- 3 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 18:41:22.82 ID:c7AJKw4QO
- 代理ありがとうございます。
オムライスさん
ttp://vipmain.sakura.ne.jp/593-top.html
別府ログさん
ttp://yeisu.hp.infoseek.co.jp/matome/obake/obake.html
まとめて下さってます、本当にありがとうございます。
最終回じゃーい。
- 5 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 18:43:14.98 ID:c7AJKw4QO
-
ミ#,゚Д゚彡「退けゴルァ! 食わせろ!」
【# 】ゞ゚)「嫌です!」
(;ΦωΦ)「そう言いながら我輩の後ろに隠れるなオサム! ええい抱き上げるな!」
三<_フ#゚Д゚彡フ「離れろゴルァ!」ガシィィン!
<_フ#゚Д゚彡フ『猫目を返せ!』
<_フ#゚Д゚彡フ「ウゼェよオレンジ!」
【# 】ゞ゚)「だが断る!」
(;ΦωΦ)「取り敢えず下ろせよ!」
【# 】ゞ゚)「御館様は私が守る!」
(;ΦωΦ)「人の話は聞きませんか!?」
( ΦωΦ)おばけとかのようです 八墓村
- 9 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 18:45:37.21 ID:c7AJKw4QO
-
/ ゚、。 /「元気だな」
l从・∀・ノ!リ人「たのしそーなのじゃー」
(#゚;;-゚)「妹者さん、これは幾つですか?」
l从・∀・ノ!リ人「えっと、さんたすきゅーでー……」
/ ゚、。 /「手」
l从・∀・ノ!リ人「きゅー……じゅー……指がたりないのじゃ!」
/ ゚、。 /「まげろ」
l从・∀・ノ!リ人「! じゅー、じゅーいち、じゅーに……じゅーに!」
(#゚;;-゚)「正解です」
/ ゚、。 /「よくできました」
- 11 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 18:47:10.61 ID:c7AJKw4QO
-
(*‘ω‘*)「おーおー平和だっぽ……よいせ」
(*‘ω‘*)「家計簿が……うわ真っ赤」
(*‘ω‘*)「通帳も……うぇ、残高がせつねぇっぽ……」
(*‘ω‘*)「はー……」
|ー゚)゙フ
(*‘ω‘*)「人数が増えたから、家計が相当ヤベェっぽ……このままじゃ明日食う分も……」
|−゚)フ!
(*‘ω‘*)「あのババア、さっさと入金しろっぽ……いちOLの稼ぎで八人食わせるのは無茶だっぽ……」
|ミ
(*‘ω‘*)「宝くじ当たらねぇかな……あ、買ってないから無理かっぽ」
- 14 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 18:49:25.41 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「買い物行くから留守番頼んだぞー」
(*‘ω‘*)「んじゃ行ってくるっぽー」
/ ゚、。 /「いってら」
【+ 】ゞ゚)「お気をつけて、御館様! 姉上様!」
ばたん
<_プ−゚)フ「……」
(#゚;;-゚)「どうしたんですか? エクストさん」
<_プ−゚)フ「うー……」
l从・∀・ノ!リ人「何かあったのじゃー?」
<_プ−゚)フ「……さっき、ねーちゃんがな」
- 15 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 18:51:09.30 ID:c7AJKw4QO
-
ミ,,゚Д゚彡「あー……」
【+ 】ゞ゚)「確かに、八人は……」
/ ゚、。 /……
<_プ−゚)フ「俺らに、何か出来ないかなー……」
l从・д・`ノ!リ人「ごはんたべらんないのじゃー……?」
(#゚;;-゚)「んー……あ、」
/ ゚、。 /?
(#゚;;-゚)「私の知り合いに、人間にまぎれこんで生活してる人が居るんです」
ミ,,゚Д゚彡「へー、じゃあ見た目は人間にちけぇんだな」
(#゚;;-゚)「ですから、その人にお願いしたら、私達にも出来るお仕事を紹介してくれるかもです」
<_プー゚)フ!
- 18 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 18:53:04.71 ID:c7AJKw4QO
-
【+ 】ゞ゚)「では、その方を訪ねてみますか?」
l从・∀・ノ!リ人「おしごとなのじゃ?」
/ ゚、。 /「しごと」
ミ,,゚Д゚彡「仕事なぁ……」
(#゚;;-゚)「では明日、ロマネスクさん達が起きる前に訪ねてみましょうか?」
<_プー゚)フ「何で起きる前なんだ?」
/ ゚、。 /「しごとする、言ったら反対する」
【+ 】ゞ゚)「反対なさるでしょうね」
ミ,,゚Д゚彡「起きる前に行って、起きる前に帰ってこれば良いわけだな」
- 19 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 18:55:06.94 ID:c7AJKw4QO
-
(#゚;;-゚)「その日はお話だけでしょうからね、じゃあ、明日の早朝に」
l从・∀・ノ!リ人「はやおきなのじゃ!」
<_プー゚)フ「猫目達には秘密だな!」
/ ゚、。 /「あ、」
【+ 】ゞ゚)?
/ ゚、。 /「1ヶ月後」
l从・∀・ノ!リ人?
ミ,,゚Д゚彡「……ああ、なるほどな」
(#゚;;-゚)「あ、なるほど」
<_プー゚)フ「……ワクワクしてきた!」
(#゚;;-゚)「じゃあ、今日は早めに寝ましょうです」
l从・∀・ノ!リ人「はーいなのじゃー!」
- 21 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 18:57:05.39 ID:c7AJKw4QO
-
( ゚∋゚)ちちち、ちゅんちゅん。
( +ω+)「んー……寒い……」
( Φω+)「む……ああ、朝か……」
ベッドの上、少し隙間の空いた布団から流れる冷たい空気。
朝日を浴びながら上体を起こして伸びをし、あくび。
目を擦って隣で寝ているエクストを起こし────ん?
( ΦωΦ)「エクストが居らん……先に起きたか?」
鈴木はいつも早く起きるが、エクストは我輩と一緒に起きる。
故に、我輩より早く起きる事は今まで無かったので、少し首を傾げた。
部屋の中をぐるりと見ると、オサムの棺桶も見当たらない。
みんな揃って早起きか、珍しい事もあるものだ。
- 25 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 18:59:19.63 ID:c7AJKw4QO
-
ベッドから降りてパジャマを脱ぐと、肌が冬の空気に触れてぞわりと鳥肌が立つ。
寒さに体を震わせながら、壁に掛けている制服に手を伸ばして着込んだ。
背負う形の鞄と手編みの黒いマフラーと手袋を手に、自室を後にする。
とんとん、と階段を降りてリビングに足を踏み入れた。
エクストやオサムがこたつに入ってのんびりしているかと思えば、姿は見えない。
そう言えば、いつもは階段を降りる時に賑やかしい声が聞こえる筈なのに、今日は聞こえなかった。
おかしいな、とまたも首を傾げる。
鞄とマフラー、手袋を置いて洗面所へ。
歯磨きをしてから袖をまくり、冷たい水で顔を洗って、乾いたタオルで顔を拭く。
蒸しタオルに手を伸ばす、が、その手は空しく冷えた台に触れるだけ。
( ΦωΦ)?
蒸しタオルが無いとは、鈴木にしては珍しいな。忙しかったのだろうか。
冷え冷えの頬に手をやりながらリビングに戻り、外に繋がるガラス戸を開けた。
- 26 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:01:18.66 ID:c7AJKw4QO
-
人の気配が無い。
サンダルを履いて外に出て、でぃや妹者の姿を探す。
でぃが寝床にしている地面の穴に近付いて中を覗き込んでも、その姿は見付けられない。
そのまま玄関へと回って犬小屋の中を覗くも、同じように犬の姿は無い。
ますます、おかしい。
( ΦωΦ)? ? ?
頭に浮かぶ疑問符。
それと同時に、いつもそこに居るべき奴等が居ない事に対する不安が浮かんだ。
駆け足で庭に戻り、サンダルを脱ぎ捨てて部屋に上がる。
そして家の中を走り回って、奴等の姿を探し、名を呼んだ。
その呼び声は次第に叫びに近くなり、家中のドアを開けて探し回って。
それでも影すら見えない事に、焦りを産んだ。
- 27 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:03:02.60 ID:c7AJKw4QO
-
(;ΦωΦ)「エクスト! 鈴木! 妹者! 居らんのか!?」
寒いにも拘わらずぽたりと落ちる汗。
これが冷や汗と言う奴なのか、混乱しきっていた我輩には分からなかった。
(;ΦωΦ)「犬! でぃ! オサム! 返事くらいしろ!!」
(*‘ω‘*)「んー……うるせぇっぽ、どうしたっぽ?」
(;ΦωΦ)「ね、ねーちゃん! みんなが居らんのである!」
(*‘ω‘*)「は? 居ないって……んな訳ねぇっぽ?」
(;ΦωΦ)「実際に居らんのである! どこにも、誰も!!」
(*‘ω‘*)「取り敢えず落ち着けっぽ弟、もしかしたらみんなでどっか出掛けてんのかも知れねぇっぽ」
(;ΦωΦ)「しかし今までそんな事なかったのである! 出て行くならば書き置きの一つくらいあってもおかしくないのである!!」
(*‘ω‘*)「落ち着けって言わなかったっぽ? 深呼吸して、まずは落ち着けっぽ」
(;ΦωΦ)「あ……あぁ、すまんのである……」
- 30 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:05:10.90 ID:c7AJKw4QO
-
眠そうに部屋から出てきた姉は、取り乱す我輩の姿に目が覚めたのか、我輩の両肩を掴んで顔を覗き込む。
冷静さを持った目で睨むように見つめられ、我輩は肩を落として深呼吸をした。
奥歯がかちかちと震え、冷静とは言えない状態ではあるが、何とか落ち着かせる。
汗を垂らしたまま姉を見下ろし、何かを訴える。
けれど我輩自身、何を訴えたいのか分からない。
未だ混乱している我輩から手を離し、姉は台所へと歩いて行った。
(;ΦωΦ)「ね……ねーちゃん……」
(*‘ω‘*)「多少は落ち着いたみたいっぽ、ほら、茶あ飲めっぽ」
(;ΦωΦ)「あぁ……ありがとう、である」
湯気がゆらゆらと立ち上る湯飲みを台所のテーブルに置き、姉は寝巻きのまま椅子に腰掛ける。
我輩もそれに続いて、椅子に座って湯飲みを両手で握った。
その暖かさに、少しだけほっとする。
- 31 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:07:09.98 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「ねーちゃん、時間は大丈夫なのであるか?」
(*‘ω‘*)「今日は昼からだっぽ」
( ΦωΦ)「そう、か……」
頬杖をついて我輩を見るねーちゃん。
その視線を浴びながら、空っぽの胃に熱いお茶をゆっくりと流し込んで行く。
ほう、と息を吐くと、残っていた混乱も少しずつ引いていった。
やっとこさ落ち着いた我輩は、壁に掛けられている時計を見上げて時間を確認する。
時間はもう朝の八時を回っており、いい加減家を出ねば遅刻する時間帯。
お茶を飲み終えた我輩は席を立ち、リビングに。
手袋をはめてマフラーを巻き、鞄を背負う。
そのまま玄関まで足を運ぶと、カーディガンを羽織った姉が一緒に出てきた。
(*‘ω‘*)「何も居なくなったって決まった訳じゃねぇっぽ、だから落ち着いて、学校行ってこいっぽ」
( ΦωΦ)「うむ……把握である……行ってきます」
(*‘ω‘*)「行ってらっしゃいっぽ」
- 35 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:09:06.54 ID:c7AJKw4QO
-
珍しく姉に見送られ、我輩は家を後にする。
冷たく、きんとはりつめた空気が身を包んだ。
何故、居ないのだろう。
何故、居なくなったのだろう。
人外達を思い出しながら、脳に巡るのはこの事ばかり。
我が家に居る事が嫌になったのだろうか、それならば、一言くれれば良かったのに。
嫌だと言うならば引き留めず、感謝をのべて送り出した。
それとも、挨拶すらしたくなかったのか。
いや、それは無いと思いたい。
皆に嫌われてはいなかった筈、嫌われては、いなかった筈。
我輩と同じように好いて居たと思うのは、間違っているのだろうか。
我輩の一方的な勘違いだったのだろうか。
それとも、あれらはみんな、夢だったのか。
( ΦωΦ)「……はぁ」
いつの間にか着いていた学校、ぼんやりと靴を履き替えて教室に向かい、ため息混じりに席へと。
- 38 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:11:12.87 ID:c7AJKw4QO
-
何時もと同じように友人と話し、授業を受け、ノートに文字列をだらだらと書いては、ため息。
半ば上の空の状態で過ごしていると、鳴り響くチャイムの音。
教師が簡単な挨拶を済ませて教室から出て行き、生徒達は席を立ったり、鞄から弁当を取り出したりしている。
ああ、もう昼休みか。
あっという間だな、とぼんやり椅子に座っていると、友人が弁当と椅子を持って近づいてきた。
( ^ω^)「杉浦ー昼飯だおー!」
('A`)「ん? 弁当どうしたんだ? 杉浦」
( ΦωΦ)「ん、あぁ……今日は、無いのである」
('A`)「無いって……珍しいな、鈴木と喧嘩でもしたか?」
( ΦωΦ)「いや……購買で、パン買ってくるのである」
- 39 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:13:13.54 ID:c7AJKw4QO
-
席を立ち、財布を持って不思議そうに首を傾げる友人に背を向ける。
その喧嘩をする相手が居なくなったのだとは、何故か言えなかった。
しかし、皆が人外達を覚えていると言う事は、夢ではなかったと言う事。
それに対して喜ぶべきか、悲しむべきか。
やはり、我輩には分からなかった。
生徒達にもみくちゃにされながら購入した菓子パンと牛乳を、胃の中に押し込む。
味は、分からない。
それでも、余り美味いと感じない事だけは分かる。
そうして思い知らされるのは、我輩が毎日、いかに美味い弁当を作ってもらって居たかと言う事。
鈴木が拵える弁当は、冷たくなっても美味しくて、栄養のバランスや好きな物を考えてあって。
ああ、鈴木の飯が、食いたいな。
たった一日、弁当が無いだけでそう思えてしまう。
鈴木が来るまでは毎日、自分で作った弁当であったり菓子パンであったりした筈なのに。
いつの間にか、こんなにも舌が肥えてしまった。
ツンツンと冷たくされる事も少なくはなかったが、それでも毎日、我輩の代わりに家事をして料理を作ってくれていた鈴木。
ちゃんと、感謝と礼をしておけばよかった。
- 41 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:15:08.35 ID:c7AJKw4QO
-
その後も始終上の空で授業を終え、あっという間に夕方の下校時間。
友人と別れて一人歩く帰り道、ポケットに両手を突っ込んで空を見上げた。
うっすらオレンジの空には雲がぷかぷかと浮かんでいるだけ。
なんとなくエクストを思い出し、心なしか、胸が痛んだ。
帰ってこないと決まったわけではない。
けれど、胸いっぱいに広がる不安は、消える事はないのだ。
がちゃ、かちゃん。
玄関の鍵を開けて、ドアノブを握り、深呼吸。
ゆっくりとドアを開けて我が家に足を踏み入れると、不安を胸にしたまま、口を開く。
( ΦωΦ)「……ただいまで、ある」
しんとした家の中に、空しく響いて、消えてゆく。
もしかしたら帰ってるかも、とほのかに期待していた我輩の胸に、またぢくぢくと痛みが走った。
- 43 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:17:23.38 ID:c7AJKw4QO
-
ドアと鍵を締めて靴を脱ぎ、家に上がる。
誰も居ない家に帰るのも久し振りで、何だか、妙に寂しさを感じる。
いつもなら妹者なんかが出迎えてくれ、飛び付いてきたりしていたのに。
天真爛漫と言うか、ひどく子供らしいあの声や姿を感じられないと言う事は、意外にも、堪える。
( +ω+)「……」
独り言を呟く気分にもなれず、マフラーを外しながら階段を上る。
自室のドアを開けて鞄を下ろし、マフラーと手袋をその上に乗せた。
制服を脱いでハンガーに掛け、肌着姿で箪笥から部屋着を取り出す。
黒い薄手のセーターとジーンズを取り出して着込んでいると、ふと思い出すのは、冷たい手。
- 46 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:19:09.31 ID:c7AJKw4QO
-
我輩が帰宅して着替えていると、お疲れ様ですとか何とか言って、冷えきった指先で裸の肩を揉んでくるオサムの手。
毎日の様に寒いだ冷たいだと肌を粟立てながら騒いでいたのだが、それでも譲らずにやたらとマッサージをして来た。
ああ、指先がきんきんに冷えていても構わないから、何時ものように、
( ΦωΦ)「……家事、するか」
続き掛けていた思考を無理矢理止めて、部屋を出る。
暗くなり始めたリビングの電気をつけて脱衣所に向かい、洗濯物をカゴに詰め込んだ。
そう言えば、オサムや犬が我輩の服を着ていたから少し洗濯物が多い。
我輩より背が高いのに無理をして着るから、寒そうだったな。
カゴを持ってリビングのガラス戸を開け、外に出る。
今から干したのでは乾かないだろうなと思いつつも、余り考えず、
洗濯物をハンガーに掛け、物干し台に引っ掛けて行く。
- 47 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:21:05.77 ID:c7AJKw4QO
-
何時もは鈴木が干してくれていた洗濯物。
取り込むのは我輩の仕事で、よくでぃと話しながら取り込んでいた。
話す内容は大して意味もない日常会話ばかり。
冬にも咲く花だとか、寒いから腐敗が遅いだとか。
庭いじりが好きなでぃには、よく花の話しなんかを聞いたものだ。
でぃとの会話は他の奴等に比べると穏やかで、平和で。
取り立てて珍しい事なんかを話しはしなかったが、その普通さに落ち着いた。
たまにモララーとののろけ話を聞かされたりもしたが、色恋沙汰には疎い我輩には、少し珍しく思えたのを覚えている。
( ΦωΦ)「……ふぅ」
洗濯物を干し終え、リビングに戻ってガラス戸を閉める。
カゴを脱衣所に置いてくると、今度は台所へと向かった。
買い物用の鞄と食費用の財布をポケットにねじ込み、冷蔵庫を開けて中を確認する。
- 50 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:23:27.05 ID:c7AJKw4QO
-
野菜が少し、肉も少し。
白菜が半分残っているので、これを使おう。
冷蔵庫のドアを閉めて、玄関へと足を向ける。
玄関で靴を履いてドアを開ければ、朝よりも冷たくなった空気がざわざわと我輩の頬を撫でた。
外へ出て玄関の鍵を掛け、歩き出す。
視界の端に入った赤い屋根の犬小屋に、何度目かも分からぬため息を溢した。
幼い頃に飼っていたビーグル、その小屋を引っ張り出して来て修理し、犬の小屋にした犬小屋。
本来は犬ではなく狼である犬には少し狭かった様だが、意外にも大して嫌がらずに入っていたな。
鎖も首輪もビーグルのお下がりで窮屈そうではあったものの、犬は大人しく犬としての扱いを受け入れていた。
狼男だ何だと噛みついていた癖に、変に聞き分けの良い奴だった。
ぎゃんぎゃんと喧しい奴だったが、否、だからこそ、居なくなれば寂しいもので。
( ΦωΦ)「……名前くらい、呼んでやれば、よかったか……」
- 52 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:25:22.67 ID:c7AJKw4QO
-
あれこれと考えながら俯いて歩いていれば、時間の流れは早く感じる。
気が付けば辿り着いていたスーパーに入り、カゴを片手に夕飯の材料を求めて歩く。
鶏肉、つくね、野菜、白滝、豆腐、あぶらげ。
ろくに考えずにカゴの中に材料を入れて行き、最後に袋入りのみかんをカゴに入れて、レジに並んだ。
さくさく会計を済ませ、サッカー台で買った物を持参した袋に詰める。
そうして片手にずっしりとした重みを感じながら、再び帰路に就いた。
誰に言うでもないただいまを呟いて帰宅した我輩は、やたらと静かな家の中、半ば無意識の内に台所に立っていた。
料理をするのは久し振りだな、等と思うと同時に、いつも鈴木に押し付けていて申し訳なかったと後悔する。
今さら後悔したところで遅いのかも知れないが、それでも思わずには居られなくて。
とんとんとん、包丁の音は好きな筈なのに、今は妙に寂しく感じる。
しゅんしゅん、とお湯が沸く音すら寂しくて、我輩は自分の弱さに、またもため息をついた。
たった一日一人になっただけで、こうも孤独を感じるとは。
しかしいつも賑やかな家に静けさが訪れると、誰しもがこうなるのかも知れない。
賑やかで、喧しくて、明るくて、いろんな声や音が聞こえていた家の中には
今は、火や包丁の音、我輩が発する微かな呼吸音くらいしか聞こえない。
ああ、誰かと、話したい。
- 53 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:27:04.27 ID:c7AJKw4QO
-
何だかんだで我輩のあとをくっついて回っていたオレンジ色のおばけ。
エクストは人外の中で、一番長く我輩と一緒に居た。
あの少年の様な高い声で、大声でバカな事を言っていたエクストすら、今は居ない。
耳に入る事が当たり前になっていた声が途絶えた。
そう思うと無性に切なくて、包丁を握る手に、余計な力がこもる。
ぷるるるる。
( ΦωΦ)「……ん、電話か」
包丁を置いてリビングにある電話の元まで移動すると、がちゃり、受話器を持ち上げ、耳にあてた。
- 54 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:29:40.44 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「はいもしもし、杉浦である」
『弟ー、姉だっぽ』
( ΦωΦ)「む? どうしたのだ、ねーちゃん」
『今日残業が入ったから遅くなるっぽ、晩飯食ってくるから待たなくて良いっぽ』
( ΦωΦ)「うむ、把握したのである。気を付けて帰って来るように」
『おう、戸締まりちゃんとして暖かくしとけっぽ。んじゃー』
電話が切れ、そっと受話器を元の位置に戻すと再び台所へ。
ねーちゃんが遅くなるらしく、夕飯は一人だけ。
一人飯と言うのも久々だな、と夕飯の準備の続きに取りかかった。
- 57 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:31:15.47 ID:c7AJKw4QO
-
こたつの上には、一人分には見えない大量の鍋。
くつくつと湯気を立ち上らせるその中には、様々な野菜や肉、豆腐や白滝が煮込まれている。
( ΦωΦ)「……一人分の飯の作り方を、忘れてしまったな……」
つい出してしまった多人数分の食器を机の端に押しやって、はふはふと白菜を口に運ぶ。
味は悪くない筈なのに、味気ない。
ほぼ無音に近い状態で食べる夕飯は、どうしようもなく切なかった。
一人で食べる夕飯は慣れていた筈なのに、何故、こうも一人が苦しいのか。
何時も何時も、大騒ぎされては迷惑をかけられていた筈なのに、静かな事を喜んでもおかしくない筈なのに、
何故に、こうも寂しいのか。
ごく、と無理矢理に口の中の物を飲み下し、箸の動きを止めて、項垂れた。
帰ってくるなら早く帰ってこい。
貴様らのせいで、一人で居る事がこんなにも、こんなにも苦手になってしまったではないか。
- 59 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:33:15.64 ID:c7AJKw4QO
-
大して食べる事もなく食事を終わらせた我輩は、残った鍋に蓋をして台所のコンロに置き、後片付けを済ませた。
庭に洗濯物を取り込みに出るも、洗濯物は全て生乾き。
片っ端から取り込んで、脱衣所にある乾燥機に詰め込んだ。
自室へ着替えを取りに行ってから脱衣所に戻ると、服を脱いで洗濯機に入れ、風呂場へと。
ゆっくりとお湯に浸かる気にはなれず、体や頭を洗い歯を磨いた後は、熱いシャワーのみで風呂を済ませる。
( ΦωΦ)「……はぁ」
もう回数を数えようとも思わぬ溜め息は無意識の内にこぼれ落ち、タオルで頭を拭きながら自室へと戻って行く。
冷えた廊下が暖まった爪先の温度を奪い、自室に入る頃には、足は冷えきっていた。
カーペットの敷かれた部屋の真ん中に行くと、ぺたんと座り込んでベッドの側面に背中を預ける。
少しだけ暖かい背中に、何故かほっとした。
- 61 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:35:12.41 ID:c7AJKw4QO
-
頭の中をぐるぐるするのは人外の事ばかり。
ちゃんと飯は食えているか、寒い思いはしていないか、事故にあったりはしていないか。
不安や心配や寂しさが、一緒くたになって襲ってくる。
ベッドの上から枕を下ろすと、枕を両腕で強く抱きながら三角座り。
布団や枕しか暖かくなれそうな物が存在しない、殺風景な我輩の部屋。
一人で居るには、少しばかり広く感じた。
ふと、枕を置いて四つん這いになり、クローゼットの前に移動する。
がたん、と扉を開けて中を探れば、指先に当たる大きな箱。
それを両手で掴んで、ずりずり後退しながら引きずり出す。
部屋の真ん中に置かれた、大きな段ボール箱。
その側面には、黒いマジックで書かれた『手芸部、杉浦』のかすれた文字。
( ΦωΦ)「……久しぶりに、何か作るか」
- 62 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:37:04.89 ID:c7AJKw4QO
-
料理研究部と掛け持ちをしていた手芸部、その頃に使っていた裁縫道具や色とりどりの布の山。
手芸は高校入学と同時に止めてしまっていたが、今なら寂しさをまぎらわせる為にもやって良いかも知れん。
段ボール箱から裁縫箱と数枚の布、綿を取り出す。
そして立ち上がって学習机の前に座ると、引き出しから白い紙と筆記用具を出し、型紙を描き始めた。
ずいぶん久しぶりな作業ではあるが、昔とった杵柄とでも言うのか、慣れたもの。
思ったよりも手間取る事もなく描かれる、何枚もの型紙。
白い紙に様々な形の線を踊らせる、その作業は、思いの外没頭出来た。
( +ω+)「んー……うぐぐ、肩が凝る……」
( ΦωΦ)「む、もう十時か……そろそろ寝るかな」
懐かしいとも言える作業は、あっという間に時間を奪う。
すっかり冷えた体に軽く肩を震わせて、ペンを置いて椅子から立つ。
ぐぐ、と伸びをするとそのまま部屋の電気を消して、枕を片手にベッドに潜り込んだ。
妙に広いベッドの中に少し眉を寄せたが、もう何も考えるまい、と目を瞑る。
ゆっくりゆっくり、冷たい睡魔が我輩の頭を痺れさせていった。
- 64 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:39:10.30 ID:c7AJKw4QO
-
型紙の束が出来上がる頃には、時間は流れ、人外達が居なくなって数日が経っていた。
探そうにもどこを探せば良いか分からず、待つにも孤独が重すぎて。
我輩は現実から逃避するように、毎日、針と糸をせっせと動かしていた。
学校の授業は集中出来るから、逆に頑張れた。
いつもよりも力を入れて受ける授業、昼食の時も参考書を見ながら食事をする我輩の姿は、異様だったのだろうか。
ある日の昼休み、友人達が我輩に声をかけてきた。
( ^ω^)「杉浦……どうしたんだお?」
( ΦωΦ)「……あ、何が、だ?」
('A`)「最近、調子悪そうだぞ」
( ΦωΦ)「いや、そんな事は……」
( ^ω^)「……エクスト、見なくなったおね、毎日ついてきてたのに」
('A`;)「おい内藤っ!」
- 67 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:41:54.57 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「……」
( ^ω^)「杉浦」
( ΦωΦ)「何で、あるか」
( ^ω^)「僕らだって杉浦の友達だお、何かあったなら相談くらい乗らせろお、話くらいは聞かせろお」
( ΦωΦ)「あ、」
( ^ω^)「僕らはそんなに頼りないかお? 何も言えないほど信用できないのかお? それとも、言いづらいほど深刻な事なのかお?」
( ΦωΦ)「……すまん内藤、ドクオ」
('A`)「杉浦……」
( ・∀・)「僕も居るからね」
( ΦωΦ)「ああ、ありがとう、モララー」
( ^ω^)「……聞かせてもらえる、かお?」
( ΦωΦ)「……ああ、勿論だ」
- 70 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:43:11.14 ID:c7AJKw4QO
-
親しい友人に言われて、やっと、我輩は端から見てもおかしかったのだと気付いた。
そして、友人達に心配をかける前に相談すれば良かったと、後悔する。
我輩の机のまわりに寄ってきた三人の友人の顔を見回して、ゆっくり、口を開く。
ある日突然人外達が居なくなった事、妙に寂しい事。
思っていた事すべてをゆっくり吐き出せば、みんなは少し困った顔をした。
( ・∀・)「そっか……でぃちゃんから連絡来ないと思ったら、居なくなってたんだ」
( ΦωΦ)「……うむ」
('A`)「でもよ、一言も無しに居なくなるなんて、その……何か、ひどい気がするな」
( ^ω^)「まあ待ておドクオ、何か理由があったのかも知れないお」
('A`)「うん……俺も、んなの信じたくないし、そんな奴等じゃないと思うし」
- 73 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:45:06.24 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「……モララー、」
( ・∀・)「僕は平気、でぃちゃんは帰ってくるよ」
( ^ω^)「愛かお?」
( ・∀・)「うん」
(#゚A゚)
(・∀・;)「怖いから」
( ^ω^)「とにかく、僕もみんな帰ってくると信じるお! みんなはそんな礼儀知らずな奴じゃないお!」
('A`)「ま、何か理由があるんだろうな、寂しかったら遊びに行くぞ? ん?」
( ・∀・)「なんなら泊まりに行くのもアリだよね、お泊まり会」
( ^ω^)「おっ、みんなでモンハンとお菓子持って杉浦んちに突撃かお?」
('A`)「良いなそれ、あったかい飯食いてぇし」
( ・∀・)「ね、杉浦、今度みんなで遊ぼうか?」
( ΦωΦ)「う、うむ、いつでも来い」
- 74 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:47:09.38 ID:c7AJKw4QO
-
ああ、こいつら良い奴等だなあ。
本当に友人に恵まれた。
そう思うと、目頭がじわりと熱くなった。
我輩をおいてけぼりにして、どこで寝るだの何をするだのと楽しそうに相談し合う友人達。
胸の辺りでもわもわしていた寂しさが、ずいぶんスッキリするのを感じた。
持つべきものは親友達。
本当に、感謝してもしきれない思いで一杯である。
その日を境にみんなはちょくちょく我輩の家に来ては、遊んだり駄弁ったりして、飯を食って帰って行くようになった。
残念な事にみんなの予定があわず、お泊まり会とやらは出来ていないが。
それでも、我輩の寂しさやらはずいぶん軽減された。
その分、みんなが帰った後の孤独が、強くなるのだが。
- 77 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:49:05.91 ID:c7AJKw4QO
-
柔らかい布で出来たぬいぐるみ、厚紙に布をはって作った棺桶を一緒にして、リビングのソファに。
出来上がったオサムの人形を見て、眉尻が下がるのが分かった。
我輩の手元には、完成間近のでぃのぬいぐるみ。
白いワンピースをその肩に縫い付けて、糸を結び、切る。
二つ目の、20cmほどのぬいぐるみが出来上がり、そっとソファに置いた。
ソファに二つ並ぶ人形にため息をついて、三つ目の人形に取りかかった。
友人達が居る時は感じない寂しさが、みんなが帰る時、一気に押し寄せる。
その寂しさをまぎらわす為に布を切っては縫い合わせ、綿を詰めて、また縫う。
その作業は没頭出来、楽しくはあるのだが
その反面、ひどく、虚しい。
人外達が居なくなって一週間は経つだろうか。
少しずつ一人に慣れては来たが、やはり寂しいものは寂しい。
型紙に合わせて布を切っていた手を止め、裁縫道具を仕舞う。
それらを持って立ち上がると、我輩は自室へと戻っていった。
リビングは流石に、一人では広すぎる。
- 78 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:51:15.29 ID:c7AJKw4QO
-
─ (*‘ω‘*) ─
(*‘ω‘*)「……」
( ΦωΦ)「む、ねーちゃんおはようである」
(*‘ω‘*)「おーおはよっぽ弟、今日も元気に学校行きやがれっぽ」
( ΦωΦ)「うむ、ねーちゃんもお仕事頑張れである」
(*‘ω‘*)「おうよ」
( ΦωΦ)「じゃ、行ってきまーす」
(*‘ω‘*)「いてらー」
日直らしい弟は、いつもより早く家を出た。
スーツに着替えた私は化粧と身支度を済ませ、自分で淹れた茶を飲みながらソファに腰かける。
私の隣には三つの人形が並んでいて、それらは我が家に居た吸血鬼、ゾンビ、狼男の姿をしている。
人形を作る弟の背中はひどく寂しそうで、見ているのが、苦しかった。
- 80 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:53:09.99 ID:c7AJKw4QO
-
茶を飲み終えた私は立ち上がり、湯飲みを置くと鞄を掴んで玄関に向かった。
玄関に置いてあった薄茶のコートとマフラーを身に付けると、黒い飾り気のないハイヒールに足を突っ込む。
ドアを開けて外に出て、ドアに鍵を掛けて歩き出した。
今日は上司について契約先の遊園地やらに行く日。
この胸にわだかまる変な気持ちを表に出さないように、仕事をしなければ。
頭のはしっこに引っ掛かり続ける人外達の顔と、弟の背中。
人外達への心配なんかももちろんあるのだが、それよりも
それよりも、弟の寂しそうな顔、背中。
それらを思い出せば、心配よりも憤りが勝ろうとする。
弟に心配かけさせて、寂しがらせて、音沙汰もなくて。
ああ、私はなんてブラコンなんだろう。
結婚できない訳だ。
- 82 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:55:14.79 ID:c7AJKw4QO
-
_
( ゚∀゚)「はい、それじゃあお願いします」
(,,゚Д゚)「こちらこそ、よろしくお願いします」
_
( ゚∀゚)「いやー契約もうまく行ってるし、万々歳だねぽっぽ君」
(*‘ω‘*)「そうっぽね」
_
( ゚∀゚)「そういやねぽっぽ君、ここのお化け屋敷は最近評判良いらしいよ」
(*‘ω‘*)「へー」
_
( ゚∀゚)「糸も無しに物が飛ぶやら動くやら、いやあ一回行ってみたいね」
(*‘ω‘*)「……」
_
( ゚∀゚)「良かったらぽっぽ君、今度二人で入ってみない? いや別に驚いたぽっぽ君が抱きついてきて腕におっぱい当たったら良いなあなんて思ってる訳じゃなくて」
(*‘ω‘*)「昼直帰するっぽ、あとよろしく」
_
( ゚∀゚)「やっぱね、歳くってもこう言うときめくイベント的な物はこう、下半身に……あれ、ぽっぽ君? ぽっぽくーん? 消えた……!?」
- 85 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:57:15.54 ID:c7AJKw4QO
-
糸も無しに物が飛ぶやら動くやら。
それを聞いた時、脳裏に浮かんだのはオレンジ色の奴の姿。
物を浮かせて動かす事が出来る様になった、エクスト。
そんな事は無いだろうと思いながらも、私の足はお化け屋敷へと動いていた。
案内板で場所を確認しながら駆け足で向かえば、遊園地の片隅に見つけたお化け屋敷。
おどろおどろしい外観のそこを見て、私は口の中に溜まった、固い唾液を飲み込んだ。
心臓がどくどく喧しく鳴るのに僅かに苛立ち、胸を押さえてお化け屋敷の裏に回った。
居るわけがない。
けれど、もし居たら。
関係者以外立ち入り禁止と書かれた裏口のドアをそっと開け、身を滑り込ませる。
薄暗くはあるが、恐らく店内よりは明るいスタッフルーム。
従業員達の会話がこそりと耳に舞い込むと、その中に、聞き覚えのある声を見つけた。
- 86 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 19:59:13.71 ID:c7AJKw4QO
-
(,,゚Д゚)「お前が来てからお化け屋敷も繁盛して、ありがたいぜ」
<_プー゚)フ「俺、役に立ってるのか?」
(,,゚Д゚)「おう、役に立ちまくりじゃねぇか」
<_プー゚)フ「じゃあ給料いっぱいくれ!」
(,,゚Д゚)「社長に言っといてやるよ」
<_プー゚)フ「よっしゃー!」
見つけてしまった、オレンジ色のおばけ。
従業員と楽しげに話すその姿に奥歯を噛み締め、拳を握る。
エクストと話していた従業員が奥に姿を消した時、ちらり、とこちらを見るおばけ。
目が合った。
- 91 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:01:36.29 ID:c7AJKw4QO
-
私と目が合ったおばけは目を真ん丸にして、慌てて奥へと逃げようとする。
一歩踏み出した私は、怒りに任せて、
(#*‘ω‘*)「逃げるなドマンジュウがぁあっ!!」
<_フ;゚д゚)フ「ひっ!!」
目一杯に怒鳴った私に驚き、おばけはびくんと跳ねて動きを止めた。
そしてゆっくりこちらを向いたおばけは、ばつの悪そうな顔をして私を見る。
うろうろと視線をあちらこちらに動かして、おばけは居心地悪そうに向かい合った。
(#*‘ω‘*)「聞かせてもらうっぽ、いきなり我が家から消えた理由」
<_プ−゚)フ「……」
(#*‘ω‘*)「……うちが嫌ならさっさと言えっぽ! 一言あれば引き留めずに送り出したっぽ!! 何も言わずに消えるのは最低だっぽバカ野郎ッ!!」
<_フ;゚−゚)フ「ち、違う! 嫌なんじゃない!」
(#*‘ω‘*)「じゃあ何だっぽ! ある日突然全員消えて! 書き置きすらなくて! ロマネスクがどんな思いだったか、お前らに分かるのかっぽ!!」
<_フ;゚−゚)フ「あ……」
- 93 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:03:27.89 ID:c7AJKw4QO
-
(#*‘ω‘*)「話があるならちゃんと聞くっぽ、その代わりなドマンジュウ、もしロマネスクに何も言わないなら、このまま消えるのなら、私はお前もあいつらも、絶対に許さないっぽ」
<_フ;゚−゚)フ「消えない! 俺もみんなも消えない! ただ金稼いでるだけなんだ!」
(#*‘ω‘*)「金……?」
泣きそうな顔で弁解するおばけの口からこぼれた、金と言う言葉。
それは何だか、おばけとは不似合いな現実味のある言葉で。
私は、背中が少し冷たくなるのが分かった。
まさか、と、そうとは思いたくはない理由を考えて。
<_フ;゚−゚)フ「そ、その、俺らいっぱい飯食うから……」
(*‘ω‘*)「……まさかお前、私が通帳と家計簿見てたの」
<_フ;゚−゚)フ「……見てたし、聞いてた」
(*‘ω‘*)「…………ああ、もう……」
- 98 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:05:06.61 ID:c7AJKw4QO
-
あの日、私が通帳と家計簿を見て呟いたのを
このままじゃ食っていけないなんて呟きを、聞いていたと言うのか。
あれは、親に早く入金しろよと悪態をついていただけだったのに。
それなのに、こいつは、あいつらは、
<_フ;゚−゚)フ「……あ、の、」
(* ω *)「……じゃあロマネスクを追い詰めた原因、私じゃねぇかっぽ……」
私の無責任な独り言が、弟のみならず、人外みんなを追い詰めたんだ。
人外達は逼迫した家計に責任を感じて、こんな風に、働いていると言うのに?
私は、それなのに私は心配よりも怒りをとって
エクストにも、怒鳴り付けて。
弟の、ロマネスクの寂しそうな背中、あれは私の所為なんじゃないか。
- 102 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:07:09.58 ID:c7AJKw4QO
-
不甲斐なさに、腹が立った。
私の頭の悪さに、目頭が熱くなった。
私はいったい何をしていたんだ。
<_フ;゚−゚)フ「ちがっ、違う!」
(* ω *)「姉が弟追い詰めるなんて、最低だっぽ……説教する権利なんてねぇっぽ」
<_フ;゚−゚)フ「その原因が俺らだろっ! ねーちゃんじゃなくて俺らのせいだろ!」
私のそばまで飛んできたエクストが、首を、体全体を左右に振りながら否定する。
ねーちゃんは悪くないとか、悪いのは俺らだからとか、
涙目で俯く私に、腹立たしいほどに優しい言葉ばかりを投げ掛けて。
こんな可愛い奴を、私は恨んでいたのか。
弟を悲しませやがってと憤っていたなんて、私は、なんて、恥ずかしい女なんだろう。
ぐ、と涙を飲み込んで、目尻に浮かんだ涙を指先で拭い、手を強く握る。
顔を上げると、目の前に居たエクストと再び目があった。
謝らなきゃいけない、みんなみんな、私の所為だ。
- 108 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:09:10.67 ID:c7AJKw4QO
-
私の所為で働かせてしまった事、それなのに信じられなかった事、みんなみんな謝らなきゃ。
(*‘ω‘*)「……すまねぇっぽ」
それでも、私の口からこぼれるのは、ぶっきらぼうな謝罪だけ。
どうして私は、素直になれないんだろう。
<_フ;゚−゚)フ「あ、う……俺のが、ごめんなさい……」
(*‘ω‘*)「……他の奴らも、働いてるのかっぽ?」
<_フ;゚−゚)フ「う、うん……一ヶ月契約ってのされてて、一ヶ月働いて、みんな一緒に戻ってこようって……」
(*‘ω‘*)「いったい、どんな経緯でそうなったんだっぽ?」
<_フ;゚−゚)フ「えっと、最初はでぃが────」
- 112 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:11:51.34 ID:c7AJKw4QO
-
エクストの話によると、でぃの知人である人外が仕事を紹介してくれたらしい。
早朝に押し寄せたにも拘わらずその人外、その女は
その日の内に、その足で、みんなを仕事先へと連れていったらしい。
(#゚;;-゚)『えっと、確かこのビルの……この部屋で……あ、ここっ
お久し振りです素直さんっ! でぃです!』
lw´‐ _‐ノv『やあ、久し振り。今日はお友達も連れてきたのかい』
(#゚;;-゚)『はいです、それで、その』
lw´‐ _‐ノv『仕事、ね、人数分ちゃんと用意してあるさ』
(;#゚;;-゚)『へ、へ?』
lw´‐ _‐ノv『私を何千年生きた魔女だと思ってるんだい、君たちが何をしにここに来るかなんて、知ってるに決まってるじゃないか』
(;#゚;;-゚)『ふ、ぇ』
lw´‐ _‐ノv『取り敢えず一ヶ月の契約で、各自ばらばらの職場だからしっかり働き給え。そら行った行った』
(;#゚;;-゚)『え、え、ちょ、素直さん!? 待っ、えぇっ!?』
lw´‐ _‐ノv『ほら連れてけお前達。でぃとその愉快な仲間達、頑張り給えよー』
- 113 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:13:29.17 ID:c7AJKw4QO
-
(*‘ω‘*)「……」
<_フ;゚−゚)フ「それで、みんな連れてかれたから……俺も黙ってついてったら、ここに」
(*‘ω‘*)「あー……じゃあ、一ヶ月後にはちゃんと戻ってくるっぽ?」
<_フ;゚−゚)フ「うん……でも、その」
(*‘ω‘*)「ロマネスクには言うなってか」
<_フ;゚−゚)フ「……うん」
(*‘ω‘*)「…………一ヶ月は、みんなきっと戻ってくるから一ヶ月は待てって言うっぽ、でも、」
<_フ;゚−゚)フ「……分かった」
(*‘ω‘*)「よし、他の奴らの仕事先も教えろっぽ。一人ずつ、電話くらい寄越しても良いだろって説教垂れに行くっぽ」
<_フ;゚−゚)フ「お、おう」
<_フ;゚−゚)フ「……電話の事わすれてた……ねーちゃんに電話すりゃ良かった……」
(*‘ω‘*)「お前は……」
- 115 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:15:23.63 ID:c7AJKw4QO
-
もう一度小さく謝罪をした私は、お化け屋敷から出て、遊園地を後にした。
かつんこつんとパンプスの踵を鳴らしながら歩き、私は思う。
何とか弟がこれ以上落ち込まないように、思い詰めないように、
私には、私の出来る事をしよう。
この件の発端は、私なのだから。
弟の気持ちと人外達の気持ちを思えば、ひどく胸が痛くなった。
けれど、一家の柱として私はみんなを支えるんだ。
それが私の幸せにも繋がるのだから。
それと、エクストの話に出てきた魔女の素直シュール。
あれ、うちの会社の社長なんだけど。
転職しようかな。
- 118 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:17:15.83 ID:c7AJKw4QO
-
『一ヶ月は待てっぽ弟、一ヶ月はみんなを信じてやれっぽ。一ヶ月で帰って来なかった時は、気持ちの整理をしろっぽ』
ある日の、ねーちゃんの言葉が頭に回る。
ねーちゃんはひどく真剣な顔をして言っていて、我輩もみんなを信じたくて、黙って頷いた。
みんなを信じたい。
みんなを信じてる。
みんなはきっと、帰ってくる。
それだけが、我輩を支えていた。
そっと気遣ってくれるねーちゃんや、明るく接してくれる友人達。
もちろんみんなにも支えられているのだが、胸にぽっかり空いた空間は、未だに埋まる事は無い。
我ながら女々しいと思う、情けないと思う。
自分の情けなさに怒りすら感じるのに、我輩は未だ、こんなに寂しい。
ああ、悔しいな。
- 121 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:19:09.08 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「はぁ……寒い、手が冷える……」
手袋を忘れた日の下校途中、我輩は赤くなった指先に息を吐きかけて擦っていた。
この時期に手袋を忘れるとは我輩はなんと間抜けなのだろう。
冷えきって痛みすら感じる指先に意識を向けながら歩いていると、工事現場のフェンスが見えた。
オレンジと黒で彩られた大きなフェンスの隣を通り抜けながら指先を擦りあわせる。
(,,゚Д゚)「おら新入り! ちゃっちゃと運べ!」
ミ,,゚Д゚彡「うっす!!」
(,,゚Д゚)「それじゃねぇよバカタレ! そっちだ!」
ミ,,゚Д゚彡「う、うっす!! すんませっ!!」
そのまま通り抜けようとした我輩の足が、無意識の内に、ぴたりと止まった。
- 129 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:21:17.39 ID:c7AJKw4QO
-
今、聞き覚えのある声が聞こえた気がした。
二十日ほど振りに聞いた、低くて通る声。
あの声、は。
(ΦωΦ;)「っ!」
(,,゚Д゚)「よっし新入り! それ持って向こう行け!」
ミ,,゚Д゚彡「うっす!!」
フェンスの向こう側、土砂の山を運びながら泥まみれで汗を流す男。
浅黒い肌をした、焦げ茶の長い癖っ毛の、大柄な男。
あれ、は、
(ΦωΦ;)「い……犬っ! 犬っ!?」
ミ;,゚Д゚彡「!?」
(ΦωΦ;)「犬! おい、犬なのだろう!! おいっ!!」
- 132 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:23:05.97 ID:c7AJKw4QO
-
我輩の声が聞こえたのか、聞こえていないのか。
黄色のヘルメットを深くかぶり直した男は、慌てて我輩に背を向けた。
周囲の人々がいぶかしげな目で見てくるが、そんな事は気にならなかった。
それよりも、ただ、こっちを見て返事をしてほしくて。
(ΦωΦ;)「犬……犬っ!」
ミーДー,;彡「……」
(ΦωΦ;)「ッ……犬! こっち向け犬! フサっ!!」
ミ Д ,;彡「!」
(ΦωΦ;)「無視するな! フサだろうが貴様っ!! 待っ、おいフサぁッ!!」
- 139 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:26:07.52 ID:c7AJKw4QO
-
肩がぴくんと揺れたかと思えば、男は駆け足でプレハブの向こう側へと消えてしまった。
我輩はそのあとを追い掛けたくて、フェンスを乗り越えようと網状の穴に手足を掛けてよじ登る。
しかし、
(;,゚Д゚)「おいおいぼっちゃん、それは勘弁してくれや」
(;ΦωΦ)「あ……」
ガードマンの男に肩を掴まれてしまえば、抵抗など出来るはずもなく。
フェンスを登りかけていた体を地面に下ろして、がっくりと項垂れる。
(; ω )「……すみませんで、ある……お騒がせ、して」
(;,゚Д゚)「いや……まあ事情はわかんねぇけど、こっちも仕事なんだ。部外者入れちゃいけねぇから、な?」
(; ω )「は、い……」
ガードマンの言う事はもっともで、我輩はただ謝罪して、頭を下げるくらいしか出来なくて。
ちら、とフェンスの向こうを見ても
もうそこには、あの男の影すら感じられなかった。
- 143 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:28:20.11 ID:c7AJKw4QO
-
我輩は何をしているのだろう。
肩をがっくりと落とし、体を引きずるようにして歩く。
先程の事が頭の中をぐるぐる、ものを考える事すら億劫なほどに同じ事ばかりが回っていて。
あれは確かに犬だったはず、我輩がフサと呼ぶと、確かに反応した。
けれど何も言わず、こちらも見ず、逃げてしまった。
我輩は嫌われていたのか?
顔すら見たくないと思われていたのか?
いや、違う、違うはず、違うんだ、きっと違う
何か理由があるんだ、そうだ、今さら我輩と顔をあわせにくいとか、きっと
そうじゃなきゃ、そうじゃなきゃあ、
本当に、嫌われていたんじゃないかって、思うしか、ないじゃないか。
( ω )「……」
( つω)「……」
いやと言うほど熱を持った目元を、手で隠した。
信じたい、信じさせてほしい、みんなの事を。
- 148 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:30:30.39 ID:c7AJKw4QO
-
ソファに並ぶ、五つの人形。
吸血鬼、ゾンビ、狼男、ゆきんこ、一反木綿。
そして、我輩の手の中で最後の一針で出来上がろうとしている、オレンジ色のおばけ。
他の人形よりも大きな、30cmはあろう大きさの人形。
それは、エクストとほぼ同じ大きさで、両手で抱えるような丸い人形。
その最後一針を、ゆっくりと縫い終わらせた。
( ΦωΦ)「……一ヶ月、か」
結んだ糸をぷちんと切れば、完成したおばけの人形。
ソファに座ったまま裁縫道具を片付けて、ごろん、ソファに寝転がる。
あんなにも長いと感じていた日々も、慣れてしまったのか、いつの間にか一ヶ月が経っていた。
ちょうど、そう、人外達が居なくなって、ちょうど一ヶ月だ。
- 151 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:32:11.59 ID:c7AJKw4QO
-
おばけの人形を抱き抱えて寝転がった我輩の背中に押し潰されかけている、五つの人形。
なんだか押し潰しているのが申し訳なくて、寝転がった状態のまま、ソファから転がり落ちた。
ごつん、と床に頭をぶつけた後にごろり転がり、横を向く。
その時ソファに足が当たってしまい、衝撃で五つの人形もソファから転がり落ちる。
ぽすぽす、と我輩の上に落ちてくる人形達。
腕や足、腰の上に乗っかる人形を元の位置に戻す気にもなれず、我輩は目を瞑った。
一ヶ月、我輩がみんなを待つ事が出来る期間が、終わろうとしている。
人外達みんなは、帰ってくるどころか音沙汰も無く、きりきりと胃が痛んだ。
もしかしたら痛むのは胸なのかも知れないが、もう、分からない。
ただ、どうしようもない虚無感が、我輩を包んでいた。
( +ω+)「……楽しかった、な」
人外達と過ごした日々はどうしようもないほどに楽しくて、愛しくて、忘れたくなくて。
それでも我輩は忘れてしまうのだろうか。
みんなを待つ事を止めた明日から、少しずつ少しずつみんなの事を忘れてしまうのだろうか。
また、胸が痛んだ。
- 156 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:34:07.71 ID:c7AJKw4QO
-
つきつきと痛む胸を押さえるように、人形を抱く腕に力をこめる。
柔らかくて暖かな人形が我輩の力によってぐにゃりと歪み、苦しそうに見えた。
それでも腕に込めた力を緩める事はなく、人形の額あたりに顔を埋め、呼吸を静かにさせる。
この寂しさに満ちた毎日も、今日で終わってしまうのだろう。
それでも構いはしない。
寂しいけれど、構わない。
どこかで、みんなが幸せにしていれば、何でも良い。
少し、眠ろう。
昼の暖かな明かりに照らされながらそう思うや否や、我輩の意識はゆるやかに睡魔へと飲み込まれて行った。
最後にみんなの夢を見れれば良いのに、等と胸の中で囁いて。
- 159 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:36:39.89 ID:c7AJKw4QO
-
( +ω+)「…………む、むぅ」
床に寝転がって眠っていた事で、腰や肩が鈍く痛む。
ぎしぎし、と軋む体が妙に重く感じ、我輩は唸りながらゆっくり瞼を押し上げた。
世界は夜に近い夕方の濃い赤に染まっていた。
のそ、と上半身を持ち上げた時、重い肩から何かが転がり落ちた。
l从xдxノ!リ人「むぎっ」
( ΦωΦ)「ん、ああ、すまん」
l从・∀・ノ!リ人「気にするななのじゃー」
( ΦωΦ)「ああ、そうか、すまんな」
( ΦωΦ)
( ΦωΦ)「……ん?」
- 164 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:38:08.36 ID:c7AJKw4QO
-
/ ゚、。 /「おきたか」
(ΦωΦ )「あ、ああ、鈴木」
【+ 】ゞ゚)「御館様、お体は痛くありませんか?」
( ΦωΦ)「ああ、少しは痛むが、」
(#゚;;-゚)「ちゃんとベッドで寝なきゃです、ロマネスクさん」
(ΦωΦ )「す、すまん、つい」
ミ,,゚Д゚彡「風邪引くぞ」
( ΦωΦ)「ああ、気を付ける」
l从・∀・ノ!リ人「ねこめー、まだ眠いのじゃー?」
( ΦωΦ)「あー……そう、かも……知れん」
l从・∀・ノ!リ人「じゃあ妹者が起こすのじゃ」
ンギュリィィィ
(;Φω+>∝⊂l从・∀・ノ!リ人
イデェ!!
- 172 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:40:17.52 ID:c7AJKw4QO
-
( Φω+(#)「……あ、れ?」
l从・∀・ノ!リ人「まだ眠いのじゃ?」
【; 】ゞ゚)「お、御館様! 大丈夫ですか!?」
( Φω+(#)「ああ…………夢じゃない、とな」
(#゚;;-゚)「夢じゃないです」
グェア
ミ(;+ω+(#/゚、。 /゙ ンギュイ
/ ゚、。 /「現実」
( +ω+(#)「そのよう……だな、げほっ」
ミ,,゚Д゚彡「大丈夫かお前」
( Φω+(#)「うむ……」
- 176 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:42:18.22 ID:c7AJKw4QO
-
目を覚ました我輩の周りに居たのは、一ヶ月前、忽然と姿を消した人外達。
我輩の上に乗っかっていた各々の人形と同じ場所にのっかかる人外達の姿に、目を丸くするしか出来ず。
ただただ、ぽかん、と間抜けな顔を晒していた。
( ΦωΦ)「あ、ぁ……え、と……?」
(#゚;;-゚)「黙って出ていってしまって、本当に御免なさいです」
( ΦωΦ)「あ、や、どうし、」
(#゚;;-゚)「……私たちが家計を逼迫させている事が分かって、それで、少しでもお金を入れられたらと思って」
( ΦωΦ)「あ……」
/ ゚、。 /「ごめん、勝手に」
l从・д・`ノ!リ人「心配かけてごめんなさいなのじゃー……」
【+ 】ゞ゚)「申し訳御座いませんでした、御館様!」
ミ,,゚Д゚彡「……悪かったな、こないだ逃げたりもして」
( ΦωΦ)「……いや、その、……あ、エクス、ト……?」
- 182 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:44:16.36 ID:c7AJKw4QO
-
口々に謝罪の言葉を並べる人外達に、余計に混乱してしまった。
ええと、家計? 金?
ああもう頭がこんがらがる。
みんなの申し訳なさそうな顔を見ていると、一人、足りない事に気付いた。
机に背を向けて座った状態で、その足りない、おばけの姿を探しながら名を呼ぶ。
すると、
<_プー゚)フ「ここだぞー!」
我輩の胸の辺りから、声がした。
ひょいと視線を落としてみると、胸に抱いた人形が、ぴこぴこ動いていて。
もう、頭が混乱しきっていて何にどう反応すれば良いか、分からない。
取り敢えず、エクストが人形に憑依しているらしい事はなんとなく分かった。
- 187 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:46:22.15 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「ああ、エクスト……こんな所に居たのか」
<_プ−゚)フ「ん……黙って出ていって、ごめんな」
( ΦωΦ)「いや……皆、戻ってきたから……それより、何で一ヶ月も……?」
「それはな、弟」
抱き締めていた腕を緩めると、人形に入ったエクストが我輩の膝の上でぽんぽんと跳び跳ねる。
ぽむんぽむん、柔らかさを膝に感じながら首を傾げていると、リビングの入り口から声が聞こえた。
慌ててそちらを向こうと体の向きを変えた、その瞬間。
ぱちん。
(;+ω+)「ぬぁっ、まっぶし……」
(*‘ω‘*)「ぅおーい弟ー」
(+ω+;)「ね、ねーちゃんいつの間に……何であるか」
- 189 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:48:28.74 ID:c7AJKw4QO
-
突然部屋の明かりがつけられた眩しさに、思わず目を瞑ってしまった我輩。
そして聞こえる、ねーちゃんの声。
目元を擦ってゆっくり瞼を持ち上げるが、まだ少し目がちかちかする。
それでも何とか目を明るさに慣れさせ、声がした方向を見やると、
テーブルの上いっぱいに広げられた、ケーキやらチキンやらの料理。
部屋中には様々な色紙やら何やらが飾り付けられていて、何かのお祝いである事はすぐに分かった。
( ΦωΦ)「…………ぇ、」
(*‘ω‘*)「18歳の誕生日、おめでとうっぽ、弟」
( ΦωΦ)「誕生、日?」
(*‘ω‘*)「おうよ」
l从・∀・ノ!リ人「おめでとーなのじゃ猫目!」
【+ 】ゞ゚)「おめでとうございます、御館様!」
(#゚;;-゚)「おめでとうです、ロマネスクさんっ」
ミ,,゚Д゚彡「あー、まー……おめっと」
/ ゚、。 /「おめでとう」
- 193 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:50:12.36 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「え、ぅ、」
<_プー゚)フ「おめでとうな、猫目!!」
( ΦωΦ)「ああ、あり、が」
( つωΦ)「と、う」
( つω)「……」
溢れんばかりの拍手と、笑顔と、おめでとう。
ああ、もしかしなくても
あの一ヶ月は、この日のためにだったのか。
目頭が、ぶわり、と熱くなった。
- 197 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:52:33.58 ID:c7AJKw4QO
-
<_フ;゚−゚)フ「お、おい猫目! 泣くな!」
l从・д・;ノ!リ人「ねこめー! 泣くななのじゃー!」
(;#゚;;-゚)「あわわわ、ロマネスクさん、大丈夫ですかっ?」
【; 】ゞ゚)「御館様、如何なさいましたかっ!?」
ミ;,゚Д゚彡「いやおい、泣くなよお前」
/ ゚、。 /「鈴木で、顔ふけ」
(*‘ω‘*)「おうおう、平和だなこいつら」
一言寄越せとか、心配かけるなとか、文句は山ほど言いたかった。
けれど、我輩のためにとしてくれた事なら、我輩は。
ああ、目が熱い。
これでは人形に顔を押し付けざるを得ないではないか、情けない。
- 200 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:54:11.76 ID:c7AJKw4QO
-
( つω)「……ぐ」
【; 】ゞ゚)「お、御館様……」
( つω+)「お、か」
(#゚;;-゚)「おか、?」
( +ω+)「おかえ、り、みんな」
( ;ωΦ)「……おかえり、バカ共」
エクスト人形から顔をあげて呼吸を整え、目元を擦ってから、ずっと言いたかった一言を。
途切れ途切れに言えた、一言。
言い終えると同時くらいに、また、目から熱がぼろっと溢れ落ち、顔を濡らした。
そして、軽く顔を見合わせた人外達は、満面の笑み。
勢い良く、全員が我輩に飛び付いてきて、
「ただいまっ!!」
- 204 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:56:20.89 ID:c7AJKw4QO
-
みんなに押し潰されながら涙を止められなかった我輩と、我輩達を見て笑うねーちゃん。
そしてみんなから、働いて貰った給料で購入したプレゼントを渡され、また涙が止まらなくなった。
歳を食うと涙もろくなると言うが、それなのだろうか。
その日は一晩中大騒ぎで、親友達も呼び寄せて大騒ぎをして、
ここまで盛大な誕生日は、生まれて初めてだった。
もう些細な問題すら気にならないほどに、嬉しかった。
今日は、我輩じゃなく
我輩の、おとんの誕生日なのだが。
もう、気にしないようにした。
でもねーちゃんちょっとひどい。
- 209 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 20:58:09.36 ID:c7AJKw4QO
-
そして訪れる、一ヶ月前と変わらない平凡。
騒がしくて、賑やかで、みんなに振り回される日常。
そんな毎日が大好きなのだと気付いた我輩は、心底嬉しくて、幸せで。
ああそうだ、エクストが人形に憑依できるようになっていました。いつの間にか。
人形に入ってても飯なんかは食えるらしく、我輩はそれを見ながら、
やっぱり常識は通用しないんだなあ、と、またも思い知った。
何でもありの癖に微妙に現実的、それが、我が家の人外達である。
- 217 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:00:11.25 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「鈴木を洗濯機に入れてー」
/ ゚、。 / ピチピチ
( ΦωΦ)「人形inエクストも洗濯機に入れてー」
<_プー゚)フ dkdk
( ΦωΦ)「洗剤入れて、スイッチオン」
ぐぉんぐぉんぐぉんぐぉん。
/ ゚、。 / ジャプジャプ
<_フ;@д@)フ「おおおおお目が回る! 目が回るぞー!!」
( ΦωΦ)「まーそりゃそうだ。
あ、ネットに入れ忘れた。綿が片寄るかも」
/ ゚、。 / グィングィングィン
<_フ;@д@)フ「ぬおおおお!! 目があああああ!!」
( ΦωΦ)「楽しそうだなあ」
- 222 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:02:29.63 ID:c7AJKw4QO
- ミ,,゚Д゚彡「おい水色、スノブラやろうぜ。俺ニックな」
/ ゚、。 /「ん」
ミ,,゚Д゚彡「これなんつったっけ、トーチャンカーチャン?」
/#゚、。 /「小さいのうざい」
ミ#,゚Д゚彡「あ、死ぬ! 死ぬ! うぜぇ!」
( ΦωΦ)
/゚、。 /?
( ΦωΦ)「鈴木さん、我輩のパンツありませんか」
/゚、。;/そ
( ΦωΦ)「あの、風呂上がりにノーパンでパジャマってかなりキツいんで、その」
三/;゚、。/ ピュー
ミ,,゚Д゚彡「あ? どしたんだ」
( ΦωΦ)「いや、その、風呂から上がったらなぜかパンツだけ置いてなくて」
ミ;,゚Д゚彡「ああ……ゲームしてたから忘れたのか……」
( ΦωΦ)「これすっげぇ心細い」
- 226 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:04:19.31 ID:c7AJKw4QO
-
l从・∀・ノ!リ人「ねーこーめー!」
( ΦωΦ)「んー?」
l从・∀・ノ!リ人「肉まん食べたいのじゃ」
(´ΦωΦ)「昨日食べたでしょっ」
l从・д・`ノ!リ人「うぇー……食べたいのじゃー……」
(`ΦωΦ)「毎日はいかんのである!」
(#゚;;-゚)「肉まん……? でも妹者さん、暖かいのは……」
l从・∀・ノ!リ人「? 肉まんはちめたいのじゃ!」
(#゚;;-゚)?
( ΦωΦ)(冷凍冷凍)
(#゚;;-゚)(あ、冷凍のそのまま食べてるんですか……)
- 231 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:06:42.88 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「んー……」
(#゚;;-゚)「どうですか?」
( ΦωΦ)「うむ、腐敗は進んでなさそうであるな」
(*#゚;;-゚)「良かった、妹者さんと一緒に居るのが良いのかもですね」
( ΦωΦ)「うむ。どれ、腐敗進んでないプレゼントをやろう」
(#゚;;-゚)?
(#゚;;-゚)!
( ΦωΦ)「どうだ、少しは喜んでもらえたであろうか」
(*#゚;;-゚)「はいです! 防腐剤と遊園地のペアチケット……!
うわー、うわー、うわー! ありがとうございます、モララーさんと行くです!」
( ΦωΦ)(乙女だなあ……)
- 233 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:08:24.56 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「いただきまーす」
ミ,,゚Д゚彡「まー」
【+ 】ゞ゚)「いただきます」
( ΦωΦ)「公園組とデートに行ったでぃが居らんと静かであるな」
【+ 】ゞ゚)「ドクオさんがいらっしゃった日を思い出しますね」
(´ΦωΦ)「あー……」
ミ,,゚Д゚彡「あぐあぐあぐあ」
(`ΦωΦ)「あ、こら犬! 飯に髪の毛が入っとる! くくれ!」
ミ,,゚Д゚彡「あー? ったくめんどくせぇ……良いじゃねぇかよ別に」
(`ΦωΦ)「よかないわロン毛! オサムを見習え! ちゃんとくくっとるだろうが!」
ミ;,゚Д゚彡「くくるのはまだしも前髪をピン止めで止めるのはどうかと思うんスけど」
(`ΦωΦ)「まあ、それは……いやしかし貴様より清潔には見える!」
ミ;,゚Д゚彡「わぁったようっせぇなあ!!」
【+ 】ゞ゚))モグモグモグモグ
- 239 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:10:08.15 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「あー風呂上がりすっきりさっぱりホッカホカ」
( ΦωΦ)「明日の用意して寝るかな」
がちゃ。
【+ 】ゞ゚)
( ΦωΦ)
【; 】ゞ゚)
( ΦωΦ)「オサムさん、なぜに我輩の学ランを着てらっしゃるんであるか」
【; 】ゞ゚)「あ、そ、その、あの……つ、つい着てみたくて……」
(´ΦωΦ)「…………袖も裾もつんつるてんではないか……」
【; 】ゞ゚)「ご、ごめんなさい……」
(´ΦωΦ)「いや良いけど……シワつけずに戻しといてね……」
【; 】ゞ゚)「はい……」
- 243 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:12:11.42 ID:c7AJKw4QO
-
ああ、いつもと変わらない毎日が、こんなにも幸せだなんてな。
人形inエクストを膝に乗せながらコーヒーを飲む、休日朝のリビング。
膝掛けを膝にではなく、肩に掛けながら本を読む。
<_プー゚)フ「猫目ー」
( ΦωΦ)「んー」
<_プー゚)フ「寂しかったか!」
( ΦωΦ)「おうよ」
<_プー゚)フ「俺もだ!」
( ΦωΦ)「なら電話くらいしなさいね」
<_プー゚)フ「それじゃサプライズにならないじゃん……」
( ΦωΦ)「そのサプライズで胃に穴が空くかと思ったわ、バカタレ」
<_プー゚)フ「嬉しくなかったか?」
( ΦωΦ)「死ぬほど嬉しかったから悔しいのだろうが」
- 247 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:14:20.82 ID:c7AJKw4QO
-
<_プー゚)フ「へっへーん」
( ΦωΦ)「調子に乗らない」
<_プ听)フ「ごめんちゃい」
(#*‘ω‘*)「ッシャオラァッ!!」
(ΦωΦ;)「何だ!?」
(#*‘ω‘*)「入金されてたっぽ! やったぜ畜生!! 転職してぇっぽ!!」
(ΦωΦ;)「なんだなんだもう良く分からん!」
<_プー゚)フ「よくわからんけどおめでとう!」
(*‘ω‘*)「よっしゃ晩飯は肉だ肉! 牛の肉ブロックで買ってこいっぽ!!」
(ΦωΦ;)「ねーちゃん落ち着きませんか!?」
- 252 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:16:40.20 ID:c7AJKw4QO
-
(#゚;;-゚)「ロマネスクさーん」
( ΦωΦ)「ん? どうした、でぃ」
l从・∀・ノ!リ人「なんか宅配便だか宅急便だかがきてるのじゃー」
ミ,,゚Д゚彡「持ってくるぞー」
( ΦωΦ)「お、把握した、判子押しに行くのである」
|ωΦ )))
ミ,,゚Д゚彡「どっこい、せっと」
【+ 】ゞ゚)「大きいですね」
ミ,,゚Д゚彡「しかも重てぇ」
/ ゚、。 /「箱の材質、かたい」
(*‘ω‘*)「なんだっぽこりゃ、箱の素材からして冷蔵庫でもなさそうだし」
- 256 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:18:30.46 ID:c7AJKw4QO
-
( ΦωΦ)「たでーま、それ運ぶ人も大変であるな」
<_プー゚)フ「おおでけぇ! 開けようぜ!」
(*‘ω‘*)「はいよっと」
びりびりびり。
がっこん。
( ゚∋゚)
( ΦωΦ)
(*‘ω‘*)
( ゚∋゚)「Hello」
(;ΦωΦ)「喋った!!」
- 260 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:20:14.75 ID:c7AJKw4QO
-
( ゚∋゚)「いやだなあ喋りますよ、HAHAHA」
(;ΦωΦ)「あ、あれ、何であるかこの果てしない違和感」
( ゚∋゚)「冗談はこれくらいに致しまして」
(;ΦωΦ)「冗談!? さっきの冗談!?」
( ゚∋゚)「ほら、あなたも出てきなさい」
(;ΦωΦ)「まだ何か居る!?」
o川*゚ー゚)o゙ ヒョコ
(;ΦωΦ)「…………思ったより普通だ」
o川*ぅー゚)o「は、初めましてぇ……あ、あのぅ……キュートと言います、よろしくお願いしますぅ……」
(;ΦωΦ)「あ、こ、こちらこそ……杉浦ロマネスクと……」
( ΦωΦ)
(;ΦωΦ)「腕!!?」
- 270 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:22:10.13 ID:c7AJKw4QO
-
o川*゚ー゚)o「よ、四本腕ですよぉ……」
(;ΦωΦ)「いやそんな、えええええ!?」
( ゚∋゚)「そんな訳で、これからお世話になります」
(ΦωΦ;)「どんな訳!? どんな訳なのであるか!?」
( ゚∋゚)「因みに私が鳥人間クックルでその子がフランケンなキュート、簡単に言うと四つ腕の乙女です」
(ΦωΦ;)「わあ簡単! ふざけんな!!」
( ゚∋゚)「いやぁお姉さん美人ですね、お茶も美味しい」
(*‘ω‘*)「美人だなんて照れるじゃねぇかっぽ、その茶を入れたの弟だけど」
(ΦωΦ;)「馴染むなあああああああああ!!!!」
<_プー゚)フ「猫目ーこれー」
(;ΦωΦ)「こ、今度は何であるか!?」
o川*゚ー゚)o「お、お手紙です、箱の中にくっついてましたぁ……」
(;ΦωΦ)「手紙?」
- 273 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:24:32.94 ID:c7AJKw4QO
-
『お久しぶりです娘と息子、パパだょぅ。
取り敢えず銀行に入金して、ついでにフランケンと鳥人間を送ったょぅ。
少ししたらクール便で人魚とかも届くと思うからよろしくだょぅ。
じゃ、あとは頼んだょぅ! by父&母』
( ω ) 三 Φ Φ
=ΦΦ/ ゚、。 / パシッ
/ ゚、。 /「目」
(;つω )つΦ「あ、あぁ……すまん……」
(;ΦωΦ)「……えぇ、と」
(#゚;;-゚)「また、何か来るんですか?」
(ΦωΦ;)「信じたくはないが、そうらしい」
<_プー゚)フ「これ、とーちゃんの手紙なのか? 本物か?」
(;ΦωΦ)「この二昔ほど前の丸い少女漫画文字にふざけた文章、間違いなくおとんである」
- 276 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:26:07.85 ID:c7AJKw4QO
-
(*‘ω‘*)「つー事は……」
ミ,,゚Д゚彡「おい! またなんか来たぞ!」
【+ 】ゞ゚)「さっきよりは小さい、発泡スチロールの箱ですね」
(#゚;;-゚)「受けとりですか? 拒否ですか?」
(;ΦωΦ)「……とりあえず、受け取りで」
l从・∀・ノ!リ人「運ぶのじゃー! 手伝えなのじゃ新入り!」
o川*゚ー゚)o「は、はぁい」
( ゚∋゚)「Yes」
/ ゚、。 /「持ってきたぞ」
<_プー゚)フ「開けろ開けろ!」
ぱこん。
ζ(゚ー゚*ζ
- 283 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:28:54.73 ID:c7AJKw4QO
-
<_プー゚)フ「半魚人だ!」
ミ,,゚Д゚彡「いや人魚だろせめて」
ζ(゚ー゚*ζ「初めまして、デレともうしまっす!」
【+ 】ゞ゚)「あれ、また手紙がくっついて……」
l从・∀・ノ!リ人「えーと、一緒にあくまも送るから、待てとうちゃく」
(;ΦωΦ)「無限ループって恐ろしいと思いませんか!?」
ぴんぽーん。
(ΦωΦ;)「ヒィッ! 来た!!」
ミ;,゚Д゚彡「あーもーまたでけぇ箱来た!! 受け取り拒否で良いだろもう!!」
(#゚;;-゚)「今度のはなんか禍々しいです……」
(ΦωΦ;)「おとんのバカヤロォオオオオオオオオ!!!!」
- 288 ◆tYDPzDQgtA 2008/12/14(日) 21:31:16.84 ID:c7AJKw4QO
-
結局、おとんが入金してくれた分に見合うほどの人外が送られてきた。
一人増え二人増え、もう我が家の床が抜けるのではないかと不安すら覚える。
まあ賑やかではあるのだが、我輩の部屋で寝る奴が増えたので、やたらと部屋が狭い。
いつもよりしっちゃかめっちゃかで、騒がしくて、増えはするのに全く減らない人外達。
その中でも、やはり初期メンバーやエクストと居るのが、不思議と落ち着く。
<_プー゚)フ「ねーこーめっ」
( ΦωΦ)「ん?」
<_プー゚)フ「カゾクだよな、俺らみんな!」
( ΦωΦ)「────ああ、勿論だ」
ねーちゃん以外は血の繋がりはない、それでも、
我輩の家族は、おばけとかのようです。
おわり。