264 ◆tYDPzDQgtA 2016/11/27(日) 21:00:43 ID:UkH/Vfmk0


 例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。

 騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。

 周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
 聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声。

 刃を振るい、歌声を響かせ、路銀を稼いで進むのは二人。


 一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
 もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。



 【道のようです】
 【第六話 いいこだよねほんとうに。】



 彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。

265 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:01:33 ID:UkH/Vfmk0

 朝から賑やかな街並み。
 人々が行き交い、市場の方は熱気に包まれている。

 竜の街はまだ遠いが、今日は大きな街でのんびり出来る。
 まずは役所に行って、それから宿をとって、買い物を済ませて。

 買わなきゃいけないものをリストアップしないとな。
 相方が出来てからは、ちゃんと買い物も出来るようになったし。

 私はお小遣い制になったけど。


ξ゚⊿゚)ξ「はーついたついた……」

爪'ー`)y‐「やあお嬢さん何て素敵なお髪なんだろうねまるで空から差し込む太陽の光そのもの」

ξ゚⊿゚)ξ「役所はあっちかな……」

爪'ー`)y‐「どうだいお嬢さん僕と一緒にお茶でもどうかな一曲君のために歌わせて欲しいんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「そこのクソ狐、着いてこないなら今この場で頭握り潰すぞ」

爪'ー`)y‐「ごめんよお嬢さん突然恐ろしい何かに呼ばれてしまったんだ行きたくないが行かねばなら」

ξ゚⊿゚)ξ「ナンパを続けると言うならこの場で背骨砕いて足を掴んで引きずり回す」

爪'ー`)y‐「あーごめんねー! 相棒ちょっとおこだからー! 激おこだからー!! またねー!!」

266 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:02:48 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「とっとと来いやクソが……」

爪'ー`)y‐「もーおー! あと少しだったのにさー! 何で邪魔するかなー!?」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐「ツンちゃん融通きかないって言うかー! 空気読めないって言うかー! もー!!」

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ」

爪'ー`)y‐「何さー! もー!!」

ξ゚⊿゚)ξ「私、あんたの全身の骨を小さい順から握って潰す事も出来るんだけど」

爪'ー`)y‐「すみません役所行きますクエスト報告します面倒な書類仕事は全部僕がやります」

ξ゚⊿゚)ξ「よろしい、じゃあまず役所ね」

爪'ー`)y‐「はーぁー、せっかく良い感じで口説けそうだったのに」

ξ゚⊿゚)ξ「引っ掛かる女もどうかと思うわ」

爪'ー`)y‐「いっぱい居るよ? 君が特例なんだよ?」

ξ゚⊿゚)ξ「まだイケメン芸引きずってるの?」

爪'ー`)y‐「芸風じゃなくて事実だよ? わかる? 理解できりゅ?」

ξ゚⊿゚)ξ「男の美醜なんぞよくわからん」

爪'ー`)y‐

267 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:04:51 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「APPで言うと……15くらいあるんだよ……?」

ξ゚⊿゚)ξ「何だよAPPって……」

爪'ー`)y‐「数値上は人間の限界値は18だよ……?」

ξ゚⊿゚)ξ「知るかよ……」

爪'ー`)y‐「ねぇ認めてよ……僕はイケメンだと認めてよ……」

ξ゚⊿゚)ξ「やだ何この人……めんどキモい……」

爪'ー`)y‐「最近イケメン扱いされなすぎて悲しいから今日は素直に誉めてくれるお姉ちゃんのとこにいく」

ξ゚⊿゚)ξ「お金取られるやつ?」

爪'ー`)y‐「それはどうかな?」

ξ゚⊿゚)ξ「別に好きにして良いけど……買い出しのリストはまとめないと」

爪'ー`)y‐「僕新しいフライパン欲しい、鋳鉄の大きいやつ」

ξ゚⊿゚)ξ「すっげ重いわよ」

爪'ー`)y‐「アレで焼くとお肉が美味しくなる」

ξ゚⊿゚)ξ「私が持つわ」

268 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:05:44 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「じゃあ役所で報告済ませて……」

ξ゚⊿゚)ξ「次のクエスト探しとく」

爪'ー`)y‐「んー……よいしょ、書面と……証明章を……」

ξ゚⊿゚)ξ「狐ー」

爪'ー`)y‐「んー? マイダーリンか名前で呼んでー」

ξ゚⊿゚)ξ「クソ狐、このクエストは?」

爪'ー`)y‐「頑なに呼ばれねぇ、はいはいどんなの」

ξ゚⊿゚)ξ「これ、畑の手伝い」

爪'ー`)y‐「ニラ茶栽培かー、珍しいね」

ξ゚⊿゚)ξ「飲んだ事ある?」

爪'ー`)y‐「無い、でもこれ期限が短いよ、すぐには難しい」

ξ゚⊿゚)ξ「残念、んじゃ洞窟に沸いた魔物を討伐」

269 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:06:49 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「難度は?」

ξ゚⊿゚)ξ「んーちょっと難しい、でも薬があればいけるかも」

爪'ー`)y‐「んじゃ君にお任せしようかね」

ξ゚⊿゚)ξ「はい任された」

爪'ー`)y‐「どこの洞窟?」

ξ゚⊿゚)ξ「まだ先、海辺の方で実害出てないから緊急度低め」

爪'ー`)y‐「はいはい、じゃあのんびりね」

ξ゚⊿゚)ξ「実害出る前には片付けるわよ」

爪'ー`)y‐「分かってますって」

ξ゚⊿゚)ξ「よし、役所はこれで終わりかな」

爪'ー`)y‐「ん、先に宿でも取るかなー」

ξ゚⊿゚)ξ「宿はどこかしら」

爪'ー`)y‐「んー道の流れ的にー……ハッ ツンちゃん大変」

ξ゚⊿゚)ξ「ん?」

270 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:07:50 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「ここ合法カジノがある」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐「カジノがある……!!」

ξ゚⊿゚)ξ「吟遊詩人から遊び人に転職したいの?」

爪'ー`)y‐「楽しいよー駆け引き楽しいよーねーねー行こうよー僕得意なんだよー」

ξ゚⊿゚)ξ「得意ってあんたね……」

爪'ー`)y‐「これでもギャンブラーの資格は持ってる、はい免許証」

ξ゚⊿゚)ξ「マジか……マジだ……」

爪'ー`)y‐「本職にするほど好きではなかったから吟遊詩人してるけど」

ξ゚⊿゚)ξ「ギャンブラーの資格を持つ吟遊詩人って胡散臭さが過ぎるのでは」

爪'ー`)y‐「だから滅多に見せない」

ξ゚⊿゚)ξ「完全に遊び人の互換職だしな……」

爪'ー`)y‐「否定しきれない」

271 名無しさん 2016/11/27(日) 21:08:57 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「だからギャンブルで稼ぐ自信はあるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「そこまで困ってないだろうに」

爪'ー`)y‐「いやでもさぁ」


 「そこの金髪二人連れ! 待ちな!!」


ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐

川*` ゥ´)「お前らが最近調子に乗ってるっつぅ焼きたてパンと溶かしバターだな!!」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐

川;` ゥ´)「おい返事しろよ焼きたてパンと溶かしバター!?」

272 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:09:45 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「何あの子、お腹空くキーワード連呼してる」

爪'ー`)y‐「アレはね、僕がまだ納得していない君が勝手に決めた僕らのパーティー名だよ」

ξ゚⊿゚)ξ「実に美味しそうだ」

川#` ゥ´)「返事しろつってんだろバナナみたいな色しやがって!!」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、そうだバナナ食べたかったのよ」

爪'ー`)y‐「後で買おうか」

ξ゚⊿゚)ξ「黄色の濃いのが良い」

川#` ゥ´)「きーけーよー!!!」

ξ゚⊿゚)ξ「知り合い?」

爪'ー`)y‐「いやぁ僕が手を出すタイプのAPPではない」

川#` ゥ´)「おいどう言う意味だおい! おいこの……イケメンだ……!?」

爪'ー`)y‐「見てツンちゃん! イケメン扱いされたよこの子最高なのでは!?」

ξ゚⊿゚)ξ「珍獣の類いかしら」

川#` ゥ´)「珍獣はそっちだろホームランバーみたいな体型しやがって!!」

ξ゚⊿゚)ξ

273 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:11:01 ID:UkH/Vfmk0

川#` ゥ´)「お前だよお前! ちっこいの! ホームランバーみたいな貧相なストンとした体型の!!」

ξ゚⊿゚)ξ「貧相な」

川#` ゥ´)「分かったなら返事しろよはんぺん! 豆腐! 白こんにゃく! ういろう! らくがん!」

爪'ー`)y‐「最後だけ違うのでは」

川#` ゥ´)「無視すんなってばー!! ぺったんこでちびっこくてちんちくりんのチビガキ!!」

爪'ー`)y‐「ツンちゃんすげぇ! あの子的確に地雷踏み抜いてる!!(勝俣声)」

ξ゚⊿゚)ξ「声帯模写うまいなお前…………まあ、何だ……アレであるな」

爪'ー`)y‐「え?」

ξ゚⊿゚)ξ三つヒュバッ

川; ゥ )そ「おごぁっ!?」ガッシ

ξ゚⊿゚)ξづ「先ず名乗れ痴れ者が……」ギリギリ

川;∩ ゥ )')「おごががががが」ジタバタ

爪'ー`)y‐「ツンちゃん落ち着いて! 聞いた事も無いような口調になってる!」

ξ゚⊿゚)ξづ「たわけめが……」ギチギチ

爪'ー`)y‐「ツンちゃんダメ! 殺したら死ぬ素人相手にアイアンクローはダメ!!」

274 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:11:51 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「貴様は見ず知らずの人間に対して礼儀を知らぬと見た……
     初対面の人間に対しての暴言、よもや許されると思っているのであるか……」ギチギチギチ

川; ゥ )「ぐ、うぎ、ぎぎぎ……」


「ツンちゃんダメ!!」
爪;'ー`)☆ξ#)⊿゚)ξそ
  ⊂彡 パッチーン


ξ#)⊿゚)ξ

爪;'ー`)y‐「ダメでしょツンちゃん! 街中で殺したら死んじゃう素人相手に!! 罪に問われる!!」

ξ#)⊿゚)ξ

爪;'ー`)y‐「この子が殺しても死なない玄人ならまだしもそんな玄人そうそう居ないんだから!!」

ξ#)⊿゚)ξ

爪;'ー`)y‐「良いかい!? 人前で殺しても許されるのは殺しても死なない玄人だけ!!
     僕とパーティ組んでるんだからそう言う罪に問われるような事はしないで!!」

ξ゚⊿゚)ξ「すまなんだ……」

爪'ー`)y‐「分かってくれて嬉しいよ……」

275 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:12:53 ID:UkH/Vfmk0

川; ゥ )「ぜぇ……ぜぇ……」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたも悪かったわね、APP9くらいの小娘」

川#` ゥ´)「もうちょいあるわぁ!!」

爪'ー`)y‐「妥当なのでは?」

川#` ゥ´)「お前ー!! お前ぇえー!!!」

ξ゚⊿゚)ξ「で、何なのあんた」

川#` ゥ´)「顔面握り潰そうとしてそれかよ!?」

ξ゚⊿゚)ξ三づ「出会い頭に人様ディスってそれかよ」ドッゴ

川;` ゥ´)「そそそそれはあんたが返事しないからだろうが!!」パラパラ

爪'ー`)y‐「うわー女の子同士の壁ドン初めて見たーレアーい」

川;` ゥ´)「壁に拳突っ込んで穴空けるのが壁ドンか!? 壁ドンかこれ!?」

爪'ー`)y‐「死なないだけ良くない? 僕なら死ぬよ?」

川;` ゥ´)「さっきから思ってたけどお前は何なの!? 何が死なない玄人なの!? わけわかんねーよ!?」

爪'ー`)=3「これだから素人は」

川#` ゥ´)「ギィイイーッ!!!」

276 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:13:41 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「とりあえず名乗れば? 殺すわよ? 最近殺し慣れてるから手加減出来ないわよ?」

川;` ゥ´)「とんだ殺人宣言だよ!?」

爪'ー`)y‐「ツンちゃんってばいっつも激しいから……ポッ……」

川;` ゥ´)「おかしいよお前ら! たぶん頭の辺りが一番おかしいよ!!」

爪'ー`)y‐「そんな頭のおかしな連中に喧嘩を売ったお嬢さんの素性は?」

川;` ゥ´)「ふ、ふん……そこまで聞くなら教えてやるよ!」

ξ゚⊿゚)ξ「いやそこまででも」

川*` ゥ´)「コホン 我が名は! 最上位魔女の名を持つ! アンソルスラン家の末裔!!」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、そう言うの良いです」

爪'ー`)y‐「邪魔くさーいながーい要らなーい」

川#` ゥ´)「ンンンンン!! あたしはヒール・アンソルスラン!! かの有名な魔女の!! 血族の!!」

ξ゚⊿゚)ξ「声がうるさい」

爪'ー`)y‐「エビフライの尻尾」

川#` ゥ´)「雑なツッコミすんなやぁあ!!」

277 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:15:21 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「アンソルスランの名は知ってるけどさー」

ξ゚⊿゚)ξ「有名なの?」

爪'ー`)y‐「魔女の中でも最も秀でた家系、でも確かほぼ途絶えたような」

川*` ゥ´)「ふふん! 愚かなお前達に教えてやるわ! アンソルスラン家は確かに絶えたも同然
     しかしそれは純血の話、分家や男の血は未だちゃーんと続いているのさ! 分かったか!」

ξ゚⊿゚)ξ「何か無性にあんたを殴りたい」

爪'ー`)y‐「うーん女の子を殴る趣味は無いから有り金全部置いて消えてほしい」

川#` ゥ´)「真顔と半笑いでなんつう感想抱いてんだよお前らは!!」

ξ゚⊿゚)ξ「殴りたい顔してない?」

爪'ー`)y‐「否定したいがしたら嘘になるなぁ」

川#` ゥ´)「外道二人旅か何かかよ!! か弱い魔女相手にお前らは!!」

爪'ー`)y‐「そんな外道二人連れに喧嘩売っちゃったんだよねぇ?」

ξ゚⊿゚)ξ「わーい普通の人間殺すのひさびさー」

川;` ゥ´)「殺すことを前提に動こうとすんじゃねーよこのクソチビゴリラ女!!」

ξ゚⊿゚)ξ

278 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:16:29 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「ヒール……だっけ」

川;` ゥ´)「な、何だよ! あたしは謝らないからな!!」

ξ゚⊿゚)ξ「謝らなくて良いわ……だから」

川;` ゥ´)「だから……?」

ξ゚⊿゚)ξ「死ぬか、消えるか、土下座してでも生き延びるか、最後に選ぶ権利を貴様にやろう」

川;` ゥ´)「おいイケメンお前の相方どうなってんだよ!! 世紀末覇者の類いかよ!?」

爪'ー`)y‐「もっとイケメンって呼んで……」ポン

川;` ゥ´)「お前はお前で何でそんなしみじみ噛み締めてんの!? 助ける気は無いの!?」

爪'ー`)y‐「えっ無いよめんどくさい……罪に問われてパーティに影響なきゃどうでも良いよ……」

川;` ゥ´)「とんだゴミクズ野郎だなお前!?」


「人の相棒をゴミクズとか言わない」
ξ゚⊿゚)ξ☆川;#)ゥ )そ
 ⊂彡 ベチコーン  「たわば!?」


爪'ー`)y‐「ツンちゃんが僕のために……キュン……」

川;#)ゥ´)「絶対ただの口実だよ!! 殴るための口実だよ!!」

279 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:16:56 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「で、大人しく素性を明かしなさい」

川#` ゥ´)「ヒール・アンソルスラン! 17歳! かの偉大なる魔女の血族! その末裔! さっきも言った!」

爪'ー`)y‐「わぁ律儀」

川#` ゥ´)「魔女として名をあげるために! 最近名前の売れてきたお前ら朝飯に果たし合いを!!」

ξ゚⊿゚)ξ「朝飯って言うな」

爪'ー`)y‐「それはどっちでも良いわ」

川*` ゥ´)「ふふん! 見たところ脳筋とモヤシ! 魔法対策はなってないと見た!」

ξ゚⊿゚)ξ「否定はしない」

爪'ー`)y‐「モヤシではない」

川*` ゥ´)「我が魔法を受けよ! ファイアボール!!」

川*` ゥ´)ノシ 三◎ボッ

ξ゚⊿゚)ξ「街中で火を出すな」
 ⊂彡 パシーン

川;` ゥ´)「素手でどうにかすんなよてめぇ!?」

280 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:18:40 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「あのねぇ、朝飯はともかく急に喧嘩売られても困るのよ」

川;` ゥ´)「う、うっさいうっさい! お前らの都合なんて知ったこっちゃないね!」

ξ゚⊿゚)ξ「あ? やんのかてめぇ」

川;` ゥ´)「沸点低すぎない!? 何!? ジエチルエーテルか何か!?」

ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ? 飲める?」

川;` ゥ´)「やっべぇなこいつすぐキレる脳筋ゴリラだと思ったらだいぶアホだ!!」

爪'ー`)y‐「何の反論も出来やしない」

ξ゚⊿゚)ξ「エーテルってMP回復するやつでは?」

爪'ー`)y‐「うーん合ってるけど違うんだよなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「エーテルとは……」

川;` ゥ´)「もう良いよエーテルは!!」

爪'ー`)y‐「ねぇヒールちゃんだっけ」

川;` ゥ´)「な、何だよぉ!!」

爪'ー`)y‐「その勢いのツッコミめっちゃ疲れない? 逐一ボケ拾ってくれてるけど大丈夫?」

川#` ゥ´)「わかってんならボケ倒してんじゃねーよ!!!」

281 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:19:21 ID:UkH/Vfmk0

川;` ゥ´)「ぜぇ……ぜぇ……」

爪'ー`)y‐「大丈夫? そこまで体力使って突っ込んでくれる人初めてだよ?」

川;` ゥ´)「おま……ふざけんなよ……一時のツッコミからの解放満喫してんだろお前……」

爪'ー`)y‐「よく分かったね褒めてあげるよだからその代金支払って早く消えよ?」

川;` ゥ´)「疲れてるのにボケ倒すな!! 腐れ外道!!」

爪'ー`)y‐「いただきまぁす」

ξ゚⊿゚)ξ「もっと声を濁せ」

爪'ー`)y‐「喉に悪いから」

川;` ゥ´)(もしかしなくても因縁つける相手間違えたのではないか)

爪'ー`)y‐「ほらご覧ツンちゃん、さすがに相手が悪かったと察した顔だよ」

ξ゚⊿゚)ξ「喧嘩を売る前に相手の力量を見極めないからこうなる」

川;` ゥ´)「お前らマジ……マジお前ら……ぜぇはぁ……」

爪'ー`)y‐「一つ良い事を教えてあげよう」

川;` ゥ´)「ろくな事じゃねーだろ……」

爪'ー`)y‐「僕は分かった上でやってるけどツンちゃんは素」

川;` ゥ´)「ろくな事じゃねぇ!!」

282 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:20:00 ID:UkH/Vfmk0

川;` ゥ´)「あー!! もう良い! 今日は引き下がってやるよ! 命拾いしたなバーカバーカ!!」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ「何度も出てくるフラグかしら」

爪'ー`)y‐「フラグにしか見えないね」

ξ゚⊿゚)ξ「キレのあるツッコミだった」

爪'ー`)y‐「楽しかったね」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあバナナ買いに行くか」

爪'ー`)y‐「バナナが最終目的になってるよツンちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ「さっきの子、名前何だっけ……?」

爪'ー`)y‐「思ったより興味持たなかったんだねツンちゃん……」

283 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:21:17 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「で、宿見付けて買い出しに出たじゃん」

爪'ー`)y‐「出たね」

ξ゚⊿゚)ξ「何でカジノに居るの?」

爪'ー`)y‐「ほらツンちゃん飲み物がサービスだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ミルクください」

爪'ー`)y‐「あるかなぁ」


 赤と黒と金で彩られた世界は、人が多く賑やかで。
 あちらこちらから歓声や悲鳴が上がっていて、熱気に包まれている。

 酒場よりも強い熱気、酒気、喧騒。
 そして目の前には配られたカード、傍らには自分のカードを眺める相棒。

 この騒がしいカジノと言う空間は、初めて足を踏み入れた場所なのに。
 なぜ私は、何の説明も受けずにここに座っているのだろうか。


ξ゚⊿゚)ξ「バナナ……」

爪'ー`)y‐「帰りに買ってあげるから」

284 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:22:19 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「……ところで、これは何?」

爪'ー`)y‐「トランプ?」

ξ゚⊿゚)ξ「一応それはわかる」

爪'ー`)y‐「んじゃポーカー」

ξ゚⊿゚)ξ「ポーカーってどうやるのこれ」

爪'ー`)y‐「んー……同じマークが3つ以上揃えば良いよ」

ξ゚⊿゚)ξ「分かった」

爪'ー`)y‐(まあ役覚えなさそうだしスリーカードにでもなれば十分かな……あわよくばフォーカードで……)

ξ゚⊿゚)ξ「二枚じゃダメなの?」

爪'ー`)y‐「二枚ずつか三枚必要だなー」

ξ゚⊿゚)ξペラ

爪'ー`)y‐ポイ

ξ゚⊿゚)ξ「全然揃わない」

爪'ー`)y‐「うーん……こっちもイマイチか……これじゃカモられて終わっちゃうな」

285 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:22:44 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「むう、手札が真っ黒で可愛くない」

爪'ー`)y‐「あはは、やっぱ赤い方が可愛いって認識なんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、揃わないし真っ黒」

爪'ー`)y‐「うんそれスペードのロイヤルストレートフラッシュ」

ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ」

爪'ー`)y‐「知らないよねーそうだよねー僕の手札腐ってるのになー」

ξ゚⊿゚)ξ「赤くない」

爪'ー`)y‐「そんなつまんなそうに言わないで、すごく強いからそれ」

ξ゚⊿゚)ξつ「じゃああげる」

爪'ー`)y‐「そう言うシステムじゃないから」

ξ゚⊿゚)ξ「どうしろと」

爪'ー`)y‐(ド素人)

286 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:23:29 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「こう言う続きの数字でね……」
 _,
ξ゚⊿゚)ξ「……?」

爪'ー`)y‐「えっ何その「何言ってんだこいつ」って顔……」
 _,
ξ゚⊿゚)ξ「数字じゃないでしょ……?」

爪'ー`)y‐「あぁーそっかーKQJをただの記号だと認識してたかーそっかそっかー思ったより馬鹿だったー」

ξ゚⊿゚)ξ「うるせぇ」

爪'ー`)y‐「ほらもう記号教えてあげるから……トランプは知ってても遊んだ事無かったのね……」

ξ゚⊿゚)ξ「娯楽はオセロくらいしか……」

爪'ー`)y‐「ンンー」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあこのJが13?」

爪'ー`)y‐「それは11」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあこっちは?」

爪'ー`)y‐「それはジョーカーd 何だその運」

287 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:24:54 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「Aは?」

爪'ー`)y‐「一番強い」

ξ゚⊿゚)ξ「それは覚えよう……」

爪'ー`)y‐「強さにしか惹かれてねーなこれ」

ξ゚⊿゚)ξ「Aと11もどきだけどさ」

爪'ー`)y‐「ジョーカーの事11もどきって言う子はじめて見た」

ξ゚⊿゚)ξ「どっちが強いのこれ」

爪'ー`)y‐「ええとジョーカーはあらゆるカードの代理が出来るから」
 _,
ξ゚⊿゚)ξ「…………」

爪'ー`)y‐「うんそうだよね分からないよね知ってた知ってた
     もう取り敢えずそれ場に出してあがりで」

ξ゚⊿゚)ξノシ「あがりで」ポイ

爪'ー`)y‐「雑だから、出し方が雑だからもうちょっと優雅に」

ξ゚⊿゚)ξ「どうでもいい」

爪'ー`)y‐「ンンン優雅さの欠片もないな!」

288 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:26:02 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「で、どうすれば?」

爪'ー`)y‐「いっぱいメダルが貰えます」

ξ゚⊿゚)ξ「いっぱいだわ」

爪'ー`)y‐「いっぱいだね」

ξ゚⊿゚)ξ(でもおもちゃのお金よね……)

爪'ー`)y‐(ツンちゃんこれがどれだけの価値か分かってないんだろうな……)

ξ゚⊿゚)ξ(これだけあればバナナと交換くらいは……?)

爪'ー`)y‐(神妙な顔してるけどアホな事考えてるんだろうなぁ)

ξ゚⊿゚)ξ(あ、明かりが赤っぽいからまたバナナめいてる)ジッ

爪'ー`)y‐(なんか見られてる、すごい見られてる、ツンちゃんが僕に見とれるとかまず無いし)

ξ゚⊿゚)ξ「バナナ食べたい」

爪'ー`)y‐「このタイミングで!?」

289 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:27:00 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「バナナ!? バナナナンデ!?」

ξ゚⊿゚)ξ「いや何か、食べたくて」

爪'ー`)y‐「ツンちゃん僕を見ながらバナナ食べたがってない!?」

ξ゚⊿゚)ξ「…………気のせいよ!」

爪'ー`)y‐「嘘だ! ツンちゃん大人が嘘をつく時の顔をしてる!!」

ξ゚⊿゚)ξ「それよりカードもう良いの?」

爪'ー`)y‐「ハッ いやもうちょっとだけ」

ξ゚⊿゚)ξ(はぐらかせた)

爪'ー`)y‐「まだゲーム残ってるしもうちょっとやろうか、賭け過ぎないように」

ξ゚⊿゚)ξ「んー」

爪'ー`)y‐(やっぱりルール分かってないんだろうな……それにバナナは一体……)

290 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:27:42 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξっポイ

爪'ー`)y‐ペラ

ξ゚⊿゚)ξ「揃った」

爪'ー`)y‐「おお」

ξ゚⊿゚)ξ「一番強いのが四枚」

爪'ー`)y‐「凄い揃え方したなぁ!!」

ξ゚⊿゚)ξ「あともどき」

爪'ー`)y‐「ジョーカーをもどきって言うのやめよう!!」

ξ゚⊿゚)ξ「強そう」

爪'ー`)y‐「とてつもなく強い」

ξ゚⊿゚)ξg「勝った」グッ

爪'ー`)y‐「その代わり出禁」ポン

ξ゚⊿゚)ξ「えっ……勝者が排除されんの……」

爪'ー`)y‐「カジノってそう言うところなんだ……」

291 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:28:26 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「じゃあこのメダルを換金して……」

ξ゚⊿゚)ξ「えっ」

爪'ー`)y‐「ん?」

ξ゚⊿゚)ξ「換金……出来るの……?」

爪'ー`)y‐「ツンちゃんカジノがどう言う所か本当に理解してる?」

ξ゚⊿゚)ξ「賭け事をする場所」

爪'ー`)y‐「そうだね、賭け事って言うのはお金を賭ける事を言うんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「でもおもちゃのお金だったし……」

爪'ー`)y‐「これ一枚が銅貨10枚の値段だよ、買ったのこれ」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ「すごい……金額になるのでは……?」

爪'ー`)y‐「なりますねぇ……」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ「出禁か……」

爪'ー`)y‐「已む無し」

292 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:28:57 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「凄い金貨の量……」

爪'ー`)y‐「持てる?」

ξ゚⊿゚)ξ「持てるけど邪魔になるわね……」

爪'ー`)y‐「うーん、持ち運びやすいものに変えるか」

ξ゚⊿゚)ξ「んー……」

爪'ー`)y‐「うん? 大勝ちしたのに嬉しくなさそうだね、バナナ食べ放題だよ?」

ξ゚⊿゚)ξ「……どっちかと言うと、これはあんたの領分でしょ?」

爪'ー`)y‐「ギャンブル? んー、まぁそうだけど」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、もう私は立ち入らないようにする」

爪'ー`)y‐「ふーん?」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたは私の領分に立ち入らないし、立ち入っても邪魔なだけでしょ」

爪'ー`)y‐「まぁそうだね」

ξ゚⊿゚)ξ「今回は私はまぐれ勝ちしたけど、次からは多分あんたの邪魔するだけだから」

293 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:30:17 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「だから、私はもうやらない」

爪'ー`)y‐「……じゃあ次からは僕だけで頑張りますかねー」

ξ゚⊿゚)ξ「その方が良いと思う」

爪'ー`)y‐「ツンちゃんがそう言うんならそうしましょ」

ξ゚⊿゚)ξ「うん」

爪'ー`)y‐(確かに恐ろしい引きだったけど、これが続けば今後どこにも入れなくなる)

爪'ー`)y‐(ただのビギナーズラックだとしても、ルールも把握してないなら足手まとい)

爪'ー`)y‐(引き際はわきまえてるんだよなぁ、この子……経験と知能が追い付いたら大物になりそ)

爪'ー`)y‐チラッ

ξ゚⊿゚)ξテクテク

爪'ー`)y‐(アホみたいな顔して)

爪'ー`)y‐(一時間かけずに家が建つ金額稼いだ自覚あんのかねぇ)

爪'ー`)y‐(無いだろうな、お金の管理任されてるし着服しよ)

294 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:31:43 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「これ何と変えるの? 持ち運びしやすいものって?」

爪'ー`)y‐「んー、価値の高い宝石にでもするか、少量で持ち運びしやすく」

ξ゚⊿゚)ξ「石屋あったっけ」

爪'ー`)y‐「宝飾店って言おうよあっちにあるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「銀行に預けるのは?」

爪'ー`)y‐「うーん通帳と印鑑持ち歩くのもねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「邪魔にはならない」

爪'ー`)y‐「どこにでも銀行あるわけじゃないから、都心部だけだよあるの」

ξ゚⊿゚)ξ「それもそうか……まだ不便ね」

爪'ー`)y‐「なかなかねー」

ξ゚⊿゚)ξ「石屋はあれ?」

爪'ー`)y‐「宝飾店」

ξ゚⊿゚)ξ「ほうしょくてん」

爪'ー`)y‐「ツンちゃん国語ドリルとかする?」

ξ゚⊿゚)ξ「いずれ」

295 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:32:22 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「はいはいたのもー」ガチャ

ξ゚⊿゚)ξ「うわぁ金ぴか」バタン

爪'ー`)y‐「これで買えるの下さいなー」

ξ゚⊿゚)ξ「はいこれ」ドサッ

爪'ー`)y‐「んんーやっぱ荷物にならないようにさぁ……いやいやそれより」

ξ゚⊿゚)ξ(はー……ほうしょくてんってのは金ぴかね……)

爪'ー`)y‐「あ、そうだ僕のナイフ見てよこれ台無しでしょ石取れてるし新しくしたいんだけど」

ξ゚⊿゚)ξっ゙(石の何が良いのかまるでわからん……ピカピカしてるだけよね……)

爪'ー`)y‐「あーだめだめそれじゃ見劣りするよもっとこう分かるでしょプロならそうそう」

ξ゚⊿゚)ξ(石や金属なぞ食ってうまいもんでなし……狐は楽しそうだけど……)

爪'ー`)y‐「はぁぁぁああぁ……良いなぁこれ良いね凄く……あぁぁ……うっとりするね……」

ξ゚⊿゚)ξ(気味が悪いなあいつ……外で待ちたいけど勉強はするべきか……)

爪'ー`)y‐「あ、ナイフはこれで、あとは価値の落ちないやつで、そうそうわかってるじゃーん」

ξ゚⊿゚)ξ(大きな石……金貨……いちじゅう……ゼロがななつ……)

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ(わっかんねぇやもう……こっちは……金貨100枚……ばっかじゃないの……)

296 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:33:10 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ(あー……目がチカチカする……)

ξ゚⊿゚)ξ(外出よ……お小遣いは持ってるし、何か屋台でも……)ガチャ バタン

ξ゚⊿゚)ξ「あー空気がおいしい」

(*゚ー゚)「あの」

ξ゚⊿゚)ξ「ん?」

(*゚ー゚)「お、おはなは、いかがですか?」

ξ゚⊿゚)ξ「花?」

(*゚ー゚)「はい、あの、おはな、いかがですか?」

ξ゚⊿゚)ξ「ふむ……ひとつもらうわ」

(*゚ー゚)「えっ」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

(;*゚ー゚)「あ、ああ、ありがとうございます!」

ξ゚⊿゚)ξ

(;*゚ー゚)

ξ゚⊿゚)ξ?

297 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:35:55 ID:UkH/Vfmk0

(;*゚ー゚)「あの、ぅ?」

ξ゚⊿゚)ξ「はい?」

(;*゚ー゚)「わたし、あの……おしごと、はじめてなのですが……」

ξ゚⊿゚)ξ「そう、大変ね」

(;*゚ー゚)

ξ゚⊿゚)ξ?


 私は花売りから受け取った花を指先でいじってから、鎧の胸元に差し込んだ。

 しかし目の前には、まごまごしている幼い娘。
 戸惑っているようだが、何にかがよくわからない。

 きょろきょろと辺りを見回しては、こちらをちらちらと見上げて。
 代金でも足りなかったのだろうか、しかし花は意外と高いな、夕飯分くらいしたぞ。

 まあ店内では狐がたくさんお金を持ってるし、夕飯くらいはどうにかなるか。


 それより、何かを待つように困惑している花売り娘はどうすれば良いのだろう。

298 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:36:43 ID:UkH/Vfmk0

(;*゚ー゚)「あ、のぅ……」

ξ゚⊿゚)ξ「あ」

(;*゚ー゚)!

ξ゚⊿゚)ξ「チップとかが必要なやつかしら」

(;*゚ー゚)「え」

ξ゚⊿゚)ξ「悪いわね、こう言った事には疎くて」

(;*゚ー゚)「いえあの、そんな、」

ξ゚⊿゚)ξ「小銭が無いわね、金貨で良いかしら」

(;*゚ー゚)「いただけませんよ!?」

ξ゚⊿゚)ξ「良いから、はい」

爪'ー`)y‐「ちょっとツンちゃーん!? 勝手に出ないでよー虚空に向かって五分くらい話しかけたでしょ!」ガチャ

ξ゚⊿゚)ξ「あ、狐」

爪'ー`)y‐「ん? ……おや、小さな花売り娘さんだね」

299 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:37:26 ID:UkH/Vfmk0

(;*゚ー゚)「あ、あの、あのあの……」

爪'ー`)y‐「あー……初仕事で、怖くなって女の人に営業しちゃったのかな?」

(;*゚ー゚)「は、はひぃ……」

爪'ー`)y‐「うーんごめんね、小さな花を買うつもりは無いから」

ξ゚⊿゚)ξ「買ったわよ」

爪'ー`)y‐「何してんの君」

ξ゚⊿゚)ξ「何よ、花くらい良いじゃない」

爪'ー`)y‐「これの本来の意味知ってる?」

ξ゚⊿゚)ξ?

爪'ー`)y‐「でーすよねー」

(;*゚ー゚)「あのぅ……」

爪'ー`)y‐「あー……どうすっかな……」

300 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:38:02 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「まさか買われると思わなかったんだろうけど、このお姉さん意味分かってないから」

(;*゚ー゚)

爪'ー`)y‐「だからそのまま行きなさい、お花は確かに受け取ったみたいだし」

(;*゚ー゚)「いいんですか……?」

爪'ー`)y‐「あー良いの良いの、僕の好みは手玉に取ってくれそうなFカップのセクシーお姉さんだから」

(;*゚ー゚)「それでは……あの……しつれいします」

爪'ー`)y‐「はいはい気を付けてねー」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ「結局なんだったの?」

爪'ー`)y‐「もう知らないままで良いよ君は……」
 _,
ξ゚⊿゚)ξ??

301 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:39:20 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「さて、これがあの大金で買った宝石です」ペカー

ξ゚⊿゚)ξ「へー」

爪'ー`)y‐「あー知ってたけど雑! 反応が雑!! あーあ!!」

ξ゚⊿゚)ξ「何で怒るのよ……それより買い物終わったんでしょ?」

爪'ー`)y‐「終わりましたよ」

ξ゚⊿゚)ξ「何で機嫌悪くなってんのめんどくさい……」

爪'ー`)y‐「はいこれ」

ξ゚⊿゚)ξ「何これ石ころ?」

爪#'ー`)づ「ほ・う・せ・き・で・す!!!」

づ)⊿゚)ξ「わかったわかった私が悪かった宝石宝石」

爪'ー`)y‐「これは君が持って宿まで戻って、無くさないでね」

ξ゚⊿゚)ξ「あれ、あんたは? 宿に戻らないの?」

爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐「じゃあ僕酒場まで走るから」

ξ゚⊿゚)ξ「おい何だ今の間は」

302 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:40:03 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「少しは使って良いけど無駄遣いしないようにねー!」

ξ゚⊿゚)ξ「おいおま、おい! ……何だあいつ……」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「これが価値のあるお宝とはねぇ……色のついた透明な石だろうに……」

ξ゚⊿゚)ξ「まあ無くしたら相当怒られるし、雑には扱わないけど……」ゴソゴソ

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「バナナ買おう……あと雨具……」

ξ゚⊿゚)ξ「急に一人行動か……意外と一緒に行動する事多いからな……」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、バナナください」

ξ゚⊿゚)ξ「小銭小銭……銀貨で」

ξ゚〜゚)ξモグモグ

ξ゚〜゚)ξ(やや味気ない……空が曇天だからかな……)

303 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:40:37 ID:UkH/Vfmk0

 その後、一人で買い物を済ませて、宿に荷物を置き、道具の整備や準備をして、一人で夕飯を迎えた。

 夕飯は鶏の脚が丸ごと煮込まれたスープと、柔らかな金色のパン。

 黄金色にかりっと焼けたパンと、トマト味のスープは相性も良く、鶏肉は簡単に骨から外れるほど柔らかい。

 一緒に煮込まれている豆もほくほくで、お腹が暖かくなる美味しさだった。


 が、やはり一人では少々味気ないもので。


ξ゚⊿゚)ξ(んー……一人が苦手になってるな)

ξ゚⊿゚)ξ(意外に楽しんでるな、二人旅)

ξ゚⊿゚)ξ(まずいなーこれは……一年契約で切った方が良いか……?)

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ(一人が厳しくなると、冒険者として致命的だ)

ξ゚⊿゚)ξ(参ったな……)

304 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:41:48 ID:UkH/Vfmk0

 とっぷり闇に沈んだ街を窓から眺めても、胸にもやつく焦燥感は拭えない。

 今までパーティを組んで旅をした事なんて無かったもので、慣れない日々に戸惑っていたのに。

 いつのまにか、二人旅が当然のようになってしまっていて。


 このままでは、契約が切れた時に困る。
 孤独を嫌っていては、冒険者なんてやっていられない。

 戦士としても弱さに繋がる。
 これでは駄目だ、距離を持つようにしなければ。

 ああでも、困ったな。
 どうすれば良い、旅に出てすぐはどうだった。

 はじめはホームシックで震えていた。
 師匠や姉様を恋しく思っていた。

 いつから平気になったっけ。
 いつから一人が怖くなくなったっけ。


 いつから私は、一人だったんだっけ。

305 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:42:46 ID:UkH/Vfmk0

 一人だったのは、はじめからだ。

 気味の悪い子供として、石を投げられていたあの時からだ。

 お母さんに、森に置き去りにされたあの時もだ。

 お腹が空いて、お腹が空いて、眼に映るものみんなが食べ物に見えたあの時も。

 大きな熊に飛びかかって、返り討ちにあったあの時も。

 倒れていた私を、孤児院の先生が助けてくれたあの時から、私は一人じゃなくなったんだ。


 孤児院のみんなと、優しい先生。
 お母さんみたいだった、みんなの先生。

 それから私は、師匠の元に弟子入りして。
 やっぱり、一人じゃなくて、師匠や姉様が側に居て。


 ああそっか。

 ひとりぼっちは、今も私の中でくすぶり続けているのか。

 だから私は、一人が怖いんだ。

306 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:43:56 ID:UkH/Vfmk0

 孤独は魂を貪る毒。
 人恋しさに胸が裂けそうで。

 それでもそれを飲み込む事で、私は強くなれると信じている。

 私はもっと強くなりたい。
 もっともっと、強くなりたい。

 誰かに何かを奪われないように。
 大切なものをこの手で守れるように。

 強くなりたい、強くなりたい。
 誰よりも何よりも強くなって、私は、弱い弱い幼い私の心を守るんだ。


 私を捨てたお母さんの事を、憎んではいない。

 誰かに憎んだり、恨んだり、心を燃やして茨を巻き付けるような事はしない。


 ただ、ただ、私は寂しかったから。

 ただ、一人は嫌だったから。

307 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:45:39 ID:UkH/Vfmk0

 泣いていたあの頃、先生は頭を撫でてくれた。
 少し細くて、やわらかな手だった。

 先生は途中で居なくなってしまったけれど、ちゃんとお別れもしたし、笑顔でさよならをした。
 だから先生は、今もどこかで幸せで居てくれると嬉しい。

 それにすぐ、私は師匠の元に行った。
 だから、先生と別れても寂しくはなかった。

 師匠との日々は、修行の毎日。
 寂しく思う暇もないくらい、毎日が忙しくて。
 孤児院での日々が、遠く、思い出す暇も無くて。


 そのまま成長して、そのまま旅に出て、再び孤独と向き合う私は、まだまだ幼い小娘のまま。
 どうやって克服するのか、いまだに分からないままで。

 今、頬を流れる涙のとめ方を、もう一度だれか教えてほしい。


 ああ、全く。

 孤独は、人を殺す。



 子守唄が、聴きたいなあ。

308 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:47:11 ID:UkH/Vfmk0


   金の月と銀の星

(何か聴こえる)


   さざめく風は夜明けの空

(何だっけ、この歌)


   金の冠、銀の声

(ああ、そっか、これは)


   ざわざわなみうつ草の色

(私が、初めて聞いた)


   花の冠、夜の腕

(あの狐の歌)


   幼い娘と王たる男

(銅貨を一枚、投げて寄越さなきゃ)

309 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:47:55 ID:UkH/Vfmk0

 まぶたを持ち上げると、朝日に包まれた室内。
 聴こえるのは目を覚ました街の賑わいと、朝の鳥の声だけ。

 二人部屋の筈なのに、部屋に居るのは私一人。
 反対側のベッドは、使われた形跡は無かった。


 ああ、帰って来なかったのか、あいつ。

 まあ、別に構いやしないんだけど。
 あいつの朝帰りは、今に始まった事じゃない。

 ただ。
 夕飯を一人で食べたのが、久々だっただけで。


ξ゚⊿゚)ξ「……シャワー浴びて、着替えよ……」


 熱いお湯を浴びて、朝飯でも食べればきっと気も晴れる。

 朝ごはん、何だろう。

 トーストかな、パンケーキかな、目玉焼きはつくのかな。
 ソーセージか、ベーコンか、ほらお腹が空いてきた、生きる気力に繋がっていく。

310 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:48:57 ID:UkH/Vfmk0

 シャワーを浴びて、着替えを済ませて、髪を乾かしながら外をもう一度見る。
 朝靄に煙る町並みは、眩しいほどに光を吸い込んでいて。

 ああさっきは気付かなかったけど、良い景色だ。

 それに一階の食堂から良い匂いが漂ってくる。

 卵と燻製肉を焼く匂い。
 パンの焼ける匂いも、昨夜のトマトスープの匂いもする。

 それに、香水と白粉と酒の臭い。


ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐「たーっだーいまーっ!」バーン

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐「はー楽しかったー! たっだいまー! いやー酒場のお姉ちゃん達がアフター誘ってき」

ξ゚⊿゚)ξ「くっさ」

爪'ー`)y‐「えっ」

311 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:49:47 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「……あの、ただいま……?」

ξ゚⊿゚)ξ「くさい」

爪'ー`)y‐「死ねでも殺すでも黙れでもなくその一言が妙に刺さるんですが……」

ξ゚⊿゚)ξ「化粧臭い、すごく臭い、臭い」

爪'ー`)y‐「傷付くからお風呂入ります……」

ξ゚⊿゚)ξ「服も臭い」

爪'ー`)y‐「クリーニング出します……」

ξ゚⊿゚)ξ「臭い」

爪'ー`)y‐「もう許して……」

ξ゚⊿゚)ξ「許すも何もあんたが今現在臭いのが現実で」

爪'ー`)y‐「悲しくなってきた……」

ξ゚⊿゚)ξ「換気しよ」

爪'ー`)y‐「そこまで……」

312 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:50:11 ID:UkH/Vfmk0

爪'ー`)y‐「シャワー浴びて着替えました……」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐「……ツンちゃんもしかして怒ってる?」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐「僕が娼婦買って一晩宿を空けた事とか怒ってる……?」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐「あのツンちゃん……あの……無言の真顔はちょっと怖いなお兄さん……」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐「すみませんでした」

ξ゚⊿゚)ξ「何が」

爪'ー`)y‐「えっ」

313 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:50:54 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「何が申し訳なくて謝ってんの?」

爪'ー`)y‐「それはあの……何も伝えず一晩空けたから……?」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐(あっ違うなこれやべーな、何だこの空気)

ξ゚⊿゚)ξ「おなかすいた」

爪'ー`)y‐「あ、僕は良いや……二日酔い入りかけだし胃が」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「あっそ」

爪'ー`)y‐(あっもしかして今の地雷かな? 良くないタイプの地雷かな?)

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ私は食堂に行くから」

爪'ー`)y‐「あ、はい……」

ξ゚⊿゚)ξ「別にあんたがどこで何しても良いけどさ」

爪'ー`)y‐「はい」

ξ゚⊿゚)ξ「化粧の臭い、嫌いなのよ私」

爪'ー`)y‐「アッハイ」

314 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:51:35 ID:UkH/Vfmk0

 ばたん。
 こつこつこつ。


爪'ー`)y‐

爪'ー`)y‐「ツンちゃんめっちゃ怒ってない……?」

爪'ー`)y‐「えー……別にこれが初めてでも無いのになぁ……何であんな怒ってんだろ……」

爪'ー`)y‐「うーん……いつもと違う事、いつもと違う事……」

爪'ー`)y‐

爪'ー`)y‐(あ、いつもは晩飯食ってから出てたな)

爪'ー`)y‐(あっ、昨日は歌も歌わなかった)

爪'ー`)y‐(ノルマ一切達成してない)

爪'ー`)y‐

三爪'ー`)y‐「ツンちゃーん!! やっぱ朝ごはん食べまーす!! 待ってー!!!」ドタドタ

315 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:52:09 ID:UkH/Vfmk0



爪'ー`)y‐「ごめんってばー悪かったってー、ご飯に執着してるからその辺気にして当然だよねー」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐「あーんもー許してよー次からはちゃんとご飯は一緒に食べるってばー」

ξ゚⊿゚)ξ

爪'ー`)y‐「ねーねー許してよーパーティなんだからそう言う礼儀やルールあっても良いの忘れてたんだよー」

ξ゚⊿゚)ξ(なんか違うんだけど平謝りしてくるのが面白い)

爪'ー`)y‐(ツンちゃんルールとかそう言うの曲げないタイプだもんなーしくったー)

ξ゚⊿゚)ξ(面白いから良いや、許すとか許さないとかじゃないけど)

爪'ー`)y‐(何となーくいつもそうだったからルールになっちゃったりするよなー、はー次から気を付けよ)

ξ゚⊿゚)ξ「狐」

爪'ー`)y‐「はい」

ξ゚⊿゚)ξ「屋台でなにか食べたい」

爪'ー`)y‐「喜んで」

316 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:52:52 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚〜゚)ξモグモグ

爪'ー`)y‐「串焼きは美味しいかい」

ξ゚⊿゚)ξ「うん、おいしい」

爪'ー`)y‐(食べ物で簡単に機嫌が治った……)

ξ゚⊿゚)ξ「そうだ」

爪'ー`)y‐「ん?」

ξ゚⊿゚)ξ「この花だけど、枯れる様子が無いのよね」

爪'ー`)y‐「あー昨日の? 造花ってわけじゃないし……聖水ででも育てたのかな」

ξ゚⊿゚)ξ「聖水?」

爪'ー`)y‐「うん、聖水で育てると植物が枯れにくくなったりするんだよ、世界樹って分かる?」

ξ゚⊿゚)ξ「ああ、何かどっかにあるとか言う聖なるでかい木」

爪'ー`)y‐「情緒もくそも無いなそれ……世界樹はその聖水湧く泉の中に生えてるんだよね」

ξ゚⊿゚)ξ「へぇ、だから枯れないと」

爪'ー`)y‐「そうそう」

ξ゚⊿゚)ξ「見た事あるの?」

爪'ー`)y‐「無いんだよねぇ」

317 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:54:36 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「しかし、聖水で育てるとは……大事に育てたのね」

爪'ー`)y‐(言えない……使い回せるように長持ちさせるためだとは言えない……)

ξ゚⊿゚)ξ「聖水なんて安くないのに、花にやるなんて」

爪'ー`)y‐(言えない……教会が裏で噛んでる事もあるからただで手に入る事が多いとは言えない……)

ξ゚⊿゚)ξ「……花を売って、生活になるのかしら」

爪'ー`)y‐「その娘によるね」

ξ゚⊿゚)ξ「ふぅん…………あれ、何かしら」

爪'ー`)y‐「んー? 人だかりだねぇ、何かあったのかな」

ξ゚⊿゚)ξ「覗く?」

爪'ー`)y‐「覗く覗く」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたこう言うの好きそうだものね」

爪'ー`)y‐「野次馬だぁいすきっ☆」

ξ゚⊿゚)ξ「うっざ」

318 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:55:37 ID:UkH/Vfmk0

 路地の入り口の人だかり。
 口々にひそひそと、むごいだの何だのと言う言葉が聞こえる。

 一体何があるのか、人の間を縫って、身を押し込んで路地の中を覗いた。


 薄汚れた狭い道の入り口。
 割れた酒瓶やゴミなんかが落ちている、よくある路地の入り口。

 そこに広がる血溜まりと、折り重なるようにして倒れる、二つの死体。


 ひとつの死体は、女のもの。
 顔は見えないが、派手な服と巻いた髪。
 もうひとつの死体を守るように、俯せに倒れていて。


 もうひとつの死体は小さくて、側には割れた花かごと花が散乱している。
 その小さな体を包んでいた衣服は乱暴に破られていて、幼い顔や肢体には、いくつもの殴られた跡。

 こちらを見る、光の無い灰色の目。
 その小さな手に、一枚の金貨が握られているのが見えた。


 銜えていた串焼きをその場に落とした私と、私と死体を見比べる相棒。
 何も声をかけずに、私の手を引いて、その場を離れた。

319 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:56:24 ID:UkH/Vfmk0

 死体は見慣れている。
 子供の死体だって見てきた。
 冒険者なんて綺麗な仕事だけじゃない。
 誰かの墓穴を掘るような仕事だってしてきたのに。


 胸の奥が握り潰されたみたいに、息が詰まって、苦しい。


爪'ー`)y‐「……ツンちゃん、行こうよ」

ξ゚⊿゚)ξ「…………あんなもの」

爪'ー`)y‐「え?」

ξ゚⊿゚)ξ「あんなもの、渡せば良かったのに」

爪'ー`)y‐「……違うよツンちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

爪'ー`)y‐「金貨は、あんなものじゃない、人の命を奪えるものなんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……ばかみたい」

爪'ー`)y‐「そんな馬鹿みたいなものに左右されて生きてるんだよ、僕らは」

320 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:58:35 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「……教会って、こっち?」

爪'ー`)y‐「ここの教会は駄目だよ、金貨で人を売り買いするから」

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

爪'ー`)y‐「だから、こっちだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……こっちは」

爪'ー`)y‐「墓地、いずれあの子達が入るのは、向こうの無縁塚」

ξ゚⊿゚)ξ「……墓守は、信用できるのかしら」

爪'ー`)y‐「ここの墓守は、多分ね」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、私のお小遣いを出して」

爪'ー`)y‐「何に使うの?」

ξ゚⊿゚)ξ「金貨一枚分、花を手向けてもらうのよ」

爪'ー`)y‐「ツンちゃん、それは」

ξ゚⊿゚)ξ「私は」

爪'ー`)y‐「……」

321 名無しさん[sage] 2016/11/27(日) 21:59:39 ID:UkH/Vfmk0

ξ゚⊿゚)ξ「……私は、人を殺した事もある、汚い手の人間よ」

爪'ー`)y‐「戦士で、冒険者なんだから、人くらい殺す事もあるさ」

ξ゚⊿゚)ξ「相手が罪人であろうと、盗賊であろうと、私は人を殺して報酬を得る、浅ましい人間よ」

爪'ー`)y‐「ツンちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、たとえ人を殺して金を得ているとしても、心まで貧しくはなりたくないの」

爪'ー`)y‐「…………花売り娘に花を手向けるのは、皮肉だね」

ξ゚⊿゚)ξ「私は頭が悪いから、よく分からないわ」

爪'ー`)y‐「これは、無駄遣いだよ、とても」

ξ゚⊿゚)ξ「……分からないわよ、私には、馬鹿だもの」

爪'ー`)y‐「…………馬鹿で良いよ、君は」


 人が眠るには、あまりにも質素な土くれ。
 金貨を一枚握りしめて、いずれ花を売る娘達が眠る寝床を睨み付ける。

 ぽんぽんと頭を撫でる相棒の手が、こぼれそうになる涙を止めてくれていた。


 おわり。

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