(食に関するトラウマがあるとか……)

ξ゚〜゚)ξモグモグ

爪'ー`)y‐(無さそうだなこの顔)

ξ゚⊿゚)ξ「ごちそうさま」

爪'ー`)y‐「はいはい、そこのお水で君の相棒を磨いてあげてね」

ξ゚⊿゚)ξ「人間を……?」

爪'ー`)y‐「僕じゃないよ斧槍だよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ああこっちか、血は落としたしちゃんと手入れもしたんだけどね」

爪'ー`)y‐「すっごい赤黒いよねそれ」

ξ゚⊿゚)ξ「先の戦で英雄が千人斬ったって言われてる業物よ」

爪'ー`)y‐「はいはい眉唾眉唾」
 _,
ξ゚⊿゚)ξ「師匠が私に下げてくれたのよ、本物なんだから」

爪'ー`)y‐「君の師匠は本当に何者なんだよ……」

95 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:31:21 ID:5xEUS5Ks0

 ツンに背を向けたまま昨夜の残りのパイを胃におさめ、
 手入れと身支度を終わらせたツンが焚き火に水をかける。

 最後に荷物の点検を済ませてから、二人は出発した。

 からがら、ごとごと。
 今日はツンが荷車を引く。


 秋の匂いが強い。
 花の匂い、草の匂い、不思議と冷えた空気の匂い。

 色づき始めた木々の装いと、冬に向けて脂肪を蓄える野生の獣。
 実る果実に落ちる種、細かな雲が浮かぶ空は今日も薄青く晴れ渡る。

 秋は豊かな季節だ。
 過ごしやすく食べる物も豊富。

 野菜も穀物も、肉も魚も美味い季節。
 この時期ならきっと、行く先々で舌鼓を打てるだろう。


 ああしかし、秋とは妙に空が高く感じる。
 がらがらごとごと、荷車を引いては空を見上げた。

96 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:31:59 ID:5xEUS5Ks0

爪'ー`)y‐テクテク

ξ゚⊿゚)ξガラガラ

爪'ー`)y‐「ねぇツンちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ「んー」

爪'ー`)y‐「次からは馬車を借りない?」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな金はない」

爪'ー`)y‐「時短出来るよ時短、徒歩だと時間かかっちゃうよ」

ξ゚⊿゚)ξ「狐さ」

爪'ー`)y‐「フォックス君」

ξ゚⊿゚)ξ「歩くの飽きてるでしょ」

爪'ー`)y‐「なぜバレたのか……」

ξ゚⊿゚)ξ「あんた冒険者としてどうなのそれ……」

97 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:32:45 ID:5xEUS5Ks0

爪'ー`)y‐「荷台乗って良い?」

ξ゚⊿゚)ξ「良いわけねーだろぶち殺すぞ」

爪'ー`)y‐「やーだぁー今日もう二回死んだーぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「朝から二回死ぬような事してんじゃないわよ」

爪'ー`)y‐「出会って三日目の人間を二桁殺すのもどうなの?」

ξ゚⊿゚)ξ「人間だっけ」

爪'ー`)y‐「お兄さん泣いちゃいそう」

ξ゚⊿゚)ξ「出来れば今日中に村に着きたいんだからさっさと歩いてよ」

爪'ー`)y‐「乗せてくれた方が早いよ?」

ξ゚⊿゚)ξ「殺すぞ?」

爪'ー`)y‐「死んだら乗れるな」

ξ゚⊿゚)ξ「置いてくわ」

爪'3`)y‐「護衛ぃーちょっと護衛ぃー、雇用主に対して護衛ぃーぃ」

99 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:33:45 ID:5xEUS5Ks0

爪'ー(#)y‐「だからいっそ一思いに殺してくれと何度も」

ξ゚⊿゚)ξ「死んだら治るからもうちょっと痛め」

爪'ー`)y‐「あのさぁいかに僕がギャグのオチ要員みたいな体質だからってそうホイホイ殺さないでよ」

ξ゚⊿゚)ξ「自覚あるならどんどん死ねよ」

爪'ー`)y‐「死に芸もやり過ぎると飽きるよね」

ξ゚⊿゚)ξ「殺されるような真似をするなと何度も」

爪'ー`)y‐「あーほらツンちゃん森の切れ目だよー」

ξ゚⊿゚)ξ「無視すんな あら」

爪'ー`)y‐「お、遠目に村が」

ξ゚⊿゚)ξ「ふーん、小さいけど賑やかそうね」

爪'ー`)y‐「お祭りって言ってたしその準備かな、ほらツンちゃん走って走って」

ξ゚⊿゚)ξ「お前マジふざけんなよ乗るなよ荷車によ」

爪'3`)y‐「ツンちゃんヤンキーみたいになってるこっわーい」

ξ゚⊿゚)ξ「処す」

爪'ー`)y‐「あっ待」

100 名無しさん[sage] 2016/10/30(日) 21:35:19 ID:5xEUS5Ks0

 ひらけた視界に映るのは、丘の下に広がる村の姿。
 遠目にも僅かにうかがえる人の動きは、賑やかに忙しなく働いていて。

 村の向こうに広がる、金色の海。
 溺れそうな麦畑は、ざわざわきらきら、秋の光を撒き散らす。

 祭りと言うのは収穫祭か、豊穣の祭りか。
 まだ収穫の済んでいない畑を見るに、稔りを祝い、祭りが終えれば収穫の運びだろうか。


 何にせよ、祭りのご相伴には預かれそうだ。


 ご馳走も出るだろう、酒に踊りにと楽しげな熱気も振る舞われる筈だ。
 楽器の弾ける詩人は、ここで少し稼げるかも知れない。

 秋は良い。
 豊かな時期だ。
 懐までも暖かくなる。


 まだ村まで距離はあるが、夜に楽しめるであろう美味しいものを想像しては唇を舐める。


 そうして日がまだ高い内に、死体と荷物を乗せた荷車が、ごとごと村へと辿り着く。


 おしまい。

inserted by FC2 system