- 113 ◆tYDPzDQgtA 2017/02/26(日) 21:00:05 ID:u8k8Zb0w0
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声、獣じみた幼い咆哮。
刃を振るい、歌声を響かせ、魔力を用い、路銀を稼いで進むのは三人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
そんな二人の後ろをついて歩く、小さな魔族の子供。
【道のようです】
【最終話 いっしょに居たいって事。 中編】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
- 114 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:00:30 ID:u8k8Zb0w0
突如湧き出た魔力と血の臭いに、魔導師は濁った眼差しで階下を目指す。
足音もなく階段を降り、扉もない出入り口から外を眺めた。
そこに居たのは、人間が二人と魔族が一人。
倒れたまま動かない人間は男女で、涙を溢しながら魔導師を見上げる魔族は小さな子供。
珍しいその様子に、魔導師は僅かに片眉を上げた。
('A`)「────珍しいお客さんだな」
ζ(;- ;*ζ「がっ、う……みせり、に、おくられ、た」
('A`)「お嬢ちゃんが? ……取り敢えず中に、ひどい傷だ」
ζ(;- ;*ζ「あっい……あい……」
('A`)「クー、クーは居るかい」
川 ゚ -゚)「こちらに、ご主人様」
('A`)「そちらの青年を中へ、ソファにでも寝かせておいて」
- 115 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:00:53 ID:u8k8Zb0w0
川 ゚ -゚)「この僕に力仕事を……と、怪我人ですか」
('A`)「ああ、俺はこっちのお嬢ちゃんの手当てをするから」
川 ゚ -゚)「はいはい……お客様もどうぞ、中へ」
ζ(;- ;*ζ「あい……」
川 ゚ -゚)「ご主人様、そちらのお嬢さんの傷は深いんですか」
('A`)「ああ、危ないやつだな」
川 ゚ -゚)「…………大丈夫ですよ、ご主人様バケモノですからきっと治せます」
('A`)「今は甘んじようその暴言」
ζ(;- ;*ζ「ぅ……おねさ……」
魔導師は己のローブを少女に被せて運び、従者は青年の足を掴んで引き摺り、ソファまで移動させる。
幼い魔族は、未だにひくひくとしゃくりあげながら青年の服の裾を握っていた。
従者は人間離れした美しい顔を歪める事もせず、何か考え込んでから台所に足を運ぶ。
そして何かを持って、ソファの足元に縮こまっている魔族の元に戻ってきた。
- 116 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:01:23 ID:u8k8Zb0w0
川 ゚ -゚)「お客様、お茶をどうぞ」
ζ(;- ;*ζ「ぁ……ありあと、ござ、ます……」
川 ゚ -゚)「お名前は?」
ζ(;- ;*ζ「……デレ」
川 ゚ -゚)「デレ様、こちらの方はデレ様の大切な方ですか」
ζ(;- ;*ζ「あい……」
川 ゚ -゚)「……あちらの方もですね」
ζ(;- ;*ζ「…………あぃ」
川 ゚ -゚)「大丈夫です、ご主人様は無駄に凄い魔導師ですから、怪我なんてあっと言う間に」
('A`)「クー、綺麗なシーツを持ってきてくれ」
川 ゚ -゚)「毛布着てるのにシーツまで要るんですか」
('A`)「包帯代わりだよ、ほら走る」
(゚- ゚ 川三=-「はいはい今はちゃんとしますよ全くもう」
- 117 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:01:54 ID:u8k8Zb0w0
ζ(;- ;*ζ「…………」
ζ(;- ;*ζ゙ ズズ
ζ( - ;*ζ" ゲッホ
ζ(;- ;*ζ「……まず……」
('A`)「クーお前またお茶入れたね」
-=三川 ゚ -゚)「ファインプレーですよ褒めてくださいよはいシーツと救急箱」
('A`)「はいどうもお仕置きは後でな」
川 ゚ -゚)「そちらの方はどんな怪我なんですか」
('A`)「あっこら見るんじゃない」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)" ウプ
('A`)「……お前は血とか怪我になれてないんだから、あっち行ってなさい」
川 ゚ -゚)「そうします……、……大丈夫ですよねその方」
('A`)「善処はするけど……俺が救急箱使う時点でちょっとな」
- 118 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:02:21 ID:u8k8Zb0w0
('A`)「……そっちの彼もこのお嬢ちゃんも、珍しい物を貰ってるな」
川 ゚ -゚)「珍しい物……?」
('A`)「んー…………クー、倉庫から俺の杖を」
川 ゚ -゚)「え」
('A`)「魔方陣が必要、フリーハンドじゃ無理だ」
川 ゚ -゚)「ご主人様が杖持つの、見た事ないですよ僕……」
('A`)「若い頃は持ってたよ、ほら走った走った」
(゚- ゚ 川三=-「はいはいもう」
-=三川 ゚ -゚)つ†「これですかね」
('A`)「早いのは置いといて、これは……まぁこれで良いか、魔方陣が描ければ良いんだ」
川 ゚ -゚)「僕はデレ様のお側に戻りますから、何か必要なら呼んでください」
('A`)「ああ、頼むよ」
- 119 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:02:44 ID:u8k8Zb0w0
,,川 ゚ -゚)「デレ様、お茶のおかわりはいかがですか」
ζ(゚- ゚*ζ「ない……」
川 ゚ -゚)「必要ですかお待ちください」
ζ(゚- ゚;*ζ"「ない、いらない」
川 ゚ -゚)「それは残念、……僕はクー、クール・フロワと申します」
ζ(゚- ゚*ζ「……きれいなおにさん」
川 ゚ -゚)「ありがとうございます、美貌のメイドです」
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚- ゚*ζ?
川 ゚ -゚)「メイドです」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん……?」
川 ゚ -゚)「メイドです」
ζ(゚- ゚*ζ??
川 ゚ -゚)(滑ったみたいになってる)
- 120 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:03:11 ID:u8k8Zb0w0
川 ゚ -゚)「僕の美しさはさておき、あちらで手当てをしているのが僕のご主人様、ドクオ・ソリテール」
ζ(゚- ゚*ζ「まどうしさん……」
川 ゚ -゚)「そうです、気持ち悪い人です、顔とか」
('A`)「クー今は切羽詰まってるからやめてくれ」
川 ゚ -゚)「ご主人様には言ってませんから黙って処置してください」
ζ(゚- ゚*ζ「……デレ、すたるとぅ、……まぞく」
川 ゚ -゚)「ありがとうございます、デレ様はどうしてこちらに?」
ζ(゚- ゚*ζ「……おにさんとおねさん、けがした」
川 ゚ -゚)「はい」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさ、こえでない、おね、さ……ちが、いっぱい」
川 ゚ -゚)「はい」
ζ(;- ゚*ζ「デレ、ふたりもって、はしる……みせり、けがなおせない……」
- 121 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:03:37 ID:u8k8Zb0w0
ζ(;- ;*ζ「みせ、ここ、おくっ、て、くれ……けが、なおす……ぅ、ぅぅー……」
川 ゚ -゚)「大丈夫ですよ、ご主人様なら大丈夫です、だから心配しないで下さい」
ζ(;- ;*ζ「あぃ……ひぐ、ぅ、ぅぅぅぅっ……」
川 ゚ -゚)(どうしよう泣く子の相手なんてした事ない)
ζ(;- ;*ζ「デレ、っなにも、できなっ……ひっ、ぅ……おろおろした、だけぇ……」
川 ゚ -゚)「デレ様はお小さいんですから、そんなに背負わないで下さい、大丈夫ですから」
ζ(;- ;*ζ「だって、デレ……うごく、はやい……たすけられたぁ……っ」
川 ゚ -゚)「後からならどうとでも言えます、もう過ぎた事を悔いても無駄ですよ」
ζ(;- ;*ζ「っ」
川 ゚ -゚)「ですので、お二人のために何が出来るかを考えましょう」
ζ(;- ;*ζ「ぅ、う……あい……」
川 ゚ -゚)(これが正解なのか分からねえ……)
- 122 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:04:51 ID:u8k8Zb0w0
('A`)(あーまずいな)
('A`)(傷が全く閉じん)
どんな高度な治癒魔法を用いても、目の前の台に横たわる少女の傷が塞がる様子は無い。
それも当然ではある、傷から滲み出る黒く嫌なもやの存在が、傷の治療を妨げているのだから。
珍しい物を貰ってきたものだ。
これは呪いだろう、それも魔女の呪いと言う厄介な物。
本来なら見知らぬ人間の手当てなんてある程度で済ませるが、あのお嬢ちゃんが送ってきたのだ。
緑の髪の少女は今ごろ、後悔やら無力感に苛まれているのだろう。
なら師の一人として、弟子の尻は拭いてやらねば。
少女の横たわる台を中心に、床に魔方陣を描く。
傷を閉じられない分、長持ちさせるために生命力を注ぎ続かねばならない。
詠唱や簡易化した魔法では長続きはさせにくい、魔方陣を描いて設置型の魔法にした方が確実だ。
- 123 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:07:08 ID:u8k8Zb0w0
強制的に生命力を注ぎ続けて、体液となる材料を近くに設置しておけば嫌でも生き続けはする。
血が止めどなく流れても、出た端から入れていくからどうにかなる。
究極のデトックスとでも言うべきか、いや馬鹿を言う状況ではないか。
とにかく、永遠にこのままってわけにもいかない。
たとえどんなに手を尽くしても、この状態ではいつかは終わりが来てしまう。
傷を無理矢理に物理的に閉じる。
縫合しようにもこの呪いはそれも拒否するようになるだろう、包帯で外から強制的に閉じるしかない。
とにかく少しでも血が止まれば良いが、それにしても傷がひどい。
金属の胸当ては外して置いてあるが、見事に縦に引き裂かれている。
顔から下腹まで真っ直ぐに裂かれていて、腹からは中身が溢れかけていた。
今はどうにか押し込んであるが、この右目は。
('A`)(……右目はもう無理だろうな)
('A`)(手足が落ちても戻すことは不可能じゃないが、呪いに蝕まれたこの右目はもう治せない)
('A`)(あーあー、綺麗な顔なのにな)
英雄と呼ばれようと、万能では無いんだよなあ。
- 124 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:07:46 ID:u8k8Zb0w0
ζ(゚-⊂*ζ「ぅ……」
川 ゚ -゚)「ん」
爪' -`)"
川 ゚ -゚)「おはようございます、お加減はいかがですか」
爪' -`)「────」
川 ゚ -゚)「? あー、声が出ないってこう言う」
ζ(゚- ゚*ζ「……おにさ、けがだいじ……?」
爪' -`)゙ コク
ζ(゚- ゚*ζ「ぅ……おねさ……」
('A`)「クー、タオルはあるかい」
川 ゚ -゚)「ご主人様が首に巻いてます」
('A`)「そうだったこれタオルだった……じゃあ毛布とタオルを洗濯しておいて」
川 ゚ -゚)「ぅゎ……わかりました、洗ってきます」
('A`)「水でね」
川 ゚ -゚)「はいはい、デレ様、手伝っていただけますか?」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
- 125 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:08:18 ID:u8k8Zb0w0
('A`)「あー……ええと、緑のお嬢ちゃんに送られてきたんだよな」
爪' -`)゙ コク
('A`)「俺はドクオ・ソリテール、塔に引きこもるしがない魔導師だ」
爪' -`)
爪;'Д`)「────! ─────!?」
('A`)「英雄? うんまぁそう言われてるけど、それはどうでも良いから」
爪;' -`)「───」
('A`)「因みに初代主人公で現在41歳だ、まぁそんな感じで今でも魔導師やってるけどよろしく」
爪;'Д`)「─────!!!」
('A`)「それはさておき、あの金髪のお嬢ちゃんの事だ」
爪' -`)゙ ピク
('A`)「あのお嬢ちゃん、呪いに犯されてるよ」
爪' -`)
('A`)「でもそれはあんたもだろうお兄さん、面倒な物を貰ってる……しかも重ね掛けかな」
爪' -`)「────」
- 126 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:09:36 ID:u8k8Zb0w0
('A`)「……魔女の呪いだろう、それは」
爪' -`)゙ コク
('A`)「何があってそうなったかは知らないけど、魔女の呪いは極めて特殊だ
俺だって魔女の呪いは使えないし直接解く事は出来ない、魔女ってのはそれだけ特殊なんだよ」
爪' -`)「…………」
('A`)「魔女って言うのは、近親婚を繰り返し続けて血をどんどん濃くした魔導師系の元人間だ
今となってはもはや人間とは呼べない、魔女と言う種族にまでなってしまった存在だ」
爪' -`)゙
('A`)「そんな彼らは自らの血として受け継いだ魔女独自の魔法を使う、それは専用の物
もちろん魔導師の使う魔法も使えるが、魔導師は魔女の魔法は使えない」
爪' -`)゙
('A`)「そして彼らが最も得意とするのは呪術、誰かに呪いをかける事を生業の一つにもしていた
まあ過去と現在では色々あって状況も変わったんだけど、今はそれは置いておいて……」
爪' -`)?
('A`)づ「魔女には血筋ごとに特色があってね、ちょっと失礼」サワサワ
爪' -`),,
('A`)「アンソルスランかな」
爪;' -`)!
- 127 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:10:23 ID:u8k8Zb0w0
爪;' -`)「────!?」
('A`)「ああ、君の古い呪いも、君の声を奪いお嬢ちゃんを苦しめる新しい呪いも、アンソルスランだ」
爪;' -`)「…………」
('A`)「偶然だと思うけどね、まぁ他の呪いなら君には何の影響も無かったと思う、先の呪いがバリアになって」
爪' -`)゙
('A`)「うーんアンソルスランかー……あーやだなぁ、何だかなぁ」
爪' -`)「────?」
('A`)「あーもちろん強い家系だからってのもあるけど、ちょっと個人的にも因縁が……」
爪' -`)「────」
('A`)「……はっきり言うけど、俺には直接魔女の呪いを解く事は出来ない、魔導師だから」
爪' -`)「…………────?」
('A`)「間接的になら、多少は頑張れると思う。 ……だけどそうなると、大変だよ」
爪' -`)゙ コクコク
- 128 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:11:35 ID:u8k8Zb0w0
('A`)「まず、呪いの元凶である物をどうにかしなければいけない」
爪;' -`)
('A`)「あーそれと君の喉、それくらいなら俺でもどうにかなるよ」
爪' -`)そ
('A`)「呪いの重ね掛けって言ったけど、実際はそれ声を奪うような物じゃないんだ
ただ先にあったから反応して、少し弱ってた部分に発現しただけ」
爪' -`)「───?」
('A`)「うん、だから解呪するんじゃなくて喉を治せば良い、と言うか解呪してもなかなか治らないよ」
爪' -`)「───? ────」
('A`)「君の喉は弱ったところに呪いの影響を受けてるから、治すには特殊な薬を作る必要がある
この森の北東に教会が浄化に使う泉があるんだ、そこに咲く花で薬を作れる」
爪' -`)゙
('A`)「ただまぁ満月の夜にしか咲かないしクソみたいに固い水晶の中に咲くから来月まで待って」
爪;' -`)そ
('A`)「だって今日だし満月……むり……君のそれ命に関わらないから待って……」
爪;' -`)゙ コク…
- 129 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:12:04 ID:u8k8Zb0w0
('A`)「あーそうだ、お嬢ちゃんと会っておく? 最低限の手当てはしたんだけど……」
爪' -`)゙
('A`)「魔方陣踏まないようにね、今のこの子の生命線だから」
爪' -`)「…………」
('A`)「……君の荷物もお嬢ちゃんの荷物もそこにまとめて置いてあるから」
爪' -`)゙
('A` ),,
爪' -`)
爪; -`)
爪ぅ -;)
爪⊃-∩)"
助けてやんなきゃなあ。
信じて託されたんだし。
年長者として、やれる事はしよう。
- 130 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:13:16 ID:u8k8Zb0w0
青年の声は届かないが、気持ちくらいなら流石に察する。
何も出来ない、役に立たない、途方もない無力感に苛まれながら、彼は声も出せずに泣いている。
パートナーがあんな姿になっただけでも辛いだろうに、彼は吟遊詩人。
声が商売道具である彼にとって、声を無くしたのはどれほどの喪失感か。
出来るなら早く治してやりたいが、すぐには無理だ。
とにかく、今は呪いの元凶である何かをどうにかしてやらないと。
しかしアンソルスランの魔女か。
因縁はあるが、知り合いがいる訳でもない。
魔女の呪いは同じ血統で無ければ解呪出来ない。
悲しいかな俺は魔女ではないし、身近に居る魔女は血筋が違うか出生を知らない。
だから今回、彼らの力を借りる事は出来ない。
しかし、少しは使えるか。
それよりも問題は元凶だな、どんな物なのかも分からないし悠長にはしてられない。
力業で押さえる事は出来るかもしれないが、俺がこの場を離れる事は駄目だ。
あの小さいお嬢ちゃんの生命力は、俺から直接魔力を吸って注がれている。
離れたりなんかしたら、たちまちそのまま死んじゃうよ。
あー困ったな。
呪いの元凶をどうにか、どうにかったってなあ。
うーんうーん。
大体傷に残る魔力からしてだいぶ強いやつだ、上回る質量の魔力で対抗しないと。
となるとやっぱり俺か、いやでもなあ、それはなあ。
と言うか初見だと何で見知らぬおっさんがずっと喋ってんだってなるよなあこれ。
- 131 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:13:45 ID:u8k8Zb0w0
,,川 ゚ -゚)「洗ってきましたよ」
ζ(゚- ゚*ζ「あらた」
('A`)「あ」
川 ゚ -゚)「はい?」
('A`)「クーちょっと」
川 ゚ -゚)「はいはい」
('A`)「ふん」サク
川 ゚ -゚)そ「ィッタイ!!!」
('A`)「血を小瓶に詰めて、と」キュッキュッ
川 ゚ -゚)「な……何なんですか……急にこの美しい僕の手を切るなんて……何なんですか……」
('A`)「ごめんごめん、クーの血が必要で」
:川 ゚ -゚):「許しませんけど……何なんですか……クソなんですけど……」
('A`)「ごめんて……ほら痛いの痛いのーとんでけー」ポワワ
:川 ゚ -゚):「治したからって許しませんけど……ふざけんなよ……」
('A`)「ほんまごめんて……」
- 132 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:14:28 ID:u8k8Zb0w0
('A`)「さて、魔族の子」
ζ(゚- ゚*ζ「デレ」
('A`)「デレ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
('A`)「呪いの元凶をどうにかするには、出来る事なら魔女の力が必要だ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
('A`)「でも俺の知り合いにアンソルスランの魔女は居ない、君達は知り合いにいるかい」
ζ(゚- ゚*ζ。o( 川*` ゥ´) )ポワワ
ζ(゚- ゚*ζ「いる」
('A`)「マジで? 直系?」
ζ(゚- ゚*ζ「ぶんけ」
('A`)「あー……まぁ良いやたぶんいける、んじゃその魔女の力と君の力が必要だ」
ζ(゚- ゚*ζ「デレのちから?」
- 133 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:15:14 ID:u8k8Zb0w0
('A`)「そう、君は魔族だ、だから人間よりも遥かに多くの魔力を溜め込んでいる」
ζ(゚- ゚*ζ゙
('A`)「本来なら暴発する様な量だけど……さすが魔族だな、大して魔法は使えないだろうに……」
ζ(゚- ゚*ζ
('A`)「やっぱ魔族の能力は研究対象として本腰を……ちょうどモララーさんも居るし……」
川 ゚ -゚)「魔法キチ乙(ご主人様、脱線してます)」
('A`)ハッ
('A`)「そう、だから君の魔力を魔女に注ぎ、力を増幅させて呪いの元凶を叩き潰すんだ」
ζ(゚- ゚*ζ゙
('A`)「君の仲間二人をああした相手だ、怖いだろうけど出来る?」
ζ(゚- ゚*ζ「やる」
('A`)「本当に?」
ζ(゚- ゚*ζ「やる」
('A`)「……なら、止めはしないけど……呪い避けのまじないはかけておこうね」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
川 ゚ -゚)「呪い避けの呪いって意味わかんないですね」
('A`)「シッ」
- 134 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:16:03 ID:u8k8Zb0w0
('A`)「それにしても、不幸中の幸いと言うべきか」
ζ(゚- ゚*ζ「う?」
('A`)「魔女の知り合いが居るって言うし、あのお嬢ちゃんは魔防道具を装備してるだろ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
('A`)「それがなかったら、今ごろお嬢ちゃんは死んでるよ」
:ζ(゚- ゚;*ζ:
('A`)「腕の良い人に当たったね、作りも精度も良い、しかも曰く付きの高純度な人工魔石がついてる」
ζ(゚- ゚;*ζ「いわく?」
('A`)「人間が元になった魔石だよ、滅茶苦茶に質は良いけど倫理的にアウトでもう作られてない
恐らく大昔の物を使ったんだろうなあ、高純度って事は間違いなく人間が生け贄になってる」
ζ(゚- ゚;*ζ「ぅぁ」
('A`)「それのおかげでお嬢ちゃんはギリギリ今生きてる、気持ちの良い物じゃないけど大事にね」
ζ(゚- ゚;*ζ゙ コクコク
- 135 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:16:31 ID:u8k8Zb0w0
爪#' -`)づ ドスドス
('A`)「あっ痛いちょっと後ろから肝臓狙うのやめて」
爪#' -`)「────!! ───ッ!!!」
('A`)「あーごめんちょっと何言ってるかわかんないから今忙しいから」
爪#' -`)「─────ッ!!!」
川 ゚ -゚)「どう見てもめっちゃ怒ってるんですけど」
('A`)「だろうね、小さい子を危険な場所に送り込もうとしてるんだし」
爪#' -`)「───! ────!!!」
('A`)「あっちょっと声出ないからって文字で表現したらアウトな罵倒やめて」
川 ゚ -゚)「分かってんじゃねーか」
- 136 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:17:00 ID:u8k8Zb0w0
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん、デレいく」
爪#' -`)「────!?」
ζ(゚- ゚*ζ「デレやる、デレだけできる、やる」
爪#' -`)「────! ───!!」
ζ(゚- ゚*ζ"「デレやる」フルフル
爪#' -`)
ζ(゚- ゚*ζ
爪#' -`)「─────」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん、おねさんのそばいて」
爪#' -`)「───ッ!!」
ζ(゚- ゚*ζ「ひとりない、まじょさんいっしょ、いく」
爪#' -`)
爪' -`)
爪' -`)「─────?」
ζ(゚- ゚*ζ「ちゃんとかえる、おねさんたすける、デレがんばる」
爪' -`)゛「…………」
- 137 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:17:29 ID:u8k8Zb0w0
爪' -`)”
つ(゚- ゚*ζ モフ
と ヽ,,
('A`)「……さて、じゃあ君を魔女の元まで届けないとな」
ζ(゚- ゚*ζ「あいっ」
('A`)「場所は?」
ζ(゚- ゚*ζ「きたとこ」
('A`)「なら痕跡があるから分かるな、はいこれ」
ζ(゚- ゚*ζ「う? おにさんのち?」
('A`)「お守りだよ、いざとなったら魔女に渡して」
ζ(゚- ゚*ζ「……あいっ」
('A`)「俺はここで、少しでもお嬢ちゃんが良くなるように色々するから」
ζ(゚- ゚*ζ「よろしく、おねあぃ、しますっ!」
('A`)「クーもこんな時期があったなあ……」
川 ゚ -゚)「ありましたっけ」
('A`)「いやー無かったかもなあ……」
川 ゚ -゚)
- 138 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:18:06 ID:u8k8Zb0w0
('A`)「じゃあ送るよ、魔女によろしく伝えて」
ζ(゚- ゚*ζ「あい!」
少しこわいおじさんに見送られ、魔方陣の中に入る。
ぐるぐる、ぐにゃぐにゃ、回る視界。
光の中に閉じ込められて、変な感覚がお腹の中にまで響く。
そして景色が戻る頃には、そこはもう森の中ではなく。
血まみれの地面を掃除する、騎士さんの目の前だった。
ミセ;゚−゚)リ「ファッ デレちゃんっ!? あの二人は!?」
ζ(゚- ゚*ζ゙ フルフル
ミセ;゚−゚)リ「え……」
ζ(゚- ゚*ζ「まじょさん、たすけもらう」
ミセ;゚−゚)リ「……それで、治せるの?」
- 139 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:18:46 ID:u8k8Zb0w0
ζ(゚- ゚*ζ「たぶん、おじさんなおせない、まじょさんたたかう、のろいなおる」
ミセ;゚−゚)リ「ドクオさんにも治せないものあったの……ええいっじゃあわたしも手伝うっ!」
ζ(゚- ゚*ζ「きしさん、おしごとだいじ?」
ミセ;゚−゚)リ「んっ? ああ大丈夫かって? 知らん!!」
ζ(゚- ゚;*ζ
ミセ;゚ー゚)リ「……でも困ってる人のために働くのが騎士でありミセリだから、わたしにも手伝わせて」
ζ(゚- ゚*ζ「…………あい!」
西の墓地の向こう、魔女さんのお家を目指して、ふたりで走り出した。
村のなかを駆け抜けながら、ふと、おじさんのところでお洗濯をした時の事を思い出す。
綺麗なお兄さんは、冷たい顔のままデレとお話してくれた。
お兄さんとお姉さんに何も出来なくて、情けないデレとお話してくれた。
- 140 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:19:44 ID:u8k8Zb0w0
「デレ様はまだお小さいですから、何も出来ないのも無理はありませんよ」
「僕なんて成人しましたけど未だに料理は前衛芸術なんですから、出来る事の方が少ないです」
「そんな僕だろうと、問題ないとご主人様は言ってくれます、家事出来るようになれって言うけど」
「だからデレ様、デレ様はただ無力なんじゃないです、子供なだけです」
「僕と違って、あなたには沢山道の先があります、だから今くよくよしても無駄です」
「あなたは今は無力としても、これから色んな事が出来るようになるんです」
「だから今は、無力を前提に出来る事を考えましょう、小さなあなたに何が出来るのかを」
「あなたにしか出来ない事が、絶対にあるんですよ、あなたはあなたしか存在しないんですから」
慣れない手付きで頭をぽんぽん撫でてくれた綺麗なお兄さんは、小さく「僕クソだな」と呟いた。
でも表情を崩す事は無くて、ただデレの頭を撫でていてくれて。
デレは子供だし、弱いし、何にも出来ないかもしれない。
でも、デレだけに出来る事だってあるかもしれない。
そう思っていたデレに、おじさんは役目を与えてくれた。
だからデレは、この出来る事を、絶対にやりとげるのだ。
- 141 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:20:06 ID:u8k8Zb0w0
デレはたくさん怒ってる。
たくさん怖くてたまらない。
お姉さんをあんな目にあわせたの許せない。
お姉さんが手も足も出なかったのがこわい。
お兄さんの声をうばったの許せない。
お兄さんのおうたが聞けないなんていや。
デレは絶対にゆるさない。
絶対に負けたくないし、こわいけど、すっごくこわいけどたたかうんだ。
だからそのためにも、魔女さんのと
ミセ;゚−゚)リ「デレちゃん! フード!! 外れてる!!」
ζ(゚- ゚;*ζ「っ!!」
ざわざわ。
騎士さんの言葉に足が止まった。
色んな人の目が、視線が、いっぱい刺さる。
- 142 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:20:27 ID:u8k8Zb0w0
頭から外れたフードを慌ててかぶり直しても、もうデレの角は見られたあと。
腕や足の無いひとが、怪我をした痩せた人たちが、デレを見ている。
こわい。
この目は、こわい目。
デレをばけものだってきらう、にくむ、うらむ、ひとの目。
でも、でもデレは急ぐの。
急いで魔女さんのところに行かなきゃ。
立ち止まってる場合じゃなくて。
こわい目で見られるくらい、全然平気で。
ひゅ、ごつ。
Σζ( - ;*ζ「ッ!」
- 143 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:20:48 ID:u8k8Zb0w0
ミセ;゚−゚)リ「デレちゃんっ!」
ζ( - ;*ζ「い、た……」
急に頭がいたくなって、騎士さんが心配そうに駆け寄ってきて。
足元に落ちてる小さな石に、どうして痛くなったのかがすぐに分かった。
一人が石を投げて。
それに応えるように、石を投げる人が増えて。
ごつ、ごつ。
投げつけられる石はそんなに痛くない。
でもなんだかすごく苦しくて、こわくて、投げる人たちを見られない。
足元にたくさん、たくさん石が増えていく。
その石の数だけ、デレをきらう人がいる。
ごつん、ごつん。
投げられる石にどんどん力がこもる。
- 144 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:21:20 ID:u8k8Zb0w0
出ていけばけもの。
はやくころせ。
ひとごろしの末裔。
そいつらのせいで。
いたい言葉が石と一緒に投げ付けられて。
農具や工具を持った人たちが、じりじりと近付いてきて。
行かなきゃ。
逃げなきゃ。
急がなきゃ。
わかってる、わかってるのに。
怖がってる暇なんてない、もっとこわいのは二人がいなくなること。
でもデレに向けられた敵意は、殺意は、こわくていたいものは。
デレから、体の自由を奪ってしまって。
_,
ミセ#゚Д゚)リ「────止めなさいッ!! 小さな子供相手に恥を知れッ!!!」
怨嗟にざわめく広場を引き裂くのは、騎士さんの声。
- 145 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:21:43 ID:u8k8Zb0w0
ζ( - ;*ζ「きし、さ」
_,
ミセ#゚Д゚)リ「こんな子供に石を投げるかッ!! それが国に仕えた者の行いかッ!!?」
ああ騎士さんは、ほんとにお姉さんのお友達なんだな。
でもこの状態で、真っ直ぐな剣を振りかざしたとしても
それはきっと、なんの役にもたたない。
デレはしってる。
この状況ではどうにもならない。
ぜんぶぜんぶ叩き潰せるような力がなければ、どうにもならない。
ζ( - ;*ζ「いい、デレいい、へいき」
_,
ミセ#゚−゚)リ
_,
ミセ#゚−゚)リ「デレちゃん、そこの横道から抜ければ墓地への近道になる、行って」
ζ( - ;*ζ「ぅ……きしさんは……?」
- 146 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:22:19 ID:u8k8Zb0w0
細い路地を指差す騎士さんは、白い手袋の上に銀の籠手を装備していた。
綺麗な銀色、白っぽい銀色、けっぺきで、さわるのがこわいくらい綺麗。
十字架の描かれたそれを装備した騎士さんは、デレの視線に気づいて、にんまりと笑った。
_,
ミセ#゚ー゚)リ「たとえ懲戒処分になったって、ミセリは己の魂に背く事は出来ません
だからミセリは幼馴染みのため、小さな子供のため、そして己の正義のために拳を振るうよ」
だから子供を逃がして、わたしはせっかく賜った騎士号を捨てましょう。
いらだちに頬を染める騎士さんは、長い緑の髪を結い直して、デレの前に立ちはだかる様に拳を構えた。
騎士さんはお姉さんのお友達だから、きっとやめてって言っても応えてくれない。
デレのせいで大事なものを捨てるって言ってるけど、デレにはそれを止められない。
だったら、甘えるしかないんだ。
弱いから、何も出来ないから、デレは人に迷惑ばかりかけるんだ。
だから走る、震える足で走る。
騎士さんにぜんぶ任せてしまって、デレは走るしかないんだ。
- 147 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:22:52 ID:u8k8Zb0w0
村民がわらわらと、幼い魔族を殺すために集まる。
その手には農具やら工具やら、ただの石やら瓦礫やら。
ここは溜まり場、掃き溜め、恨みを持つ者が多い場所。
気持ちは分かるよ、だってわたしも村ごと潰されたのだから。
だからって、あんな小さな子供相手に殺意を向けたりなんてしない。
わたしにここの人たちの痛みを全部理解できるとは思ってない、だけど見過ごせない事はある。
なので不肖ミセリ・アンジェニュは、やっと定まりかけたキャリアの道を自ら投げ捨てます。
だってしょうがないじゃない、ミセリはそう言うタイプのおバカさんだから。
_,,
ミセ#゚Д゚)リ「掛かってきなさい誇りを喪い道を誤る憐れなる有象無象!!
この愚かな小娘に、騎士たるミセリ・アンジェニュに傷の一つでもつけてみせろ!!!」
魔力を纏わせた銀の拳を地面に叩き付けて、
地を深く抉り穿ち、空を裂く様に吼えよう。
結局、ミセリに勤め人なんて無茶だったって事かな。
あーあ、せんせ達にまた心配かけちゃうよ。
ま、笑ってくれそうだけど。
- 148 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:23:14 ID:u8k8Zb0w0
走って、走って、転びそうになりながら走って、石を投げられながら走って。
よろめきながら路地を抜けたら、眼前に広がる墓地がデレを出迎えた。
古いお墓も多いけど、それを越えるのはまだ新しいお墓。
出来てまだ数年くらいの、木の杭を合わせて作っただけのお墓が、広がっていて。
中には朽ちたものもある、中には作られたばかりのものもある。
このほとんどが、魔族に殺されたのだろうか。
なんだかすごく胸がいたくて、鼻の奥がつんとする。
デレは悪くない、なんにもしてない。
でもごめんなさい、ごめんなさい。
デレは悪くないけど、ごめんなさい。
墓地の中を走る。
真っ直ぐ突っ切った方が早いから走る。
魔女さん、たすけて魔女さん。
なんにもできないデレを叱って。
- 149 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:23:37 ID:u8k8Zb0w0
変なにおい、いやなにおい。
きっと死んだ人のにおい、死そのもののにおい、魂だけになった人のにおい。
やだ、いやだ、デレはこんなの知りたくない。
鼻がへんになってしまう。
息を切らしながら墓地を抜けたその先には、森を背にした、足の高い小さなお家がぽつんとあった。
紺色の三角屋根と、色んなものが干してある窓辺。
玄関に立て掛けられた箒は、前にも見たことのあるもの。
屋根からはえる煙突からは、不思議な色の煙がもくもく。
ああ、よかった。
魔女さんいた。
たすけて魔女さん、魔女さん。
階段をかけ上がって、ドアを叩く。
どんどん、どんどん、名前の下がったドアを叩く。
- 150 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:24:12 ID:u8k8Zb0w0
川*` ゥ´)「あーはいはいうっせーなゴリラかよ」ガチャ
ζ(゚- ゚;*ζ「まじょさんっ!!」
川*` ゥ´)「あ? チビじゃんなんだよ、保護者どうした」
ζ(゚- ゚;*ζ「きて! のろい! たおして!!」
川*` ゥ´)「は、何? 呪い倒す?」
ζ(゚- ゚;*ζ「おねさん! しんじゃう!!」
川*` ゥ´)「あー? 呪いでもかけられたのかよ、つか解呪とか言われてもなぁ……」
ζ(゚- ゚;*ζ「あんそるすらん!! まじょののろい!!」
川;` −´)!!
ζ(゚- ゚;*ζ「まじょさん! おねがい!!」
川*` ゥ´)「……無理だ」
ζ(゚- ゚;*ζ「っ!? む、むりないっ!!」
- 151 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:24:37 ID:u8k8Zb0w0
魔女さんのとまどった顔が、いっしゅんで渋いものになる。
何かに気付いたような、察してしまったような顔で、ばつが悪そうに目をそらす。
でもデレは、魔女さんにたすけてもらわないといけない。
お願いをするしかない。
居心地悪そうに袖を握る魔女さんは、ため息を洩らすみたいに口を開く。
川*` ゥ´)「…………だってアンソルスランの魔女の呪いだろ、分家のあたしの力じゃ無理だ」
ζ(゚- ゚;*ζ「おねがい、っおねがいします!!」
川*` ゥ´)「……だから、無理だって」
ζ(゚- ゚;*ζ「まじょさんっ!!」
川#` ゥ´)「だっ……から! 無理なんだよ! お前が思ってるより強大な力なんだよそれは!!
あたしみたいに血の薄い、クソみたいな分家の! 一介の魔女には太刀打ち出来ないんだよ!!」
イライラしたように怒鳴り付けてから、はっとなって顔をそらす魔女さん。
こんぷれっくすって言ってたから、魔女さんは、きっとこれは嫌な話なんだと思う。
- 152 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:25:14 ID:u8k8Zb0w0
川*` ゥ´)「…………他の魔女教えるから、そっち頼れよ……あたしなんかに頼るな」
ζ(゚- ゚;*ζ「じかんっ、ないのっ!!」
川*` ゥ´)「…………知るかよ」
ζ(゚- ゚;*ζ「おねがいします! これ! あげるからっ!!」
川*` ゥ´)「何っ……だよ、金貨なんか渡されても……」
ζ(゚- ゚;*ζ「デレのねだん! デレあげるから!! だから!!」
川;` −´)!
ζ(;- ; *ζ「あげる、ぜんぶあげるから……」
こらえていた涙が、ぽろぽろこぼれる。
首から下げてたおかねのお守りをはずして、魔女さんに差し出す。
デレの値段、デレのおかね。
ぜんぶぜんぶあげるから。
ζ(⊃-∩*ζ「まじょさん……たすけて……」
- 153 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:26:14 ID:u8k8Zb0w0
小さいガキが泣いてる。
金を差し出しながら泣いてる。
金貨と銀貨の詰まった小さな袋をあたしに差し出しながら、それはガキの値段だと言う。
川*` ゥ´)(あー)
川*` ゥ´)(あたしは、そんなにひどい事してんのか)
ガキが大事に持ってた金を差し出すくらい。
元奴隷が自分の金額を差し出すくらい。
あたしは、ひどい事をしてんのか。
確かに魔女の呪いも、同血統なら解呪出来る。
だがそれは、呪いを施した魔女と同程度か、上位の魔女ならの話だ。
同血統としても、下位の魔女が手を出せばどうなるか。
よしんば呪いを食らう事が無かったとしても、無傷では済まない。
- 154 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:27:01 ID:u8k8Zb0w0
今時呪いをかけるような魔女は、それなりの力を持つ古風な奴、つまり本家の輩だ。
つまり、下手すりゃ全員死ぬ。
あたしの腕では、死ぬ可能性の方が高いんだ。
あたしは魔女としては上級だが、うちの血筋では、中の下程度。
分家にしては、頑張ってる方だけど、所詮は分家、本家の血には敵わない。
生まれ持った物こそが一番の世界。
持たざる者として生まれたあたしには、あまりにも苦しい世界。
あたしはどうして、魔女としてこんなにも力を求めているんだったか。
どうして人を陥れてまで、名声を欲しているんだったか。
ああそうだ、確かあいつのせいだ。
あれは確か、あたしがまだクソガキだった頃だっけ。
そう、あたしが今でも、羨んで憧れて妬ましくてしょうがない、魔女との出会いは。
- 155 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:27:51 ID:u8k8Zb0w0
あたしは憧れている。
あたしは妬んでいる。
あたしは目指している。
ガキのあたしを救った純血の魔女。
幼くも完成された稀代の魔女。
長き血の歴史、途絶えつつある血統、最高傑作であるシュール・アンソルスラン、その人を。
名家の分家の末っ子のみそっかす。
それがあたしのポジションで、何の期待もされないのに名前だけは重くのし掛かる。
生まれついての魔女の家系、進む道は生まれる前から決まっていた。
他の道に進む事も可能だったが、最初から魔女になると思っていたし思われていた。
幸い魔力はあった、容量も少なくはない体質、それなりに使いこなせる。
幼い頃に魔女にはなれた、魔法の勉強も楽しいし嫌いじゃない。
成績が悪いわけでもない、でもアンソルスランと言う名がそれを全て覆す。
- 156 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:28:12 ID:u8k8Zb0w0
この国だけじゃない、他の国にも名を轟かせるような魔女の血族。
穏やかで、美しく、国をも動かす事が出来る力を持つ。
それ故に命を狙われたり幽閉される事もあったらしい。
アンソルスランと言う名前は、強く賢く美しく、穏やかで麗しい偉大な魔女と言う意味になってしまった。
だからその全てに当てはまらないあたしは、この名前が嫌いで嫌いでしょうがなかった。
あの日までは。
戦争の最中、あたしはもう魔女だったが、まだまだ小さなガキで。
うっかり敵兵の前に出てしまったあたしと、あたしを殺そうと向けられた刃。
怖くて怖くてしょうがなかったあたしの前に、たおやかな動作で割り入る小さな影。
それが一度だけ見たあの人の姿、あたしとあの人の出会い。
敵兵を容赦も、躊躇も無く片手間に魔法で消し飛ばした幼女は、にっこり微笑んだ。
- 157 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:28:42 ID:u8k8Zb0w0
lw´‘ -‘ノv『お怪我はなあい、小さな魔女さん』
紫の髪、黒い瞳、穏やかで、綺麗で、幼いのに妖艶さすらまとわせる娘。
一目でわかった。
この人は、本家の魔女だ。
私よりも小さなこの人が、本家の、偉大な魔女。
まだ五歳かそこらの幼い魔女は、あたしの手を掴んで立ち上がらせる。
甘くてまとわりつくような、夢の奥底みたいな良い匂い。
ちいちゃくて細くてやわらかな白い手。
にこにこ笑う魔女に、あたしは何も言えなくて。
lw´‘ -‘ノv『お怪我、ありますの?』
困ったような声音で、それでも微笑んだまま尋ねられて、やっと大丈夫だと返事が出来た。
- 158 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:29:11 ID:u8k8Zb0w0
あたしの無事を確認した魔女は、スカートの汚れを払ってくれて、安全な道を教えてくれて。
逃げないのかと聞いてみたら、魔女は弾けるような笑顔で言った。
『旦那様がこの街を護って下さるの』
『だからわたくしはどこにも行きませんわ』
『お家で旦那様をお待ちしますの』
くるくる、黒いワンピースを翻して笑った。
『けれどね魔女の子、わたくしには全てが見えますの』
『だからお逃げなさい、その道をまっすぐ行けば逃げられる』
『わたくしはシュー、シュール・アンソルスラン、どうか覚えていて』
『そしてもし良ければ旦那様に伝えてくださいな』
- 160 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:29:45 ID:u8k8Zb0w0
いとしいいとしい旦那様。
旦那様は何も悪くないの。
だからどうかしあわせに。
あたしにそう告げた魔女は、返事も聞かずに丘の上の屋敷へと走っていった。
その街が魔族の襲撃により焼け野原となったのは、あたしが逃げ出したすぐ後。
一人の英雄の手からこぼれ落ちた、最も凄惨な被害を受けた場所がこの街だ。
最初こそ英雄を恨んだが、成長してから知った。
街と共に死んだシュール・アンソルスランとは、その英雄の許嫁。
多くを護り、多くを助けた英雄ロマネスク・ミュスクルは、最も守りたかった物を守れなかったのだ。
そんなもん、哀れすぎて恨めやしない。
今思うと、あの人は自分の死すら見透かしていたみたいで。
何もかも、知った上でああしたみたいで。
あたしはその手のひらの上に居るみたいで居心地が悪いが。
それでもあの約束を守るためにも、魔女の子として名を馳せるためにも、あたしは努力してきた。
- 161 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:30:24 ID:u8k8Zb0w0
あたしは嫉妬している、尊敬している、羨望している。
あの偉大なる魔女に近付きたい。
あたしにだって、誰かを守れるようになりたい。
愚図のブスのみそっかすだと馬鹿にしてきた連中を、みんなみんな見返してやるんだって。
そうだよ、これこそがあたしを駆り立てるもの。
偉大な魔女への憧れこそが、あたしの生きる理由の一つ。
一目であたしを魅了した幼い魔女。
誰もが目を奪われるような幼い毒婦。
あの人になりたいわけじゃない。
あたしはあの人を、踏み越えて乗り越えてやるんだ。
持たざる者として生まれたあたしが、
すべてを持って生まれたあの人を越えるために。
あたしは、ここまで生きてきた。
- 162 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:30:47 ID:u8k8Zb0w0
魔導師になる事も出来た。
平均の魔女として適当に生きる事も出来た。
けどあたしは、本物を見てしまったから。
その血を僅かでも持つあたしは、ただの魔女として生きる事は出来なかった。
プライドはずたずただし、誰からも褒められた事も無い、不美人で卑屈で出し殻みたいな存在でも。
あの魔女に助けられたんだ。
本物の魔女と言葉を交わしたんだ。
あんな風に誰かを救ってみたいんだ。
あれだけの力をあたしはこの身に宿したいんだ。
あの人のように高名で偉大な魔女になってやりたいんだ。
だから。
だからさ朝飯ども。
お前らを助ける事を、その第一歩として利用させて貰うぞ。
- 163 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:31:22 ID:u8k8Zb0w0
川*` ゥ´)「……は、金持ちじゃんお前、あたしの財布こんなに入ってねーぞ」
ζ(ぅ-∩*ζ
川*` ゥ´)「……おい、連れていけよ」
ζ(ぅ- ;*ζ!
川*` ゥ´)σそ「この偉大な魔女になるヒール様を! お前の連れてきたい場所まで連れていけ!!」
ζ(ぅ- ;*ζ「っ……あいっ!!」
川*` ゥ´)「あとそんな胸くそ悪い金はいらねぇからな! てめーで持っとけバーカ!!」
ζ(ぅ- ;*ζ「あいっ!!」
ガキが泣いてんなら、助けるしかねーし。
あたしがこんなところで死ぬわけねーし。
呪いとか老害の使うような手段、ぶっ潰してやる。
- 164 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:31:42 ID:u8k8Zb0w0
川*` ゥ´)「つかお前傷だらけじゃん、バカなん?」
ζ(゚- ゚*ζ「ぅ……いしなげられた……」
川*` ゥ´)「ホァーン、だから言っただろボケ、フード外すなや」
ζ(゚- ゚*ζ「がぅ……みせり、たすけてくれた……」
川*` ゥ´)「あーあの騎士のクソg」
< ボガーン ギャー メゴグシャー
川*` ゥ´)
ζ(゚- ゚;*ζ
川*` ゥ´)「ほんとあの騎士」
ζ(゚- ゚;*ζ「すごいおと」
川*` ゥ´)「あいつバカだからな」
ζ(゚- ゚*ζ「おともだち?」
川*` ゥ´)「歳の近い女がろくに居ないからなつかれてんだよ迷惑なんだよ」
- 165 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:32:06 ID:u8k8Zb0w0
川*` ゥ´)「さ、て……おい箒乗れ」
ζ(゚- ゚*ζ「う? ふたりのり?」
川*` ゥ´)「ケツ痛いから覚悟しろよ」
ζ(゚- ゚;*ζ
川*` ゥ´)「で、どこ?」
ζ(゚- ゚*ζ「う、もり、あっち、のろいげんきょうある」
川*` ゥ´)「そこの森かよ……久々に戻ったらヤな感じすると思ったら……」
ζ(゚- ゚*ζ「……ほうき……のる……?」モソモソ
川*` ゥ´)「乗るんだよ、ほら行くぞ低く飛ぶからな」フワァ
ζ(゚- ゚;*ζ「がうっ!?」フワァ
川*` ゥ´)「しゅっぱーつ」ヒュゴッ
ζ(゚□゚;*ζ「ぴゃああああああっ!!」ヒュゴッ
- 166 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:33:05 ID:u8k8Zb0w0
細い路地を低空飛行で抜けて、建物にぶつかるかぶつからないかの距離で曲がる。
吹き飛びそうなガキがしがみつく感触が、妙に暖かくて心地よかった。
頬を切るように感じる風はいつもより冷たく胸に刺さる。
しかしその冷たさの中、あたしは命を捨てる覚悟に全身を冷や汗で濡らしていた。
ばさばさとなびく髪。
袋小路の道、迫る壁。
勢いよく進行方向を空に変えたあたし達を乗せた箒は、真っ直ぐにごみごみした路地を飛び出した。
空に上がって勢いに任せて一回転。
すぐ後ろから響く悲鳴と、眼下に見える広場で上がる声。
穿たれた地面と倒れる人々、無傷で佇む騎士があたし達を見上げて手を振った。
やっぱバケモンだなあいつ。
視線を広場から森へ移す。
暗くよどんだ空気をまとわせる森は、いつもよりその姿を不気味な物にしている。
距離があるからか、魔力も魔女の気配も感じない。
魔物ならちらほら居るだろうが、野性動物と変わらないやつらなんぞどうでも良い。
細い目を更に細めても、あたしと同じ血は感じない。
魔女の呪いの元凶ってんなら、少しは感じてもおかしくないが。
- 167 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:33:31 ID:u8k8Zb0w0
川*` ゥ´)「おいガキ、魔族だろ、何か見えねーのか」
ζ(゚- ゚*ζ「がぅ……みえ…………ある! あっち!」
川*` ゥ´)「ほーん、やっぱ魔族は目が違うな」
ζ(゚- ゚*ζ「……まじょさん、だいじ?」
川*` ゥ´)「大丈夫なわけねぇだろアホか、死ぬ可能性のが高いんだぞ」
ζ(゚- ゚*ζ「ぅ……」
川*` ゥ´)「たぶん魔力で押さえ付けるしか無いからな、お前の魔力寄越せよ」
ζ(゚- ゚*ζ「あいっ」
川*` ゥ´)「ギリ生命力まで吸わない程度にするから」
ζ(゚- ゚;*ζ「あ、あいっ」
川*` ゥ´)「あードレイン使えてよかった、じゃあ行くぞ、あっちな」
ζ(゚- ゚*ζ「あい!」
- 168 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:33:56 ID:u8k8Zb0w0
村の上から急降下。
体勢を低くして、足元から滑るように村を抜けた。
真っ直ぐに飛んで道を抜け、森に入り、木々や草を避けながら勢い良く突き進む。
魔物の気配はする。
だが違う、別のやつ。
魔力を感じる。
近付いてきたか?
後ろからあたしにすがる手に、力がこもる。
嫌なものから逃げるように、震えながら顔を背中に押し付けている。
鼻も目も良いこいつには、もう感じている何かがある。
それはきっと、次第にあたしにも届くだろう。
近付く。
まだだ。
近付く。
もう少し。
足跡が見える。
三人分。
- 169 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:34:16 ID:u8k8Zb0w0
赤い跡が。
う、っわ。
血の臭いすっげ。
吐き気をもよおす濃い血の臭いが風に乗って届き、同時に地面の血の後が深く濃く多くなる。
箒の速度を緩めて、確認するように低速飛行。
嫌な気配と嫌な臭いが混じりあって濃くなり、ガキの震えの理由がわかった。
そして箒を止め、降りる。
地面に染み、広がる、未だ乾いていない、血だまり。
ああこりゃ、ヤバイやつだな。
そりゃガキも必死に頼み込むわ。
この血の量からして怪我はだいぶキツい、モツくらい出てるだろうな。
それに呪われたって事は、たぶん傷は塞がらない。
まだ生きてんのかなあのゴリラ。
まぁゴリラだしたぶん生きてるだろ。
生きてなきゃ困るんだよ。
- 170 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:34:41 ID:u8k8Zb0w0
血の臭いとまじりあう気味の悪い気配。
これは恐らく元凶の方。
っつーか呪いを与えてくるって何だ? しかも魔女の呪い、だが魔女の気配は無い。
どんな奴が相手なんだよ、わっかんねーよマジ。
ζ( - ;*ζ「ぅ、ぷ」
川*` ゥ´)「吐くなよお前……おい、消臭剤だせ消臭剤」
ζ(゚- ゚;*ζ「おまもり……?」
川*` ゥ´)「そうそっちのお守り、あーあポプリ真っ黒、呪いの影響かね」
ζ(゚- ゚;*ζ「……きたとき、ちがう、いまきもちわるい」
川*` ゥ´)「血の臭いもあるだろうな、よっと」サクッ
ζ(゚- ゚*ζ「まじょさ……?」
川*` ゥ´)「ポプリにあたしの血染まして……ほらよ」ポワァ
ζ(゚- ゚*ζ「! ……においなくなた……!?」
川*` ゥ´)「くっせー元凶に近い血だからな、あと今度清めた魔石でも入れとけ、綺麗になるから」
- 171 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:35:15 ID:u8k8Zb0w0
ζ(゚- ゚*ζ「ありあとまじょさん」
川*` ゥ´)「へーへー……それよりどこだぁ? くっさ過ぎてわかんねーぞ」
ζ(゚- ゚*ζ「ぅぅぅ……ぅ?」
川*` ゥ´)「居たか?」
ζ(゚- ゚*ζ「うしろっ」
,,川*` ゥ´)「おっと」
振り返ると、そこに揺らめいていたのは黒い何か。
人型で真っ黒でゆらゆらぐちゃぐちゃのどろどろ。
ぐねぐねにちゃにちゃ蠢きながら、こっちに近寄ってくる。
うわー。
素直にきっも。
黒いのは魔女の呪いそのものか。
つまり元は人型、要するに人間だな。
これだけの呪いと魔力と何かキモいくっせーやつ撒き散らして。
恐らく意思もなくうねうねじゅるじゅる、命のある者を求めてさ迷う感じかな。
- 172 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:36:13 ID:u8k8Zb0w0
って事は、これ呪いを受けた元人間か。
まーまーとんでもねぇ呪い受けてんな。
あのクソイケの不死の呪いも相当だけど、こっちは怒りと悪意を持ってそうだ。
じゅるじゅる蠢いてんのは再生。
びちびちもがいてんのは破壊。
人を狙うのは生命力欲しさか。
意思もなく本能だけで命を狙ってる。
だがこれは正しい呪いじゃない。
本来なら魂だけを閉じ込める物だろうに、これは肉体ごと魂を閉じ込めてしまったもの。
つまり、失敗した結果。
うっかり死人にかけるつもりが生きてたりしたんかね。
どっちにしろ禁忌で処刑とかされそうな呪いだけど。
つーかうっわー、クソイケもこうなった可能性あんのかな、引くわ。
- 173 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:36:52 ID:u8k8Zb0w0
と、観察してる場合じゃねーな。
めっちゃ近いし呪いをかけた魔女に似たものを感じてるんだろう、敵意がすげーわ。
ガキは、唸っとる唸っとる。
しかし呪い受けた元人間が魔物っぽくなったやつか。
めんどくせー、どう倒すのこれ、知らねーぞあたし。
まー取り敢えず。
川*` ゥ´)「ぶちかましてみっかー!!」
ζ(゚- ゚*ζ「がうっ!!」
川*` ゥ´)「属性は無しでとにかく超魔力で叩き付ける、そしたらあいつの周りのモヤも減るだろ」
ζ(゚- ゚*ζ「デレなにするっ!?」
川*` ゥ´)「魔法使えねんだろ、怪我しないようにしてろ」
ζ(゚- ゚*ζ「がぅ……」
川*` ゥ´)「お前は電池なんだから死なれたら困んの」
ζ(゚- ゚*ζ「あいっ!」
- 174 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:37:42 ID:u8k8Zb0w0
川*` ゥ´)「あーお前にドレインかけとくから、魔力どんどん吸うぞ、ヤバそうなら言え」
ζ(゚- ゚*ζ「あ、あい!」
川*` ゥ´)「あと、足止めしろ」
ζ('(゚- ゚∩ζ「がうぅっ!!」
外套を脱ぎ捨てて、真っ直ぐに魔物(仮)に飛び込むガキ。
いやいや足止めしろとは言ったけど突撃しろとは言ってねぇ。
まあこのガキも保護者ボロ雑巾にされてキレてんだろうけど。
帰った時に怪我してたらあたしがボコされんだろこれ。
まあいいか。
杖の先に意識を向けて、魔力を少しずつ吸い上げながら溜め込む。
脈動するように大きくなる魔力球は、下手に使うと暴発する。
慎重に溜めて、慎重に放たなければ。
お守りをつけた杖の先端。
どんどん重く熱くなる。
でもまだいける、まだ溜められる。
あたしの魔力だけじゃ無理でも、魔族の魔力量なら出来る。
- 175 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:38:32 ID:u8k8Zb0w0
今まで溜めた事も無いような熱量のかたまりは、白くも濁り禍々しくあり清らかで。
その魔力の塊に対して、あたしは呪文を向けた。
あまねくはまをすべしちからのことわり
わがちにおいてわがみまもりしたてなれ
わがなにおいてわがみまもりしほこなれ
さけべやいかりのやりとなりひきさかん
ほえろやなげきのあめなりてふりそそげ
わがみながれしちのしゅくふくをうけよ
わがみながれしちのじゅばくをあたえん
われらがちによりしのろいをうちけさん
われらがちになりしのろいをむさぼらん
われらくろきまじょのちこそほこなりや
われらくろきまじょのちこそたてなりや
すべてをうがちほろぼしくらうちからにて
のろいあれ
- 176 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:39:05 ID:u8k8Zb0w0
魔物みたいな何かは、魔女の気配に当てられたのか動きが中途半端だ。
飛び込んできたガキの相手はしているが、意識があたしに向いているらしくろくな反撃をしていない。
牙も爪も剥き出しにして、ガキが魔物へ襲い掛かる。
その背中は小さい癖に、人の命を背負っている。
必死なんだろうな。
必死に攻撃避けて、必死に攻撃繰り出して。
でもあのゴリラが負けたんだろ。
お前だけじゃ勝てねーぞ。
だーかーらー、
川*` ゥ´)「行くぞガキ!! そこどけ!!」
ζ(゚- ゚*ζ「あいっ!!」
溜め込んだ膨大な魔力。
古くさいまじない言葉を与えた魔力。
その全てを、魔物に成り果てた何かに叩き付ける。
つか呪文間違えなかったかなアレ。
呪いとかやった事ねーからうろ覚えだぞ、大丈夫かな。
- 177 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:39:27 ID:u8k8Zb0w0
色々手法はあるが、うちでは呪いを打ち消すには呪いを用いる。
同量かそれ以上の力を叩き付ける事によって、元ある分を吹き飛ばす。
新たにかけられた呪いだが、これはちゃんとしたものじゃない。
誰が何にいつまでどうするか、それらをまじない言葉に入れなければ最終的には成立しない。
つまりノーカン。
大気を揺らして、木々をへし折り、地面を焦がす魔力の塊。
その中心に居た何かは、白い魔力球に飲み込まれる。
だが気配は消えていない、まだ居る。
呪いは薄まった気がするが、これは。
ζ(゚- ゚*ζ「まじょさんっ、たおせた!?」
川*` ゥ´)「まだ」
ζ(゚- ゚;*ζ「がうっ!?」
川*` ゥ´)「うーんやっぱ呪文間違えたか……?」
ζ(゚- ゚;*ζ「まじょさん!?」
川*` ゥ´)「それか元の呪いが強いかだな、まだ魔力あるか」
ζ(゚- ゚*ζ「あ、あるっ!」
- 178 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:40:11 ID:u8k8Zb0w0
川*` ゥ´)(だいぶ使ったな、あと一回か二回……さっきより強くすりゃ一回か)
ζ(゚- ゚*ζ「……あるけど、へんなかんじする……」
川*` ゥ´)「だろうな、倒れんなよ」
ζ(゚- ゚*ζ「あいっ……!」
叩き付けた白い呪いの霧が晴れ、飲み込まれていた何かが再び姿を現す。
それと同時に振り抜かれる尾のような物が、勢い良くあたしの足元を抉った。
深く抉られた地面と蠢きのたうつ何か。
黒い影のようだったその姿と、そいつが出した攻撃の強さに血の気が引く。
獲物が相手だと、こんな攻撃すんのかよ。
さっきまではお遊びだったってか。
あいつの標的はあたし、獲物はあたし。
真っ直ぐに向けられた殺意と相手のビジュアルに、背筋が凍る。
- 179 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:40:44 ID:u8k8Zb0w0
未だ人としての姿を保つそれが、崩壊しては再生を繰り返して震えている。
振り抜いた何かは尾ではなく、崩れては直る奇形の腕。
爛れたぐずぐずの皮膚と崩れて元の形を無くした顔。
ぼろぼろと壊れてじゅるじゅると戻る身体は恐らく成人男性くらいか。
再生してすぐは人の姿に等しい。
その姿を見たガキが、びくりと肩を揺らしてあたしの後ろに隠れた。
川*` ゥ´)「おーおーそうやって隠れてろ」
ζ(゚- | 「……あのかおしってる」
川*` ゥ´)「あ? 顔?」
ζ(゚- | 「…………」
川*` ゥ´)「……知り合いかこいつ」
ζ(゚- | 「…………ぱぱとままころした」
川*` ゥ´)「あ゙?」
ζ(゚- | 「デレもっていった……」
川*` ゥ´)「奴隷商……でなく、狩人の方か。 …………はーん、呪われた理由も察するな」
ζ(゚- | 「…………まじょさん、デレまりょくぜんぶあげる、……たおして」
川*` ゥ´)「……言われんでもやったらぁ!!」
- 180 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:41:11 ID:u8k8Zb0w0
珍しく嫌悪感をあらわにした顔で、再び飛び掛かるガキ。
だが魔力の消耗もあってか、さっきよりも動きはやや鈍い。
しかし闇は払えて良かったな、すっかり日が落ちて辺りは真っ暗だ。
深い森の奥、余計に暗く重い。
再び杖の先に魔力を集める。
ばさばさと服や髪が、巻き上がる風に靡く。
輝く魔力球の光を浴びながら、更に力を溜めて、吸い上げて、溜めて。
吸い上げる。
ガキの顔に疲れがにじむ。
まだ吸い上げる。
攻撃を避け損ねて転ぶ。
まだまだ、もっともっと。
あたしに向けられるべき敵意を受けながら、ガキは吼える。
あたしの魔力もほとんど使って、まじない言葉を練り込んで。
それでもまだ足りない、もっともっと力が必要だ。
魔力で捩じ伏せるには、まだ足りない。
- 181 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:42:04 ID:u8k8Zb0w0
魔力を吸われ過ぎたガキの動きが止まる。
浅い息をしながら元狩人睨み付けている。
ああくそ、魔女の血がもっと濃ければ、もっと素質があれば、もっともっと。
本家の魔女なら、こんなやつ。
魔女の血が足りない。
足りない足りない。
あたしの血は薄いんだ、持たざる者なんだ、素質が無い才能も無い何も無い。
何もなくても何かしたいんだ。
何かを成し遂げたいんだよ。
ああ足りない。
何かが足りない。
大切なものが、足りない。
神でも何でも良いから。
あたしにひとつ与えやがれよ。
- 182 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:42:38 ID:u8k8Zb0w0
ζ( - ;*ζ「……っまじょさ……」
川*` ゥ´)「黙ってろ」
ζ( - ;*ζ「デレへん……さっき、ふつう……いま、たてな……」
川*` ゥ´)「黙ってろッ!」
ζ( - ;*ζ「デレ……まだ、まりょく、ある……つかう……」
川#` ゥ´)「ほとんど使いきってんだよ!! なのにまだ足りないんだよ!!」
ζ( - ;*ζ「まりょく、たりる、ない……? もっと……」
川#` ゥ´)「違う魔力じゃねぇよ!! 血が!! 魔女の血が足りねぇの!!
小手先じゃ駄目なんだよ!! もっと、もっと強い血が無いと……ッやっぱあたしじゃ!!」
ζ( - ;*ζ「ち……まじょ、の……ち……?」
川#` ゥ´)「そうだよ魔女の血だよ!! あたしは分家のみそっかすなんだよ!!」
ζ( - ;*ζ「ち……まじょ…………っ!! まじょさんっ!!」
川#` ゥ´)「なんっ……!? 何だよ、これ……瓶に、血……?」
ζ( - ;*ζ「つかって……っ!!」
川#` ゥ´)「…………ああもう!! 使ったらぁ!!」
- 183 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:44:21 ID:u8k8Zb0w0
弱々しい力で投げられた小瓶を受け取り、栓を噛んで抜く。
ぽん、と小気味良い音を立てて開いた瓶から溢れ出す血の臭い。
しかしこの血の臭いは、そこらに飛び散るものとは違った。
濃く、甘く、深く、芳しく。
これは、
川*` ゥ´)(魔女の、血?)
濃く、近く、深く、強い。
川*` ゥ´)「はっ、はは、マジかよ」
川*` ゥ´)「すっげーなガキぃ!! これ本家の魔女の血かよぉ!!」
ζ(゚- ゚;*ζ「えっ」 。o(イケメーーー v川 ゚ -゚)v ーーーン!!!)
- 184 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:45:18 ID:u8k8Zb0w0
ぶわりと瓶からうねりいずる血を魔力球に練り込ませると、白かったそれは真っ赤に染まる。
そして先程よりも激しく強く脈動し、見てわかる程に力を増して行く。
目の前に蓄えられた力の塊は、魔族の力と魔女の血の融合体。
見た事も無い輝きを放つそれは、過去に出会った幼い魔女を彷彿とさせる程に蠱惑的だった。
あたしがこれを作り上げた。
あたしが二つの力を混ぜ合わせて作り上げたんだ。
ああ、あたし。
ひとつだけ、持っていた。
川#` ゥ´)「行くぞクソったれがぁああああ!!!」
ζ( - ;*ζ「まじょさんっ……やってぇえ!!」
あたし、運だけは持って生まれたんだ────。
- 185 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:45:56 ID:u8k8Zb0w0
視界が真っ赤な光に染まる。
呪われた狩人が消し飛ぶのが見える。
先にあった呪いが中和されて消える。
森を包んでいた気味の悪い気配が消える。
本家のどの魔女か知らないが。
そいつの血は一級品だった。
だがあれは、
あたしが作り上げたもの。
あたしが居たから出来たこと。
あたしが居なければなし得なかったこと。
あたしだけが、あたしだから、あたしこそが。
勝ったんだ。
川*` ゥ´)「は……はは、あははははっ!! あーはははははっ!!!」
ζ(゚- ゚*ζ「ぅ……くらくら、すう……」
川*` ゥ´)「ざーまーあーみーやーがーれーーーーーー!!!!」
ζ(゚ー゚*ζ「…………!!」
- 186 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:47:09 ID:u8k8Zb0w0
本家の血を使ったとしても勝ったのはあたし、使えたのはあたし、あたしが勝った!!
卑怯な手だろうが人の力だろうが利用して活用して勝ったのはあたしだ!!
素質が足りない、血が足りない、力も何もかも足りなくたって、努力で補えなくたって!!
持たざる者だとしても、格上に勝つ事は出来るんだ!!
川*` ゥ´)「あ゙ー!!! 気持ち良いーーーーーー!!!!」
ζ(゚ー゚*ζ「まじょさ、かった?」
川*` ゥ´)「勝った!!!!」
ζ(>ー<*ζ「…………!!!!」
呪われた狩人が呪いごと完全に消滅したのを確認してから、あたしは大の字に寝転がる。
とっぷり夜の帳が降りた空を見上げて、勝利の余韻に吼えていた。
よたよたと近付いてきたガキがあたしの腹をぺちぺちと叩きながら、嬉しそうに笑う。
こいつもまた、己の無力さが辛かったんだろう。
力を持つ者として生まれても、使い方を知らなければ無力なんだ。
- 187 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:47:51 ID:u8k8Zb0w0
何も出来ないと思ってた。
ずっと何もなしえず朽ちると思ってた。
努力でどうにかなるものじゃないと思ってた。
この無力な手に何が出来るのかと歯噛みしていた。
でもあたし達は勝てた。
勝てたよ畜生。
何も出来ないチビガキは大事な物を持っていた。
生まれて数年でもろくに使っていなかった魔力は相当量溜まっていた。
こいつが居なければ何も出来なかった。
あたしが居なければ何も出来なかった。
勝利って最高だな。
ああ、あの血はどうしたのか聞かないと。
いやどうでも良いか、血だけって事はここに来られない存在だ。
そんなやつ本家の魔女だとしても格下だ、もしかしたら魔女でも無いのかも知れねぇ。
そんな奴、どうだって良いや。
- 188 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:48:48 ID:u8k8Zb0w0
勝利の余韻に浸りつつ、身を起こしてガキとガキの外套を箒に乗せる。
そして来た時とはうってかわって、のんびり飛行で森を戻る。
ガキはかすり傷だが傷だらけだ。
魔力を吸い尽くされてぐったりしている。
あたしは魔力の波動のせいで髪も服もぼろぼろ。
手や頬も軽く裂けてるし、擦り傷だらけ。
お互いちょっとしたぼろ雑巾だが、それでも気持ちは軽やかだ。
もう呪いの元凶は潰したし、ゴリラの方もどうにかなったと祈ろう。
そう考えるとまだ解決はしてねーか、いやでも今は浸りたい。
のんびり村まで戻ってみると、広場には鎧をがっちり着込んだ騎士どもがうじゃうじゃ。
あれは正規の騎士か、めんどくさそうだし迂回すっかな。
どうやら暴動の鎮圧をしたらしい、ご苦労なこって。
まあ原因が後ろで慌ててフード被ってんだけど。
- 189 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:49:10 ID:u8k8Zb0w0
そういやあのメス騎士は。
ミセ*゚ー゚)リ「!! ヒールちゃん! デレちゃん!!」
騎士隊長の前で正座してるわ。
ミセ*゚ー゚)リ「どうだった!? 大丈夫だった!?」
川*` ゥ´)「お前は何で正座してんの」
ミセ*゚ー゚)リ「あっうん……うん……懲戒物の行いで……説教を……」
川*` ゥ´)「ふーんあっそ」
ミセ*゚ー゚)リ「軽いな! 良いけど!! それより怪我してない? こっちおいで」
川*` ゥ´)づ「ドレイン」ポワァ
ミセ*゚ー゚)リ「待って待って待って待って吸わないで」
- 190 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:49:54 ID:u8k8Zb0w0
川*` ゥ´)「森、綺麗になったろ」
ミセ*゚ー゚)リ「……うん、白い光のあと、すごく大きい赤い光がここまで届いた」
川*` ゥ´)「ぶっ潰してやった、なぁガキ」
ζ(゚ー゚*ζ「あいっ!」
ミセ*゚ー゚)リ「…………よかったぁ」
川*` ゥ´)「ふっふーん」
ミセ*゚ー゚)リ「……わたしも、何か出来たら良かったんだけどな」
川*` ゥ´)「お前が色々やんなきゃみんな死んでたんじゃね?」
ミセ*゚ー゚)リ「それもそうか」
川*` ゥ´)「さて、ゴリラとクソイケんとこまで送れや、あたしの強さ語り尽くすから」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、無理。 今しがた残り少ない魔力を吸われました」
川*` ゥ´)
ミセ*゚ー゚)リ
川*` ゥ´)「やくたたず……」
_,,
ミセ;゚Д゚)リ「ひどくね!?」
- 191 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:50:29 ID:u8k8Zb0w0
川*` ゥ´)「ま、いっか……今吸った分で多少飛べるし」
ミセ*゚ー゚)リ「行き先わかる? 地図いる?」
川*` ゥ´)「おー描け描け、とっとと描け」
ミセ*゚ー゚)リ「なんで隊長ちょっと席を外しあぁーボールペンとコピー用紙あぁーありがとうございますー」
川*` ゥ´)「便利だよなボールペン」
ミセ;゚〜゚)リφカリカリ「羊皮紙とインクとかのが雰囲気出るけどね……」
川*` ゥ´)「未だに術式は羊皮紙とかだなぁ……」
ミセ*゚ー゚)リつ「はいどーぞ、デレちゃんが入った事あるなら一緒に行けば大丈夫だと思う」
川*` ゥ´)「何だよ迷いの魔法でもかけてんのか」
ミセ*゚ー゚)リ「身内と佐川とクロネコ以外は入れないらしいよ」
川*` ゥ´)「通販すんなや」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあミセリまだ処分あるから、行ってらっしゃい!」
川*` ゥ´)「へーへー行ってきますよ」
ζ(゚ー゚*ζ「いてきます!」
- 192 名無しさん[sage] 2017/02/26(日) 21:51:11 ID:u8k8Zb0w0
ざっくりした地図を見ながら箒の高度をぐっと上げ、夜の空を進んで一番の目印である王城を目指す。
夜空には何の隔たりもなく、すべてを溶かすように広がっている。
後ろに乗るガキが落ちないか心配だったが、興奮覚めやらぬと言った感じで頻繁に話しかける。
あたしはそれに適当に返しつつ、魔力の量を調節しながら飛んでいた。
ああ、疲れた。
でも楽しかった。
こんなに満ち足りた事は無い。
あとは、ゴリラとクソイケの様子を見たら終わりだ。
きっと今ごろ傷も閉じて、ぴんぴんしてるに違いない。
星の瞬く夜の闇。
滑るように飛んでいた。
勝利の喜びと興奮を、充実感を胸に抱き。
あの二人に今、何が起きているかも知らずに。
つづく。