『前途多難な二人のようです』
/ ゚、。
/
私は背が高い。
平均女子の身長を軽く抜かす程度に高い。
平均男子の身長をも抜かす程度に、高い。
私、鈴木ダイオードは、身長がコンプレックスです。
昔からデカ女デカ女とバカにされる学生時代、特別仲の良い友達も出来ずに隅っこで過ごした暗い学生時代。それもあと少しとなった高校三年の今、私は
( ΦωΦ)「鈴木、待つのである」
/
゚、。 /「やだよ」
(´ΦωΦ)「んな冷たい事言うなよ……」
/ ゚、。
/「やだよ」
( ΦωΦ)「いつデレてくれるのだ、我輩の嫁」
/ ゚、。
/「永久にデレん」
(´ΦωΦ)「ひっで」
変な男に言い寄られている。
/ ゚、。
/『前途多難な二人のようです』(ΦωΦ )
それはある日の朝礼、列の一番後ろに立つ私があいつを初めて見た時。
あいつはひどく渋い、厳めしい、高校生とは思えない顔をしていた。
ぱっと、怖い人だと言う印象を抱く。
そんなあいつは飛び抜けて背が高く、肩幅も広く、少年漫画のラスボスの様。
両目にある縦の傷が、ラスボスさを引き立てていた。
( ΦωΦ)「杉浦ロマネスクである、宜しく頼む」
日曜の夜のアニメの唇がごっつい人みたいな声で自己紹介をしたあいつは小さく頭を下げて、一番後ろ
私の隣の席に、座った。
怖そうな人だとビクビクしながら持っていない教科書を見せたり消ゴムを貸していても、少しずつ打ち解ける様になるもの。
そして分かった事は、顔や声ほど怖い人間じゃないと言う事。
/
゚、。 /「その、傷は?」
( ΦωΦ)「にゃんこ構ってたらバリーッて」
/ ゚、。
/「……」
( ΦωΦ)「笑ってくれよ……」
少しずつ。
( ΦωΦ)「鈴木、教科書を忘れたのである」
/
゚、。 /「はいはい」
( ΦωΦ)「鈴木、消ゴムを無くしたのである」
/ ゚、。
/「はいはい」
( ΦωΦ)「鈴木、弁当を忘れたのである」
/ ゚、。 /「知るか」
(´ΦωΦ)
/
゚、。 /「知るか」
(`ΦωΦ)「パン買ってきますよ! フーンだである!」
/ ゚、。
/「コーヒー牛乳も」
(´ΦωΦ)
少しずつ。
( ΦωΦ)「鈴木」
/
゚、。 /「はい、杉浦」
( ΦωΦ)「ロマって呼んでほしいのである」
/ ゚、。
/「はい、杉浦」
( ΦωΦ)「ロマ」
/ ゚、。 /「はい、杉浦」
(`ΦωΦ)「ロマ!」
/ ゚、。
/「はい、杉浦」
(´;ω;)「ロマぁ……」
/ ゚、。 /「はいはい、ロマ」
(*ΦωΦ)
/ ゚、。
/「きめぇ」
少しずつ。
( ΦωΦ)「鈴木の弁当は美味そうなのである」
/ ゚、。
/「それはどうも」
( ΦωΦ)+ キラキラ
/ ゚、。 /「やらねぇよ」
(´ΦωΦ)
/ ゚、。
/「……口」
( ΦωΦ)?
/ ゚、。
/「あけろ」
( ΦωΦ)!
(*ΦωΦ)「あーん!」
/*゚、。
/! ドスッ
(; ω )「おぇっ! ゲホッ! ゲホッ!
箸で……喉……ッ!!」
少しずつ。
/ ゚、。
/「ロマ、これ」
( ΦωΦ)「む?」
/ ゚、。 /「弁当」
(*ΦωΦ)オウ……
/ ゚、。
/「きもい」
(*ΦωΦ)「我輩、感動」
/ ゚、。
/「自分のきもさに?」
(*ΦωΦ)「鈴木の愛に」
/*゚、。 /「し、死ね! 死ね!
死ね!」
(*ΦωΦ)「うへへー」
/ ゚、。
/「死ね」
(´ΦωΦ)「真顔はキッツイわぁ……」
少し、ずつ。
( ΦωΦ)「鈴木ー」
/
゚、。 /「ん?」
( ΦωΦ)「好きだ」
/ ゚、。 /「んー」
/ ゚、。 /
/ ゚、。
/「……ん?」
( ΦωΦ)「いや、好きだ」
/ ゚、。 /「何が」
( ΦωΦ)「鈴木が」
/ ゚、。
/「……へー」
( ΦωΦ)「お付き合いしてほしいのである」
/ ゚、。
/「……へ、へー」
( ΦωΦ)「場を選ばないのが我輩のクオリティである」
/ ゚、。
/「選べよ、授業中だよ」
( ΦωΦ)「やだね!」
/ ゚、。
/「……」
( ΦωΦ)「……ごめん好きだ」
/ ゚、。
/「うっさいはげだまれみんなわらってる」
( ΦωΦ)「黙らん、好きだ、ハゲちゃうわ、わらわれたっていいじゃない、にんげんだもの」
(,,゚Д゚)「黙ってほしいなー」
(ΦωΦ#)「うっさいわオッサン!
ハゲろ!」
(,,゚Д゚)
(ΦωΦ )
(,,゚Д゚)
(ΦωΦ )「おや先生」
(,,゚Д゚)「杉浦、強制的に赤点……と」
(ΦωΦ )「あはぁん」
少、し、ずつ。
( ΦωΦ)「マイハニー」
/
゚、。 /「ヘソ噛んで死ね」
( ΦωΦ)「オウフ それでも我輩はめげませんよ?」
/ ゚、。 /「めげろ!
めげろ!」
( ΦωΦ)「スカート捲るぞちくしょう」
/ ゚、。 /「せんせー、杉浦がー」
(;ΦωΦ)「嘘である!
嘘である!
嘘ですごめんなさい!!」
(,,゚Д゚)
(ΦωΦ )「何も無いのである、先生」
(,,゚Д゚)「単位ギリギリだぞー杉浦」
(ΦωΦ )「あはぁん」
私、は。
/
゚、。 /「うわ、雨」
( ΦωΦ)「ひゃほーい雨だー!」
/ ゚、。
/「うぜぇ」
( ΦωΦ)「む、どうした鈴木、雨は嫌いか」
/ ゚、。
/「嫌いだよ普通に」
( ΦωΦ)「んじゃ我輩の傘を貸すのである」
/ ゚、。
/「へ」
( ΦωΦ)「また明日である!」
/ ゚、。
/「いや、ちょ、ま」
三( ΦωΦ)ヒャッホーイ
/ ゚、。
/「……ぇう」
私は。
( ΦωΦ)「鈴木ー、教科書を忘れたのである」
少しずつ。
( ΦωΦ)「我輩の嫁ー、弁当を忘れたのである」
杉浦が。
(´ΦωΦ)「はいコーヒー牛乳……」
好きになっていく。
( ΦωΦ)「鈴木、好きである」
頭の中は、杉浦だらけ。
/ 、
/「うぜぇ……」
( ΦωΦ)「む?」
/#゚、。 /「うぜぇ! きめぇ! はげ! 死ね!
変態!」
( ΦωΦ)「何をエキサイトしておるのだ、翻訳機か」
/#゚、。 /「何なのよ!
そうやってやたら言い寄ってくる癖に私の言葉はのらくらのらくらアホみたいにかわして!
アホが!」
(´ΦωΦ)「どっちやねん……」
/#゚、。
/「アホ!!」
( ΦωΦ)「あい分かった」
/#゚、。 /「大体なんなのよ! いきなり私が好きとか意味わかんないよ!
からかってるなら死んでよ!」
( ΦωΦ)「死なんよ、我輩の気持ちは本物である」
/#゚、。
/「授業中の告白を信じられるか!!」
( ΦωΦ)「なら言い直す、授業中以外に」
/#゚、。
/「その軽さが信じられないんだよ!!」
( ΦωΦ)「ならば、どうすれば信じてもらえる?」
/#゚、。
/「知るか!!」
( ΦωΦ)「ふむ」
( ΦωΦ)「我輩が三階から飛び降りでもしたら、信じるか?」
/#゚、。
/「やれるモンならやってみろアホ!!」
( ΦωΦ)「はいよ」
杉浦は席を立って、似合わない学ランの後ろ姿を揺らして窓を開け放つ。
そして、身を、踊らせ
どさ
/
゚、。
/「……へ」
あれ?
視界から、教室から、杉浦が消えた。
窓から下を確認する勇気がなくて、私は震えながら席を立ち、廊下へと飛び出していた。
杉浦は何を考えているんだ。
どうしてあんな事をしたんだ。
どうして私なんかに告白をしたんだ。
どうして私は、私は、私は。
杉浦が転校してきてから、私は学校で喋るようになった。
杉浦が話しかけてくるから返事をした。
杉浦がボケるから突っ込んだ。
すると、クラスのみんなも私に話しかけてくれるようになった。
純粋に嬉しかった。
薄暗い学生時代、最後の最後に色がついた。
少しずつ友達っぽい人も出来たし、楽しかったし、、身長の事を気にする事も少なくなって、私は
私は
杉浦────ロマが、好きなんじゃないかと思う。
隣に座る巨体、黒い巨体。
あの肩幅が、私より高い身長が、顔や声に似合わない性格が、やたらまっすぐな告白が。
たまらなく好きなんじゃないかと、思う。
私は無我夢中で階段をかけ降り、ロマが落ちた所を目指す。
そして、グラウンドと校舎を繋ぐ引き戸を殴る様に開けて
/;゚、。
/「ロマッ!!」
( ΦωΦ)「はい?」
なんかいた。
/ ゚、。
/「……あれ」
( ΦωΦ)「どしたん」
/ ゚、。
/「お前が言うな」
( ΦωΦ)「あ、心配して駆け付けてくれたのであるか?」
/ ゚、。
/「え、あ、まあ」
(*ΦωΦ)「心配してくれるとは……流石は我輩の嫁なのである!」
/ ゚、。
/「いや、し、心配するだろ常識的に考えて」
( ΦωΦ)「そう?」
/ ゚、。
/「そ、そうだよ、悪魔超人かよお前」
(*ΦωΦ)「照れ」
/ ゚、。
/「るな」
(´ΦωΦ)ロマーン
/ ゚、。
/「け、怪我とか無いの」
( ΦωΦ)「無いのである」
/ ゚、。
/「ど、どこから落ちたの」
( ΦωΦ)「あしのうら」
/ ゚、。
/「は」
( ΦωΦ)「仁王立ちの体勢で」
/ ゚、。
/「悪魔超人かよぉ……」
( ΦωΦ)「照れるのである」
/ ゚、。
/「……」
(´ΦωΦ)「突っ込めよう」
/ ゚、。 /「……」
( ΦωΦ)「……鈴木?」
/ ゚、。
/「なんなのよ、あんた」
( ΦωΦ)「杉浦ロマネスク」
/ ゚、。
/「知ってるよ」
(´ΦωΦ)
/ ゚、。 /「なんで、そん、な、なの、よう」
( ΦωΦ)?
/
゚、。 /「ぇ、ぇぅぇぅ」
(*ΦωΦ)「鈴木かーわいい」
/ ゚、。
/「ぇぅぇぅ……」
( ΦωΦ)「我輩はな」
/ ゚、。
/「ぇぅ」
( ΦωΦ)「鈴木に一目惚れしたのである」
/ ゚、。
/「ぇぅ?」
( ΦωΦ)「朝礼の時に、一目惚れしたのである」
( ΦωΦ)「明後日の方向向いてる鈴木の横顔に、一目惚れしたのである」
/
゚、。 /「ぇ、ぇぅ、ぅ」
( ΦωΦ)「頭ひとつ半ほど飛び抜けていた鈴木のまっすぐな背筋が、好きになったのである」
/ ゚、。
/「ぇぅぅ」
( ΦωΦ)「教室の鈴木は背中がぐんにゃりしていた、しかし我輩が何度も話しかけていると、立っている時の様に背筋がしゃんとしていった」
/
゚、。
/「ぇぅ」
( ΦωΦ)「我輩はそれが嬉しかった、こんな図体と面と声だと皆が怯えるのに、鈴木は怯える事無く我輩と付き合ってくれた、とてつもなく嬉しかった」
/
゚、。 /「ぇぅぅぅ」
( ΦωΦ)「いい加減好きな気持ちを抑えられなくなったから、我輩は鈴木に告白をしたのである」
/ ゚、。
/「ぉぅぃぇ」
( ΦωΦ)「ちゃんと聞け」
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/「ごめんなさい」
( ΦωΦ)「さて、いい加減答えを聞こうか」
/ ゚、。
/「へ」
( ΦωΦ)「我輩の告白どんだけ流すつもりやねん」
/ ゚、。
/「ぇ、あ、ああ、慎んでお受け致しますよ」
( ΦωΦ)「だから鈴木は」
( ΦωΦ)
( ΦωΦ)「ん?」
/
゚、。 /「よく分かんないけど、たぶん私もロマが好きだから」
( ΦωΦ)「ん、んぇ?」
/ ゚、。
/「好きだっつってんだよぶっとばすぞはげ」
( ΦωΦ)「う、うぇぁ、ぉお、おう、うん、うん、そ、そうか」
/ ゚、。
/「鳴くな」
(´ΦωΦ)ニャー
バカップルみたいにぎこちなく手を繋いで教室に戻る私たち。
ロマはさんざん求愛してきた癖に、なぜかやたらめったら緊張していてガッチガチになっていた。
そんな無意味に真剣な横顔がかわいくて、見上げなければならない顔の位置が愛しくて、左腕にべったり、くっついて教室まで戻っていった。
∪∪(,,゚Д゚)∪∪
(,,゚Д゚)つ∪∪∪∪
∪( ΦωΦ)∪
∪/
゚、。 /∪
(,,゚Д゚)「翻訳機じゃないんだから授業中にエキサイトすんなお前らー」
∪/ ゚、。
/∪「すみませんでした」
∪( ΦωΦ)∪「バケツ置いて良いっすか」
(,,゚Д゚)「だめ」
前途多難な、二人です。
end