- 375 ◆tYDPzDQgtA 2017/03/12(日) 21:01:37 ID:r9MVqSJQ0
朝。
窓から差し込む朝日に起こされて、あたしは眠い目を擦りながら身を起こす。
目覚ましが鳴る10分前、今日は出掛けるからか早くに起きた。
大きくあくびをしながら寝癖のついた髪をがしがし掻いて、取り敢えずと台所へ。
干しておいた薬草も乾いてるな、後で瓶に詰めよう、本も片付けねーとな。
何食うかな、朝だから軽め、いや腹減ってるな。
食パンとチーズ、腸詰めもある、切って火を通した状態で冷蔵した野菜もある。
二枚の食パンを出してまな板に置き、冷蔵庫からケチャップを出す。
食パン二枚に塗り付けて、上から砂糖を少し。
使いさしの野菜やチーズ、腸詰めをケチャップと入れ違いに出して、まな板にぽい。
腸詰め二本を薄切りにしてケチャップを塗ったパンにぽい。
その上からピーマンと玉ねぎをぽい。
さらにその上からシュレッドシーズをぽいぽい。
そしてオーブントースターにぽい。
ケトルに水入れてコンロにぽい。
野菜に火入れて置いとくのはやっぱ便利だな。
今度ミートソースも作り置きしとくか。
- 376 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:02:21 ID:r9MVqSJQ0
と、今のうちに顔洗って歯磨いて、出来れば髪もどうにかしたい。
まあ髪は間に合わなかったから適当に縛って後回し。
ちん、と言う軽快な音と漂う香ばしい匂い。
皿にトーストを出して再びまな板、食べやすく六等分して皿にぽい。 ちょっと焦げたか。
マグカップに砂糖一山とティーバッグ、沸いたお湯を適当に注いでトーストと共に机へ移動。
本やら何やらを端に押しやって、椅子に座って手を合わせる。
川*` ゥ´)「いたーきやーす」
ざくざく。
うん、もぐもぐ。
やっぱ甘いめが良いなピザトーストもどきは。
野菜甘い。
うまい。
もぐもぐ。
お茶は、くそ熱いな。
ずずず。
ざくざく。
あー。
- 377 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:02:55 ID:r9MVqSJQ0
今日は遠出だからな、スカートとか久々に穿くわ。
つかドレスやだなーめんどくせぇ、似合わねーしなぁ。
花買ってくかなぁ。
礼儀も知らんと思われんのはシャクだしなぁ。
八時半に出れば寄れるだろう。
あーパンうめぇ。
甘い。
街の方行くんだし買い出しも兼ねるか。
ここあんまり物が来ないからなぁ、取り寄せるにも時間かかるし。
晩飯どうすっかなー。
キャベツ半玉とベーコンと卵があんな。
うーん、まぁ適当にオムレツとかで良いか。
あ、ここ焦げてて苦い。
お茶冷めてきたな、のみごろだ。
あー解呪の研究レポートまとめないとな。
本にして置いとかないとわけわかんなくなるわ。
ざくざくもぐもぐ。
ごくごく。
川*` ゥ´)「ごっそさん」
- 378 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:05:04 ID:r9MVqSJQ0
食器を洗って水切りに置いたら、今度はあたしの見た目作らないとな。
用意しておいた魔女のドレスと帽子、あーやだやだ真っ黒。 でもやっぱ魔女はこうだよなぁ。
あたしも悪い魔女目指すならこう言う方が良いんかね。
やーだな動きにくい、たまになら良いけど普段は実用性重視だよなぁ。
寝巻きを脱ぎ捨てて肌着を正装用に交換したらドレスを纏う。
髪を整えていつもとは違う帽子をかぶり、手荷物の確認。
必要な物は前日に用意しておいたから、うん、大丈夫だな。
じゃあ小さい方の杖を腰ベルトから下げて、よし。
8時の、20分。
ちょっと早いけどまぁ良いや、もう出よ。
玄関のドアを開けて、立て掛けてある箒を掴む。
施錠をしたのを確認したら、箒に腰掛けて空を飛んだ。
【道のようです】
【番外編 あたしはお前らとは違う。】
一応座る部分作っちゃいるけどやっぱケツ痛いよなこれ。
改良すっかー。
- 379 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:05:34 ID:r9MVqSJQ0
ミセ*゚ー゚)リ「おーい、ヒールちゃーん」
川*` ゥ´)「んっだよ朝っぱらから」スィー
ミセ*゚ー゚)リ「文句言いつつ降りてきてくれるのね……これ、こないだのお礼」
川*` ゥ´)「こないだ?」
ミセ*゚ー゚)リ「穿った穴埋めるの手伝ってくれたでしょ? そのお礼」
川*` ゥ´)「あたしが落ちそうでムカついただけだけどな、何だこれ」
ミセ*゚ー゚)リ「ニシンのパイ」
川*` ゥ´)「お前な」
ミセ*゚ー゚)リ「いや……魔女だし……つい……今日は魔女っぽい格好だし……」
川*` ゥ´)「礼装だっつの……まあ向こうで食うわ……」
ミセ*゚ー゚)リ「お出掛け?」
川*` ゥ´)「法事」
ミセ*゚ー゚)リ「あー、気を付けて行ってきてね」
川*` ゥ´)「へーへー、じゃあな」
ミセ*゚ー゚)リ「行ってらっしゃーい」
- 380 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:05:57 ID:r9MVqSJQ0
受け取ったパイを箒からぶら下げて再び空へ。
花を買うなら向こうの町だな、思ったより手土産が増えやがった。
この重さだと向こうで昼飯に食っても余るな。
持って帰って晩飯にしよう、はからずも飯が出来た。
あとはスープと何かを作って。
本片さず来たな、帰ったら雪崩うってそう。
折角本家の屋敷に行くんだし、呪いの研究レポとかあったら読みたいな。
たんまり蔵書あるだろうし、勉強させて貰いますかね。
あー空気が緩んできたな。
冷たい風が暖かい風になった。
もう春か、山間だからなぁこの辺。
森の方で色々薬の材料が採れるようになるし、しばらくは家から離れず。
いやとっととあの馬鹿共倒さないと。
ヒール様の名声はぐんぐん伸ばすべき。
- 381 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:06:25 ID:r9MVqSJQ0
ん、町が見えてきたな。
高度を下げて、と。
魔女の屋敷がある町だし、偏見とか差別が薄いのは良いとこだよな。
まあ故郷なんだけど。
川*` ゥ´)「墓に供える花を適当に」
(*゚ー゚)「はいはい、今日はよく売れるわー」
川*` ゥ´)「大儲けだな、あーその紫の入れて」
(*゚ー゚)「一本で良いの?」
川*` ゥ´)「良いよ、いくら?」
(*゚ー゚)「銀貨一枚と銅貨二枚、ねぇヒールちゃん」
川*` ゥ´)「んー?」
(*゚ー゚)「ここにはもう帰って来ないの? お家も直ってるよ」
川*` ゥ´)「貸し家にしてあるし、あたしの家族もう居ねぇしここ」
(*゚ー゚)「そうだけど……」
- 382 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:06:49 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「花屋の姉ちゃんは疎開してたんだっけ」
(*゚ー゚)「うん」
川*` ゥ´)「元気で良かった」
(*゚ー゚)「ヒールちゃんも」
川*` ゥ´)「あたし今さ、独り暮らししてんの、めっちゃ悠々自適で」
(*゚ー゚)「うん」
川*` ゥ´)「楽しいし、うるさいのも村に来たから寂しくねーの」
(*゚ー゚)「うん」
川*` ゥ´)「今はやる事も多いし、忙しいからここに引っ越す気はないよ」
(*゚ー゚)「……ヒールちゃん、何か生き生きしてる」
川*` ゥ´)「充実してっからな」
(*゚ー゚)「彼氏は?」
川#` ゥ´)「居ねぇよ」
- 383 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:07:15 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「姉ちゃん結婚したんだろ、おめでと」
(*゚ー゚)「当日に花届けてくれたじゃない」
川*` ゥ´)「まーな、じゃあそろそろ行くわ」
(*゚ー゚)「うん、また顔見せてね」
川*` ゥ´)「へーへー」
花束の入った袋をパイと同じように箒から下げて、丘の上の屋敷を目指す。
良く知る筈の故郷は、しばらく来ない間に様変わりしている。
一度焼き潰されたこの町は、とある英雄によって元の姿を取り戻した。
でも戻ったのは町だけで、人は戻らない。
戻る人がこの世にいなけりゃどうしようもない。
だからここには、他所から避難してきた人間や追いやられた魔族、果ては亜人までも居る。
最初こそひどい有り様だったらしいが、本家の魔女共が戻ってからはここをまとめてる。
やっぱ発言力の強さが違うよなぁ。
- 384 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:07:58 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「よっと」
(*゚ー゚)「ヒール様ですね?」
川*` ゥ´)「おう、入れろ」
(*゚ー゚)「お待ちしておりました、どうぞ」
川*` ゥ´)(この侍従、花屋の姉ちゃんに似てるよな……)
本家の屋敷に降り立ち、広間へと通される。
侍従に花を渡すと、後は時間に余裕はあるから自由行動だな。
図書館図書館。
確かあっちの方にあった筈。
川*` ゥ´)(呪いについての本と、魔力増幅方法と……あとは血についての……)
川*` ゥ´)(本家の図書館ならたぶんあるだろ……いくつか勝手に持って帰って……)
どん。
- 385 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:08:38 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「わぷ」
( ΦωΦ)「おお、すまん、前を良く見ていなかった」
川*` ゥ´)「あーいやこっちこそ、悪いな」
うっかり誰かにぶつかった。
顔を見て謝ろうとしたら顔の位置がだいぶ上にある。 でっか。
くすんだ長い金髪を後ろに流して、黒いリボンでひとつにまとめてある。
厳めしい顔立ちで両目には傷、立派な体躯で身の丈はゆうに2mを越えてるな。
着てるのは、騎士用の礼装か軍服だな。
金の飾りこそ外してるが、作りの良さがよく分かる。
つっかこのオッサン。
川*` ゥ´)「英雄じゃん」
( ΦωΦ)「ん? ああ、そう呼ばれてはいるが」
川*` ゥ´)「ここ守れなかったオッサンだろ」
( ΦωΦ)「急に古傷を抉るなあこの魔女」
- 386 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:09:16 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「オッサン何してんの、観光?」
( ΦωΦ)「いやいや、法事法事」
川*` ゥ´)「あーオッサンの嫁だもんな」
( ΦωΦ)「許嫁な」
川*` ゥ´)「年の差ヤバいやつだろ」
( ΦωΦ)「26歳な」
川*` ゥ´)「ペッド」
( ΦωΦ)「家同士が勝手に決めた事だから我輩にはどうする事もなあ」
川*` ゥ´)「生まれたばかりの許嫁抱っこしたんだっけ」
( ΦωΦ)「そうそう、こんな小さくてな」
川*` ゥ´)「オッサンが持ったら何でも小さくね?」
( ΦωΦ)「うんまあ」
- 387 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:09:52 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「それより、あちらに何か用があったのでは」
川*` ゥ´)「ああそうそう、図書館に」
( ΦωΦ)ギュルー
川*` ゥ´)
( ΦωΦ)
川*` ゥ´)「ニシンのパイ食う?」
( ΦωΦ)「あたしこれ嫌いなのよね?」
川*` ゥ´)「食うのか食わんのか」
( ΦωΦ)「食います」
川*` ゥ´)「英雄って基本ノリかっるいな」
( ΦωΦ)「我輩だけでは」
川*` ゥ´)「細長いオッサンも相当だったわ」
( ΦωΦ)「あードクオにも会ったのか、健在であったか?」
川*` ゥ´)「細長かった」
( ΦωΦ)「変わらんなあ」
- 388 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:10:14 ID:r9MVqSJQ0
テラスの椅子に座り、小さなテーブルにパイの籠を置く。
オッサンが座るとえらく椅子とテーブルが小さく見えるな。
籠の蓋を開けて中を覗くと、そこには小綺麗なパイ。
ちゃんと食べやすいサイズに切り分けられていた。
中に入っていたナプキンに一切れ乗せて、オッサンに差し出す。
受け取る手もやっぱりでかいから、何もかもが小さく見えるわ。
お茶でもあれば良いけどさすがに持ってねぇな。
どこ行きゃあるんだか。
( ΦωΦ)「しかし、頂いても良いのか? 魔女の子よ」
川*` ゥ´)「良いよ別に、あとヒール様な」
( ΦωΦ)「ヒールか、良い名だ」
川*` ゥ´)「はーん?」
( )ΦωΦ))「美味いな」モシャモシャ
川*` ゥ´)「さよか」
( ΦωΦ)「しかし、ニシンのパイと聞いたが」
川*` ゥ´)「人の指でも入ってたか?」
( ΦωΦ)「いや果物、止めないか赤いのがそれっぽく見えるから」
川*` ゥ´)「甘い系かよあの馬鹿騎士……」
- 389 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:10:53 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「うん、美味い」
川*` ゥ´)「へーへー」
( ΦωΦ)「すまんな恵んで貰って、緊張して朝食を食いっぱぐれてな」
川*` ゥ´)「オッサンでも緊張すんのか」
( ΦωΦ)「するさ、英雄と呼ばれようが、我輩はこの町を守れなんだのだから」
川*` ゥ´)「まぁそうだな」
( ΦωΦ)「容赦の無い一言」
川*` ゥ´)「でも今まで見なかったぞオッサン、サボってたのかよ」
( ΦωΦ)「やー……来づらくて断っていたのだが、強く言われてしまってな……」
川*` ゥ´)「許嫁の法事断ってたのかよ」
( ΦωΦ)「家で喪に服してはいたのだがな」
- 390 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:11:17 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「……つーかさ、オッサンの許嫁って直系だろ」
( ΦωΦ)「うむ」
川*` ゥ´)「稀代の魔女だぞ、すっげー奴なんだぞ」
( ΦωΦ)「うむ」
川*` ゥ´)「何で外の人間と結婚すんの?」
( ΦωΦ)「利権とか権力とか色々絡むぞその話題は」
川*` ゥ´)「あー」
( ΦωΦ)「まず我輩の婚約が決まった時、まだ我輩も子供の頃だった
その時くらいに丁度そちらの当主の代替わりの時期に入っていてな」
川*` ゥ´)「あーはいはいはい、めんどくせーやつな」
( ΦωΦ)「ま、色々あるものよ、ミュスクル家は貴族としてはそれなりの地位であるからな」
川*` ゥ´)「お互いにメリットがあったんだろうな」
( ΦωΦ)「うむ、……しかし我輩が知る中では、もう一人本家の魔女が居るのだがな」
川*` ゥ´)「んあ?」
- 391 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:11:47 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「シュー程では無いのかも知れんが、なかなか高名な魔女だったらしい」
川*` ゥ´)「誰それ」
( ΦωΦ)「名前は何と言ったか、ふむ…………まあ良い、それよりだ
その魔女は、利権だの権力だのを捨てて、田舎貴族の嫁になった」
川*` ゥ´)「……場所によっちゃまだ魔女は気味悪がられるもんだぞ?」
( ΦωΦ)「うむ、大反対であった」
川*` ゥ´)「だろうよ、どうなったんそれ」
( ΦωΦ)「まず田舎貴族の長男が魔女に一目惚れ」
川*` ゥ´)「駄目なパターンだな?」
( ΦωΦ)「彼女を振り向かせる手伝いをしてくれと我々に依頼」
川*` ゥ´)「冒険者だったのオッサン」
( ΦωΦ)「そして試行錯誤の末に両思い、後にゴールイン」
川*` ゥ´)「後が大変だぞそれ」
( ΦωΦ)「大変だっただろうなあと思う」
川*` ゥ´)「無責任か」
- 392 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:12:23 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「そうは言っても我輩達がまだ子供の頃ゆえな」
川*` ゥ´)「そうだ、冒険者だったのオッサン」
( ΦωΦ)「うむ、結構色々やらかしたものだ」
川*` ゥ´)「やらかすなや」
( ΦωΦ)「当時はまだ財布を持った事が無くてな」
川*` ゥ´)「ボンボンか」
( ΦωΦ)「買い物失敗しまくってドクオに毎日の様に怒られた」
川*` ゥ´)「英雄と英雄が組んでたのかよ……」
( ΦωΦ)「あと二人居たぞ、僧侶と盗賊」
川*` ゥ´)「僧侶」
( ΦωΦ)「クックル・ナハティガル」
川*` ゥ´)「馬鹿騎士の師匠だ……」
( ΦωΦ)「緑の髪のか?」
川*` ゥ´)「おう」
- 393 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:13:13 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「最初は我輩の元に弟子入り予定だったのだが、クックルが弟子入りを了承してな」
川*` ゥ´)「んであの筋肉馬鹿に……」
( ΦωΦ)「変わらんなあ」
川*` ゥ´)「オッサンは弟子は?」
( ΦωΦ)「ツンの事か?」
川*` ゥ´)
( ΦωΦ)
川*` ゥ´)「あー……」
( ΦωΦ)「何だ全てを把握した様な顔で」
川*` ゥ´)「なんかそんな話を聞いた気がせんでもなかったけど納得したわ、そういや英雄の弟子だったわ」
( ΦωΦ)「忘れられとったか」
川*` ゥ´)「忘れるわそんなもん」
( ΦωΦ)「パイもう一切れほしい」
川*` ゥ´)「食って良いからお茶持ってこい」
(ΦωΦ ),,「パシられてしもうた」
- 394 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:14:02 ID:r9MVqSJQ0
あーそうかそうか、あのゴリラ英雄の弟子つってたわ。
んで緑の馬鹿も英雄の弟子だ、こないだ茶あしばいた時に聞いたわ。
この国には英雄が四人居て、その内の一人がこないだ塔で会った細長いオッサン。
ドクオ・ソリテール、魔を統べる者と呼ばれる戦争を終わらせた偉大な大魔導師。
まあ見た目は細長いだけのオッサンだな。
もう一人が今しがたパイ貪ってたオッサン。
百戦錬磨の覇王と呼ばれた戦士、ロマネスク・ミュスクル。
でかくて顔の怖いオッサンだ。
もう一人は慈悲深き拳帝と呼ばれた元僧侶のクックル・ナハティガル、緑の師匠。
見た事は無いけど今は隠居して店やってんだよな、たぶんごっついオッサンだろう。
実はもう一人は知らん。
月夜を駆ける闇と呼ばれる大盗賊ってのは知ってんだけど、その詳細は公にされていない。
たぶんオッサンなんだろうな。。
この四大英雄は、唯一アダマンタイトのバッジを与えられた存在だ。
教科書にも載るし記念碑もある、普通にすげーんだけど実際はただのオッサンなんだよなぁ。
まあ知ってるってだけであんま興味ないんだけど。
あたしが気になるのは魔導師じゃなくて魔女だし、戦士とかになると倍どうでも良い。
つかあのオッサンどこまでお茶取りに行ったんだよ。
- 395 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:15:23 ID:r9MVqSJQ0
,,( ΦωΦ)「貰ってきたぞ」
川*` ゥ´)「ご苦労」
( ΦωΦ)「態度がでかいなあこの魔女」
川*` ゥ´)「ほらよ、パイ」
( )ΦωΦ))「おいしい」サクサク
川*` ゥ´)「そういや利権だので婚約決まったつってたじゃん」
( ΦωΦ)「うむ」
川*` ゥ´)「結婚するまでに結局30年くらいかかる羽目になってるけどそこは良かったのかよ」
( ΦωΦ)「なかなか生まれなかったんだよなあ」
川*` ゥ´)「ダメじゃね?」
( )ΦωΦ)「と言っても婚約破棄するのも双方印象が悪くなるのでな」サクサク
川*` ゥ´)「ガキの一生を道具に使っといて結局なあなあになってんのかよ、クソだな」
( ΦωΦ)「世の中そんなもんであるぞ」
川*` ゥ´)「分家だからわっかんね」
- 396 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:15:48 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「分家とは言うが、貴様はあのヒールであろうに」
川*` ゥ´)「んあ?」
( ΦωΦ)「そこらで話題になっとるぞ、分家の魔女が本家の呪いを潰したと」
川*` ゥ´)「はん、本家のクソ共の鼻をあかすにはまだ足りねぇよ」
( ΦωΦ)「ほう、名声はまだ足りんと」
川*` ゥ´)「まだ認められちゃいねーの、どうせまぐれ当たりだとか言ってんだろ」
( ΦωΦ)「ま、好意的な意見は少ないな、血の長い一族には仕方があるまい」
川*` ゥ´)「だからあたしは実力で魔女として本家を越えてやんだよ」
( ΦωΦ)「ふむ……立派ではあるが、可能か?」
川*` ゥ´)「可能か不可能かなんて関係ねぇんだよ、あたしはもう血の薄さを言い訳に使いたくねぇの」
( ΦωΦ)「…………若いとは良いものであるなあ」
川*` ゥ´)「はん、若造が生意気抜かすなってか?」
- 397 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:16:28 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「いやなに、良い良い、若さは今の貴様にとって一番の力となるさ」
川*` ゥ´)「本家の老害共を叩き潰すのは若い力だよ」
( ΦωΦ)「そう、だからこそ貴様はもっと伸びるだろうさ、分家も本家も踏み越えてみせろ」
川*` ゥ´)「言われんでもそうするわ、アホか」
( ΦωΦ)「はは、良いな、実に良い、貴様は今幾つになる?」
川*` ゥ´)「じゅーなな」
( ΦωΦ)「我輩達が旅立った時と同じではないか、はは」
川*` ゥ´)「何十年前?」
( ΦωΦ)「えーと……3……いや2……24年前……? 我輩も年食うわけであるなぁ……」
川*` ゥ´)「オッサン41なん」
( ΦωΦ)「うむ」
川*` ゥ´)「…………オッサンさ」
( ΦωΦ)「ん?」
川*` ゥ´)「許嫁が五才で死んでんだろ」
( ΦωΦ)「うむ」
- 398 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:16:52 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「結婚は?」
( ΦωΦ)「やー、未婚のままであるなぁ」
川*` ゥ´)「女作ったり」
( ΦωΦ)「せんなぁ」
川*` ゥ´)
( ΦωΦ)
川*` ゥ´)「童t」
( ΦωΦ)「止せ」
川*` ゥ´)「えっ……オッサン……」
( ΦωΦ)「言うてしょうがなかろうよ……ほら……あるだろ……」
川*` ゥ´)「分かるけどオッサン……オッサン……」
( ΦωΦ)「しょうがなかろう……操を立てる感じでな……ほら……」
川*` ゥ´)「いや立派だとは思うけどな」
- 399 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:17:26 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「ま、戦士としては英雄と呼ばれようが、男としては半人前と言う事だな」
川*` ゥ´)「一生な」
( ΦωΦ)「まあな」
川*` ゥ´)「ま、いんじゃねどうでも」
( ΦωΦ)「さばさばしとるなあこの魔女」
川*` ゥ´)「でもオッサンの弟子もうちょいどうにかしろ」
( ΦωΦ)「ツンか?」
川*` ゥ´)「ゴリラだぞあいつ」
( ΦωΦ)「あーうん、まあ」
川*` ゥ´)「小さいゴリラだからな、もうちょい教育しとけ、頭とんでもなく悪いぞ」
( ΦωΦ)「うん、何かすまん」
- 400 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:17:55 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「だが、ライバルなのだろう?」
川*` ゥ´)「ライバルじゃなくて獲物だから」
( ΦωΦ)「はは、食うには少々手強いぞ」
川*` ゥ´)「オッサンの弟子、いつか叩き潰してやるよ」
( ΦωΦ)「気の強い娘ばかりが集まるものだ、実に愉快であるなぁ」
川*` ゥ´)「弟子がああなったのオッサンのせいだろ」
( ΦωΦ)
川*` ゥ´)「真面目に座学もさせろ、今は相方が居るから良いけど一人だと死ぬぞ」
( ΦωΦ)
川*` ゥ´)「あと人としてクソ弱なんだからオッサン師匠としてフォローしろや、放任やめろ」
( ΦωΦ)「ヒールよ」
川*` ゥ´)「あ?」
( ΦωΦ)「貴様ツンの事大好きだな」
川*` ゥ´)「調子乗んな」
- 401 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:18:37 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「分かってんのかオッサンお前は今師匠としてのあり方に文句言われてんだぞ」
( ΦωΦ)「はい」
川*` ゥ´)「17の小娘に言われて恥ずかしくねぇのかオッサン良いかオッサンがちゃんとしつけねぇから」
( ΦωΦ)(めっちゃ心配しとるな)
( ΦωΦ)(ツンも良い友人を持ったものだ)
( ΦωΦ)(あいつは生真面目ではあるが人として未熟すぎた)
( ΦωΦ)(それを補うためにと旅に出したが、少し早かったな)
( ΦωΦ)(だがその結果、良いものと巡り会えたのは幸いか)
( ΦωΦ)(しかしこの魔女、微塵も照れんとは……ハート強いな……)
川*` ゥ´)「分かったかオッサン」
( ΦωΦ)「パイがおいしい」サクサク
川#` ゥ´)「ギィィーッ!!」
- 402 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:19:00 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「しかし魔女よ」
川#` ゥ´)「あ゙ぁ?」
( ΦωΦ)「式典もう始まっとるぞ」
川*` ゥ´)「オッサンこそ良いのかよ」
( ΦωΦ)「我輩も式典とか苦手でな、来いとは言われたが出ろとは言われてない」
川*` ゥ´)
( ΦωΦ)
川*` ゥ´)「茶あ飲んだら図書館行くか」
( ΦωΦ)「付き合うか」
川*` ゥ´)「要らねぇよ目立つよ身の丈(物理)考えろよ」
( ΦωΦ)「2.5m」
川*` ゥ´)「でっっっかバケモンか」
( ΦωΦ)「すくすく育った」
川*` ゥ´)「育ち過ぎだろ」
- 403 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:20:00 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「つか暇かよオッサン、許嫁の法事だぞ」
( ΦωΦ)「墓にも何処にもシューはもう居らん、手を合わせた所で生者の自己満足よ」
川*` ゥ´)「じゃあどこに居んだろな」
( ΦωΦ)「生者には死者の事など解らん物よ、屍術師にでもならねばな」
川*` ゥ´)「ネクロマンサーめっちゃキモがられるよな」
( ΦωΦ)「らしいなあ、ドクオがついでに覚えようとしとったわ」
川*` ゥ´)「キッモキッモ」
( ΦωΦ)「あんまりであるなあ魔女よ」
川*` ゥ´)「死んだ奴なんかどうしようもないのにな」
( ΦωΦ)「……そうだな」
川*` ゥ´)「たまに悪霊になって顕現する事もあるけど、死んだら死にっぱなしが普通だ」
( ΦωΦ)「うむ」
川*` ゥ´)「……じゃあ、魂って結局何なんだろな」
( ΦωΦ)「死にまつわる便宜上の通称であるな」
川*` ゥ´)「…………」
- 404 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:20:59 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「まあ若者よ、存分に悩め」
川*` ゥ´)「うっざ」
( ΦωΦ)「人は死をそう容易く乗り越えられはしない、死の恐怖と誘惑に日々嘆くものだ」
川*` ゥ´)「……オッサンは、許嫁の死は乗り越えたのか?」
( ΦωΦ)「はは、そう見えたか」
川*` ゥ´)「…………」
( ΦωΦ)「たったの5年、片手に収まる時しか生きられなかった幼い娘の死は、余りにも重い」
川*` ゥ´)「……」
( ΦωΦ)「不思議な物だ、親子ほどの歳の差があれど、確かな恋慕は未だ胸に焦げ付き消えはせん」
川*` ゥ´)「それがさ」
( ΦωΦ)「む」
川*` ゥ´)「運命なんだろうな」
( ΦωΦ)「運命か、ならばこの運命とは、何と残酷な物なのだろうな」
川*` ゥ´)(あー)
川*` ゥ´)(英雄の顔じゃなくなった)
- 405 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:21:42 ID:r9MVqSJQ0
ふ、と影のさす横顔に、英雄としての堂々たる風格は無い。
恋人を亡くした、寂しい男の横顔だ。
あー嫌な事を聞いた、聞くべきじゃなかったな。
表情が大してかわんねぇから平気なのかと思ったら、全然だ。
親子ほどの歳の差。
幼子に対する恋慕。
それはきっとオッサンにとっても理解は出来ないんだろうな。
だから大人になるまで待ち続けようとしたんだろうな。
でもたったの5年で別れは訪れて。
オッサンの恋慕はどこにも行き場は無くなった。
死んで10年経った今も、このオッサンはあの稀代の魔女を愛してしまったまま。
成長を待てば緩やかな成就を得られただろうに。
己でも理解の及ばない感情は、きっと一生どこにも進みはしない。
永遠に、このオッサンは囚われてしまったんだろう。
英雄か。
皮肉なもんだな。
やっぱ一番苦しんでんじゃねぇか、このオッサン。
- 406 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:22:30 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「……はじめから、我輩は歪んでいたのだろうか」
川*` ゥ´)「んあ?」
( ΦωΦ)「あんな娘に恋情を抱くは、異常であろうよ」
川*` ゥ´)「そりゃ」
( ΦωΦ)「……この街も護れはせなんだ、我輩は何も成せては居ない」
川*` ゥ´)「違うと思うぞ」
( ΦωΦ)「む?」
川*` ゥ´)「オッサンは悪くねぇよ、たぶん、……きっと呪われただけだよ」
( ΦωΦ)「呪い、か……はは、言えてるな」
川*` ゥ´)「悪くねんだよ、きっと、本人が言ってたから」
( ΦωΦ)「む……?」
川*` ゥ´)「いとしいいとしい旦那様、旦那様は何も悪くないの、だからどうかしあわせに」
( ΦωΦ)「ッ」
川*` ゥ´)「あたしはあんたの許嫁に命を助けられた、きっと最後にあの人を見たのはあたしだ」
( ΦωΦ)「…………」
- 407 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:23:10 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「その時、伝えるよう言われた、遅くなったけど確かに伝えたかんな」
( ΦωΦ)「……有り難うよ、ヒール」
川*` ゥ´)「まあ10年くらい経ったけど」
( ΦωΦ)「また、長く寝かせた物だ」
川*` ゥ´)「……今なら良いかと思ったんだよ、ちっとだけ認められたから、……遅くなって悪かったな」
( ΦωΦ)「構わんさ、……感謝する、ヒールよ」
川*` ゥ´)「どーいたしまして」
( ΦωΦ)「しかし、……噂に聞いていたよりも、大人しいな貴様は」
川*` ゥ´)「あ? 噂?」
( ΦωΦ)「昔はもっと尖っていたとか」
川*` ゥ´)「オッサンの弟子のお陰であたしが落ち着く始末だよ」
( ΦωΦ)「あ、うん、すまん」
- 408 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:23:54 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「あたしはさ」
( ΦωΦ)「ん」
川*` ゥ´)「誰にも褒められた事なんて無かった」
( ΦωΦ)「…………」
川*` ゥ´)「腐ってもアンソルスラン、魔女になれて当然で、でも誰も期待してない
どんなに頑張ったって、褒めるどころか同輩共は「必死でみっともない」って言う」
( ΦωΦ)「……無駄な努力、とでも言いたげであるな」
川*` ゥ´)「本来は無駄な努力だからな、
あたしも、同輩共みたいになあなあで、やる気の無い魔女に落ち着くんだろうと思った」
( ΦωΦ)「ふむ」
川*` ゥ´)「でもあんたの許嫁が、あたしに道を示してくれたよ
血が薄ければ存在が落ちこぼれ、末っ子のみそっかす、出涸らしみたいなあたしにさ」
( ΦωΦ)「卑下ではなく、それが貴様に与えられた評価だったのだろうな」
川*` ゥ´)「……そんなあたしでも、偉大な魔女としての道を示してくれた、目指す理由をくれた」
( ΦωΦ)「…………」
- 409 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:24:30 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「あんたの許嫁は、あたしにとって神様みたいなもんだ」
( ΦωΦ)「大きすぎやしないか?」
川*` ゥ´)「だからこそ、あたしはあんたの許嫁を越えてみせる、偶像にしないためにも」
( +ω+)゙「…………応援しよう、魔女の子よ
……我輩の妻になる筈だったあの娘を、ただの一人の魔女として語るためにも」
川*` ゥ´)「……ま、あたしは顔は不味いから全部は越えらんねぇけど」
( ΦωΦ)「別段醜女と言うわけでもあるまいに」
川*` ゥ´)「ややブスって呼ばれてんだぞ」
( ΦωΦ)「態度や口が悪いからでは……」
川*` ゥ´)「うっせ」
( ΦωΦ)「APPとは顔の造形だけではなくその者の持つ雰囲気に大きく左右されると言う」
川*` ゥ´)「おい急にAPPとか言うな」
( ΦωΦ)「貴様も口を閉じてにっこり笑っていれば3くらい上がるだろう」
川*` ゥ´)「まじでそんなにか」
- 410 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:25:12 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)
川*` ゥ´)「オッサンの弟子はよ」
( ΦωΦ)「あいつ素の顔面の出来が良いだろうに」
川*` ゥ´)「結局顔なんだよなぁ」
( ΦωΦ)「顔が良くても野生児だとAPPは下がると言う見本であるな」
川*` ゥ´)「顔はイマイチでも態度が良ければ上がるってのと一緒か……」
( ΦωΦ)「上げるのか」
川*` ゥ´)「めんっどくっせぇからやんね」
( ΦωΦ)「言っちゃ何だがその方が合ってるな」
川*` ゥ´)「あのクソイケも15くらいあんだよな……」
( ΦωΦ)「あれなあ、外面と女受けは良いからなあ」
川*` ゥ´)「会ったん」
( ΦωΦ)「彼氏連れてきたかと思って絞め殺しかけたわ」
川*` ゥ´)「過保護か」
- 411 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:25:38 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「また女癖の悪そうなのを連れてきたと思ってなあ……」
川*` ゥ´)「実際悪いしな」
( ΦωΦ)「雇用主でホッとしたわ」
川*` ゥ´)「あいつら裸見せ合ってんぞ」
( ΦωΦ)「ほう」
( ΦωΦ)
( ΦωΦ)「んっ?」
川*` ゥ´)「裸」
( ΦωΦ)
川*` ゥ´)
( ΦωΦ)「まだ屋敷近くに居るはずだから締め上げるか」
川*` ゥ´)「落ち着けよ過保護」
- 412 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:26:23 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「いや仕方がなかろうよ、何し、何してんの本当に、我輩ちょっと意味が分からん」
川*` ゥ´)「おもしれー」
( ΦωΦ)「えっそう、えっ、そう言う関係?」
川*` ゥ´)「違うだろうな」
( ΦωΦ)「えっ……えっ?」
川*` ゥ´)「急に結婚しますって言ったらどうすんの」
( ΦωΦ)「さすがに反対するわ」
川*` ゥ´)「順当」
( ΦωΦ)「えー……待っ、えぇー……えー……?」
川*` ゥ´)「オッサン狼狽しすぎだろ」
( ΦωΦ)「狼狽もするわ……」
川*` ゥ´)「過保護ならもっと過保護らしくしろよな」
- 413 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:26:47 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「と言うかそれどこ情報だ」
川*` ゥ´)「チビ」
( ΦωΦ)「デレかー……」
川*` ゥ´)「……もっと構ってやれよ、弟子もガキも」
( ΦωΦ)「ん? ……構っているつもりだったのだがなぁ」
川*` ゥ´)「遠慮させんなよ、ガキは萎縮する一方だぞ」
( ΦωΦ)「肝に命じておこう」
川*` ゥ´)「……さて、そろそろ図書館行こ」
( ΦωΦ)「付き合」
川*` ゥ´)「わんでええ」
( ΦωΦ)「ならばこれでも渡しておこう」
川*` ゥ´)「んあ?」
- 414 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:27:26 ID:r9MVqSJQ0
( ΦωΦ)「名刺のようなものだ、困った事があれば使うが良い」
川*` ゥ´)「うわ直筆だ……家紋入ってる……こわ……」
( ΦωΦ)「ミュスクルの名はまだ使える、貴様の盾にも矛にもなろうよ、それとも要らぬお節介か?」
川*` ゥ´)「いや使える物は使うわ、使うのはあたしだからあたしの力だし」
( ΦωΦ)゙「その根性良いと思う」
川*` ゥ´)「切り札は使わないと紙屑だからな」
( ΦωΦ)「強かだなあ」
川*` ゥ´)「んじゃなオッサン、達者でな」
( ΦωΦ)「ああ、あとパイ全部食ったすまん」
川*` ゥ´)「忘れおいマジか全部食ったかおい」
( ΦωΦ)「美味しかった」
川*` ゥ´)「はー食いやがったこいつ……はー……オッサンマジか……」
( ΦωΦ)「すまん」
- 415 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:27:55 ID:r9MVqSJQ0
川*` ゥ´)「あーもーいいや……あばよ……」
( ΦωΦ)「今度作って返すから……」
川*` ゥ´)「暇だったら行くわ……」
( ΦωΦ)(いつ作れば良いのか……)
空っぽの籠を下げてテラスを後にする。
少し離れた所から、生者のための式典の声がする。
祈るだの歌うだの、馬鹿馬鹿しいが必要な事だわな。
買った花は侍従に渡したし、あたしはもう良いや。
図書館には、歴代の秀でた魔女の肖像画が壁に並んでいる。
最も大きく描かれた魔女は、幼く何を考えているのか解らない眼差し。
今日の主役である稀代の魔女は、絵の中でも微笑んでいた。
- 416 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:28:32 ID:r9MVqSJQ0
生きた魔女の肖像画はここには並べられない。
死んだ魔女だけが並んでいる。
適当な本を手に取りながら、肖像画を端から見ていく。
名前も知らない、顔も知らない古い魔女。
最近死んだ見知った顔の若い魔女。
その中に、一つの見覚えを感じた。
【川 ゚ -゚)】
【クリア・アンソルスラン】
【享年21歳】
艶やかな黒髪。
鮮やかな碧眼。
くすみの無い白い肌。
恐ろしいほど整った顔立ち。
川*` ゥ´)
川*` ゥ´)?
川*` ゥ´)
川*` ゥ´)そ
- 417 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:29:05 ID:r9MVqSJQ0
川;` ゥ´)「頭のおかしいイケメンじゃねーか!!!!」
いや違う、こっちのが線は細い。
もっと雰囲気も女性的だし、少なくともあのイケメンが黙っててもにじみ出るバカさみたいなのが無い。
それにこれは、20年くらい前か。
つー事は、この肖像画は。
('A`)『じゃあ、クリア・アンソルスランって知ってる?』
あー。
なるほどな。
『本人はアレだから血だけ』な。
川*` ゥ´)「……はん、自分の才能も知らねぇんだろうなあいつ」
川*` ゥ´)
川*` ゥ´)「なら、あたしの敵ですらねぇや」
川*` ゥ´)「…………親も美人なんだなやっぱり」
そこはちょっとムカつくな。
- 418 名無しさん[sage] 2017/03/12(日) 21:31:52 ID:r9MVqSJQ0
持たざる者は、持つ者には勝てない。
才能無き者は、血筋の卑しい者は生きざまも卑しくなる。
そんな常識も評価も、全て叩き潰してやろう。
努力では越えられないと言われ続けた血の薄さも才能も、全て乗り越えてやろう。
未だ年若い魔女は、不屈の魂を持って己が神とさえ呼ぶ童女を踏み越えようと努力を重ねる。
未だ未熟な魔女は、その名を轟かせる為に『友人』達すらも踏み台にして高く笑おうとする。
解ける筈のない呪いを解き。
解ける筈もない呪いを解く為に高みを目指す。
特別優れた才能も、容貌も持たずに生まれたが。
彼女は、それを絶望とは呼ばなかった。
己に与えられた、選び取った『偉大な魔女』と言う荒れた道を、ただ真っ直ぐに駆け抜けるだけ。
ヒール・アンソルスラン
彼女がこの世の「持たざる者」達の希望となり
偉大なる紫紺の魔女として評価されるのは、もう少し後の事。
おしまい。