- 328 ◆tYDPzDQgtA 2016/12/04(日) 21:00:21 ID:rt5Wm1YA0
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声。
刃を振るい、歌声を響かせ、路銀を稼いで進むのは二人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
【道のようです】
【第七話 たったごまいのきんかで。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
- 329 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:02:09 ID:rt5Wm1YA0
かつかつ、こつこつ。
整地された石畳の街道を行く。
見晴らしが良く、魔物や盗賊の潜む隙すら無い平坦な道。
それ故に、先の方にある廃村の姿もよく見えた。
いや、廃村にしては妙に人影がある。
しかし間違いなく廃村にはなったと聞いた。
利権争いによって滅んだと聞いたのは、私が冒険者を始めてすぐ。
この三年の間に、新しい村でも出来たのだろうか。
特に会話を交わすでもなく、辿り着いた村の跡。
村を囲っていたらしい囲いだけが残っていて、建物は一つもない。
いや一つある、そして建物では無いがテントはいっぱいある。
商人達が馬車を停め、テントを組み、色んな物を売っている。
その光景は非常に活気があって、ここが廃村だとは思えないほど。
- 330 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:03:49 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「おー賑わってる賑わってる」
ξ゚⊿゚)ξ「廃村では……?」
爪'ー`)y‐「廃村だよ」
ξ゚⊿゚)ξ?
爪'ー`)y‐「ここは街道が交差してるでしょ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね」
爪'ー`)y‐「だから本来は大きな街があっても良いんだけどね、まあ立地が良いだけに色々とね」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ色々とあるんでしょうけど」
爪'ー`)y‐「んで領土問題も色々ね」
ξ゚⊿゚)ξ「あったのねそんな問題」
爪'ー`)y‐「面倒だからねこう言う話題は」
- 331 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:05:12 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「だからまあ何やかんやでここは小さな小さな村、と言うか先住民の集落があっただけで」
ξ゚⊿゚)ξ「ほむ」
爪'ー`)y‐「けど街道が出来たお陰でドロドロの血みどろの争いがあって廃村に」
ξ゚⊿゚)ξ「それで?」
爪'ー`)y‐「人の目が無くなり治安が悪化」
ξ゚⊿゚)ξ「わあ」
爪'ー`)y‐「でも砦や関所を作るのも難しく」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほど」
爪'ー`)y‐「そして監視塔としてあの宿屋が建ちました」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほ な んん?」
爪'ー`)y‐「なのでこの土地は国の管理下で、あの宿屋もそうなります」
ξ゚⊿゚)ξ「なぜ宿……?」
爪'ー`)y‐「不便だからだろうねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「んん……んんん……?」
- 332 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:06:35 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「宿屋が……危ないのでは……?」
爪'ー`)y‐「国から派遣された元冒険者が主人なんだよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「冒険者だからって……」
爪'ー`)y‐「なんとオリハルコンクラスの夫婦」
ξ゚⊿゚)ξ「勝てる気がしないわ……」
爪'ー`)y‐「そんでこのバザールですが」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
爪'ー`)y‐「特定の期間に勝手に催されます」
ξ゚⊿゚)ξ「商人って奴は」
爪'ー`)y‐「商人の悪行はぱっと見で分からないから摘発しにくいんだよね、だからほぼ無法地帯」
ξ゚⊿゚)ξ「監視塔とは」
爪'ー`)y‐「盗賊とかそう言うの用なんだよなぁ、でも証拠持ってつき出したら対応してくれるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「交番かよ……」
- 333 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:07:55 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「ま、こんなところで買い物をするなら騙される方が悪いってやつ」
ξ゚⊿゚)ξ「それはお前が私を騙した事を覚えていながらの発言か?」
爪'ー`)y‐「よーし適当に見て回ろっかー!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ノルマ達成する?」
爪'ー`)y‐「今回の1乙にはまだぬるくない? 大丈夫?」
ξ゚⊿゚)ξ「最近あんまり死んでないしそろそろまとめて死ぬ……?」
爪'ー`)y‐「僕の命って果てしなく軽く安いね……?」
ξ゚⊿゚)ξ「だってこないだ死ななかったわよね」
爪'ー`)y‐「悪かったってば」
ξ゚⊿゚)ξ「飯も食わずに娼婦は買うし……」
爪'ー`)y‐「悪かったってば……」
ξ゚⊿゚)ξ「別にどうでも良いけどねあんたの事は……」
爪'ー`)y‐「それはそれでちょっと寂しい……」
- 334 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:09:21 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「……ツンちゃんさ」
ξ゚⊿゚)ξ「んー」
爪'ー`)y‐「こないだからちょっと落ち込んでるよね」
ξ゚⊿゚)ξ「久々に子供の死体を見たからでしょうね」
爪'ー`)y‐「んーまぁ、それもあるんだろうけどさ」
ξ゚⊿゚)ξ「だったら何よ、なにか理由があるとでも」
爪'ー`)y‐「なんか僕の事突き放してなーい?」
ξ゚⊿゚)ξ「元からでしょ?」
爪'ー`)y‐「そーだけどさーぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「狐」
爪'ー`)y‐「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「私の中身に口出ししないで」
爪'ー`)y‐「はぁい……」
- 335 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:10:36 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ(あんまり心を許し過ぎるのも良くない)
爪'ー`)y‐(ぜーったい何かあったよなー)
ξ゚⊿゚)ξ(また、一人に慣れておかないと)
爪'ー`)y‐(怒らせるような事ー……はしたけど、それだけじゃ無さそう)
ξ゚⊿゚)ξ(かと言って、ぎくしゃくして一年旅するのもなぁ……)
爪'ー`)y‐(怒ってると言うか、距離を置こうとしてる感じかなぁ……)
ξ゚⊿゚)ξ(何か、やだな)
爪'ー`)y‐(まさか恋……?)
ξ゚⊿゚)ξチラッ
爪'ー`)y‐チラッ
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ(うー何かやっぱりやだなこの感じ……)
爪'ー`)y‐(いやーねぇな、間違いなくねーわ僕見ながらバナナ食いたがるくらいだし)
- 336 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:12:29 ID:rt5Wm1YA0
わいわい、がやがや、ざわざわ。
今まで立ち寄ってきた場所で、一番の賑わいかも知れないバザール。
商人同士が商談をしたり、冒険者や旅人を相手に商売をしたり。
勝手に開かれる無法地帯にしては、あまりにも賑やかで、喧嘩の一つも起きやしない。
ああこの店は食べ物を売っている。
大きな葉に包まれて蒸し焼きにされているのは、肉と穀類だろうか。
こっちの店には服が並んでいる。
花をあしらったピンク色の花びらみたいなワンピース、可愛いがすごいいらない。
武器や防具、馬車に家畜、異国の変なものまで売られている。
何て賑やかで、騒がしくて、熱気のある空間。
商人達の声がそこかしこから響いていて、どれが安いだのお買い得だの。
やれ活きが良い、やれ肉付きが良い、やれ物覚えの良い。
ξ゚⊿゚)ξ「……うん?」
爪'ー`)y‐「んー?」
ξ゚⊿゚)ξ「売り文句が、何か変なとこがあって……」
爪'ー`)y‐「変? ……あー、アレじゃない?」
- 337 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:13:54 ID:rt5Wm1YA0
狐が指差したのは、格子のついた頑丈な馬車を背に立つ商人。
その前には、子供が数人並んでいた。
ボロボロの服、足枷と首輪、汚れた髪や肌。
健康状態が良さそうには見えない人々が、死を望む様な眼差しで立っている。
客の姿はまだ無く、売れた様子は無さそうだが。
ξ゚⊿゚)ξ「奴隷商、か……」
爪'ー`)y‐「こう言うバザールにもたまに来るんだよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「……今時、表立って奴隷を売るのはアホなのでは」
爪'ー`)y‐「ああ言うの嫌い?」
ξ゚⊿゚)ξ「しょうがない面はあると思う、けど嫌い」
爪'ー`)y‐「んじゃ後で宿屋に通報しようね」
ξ゚⊿゚)ξ「摘発出来るの?」
爪'ー`)y‐「奴隷の売買は勝手にやっちゃダーメ」
ξ゚⊿゚)ξ「ふぅん……」
- 338 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:15:05 ID:rt5Wm1YA0
奴隷はどこにでも居る。
裕福な家庭ならば一人くらいは飼われているものだ。
私は個人的に好きでは無いが、奴隷として飼われる事で幸せになる人も居ると言う。
それならば、悪だと断ずる事も出来ないし、しようのない事だと思うしかない。
ふと並ぶ奴隷達を眺めると、一人だけ珍しい容姿の子供が居た。
この辺りでは珍しい、褐色の肌。
もさもさと伸びるがままの、癖のある黒髪。
長い前髪の隙間からわずかに覗く、伏し目がちに地面を睨み付ける目は淡い緑。
そして、頭の両脇には立派な巻き角。
髪と同化して分かりにくいが、尻尾も生えているらしい。
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「それにしても子供ばっかりだねぇ、趣味わるーぅ」
ξ゚⊿゚)ξ「あの子……魔族?」
爪'ー`)y‐「え? あー本当だ……うっかり捕まったのかねぇ、可哀想に」
- 339 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:16:50 ID:rt5Wm1YA0
-
大きな、立派な巻き角。
私は、あれに良く似たものを見た事がある。
手首にはめた銀の輪を見下ろしてから、再び魔族の子供を見る。
魔族、魔族か。
まだいさかいも多いが、私は魔族を嫌っていない。
師匠の娘である姉様は、静かな目をした白い魔族で、幼い頃からそばにいた。
そんな姉様の静かな眼差しを思い出した、緑の瞳。
この世界にはまだ魔族は少し珍しい。
売れると思って捕まえたのだろうが。
前に狐も言っていた。
売れる物は、何でも売る。
それが商人だ。
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ」
爪'ー`)y‐「うん?」
- 340 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:18:05 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「私のお小遣い、残ってるわよね」
爪'ー`)y‐「え、」
ξ゚⊿゚)ξ「交渉、頼めるかしら」
爪'ー`)y‐「……いやいやいやいや買うの!? 奴隷買うの!? 買ってどうすんの!?」
ξ゚⊿゚)ξ「家に届ける」
爪'ー`)y‐「う、うん! うん!?」
ξ゚⊿゚)ξ「あの子、黒いの」
爪'ー`)y‐「え? あぁ魔族の子?」
ξ゚⊿゚)ξ「あの角、私知ってるの」
爪'ー`)y‐「…………あー……あの時の……」
ξ゚⊿゚)ξ「それに、お世話になった人に似てるの」
爪'ー`)y‐「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「……お願い、買わせて」
- 341 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:19:23 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「奴隷を買うって事、分かってる? 命の売買に手を出すんだよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「分かってる」
爪'ー`)y‐「……無責任だなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「分かってるわ、傲慢だし無責任だって、……でも買いたいの」
爪'ー`)y‐「はー……あーあーあーもー分かったよ分かったーぁ! もーぉ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさい」
ああ、私は何をしようとしているんだろう。
馬鹿な事をしようとしているのだろう。
命を売り買いするなんて、私の手はどんどん汚れて行くようで。
ξ゚⊿゚)ξ「でも、言ったじゃない」
爪'ー`)y‐「え?」
ξ゚⊿゚)ξ「私はバカで良いって」
爪'ー`)y‐「……それもそうか!」
- 342 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:20:12 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「じゃ、僕が適当に煽るから君は合わせられるだけ合わせて」
ξ゚⊿゚)ξ「わかった」
爪'ー`)y‐「わかってない顔で……はい声かけて」
,,ξ゚⊿゚)ξ「良いかしら」
( ^Д^)「あん? 何だお嬢ちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「相手を良く見て口をきいてはどうかしら」
( ^Д^)「ん? ヒッ金ランク……な、なんでしょうか……!?」
ξ゚⊿゚)ξ「その子の値段は?」
(;^Д^)「えっ」
ξ゚⊿゚)ξ「言い値は」
(;^Д^)「いや、あの……でもぉ……金ランクの方がこんな奴隷を……?」
ξ゚⊿゚)ξ「……言い値は、と訪ねた筈だけど……人をイラつかせたいわけ?」
(;^Д^)「ヒィ 金貨五枚です!」
ξ゚⊿゚)ξ「へぇ、金貨五枚(相場がわからねえ)」
- 343 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:20:57 ID:rt5Wm1YA0
(;^Д^)「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「……へぇ……?(狐ちょっと助けて)」
(;^Д^)「金貨二枚です! 二枚です!!」
ξ゚⊿゚)ξ「狐、金貨二枚だそうよ(人の命を軽くしたわこいつ)」
,,爪'ー`)y‐「ふーん……よく最初にツンちゃん相手に五枚とか吹っ掛けたよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ(いや安いくらいなのでは)
(;^Д^)「それはあの、あの」
爪'ー`)y‐「ねぇツンちゃーん、ここに、奴隷商なんて居たっけぇ?」
ξ゚⊿゚)ξ「…………さあ……どうだったかしら(よくわからないから適当に合わせよう……)」
爪'ー`)y‐「もしかしたら、最初から居なかったのかもねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、その方が私も手っ取り早くて助かるわ(どう言う意味なんだろう)」
爪'ー`)y‐「……最近、人を切ってないよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、獣ばかりだと歯応えがないと思ってたところよん(あんた切った事あったっけ)」
(; Д )
- 344 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:21:59 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「…………で、幾らだっけぇ?」
(; Д )「あ、え、銀貨、五枚で」
爪'ー`)y‐「え?」
(; Д )「いえ、あ、銅貨、」
ξ゚⊿゚)ξ゙ プチ
爪'ー`)y‐(あ、やっべ)
ξ゚⊿゚)ξ「貴様な」
(; Д )「ひ、はひ」
ξ゚⊿゚)ξ「人の命に金額を決め、更にはその値を底まで落とすか」
(; Д )「だだだってあの」
ξ゚⊿゚)ξ「ならば問う、貴様の命は金貨で買えるか? 値切れば銀貨で買えるか?」
(; Д )「そ、それはその、こいつらは奴隷で……」
ξ#゚⊿゚)ξ「黙れクズがッ!!」
(; Д )「ヒッ!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「喩え世間が許そうが、我が身に受けしミュスクルの名は許さず!!
貴様の首を柱に吊るしてでも、我がたぎる怒り晴らさせてもらうぞ!!」
爪'ー`)y‐(うわーこえーこの手のガチギレ初めて見たかもー)
- 345 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:23:10 ID:rt5Wm1YA0
(;^Д^)「差し上げます!! 差し上げますから!!」
爪'ー`)y‐「逆効果かなー」
(;^Д^)「えぇえ!?」
ξ#゚⊿゚)ξ「貴様の首がその身と別れる前に訊ねよう」
(;^Д^)「命ばかりは、命ばかりはお助けを!!」
爪'ー`)y‐「ちゃんと答えないと早死にするよ?」
(;^Д^)「何でもお聞きください!!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「その魔族の娘、どこで仕入れた」
(;^Д^)っζ(゚- ζ,,「ま、魔族の……こいつですか?」ズルル
爪'ー`)y‐「雑に扱っても早死にするよー」
ξ#゚⊿゚)ξ「どこで仕入れた」
(;^Д^)「どこでかは分かりません!! 仲介から買ったので!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「チッ……その手を離せ」
(∩;^Д^)')「はい!!」
- 346 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:23:47 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「金貨五枚だっけぇ」
(;^Д^)「へ?」
爪'ー`)y‐「ほら、この金貨五枚」
(;^Д^)「え、あ、は、払って……?」
爪'ー`)y‐「ほらお嬢ちゃん、手開いてー」
ζ(゚- ζ
⊂ζ(゚- ζ?
爪'ー`)y‐「これが、これから死ぬ商人が決めた君の値段だよ、しっかり握っておくようにね」
ζ(゚- ζ゙?
(;^Д^)「えっえっ そそそんな奴隷、ど、どうなさるんで……?」
ξ゚⊿゚)ξ「決まってるでしょ」
斧を掲げ、奴隷を繋ぐ鎖を断ち切る。
そして目を白黒させる幼い奴隷の手を掴み、立たせてからその小さな肩に手を置いた。
ξ゚⊿゚)ξ「持って帰るだけよ」
- 347 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:24:48 ID:rt5Wm1YA0
(;^Д^)「あの、俺は」
爪'ー`)y‐「裁くのは僕らじゃないよねぇツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「本気で殺そうと思ったけど、宿屋から人が出てきたんじゃしょうがないわ」
(;^Д^)「え゙」
,,(,,゚Д゚)「はいそこ、何騒いでんだー」ノッシノッシ
ξ゚⊿゚)ξσ「無許可の奴隷商です」
爪'ー`)σ「こいつ無許可で奴隷売ろうとしました」
(;^Д^)「あああああああ!!!」
(,,゚Д゚)「そのちっこいのは?」
ξ゚⊿゚)ξ「保護しました」
爪'ー`)y‐「ひどい扱いに見かねてうちの相棒がその身を呈して……」
(,,゚Д゚)「じゃあその奴隷の保護は任せるか、金ランクだしな」
ξ゚⊿゚)ξ「ミュスクルの名に誓って」
(,,゚Д゚)「そりゃ安心だ」
- 348 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:25:46 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「残りの子は?」
(,,゚Д゚)「孤児院いくつか当たってみるわ、無理なら王都、城下町の教会だ」
爪'ー`)y‐「あーそりゃ安心だ、んじゃ保護とこれの始末お願いしますね」
(,,゚Д゚)「ご協力どうもー、宿の二階が空いてるぞ」
爪'ー`)y‐「すぐ行きまーす」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ζ
ξ゚⊿゚)ξ「行くか」
爪'ー`)y‐「そうね」
ζ(゚- ;ζ
爪'ー`)y‐「ところでミュスクルって?」
ξ゚⊿゚)ξ「師匠の苗字」
爪'ー`)y‐「お師匠は四大英雄の血族だったかー」
ξ゚⊿゚)ξ(本人だけど信じないよなあこいつ)
- 349 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:26:30 ID:rt5Wm1YA0
かつかつ、こつこつ。
じゃらじゃら、ずるずる。
ぎぃ、ばたん。
(*゚ー゚)「道草亭にいらっしゃいませー……あら、あなた達が主人の言ってた?」
爪'ー`)y‐「どうも焼きたてパンと溶かしバターです」
(*゚ー゚)「…………あ、パーティ名なのねそれ……急に何かと思った……」
爪'ー`)y‐「ダブルベッドの部屋をお願いします」
ξ゚⊿゚)ξ「部屋分けてください」
爪'ー`)y‐「無慈悲なボケ殺し」
(*゚ー゚)「二階の角部屋をご用意してますよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとうございます」
爪'ー`)y‐「ダブル?」
(*゚ー゚)「シングル二つ」
- 350 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:27:51 ID:rt5Wm1YA0
(*゚ー゚)「……ふふ、それにしても、珍しい冒険者さんねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「はい?」
(*゚ー゚)「奴隷のために、わざわざあんな騒ぎにして」
ξ゚⊿゚)ξ「気に食わなかったものでお恥ずかしい……」
(*゚ー゚)「……良いんじゃないかしら、真っ直ぐでも」
爪'ー`)y‐「女将さんそれどうにかするの僕なんです」
(*゚ー゚)「でも良いじゃない……この子なら、壁にぶち当たっても、きっと折れずに穿つ様になるわ」
爪'ー`)y‐「まだ折れるんですよーこの子ー」
(*゚ー゚)「あらあら、じゃあ折れたらあなたがどうにかしなきゃ」
爪'ー`)y‐「ンモー」
(*゚ー゚)「あ、そうそう」
爪'ー`)y‐「はいはい」
- 351 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:28:53 ID:rt5Wm1YA0
(*゚ー゚)「その子はどうするの?」
ξ゚⊿゚)ξ「これから決めます」
(*゚ー゚)「あらあら、ノープランなんだから」
ξ゚⊿゚)ξ「お前たちは駄目だ?」
(*゚ー゚)「そっちじゃないわね」
爪'ー`)y‐「エビフライの尻尾?」
(*゚ー゚)「一緒よねそれ」
爪'ー`)y‐「軽やかにボケを拾ってくれる女将さん最高かな?」
(*゚ー゚)「うふふ、引き留めてごめんなさいね、おちびさんが所在無さげだからお部屋へどうぞ」
爪'ー`)y‐「はーい」
ξ゚⊿゚)ξ「失礼します」
(*゚ー゚)
(*゚ー゚)「魔族に優しいと嬉しくなっちゃう」
,,(,,゚Д゚)「同族に優しいと嬉しいよな」
(*^ー^)「ね」
(,,゚Д゚)「……モララーとか元気かなぁ」
(*゚ー゚) 「私達の分も四天王としていっぱい仕事してると思う」
- 352 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:30:12 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「ふぅ……やっと落ち着いたわね」
爪'ー`)y‐「いやー怖かった、ツンちゃんがついに人を殺すかと」
ξ゚⊿゚)ξ「殺すつもりだったけどね」
爪'ー`)y‐「そうだねガチギレだったもんねびっくりしたよ本当にアホかと」
ξ゚⊿゚)ξ「馬鹿にされてる事はわかるから殺したいけど今は我慢しておいてやる」
爪'ー`)y‐「おっと後で凄惨な死が待ち受けてる宣言されたぞ☆
……ところで、この子どうすんの? 完全に絶望モード入ってるけど」
ξ゚⊿゚)ξ「荷物の配送屋あるでしょ? 預けて家の方に届けてもらったら」
爪'ー`)y‐「ゆうパックか何かかいこの子は」
ξ゚⊿゚)ξづ「前髪邪魔ね、ちょっとどかして……」
ζ(゚- ゚;ζ"
ξ゚⊿゚)ξ「……そうだ、あなた名前は?」
:ζ(゚- ゚;ζ:「…………」
- 353 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:31:16 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「聞かれたのなら応えなさい」
:ζ(゚- ゚;ζ:「…………」
ガッ
ξ゚⊿゚)ξづ゚- ゚;ζ:そ
ξ゚⊿゚)ξ「名前は」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんそれめっちゃ怖いんだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「マジか」
:ζ(゚- ゚;ζ:「……デレ」
ξ゚⊿゚)ξ「デレね」
:ζ(゚- ゚;ζ:「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「歳は」
:ζ(゚- ゚;ζ:「……きゅうさい」
ξ゚⊿゚)ξ「子供じゃない」
爪'ー`)y‐「見ればわかるよツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「うううるさい。……あなた、魔族ね」
:ζ(゚- ゚;ζ゙:「…………」コクコク
- 354 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:32:24 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「……あなた、奴隷商に何かされた?」
:ζ(゚- ゚;ζ:「…………ひんしつ」
ξ゚⊿゚)ξ「品質……?」
:ζ(゚- ゚;ζ:「ひんしつちぇっく……」
ξ゚⊿゚)ξ「……? それは、」
爪'ー`)y‐「あーやめやめ分かったから」
ξ゚⊿゚)ξ「何よちょっと」
爪'ー`)y‐「やめようそれの話は」
ξ゚⊿゚)ξ「…………分かったわ、あんたがそう言うなら聞かない」
爪'ー`)y‐「えーと……怪我はあるかい?」
:ζ(゚- ゚;ζ゙:「…………」ジャラ
爪'ー`)y‐「んー枷の当たる部分が傷になってるか、外す道具が必要だな」
- 355 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:33:17 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「見せて」
爪'ー`)y‐「さすがに斧では難しいよね」
ξ゚⊿゚)ξ゙「フンッ!!」メキィメリメリバキン
爪'ー`)y‐
:ζ( - ;ζ:
ξ゚⊿゚)ξ「外れたわよ?」
爪'ー`)y‐「それは外れたんじゃなくて引きちぎったって言うんだよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「外れはしたでしょうるさいわね」
爪'ー`)y‐「お姉ちゃんこわいねーゴリラみたいだよねーよしよし」
:ζ(゚- ゚;ζ:
爪'ー`)y‐「ほらこんなに怯えてる!」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたが気持ち悪いからとかでなく?」
爪'ー`)y‐「何て事言うの!?」
- 356 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:35:01 ID:rt5Wm1YA0
:ζ(゚- ゚;ζ:
爪'ー`)y‐「うーん髪も肌も黒いから汚れてるのか分からない」
ξ゚⊿゚)ξ「髪がいろんなものでベタベタだわ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんのインナーみたいになってるね」
ξ゚⊿゚)ξ「双方に失礼なのでは?」
爪'ー`)y‐「そうだねごめんねおちびさん」
ξ゚⊿゚)ξ「おい」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんが怖い声出す度にこの子が怯えるんだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「む、それは困るわね……こいつが悪いだけだから気にしなくて良いわよ」
:ζ(゚- ゚;ζ:
爪'ー`)y‐「ほらー! 震えてるー! ツンちゃんがメスゴリラだからー!!」
ξ゚⊿゚)ξ「お前後で覚悟しとけよ」
爪'ー`)y‐「最近は平和だと思ったのに」
ξ゚⊿゚)ξ「リスキル重点」
爪'ー`)y‐「やめて後ですごくお腹空くんだからあれ」
- 357 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:35:52 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「うーん、取り敢えず家に届けるにも綺麗にしなきゃね」
爪'ー`)y‐「お風呂は一人で入れる?」
:ζ(゚- ゚;ζ゙:「……」コクコク
ξ゚⊿゚)ξ「心配ね……頭くらい洗うわ」
爪'ー`)y‐「大丈夫? 頭皮引きちぎらない?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたの頭も今度フルパワーで洗ってあげましょうか?」
爪'ー`)y‐「自ら頭を差し出してまで潰される気はないかな!」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら立って、お風呂行くわよ」
":ζ(゚- ゚;ζ:" フルフル
ξ゚⊿゚)ξ「? 拒否ってないで来なさいな、別に水に沈めたりしないから」
爪'ー`)y‐「逆効果のような」
ξ゚⊿゚)ξ「傷でもあるのかしら」
爪'ー`)y‐「あー見られたくないのかもね」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ背中向けてなさい、後ろから頭だけ洗ってあげるわ」
:ζ(゚- ゚;ζ:゙ コク
- 358 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:37:43 ID:rt5Wm1YA0
ざぶざぶ。
ばしゃばしゃ。
長い癖のある黒髪にお湯をかけて、狐に渡されたシャンプーで揉み洗う。
別にせっけんで良いと思ったが、どうやらダメだったらしい。半ギレだった。
しかし揉んでも揉んでも泡が立たない、手には脂の感触がまだ消えない。
これはしっかり洗わないと。
背中を向ける魔族の子供、デレはその褐色の肌をスポンジで擦っている。
骨の浮いた、小さくて傷だらけの背中。
鞭の傷と、火傷の痕もある、肩にあるのは奴隷の焼き印か。
今度、この焼き印を消してやらなきゃ。
先の戦争の事もあり、人間と魔族はまだ折り合いが良いとは言えない。
偉い人達は和平のために忙しいらしいが、民同士はそう上手くはいかないもので。
しかし、魔族が奴隷として売られているのは、戦争とは無関係だ。
奴隷は奴隷、魔族だろうと人間だろうと、魔物だろうと関係ない。
こちらで魔族が奴隷になるように、あちらでも人間が奴隷になる。
特別な事じゃない。
珍しい事じゃない。
でも、私は嫌いだ。
- 359 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:38:25 ID:rt5Wm1YA0
やっと泡立ち始めた髪を洗い、角をブラシで擦る。
小さな身体は、まだ小刻みに震えていた。
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ」
:ζ(゚- ゚;ζ:
ξ゚⊿゚)ξ「人間が憎いかしら」
:ζ(゚- ゚;ζ":フル
ξ゚⊿゚)ξ「そう、なら、有り難いわ」
:ζ(゚- ゚;ζ:
ξ゚⊿゚)ξ「私も、魔族が嫌いじゃないわ、寧ろ友好的であれば嬉しい
友好を示されたのなら、私はそれを返したい、逆もまたしかり」
:ζ(゚- ゚ ζ:
ξ゚ー゚)ξ「……何かを憎むのは、疲れるものね」
ζ(゚- ゚ ζ「……うん」
- 360 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:39:10 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「デレ」
ζ(゚- ゚ ζ「あい……」
ξ゚⊿゚)ξ「私はあなたを奴隷として扱わない、一人の子供として扱うわ」
ζ(゚- ゚ ζ゙
ξ゚⊿゚)ξ「帰る場所はあるかしら」
ζ(゚- ゚ ζ「……ない」
ξ゚⊿゚)ξ「そう、じゃあ、私が心から信頼している人のところに来る?」
ζ(゚- ゚ ζ゙「ん」
ξ゚⊿゚)ξ「分かった」
ζ(゚- ゚ ζ「おね、さん」
ξ゚⊿゚)ξ「何?」
ζ(゚- ゚ ζ「ありが、と」
ξ゚⊿゚)ξ「別に、私はあなたを独善的に買おうとしただけだもの」
ζ(゚- ゚ ζ「う……?」
ξ゚⊿゚)ξ「……あなたのためじゃない、私がそうしたかったからしただけ」
ζ(゚- ゚ ζ「……ありがと」
ξ゚⊿゚)ξ「やめてよ」
- 361 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:39:55 ID:rt5Wm1YA0
ζ(゚- ゚ ζ「おねさ、こわ、ない?」
ξ゚⊿゚)ξ「怖いわよ」
ζ(゚- ゚;ζ
ξ゚⊿゚)ξ「……悪い相手にだけよ」
ζ(゚- ゚ ζホッ
ξ゚⊿゚)ξ「お湯かけるわよ」
ζ(>- < ζ" ザバー
ξ゚⊿゚)ξ「よし、やっと綺麗になって……あ」
ζ(゚- ゚ ζ?
ξ゚⊿゚)ξづ「尻尾忘れてたわ」ガッ
ζ(゚□゚;ζ「キャンッ!」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら動かない」ワシャワシャ
ζ(゚□゚;ζ「がう、がう!! きゃん!!」
ξ゚⊿゚)ξ「わんわん言ってないで大人しくしなさい」
ζ(゚□゚;ζ「ぎゃうぅ!!」
- 362 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:40:38 ID:rt5Wm1YA0
,,ξ゚⊿゚)ξ「上がったわよ」ポタポタ
爪'ー`)y‐「おっかーえ ずぶ濡れだな!?」
ξ゚⊿゚)ξ「尻尾洗ったら暴れられた」
爪'ー`)y‐「あらー、君も入っといでよ、服まで濡らして」
ξ゚⊿゚)ξ「むう、せめて着替えるか」
ζ( - ;ζグッタリ
爪'ー`)づ「やあぐったりしている、尻尾も綺麗になったね」ギュ
ζ(゚皿゚#ζ「がう」ガブー
爪'ー`)y‐「あーいたいいたいいたいお客様ー困りますお客様ー」
ξ゚⊿゚)ξ「アホか」
爪'ー`)y‐「まさか噛まれるとは」
ξ゚⊿゚)ξ「尻尾触られるのは嫌いみたいよ」
爪'ー`)y‐「よーくわかりました……」
- 363 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:41:18 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「軽く拭いて着替えたし、狐」
爪'ー`)y‐「んー?」
ξ゚⊿゚)ξ「その子の服買ってくるから拭いといて」
爪'ー`)y‐「立場が逆なのでは?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたはともかく、あんたのセンスは信じてない」
爪'ー`)y‐「あんまりだ!!」
ξ゚⊿゚)ξつ「おこづかい」
爪'ー`)つ◎「最近使いすぎ」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ行ってくる」
爪'ー`)y‐「はいはい」
ζ(゚- ゚ ζ
爪'ー`)y‐「じゃあ君はドライヤーに慣れようね」
ζ(゚- ゚ ζ?
爪'ー`)y‐「ほーら怖くないよー音がするけど魔力で送風する道具だよー」ブォー
- 364 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:41:56 ID:rt5Wm1YA0
ζ(゚- ゚ ζソヨー
爪'ー`)y‐「思ったより怖がらないな、じゃあ乾かしますよー」
ζ(゚- ゚ ζ゙ ブォー
爪'ー`)y‐「着てた服は捨てても良い?」
ζ(゚- ゚ ζ゙「ん」
爪'ー`)y‐「服って言うかぼろきれだな……身体拭いた?」
ζ(゚- ゚ ζ"フルフル
爪'ー`)y‐「じゃあタオル追加するから拭いて、ドライヤー置いといてっと……」
ζ(゚- ゚ ζ゙ ゴシゴシ
爪'ー`)y‐「褐色はこの辺じゃあんまり見ないんだよねぇ、海辺の方には居るんだっけな」
ζ(゚- ゚ ζ" ゴシゴシ
爪'ー`)y‐「よいしょ、ほらタオル、ツンちゃんが戻るまでこれで」
⊂ζ(゚- ゚ ζポイ
爪'ー`)y‐「濡れたタオルを捨てないの、はい新しいタオル」
- 365 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:42:52 ID:rt5Wm1YA0
ζ(゚- ゚∩ζワシャワシャ
爪'ー`)y‐「言葉が通じるような通じないような……もう良いや僕のシャツ着せとこ」
ζ(゚- ゚ ζ「がう」
爪'ー`)y‐「がうじゃなくて万歳して」
('(゚- ゚∩ζ バンザーイ
爪'ー`)y‐「あっ」
('(゚- ゚∩ζ?
爪'ー`)y‐
('(゚- ゚∩ζ
爪'ー`)y‐「そいや」バサァ
ζ(>- < ζ
爪'ー`)y‐「お腹におっきい傷あったのね」
ζ(゚- ゚ ζ「ん」
爪'ー`)y‐「じゃあ髪乾かすよ」
ζ(゚- ゚ ζ「あい」
爪'ー`)y‐「たまに会話できるな」
- 366 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:43:27 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「戻ったわよー」
爪'ー`)y‐「お帰りー」
ξ゚⊿゚)ξ「はいこれ」
爪'ー`)y‐「わあ女児パンツ……と、ツンちゃんがさっき見てた服?」
ξ゚⊿゚)ξ「気付いてたのかよ……」
爪'ー`)y‐「小さいのあったんだね、じゃあもっかい万歳して」
ζ(゚- ゚ ζ
爪'ー`)y‐「して」
ζ(゚- ゚ ζ
ξ゚⊿゚)ξ「何? 反抗期?」
爪'ー`)y‐「ピンクが気にくわない様子」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなの?」
('(゚- ゚∩ζスッ
爪'ー`)y‐「歯向かってはいけない相手だと察したんだね……偉いぞ……」
- 367 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:44:52 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「あんたには歯向かって良いって意味?」
爪'ー`)y‐「別にそんな感じでもないけどなぁ」ポンポン
ζ(゚- ゚ ζ゙
爪'ー`)y‐「はい着せた」
ξ゚⊿゚)ξ「うむ」
爪'ー`)y‐「ズボンセットだっけこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「動きづらいでしょスカートって」
爪'ー`)y‐「まぁ確かに、尻尾穴空けないとな」
ξ゚⊿゚)ξ「後で女将さんに頼みましょ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん裁縫スキルは?」
ξ゚⊿゚)ξつ「腕のこの傷が自力で縫ったやつ」
爪'ー`)y‐「やめとこう」
- 368 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:45:19 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚ ζ
爪'ー`)y‐(なにこの空気)
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そうだ」
ζ(゚- ゚ ζ゙ ビクッ
ξ゚⊿゚)ξづ「これあげる、私より似合うでしょ」
:ζ(>- < ζ:そ
:ζ(>- <*゙ζ:
ζ(>- <*ζ
ζ(゚- ゚*ζ゙?
ξ゚⊿゚)ξ「うむ」
爪'ー`)y‐「あら可愛い」
ξ゚⊿゚)ξ「であるな」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんたまにオッサンみたいだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「ッすぞ……」
爪'ー`)y‐「子供の前で残酷な発言はちょっと」
- 369 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:45:59 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「あれってこないだの花売りの花?」
ξ゚⊿゚)ξ「私が鎧につけるより良いでしょ」
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚- ゚∩ζ゙
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚ー゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ(笑った)
爪'ー`)y‐(笑った)
ζ(゚- ゚*ζ゙ ハッ
ξ゚⊿゚)ξ(戻った)
爪'ー`)y‐(戻った)
ξ゚⊿゚)ξ(かわいい)
爪'ー`)y‐(小動物が増えた)
- 370 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:46:35 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「デレは花が好き?」
ζ(゚- ゚*ζ「すき」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあちょうど良かったわ、服」
爪'ー`)y‐「お花いっぱいでひらひらしたの選んだねツンちゃん、願望かな?」
ξ゚⊿゚)ξ「私は着たくないけど人に着せるならと」
爪'ー`)y‐「分かるよその気持ち」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐「着せられた本人はやや不満そうだけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「きっと気のせいよ」
爪'ー`)y‐「お、外套もセットだ」
ξ゚⊿゚)ξ「目立つ色だけど晴雨両用で寒い時期も安心、なんと裏地を剥がせば夏場も使える」
爪'ー`)y‐「そんな長靴みたいな」
- 371 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:48:04 ID:rt5Wm1YA0
⊂ζ(゚- ゚*ζ「ぁ、う、」グイグイ
ξ゚⊿゚)ξ「? なに?」
ζ(゚- ゚*ζ「それ、てくび」
ξ゚⊿゚)ξ「手首?」
ζ(゚- ゚*ζ「わっか、ぎんいろ」
ξ゚⊿゚)ξ「……ああ、これはね、森の奥の魔物の巣穴にあったの……勝手に持ってきちゃったのよね」
ζ(゚- ゚*ζ゙ ピク
ξ゚⊿゚)ξ「その巣穴には二つの骨があってね、あなたによく似た角が生えてて」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「……私は関わりは無いし、知らない存在だけど……何だろう、それを忘れたくなくて」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「大事にするから、人間の手で殺された存在を忘れないように、持っていたくて……だからあなたを」
ζ(゚- ゚*ζ「すたるとぅ」
ξ゚⊿゚)ξ「……スタルトゥ?」
- 372 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:49:24 ID:rt5Wm1YA0
ζ(゚- ゚*ζ「これ」
ξ゚⊿゚)ξ「……この文字? 読めるの?」
ζ(゚- ゚*ζ「デレの、おうち、なまえ」
ξ゚⊿゚)ξ!
ζ(゚- ゚*ζ「これ、まま、の」
ξ;゚⊿゚)ξ「……あ…………あー……」
ξ;∩⊿∩)ξ「あぁぁぁぁあー…………」
ζ(゚- ゚*ζ?
爪'ー`)y‐「ツンちゃんがまためんどくさく」
ξ;゚⊿゚)ξ「……この輪は……あなたの、お母さんの?」
ζ(゚- ゚*ζ「うん」
ξ;゚⊿゚)ξ「じゃあ……えっと……やっぱり、あなたは、森の奥に……?」
- 373 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:50:01 ID:rt5Wm1YA0
ζ(゚- ゚*ζ「ぱぱ、まま、さんにん、まぞく」
ξ;゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ「にんげん、デレ、もってった」
ξ;゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ「まま、うごかない、ぱぱ、おこった」
ξ;∩⊿∩)ξ゙
ζ(゚- ゚*ζ?
爪'ー`)y‐(これはフォローが面倒そうだぞ!!)
ξ;゚⊿゚)ξ「……これ、返すわ、あなたに」
ζ(゚- ゚*ζ「いらない」
ξ;゚⊿゚)ξ「へ」
ζ(゚- ゚*ζ「それ、ままのあかし、デレ、ままじゃない」
ξ;゚⊿゚)ξ
- 374 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:50:39 ID:rt5Wm1YA0
ζ(゚- ゚*ζ「おね、さん」
ξ;゚⊿゚)ξ「はひ」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、まま、にてる」
ξ;゚⊿゚)ξ!
爪'ー`)y‐「お母さんおっぱい無かったの?」
ζ(゚- ゚*ζ「ううん、そこ、にてない」
爪'ー`)y‐「だってさツンちゃん!!」
ξ゚⊿゚)ξ「黙れや」
爪'ー`)y‐「お母さんはどんな人だったの?」
ζ(゚- ゚*ζ「つよい」
爪'ー`)y‐「つよい」
ζ(゚- ゚*ζ「こわい」
爪'ー`)y‐「こわい」
ζ(゚- ゚*ζ「ぽかぽか」
- 375 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:51:17 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「デレちゃん一つ良いかな?」
ζ(゚- ゚*ζ?
爪'ー`)y‐「君は所謂、一般教育を受けて育たなかった子なのかい?」
ζ(゚- ゚*ζ??
爪'ー`)y‐「魔族も人間も、お勉強をするだろ? 君は言葉のお勉強を受けなかったように思える」
ζ(゚- ゚*ζ「ぱぱ、まもの、ちかい」
爪'ー`)y‐「魔物に近い?」
ζ(゚- ゚*ζ「せいかつ、もり、まもの、たべる」
爪'ー`)y‐「うーん……」
ξ゚⊿゚)ξ「人間にも動物に近い生活をする人達は居るけど、それかしら」
ζ(゚- ゚*ζ「もり、まもる、にんげん、かかわ、ら、ない?」
爪'ー`)y‐「あー……うーん……?」
ζ(゚- ゚*ζ「むー……?」
- 376 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:52:03 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「なぜその生活を選んだかは分からないけど、魔物を狩る事で隣人である人間を守ってたのかな」
ξ゚⊿゚)ξ「たぶんお互いの為に関わらないようにしてたんでしょうね、まだ折り合いが良いとは言えないし」
爪'ー`)y‐「それは分かるんだけどなー……何で魔物に近い生活を……?」
ξ゚⊿゚)ξ「デレが言葉を覚えたら分かるんじゃない?」
爪'ー`)y‐「ま、それもそっかぁ……気長に待つかなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐?
ξ゚⊿゚)ξ「あんた丸くなったわね」
爪'ー`)y‐!?
ξ゚⊿゚)ξ「前は関わるな面倒だって感じだったのに……」
爪'ー`)y‐
爪'ー`)y‐「デレちゃんお兄さんとたくさんお勉強しようねー」
ξ゚⊿゚)ξ「おい」
爪'ー`)y‐「あのお姉さんよりアホな子なんてこの世にいないと思うから将来が楽しみだね!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「クルルァア!!」
- 377 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:54:22 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「だいたい君は人の事言える!? 僕はともかく僕のセンスは信じてないって言ったよね!?」
ξ゚⊿゚)ξ「言ったけど」
爪'ー`)y‐「いつのまに君を騙して旅に同行させる詐欺師を信用するようになったのかな!!?」
ξ゚⊿゚)ξハッ
爪'ー`)y‐「そうだよそれもこれも君が隙だらけのアホな半人前だからだよだから変に情けが湧いたんだ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ狐」
爪'ー`)y‐「何だよホームランバー! 無乳! 猪突猛進脳筋! 今までどうやって一人旅してたんだよ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと来なさい」
,,爪'ー`)⊂ξ゚⊿゚)ξズルズル
<ウワナニスルヤメ
<ザバーン バシャバシャ ゴボゴボ
<ゴボゴボ … … …
,,ξ゚⊿゚)ξ「デレ、夕飯貰ってきましょうか」ポタポタ
ζ(゚- ゚;*ζ゙ コクコク
- 378 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:55:18 ID:rt5Wm1YA0
人前で食事するのはまだ怖がるかもしれない。
そう思い、宿の女将には手掴みで食べられる食事部屋で、と頼んだ。
一階に降りると、ちょうど女将が食事を運ぼうとしていたところで。
私とデレはそれを受け取り、部屋に戻る。
そして二人でテーブルについて、皿にこんもりと積まれたサンドと器に盛られたスープに手を伸ばす。
スープはあっさり、野菜と薫製肉の味がよく出た塩味のもの。
シンプルではあるが質素ではなく、じっくり手をかけて作られた味なのがわかる。
表面に焼き目のあるもっちりした生地のパン、挟まれる具は様々。
ひとつめはチーズと挽き肉。
とろとろじゅわっと噛み締める度に旨味が広がる。
ふたつめは野菜と肉。
新鮮な葉とごろごろ野菜、少し甘く味付けをした肉がよく合う。
みっつめはエビと甘味の無いねっとりした果物、酸味のあるソースが味をまとめている。
よっつめはトマトと冷たいチーズ、味付けは植物油と塩だけだがこれが妙に美味い。
いつつめはデレが持ってきた小さな皿、クリームチーズと果物を煮崩した物が挟んである。
デレはこれを一番気に入ったらしく、口と手をべたべたにして食べていた。
ξ*´⊿`)ξ「ふは……うま」
ζ(´-`*ζ「うま」
- 379 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:56:30 ID:rt5Wm1YA0
,,爪'ー`)y‐「あー死んだ死んだ、溺死は苦しいし地味だからやめてほしい」
ξ゚⊿゚)ξ「あらお帰り」
爪'ー`)y‐「あ、もうご飯食べてる」
ξ゚⊿゚)ξ「一つずつ置いといたわよ」
爪'ー`)y‐「わーい、いただきます」
ξ゚⊿゚)ξづ「デレ、口と手を拭いて」
ζ(゚- ゚*ζ「んむー」
ξ゚⊿゚)ξ「服は汚れてない?」
ζ(゚- ゚*ζ「…………ない」
ξ゚⊿゚)ξ「よし」
ζ(゚- ゚*ζ「んむ」
爪'ー`)y‐(保護者っつーか飼い主)
- 380 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:57:31 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「デレは毛並みが良いわね」ワシワシ
ζ(゚- ゚*ζ「がう」
ξ゚⊿゚)ξ「……狐、食べながらで良いから聞いてほしいんだけど」
爪'ー`)y‐「んー?」
ξ゚⊿゚)ξ「私あんたとの旅に慣れて、一人で居るのが苦手になった」
爪'ー`)y‐「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「だから距離を置くか、別行動を増やそうかと思って」
爪'ー`)y‐「……ふーん」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、やっぱこう言うの面倒だし、モヤつくのはいや」
爪'ー`)y‐「……それで?」
ξ゚⊿゚)ξ「それでね、私、この膝で眠った子供を連れて歩きたいって思って」
爪'ー`)y‐「デレを? 邪魔になるでしょ」
ξ゚⊿゚)ξ「負担はみんな私が背負うわ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんさぁ、最近ワガママが過ぎるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……ごめんなさい」
- 381 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:57:58 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「僕らは二人で旅をしてるんだよ、君の都合ばかりで動けない」
ξ゚⊿゚)ξ「分かってる」
爪'ー`)y‐「だったら何でそうやって子供みたいな事を言うのさ、はっきり言えば良いじゃないか」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「一人は寂しいからってはっきり言いなよ」
ξ゚⊿゚)ξ「言えるわけないじゃない」
爪'ー`)y‐「どうして?」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなの、冒険者としても戦士としても、マイナスになるもの」
爪'ー`)y‐「君の師匠はさぁ、言わなかったのかな」
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
爪'ー`)y‐「守る物が出来たら弱くなる事もあるけど、守る物が無ければ強くもなれないよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ッ」
- 382 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:58:39 ID:rt5Wm1YA0
爪'ー`)y‐「君はワガママだし、折れやすいし、頭の悪い子だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね」
爪'ー`)y‐「でも自分がしっかりあるし、ストイックだし、凄く真っ直ぐだ」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「それに僕は、君の戦士としての腕を見込んで、君を騙してまで同行させたんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「買いかぶりよ」
爪'ー`)y‐「だから君には、もっと強くなって貰わなきゃいけないんだ、僕を守ってくれなきゃ」
ξ゚⊿゚)ξ「それは、分かってるけど」
爪'ー`)y‐「だから強くなるのに必要な物は、僕が与えてあげるから」
ξ゚⊿゚)ξ「……狐」
爪'ー`)y‐「一人が嫌なら、その子を抱えていると良い
僕も一人で眠りたくない時は、そうすればよく眠れそうだしね」
ξ゚⊿゚)ξ「……うん」
- 383 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 21:59:02 ID:rt5Wm1YA0
ξ゚⊿゚)ξ「私は、私しか守ろうとしてなかった」
爪'ー`)y‐「そんなもんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「子供の私がまだ私の中に居るから、それだけを守ろうとしてた」
爪'ー`)y‐「うん」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、他にも守れるもの、あったのね」
爪'ー`)y‐「護衛って事、忘れないでよね」
ξ゚⊿゚)ξ「うん……」
ζ(- -*ζ゙「んゅ……すぅ」
爪'ー`)y‐「よく寝てる」
ξ゚⊿゚)ξ「緊張してたんでしょうね」
爪'ー`)y‐「君も眠りなよ、子守唄を歌うから」
ξ゚⊿゚)ξ「食事は?」
爪'ー`)y‐「大抵の人は君と違って一個食べればお腹一杯になるんだよ」
- 384 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 22:01:18 ID:rt5Wm1YA0
ぽろろん。
それは歴戦の戦士の姿。
街を背に立つ雄々しき姿。
育った街を護るべく。
愛する者を護るべく。
幾千の軍勢と対峙した戦士。
その働きはまさに獅子奮迅。
斧槍を振るい敵を薙ぎ。
風を裂いては地を濡らす。
全身に矢を受け刃を受け。
それでも守り通せなかった。
英雄と呼ばれる男の咆哮。
英雄と呼ばれる男の慟哭。
その手で守りたかった物はみな
指の隙間からすり抜けて落ちた。
恐ろしきは覇王と呼ばれた英雄。
哀れなる英雄と呼ばれた男。
(ああ、これは)
(師匠の、歌だ)
- 385 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 22:02:18 ID:rt5Wm1YA0
久々に大好きな人たちの夢を見た。
師匠の大きな手のひら。
姉様の優しいほほえみ。
お母さんの、遠い背中。
ねぇ師匠、紹介します。
私の相棒の吟遊詩人。
それと魔族の子供。
私まだ強くなります。
私もっと強くなります。
一人はいやだけど。
しばらくは、一人じゃないから。
熊にも、もう勝てますよ。
素手で首を吹き飛ばせます。
私ちゃんと、成長してますから。
今は私よりも、この小さな子供を守りたいから。
弱っちい相棒も守らなきゃいけないから。
まだまだ、たくさん成長しますから。
- 386 名無しさん[sage] 2016/12/04(日) 22:03:39 ID:rt5Wm1YA0
ξ-⊿-)ξスヤスヤ
ζ(- -*ζスヨスヨ
爪'ー`)y‐「……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんじゃなかったら、惚れるか面倒になって捨ててたのになー」
爪'ー`)y‐「……ま、僕の一人寝も楽にはなりそうだし」
爪'ー`)y‐「連れていきたいって、先に言おうとしたのにさ
君が先に言うんじゃしょうがないや」
ξ-⊿-)ξスヤスヤ
ζ(- -*ζスヨスヨ
爪'ー`)y‐「世界中の責任を背負ったような顔をしてた癖に、何つー穏やかな寝顔してんだか」
爪'ー`)y‐「……」
爪'ー`)y‐「僕の弱さを君に教えるのは、また今度ね」
おわり。