672 ◆tYDPzDQgtA 2017/01/15(日) 21:05:33 ID:1Z.MUREc0


 例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。

 騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。

 周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
 聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声、獣じみた幼い咆哮。

 刃を振るい、歌声を響かせ、魔力を用い、路銀を稼いで進むのは三人。


 一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
 もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
 そんな二人の後ろをついて歩く、小さな魔族の子供。



 【道のようです】
 【第十一話 たあいもないおはなしを。】



 彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。

673 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:07:20 ID:1Z.MUREc0

 ざく、ざく。
 雪を踏み締めて歩く足。

 はあ、はあ。
 息は白く、指先や鼻が赤くなる。


 季節は未だ秋だと思っていたら、突然降り始めた豪雪。
 その雪は見る間に積もり、一面の銀世界を作り出した。

 傍らを歩くのは桃色のてるてる坊主。
 雪にも雨にも強い外套が役に立ったのは喜ばしいが、問題は買ってきた本人だ。


 袖無し、短パン、ヘソ出し。

 軽装も軽装と言った服装で雪を掻き分ける相棒の姿は、人間を越えた何かだった。


爪'ー`)y‐「ツーンちゃーん……」

:ξ゚⊿゚)ξ:「何よ」

爪'ー`)y‐「見てる方が寒いよぉ……」

:ξ゚⊿゚)ξ:「見られてる方も寒いわよバカじゃないの」

674 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:08:24 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「何でインナー袖無ししか無いのさぁ……」

:ξ゚⊿゚)ξ:「それはあんたが私の荷物を捨てたからよ」

爪'ー`)y‐「いやだって汚れた布にしか見えなかったしたまに減ってたから捨てるのだとばかり」

:ξ゚⊿゚)ξ:

爪'ー`)y‐「ごめんってばー僕の外套一枚貸すからー」

:ξ゚⊿゚)ξ:「いらん」


 そう、血に汚れた服を洗濯に出す予定だと知らなかった僕は、彼女の服を八割端切れとして捨てた。

 割りと真面目に謝ったしお金は出すと言ったが、気付いたのはもう村から離れた後。
 買い戻す事も買い足す事も出来ず、おまけにうっかり彼女の外套は食事の際に燃えた。

 なのでせめて外套か上着を貸すと言ったのだが、このようになしのつぶて。
 分かりやすく怒っていらっしゃるので、僕は素直に大人しくしておきます。
 銀世界に死体として放り出されたら自然にリスキルされちゃう。

 こう言う時は、休憩の食事の際に彼女の好きな物を与えるに限る。

 ちょうど今は上等な竜の肉がある、半分は保存食にしたがもう半分は冷やしてそのまま。
 そう簡単には腐らないらしいので、安心して持ち運べる。 重いけど。

675 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:09:10 ID:1Z.MUREc0

 しかしまぁ、よくあんな夏場の服装で雪の中を進める。
 ブーツの中ももうぐしょぐしょだろうに、早く暖めないと凍傷になるんじゃないかな。

 僕と違って布の少ない服なんだから、ちゃんとしないと。


 それにしても、眩しいな雪景色は。
 真っ白だからよく日の光を反射させる。
 そして雪に反射した光が、きらきらとツンちゃんの腰辺りを照らす。

 ベルトからぶら下がっているのは、先日調香師から買った魔防のお守り。
 小さな薄蒼の石が嵌め込まれた銀の輪は、今は手首ではなく腰から下げられている。

 ガントレットの中につけていたのだが、出来れば外に出して自然の魔力に触れさせた方が良いらしい。
 新たな飾りのつけられたそれは、数少ないツンちゃんの装飾品。


 作った人物が調香師と言う事もあり、不思議なもので、あの輪からは匂いがする。
 主張しすぎない空気に溶けるような、甘くも苦くもない匂い。

 どことなく冷たくも感じる、華やかとは違う、緊張感のある匂いだ。

 デレはあの匂いを「おねさんぴったり」と言ったが、僕としてはツンちゃんはもっと乳臭いと思うんだよなぁ。
 小さい子供みたいな、甘いような懐かしいような、少し寂しくなる匂い。

 ま、本人に言ったら殺されるだろうけど。

676 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:09:51 ID:1Z.MUREc0

ζ(゚- ゚*ζ「がう、おにさん」

爪'ー`)y‐「んー?」

ζ(゚- ゚*ζ「こやある」

爪'ー`)y‐「お? おぉー、さすが目が良いねぇ」

ζ(゚- ゚*ζ三「おねさん! おねさん!」

:ξ゚⊿゚)ξ:

ζ(゚- ゚*ζ「こやある! やすむ!」

:ξ゚⊿゚)ξ:゙ コク

爪'ー`)y‐「もう限界じゃんツンちゃん……」


 遠目に見える小さな小屋は、木こり小屋か休憩所か。
 どちらにせよ、この雪の中だ、壁と屋根があるだけ有り難い。

 しかしまだ雪の降る時期では無い筈なのに、何でまたこんな事に。
 この辺りはそう言う場所なのかな、聞いた事は無いけれど。


 震えるツンちゃんの側に移動した桃色のてるてる坊主を眺めながら、白い息を吐く。
 冷たい空気は喉に悪いんだよなあ、と襟巻きをぐいと上げた。

677 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:10:25 ID:1Z.MUREc0


 ばさばさ、帽子や外套についた雪を払って小屋に入ると、冷たい空気が遮断されるだけで暖かさを感じた。

 暖炉と簡素な調理場、蜘蛛の巣に、雨水の溜まった桶。
 手入れが行き届いているわけではなさそうだが、乾いた薪だけはちゃんとある。


爪'ー`)y‐「デレちゃん暖炉に魔法の練習してー」

ζ(゚- ゚*ζ「がう!」


 僕よりも遥かに多い魔力を持つデレに、少しずつ魔法の練習をさせるようにしている。
 調節が下手で火力が出すぎたり、まず出し方が分からなかったりとまだまだだが。

 それでもさすが魔族、魔法の上達は早い。
 まあ昼に外套を燃やす原因を作ったのはデレなのだけど。


 ぼっ、と言う音と共に小屋の中が明るくなり、ちりちりぱちぱち薪が燃える。
 青い顔のツンちゃんを暖炉の前に設置したら、僕は食事の準備をしよう。


爪'ー`)y‐「デレちゃん良くできましたー」

ζ(゚- ゚*ζ「う!」

爪'ー`)y‐「ツンちゃん暖めといてねー」

ζ(゚- ゚*ζ,,「あい!」

678 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:10:47 ID:1Z.MUREc0

 調理場に火を少し移動させてから、鋳鉄のフライパンに油を馴染ませて火にかける。

 小さな鍋には綺麗な雪を入れて同じように火にかけて、肉を切ってハーブと塩を刷り込んで。

 小さな根菜ももう使わないとなーって事で切ってスープにしまーす。
 寒いし温まるものが欲しいよね、ツンちゃんお酒飲むと瞬時に寝るしデレはまだ子供だし。

 スープは塩味、肉も塩味、確か保存用のぱさぱさするパンがあるから少し焼いて。


 何で料理ばっか上達してるのかなー僕。


 日は傾いてもうじき夕暮れ、この雪じゃまともに進めない。

 今日は早めにここで泊まる事にしよう。


爪'ー`)y‐「おーい出来たぞー」

ζ(゚- ゚*ζ「あい、おねさん」

ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」

679 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:11:28 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「ツンちゃん溶けた? 大丈夫?」

ξ゚⊿゚)ξ「さすがに寒かったわ……」

爪'ー`)y‐「そりゃそうだよねぇ……」

ζ(゚- ゚*ζ「おねさんあい、おいし」

ξ゚⊿゚)ξ「おお……肉……美味しいお肉……」

爪'ー`)y‐「はいパン、スープにつけて食べようねー」

ζ(゚- ゚*ζ「おねさんさむいある? これきる?」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたもそれ脱いだら袖無しでしょうが……」

爪'ー`)y‐「ツンちゃん、デレはインナーがあるから……」

ξ゚⊿゚)ξ「ああクソ……袖無しとか言うバカの服装は私だけか……」

ζ(゚- ゚*ζ「ぬ、ぬぐ? なかぬぐ?」

ξ゚⊿゚)ξ「着てろ」

ζ(゚- ゚*ζ「あい……」

680 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:13:58 ID:1Z.MUREc0

 スープを一口すすると、喉から胃までがぽかぽか暖かくなる。

 簡素で質素なものだけど、この寒さには塩味のスープは大変なご馳走だ。
 小さく切った根菜も、水分が多いから簡単に柔らかくなった。

 そのままではパサパサのカチカチで食えたものじゃないパンだって、スープに浸せば十分食べられる。
 パンが吸ったスープがじゅわ、と染み出る感じが結構好きだったりする。

 メインの肉も当然美味い、と言うかこれ不味くしたらバチが当たるな。

 外はカリカリによく焼けて、中はややレアで柔らかすぎず固すぎず、噛めば噛むほど肉汁が出る。
 脂はあるがしつこくないし、存在感があるのに重くない、味付けは塩コショウだけで十分だ。

 色んな人にこの肉が好まれるわけだ、単純にとても美味しい。


爪'ー`)y‐「はーぁ、ごちそうさまでしたーん」

ξ*´⊿`)ξ「ぁ゚ー」

ζ(´- `*ζ「ぁ゚ー」

爪'ー`)y‐(この顔したらもう怒ってないな)

681 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:14:23 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「美味しかった?」

ξ゚⊿゚)ξ「うむ」

ζ(゚- ゚*ζ「がう」

爪'ー`)y‐「急に戻らんでも」

ξ゚⊿゚)ξ「また食べたいやつ」

ζ(゚- ゚*ζ「おにくまだある?」

爪'ー`)y‐「明日にでも食べようねー」

ξ゚⊿゚)ξ「よっしゃ」

爪'ー`)y‐「それ早い夕飯だから、夜に小腹が空いたらこっちを食べようね」

ξ゚⊿゚)ξ「分かった」

ζ(゚- ゚*ζ「おにくおひる?」

爪'ー`)y‐「うーん朝からだと勿体ないからねぇ、明日の昼か夜だね」

ξ゚⊿゚)ξ「干し肉で堪えるか……」

ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、おなかすく、がまんする、ごはんおいし」

ξ゚⊿゚)ξハッ

爪'ー`)y‐(何て簡単な子達なんだろう……)

682 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:15:25 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「はいツンちゃん、僕の上着のスペア」

ξ゚⊿゚)ξ「ああ、ありがと」

爪'ー`)y‐(今度は素直に着るって事はやっぱり意地で着なかったんだな……)

ζ(゚- ゚*ζ「おねさんあかい」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、赤くてでかいわ」

爪'ー`)y‐「僕の上着だからねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「あんた何でこんな目立つ色なの?」

爪'ー`)y‐「何でデレちゃんを目立つ色にしたの?」

ξ゚⊿゚)ξ「趣味」

爪'ー`)y‐「そう言う事です」

ξ゚⊿゚)ξ゙「よく分かった」

   ,_
ζ(゚- ゚*ζ

683 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:15:53 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「ま、朝まで雪の様子を見てみようか」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、まぁどっちにしろ朝には発つんだけど」

爪'ー`)y‐「デレに地面に火を放ってもらったら」

ξ゚⊿゚)ξ「火事になりそう」

爪'ー`)y‐「同時に水を使うと?」

ξ゚⊿゚)ξ「だいばくはつ」

爪'ー`)y‐「まあ雪がもっと深くなったら考えよう、今は暇だから自由行動しよっか」

ξ゚⊿゚)ξ「斧の手入れするか」

爪'ー`)y‐「描写してないけど毎日使ってるもんねそれ」

ξ゚⊿゚)ξ「描写とか言うな」

ζ(゚- ゚*ζ「ごほんよむ」

ξ゚⊿゚)ξ「絵本気に入った?」

ζ(゚- ゚*ζ「あい」

爪'ー`)y‐「絵本くらいなら一人で読めるようになったよねぇ」

684 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:16:32 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「さて、僕は楽器の手入れをしますかね……寒さで固くなるんだよなー」

ξ゚⊿゚)ξ「音が変わるの?」

爪'ー`)y‐「変わるねぇ、いつもより固い音になるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ふーん……」

爪'ー`)y‐「素材によって音が変わるし、楽器は人に合わせて作るのも良いんだよねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「武器と一緒ね」

爪'ー`)y‐「あはは、そうだねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「私は自分用にしつらえたのは鎧だけだけど、金属も気温や気候に左右されるわ」

爪'ー`)y‐「斧はしなりが悪くなったり?」

ξ゚⊿゚)ξ「んー……これは重くなるわね」

爪'ー`)y‐「あー」

ξ゚⊿゚)ξ「切れ味も鈍る、冷たくて血と脂が固まるから」

685 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:16:53 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「寒冷地は特殊な刃物があるんだっけ」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、魔法をかけてあったり熱を保つ油を塗ったり」

ζ(゚- ゚*ζ「あついいし、あついてつある」

ξ゚⊿゚)ξ「よく知ってるわね」

爪'ー`)y‐「どゆ事?」

ξ゚⊿゚)ξ「元から熱を発する石や金属が存在するのよ、それを加工して刃物にする」

爪'ー`)y‐「へぇ……切りながら肉とか焼ける?」

ξ゚⊿゚)ξハッ

ζ(゚- ゚*ζ「むり」

ξ゚⊿゚)ξ「無慈悲……」

爪'ー`)y‐「夢を子供に壊された……」

ζ(゚- ゚*ζ「ごめんない」

爪'ー`)y‐「意味が変わるよぉ……」

686 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:17:38 ID:1Z.MUREc0

ζ(゚- ゚*ζ「つめたいいしある」

ξ゚⊿゚)ξ「ああ、あるわね」

爪'ー`)y‐「冷たい剣とか作れるの?」

ζ(゚- ゚*ζ「あい」

ξ゚⊿゚)ξづ「よく知ってるわねデレ」ワシワシ

ζ(- -*ζ「うー」

爪'ー`)y‐「デレちゃんの知識って結構片寄ってるよなぁ……」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね……頭良いわよねこの子……」

爪'ー`)y‐「よし、楽器の手入れおしまい」

ξ゚⊿゚)ξ「早かったわね」

爪'ー`)y‐「寒い時は触りすぎると割れちゃうんだよねー」

ξ゚⊿゚)ξ「あー」

爪'ー`)y‐「ツンちゃんも頑張って、はいお湯」

ξ゚⊿゚)ξ「有り難し」

687 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:18:02 ID:1Z.MUREc0

 専用の油を湯煎して斧に塗るその手元を眺めながら、僕は新しい煙草はどうかな、と容器を開けて中を嗅ぐ。

 ふわ、とまだ馴染みきっていない華やかで明るい匂いが広がった。
 甘くて優しい匂い、柑橘系でのオーダーをした筈だが、柑橘の匂いは感じられない。

 その代わり、胸が痛むような懐かしさを感じた。


爪'ー`)

爪'ー`)y‐~ シュボッ

爪'ー`)y‐ スパー

爪'ー`)y‐


 カモミールと、ローズマリーと、林檎と、色々混ざった甘い匂い。
 色んな匂いの混ざったそれは、驚くほどに僕に馴染む。


 当然だ、これはおばあちゃんの匂いだ。

 僕を育ててくれたあの人の、日だまりと編み物と料理が好きなあの人の匂いだ。

 優しく甘く漂う煙は、僕を包むように、癒すように、懐かしい小さな手のひらみたいで。

 あの調香師は何なんだよ、オーダー通りじゃないどころか僕の一番好きな匂いをどうやって当てた。
 今はもう無いあの人の家と同じ匂いだなんて、おかしいだろこんなの。

688 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:19:36 ID:1Z.MUREc0

 間違いようがないこの匂い、僕の生活のひとつでもあった匂いを


ξ゚⊿゚)ξ(? 今までと違う匂い……新しいやつか)

爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ(狐が固まっている)

爪'ー`)y‐?

ξ゚⊿゚)ξ(気に入らなかったのかしら煙草……)


 いや、何か混ざってるなこれ。

 花の様な匂いと不思議な甘さ、まろやか系の風味がある。

 あの調香師は魔法を使うから、本来なら不可能な匂いも使えるかも知れない。

 そうなるとこの匂いはいったい。


爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ「……狐そんなに気に入らなかったのそれ」

爪'ー`)y‐「え?」

689 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:19:58 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ「いや……何か死んだ目で煙草吸ってるから……」

爪'ー`)y‐「ああいや、何か……何の匂いか分からなくて」

ξ゚⊿゚)ξ「ふーん……? まぁでも、良い匂いねそれ」

ζ(゚- ゚*ζ「デレにおいすき」

爪'ー`)y‐「…………」

ξ゚⊿゚)ξ「甘いような……ハーブ系のような……?」

ζ(゚- ゚*ζ「はちみつ」

ξ゚⊿゚)ξ「はちみつくまさん?」

ζ('(゚- ゚∩ζ「がおー」

ξ゚⊿゚)ξ「素手で殺さなきゃ……」

,,ζ(゚- ゚*ζ「キャイン……」

爪'ー`)y‐「何でツンちゃんはそんなにデレのがおーに厳しいの……」

ξ゚⊿゚)ξ「威嚇されたなら狩らないと」

爪'ー`)y‐「威嚇じゃないよお戯れだよ……」

690 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:20:22 ID:1Z.MUREc0

ζ(゚- ゚*ζ「がう……かられる……」

爪'ー`)y‐「ほら僕の後ろに隠れるくらい怖がって」

ξ゚⊿゚)ξ「その壁はあまり役に立たないわよデレ」

爪'ー`)y‐「あんまりだぁ」


 僕の後ろに隠れたデレの頭をわしわし撫でてやれば、手にはふわふわやわらかな感触。

 デレはいつも花を身に付けているからか、花の匂いがする。

 そう言えばさっき蜂蜜と言っていたな、なるほど確かに蜂蜜の匂いがする。
 この混ざる花の匂いは蜂蜜由来か、デレの髪に似た匂いだなぁ。


爪'ー`)y‐

爪'ー`)y‐ スンスン

ζ(゚- ゚*ζ?

爪'ー`)y‐


 あ、これデレの匂いが混ざってるんだ。

691 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:20:55 ID:1Z.MUREc0

 つまり他の混ざった匂いは。


爪'ー`)y‐スンスン

ξ゚⊿゚)ξ「何だ急に」

爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ?


 ツンちゃんだこれ。


爪'ー`)y‐「引くわー……」

ξ゚⊿゚)ξ「えっ何……急に喧嘩売られたの……?」

爪'ー`)y‐「いやツンちゃんだけどツンちゃんじゃなくて……あぁー……引くわー……」

ξ゚⊿゚)ξ「何こいつ……感じ悪っ……」

692 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:21:34 ID:1Z.MUREc0

 確かに女の子の匂いとは言ったけど何でこのチョイスにしたよ調香師。
 割りと無いと思うんですけどこの組み合わせ。

 と言うか何?
 僕に日常的におばあちゃんとツンちゃんとデレの匂いの煙草を吸えと?

 無ーいわー。
 マジ無いわー。
 ドン引きだわー。


爪'ー`)y‐

爪'ー`)y‐ スパー


 でも喉には確かに良さそうだし。

 味も甘めの苦さがあって良い具合だし。

 巻いてある紙の質感や色も好みだし。

 何より勿体無いから吸いますけど。

 吸いますけど何か悔しいし恥ずかしいから二人の匂いとは誰にも言わないでおこう。

693 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:22:09 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ「狐が変だわ……」

ζ(゚- ゚*ζ「おにさんはずかしいかお」

ξ゚⊿゚)ξ「まるで狐の顔が恥ずかしいみたいね」

爪'ー`)y‐「やめなさい失敬な」

ξ゚⊿゚)ξ「でもその匂い好きよ」

ζ(゚- ゚*ζ「あい」

爪'ー`)y‐「嬉しいやら恥ずかしいやら」

ξ゚⊿゚)ξ「恥ずかしい?」

爪'ー`)y‐「あー……僕の育ての親みたいな人の匂いだよ」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「どうやって調香師はその匂いを……」

爪'ー`)y‐「分からん……」

ξ゚⊿゚)ξ「こっわ……」

694 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:22:41 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ「まぁでも良いんじゃない? 離れた実家の匂い」

爪'ー`)y‐「もう死んじゃったし家も無いしね」

ξ゚⊿゚)ξ「んじゃもっと良いじゃない」

爪'ー`)y‐「…………確かに」

ξ゚⊿゚)ξ「懐かしい匂いって良いと思うわよ、大事にしたら?」

爪'ー`)y‐「…………」

ζ(゚- ゚*ζ「おにさんふふくかお」

ξ゚⊿゚)ξ「めんどくさいな……」

爪'ー`)y‐「んーだってさぁ……懐かしい匂いを常日頃吸うってアレじゃない……?」

ξ゚⊿゚)ξ「別に?」

爪'ー`)y‐「えぇーぇー?」

ζ(゚- ゚*ζ「おにさん、はずかしい、かっこわるいおもってる」

爪'ー`)y‐「うぐ」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたのかっこいいの定義が分からん」

695 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:23:10 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「……何かさ、ずっとあの頃の平穏にしがみついてるみたいじゃない?」

ξ゚⊿゚)ξ「しがみつけば良いじゃない」

爪'ー`)y‐「え」

ξ゚⊿゚)ξ「しがみついて夢見て良いじゃない、何がおかしいのよ」

爪'ー`)y‐

ξ゚⊿゚)ξ「それを捨てる必要あるの? 大事なんでしょ、バカみたいな事で悩まないでよ」

爪'ー`)y‐


 あー。

 しがみついても良いんだぁ……。


爪'ー`)y‐(ずっと、思い出として、触れちゃいけないと思ってた)

爪'ー`)y‐(あぁー)

爪'ー`)y‐(もっと手元に置いても良かったんだぁ……)

696 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:24:19 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ「こいつバカよねデレ」

ζ(゚- ゚*ζ゙「がう」

ξ゚⊿゚)ξ「懐かしむ匂いがあるって良い事なのにね」

ζ(゚- ゚*ζ゙「がうがう」

ξ゚⊿゚)ξ「デレの思い出の匂いはある?」

ζ(゚- ゚*ζ「きのみやいたぱん」

ξ゚⊿゚)ξ「今度詳しく聞かせて、一緒に作りましょ」

ζ(゚- ゚*ζ「あい!」

ξ゚⊿゚)ξ「私は白粉の匂いかしら……鉄の匂い……?」

ζ(゚- ゚*ζ「おしろい?」

ξ゚⊿゚)ξ「嫌いな匂いよ、お母さんがいつもつけていたの」

ζ(゚- ゚*ζ「がう……」

ξ゚⊿゚)ξ「……良い思い出もある筈だけど、まだ嫌な方しか出てこないわね」

ζ(゚- ゚*ζ「よしよしする?」

ξ゚⊿゚)ξ「すんなすんな」

697 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:24:48 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「はぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「何よ」

爪'ー`)y‐「ツンちゃん好き」

ζ(゚- ゚*ζ!?

ξ゚⊿゚)ξ「キモいし前にもやったそれ」

爪'ー`)y‐「ツンちゃんのバカストイックなとこ好き……」

ξ゚⊿゚)ξ「バカにしてるのか好意を口にするのかどっちかにした上で多分そのストイックは誤用」

爪'ー`)y‐「もっとバカになーれ……」

ξ゚⊿゚)ξ「やめろ頭から中身が無くなる」

ζ(゚- ゚*ζ(いちゃいちゃ……ちがう……なんかちがう……!!)

爪'ー`)y‐「デレも好きだよ……」

ζ(゚- ゚*ζ「デレもおにさんすき」

爪'ー`)y‐「聞いた今の」

ξ゚⊿゚)ξ「恥ずかしい」

爪'ー`)y‐「うん恥ずかしい」

ζ(゚- ゚*ζ(なぜ)

698 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:25:11 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「ツンちゃんはさぁ、良い思い出そんなに無いの?」

ξ゚⊿゚)ξ「んー……悪い思い出の方が強いわね」

爪'ー`)y‐「例えば?」

ζ(゚- ゚;*ζ

ξ゚⊿゚)ξ「綺麗で、自分が好きな人だったわ、田舎なのにいつでも着飾ってた」

爪'ー`)y‐「ふむ」

ξ゚⊿゚)ξ「私は顔は似たんだけど、それ以外は似なくて……それにこの握力でしょ」

爪'ー`)y‐「小さい頃からだったんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ「生まれつきね、悪魔の子として始末こそされなかったけどいつでも扱いは悪かった」

ζ(゚- ゚;*ζ ソワソワ

ξ゚⊿゚)ξ「クソガキから気味が悪いとか化け物とか、言われる内はまだ良かったんだけど、一回キレてね」

爪'ー`)y‐「あー……それはアレだねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「……何でキレたんだっけな……確か…………あー、化け物の母親って言われてたからか」

699 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:25:35 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ「キレて……牛を殺したんだっけな……」

爪'ー`)y‐「牛は殺せたんだね……」

ξ゚⊿゚)ξ「まぁそこからは石を投げられる事も無くなり」

爪'ー`)y‐「そりゃ怖くて無理だわ」

ξ゚⊿゚)ξ「お母さんは余計につらく当たるようになり」

爪'ー`)y‐「複雑だなぁ家庭環境……」

ξ゚⊿゚)ξ「で、森に捨てられたの」

爪'ー`)y‐「やっぱつらかった?」

ξ゚⊿゚)ξ「予想はしてたわね」

ζ(゚- ゚;*ζ オロオロ

爪'ー`)y‐「んで熊を」

ξ゚⊿゚)ξ「その前に数日さ迷ったわ」

爪'ー`)y‐「そして熊を」

ξ゚⊿゚)ξ゙「熊を」

700 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:26:17 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「ツンちゃん無理に喋ってない?」

ξ゚⊿゚)ξ「今はそんなに」

ζ(゚- ゚;*ζホッ

ξ゚⊿゚)ξ「まあ、向き合わなきゃいけない問題だしね」

爪'ー`)y‐「そう? 時間に解決して貰っても良いんじゃない?」

ξ゚⊿゚)ξ「駄目よ、だって私は強くなりたいんだもの」

爪'ー`)y‐「それはイコールで強さになるのかなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「……自分も守れない人間に、他人を守れるわけないでしょ」

爪'ー`)y‐「…………あー……」

ξ゚⊿゚)ξ「私はまだ、捨てられた時の子供のままだもの」


 長い睫毛が綺麗な緑の瞳を覆う。
 俯きがちに呟く彼女の横顔は、まるで何かを戒める様に痛々しく見えた。

 少しだけ見えた彼女の中を、更に覗くべきか、退くべきか。

701 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:27:13 ID:1Z.MUREc0

 また怒られるかも知れない、ツンちゃんにではなくデレに。
 あの子は意外に紳士的で、ちくちくとデリカシーが無いと叱ってくる。

 でも大人には、踏み込まなきゃいけない時もあるんだよなぁ。


爪'ー`)y‐(だからさーデレちゃん)チラッ

ζ(゚- ゚*ζ(がう?)

爪'ー<)y‐(今は怒んないでね)バチーン
   ,_
ζ(゚- ゚*ζ(むり)


 あ、もう怒ってるわ。
 ご主人大好きだな君。


 でも、一歩踏み込ませてね。

 興味本意と言うよりも、あの子の中身を見たいから。
 彼女を知るには、踏み込まないといけないから。

 そうしたら、色々分かち合えそうじゃない。

702 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:27:54 ID:1Z.MUREc0

 彼女は生き急ぐ。

 確かに人によっては15歳くらいで一人立ちするが、18歳なんて実質まだ子供だ。

 傷付いた子供が、傷も癒えぬままに大人になろうとしている。

 無理をしているようにも、背伸びしているようにも見えないが、負担は大きい筈だ。

 まだまだ共に旅をする。
 途中で壊れられても困る。

 それに何だかんだで僕はこの子達を気に入ってしまったから、少し位は何かをしてあげたいんだ。
 大人として、パートナーとして。


 あーあ。
 悪い大人のつもりだったのに。

 悔しいかな、いつの間にかこんなにほだされちゃって。

 ま、良いか。


 大切な物なんてもう作らないつもりだったけど。
 少しくらいは良いよね?

703 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:28:21 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「……ツンちゃん」

ξ゚⊿゚)ξ「んー」

爪'ー`)y‐「君が一番守りたかったものって、何だい?」

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

爪'ー`)y‐「…………」

ξ゚⊿゚)ξ「お母さん……かな」


 しばしの間を置いてから、ぽつりと吐き出した言葉。

 悪い思い出ばかりが浮かぶと言った彼女は、その対象を守りたかったと言う。


ξ゚⊿゚)ξ「怒られたし、ぶたれたし、捨てられたし……嫌な記憶が多いのに
     ……不思議ね、一番守りたかったのは、あの人なのかもしれない……」

爪'ー`)y‐「……今は前に出てこないけど、良い思い出もあるんでしょ?」

ξ゚⊿゚)ξ「そう……そうね……料理は下手だけど、踊るのが上手くて……おめかしさせて貰ったり……」

爪'ー`)y‐「可愛かったんだろうねぇ」

704 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:28:42 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ「よく分からないけど……私を着飾らせた時は、あの人は笑ってたわ」

爪'ー`)y‐「今でも着飾れば良いのに」

ξ゚⊿゚)ξ「……今は、戦士だから無理ね」

爪'ー`)y‐「オフの時くらい良いんじゃない? お祭りの時とか可愛かったよ?」

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

爪'ー`)y‐(デレ、膝へ)

ζ(゚- ゚*ζ,,(あい)

爪'ー`)y‐「今は戦士だから動きやすさ重視なのは分かるけどさぁ
     たまには息抜きとして、女の子らしい格好とか出来るような余裕があっても良いんじゃない?」

ξ゚⊿゚)ξ「余裕……か」モフモフ

ζ(゚- ゚*ζ「あう」グリグリ

ξ゚⊿゚)ξ「……余裕なんて、無かったわね」

爪'ー`)y‐「無いだろうねぇ……君はいつも必死な目をしてるもの」

705 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:29:13 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ「生きるのに必死で、強くなるのに必死で……
     戦士として、冒険者として、一人前になるために必死で……余裕なんて、無いわね」

爪'ー`)y‐「確かに僕は君に守って貰う立場だし、雇用主だけどさぁ……一応、パートナーだからね」

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

爪'ー`)y‐「君に僕と言う負担を背負わせているんだから、僕にも君を背負わせてくれても良いんだよ」

ξ゚ー゚)ξ「…………ふ、バカみたい……ずっと悪ぶってた癖に」

爪'ー`)y‐「今でも悪い大人ではあるけどさぁ、……良いじゃん、たまには」

ξ゚ー゚)ξ「……そうね、たまには良いかもしれないわね……あんたに色々任せても……」
   ,_
ζ(゚ぺ*ζ

爪'ー`)y‐「あ、不服そうなのが居る」
   ,_
ζ(゚ぺ*ζ「デレいらない」

ξ゚ー゚)ξ「要るわよバカ」

706 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:29:49 ID:1Z.MUREc0
    ,_
ζ(゚- ゚*ζ「がるる……」

爪'ー`)y‐「ほら拗ねない拗ねない、君も大事な仲間だよー」
   ,_
ζ(゚皿゚*ζ「がうっ!」ガブー

爪;'Д`)y‐「ぁあいったい!!」

ξ^ー^)ξ「ふっ……ふふふ……本当、バカみたい」


 くすくすと笑うその姿は、歴戦の戦士ではなく、18歳の少女のもので。
 僕は初めて、こうしてちゃんと彼女の笑顔を見た気がする。

 いつも眉間に皺を寄せて、不機嫌そうな顔をしているから。
 きっと地顔になってしまっているのだろうけど、こうして年相応の表情を見るとほっとする。


 それにしても、仲間、かぁ。

 僕も焼きが回ったかなぁ。
 今までは利用するかされるかだけの人生だったのに、この子は本当に変わってる。

 騙された癖に真面目だし、真っ直ぐな癖に平気な顔で殺すし。
 甘ったるいお人好しな癖に、直向きでストイックで、犠牲を払う事を甘んじる。

 それなのに、絶対に曲げられない芯があって。

707 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:30:17 ID:1Z.MUREc0

 馬鹿で、馬鹿正直で、馬鹿真面目。

 猪突猛進な馬鹿だからこそ、今まで関わってきたどんな冒険者とも違う。


 僕が胸を張ってパートナーと言えるのは、きっとこのお馬鹿さんだけだなぁ。

 この蜂蜜を溶かしたミルクみたいな、小さなお嬢ちゃんだけが、きっと僕の相棒だ。


 ま、今後どうなるかわかんないけど。


爪'ー`)y‐「僕さぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「んー?」
 づ(゚ぺ*ζ

爪'ー`)y‐「やっぱ君の事好きだなーって」

ξ゚⊿゚)ξ「私はそうでも無いわよ?」

爪'ー`)y‐「無慈悲」

708 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:30:39 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ「大体何よさっきから、気味の悪い」

爪'ー`)y‐「観察して気持ちを整理して思ったことだからとても純粋な気持ち」

ξ゚⊿゚)ξ「えっ……純粋であればあるほど気持ち悪い……」

爪'ー`)y‐「無慈悲が過ぎない? 慈悲を持たない?」

ξ゚⊿゚)ξ「いや別に……」

爪'ー`)y‐「デレ癒して……」

ζ(゚- ゚*ζ「ない」

爪'ー`)y‐「あっデレに拒否られたつらい無理ツンちゃん助けて」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ適当に土下座」

爪'ー`)y‐「待って凄く雑に土下座求めるのやめて」

ζ(゚- ゚*ζ「どげざ」

爪'ー`)y‐「ツンちゃんのせいで変な言葉覚えた!!!」

ξ゚⊿゚)ξ「最初から知ってたかも知れないから」

ζ(゚- ゚*ζ「どげざ」

爪'ー`)y‐「嘘だよこんな感じじゃなかったよ前は! 違ったよ!!」

709 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:31:55 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ「しかしアレね」

爪'ー`)y‐「ん?」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたからストレートな好意を向けられると本当に気味が悪いわ」

爪'ー`)y‐「ねぇひどくない? 僕の気持ちを裏切ったなって言おうか?」

ξ゚⊿゚)ξ「いつ何をどう裏切ったのか……だからって私が素直に受け入れても気持ち悪いわよ」

爪'ー`)y‐「例えば?」

ξ*゚⊿゚)ξ「あ、ありがと……別に私はあんたの事なんて好きじゃないけど……好意は受け取ってあげるわ」

爪'ー`)y‐「あっ怖っ、無理それ」

ξ゚⊿゚)ξ「だろ」

爪'ー`)y‐「こっわ……なにそれ……こっわ……熱無いか心配になる……」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたが素直になってもそんな感じよ」

爪'ー`)y‐「だいぶ無理だわ」

ξ゚⊿゚)ξ「だいぶ無理よ」

710 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:32:35 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ「大体そう言うアレじゃないし」

爪'ー`)y‐「あー違う違う全然違うツンちゃんにおっぱい生えてたらあったかも知れないけど無いし」

ξ゚⊿゚)ξ「何で流れ作業で喧嘩売ってくのあんた」

爪'ー`)y‐「だってツンちゃん僕を異性と認識してる?」

ξ゚⊿゚)ξ「ムカつくオルゴールだと思ってる」

爪'ー`)y‐「その言いぐさちょっと好き」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたは私をどう思ってんのよ」

爪'ー`)y‐「喋るゴリラ」

ξ゚⊿゚)ξ「ストレートすぎてちょっと好きだわその言いぐさ……」

爪'ー`)y‐「デレはどうかな?」

ζ(゚- ゚*ζ「がう? おねさん?」

爪'ー`)y‐「そうそうツンちゃん」

ζ(゚- ゚*ζ「ごしゅじん」

ξ゚⊿゚)ξ「違うつってんだろ」

711 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:33:02 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「僕は?」

ζ(゚- ゚*ζ「ひも」

爪'ー`)y‐「ンンッwwwwwwwww」

ξ゚⊿゚)ξ「悲しいけど財布の管理はヒモがしてるのよ」

爪'ー`)y‐「僕も働いてるのに」

ξ゚⊿゚)ξ「いつ?」

爪'ー`)y‐「酒場で遊んでるだけだと思ってない? お金も稼ぐし情報も仕入れるからね?」

ζ(゚- ゚*ζ「はつみみ」

爪'ー`)y‐「デレは酒場に来ないからねぇ……ちゃんと僕も楽器で声で仕事してるんだよ……」

ζ(゚- ゚*ζ「ほへぇ……おしごとみる」

爪'ー`)y‐「んーでもご主人が酒場に連れていってくれないでしょ?」

ξ゚⊿゚)ξ「違うつってんだろ」

爪'ー`)y‐「デレはまだ小さいからねー、酒場はちょっと早いってご主人うるさいから」

ζ(゚- ゚*ζ「ごしゅじん……」

ξ゚⊿゚)ξづ「泣いて謝れるギリギリのラインまで頭を握ろうか?」

爪'ー`)y‐「わぁやさしい死なない」

712 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:34:13 ID:1Z.MUREc0

ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、ぎゅーする」

ξ゚⊿゚)ξ「はいはい」

ξ゚⊿゚)ξ
 つ(>- <*ζ「ぎゅー」
   と  ヽ,,

ξ゚⊿゚)ξ「あざとい生物が居るんだけど」

爪'ー`)y‐「うちのあざとい代表だから」

ξ゚⊿゚)ξ「あざとい代表はあざとくて困る……」

爪'ー`)y‐「わかるよ……」

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

爪'ー`)y‐「ほらデレないがしろにしたわけじゃないから許して」

ζ(゚- ゚*ζ「ない」

爪'ー`)y‐「あーん許してよーこっちおいでおいでー」

ζ(゚- ゚*ζ「ない」

爪'ー`)y‐「デレが冷たいよーつらいよーお兄さん悲しいよー」

713 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:34:51 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ「別に無視してたわけじゃないから許してあげなさい」

ζ(゚- ゚*ζ「あい」

爪'ー`)y‐「ほんとツンちゃんにだけ従順!!」

ξ゚⊿゚)ξ「デレも大事な仲間だから、安心なさい」

ζ(゚- ゚*ζ「あい」

ξ゚⊿゚)ξ「もう少し大きくなったら、きっとあんたにも色々任せるから」

ζ(゚- ゚*ζ「おおきいなる」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、大きく育ちなさい」

爪'ー`)y‐「大きくなったらどうなるんだろうね」

ζ(゚- ゚*ζ「パパみたいなる」

ξ゚⊿゚)ξ「パパみたいに」

ζ(゚- ゚*ζ「あう」

ξ゚⊿゚)ξ「…………パパの骨すっごく大きかったような……」

爪'ー`)y‐「ねぇママの方にしない?」
    ,_
ζ(゚ぺ*ζ「しない」

爪'ー`)y‐「ねぇ反抗期かなこれ」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたが怒らせるから……」

714 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:35:41 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「でもママの方が良くない?」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね……そっちの方が可愛いと思うけど……」
    ,_
ζ(゚ぺ*ζ

ξ゚⊿゚)ξ「本人が嫌そうだからパパでも良いのでは?」

爪'ー`)y‐「えぇぇー……」

ξ゚⊿゚)ξづ「……デレは柔らかくて暖かいわね」

ζ(゚- ゚*ζ「がうー」

ξ゚⊿゚)ξ「はぁ……癒される……」

爪'ー`)y‐「ツンちゃん交代してよー」

ζ(゚- ゚*ζ「ない」

爪'ー`)y‐「じゃあ混ぜてよー」

ζ(゚- ゚*ζ「ない」

爪'ー`)y‐「ツンちゃんデレが反抗期……」

ξ゚⊿゚)ξ「知らんがな……」

715 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:36:14 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ(あー)

ξ゚⊿゚)ξ(あったかい)

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「狐」

爪'ー`)y‐「はい?」

ξ゚⊿゚)ξ「何か歌え」

爪'ー`)y‐「酔っ払いよりひどい注文やめて」

ξ゚⊿゚)ξб ⌒◎「ほらよ」コイーン

爪'ー`)y‐「ツンちゃんひどいよ! そんな雑な投げ銭ないよ!」

ξ゚⊿゚)ξ「歌えよ」

爪'ー`)y‐「歌うけど……もうちょっと労ってよ……」

ξ゚⊿゚)ξ「早く」

爪'3`)y‐「ツンちゃんのワガママ暴れん坊プリンセスー」

ξ゚⊿゚)ξ「誰が三石琴乃だ」

716 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:36:52 ID:1Z.MUREc0


 ぽろろん。



 遠き日を謳おう。
 遠き日を想おう。

 決して消えぬ輝き。
 決して消えぬ淀みを。

 過去の道を辿って。
 過去の傷を擦って。

 確かなる道筋。
 確かなる願いを。

 揺らぐ事は許さず。
 嘆く事も能わず。

 金の波を揺らして。
 真翠は目映く。

717 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:37:39 ID:1Z.MUREc0

ξ゚⊿゚)ξ(ああ、私の歌)

ξ-⊿-)ξ゙(私の)

ξ-⊿-)ξ(こいつ、自分で思ってるより私の事が好きなんだな)


 (それは私もだけれど)



爪'ー`)y‐「……寝ちゃった?」

ζ(゚- ゚*ζ「がう」

爪'ー`)y‐「聴いたら寝るのが条件反射になってんな……」

ζ(゚- ゚*ζ「ぐるる」

爪'ー`)y‐「まだ怒ってる?」

ζ(゚- ゚*ζ「おこるない」

爪'ー`)y‐「なら良かった、こっちおいで」

ζ(゚- ゚*ζ,,「うー」

718 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:38:32 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)っc□「はい、お湯」

ζ(゚- ゚*ζ「あたたか」

爪'ー`)y‐「お茶とコーヒーどっちが良いかな」

ζ(゚- ゚*ζ「みうく」

爪'ー`)y‐「ミルクは無いなー、お酒ならあるけど」

ζ(゚- ゚*ζ

爪'ー`)y‐

ζ(゚- ゚*ζ「のむ」

爪'ー`)y‐「バレたら殺されそうだけど別に蘇るから良いか」

ζ(゚- ゚*ζ「おにさんいのちそまつ」

爪'ー`)y‐「死なないとこうなるんだよねぇ、はいちょっとだけ、お砂糖足したから」

ζ(゚- ゚*ζ゙ ゴクゴクプハー

爪'ー`)y‐

ζ(゚- ゚*ζ「おかわり」

719 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:39:02 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「よし飲め」

ζ(゚- ゚*ζ゙ ゴクゴクゴク

爪'ー`)y‐「熱くない?」

ζ(゚- ゚*ζ「いける」

爪'ー`)y‐「デレお酒に強いな?」

ζ(゚- ゚*ζ「あまいおいしい」

爪'ー`)y‐「甘いならいけるか……いや子供にあんまり飲ませるのもな……」

ζ(゚- ゚*ζ「おにさん、デレまぞく、にんげんちやう」

爪'ー`)y‐「そっかー人間じゃなくて魔族だから子供でもお酒飲んで大丈夫かー」

ζ(゚- ゚*ζ(んなわけない)

爪'ー`)y‐(ですよね)

ζ(゚- ゚*ζ「おいしいすき」

爪'ー`)y‐「酒豪になるぞこれ」

720 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:39:31 ID:1Z.MUREc0

ζ(゚- ゚*ζ「デレおうち、おさけある」

爪'ー`)y‐「飲む系のお宅だった?」

ζ(゚- ゚*ζ「だった」

爪'ー`)y‐「一緒に味見してた?」

ζ(゚- ゚*ζ「してた」

爪'ー`)y‐「よーし飲めー」

ζ(゚- ゚*ζ「おいしおいし」

爪'ー`)y‐「外では駄目だよ?」

ζ(゚- ゚*ζ「うい」

爪'ー`)y‐「子供に飲ませる背徳感vs呑み仲間の出来る喜び……!」

ζ(゚- ゚*ζ「だめなおとな」

爪'ー`)y‐「知ってるー☆」

721 名無しさん[sage] 2017/01/15(日) 21:40:29 ID:1Z.MUREc0

爪'ー`)y‐「ま、量は控えめにね」

ζ(゚- ゚*ζ「あい」

爪'ー`)y‐「今度甘いお酒を仕入れるか……」

ζ(゚- ゚*ζ「がうがう」

爪'ー`)y‐「どうせ暇だしツンちゃん起きないだろうしお酒空けちゃうかー」

ζ(゚- ゚*ζ「キャーン」

爪'ー`)y‐「悪い事してるなー僕! 楽しいなー悪い事!」

ζ(゚- ゚*ζ「わるいおとな」

爪'ー`)y‐「もっと言ってー!」

ζ(゚- ゚*ζ「だめにんげん」

爪'ー`)y‐「それは傷付く……」

ζ(゚- ゚*ζ(デレおさけのめる、おにさんさみしいない、いいこといっぱい)

ζ(゚ー゚*ζ〜♪



 翌朝、酔い潰れて寝ていた僕らは起きたツンちゃんに死ぬほど怒られました。


おわり。

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