- 463 ◆tYDPzDQgtA 2016/12/18(日) 21:00:28 ID:Gi/DHZVk0
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声、獣じみた幼い咆哮。
刃を振るい、歌声を響かせ、魔力を用い、路銀を稼いで進むのは三人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
そんな二人の後ろをついて歩く、小さな魔族の子供。
【道のようです】
【第九話 たかのぞみじゃないけど。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
- 464 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:02:24 ID:Gi/DHZVk0
じめじめ、しとしと、薄暗い洞窟の中。
光る苔やキノコを集めて詰めた簡易ランタンを掲げながら、見飽きたような道を進む。
持ち込んだ食料はそろそら尽きる、出てくる魔物は食える代物ではない。
私は、早くこの洞窟を抜けてしまいたかった。
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、まもの」
ξ゚⊿゚)ξ「またか……」
この数日で、デレは人よりも魔物を察知する能力が高い事もわかった。
それは恐らく魔族だからなのだろう、何か気配のようなものを強く感じるらしい。
デレは言葉はたどたどしいが、思考はしっかりしている。
ただの何も知らないお子さま、と言うわけではないようだ。
私には従順に、狐にはどこか気さくに振る舞っている。
父親にでも飢えているのだろうか、そいつは父親と言うには少し若いし細すぎると思うが。
うんざりしながらデレが指した方へ体を向けて、斧槍を構える。
岩肌の影から飛び出してきたのは、茶色くて丸い毛玉。
- 465 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:04:25 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「これよね、依頼の魔物って」
爪'ー`)y‐「そーそー、解毒薬はあるから気にせず戦って」
ξ゚⊿゚)ξ「ったくもう……少し面倒なだけで弱いったら……無いっ!」ズシャッ
ζ(゚- ゚*ζ「つよい」
この毛玉の魔物は鋭い牙を持つ口があり、油断をすると腕くらいなら食い千切るだろう。
しかしこいつが周知されて久しく、今となっては怪我をする事がまれだ。
それと、斬り殺すと体内の毒があふれだす。
この毒もまた厄介で、特定の薬でなければ解毒は不可能とされている。
まあ解毒薬も近隣の町で普通に買えるのだが。
つまり私にとってこいつは、飯にもならない、強くもない、気を抜く事も出来ない面倒なだけの魔物。
- 466 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:06:28 ID:Gi/DHZVk0
斧を振り抜き両断して、一歩下がって毒をかわす。
時には斧の先端で突き殺して、振り払い捨てる。
そんな単純で面白味の無い戦闘ばかり。
とっととここを抜けて、美味しいものを食べたい。
そう、ここを抜ければ海辺の町。
年中暖かく、海で泳ぐ事も出来る町。
つまり海の幸がおいしい。
海に潜れば食べ放題。
美味しいご飯が死ぬほど食える。
それにこんな楽しくも心躍りもしない戦闘ともおさらばだ。
ああ血沸き肉躍る戦いがしたい。
あと焼き肉とか食べたい。
爪'ー`)y‐「ツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「うん?」
爪'ー`)y‐「よだれ」
ξ゚⊿゚)ξ「おっとジュル」
- 467 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:07:57 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「何考えてるか分かりやすすぎるよツンちゃん……そんなに海の幸が食べたいの……」
ξ゚⊿゚)ξ「いや今は焼き肉が」
爪'ー`)y‐「そっちかー」
ζ(゚- ゚*ζ(どっち)
爪'ー`)y‐「ま、何にせよ楽しみだねー海だよ海」
ζ(゚- ゚*ζ「うみ」
ξ゚⊿゚)ξ「デレは見た事無い?」
ζ(゚- ゚*ζ「ある、あかいの」
爪'ー`)y‐「それは魔界の海かな?」
ζ(゚- ゚*ζ「ちやう、おひさま」
ξ゚⊿゚)ξ「あー夕日か」
爪'ー`)y‐「綺麗だよねぇ」
ζ(゚- ゚*ζ「こわかった」
ξ゚⊿゚)ξ「あー……」
爪'ー`)y‐「言われてみれば真っ赤な水平線ってちょっと怖いか……」
ξ゚⊿゚)ξ「幼心には怖いかもしれない……」
- 468 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:09:13 ID:Gi/DHZVk0
ζ(゚- ゚*ζ「うみ、ほんとはあお、しってる」
爪'ー`)y‐「お、知ってるのか」
ξ゚⊿゚)ξ「青くて広いわよ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんは何で海が青いか知ってる?」
ξ゚⊿゚)ξ「空を映すから」
爪'ー`)y‐「お、おぉ……じゃあ空が青いのは?」
ξ゚⊿゚)ξ「海を映すから」
爪'ー`)y‐「くっ……妙に詩的な返答を……ッ!」
ζ(゚- ゚*ζ「ひかりあおいから」
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「あおいちばんつよい」
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「だからあお」
爪'ー`)y‐「見ろツンちゃん、これが君より賢い9歳だ」
ξ゚⊿゚)ξ「やかましいわ」
- 469 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:10:45 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「やっぱデレちゃんは言葉知らないだけなんだよなぁ」
ζ(゚- ゚*ζ「がう」
ξ゚⊿゚)ξ「少し語彙が増えてきたわね」
ζ(゚- ゚*ζ「ごい」
ξ゚⊿゚)ξ「言葉のアレ、あの、えーと……」
ζ(゚- ゚*ζ?
ξ゚⊿゚)ξ「いっぱいの言葉……?」
爪'ー`)y‐「待ってツンちゃん、君の語彙が死んでどうするの」
ξ゚⊿゚)ξ「と、とにかくどんどん言葉を覚えれば良いのよ!」
爪'ー`)y‐「まぁ間違ってたら訂正すれば良いしね……」
ξ゚⊿゚)ξ「ほらさっさと歩く! お腹空いた!!」
ζ(゚- ゚*ζ(ごいとは)
- 470 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:13:27 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「そうそう、海楽しみなんだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「さっきも聞いたわね」
爪'ー`)y‐「だって年中温暖な地域なんでしょ? 泳げるらしいじゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、それが売りみたいだし」
爪'ー`)g゙「水着だよツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)g「水着のお姉さんがたくさん居る筈だよ」
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)g「僕らも脱ぎやすいように水着にならないとね!」
_,
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚;*ζ
- 471 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:15:23 ID:Gi/DHZVk0
< マッテマッテ
< ノルマニハチョット
< グシャー ギャー
,,ξ゚⊿゚)ξ「行くわよ」ズルズル
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
ξ゚⊿゚)ξ「……水着か、考えてなかった」
ζ(゚- ゚*ζ「みずぎ……」
ξ゚⊿゚)ξ「デレにも買わなきゃね」
ζ(゚- ゚;*ζ「がう、がぅがぅ、デレいらない、これでいい」
ξ゚⊿゚)ξ「服で海に入ると劣化するから駄目よ、着替えないと」
ζ(゚- ゚;*ζ「がうあぅ、いらない、きない」
ξ゚⊿゚)ξ「別に遠慮しなくて良いわよ、稼ぎもまだたっぷりあるし」
ζ(゚- ゚;*ζ「がぅぅぅ……」
- 472 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:16:31 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ(やっぱり遠慮するのかしら……服とか買い与えるの嫌がるし)
ζ(゚- ゚;*ζ(ひらひら、ぴんく、きるない、ふつういい)
ξ゚⊿゚)ξ(デレは役に立つ事もあるし、気にしなくて良いんだけど)チラッ
ζ(゚- ゚;*ζ(でもはっきりいうない、おねさんしょんぼり、がうがう……)チラッ
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚;*ζ
ξ゚⊿゚)ξ(まだ肩身が狭いと思ってるのかしら)
ζ(゚- ゚;*ζ(おねさんいいひと、しょんぼりだめ、でもひらひらない)
ζ(゚- ゚;*ζ(おにさんないわかってる、わかってやってる、たちわるい)
ζ(゚- ゚;*ζ(おねさんしらずにやってる、ひらひらぴんく、もっとたちわるい)
ζ(゚- ゚;*ζ「きゃぅー……」
ξ゚⊿゚)ξ「鳴くな」
- 473 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:18:29 ID:Gi/DHZVk0
肉塊を引き摺りながら歩いていると、デレの尻尾がぱたぱたと揺れた。
すんすん、何かを嗅ぐ動作をしてから、ぱっとこっちを見る。
困惑したような、期待しているような眼差し。
子供らしいその顔に、少し笑ってしまって。
ξ゚ー゚)ξ「潮の匂いでもする?」
ζ(゚- ゚*ζ「がう! しょっぱい、ふしぎ、におい!」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ出口はすぐね、行きましょ」
ζ(゚ー゚*ζ「あい!」
ξ゚⊿゚)ξ(たまに笑うなこいつ)
ζ(゚- ゚*ζ(おねさんたまにわらう)
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「何よ」
ζ(゚- ゚*ζ"「あう」フルフル
- 474 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:20:06 ID:Gi/DHZVk0
ずるずる、足を掴んで引き摺る肉塊。
重さが増してきたからそろそろ起きるだろう。
それよりも、洞窟の終わりが見えてきた。
光の差し込む出口、もう私でもはっきりと海の匂いを感じられる。
デレと並んで、光の中に踏み込む。
眩しさに目を細めて、全身を包む暖かさを感じて、耳に届くのは波の音。
どさ、と持っていた足を落として、大きく伸びをする。
数日ぶりの日光は、なんと気持ちの良いことか。
ξ-⊿-)ξ「あ゙ぁー……洞窟長かったー」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、おつかれさま」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」
爪'ー`)y‐「じゃあ役所からの宿だね」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、あらかた狩り尽くしたし報告頼むわ」
爪'ー`)y‐「はいはいっと」
ζ(゚- ゚*ζ(おにさんよみがえるはやい)
爪'ー`)y‐「見てツンちゃん、この子もう慣れてる」
ξ゚⊿゚)ξ「だから三日で慣れると言ったのに」
- 475 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:21:55 ID:Gi/DHZVk0
役所で報告、宿を決める、荷物を置く、買い出しをする、必要な事を全て終わらせてからが自由時間。
私は財布を握る狐の腕を引いて、屋台の並ぶ通りに真っ直ぐ向かった。
貝や海老の網焼き、魚のスープに珍しい果物、ジュースやデザートまで並んでいる。
ξ*゚⊿゚)ξ「お……おぉ……」
爪'ー`)y‐「観光客向けかなー、結構充実してるねぇ」
ξ*゚⊿゚)ξ「海老が!!」
爪'ー`)y‐「はいはい順番に回りましょうねー」
ξ*゚⊿゚)ξ「お腹空かせてきて良かった……!!」
爪'ー`)y‐「さっきまで不機嫌だったのに……って言うか痛いから手離して、そろそろ砕ける」
ζ(゚- ゚*ζ「もろい」
爪'ー`)y‐「デレちょっと交代してみて」
ζ(゚- ゚*ζ「ぎゅ」
ξ゚⊿゚)ξ「ん? ……何でデレが手握ってんの、迷子になるから?」
ζ(゚- ゚*ζ「ふつう」
爪'ー`)y‐「くっそー相手を察知したかー……」
- 476 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:23:42 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「ほら金貨渡すから、一気に使わないでよね」
三ξ*゚⊿゚)ξ「まず一つずつ食べる!」
爪'ー`)y‐「元気だなー」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんたべるない?」
爪'ー`)y‐「僕は少量でも平気だから……デレちゃんは何か食べる?」
ζ(゚- ゚*ζ「すんすん……あれ」
爪'ー`)y‐「あー甘いやつね、はいはい」
ζ(゚- ゚*ζ「おいし?」
爪'ー`)y‐「不味いものは並ばないと思うよ、はいどーぞ」
ζ(゚- ゚*ζ「ありあと」
爪'ー`)y‐「少しずつ覚えるねぇ言葉」
- 477 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:25:31 ID:Gi/DHZVk0
ζ(゚〜゚*ζモチャモチャ
爪'ー`)y‐「ココナツタルトかぁ、甘そう」
ζ(´- `*ζ「ねっとり」
爪'ー`)y‐「美味そうに食べるね君も」
ζ(´- `*ζ「あまいー」
爪'ー`)y‐「何か飲む?」
⊂ζ(´- `*ζ「あう、おいし」
爪'ー`)y‐「くれるの?」
ζ(´- `*ζ゙「う、はんぶん」
爪'ー`)y‐「一口で良いよ、はい」
ζ(´〜`*ζ「うまうま……あまあま……」
爪'ー`)y‐(美味しいけどくっそ甘いなこれ……やっぱ子供舌なんだなぁ)
ζ(´- `*ζ「ぷあ、ごちさま」
爪'ー`)y‐「はいはい、喉乾いたし何か飲もうね」
- 480 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:27:36 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「あと水着見ようね」
ζ(゚- ゚*ζ「デレひらひらない」
爪'ー`)y‐「知ってる」
ζ(゚- ゚*ζ「ふつうきる、いい」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんがどう言うかなぁ?」
,_
ζ(゚、゚*ζ
爪'ー`)y‐「そんな顔しなーいのっ☆」
,_
ζ(゚- ゚*ζ(おにさんひどい)
爪'ー`)y‐(ツンちゃんには嫌な顔見せないのになぁ)
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんいじわる」
爪'ー`)y‐「そんな事なーいよー?」
ζ('(゚- ゚∩*ζ「いじわるーがうー」
爪>ー<)y‐「キャーコワーイ」
ξ゚⊿゚)ξ「どつき回すぞお前……」
爪'ー`)y‐「子供とのじゃれあいを見られた……」
- 481 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:29:46 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「どしたの? 食べたいものあった?」
ξ゚⊿゚)ξ「一通り食べ歩いた結果あの屋台が一番好みだった」
爪'ー`)y‐「はいお小遣い」
三ξ゚⊿゚)ξ「ありがとうございます」ダッ
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんごはんすき」
爪'ー`)y‐「好きすぎて引く」
ξ゚⊿゚)ξ「なんだその言いぐさ」
爪'ー`)y‐「早いな!?」
ζ(゚- ゚*ζ「たべた?」
ξ゚⊿゚)ξつ「はいあんた達の分」
爪'ー`)y‐「あ、ありがと」
ζ(゚- ゚*ζ「むし?」
爪'ー`)y‐「海老、でっかいなーツンちゃ もういねえ」
ζ(゚- ゚*ζ「むこういった」
爪'ー`)y‐「屋台が店仕舞いになるな……」
- 482 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:31:21 ID:Gi/DHZVk0
ζ(゚- ゚*ζ「いたあきます」
爪'ー`)y‐「はいはい」
ζ(゚〜゚*ζモッギュモッギュ
爪'ー`)y‐「海老の腹に……香草とかチーズか、手掴みはアレだけど」
ζ(゚ヮ゚*ζ「おいし!」
爪'ー`)y‐「うん、美味しいね」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐?
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんはりあいない」
爪'ー`)y‐「おっと辛辣に刺さったぞ?」
ζ(゚- ゚*ζ「……おにさん、さみし?」
爪'ー`)y‐「は」
ζ(゚- ゚*ζ「ぎゅーする?」
爪'ー`)y‐「しないです」
- 483 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:32:45 ID:Gi/DHZVk0
⊂ζ(゚- ゚*ζ「うー」グイグイ
爪'ー`)y‐「しませんそんな趣味無いです」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐
ζ(゚皿゚#*ζ「がう!!」ガブー
爪;'Д`)y‐「いったぁ!?」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんめんど」
爪;'Д`)y‐「急に噛みついてそれ!?」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんさみし、ない、うそ、めんど」
_,
爪' -`)y‐「…………」
ζ(゚- ゚*ζ「さみしいう、ぎゅーする」
_,
爪' -`)y‐「しません」
,_
ζ(゚、゚*ζ「ぐるる……」
- 484 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:34:18 ID:Gi/DHZVk0
爪' -`)y‐「子供が何言ってるのさ、さっさと他の店行くよ」
ζ(゚- ゚*ζ
爪' -`)y‐「……無いから、寂しいとか無いから」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん」
爪' -`)y‐「…………」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんまえ、つよがる」
_,
爪' -`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「デレまえ、つよがるない」
_,
爪' -`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「デレまえ、はずかしいない、いう」
爪' -`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんきにするない、デレへいき」
- 486 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:35:11 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「……はーぁ、言葉なんか覚えなきゃ良かったのになぁ」
ζ(゚- ゚*ζ「がう?」
爪'ー`)y‐「強がるなとか、君に言われたんじゃねぇ……」
ζ(゚- ゚*ζ「……デレへいき、ぷらいど、わかる」
爪'ー`)y‐「……寂しくない人間なんてさ、居ないよね」
ζ(゚- ゚*ζ「あう」
爪'ー`)y‐「お店のお姉さんとかなら平気なんだけどなぁ、ツンちゃんって何かムカつくからさ
ツンちゃんに煽られると、なーんか無性に腹が立つんだよねぇ……」
ζ(゚- ゚*ζ「がうー」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんは妙に素直な所があるだろ? 僕はその部分では、どうにも素直になれないから」
⊂ζ(゚- ゚*ζ「……」ギュ
爪'ー`)y‐「手しか繋がないよ」
ζ(゚- ゚*ζ゙「あう」
- 487 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:36:11 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「……変な所でプライドが出てくるから、羨ましいんだろうなぁ」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
爪'ー`)y‐「ほらもう良いでしょ? 早く行こうよ、男のこんな愚痴は女々しいだけだよ」
ζ(゚- ゚*ζ゙「ん」
爪'ー`)づ「…………ちょっとすっきりしたよ、ありがと」ワシャワシャ
ζ(- -*ζ「うー」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんには秘密にしてよね? お兄さん恥ずかしいから」
ζ(゚- ゚*ζ゙「がう!」
爪'ー`)y‐「んー……僕も駄目になってんだなぁ……」
ζ(゚- ゚*ζ「う?」
爪'ー`)y‐「人の事言えないなぁって、ね……今日は飲むかぁ」
ζ(゚- ゚*ζ「おとなたいへん」
爪'ー`)y‐「そーだよぉ大変なんだ、大人は勝手に自分を大変な境遇に置いちゃうからねぇ」
ζ(゚- ゚*ζ「むつかし」
爪'ー`)y‐「君もあの子も、そのままで良いんだよ、僕みたいに面倒にならなくて良いんだ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい?」
- 488 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:37:17 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「ほら、服とか見ようね! ツンちゃんと違って君は飾って楽しめるんだから!」
,_
ζ(゚- ゚*ζ「う゛ー」
爪'ー`)y‐「ふふーん、君がひらひらしたの着たらツンちゃんは喜ぶんじゃないかなー?
あの子はそこまで可愛いものが好きって訳じゃないけど人を着飾らせるのは楽しむからねぇ」
,_
ζ(゚- ゚*ζ「がるる……」
爪'ー`)y‐「ほーらツンちゃんが喜ぶんだよー? 嫌がってるって知ったらしょんぼりするだろうなー」
,_
ζ(゚ぺ*ζ「おねさんごしゅじん……しょんぼりない……ううう……」
爪'ー`)y‐(嫌なら着なくて良いと思うけどなぁ、ツンちゃんそんな気にしないし)
,_
ζ(゚、゚*ζ「う゛ー……おねさんうれしい……デレうれしい……」
爪'ー`)y‐(すっかり拾われた事で忠誠心が……犬かな? いや犬の方が警戒するな)
ζ(゚- ゚*ζ「ひらひらない……でもきる……」
爪'ー`)y‐(飼い主にワガママ言えば良いのに……まぁ無理か、元奴隷だしなぁ)
ζ(゚- ゚*ζ「ひかえめでたのむ」
爪'ー`)y‐「流暢だなおい」
- 489 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:38:38 ID:Gi/DHZVk0
がつがつ、もぐもぐ。
我ながら食への執着が強いなと実感する量を食べながら、道を挟んだ向こうに居る二人を見る。
店の中を覗いたり服を選んだり、狐が可愛らしい水着を両手にデレに差し出しては、
嫌そうに顔を歪めながら首を横に振るデレと、けらけら笑う狐。
デレは私に素直に従うが、狐には嫌そうな顔も見せる。
まあ私の事は怖いのかもしれない、首輪や枷を素手で引きちぎったのはまずかったか。
狐が死んでも蘇るため忘れがちだが、私は人の頭を一息に握り潰せる様な力を持つ。
その事で人に恐れられたり気味悪がられていたのに、時おりそれを忘れてしまう。
麻痺してしまったのかもしれない。
もしくは、救われているのかもしれない。
あの軽薄で女々しい男によって、私は報われたのかもしれない。
いやまあ腹は立つしぶん殴るし護衛対象なのに盾にして斬り付けるけど。
それでも孤独を取り払い、私の力を怖がらないあの男には、少し感謝している。
もちろん、未だひ弱く幼い庇護の対象であるデレにもまた、存在を感謝しているのだが。
怒るデレと笑う狐。
私の前では従順に振る舞うデレの捌け口が狐なのだとしたら、それもやっぱり狐に感謝する事だ。
どうやらデレは可愛らしい服は嫌らしい、しきりに嫌そうに狐の持つ服を拒否している。
つまり私の選んだ服も嫌々着ていると言うわけだ。
そうかそうか、知らんな。
嫌だと私にはっきり言えるようになるまで可愛らしい格好をさせてやろう。
- 490 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:39:40 ID:Gi/DHZVk0
ああ、狐が若い女性店員に話し掛けている。
どうやらデレの水着が決まったらしい、その本人は何一つ納得していない顔だが。
また値切っているのか、店員に詰め寄りながら耳元で何かを囁く。
顔を赤くした店員が困ったように頷いて、狐は満足げに笑う。
あの様子だと、夕飯の後に居なくなるのだろうな。
あいつはああやってよく店の人間を捕まえては食い物にして、夕飯を済ませたら夜の町に繰り出す。
まあそうやって情報を得たり金を稼いだり、息抜きも兼ねてやっているのだろう。
別に好きにすれば良いとは思うしどうでも良い。
ただ夕飯は揃って食う事を義務とした。
しかし、ああ言う時の狐は生き生きしている。
女を手玉にとり、食い物にするのが領分なのだろうか。
店員の肩やら腰やらに腕を回して話していて、店員は満更では無さそうで。
狐は見てくれは良いし、他人に対しては口がうまい。
人をその気にさせる事に長けていると言うか何と言うか、まあ悪い気はしないのだろう。
しかし足元で自らの耳を塞ぎながら服を見つめるデレの事も考えろと。
- 491 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:41:23 ID:Gi/DHZVk0
店員の髪に指を絡ませたり、手を握ったり。
あれされても鬱陶しいだけだろうに、なぜ世の女子はあれで頬を染めるのだろう。
そういや幼馴染みが言っていた、女の子にはときめきが必要だと。
お姫様になるのが夢なのだと、恋を捨て鍛練と修行の道を進んだ幼馴染みが言っていた。
本で得た知識を語ったあの子ともずいぶん会っていない、今はどうしているだろう。
あ、何か約束してる。
仕事終わったら迎えに行って酒場コースかなあれ。
せめて風呂入ってから帰ってこいよな。
化粧の匂いが嫌いなんだよなあ、胸がむかむかする。
ああしかし、余裕たっぷりといった狐の澄まし顔。
あの獲物を見る獣みたいな冷たい目は、私と話す時には決して見せない。
つまり私は獲物じゃないって事で。
それでもあいつには、狩りが必要なのだろう。
なら好きに狩ると良い、人に迷惑をかけずに、呪われない程度になら。
好きに狩りをして、好きに楽しみ、好きに貪り、好きなように遊ぶと良い。
その分、私はこうして飽食に明け暮れる事が出来る。
狐にとって必要な娯楽が狩りなら、私にはこれが必要なのだ。
- 492 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:42:19 ID:Gi/DHZVk0
燃費が悪く、飽食に耽り、どんなものでも噛み砕く。
虫も形がそのままだったりしなければ平気だし、お腹が満たされる事で幸せになる。
食べる事は好きだ。
物理的にも精神的にも満たされる。
けれど時々感じる虚無感は何なのだろう。
一人で食べても美味しくないし、食べても食べても満たされない時もある。
目の前に並ぶごちそうを見つめる事で、何かから目をそらし続けているような。
ああ、やめよう、せっかくの海の幸が不味くなる。
そうだ、デレにも娯楽を与えてやらないとな。
何か趣味でも見付けられれば良いのだが。
しかしまだワガママを言えやしないだろう。
少しずつ、溶かす様に馴染んで、ワガママを言えるまで育てば良い。
だからそれまでピンクのひらひらを着せる。
さて、屋台を一つ潰した事だし、そろそろ合流するか。
- 493 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:43:35 ID:Gi/DHZVk0
,,ξ゚⊿゚)ξ「水着、決まったの?」
ζ(゚- ゚*ζ「がう……」
ξ゚⊿゚)ξ「可愛いじゃない、きっと似合うわよ」
ζ(゚- ゚*ζ「ありやと……」
ξ゚⊿゚)ξ(嫌がってるわー)
爪'ー`)y‐「あ、ツンちゃん食べ終わった?」
ξ゚⊿゚)ξ「店一つ潰した」
爪'ー`)y‐「うわぁ店の人泣いてる」
ξ゚⊿゚)ξ「お金は払ったのに不思議よね」
爪'ー`)y‐「そうだね不思議だね、ツンちゃん水着は?」
ξ゚⊿゚)ξ「適当に選ぶわよ」
爪'ー`)y‐(あっこれ色気ゼロの袖付いてるやつ選ぶな)
- 494 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:45:54 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「あんたのは?」
爪'ー`)y‐「ただの海パンだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「アロハとか」
爪'ー`)y‐「着ませんねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「帽子とサングラスとアロハで最高に胡散臭くなると思うんだけど」
爪'ー`)y‐「着ませんねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「面白そうなのに……」
爪'ー`)y‐「面白さを求めてないんだよなぁ……!」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ着替えてきなさいよ、私も選んどくから」
爪'ー`)y‐「そうしますかぁ、デレちゃん行きますよー?」
ζ(゚- ゚*ζ「がぅ……きる……」
ξ゚⊿゚)ξ(嫌そうだわー)
爪'ー`)y‐(嫌々だわー)
- 495 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:47:28 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「さて、どれにするか……」
,,(*゚ー゚)「お決まりですかー?」
ξ゚⊿゚)ξ「あー……すみません、これのサイズなんですけど」
(*゚ー゚)「あっ、申し訳ありません……お客様のサイズだとこちらしか……」
ξ゚⊿゚)ξ「どの辺のサイズですかね」
(*゚ー゚)「あー……えー……っとー…………お客様は細身でいらっしゃいますのでぇー……」
ξ゚⊿゚)ξ
(;*゚ー゚)
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ合うやつで良いです」
(*゚ー゚)「ホッ それではこちらで」
ξ゚⊿゚)ξ「あとさっきの男ろくでなしだって同僚の方に伝えといて下さい」
(*゚ー゚)「アッハイ」
- 496 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:49:01 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「海だー!」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐「海だよデレちゃん! 青くて広いだろ!」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐「そんな嫌そうな顔で立ってないでさぁ、ほら可愛いよ女児水着よく似合ってるよ?」
ζ(゚- ゚*ζ「デレひらひらない……うごくらくすき……」
爪'ー`)y‐「可愛さより動きやすさってツンちゃんみたいな事言うよね……飼い主に似るのかな??」
ζ(゚- ゚*ζ「ぴんくない……」
爪'ー`)y‐「何色が好き?」
ζ(゚- ゚*ζ「おつきさまいろ……」
爪'ー`)y‐「じゃあシンプルで黄色の水着のが良かったの?」
ζ(゚- ゚*ζ「あい……」
- 497 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:49:46 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)づ「そっかそっかー」ポンポン
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ヮ`)y‐「飾って遊びたいからそれは無しだな!!」
ζ(゚皿゚#*ζガブー
爪;'Д`)y‐「ぁあいったい!!」
浜辺のパラソルの下ではしゃぐ二人。
デレは上下に分かれたピンクの水着、花があしらわれて可愛らしい。
狐はシャツと赤い水着を着たまま、珍しく前髪を上げている。
まあ何と目立つ二人か。
見付けやすくて助かるが。
,,ξ゚⊿゚)ξ「なに遊んでんのあんたら」
爪'ー`)y‐「あっツンちゃん聞いてよデレが急n」
ζ(゚- ゚*ζ「あう、おねさんみずぎにやう」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」
- 498 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:50:35 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんとまた」
ξ゚⊿゚)ξ「何なんだよお前は」
爪'ー`)y‐「…………ビキニかぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「何か文句が?」
⊂ζ(゚- ゚*ζ「かわい」グイグイ
ξ゚⊿゚)ξ「脱げる脱げる」
ζ(∩-∩*ζキャー
ξ゚⊿゚)ξ「やめんか」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんが……ビキニかぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「なんだよ……」
- 499 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:50:59 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「この世で最も有り難みの無いビキニかぁ……!!」
ξ゚⊿゚)ξ「死に足りないと見た」
爪'ー`)y‐「だって何!? どんな勇気を振り絞ってビキニ選んだの!? その体型で!?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「ツンちゃん冷静になってよ君A−くらいだよね胸!? ホームランバーだよね!?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「それなのに何でそんな命知らずな格好を選んだの!? 店員さん止めなかったの!?」
ξ゚⊿゚)ξ「命知らずはお前だ」
< アッ マッテマッテ ノルマハモウ
< ブチブチグシャー
< ウギャー
ζ(∩-∩*ζヒエー
- 500 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:51:50 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「埋めておくか」
ζ(゚- ゚*ζ「しょこいんめつ」
ξ゚⊿゚)ξ「しばらくすれば勝手に生えてくるわよ」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんはえる……」
ξ゚⊿゚)ξ「生える生える」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、あおにやう」
ξ゚⊿゚)ξ「そう?」
ζ(゚- ゚*ζ「あおしろにやう、すき」
ξ゚⊿゚)ξづ「ふむ、ありがとう」ワシャワシャ
ζ(>- <*ζヒャー
ξ゚⊿゚)ξ「あんたも似合ってるわよピンク」
ζ(゚- ゚*ζスッ…
ξ゚⊿゚)ξ(真顔に)
- 501 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:52:50 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「デレは泳げるの?」
ζ(゚- ゚*ζ゙「およぐ」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ泳ぎましょうか」
ζ(゚- ゚*ζ「あい!」
ξ゚⊿゚)ξ「ついでにウニとか取りましょう」
ζ(゚- ゚*ζ「たべる?」
ξ゚⊿゚)ξ゙「当然」
ζ(゚- ゚*ζ(よくぼうちゅうじつ)
ξ゚⊿゚)ξ「それにしても、本当に暖かいわね……」
ζ(゚- ゚*ζ「ぽかぽか」
ξ゚⊿゚)ξ「地熱だか何だかだったかしら……温泉もあるらしいわよ」
ζ(゚- ゚*ζ「おんせん?」
ξ゚⊿゚)ξ「大きい風呂」
ζ(゚- ゚*ζ「おふろ」
- 502 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:54:07 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「旅の疲れも癒えるわね」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんおつかれ?」
ξ゚⊿゚)ξ「少しね、でも今は泳ぎましょう」
ζ(゚- ゚*ζ「がうー」パシャパシャ
ξ゚⊿゚)ξ(犬かき)
ζ(゚- ゚*ζ「がう」バシャー
∞',⊂彡
ξ゚⊿゚)ξ「魚を……!?」
ζ(゚- ゚*ζ「たべる?」
ξ゚⊿゚)ξ「生でもいけるのかしら……」ゴクリ
爪'ー`)y‐「焼くなりしようよ」
ξ゚⊿゚)ξ「あら狐、生きてた?」
爪'ー`)y‐「死んでた死んでた、何たって腹を手で破られた」
- 503 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:55:03 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「あっさり死ねたでしょ」
爪'ー`)y‐「完全に埋められたからリスキルされたよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「嬉しいハプニングね」
爪'ー`)y‐「どちらかと言うと砂に埋まるよりも女の子の胸に埋まる方が好きかなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、めりこむ的な」
爪'ー`)y‐「テクスチャバグかな?」
ζ(゚- ゚*ζ(てくすちゃとは)
ξ゚⊿゚)ξ「しかしあんた」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「普段隠れてる片目がアレとかそう言うのは無かったのね……」
爪'ー`)y‐「ああ無いよ、ただの前髪だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「邪魔だろ……切れよ……」
爪'ー`)y‐「やだよ好きにさせてよ……」
- 504 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:55:30 ID:Gi/DHZVk0
ζ(゚- ゚*ζ「デレかみきる?」
ξ゚⊿゚)ξ「デレは良いのよ」
爪'ー`)y‐「贔屓だ」
ξ゚⊿゚)ξ「差別よ」
爪'ー`)y‐「区別ですら」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた顔はいいんでしょ? じゃあ出しとけば良いじゃない」
爪'ー`)y‐「顔が良いから半分隠すんだよ、全部見れた時に達成感あるでしょ」
ξ゚⊿゚)ξ「いや知らんが」
爪'ー`)y‐「ベッドでこうやって前髪上げると喜ばれるんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「へー」
爪'ー`)y‐「死ぬほど興味なさそう」
ξ゚⊿゚)ξ「無い」
爪'ー`)y‐「つらい」
- 505 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:56:24 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「と言うかいつまでパラソルの下に居るのよ」
爪'ー`)y‐「んー? 僕はこうやって眺める方が合ってるから」
ξ゚⊿゚)ξ「泳げよ、つか脱げよ上」
爪'ー`)y‐「えー良いってー体力は夜に温存するのー」
ξ゚⊿゚)ξつ「ほら脱ぎなさいよ」グイグイ
爪'ー`)y‐「やーだーぁやめてーぇヘンターイ」
ξ゚⊿゚)ξ「そういやあんたの服って丈夫ね」
爪'ー`)y‐「特注だよ、僕が身に付けてる間はほころびも自動で直る魔法がかけてある」
ξ゚⊿゚)ξ「凄いなおい」
爪'ー`)y‐「三着目」
ξ゚⊿゚)ξ「残り二着は」
爪'ー`)y‐「死んでる間に剥ぎ取られた……」
ξ゚⊿゚)ξ「あっうん……手元に戻る魔法もかけろよ……」
爪'ー`)y‐「それは値段がヤバい……」
- 506 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:57:46 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「ほら来なさい」
爪'ー`)y‐「やーだぁ☆」
ξ゚⊿゚)ξ「何のための海だよ泳げよ」
爪'ー`)y‐「女の子を眺めたりつまみ食いするための海だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら見なさいよデレだって泳いでるわよ」
ζ(゚- ゚*ζ「うにいた」
ξ゚⊿゚)ξ「デレそれはウニに似た毒を持つアレだから食べられないわ」
ζ(゚- ゚*ζ「こわ」
爪'ー`)y‐「ほら海は危ないことばっかりだよ、入るもんじゃなくて眺めるもんだって」
ξ゚⊿゚)ξ「入りたくない言い訳に使うんじゃない」
爪'ー`)y‐「日焼けするしぃ?」
ξ゚⊿゚)ξ「はい日焼け止め、塗る?」
爪'ー`)y‐「んぇぇぇえーぇ?」
- 507 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:58:38 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ狐」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたまさか泳げないとか」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「別に?」
ξ゚⊿゚)ξ「こっち見ろ」
爪'ー`)y‐「泳げますし?」
ξ゚⊿゚)ξ「顔を背けるな」
爪'ー`)y‐「海とかもう僕のテリトリーですし?」
ξ゚⊿゚)ξ「狐……耳まで赤いよ……」
爪∩Д∩)「人間は泳ぐように出来てないんだよぉ!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「あっ……ごめん……地雷だったのこれ……ごめん……」
- 508 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 21:59:37 ID:Gi/DHZVk0
,,ξ゚⊿゚)ξバシャバシャ
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、おにさんは?」
ξ゚⊿゚)ξ「拗ねた」
ζ(゚- ゚*ζ「ぇぇ……」
ξ゚⊿゚)ξ「まさか泳げないのがコンプレックスだったとは……腕力無いんだし同列にして胸張れば良いのに」
ζ(゚- ゚*ζ「できない、しない、ちやう」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね……あいつは見た目のためだけに体型は整えるけどスポーツは観戦専門タイプよね……」
ζ(゚- ゚*ζ「できないつらい」
ξ゚⊿゚)ξ「泳ぐ事は出来ない事だったかぁ……そっかぁ……出来ないならしょうがないわよね……」
ζ(゚- ゚*ζ(おねさんやさし、ふしぎ)
- 509 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:00:18 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ人には得手不得手があるから……」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「だから気にしなくて良いと思うのよ狐……」
爪∩-∩)
ζ(゚- ゚*ζ(おもたよりちかくいた)
ξ゚⊿゚)ξ「私が悪かったから、よっぽど触れられたくなかったのねそれ」
爪∩-∩)「泳げないとかかっこわるい……」
ξ゚⊿゚)ξ「それは最初からよ」
爪∩-∩)
ζ(゚- ゚;*ζ(ぅゎぁ)
ξ゚⊿゚)ξ「そろそろ機嫌直してよ……悪かったから……」
爪∩-∩)「かっこわるいからむり……」
ξ゚⊿゚)ξ(最初から無理じゃねーか……)
- 510 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:01:29 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξつ※「ほら、ウニあげるから許せ」
爪;'Д(※「やめて!?」
ξ゚⊿゚)ξ「美味しいわよ」
爪;'Д(#)「普通に刺さったけどね!?」
ξ゚⊿゚)ξ「大変顔が腫れたわ……今日の予定のためにも一度殺して治さないと……」
爪;'Д∩「ツンちゃんは僕の命を軽んじすぎじゃない!? 困ったら殺そうとしてない!?」
ξ゚⊿゚)ξ「いいいいや決してそんな」
爪;'Д`)「対応に困ったから殺そうとしたね!? 絶対そうだよね!?」
ξ゚⊿゚)ξ「気のせいよ気のせいほら波打ち際で遊ぶくらいなら平気よ」グイグイ
爪;'Д`)y‐「えぇぇぇえ……まぁ水に顔つけなければ……」
ξ゚⊿゚)ξ「ハッ……まさか、こないだの溺死がトラウマになった……!? ごめん……!!」
爪;'ー`)「ああいや……その前からあったからトラウマ呼び起こした方かな……」
ξ゚⊿゚)ξ「やだごめん……」
爪'ー`)y‐「良いようん……波打ち際で遊ぼうか……」
ζ(゚- ゚*ζ(なかなおりした)
- 511 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:02:30 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「トラウマって何なの? 溺死?」
爪'ー`)y‐「あー子供の頃にちょっとねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「死んだの?」
爪'ー`)y‐「呪いは近年受けたものだから」
ζ(゚- ゚*ζ「のろい?」
爪'ー`)y‐「ああ説明してなかったっけ、こわーい魔女の呪いを受けたんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「すけこましが相手を見ずに手を出したから自業自得でこうなったのよ」
ζ(゚- ゚*ζ「なるほど」
爪'ー`)y‐「納得されちゃったかー」
ξ゚⊿゚)ξ「で、死にかけたの? 川に流されたとか?」
爪'ー`)y‐「んーあー……水瓶に頭を押し込まれた感じ」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「まぁ珍しい事じゃなかったけどね、日常風景の一つで」
ξ゚⊿゚)ξ
- 512 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:03:32 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「だからまぁ水に顔つけるのが今でもなーんか嫌いでねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「いくつの頃の話……?」
爪'ー`)y‐「まだガキだったけどなぁ、たぶん6歳から12歳の間」
ζ(゚- ゚*ζ(ひろい)
ξ゚⊿゚)ξ「何の咎で……」
爪'ー`)y‐「うまく財布を盗めなかったから」
ξ゚⊿゚)ξ(あっ)
ζ(゚- ゚*ζ(あー)
爪'ー`)y‐「あとはうまく客を呼べなかったとかそんな感じ」
ξ゚⊿゚)ξ(あっこれ……貧民街に住んでたタイプか……あぁっ……)
爪'ー`)y‐「あとはー」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん」
爪'ー`)y‐「ん?」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん」
ξ;∩⊿∩)ξ
爪'ー`)y‐「あぁぁー……そうだったーめんどくさかったー……」
- 513 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:04:22 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「んー……まぁ良いや、お城作ろうお城」
ζ(゚- ゚*ζ「すな?」
爪'ー`)y‐「そうそう、こうやって砂を」
ζ(゚- ゚*ζ「おやま」
爪'ー`)y‐「これをこうして」
ζ(゚- ゚*ζ「ぉぉ」
爪'ー`)y‐「これがホテル・ラブクラウンです」
ξ゚⊿゚)ξ「なに作ってんだお前」
爪'ー`)y‐「お城(隠語)」
ζ(゚- ゚*ζ「おしろ……?」
ξ゚⊿゚)ξ「ホテルつってんじゃねえかお前おい」
爪'ー`)y‐「じゃあ休憩所」
ξ゚⊿゚)ξ「城どこいった」
爪'ー`)y‐「皆の心の中に」
- 514 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:05:28 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「磯遊びなら怖くないでしょ、あっちに良さそうな磯がある」
爪'ー`)y‐「それは小魚や貝を食べたいって意味?」
ξ゚⊿゚)ξ「人の気遣いを……」
爪'ー`)y‐「気遣い要らないです」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ小魚と貝を食べたい」
爪'ー`)y‐「じゃあ行きます」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「おいでデレ」
爪'ー`)y‐「大食漢のわがままに付き合おうデレ」
ζ(゚- ゚*ζ゙「あい」
ζ(゚- ゚*ζ,,
ζ(゚- ゚*ζ(なかよし)
- 515 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:06:24 ID:Gi/DHZVk0
ζ(゚- ゚*ζ(おねさん、おにさん、なかよし)
ζ(゚- ゚*ζ(おねさんのて、ぽかぽかぐいぐい)
ζ(゚- ゚*ζ(おにさんいやがる、ない)
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚ー゚*ζニマー
ζ(゚ー゚*ζ(なかよしすき)
ζ(゚ー゚*ζ(デレひとすこしこわい)
ζ(゚ー゚*ζ(でもふたりすき)
ζ(゚ー゚*ζ(なかよしふたりすき)
ζ(゚ー゚*ζ(ぱぱままにてる)
ζ(゚ー゚*ζニマニマ
ξ゚⊿゚)ξ(何かデレが笑ってる……)
爪'ー`)y‐(デレがたまに嬉しそうにするのは一体……)
- 516 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:07:32 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「ねぇツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「あん?」
爪'ー`)y‐「手を掴まれると痛いです……」
ξ゚⊿゚)ξ「本当にひ弱なお前……デレは平気そうなのに」
ζ(゚- ゚*ζ「がうがう」
ξ゚⊿゚)ξ(戻ってる)
爪'ー`)y‐(戻ってる)
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、て、こう」グイグイ
ξ゚⊿゚)ξ「持ち方が違うの?」
ζ(゚- ゚*ζ「てくびちやう、こう」キュッ
ξ゚⊿゚)ξつ⊂爪'ー`)
バァア-----z_____ン!!
ξ;゚⊿゚)ξ「気色が悪い!!」
⊂彡 ヒュバッ
爪;'Д`)「人と手を繋いでその反応!?」
- 517 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:09:09 ID:Gi/DHZVk0
ξ;゚⊿゚)ξ「だって何か気色悪く無いかこれ!?」
爪;'Д`)「あぁん何か否定できないのがもどかしくて嫌だな!?」
ζ(゚- ゚*ζ(なんかちがた)
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱ手首で良いわ……」
爪'ー`)y‐「出来ればもう少し羽毛タッチくらいのソフトさで」
ξ゚⊿゚)ξ「羽をむしる時の強さで?」
爪'ー`)y‐「それ首切った後で吊るされない?」
ξ゚⊿゚)ξ「先に吊るすわよ」
爪'ー`)y‐「手順が違ったかーどうでも良いわー」
ξ゚⊿゚)ξ「でもこないだの鳥美味しかったでしょ」
爪'ー`)y‐「あれを倒す際に生まれた尊い犠牲忘れてない???」
ξ゚⊿゚)ξ「尊くない犠牲なら覚えてる」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん万物生命に対する差別は良くないよ……」
ζ(゚- ゚*ζ(いつもどおり)
- 518 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:10:44 ID:Gi/DHZVk0
何だかんだと海辺での水遊びを満喫して、太陽が空を赤く染めながら水平線に沈んで行く頃。
しこたま磯や浜辺で海の幸マラソンをした私たちは、程好い疲労感に包まれていた。
塩水と潮風で冷えた体を暖める温泉はすぐ側にあり、水着のまま入れる混浴。
狐はどこかつまらなそうにしていたが、デレは年相応にはしゃいでいて。
全身を暖かなお湯に浸し、日々の疲れも今日の疲労感も溶け出して行く。
そういやこの水着どうしよう、もう他にこんなの着る場所無いぞ。
季節はもう冬に近い秋、こう言った特殊な場所でしか水着になる機会は無い。
邪魔だから捨てて行くか。
ああいや、でもまあ。
折角楽しかったんだ、記念に持っておくか。
デレが貝殻を集めていたように、狐が連絡先を集めていたように、私も何か記念品を持っても良いだろう。
温泉から出て、夕飯も海の幸を堪能して、部屋に戻る頃にはデレは眠ってしまっていた。
さすがに遊びすぎたのか、疲れて眠るデレをベッドに寝かせる。
どうせ狐はこれから出掛けるだろうし、私も寝るか。
デレを抱えて眠ればよく眠れるし。
- 519 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:12:00 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「はー満腹」ガチャ
ξ゚⊿゚)ξ「んぇ?」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「店の女と遊ぶのでは?」
爪'ー`)y‐「あーキャンセルした、昼に遊びすぎて夜遊びする体力ないでーす」
ξ゚⊿゚)ξ「健全でよろしいかと」
爪'ー`)y‐「もー僕くたくたーぁ、本当は水遊びする予定なかったんだもーん」
ξ゚⊿゚)ξ「あーはいはい悪かった悪かった」
爪'ー`)y‐「デレ寝た?」
ξ゚⊿゚)ξ「お守り握って寝てる」
爪'ー`)y‐「お守りって首から下げてるそれだよね、巾着」
ξ゚⊿゚)ξ「金貨入ってんのよ、自分の価値だと思ってるのかしらね」
爪'ー`)y‐「ふーん……まぁ大事に持っておかせよう、いざって時に金は役に立つから」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね」
- 520 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:12:49 ID:Gi/DHZVk0
爪'ー`)y‐「こないださぁ、ツンちゃんの昔話聞いたじゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「言ったわね」
爪'ー`)y‐「僕さぁ、生まれも育ちも貧民街なんだよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「語り出した」
爪'ー`)y‐「子供って消耗品の一つでさぁ、どんどん使い潰すものでね」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「言う事をきかなかったり仕事が出来ないと、鞭が飛んできたりするわけよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……そう」
爪'ー`)y‐「僕は水瓶に顔突っ込まれて何回か死にかけたけど、何人か本当に死んだりしてね
路地の隅に死体を投げ込んでさ、臭い消しに聖水まいたりするんだよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「次は僕が死ぬってずっと思ってた、だから水に顔をつけるのが今でも嫌いなんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そう」
爪'ー`)y‐「うん」
- 521 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:13:42 ID:Gi/DHZVk0
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「痛み分けで良い?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん……」
爪'ー`)y‐「話させただけだと、アレだなって思ってね」
ξ゚⊿゚)ξ「……このために、キャンセルしたわけ?」
爪'ー`)y‐「あはは、まっさかぁ?」
ξ゚⊿゚)ξ(あー、珍しく嘘が顔に出てら)
爪'ー`)y‐「他にもお互い昔話する?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、良い……それより」
爪'ー`)y‐「うん?」
ξ゚⊿゚)ξ「久々に子守唄、歌いなさいよ」
爪'ー`)y‐「はいはい、仰せのままに王様」
ξ゚⊿゚)ξ「誰が王様よ」
- 522 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:14:38 ID:Gi/DHZVk0
ぽろろん。
ああ空は赤く。
ああ海は青く。
夢見た人魚の歌声。
夢見た遥かなる世界。
優しげな指先。
温かな手のひら。
その微笑みを見ていたくて。
そのぬくもりを得たくて。
空を歌う。
海を歌う。
遥かな夢を歌う。
ただ小さな温もりのために。
(ああ、やさしい歌)
(寂しそうな横顔)
(こっちを見た、笑ってる)
- 523 名無しさん[sage] 2016/12/18(日) 22:16:50 ID:Gi/DHZVk0
銅貨を一枚投げて寄越して、私はそっと目蓋を下ろした。
ベッドの中、デレのやわらかな髪に頬擦りをしながら子守唄に心を許す。
吟遊詩人の歌声は、曇りもなく澄み渡っている。
久々に気分がすっきり晴れているらしい、何かあったのかな。
やっぱ女遊びしない方が良いのかなこいつ。
途切れた歌声と、コップに酒を注ぐ音。
喉が鳴る音と、微かにくすくす笑う声。
息を吸って、ゆっくり深く吐く溜め息。
「困ったなぁ、僕まですっかり弱っちゃった
あんな話、誰にもした事なかったのに」
全然困ってない声で呟く。
ゆったり煙草を吸う息、吐き出す息。
酒を飲む喉の音、テーブルにコップを置く音。
近付く足音、軋むベッド、髪に絡む指。
何が楽しいのか、狐はくすくすと無邪気そうに笑いながら、私たちの髪を撫でていた。
おわり。