2 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:15:44 ID:q4G8U50.O

 行く道は様々、賑やかな街や静かな村。

 時には冷たい風を、時には暖かな風を受けて歩いて行く。

 周囲にはいつも移り変わり続ける景色。
 聞こえるのは人の声や風の音、喧騒も静けさも耳へと流れ込む。

 石畳を踏み、土を踏み、景色の中を渡り歩くのは、三人。


 一人はどこか情けない顔をした、人の良い魔導師。
 もう一人は、表情を浮かべず自由に振る舞う戦士。

 その二人の間に居るのは、明るく元気な女の子。


       【旅のようです】
     【第一話 先生はロリコン】



 彼らの間にはいつも、穏やかでいて賑やかな空間が存在する。

立ち絵

3 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:17:32 ID:q4G8U50.O

 わたしは今、森に居ます。


 鬱蒼とした森、湿った土と草の匂いが、むわ、と溢れる場所。

 森の外はまだお昼だと言うのに、生い茂る木々は太陽の明かりを遮ってしまっている。

 足元には不思議な植物やきのこが生え、昼にもかかわらずほうほうと夜の鳥が声をあげる。


 とは言っても、別に森にだけ用があるわけではありません。
 ここは、ただの通り道です。


 わたしたちは、旅をしています。
 一緒に旅をしてるのは、わたしの先生。

 背が高くて少し気弱で、それでも頼もしい、尊敬する先生です。


 そんな先生とわたしは、森を抜けるために黙々と歩いています。

4 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:19:09 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「せんせー、まだ森抜けないの?」

(´・_ゝ・`)「もう少しだよ、ほら、葉の向きが向こうを向いている、こちらに陽が射すんだ」


 この人がわたしの先生、デミタス先生です。
 先生なだけあって、わたしの知らない事をたくさん知っています。


ミセ*゚ー゚)リ「でもどこからでも陽は射すんじゃないの?」

(´・_ゝ・`)「ここの植物は特殊だからね、時間によって葉の向きを変えるんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「今はー……お昼の二時だね」

(´・_ゝ・`)「うん、時間からして陽が射す方向はこっち、この木が生えてるって事は出口が近い」

ミセ*゚ー゚)リ「出口の近くにしか生えてないとか?」

(´・_ゝ・`)「そう、だからあと少し歩けば出られるはずさ、おやつの時間には間に合うね」

ミセ*゚ー゚)リ「わーい! おやつあんの!?」

(´・_ゝ・`)「森の外には近くに村がある、そこで食べられるよ」

ミセ*゚ー゚)リ「やった! おやつ久々だねせんせ!」

(´・_ゝ・`)「果物なんかはあったけど、作られたおやつは久々だね」

5 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:21:36 ID:q4G8U50.O

 前を見たまま話す先生の少し後ろを、小走りでついて行く。

 どんなおやつが待っているのか、想像するだけでお腹が鳴りそう。

 村と言うからそんなに豪華なものではないだろうけど、素朴なおやつも大好きです。


 ナッツの入った固いクッキー、噛めば噛むほど甘さがあふれる。

 果物のパイも捨てがたい、りんごのパイや桃のパイ、とろける甘さがたまらない。

 いいやチーズのケーキも悪くない、少し固めで底に砕いたクラッカーがしっとり甘い。


ミセ*゚ヮ゚)リ「じゅるり」

(´・_ゝ・`)「ミセリ君、妄想してないで歩いてね」
  _,
ミセ*゚д゚)リ「あ、歩いてるよ! 妄想だなんてしつれーな!」

(´・_ゝ・`)「いや、止まってたから」

ミセ*゚ヮ゚)リ「……てへぺろ☆」

(´・_ゝ・`)「ほら、おやつのためにも歩く歩く」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい!」

7 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:23:54 ID:q4G8U50.O

 先生にせかされ、てっこらてっこら森を行く。
 今にも変な生き物が飛び出してきそうな暗い森。

 緑の匂いが好きなわたしにとって、森は心安らぐ場所でもある。
 お日様を浴びられないのは残念だけど、この道中はなかなか楽しい時間でした。


 そして十分ほど歩くと、木々が別れて森の外へと繋がる道が姿を見せた。

 急にお日様が射し込むものだから、眩しくて目を細める。
 それは先生も同じなのか、手をかざして光を遮っていた。


 森を抜けると、広がるのは田舎の風景。

 木々に囲まれた小さな村は、畑やらがなにやらがたくさんあって。
 これはこれで、なんとも落ち着く光景です。


(´・_ゝ・`)「ついたね」

ミセ*゚ー゚)リ「だね!」

(´・_ゝ・`)「僕は先に宿のお願いをしてくるから、ここで少し待っててね」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい」

(´・_ゝ・`)「おやつを食べられる場所も探しておくよ」

ミセ*゚ヮ゚)リ「わーい!!」

8 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:26:04 ID:q4G8U50.O

 先生が村の中へと入ってゆき、わたしは村の入り口でお留守番。

 柵に背中を預けて、ぼんやり空を見上げる。


ミセ*゚−゚)リ「……ひまだ」


 先生に気のいい返事はしたものの、周囲には田畑か森。
 キョロキョロと辺りを見回すのも無作法な気がして、やりづらい。

 そんなわたしを襲うのは、ぼんやりとした暇だけ。


ミセ*゚−゚)リ「せんせ、どれくらいかかるのかなー」

ミセ*゚−゚)リ「探すって言ってたし、ちょっとかかるんだろーなー」

ミセ*゚−゚)リ

ミセ*゚−゚)リ「ひまー」

9 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:28:27 ID:q4G8U50.O

 目新しいものは無いかとしゃがみこみ、足元の草や花を眺める。
 町中で見るよりも生き生きとしてるけど、どれもよくある雑草ばかり。

 少し離れた場所を見ても、たいした変化は感じられない。


 この旅の理由のひとつは、わたしのお勉強。

 いろんなものを見て聞いて感じて、知識を身に付ける事がひとつの理由。
 数字と戦ったりするのは苦手だけど、実は勉強は嫌いじゃない。

 なので、いろんな草木を見て名前や形状を覚えたり、
 薬草としての効果はあるのかと言う勉強は、とっても楽しいこと。

 しかしそのお勉強の対象がなければ、どうしようもないのです。


 めぼしいものが見つからず、ため息混じりに顔をあげようとしたら。

 目の前に、大きな足があった。


ミセ*゚−゚)リ「……うぇ?」


 首をかしげて、しゃがんだまま顔をあげる。

10 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:30:19 ID:q4G8U50.O

 顔をあげたわたしの目に映るのは、大きな人。

 逆光で顔は見えないけど、先生と同じくらい大きな男の人。

 その男の人は、ひょいとしゃがんでわたしに目線を合わせてくれた。


(‘_L’)「おい娘」

ミセ*゚−゚)リ「あい?」

(‘_L’)「お前は、さっき入ってきた男の連れか?」

ミセ*゚−゚)リ「うん、おっちゃん誰?」

(‘_L’)「あの男の知り合いだ」

ミセ*゚ー゚)リ「そーなの?」

(‘_L’)「ああ、長い付き合いだ」


 大きな男の人は、せんせと同じくらいのおっちゃんだった。

 白い髪で無表情で、よれよれのシャツとズボンを着てる。
 お世辞にも身なりが良いとは言えない格好です。

11 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:32:45 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「せんせの知り合いがわたしに何か用?」

(‘_L’)「ひとつ、あいつの事を教えておいてやろう」

ミセ*゚−゚)リ「……なに?」

(‘_L’)「あいつはな」

ミセ*゚−゚)リ「…………」

(‘_L’)「ロリコンだ」

ミセ*゚−゚)リ

(‘_L’)

ミセ*゚−゚)リ「マジで?」

(‘_L’)「マジだ」

ミセ*゚−゚)リ「マジかよ……」

(‘_L’)「マジだ」


 あんまり聞きたくなかった衝撃的事実である。

12 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:34:32 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚−゚)リ「そういや近所のおねーさんもせんせはド鬼畜ロリコンに決まってるって言ってた……」

(‘_L’)「何だそれ怖い」

ミセ*゚−゚)リ「ところでおっちゃん誰?」

(‘_L’)「名前か?」

ミセ*゚−゚)リ「うん、わたしはミセリ、おっちゃんは?」

(‘_L’)「フィレンクトだ、戦士をしていた」

ミセ*゚ー゚)リ「へー、じゃあ強いんだ」

(‘_L’)「程々にな、お前の先生は魔導師だろう」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、腕は良いらしいよ」

(‘_L’)「知ってる、よく組んでたからな」

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ若い頃から知り合いなんだね」

(‘_L’)「付き合いは長い、20年になるか」

ミセ*゚ー゚)リ「わたし生まれてないわ」

(‘_L’)「多少、癪だな」

14 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:37:35 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあおっちゃんも国の育成学校の出なの?」

(‘_L’)「ああ、そこで奴と知り合った」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせは成績優秀の優等生って聞いたけど、おっちゃんも?」

(‘_L’)「教師らに追い回される日々だった」
  _,
ミセ;゚д゚)リ「ただの問題児だ!!」

(‘_L’)「子供の悪戯に本気になる、大人げない教師達だった」

ミセ*゚ー゚)リ「何してたの?」

(‘_L’)「授業に使う魔導書をエロ本にすり替えたり」
  _,
ミセ;゚д゚)リ「そら怒るわ!」

(‘_L’)「全く思春期の子供の気持ちを理解すべきだ」

ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃんがやられたらどうする?」

(‘_L’)「泣くまで殴る」
  _,
ミセ;゚Д゚)リ「おっちゃん最低だわ」

15 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:39:20 ID:q4G8U50.O

(‘_L’)「む」

ミセ*゚ー゚)リ「ん?」

(‘_L’)「戻ってきたな、俺に会ったとはまだ言うなよ」

ミセ*゚ー゚)リ「あーサプライズだね、んじゃまたにー」

(‘_L’)「ああ、またな」


 のっしのっしと去ってゆく変なおっちゃん。
 その背中が消えるまでぼんやり眺めていると、後ろから声をかけられた。


(´・_ゝ・`)「ただいま、遅くなってごめんね」

ミセ*゚ー゚)リ「んーん、おかえんなさーい」

(´・_ゝ・`)「誰かと話してたの?」

ミセ*゚ー゚)リ「んー……ううん、蟻の巣見てた」

(´・_ゝ・`)「蟻はどうだった?」

ミセ*゚ー゚)リ「お仕事大変そうだった」

16 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:42:03 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「この蟻は食べると酸っぱいね」

ミセ*゚ー゚)リ「いやさすがに食べないよ」

(´・_ゝ・`)「食べた奴が居たんだ」

ミセ;゚ー゚)リ「どんだけお腹すいてたの、その人……」

(´・_ゝ・`)「フィレンクトって言ってね、ここに住む僕の友人だよ」
  _,
ミセ;゚−゚)リ「あのおっちゃんホントに変なんだなぁ……」

(´・_ゝ・`)「うん?」

ミセ*゚ー゚)リ「なんでもなーい、それよりおやつ!」

(´・_ゝ・`)「はいはい、あっちのお店でクルミのパイが食べられるよ」

ミセ*゚ヮ゚)リ「わーい!!」

(´・_ゝ・`)「食べたら勉強に移ろうね、それまでは少し休憩」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい!!」

17 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:43:28 ID:q4G8U50.O


 せんせが部屋をとった宿屋に荷物を置きに行ってから、最低限の荷物を持ってご飯屋さんへ。

 こぢんまりで質素で、それでも何だかあたたかいお店。
 先生はサンドイッチとコーヒーを、わたしはパイとミルクを注文しました。

 運ばれてきたものも、お店同様に質素だけれど何だかあたたかくて、とっても美味しいものばかり。


 味の濃いミルクと甘さ控えめのクルミパイの相性は抜群で、
 口の水分を持ってきがちなパイを口に運び、堪能してからミルクで押し流す。

 すると優しい甘さとミルクの濃さはたいへん良いバランスで混ざり合い、なんとも言えない幸福感。

 少し固いパンのサンドイッチを食べる先生もそれは同じなのか、何だか嬉しそうにコーヒーを飲む。

 おいしいねおいしいねと言い合って、にこにこしながら軽食を終えた。


 晩御飯も遠くはないので、少し物足りないくらいがちょうど良い。
 少し名残惜しく思いつつ、わたしたちはお店を後にした。

18 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:45:41 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ヮ゚)リ「はー、おいしかったねせんせ」

(´・_ゝ・`)「そうだね、素朴さがとても良い形で溢れてた」

ミセ*゚ー゚)リ「ここにはどれくらい居るの?」

(´・_ゝ・`)「長くて三日だね、また明日食べに来ようか」

ミセ*^ヮ^)リ「うんっ!」

(´・_ゝ・`)「よし、じゃあお勉強だね」

ミセ*゚ー゚)リ「今日はなんのお勉強?」

(´・_ゝ・`)「ここは自然が多いから、薬草の種類をおさらいもかねて調べようか」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい!」


 筆記用具と小さな入れ物を持って、草木の多い森の近くへと移動。
 さっき見た場所では目新しいものは無かったけれど、少し移動すれば珍しい草木が生えていた。

 良い勉強の材料はないかと辺りを見回す先生のあとをついて歩く。

 と、さっきおっちゃんに言われた事を思い出した。

20 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:47:17 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「ねーせんせ、ここにはせんせのお友達がいるんだよね」

(´・_ゝ・`)「ん? うん、そうだよ」

ミセ*゚ー゚)リ「そのお友達もロリコンなの?」

(;´・_ゝ・`)「も!? 僕がロリコンである事を前提に話を進めてるの!?」

ミセ ゚−゚)リ「だって先生ロリコンなんでしょ?」

(;´・_ゝ・`)「ま、真顔で言わないで! 違うよ!? どっか別のデミタスさんと混同してる!?」

ミセ ゚−゚)リ「近所のおねーさんも、先生はロリコンだー鬼畜だーって」

(;´・_ゝ・`)「やっぱりも!? 他にも言う人が居るの!?」

ミセ ゚−゚)リ「違うの?」

(;´・_ゝ・`)「違うから! そのお姉さん達は間違いなく何かに毒されてるから!!」

ミセ*゚ー゚)リ「なんだ、違うんだ……」

(;´・_ゝ・`)「誰だか知らないけど、僕の人間としての尊厳がひどい扱いだなあ……」


 先生おもしれぇ。

21 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:49:35 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「まあわたし子供だからよくわかんないや!」

(;´・_ゝ・`)「君が言い出した癖に! 何この生徒!」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせー声大きいよ」

(;´・_ゝ・`)「誰のせい!?」

ミセ*゚ー゚)リ「ね、せんせ」

(´・_ゝ・`)「うん?」

ミセ*゚ー゚)リ「ロリコンじゃないの?」

(;´・_ゝ・`)「だから違いますぅううううううッ!!!!」

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあロリコンじゃないんだ……」

(´・_ゝ・`)「何度も同じこと言わないで……って、えっ、何で残念そうなの?」

ミセ*゚ー゚)リ「ところでロリコンって何?」

(´・_ゝ・`)「えっ」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせ教えてよ」

(´・_ゝ・`)「あっ、えっ?」

22 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:51:25 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「……少女に対して恋愛感情や性的欲求を抱く人物をロリコンと呼ぶ事がある」

ミセ*゚ー゚)リ「なるほど…………せんせ」

(´・_ゝ・`)「うん」

ミセ*゚ー゚)リ「せいてきよっきゅうって何?」

(´・_ゝ・`)

ミセ*゚ー゚)リ

(´・_ゝ・`)「もう少し大人になったらその勉強しようね」

ミセ*゚ー゚)リ「性的な意味で?」

(;´・_ゝ・`)「普通の保健体育だよ! と言うか意味もう解ってるよね君!?」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、しまった」

(;´・_ゝ・`)「誰の入れ知恵だよ! 何をしてるの君は!!」

(‘_L’)「俺だ」

(´・_ゝ・`)「お前だったのか」

(‘_L’)「暇をもて余した」

(´・_ゝ・`)「神々の」

ミセ*゚ー゚)リ「うっせえ」

23 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:53:12 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「モンスターエンジンキャンセル……って、えっ?」

(‘_L’)「久々だなデミタス」

(´・_ゝ・`)

(‘_L’)

ミセ*゚ー゚)リ「やっほーおっちゃん、さっきぶり」

(‘_L’)「おう」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせ面白いよね、おっちゃんも遊んでたんでしょ」

(‘_L’)「否定する理由も無いな」

ミセ*゚ー゚)リ「ははは、おっちゃん最低だなー」

(‘_L’)「ははは」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせー、このおっちゃん会話が続かないよー」

(´・_ゝ・`)

ミセ*゚ー゚)リ「せんせ?」

(´・_ゝ・`)「ええと、順番に行こうか」

(‘_L’)「おう」

24 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:55:22 ID:q4G8U50.O

(#´・_ゝ・`)「子供に変な入れ知恵をするな! 知っててノるな!! 居るなら早く言え!!
      あと変なコントをさせるな!! キャンセルするな!!! 突然現れるなァアッ!!!!」

ミセ*゚ー゚)リ「おー、一気に行ったねせんせ」

(‘_L’)「相変わらずだなお前」

(#´・_ゝ・`)「うっさい! 主に君に対する突っ込みだフィレンクト!!」

(‘_L’)「何を今さら、長年このノリだろうが」

(#´・_ゝ・`)「あーもうめんどくさいな君は! ほんっと相変わらず自由人だな!!」

(‘_L’)「職業的にもな」

(#´・_ゝ・`)「まだ無職かァアアアアアアアアッ!!!!」

ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃん無職なの?」

(‘_L’)「自由を追い求めてると言え」

(#´・_ゝ・`)「ただの無職だよッ!!」

(‘_L’)「もっと今風に言え、ニートと」

(#´・_ゝ・`)「もっと悪いよ! どうしようもないよ!! 結局ただの無職だよッ!!」

25 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:57:15 ID:q4G8U50.O

(‘_L’)「デミタス」

(#´・_ゝ・`)「何ッ!?」

(‘_L’)「お前うるさい」

(#´・_ゝ・`)「君は本当にめんどくさいなあああああああッ!!!!」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせとおっちゃんは仲良し……っと」

(#´・_ゝ・`)「それ別にノートに書かなくて良いからねッ!?」

(‘_L’)「デミタスの突っ込みはうるさいとも書いておけ」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい」

(#´・_ゝ・`)「書かなくて!! 良いですから!!」

(‘_L’)「本当うるさいなお前、もっとボリュームを落とせ」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせー、周りの人がすっごい見てるよ」

(;´・_ゝ・`)「あ、すみませんお騒がせして……本当すみません……」

ミセ*゚ー゚)リ(せんせは律儀……っと)

26 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 21:59:50 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「はぁ……もう、何なの……」

(‘_L’)「落ち着いたか」

(´・_ゝ・`)「何か腹立つなぁ君……」

(‘_L’)「昔からそうだろう、思い出してもみろ」



 回想

『デミタスこれ頼んだ』

『え、何これ』

『女子の下着』

『何で僕に渡したの!? と言うかこれどうしたの!?』

『更衣し  拾った』

『嘘だ! 絶対嘘だ!!』

『あ、来た、逃げるからまたな』

『えっ、ちょ、ま』

27 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:01:53 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「…………一度で良いから……殴らせて……」

(‘_L’)「美しい想い出は逆効果か……」

(´・_ゝ・`)「美しいも何も学生時代に君にかけられた迷惑しか思い出せないよ……」

(‘_L’)「俺は記憶に無いな」

(´・_ゝ・`)「お願いだから一度だけ殴らせて……」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせって人を殴ったことあるの?」

(´・_ゝ・`)

ミセ*゚ー゚)リ

(´・_ゝ・`)「…………フィレンクト、殴り方を教えて」

(‘_L’)「断る」

ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃんは殴ったことあるの?」

(‘_L’)「昔は毎日殴ってたな」

(´・_ゝ・`)「僕はその巻き添えを食らってたね」

(‘_L’)「魔導師が前線に立つからだ」

(´・_ゝ・`)「いや、君が僕を盾にしてた事は解ってる」

(‘_L’)「バレていた、だと……」

28 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:03:18 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「ほらせんせ、漫才してないで勉強しようよ」

(´・_ゝ・`)「ああ、うん……もう突っ込み切れないから良いや……」

(‘_L’)「何だ、勉強に来たのか」

(´・_ゝ・`)「うん、この子と各地を見て回る勉強の旅をしてるんだ」

(‘_L’)「幼女とか」

ミセ*゚ー゚)リ「わたし幼女ってほど若くないよ」

(‘_L’)「ロリコンは返上してないのかデミタス」

(´・_ゝ・`)「まずロリコンでは無いから」

ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃんはロリコンなの?」

(‘_L’)「否定と肯定、どちらをしても味方は増えないんだろう」

(´・_ゝ・`)「無駄にかっこよさげに言ってるけど全然かっこよくないからねそれ」

(‘_L’)

(´・_ゝ・`)

29 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:05:20 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ


 一つわかった事がある。

 普段わたしと居る時の先生は、頑張って先生をしていると言う事。

 いっつも真面目でしっかりしてて、先生らしい先生は、あくまでも先生として。
 だからこうして昔からのお友だちを前にすると、素の先生になるんだろうな。

 声の大きい突っ込みで、振り回されてばっかりな人の良い苦労人。


 新しい先生を見れて、嬉しいような
 少しばっかし、寂しいような。

 わたしと先生は数年の付き合いだから、20年も仲良くしてるおっちゃんとの差は大きい。

 だから寂しかったり、ちょっと拗ねたりしちゃうけど
 わたしの知らない元気な先生を見れるのは、何だかちょっと嬉しいです。


 それに、おっちゃんと居ると息抜きが出来るって事は、きっと良い事なんだと思う。


ミセ;゚ー゚)リ(息抜き出来てるのかはわかんないけど……)

31 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:07:47 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「はい仕切り直し、取り敢えずここは自然が多いから薬草の勉強をしようか」

ミセ*゚ー゚)リ「さっきも聞いたけど、はーい」


 咳払いをして、足元に生える草を一枚ちぎってわたしに見せる先生。
 それはとてもポピュラーで、見覚えのある日用品の一つ。


(´・_ゝ・`)「これがごく一般的な薬草だね、水に浸けてから傷に貼ると止血が出来る」

ミセ*゚ー゚)リ「よく売ってるやつだねー」

(‘_L’)「味は不味い」

(´・_ゝ・`)「お店にあるのは効果を高めたり使いやすく加工したものだね」

ミセ*゚−゚)リ「ふむむ、やっぱり加工って大事なんだね……」

(´・_ゝ・`)「うん、素材やテクスチャを乗せたりグロー効果を追加するだけで見違える」

ミセ;゚ー゚)リ「せんせ何のはなし?」

(´・_ゝ・`)「失礼、脱線したね」

32 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:10:19 ID:q4G8U50.O

 ふむふむ、とノートに書き込みながら足元を見れば、さっきのとは違う草。

 こちらはあまり見慣れない、少し葉の尖ったもの。


ミセ*゚ー゚)リ「ねぇせんせ、こっちのは?」

(´・_ゝ・`)「それは違う種類の薬草だね、単品では効果が薄いけど
      他の薬草と混ぜて軟膏にすると効果が飛躍的に上がる、補助的な役割だよ」

(‘_L’)「それは美味い」

ミセ*゚ー゚)リ「へー……やっぱり、加工したりお薬にするのは大変なの?」

(´・_ゝ・`)「薬屋さん何かがちゃんと調合しなきゃいけないからね、一般人には少し難しい」

ミセ*゚ー゚)リ「ふむう、専門職ってやつだね」

(´・_ゝ・`)「うん、色んな職業の人が居るから生活が成り立ってるんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「作ってくれる人に感謝するのは、食べ物も道具も一緒だね」

(´・_ゝ・`)「うん、実際はザコ殴ってドロップする事の方が少ないしね」

ミセ*゚ー゚)リ(せんせはゲーム脳だなー)

33 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:12:30 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「職業って言うと、せんせは?」

(´・_ゝ・`)「僕は魔導師が本職だよ、薬屋さんとは違うけどある程度の傷なら癒す事が出来る」

ミセ*゚ー゚)リ「ホイミとか?」

(´・_ゝ・`)「ケアルとかね、その代わり病気は治せないからお医者さんみたいにはいかないよ」

(‘_L’)「おいデミタス、これは食えるぞ」

(´・_ゝ・`)「ミセリ君は将来、何になりたいんだい?」

ミセ*゚ー゚)リ「んー、まだよくわかんない……でもね、誰かを助けたい!」

(´・_ゝ・`)「何を目指すかはゆっくり決めると良いよ、漠然としていても目指すものがあるのは良いね」

ミセ;゚ー゚)リ「えへへ、でもわたし勉強苦手だからなぁ」

(´・_ゝ・`)「大丈夫、僕だって昔は苦手だったけど魔導師にはなれたんだ」

(‘_L’)「デミタス見ろ、あの虫は食える虫だ」

(´・_ゝ・`)「ごめんフィレンクト黙ってて」

34 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:15:09 ID:q4G8U50.O

(‘_L’)「思いの外真面目な勉強だった」

(´・_ゝ・`)「普通に勉強だから邪魔はしないでフィレンクト」

ミセ*゚ー゚)リ「ねぇせんせ、あれ食べれるの?」

(´・_ゝ・`)「あれは毒があるけど毒抜きをすれば食べられるよ、そのおじさんに聞いてごらん」

(‘_L’)「お前も同い年だろうが」

ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃん、あれ美味しいの?」

(‘_L’)「美味い」

ミセ*゚ー゚)リ「食べたい」

(‘_L’)「待ってろ」

(´・_ゝ・`)「その間に勉強進めて良い?」

(‘_L’)「構わん」

(´・_ゝ・`)「何様だよ君……まあ良いや、ミセリ君待ってる間に勉強を続けようか」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい!」

35 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:18:13 ID:q4G8U50.O

 おっちゃんが適当に草を引っこ抜く背中を眺めつつ、その様子もノートに書き込む。

 まるで草刈りをしてる農民のようだ、と。


 すると、先生が薄いピンクの花をそっと摘み、わたしに差し出して見せた。
 けど受け取ろうとするとそれを避け、軽く回してから首を傾げる。


(´・_ゝ・`)「この花は何かわかるかい?」

ミセ*゚−゚)リ「んー……綺麗だけど、それだけじゃないの?」

(´・_ゝ・`)「うん、これは加工法によっては毒になるんだ」
  _,
ミセ;゚д゚)リ「うぇ、何かやだなぁ……」

(´・_ゝ・`)「この花の蜜を濃縮した上で成分を抽出すると、人を殺す事も出来る」
  _,
ミセ;゚д゚)リ「うえぇー、やだぁ」

(´・_ゝ・`)「でも毒は薬になる事もあるんだ、使い方によっては命を助ける事も出来るんだよ」

ミセ*゚ー゚)リ「ふへぇ……使い方って大事だねぇ」

(´・_ゝ・`)「うん、だからどんな物でも決して使い方を間違えてはいけないよ」

36 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:21:05 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「はーい…… あ、ねぇせんせ……あの花はなに? すっごい綺麗だよ」


 毒って言うのも、気分は良くないけどちゃんと勉強して覚えとかなきゃいけない。

 もしうっかり触ったり口にしたら、命に関わってしまうのだから。
 そう考えると、さっき先生が慎重に花を摘んだ理由も、わたしに触らせなかった理由も分かる。

 やっぱり先生は先生なんだな、と密かに感心するわたしの視界の端に映るもの。


 それは優しいピンク色で、柔らかそうな花びらが幾重にも重なる花。

 きっとどんな植物にも、多少は効能なんかがあるのだろうと思い、先生に問いかける。


が、


(´・_ゝ・`)「ああ、あれは…………あれは……」

ミセ*゚ー゚)リ「あれは?」

(´・_ゝ・`)「一応、薬に……なる、かな……」


 先生の返答は、何だかはっきりしないもごもごしたものだった。

37 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:24:13 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「一応? どんな薬なの?」

(´・_ゝ・`)「ええ、と……あの……」

ミセ*゚ー゚)リ「?」


 何だか困ったような顔で、俯きがちに花を見ながら言葉にするのをためらう先生。

 元から困ってるみたいな顔なのに、余計にしょんぼり顔。

 そんなしょんぼり顔の先生が、意を決した様に視線をわたしに向けて、口を開く。


(´・_ゝ・`)「…………性機能不全を、緩和させる、と言うか……」

(‘_L’)「媚薬になる」

(;´・_ゝ・`)「ずんばらばっさり言わないで!!」


 わーお。

38 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:27:50 ID:q4G8U50.O

 まあ別にそう言う知識が無い訳じゃないし。

 子供と言っても住んでたのは結構町の方だったし。

 なんだかんだでそう言う知識は嫌でも耳に入っちゃうもので。

 さっきはおっちゃんに合わせてわからないフリをしたけども。


 でもまあ媚薬と言う言葉の意味をちゃんと理解できているか、確認もかねて。


ミセ*゚ー゚)リ「……びやく?」

(;´・_ゝ・`)「あ、ええと、あの」

(‘_L’)「要するにあの花から出来る薬を摂取するとムラムラする」

(;´・_ゝ・`)「オブラートって知ってる!? と言うかいつからそこに居た!?」

(‘_L’)「毒抜きに時間がかかる」

(;´・_ゝ・`)「返事が中途半端だよ!!」


 まあ合ってましたわ。

39 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:30:20 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「ムラムラ……」

(;´・_ゝ・`)「いやあの、だからね」

ミセ*゚ー゚)リ「生殖行動を促す効果があるの?」

(´・_ゝ・`)「あ、うん、そうです」

ミセ*゚ー゚)リ「わたしにはまだ関係ないね」

(´・_ゝ・`)「そうだね、うん、じゃああっちの草の効能はね」

(‘_L’)「初潮が未だなのか」

(´・_ゝ・`)「フィレンクト黙って」

(‘_L’)「何だ事実だろうが」

(´・_ゝ・`)「お願いだからフィレンクト黙って」


 おっちゃんはソフトに最低だと思いました。

 フィレンクトのおっちゃんにはデリカシーが無い、とこれもメモしておこう。

41 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:33:07 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「……あ、この葉っぱ知ってる」

(´・_ゝ・`)「お、じゃあ何かな?」

ミセ*゚ー゚)リ「魚とか蒸すときに入れると美味しい!」

(´・_ゝ・`)「確かに旨味や香りが増して美味しくなるね、でもそれだけじゃないんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、美味しいだけじゃないんだ……んー、何だろ」

(´・_ゝ・`)「元々これは、薬草として食事に用いられていたんだ、それも胃腸に効果的として」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、じゃあお腹の薬?」

(´・_ゝ・`)「そう、お腹と言うと、どんな症状が出る?」

ミセ*゚ー゚)リ「腹痛!」

(´・_ゝ・`)「うん正解、これは腹痛を和らげてくれるんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「おー! 当たった!」

42 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:36:34 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあお腹が痛くなったらこれ食べるの?」

(´・_ゝ・`)「そのままじゃ余計にお腹を壊すから、煎じて薬にしなきゃ駄目だよ」

ミセ*゚ー゚)リ「ふむふむ」

(‘_L’)「だから腹を下したのか」

(´・_ゝ・`)「フィレンクト何してるの」

(‘_L’)「腹の具合が悪かったから食った」

(´・_ゝ・`)「野生児にもほどがあるよ君」

(‘_L’)「ところでさっきから聞きたかったんだが」

(´・_ゝ・`)「うん?」

(‘_L’)「お前たちの関係は何だ?」

(´・_ゝ・`)「教師と生徒」

(‘_L’)「お前はいつから教師になった」

ミセ*゚ー゚)リ「教師って言うか、孤児院のせんせだよね」

(‘_L’)「……すまん」

ミセ*゚ー゚)リ「? 別に謝る事じゃないよ?」

43 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:40:32 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「……この数年、僕は孤児院で働いていてね、ミセリ君はそこで知り合った」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせのお勉強は楽しいから、わたし好きだったんだー」

(´・_ゝ・`)「意外と勉強熱心な生徒だったからね、僕が孤児院を離れて旅をするとなった時」

ミセ*゚ー゚)リ「わたしがもっと色々お勉強したいから、ついてきましたー!」

(‘_L’)「……そう、か」

(´・_ゝ・`)「ほらそれは良いから、フィレンクト毒抜きは」

(‘_L’)「デミタス」

(´・_ゝ・`)「……何?」

(‘_L’)「お前、国の魔導師になるんじゃ無かったのか」

(´・_ゝ・`)「…………」

(‘_L’)「国に属する魔導師になる事を目標に、十年以上学校に居たんだろう」

(´・_ゝ・`)「……僕は、人殺しのために魔導師になったんじゃない」

(‘_L’)「…………そうか」

45 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:42:43 ID:q4G8U50.O

 二人がすごく真面目な顔で、顔を真っ直ぐ見たまま難しい話を始めた。

 わたしはそこに加わってはいけないと察して、何も言わずに一歩退く。


 先生は、あんまり魔導師としての自分が好きじゃない様に見える。
 その理由はきっと、三年前まで続いていた戦争。

 わたしには、難しい事はまだよくわからない。


 でもあの戦争が、わたしの家族と先生の忠誠心を奪ったのは、確か。


(´・_ゝ・`)「この話は、今はよそう」

(‘_L’)「……分かった」


 先生はとても真面目な人だから、耐えられなかったんだろうな。

 誰かを傷付けるより、誰かを助けたい人だから。
 何かを奪うために力を振るうくらいなら、その場から離れたかった。

 そして先生は、わたしを拾った。

47 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:45:33 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚−゚)リ(……わたしにはまだ、むずかしいや)


 先生の勉強を受けて、旅でいろんなものを見て。
 平均的な子供より、少しだけいろんな事を知ってるとは思う。

 でもわたしはまだまだ子供だから、わからない事は山ほどある。


 そのわからない事のいくつかが、先生の気持ち、先生の過去。

 そして、先生とおっちゃんの、関係。


 すべてを理解出来る日が、訪れるのだろうか。


(‘_L’)「旅は、楽しいか」

(´・_ゝ・`)「……楽しいよ、こうして見るものは新鮮だし、僕にもミセリ君にも良い勉強になる」

(‘_L’)「…………」

(´・_ゝ・`)「すまないねミセリ君、続きをしようか」

ミセ*゚ー゚)リ「ほーい」

48 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:48:08 ID:q4G8U50.O

(‘_L’)「……旅、か」

(‘_L’)「…………」



ミセ*゚ー゚)リ「ねぇせんせ」

(´・_ゝ・`)「うん?」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせとおっちゃんはどーいう関係なの?」

(´・_ゝ・`)「一応幼馴染みかな、学科は違うけど学校が同じだったんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃんは魔導師じゃないんだ」

(´・_ゝ・`)「薬草そのまま食べるような魔導師とか嫌だよね」

ミセ*゚ー゚)リ「すげー信頼出来ない魔導師だね」

(´・_ゝ・`)「フィレンクトは戦士だよ、腕っぷしはかなりのものなんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「へー、魔導師と戦士なんだ、仲良いの?」

(´・_ゝ・`)「悪くはないね、20年経っても親交がある……けど」

ミセ*゚ー゚)リ「けど?」

49 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:50:56 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「学生時代は主に迷惑しかかけられなかった」

ミセ;゚ー゚)リ「ぽいわー」

(´・_ゝ・`)「自由奔放な性格だからね、規律はいつでも破るし勝手な振る舞いが多かった」

ミセ;゚ー゚)リ「その尻拭いしてたんだね……」

(´・_ゝ・`)「全くその通り、何かをやらかしては僕に押し付けて逃げてたよ」

ミセ;゚ー゚)リ「自由だなー……」

(´・_ゝ・`)「そうだね、今度は虫捕まえてるしねフィレンクト」

ミセ*゚ー゚)リ「食べるのかな」

(´・_ゝ・`)「サバイバル過ぎる」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせは虫食べるの?」

(´・_ゝ・`)「薬にしたりはするけど、バリバリ食べたりはしないなぁ」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、生でいった」

(´・_ゝ・`)「捕まえてその場で食べたりするからお腹壊すんだよ……」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせ、何してんの?」

(´・_ゝ・`)「お腹の薬を作っておこうと思って」

ミセ*゚ー゚)リ「わたしも手伝うー」

50 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:54:00 ID:q4G8U50.O

 さっき教わった事を参考に、草を数種類ぷちぷちと引き抜く。
 確か根っこにも効果があるって言う話もあるし、その辺に生え放題なので草むしりもかねて。

 小さな容器に草を入れつつ、その辺をぴょんぴょんと跳ねる虫を眺める。

 さっきこの手のバッタみたいなの食べてたなー。
 そういやこの虫ってお腹にゆるい毒を溜めとくんだよなー。

 あと食べたら口の中が緑色になる。


ミセ*゚ー゚)リ「何で食べるのかなぁ……」

(´・_ゝ・`)「余程お腹が空いていたか、ただの馬鹿だよ」

ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃんはどっちだろねーせんせ」

(´・_ゝ・`)「ははは、間違いなく後者だね」

ミセ*゚ー゚)リ「あはは、辛辣だなー、今度は草むしって食べてるなー」

(´・_ゝ・`)「本当に頭悪いんじゃないかなあフィレンクト」

ミセ*゚ー゚)リ「出会って数時間だけど否定の言葉が浮かばないや」

(´・_ゝ・`)「ははは、本当に馬鹿だなフィレンクトは」

51 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 22:57:33 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「あ……せんせせんせ、あれ何?」

(´・_ゝ・`)「うん?」


 ふいと視線をそらした先にあるのは、さっきの花とは別の花。
 目にまぶしいほど真っ赤な花びらで、少し鋭い葉を持っている。

 それは他の草花とはまるで別の存在だと言わんばかりに、一輪だけ凛と咲いていた。


ミセ*゚ー゚)リ「綺麗な花、真っ赤だね」

(´・_ゝ・`)「ああ……あれは触っちゃ駄目だよ」

ミセ*゚ー゚)リ「毒なの?」

(´・_ゝ・`)「ううん、凄く良い薬の材料だよ、花びらから蜜も茎も根も薬になる」

ミセ*゚−゚)リ「? なのに、触っちゃ駄目なの?」

(´・_ゝ・`)「あれはね、人間がたくさん採ったから量が減ってしまったんだ
      ああやって自然に生えてるのは凄く珍しい事、だから触らずにそってしておいてあげよう」

ミセ*゚ー゚)リ「……うん、また増えると良いね」

(´・_ゝ・`)「そうだね、もし少しだけ使わせて貰うにしても、花びらを一枚貰うだけにしよう」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい!」

52 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:00:11 ID:q4G8U50.O

(‘_L’)「デミタス大変だ」

(´・_ゝ・`)「あとでお腹の薬を煎じるから待ってね」

(‘_L’)「なぜ腹が痛いと分かった」

(´・_ゝ・`)「君は実に馬鹿だ」

(‘_L’)「唐突に失礼だとは思わないのか」

(´・_ゝ・`)「唐突に教え子に対して変な事を吹き込むのは失礼だと思わないの?」

(‘_L’)「思わんな」

(´・_ゝ・`)「君は本当にイラッとする」

(‘_L’)「お前の懐が狭いだけだ」

(´・_ゝ・`)「君は本当にムカつく」

(‘_L’)「はっきり言ったなおい」

(´・_ゝ・`)「もう黙ってそこで蹲ってて」

(‘_L’)「すげえ腹痛い」

(´・_ゝ・`)「良いからもう黙れ」

53 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:02:34 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「……ここは色んな花とか草があるね、せんせ」

(´・_ゝ・`)「うん、自然が多くて良いところだ」

ミセ*゚ー゚)リ「気持ちいいねー、なんか落ち着く」

(´・_ゝ・`)「ミセリ君は緑が好きだからね」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、草とか花とか大好き!」

(´・_ゝ・`)「でも生で食べないようにね、どこかの変なおじさんの真似はしちゃ駄目だよ」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい!」

(´・_ゝ・`)「真似したらあんな風になるからね」

ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃん、お腹押さえてついにその場にうずくまりだしたね」

(´・_ゝ・`)「早く煎じてあげようか、ミセリ君も手伝ってくれるかい?」

ミセ*゚ー゚)リ「まっかせろい!」

(´・_ゝ・`)「よし、じゃあ今日の宿に行こうか、鍋と火を借りよう」

ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃんは?」

(´・_ゝ・`)「もうあのままで良いや」

54 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:04:48 ID:q4G8U50.O

 草むらでうずくまるおっちゃんをそのままに、わたしと先生は薬草を持って宿へと戻る。

 そこで火と道具を貸してもらい、わたしにとって初めてのお薬調合の準備です。

 少しドキドキするけど、怖いとかより楽しみとか好奇心の方が勝ってしまう。


(´・_ゝ・`)「よいしょ、と……」

ミセ*゚ー゚)リ「薬草がいっぱいだね」

(´・_ゝ・`)「ミセリ君はこの草をそれで磨り潰してくれるかな?」

ミセ*゚ー゚)リ「ほーい」

(´・_ゝ・`)「僕はこれを煎じて、と……こっちの調合しよう」

ミセ*゚ー゚)リ「手慣れてるねーせんせ」

(´・_ゝ・`)「ずっとやってきたからね、ミセリ君も少しずつ慣れると良いよ」

ミセ*^ー^)リ「はーい」

55 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:08:11 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「……楽しそうだね、ミセリ君」

ミセ*゚ー゚)リ「えへへ……調合って初めてだから、つい楽しくって」

(´・_ゝ・`)「うん、嫌々やるよりずっと良いよ」

ミセ*゚ー゚)リ「うんっ」

(´・_ゝ・`)「その代わり失敗はしないようにね、ほらその草が残ってるよ」

ミセ*゚ー゚)リ「ありゃ、気を付けなきゃだね」

(´・_ゝ・`)「今は難しい調合じゃないから、失敗したと思ったらすぐに言ってね」

ミセ*゚ー゚)リ「ほーい」

(´・_ゝ・`)「すぐに上手くなるわけじゃない、何度もやって上達するんだからね」

ミセ*゚ー゚)リ「説得力あるなーせんせ」

(´・_ゝ・`)「僕も昔はよく失敗したからね」

ミセ*゚ー゚)リ「ありゃ、意外ー」

56 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:11:01 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「僕だって今は先生だけど、昔は教わる側だったからね」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせも良いせんせが居たの?」

(´・_ゝ・`)「うーん、学校の先生ではないけど……とても立派な先輩が居たんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「どんな先輩だったの? 魔導師さん?」

(´・_ゝ・`)「うん、今じゃ有名な大魔導師様だよ」

ミセ*゚ー゚)リ「おお、すげぇ……その人は学校じゃどんな人だったの?」

(´・_ゝ・`)「先輩は学校には行ってなかったけど、ちょっとした事で知り合ってね
      変わった人ではあったけど、誰よりも勉強熱心で、誰よりも魔導師の素質があった」

ミセ*゚ー゚)リ「…………悔しかった?」

(´・_ゝ・`)「はは、昔はちょっとだけね……でもそれ以上に、尊敬してる」

ミセ*゚ー゚)リ「……なんか、かっこいいね」

(´・_ゝ・`)「うん、かっこいい先輩だった……顔と言うか顔色はまあアレだけど」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせがかっこいいんだよ」

(´・_ゝ・`)「ん?」

ミセ*゚ー゚)リ「なんでもなーい」

57 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:14:06 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「よし、と……お腹の薬にはこれとこれをよく混ぜて、その磨り潰した薬草を入れるんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「そんで煎じてる薬草と合わせるの?」

(´・_ゝ・`)「うん、飲み薬だし今は味を気にしなくて良いから割りと楽だね」

ミセ*゚ー゚)リ「ちなみにどんな味になるの?」

(´・_ゝ・`)「涙目になるくらいえぐくて苦くて臭い」

ミセ*゚ー゚)リ「結構えげつないよねせんせ」

(´・_ゝ・`)「フィレンクトが飲むなら気にしない」

ミセ*゚ー゚)リ「自分が飲むなら?」

(´・_ゝ・`)「練って丸薬にして飲みやすくする」

ミセ*゚ー゚)リ「わたしが飲むなら?」

(´・_ゝ・`)「シロップと混ぜて甘くする」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせは優しいなー」

(´・_ゝ・`)「ははは、普通は飲みやすくするものだよ」

ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃんにだけ厳しいねせんせ」

(´・_ゝ・`)「今日は割とひどい目にしか会わされてないからね」

59 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:17:29 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「ねーせんせ」

(´・_ゝ・`)「うん?」

ミセ*゚ー゚)リ「せんせはロリコンじゃないんだね」

(;´・_ゝ・`)「ブッフォ!」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、どばって薬入った」

(;´・_ゝ・`)「あー……これ苦味増すわ……」

ミセ*゚ー゚)リ「効果は?」

(;´・_ゝ・`)「便秘になる」

ミセ*゚ー゚)リ「まあ良いんじゃない?」

(´・_ゝ・`)「君も結構厳しいよねミセリ君」

ミセ*゚ー゚)リ「で、ロリコンじゃないの?」

(´・_ゝ・`)「違います、子供は好きだけど健全な好きです」

ミセ*゚ー゚)リ「そっか……」

(´・_ゝ・`)「だから何で残念そうなの……」

60 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:20:33 ID:q4G8U50.O

ミセ*゚ー゚)リ「わたしね、せんせと一緒に居るの好きだよ」

(´・_ゝ・`)「僕もだよ」

ミセ*゚ー゚)リ「戦争でおとーさんとおかーさん死んじゃってさ、どうしようもなかったんだよね」

(´・_ゝ・`)「……うん」

ミセ*゚ー゚)リ「そんな時さ、せんせが助けてくれたんだもん」

(´・_ゝ・`)「人として当然の事だよ」

ミセ*゚ー゚)リ「孤児院に居る時も、せんせはいっぱい頑張ってたじゃん」

(´・_ゝ・`)「誰かの役に立ちたいからね」

ミセ*゚ー゚)リ「そんなせんせがかっこよかったからさ、わたしもせんせみたいになりたいの」

(´・_ゝ・`)「……ありがとう」

ミセ*゚ー゚)リ「だからね、えと……せんせ、色々教えてね」

(´・_ゝ・`)「うん」

ミセ*゚ー゚)リ「わたし、せんせみたいに人の役に立てる大人になるから」

(´・_ゝ・`)「そのために、僕も出来る限りの事を教えるよ」

ミセ*^ー^)リ「うんっ!」

61 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:23:31 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「お、そろそろ晩ごはんみたいだね」

ミセ*゚ヮ゚)リ「マジで!?」

(´・_ゝ・`)「うん、後片付けをして行こうか」

ミセ*゚ヮ゚)リ「おおおいいにおい……何だろ晩ごはん……」

(´・_ゝ・`)「既に聞いてないわ」

ミセ*゚ヮ゚)リ「早く早く! せんせったら早く!」

(´・_ゝ・`)「あーもうはいはい、ちょっと待ってね」

ミセ*゚ヮ゚)リ「嫌だ!!」

(´・_ゝ・`)「えぇ……初めてそんな即答聞いたよ、どんだけ食べたいのミセリ君……」

ミセ*゚ヮ゚)リ「だって」

ミセ*゚ヮ゚)リ<グゥゥゥゥゥウ

ミセ*゚−゚)リ
  _,
ミセ*。 。)リ「……早く行こうよ」

(´・_ゝ・`)「分かった分かった、ほら行こう、相当空腹だったのね君」

63 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:26:46 ID:q4G8U50.O


 宿屋の小さな食堂で待っていたのは、器に盛られたシチューとパン。
 湯気の立ち上る白いシチューがまた、優しくてやわらかい匂いを漂わせていて。

 先生と並んで席につくと、勢いよく手を合わせて、声高らかにいただきます。


 たまねぎ、にんじん、じゃがいも、ブロッコリー、きのこ、お肉。
 色んな具材がよく煮込まれたクリームシチュー、胸がほっとする良いにおい。

 スプーンですくって口に運ぶと、とろっとしたシチューの味は口のなかいっぱいに広がる。

 コンソメとバター、少し入った生クリーム。
 まったりまろやか、こくの深いこの味がたまらない。


 たまねぎやにんじんはもうとろとろに甘くて、じゃがいもなんて煮崩れ寸前でほろほろほくほく。
 よく煮込んだブロッコリーもまた美味しい彩り、きのこの歯応えはしゃきしゃき気持ち良い。

 お肉は脂身が少ないけれど、よく煮込まれた事で味がしみててやわらかい。


 少し固いパンにシチューをつけて食べれば、もう足をバタバタさせたいくらいの美味しさです。

 先生は隣で少しのお酒を注文して、一緒ににこにこ晩ごはん。


 もう数日、こんなご飯が食べられるならまさに天国です。

65 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:29:20 ID:q4G8U50.O


ミセ*´ヮ`)リ「くはぁぁぁ……おなかいっぱい……」

(´・_ゝ・`)「美味しかったね、ほら頬っぺた付いてるよ」

ミセ*´ヮ`)リ「もー食べらんない……お腹がしあわせいっぱいですー……」

(´・_ゝ・`)「デザートの木苺のシャーベット来たよ」

ミセ*゚ワ゚)リ「マジで!?」

(´・_ゝ・`)「はいはい、行儀良くね」


 少しの休憩を挟んで運ばれて来たのは、可愛いピンクのシャーベット。
 先生はコーヒーを頼んだのか、隣でほっと息をつく。

 その様子を眺めながら、くちくなったお腹をさすりつつシャーベットを眺めた。

 てっぺんにはミントの葉、濃いピンク色が可愛らしいアイス。
 量は少な目だけど、食後のデザートにはぴったりかな。

 スプーンですくって一口。
 冷たさとしゃりしゃりした口触り、きゅんとくる甘酸っぱさ。

 すっかりこってりしていた口の中やお腹が、すっとスッキリしてゆく感覚。

66 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:32:07 ID:q4G8U50.O

ミセ*´ヮ`)リ「……うまー……」

(´・_ゝ・`)「良かったね」

ミセ*´ヮ`)リ「わたしここに住みたいくらい……」

(´・_ゝ・`)「次の町でも美味しい物はあると思うよ」

ミセ*´ヮ`)リ「やっぱ旅続ける……」


 酸っぱすぎず甘すぎず、良いあんばいで整えられた味。
 ついつい口に運んでしまっている内に、シャーベットはあっと言う間になくなってしまう。

 少し物足りないかと思ったけれど、夜にたくさんアイスを食べるものでもないか。

 今度こそ手を合わせて、二人揃ってのごちそうさま。


 満ち足りたお腹と胸。
 いっぱいいっぱいに幸せで満ちています。


ミセ*´ヮ`)リ「はへぇ……せんせ、明日もごはん楽しみだねー……」

(´・_ゝ・`)「ここは料理が美味しいね、勉強もちゃんと出来たし来て良かった」

67 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:35:21 ID:q4G8U50.O

ミセ*´ヮ`)リ「ねー……ここ選んでよかったねー……」

(´・_ゝ・`)「うん、良かった……あれ、何か忘れてるかな」

ミセ*´ヮ`)リ「えー……何を忘れ…………あれ?」

(´・_ゝ・`)「何かここに来た理由があったような……」

ミセ*´ヮ`)リ「あー、なんだっけ……あったっけ……」

(´・_ゝ・`)「…………あっ、フィレンクト」

ミセ*´ヮ`)リ

(´・_ゝ・`)

ミセ*´ヮ`)リ「せんせー、おなかいっぱいだしお風呂入って寝よー」

(´・_ゝ・`)「そうだね、もう寝ようか」

ミセ*´ヮ`)リ「せんせー背中ながしたげるー」

(´・_ゝ・`)「ミセリ君またお風呂で寝そうだね」

ミセ*´ヮ`)リ「寝たら救助してー」

(´・_ゝ・`)「はいはい」

69 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:38:21 ID:q4G8U50.O

 先生とお風呂に入って、歯を磨いて、明日の準備をしてからベッドに倒れ込む。

 野宿も少なくない旅のなか、ふかふかのお布団に真っ白なシーツにくるまって眠れる幸せ。

 隣に座る先生に頭を撫でられながら、わたしはうとうと。


 ああ、今日はしあわせな日でした。

 森を歩いて、美味しいパイを食べて、お勉強をして、美味しい美味しい晩ごはんを食べて。

 あれ食べてばっかりだな。
 まあいいや。


 とにかく、今日は楽しい一日でした。

 まだ数日はここに滞在するみたいなので、残る数日もいっぱいに楽しみたいです。

 それでは、おやすみなさい。

 先生おやすみなさーい。



70 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:41:15 ID:q4G8U50.O





(‘_L’)「……ふむ」

(‘_L’)

(‘_L’)「忘れられたか、放置されたか、それが問題だ」

(´・_ゝ・`)「両方だよ」

(‘_L’)「うわビックリした」

(´・_ゝ・`)「真顔じゃないか」

(‘_L’)「地顔だ」

(´・_ゝ・`)「あーはいはい、これ薬」

(‘_L’)「半日近く経てば消化して腹痛は収まったが」

(´・_ゝ・`)「良かったね」

(‘_L’)「何か腹立つなお前」

72 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:44:06 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「と言うか、こんな遅くまで居続けなくても良いのに」

(‘_L’)「待っとけと言っただろう」

(´・_ゝ・`)「誰がこの場で正座して待てって言ったの?」

(‘_L’)

(´・_ゝ・`)

(‘_L’)「腹減った」

(´・_ゝ・`)「ほら、風邪引くから行くよ、食事も置いてもらってるから」

(‘_L’)「何だツンデレか、引くわ」

(´・_ゝ・`)「君の思考回路に僕がドン引きだよ」

(‘_L’)「ただのナイスミドルだろうが」

(´・_ゝ・`)「中年ニートが何言ってんの」

(‘_L’)「お前もだろう」

(´・_ゝ・`)「僕は仕事してます」

73 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:47:28 ID:q4G8U50.O

(‘_L’)「何が仕事だ、教師か? 誰が給金を払う?」

(´・_ゝ・`)「国との契約は解除してないから魔導師として働けば国からお給金貰えます」

(‘_L’)

(´・_ゝ・`)

(‘_L’)「ずるい」

(´・_ゝ・`)「鬱陶しい」

(‘_L’)「魔導師は良いな、体を動かさなくても仕事になるからな」

(´・_ゝ・`)「フィレンクト」

(‘_L’)「何だ」

(´・_ゝ・`)「全国の魔導師に謝って」

(‘_L’)「ごめん」

74 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:50:22 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「大きい町に行けば役所の窓口で仕事もある、魔導師や戦士の肩書きがあれば出来る」

(‘_L’)「ふーん」

(´・_ゝ・`)「だからそこで雑用やらの仕事をして、ある程度を稼いでから旅を続けてるんだよ」

(‘_L’)「へー」

(´・_ゝ・`)「ベギラマ」

(‘_L’)「あっつッ!!」

(´・_ゝ・`)「だから働けって言ってるんだよ、言わせないでよ恥ずかしい」

(‘_L’)「養って」

(´・_ゝ・`)「ちょっと墓穴を掘ってくる」

(‘_L’)「早すぎる埋葬は止めろ」

(´・_ゝ・`)「見た目と歳と色々を考えて、気持ち悪い通り越して殺意がわく」

(‘_L’)「冗談だ」

(´・_ゝ・`)「当たり前だよ」

(‘_L’)「養え」

(#´・_ゝ・`)「命令かよ!!」

75 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:53:05 ID:q4G8U50.O

(´・_ゝ・`)「はぁ……もう良いよ、勝手にして」

(‘_L’)「デミタス」

(´・_ゝ・`)「何?」

(‘_L’)「髪伸びたなお前」

(´・_ゝ・`)「タモリか」

(‘_L’)「どんな突っ込みだ」

(´・_ゝ・`)「もうご飯食べたらそれ飲んで家に帰って寝なさい」

(‘_L’)「デミタス」

(´・_ゝ・`)「だから何?」

(‘_L’)「楽しいんだな、旅は」

(´・_ゝ・`)「……楽しいよ、とても」

(‘_L’)「なら、良かった」

(´・_ゝ・`)「…………うん、ありがとう」

76 ◆tYDPzDQgtA 2012/02/12(日) 23:56:07 ID:q4G8U50.O



(´・_ゝ・`)「……はぁ、妙に疲れた…………ミセリ君は、よく寝てるな」

(´・_ゝ・`)「あ、日記書かずに寝てる……全くもう」



 季節:冬  場所:とある村

 勉強内容:薬草の種類、効能、調合について。
      腹痛の薬の作り方を忘れずにメモしておく事。



(´・_ゝ・`)「これで良いかな……僕も寝よう」

(‘_L’)「そうだな」

(´・_ゝ・`)

(‘_L’)

(´・_ゝ・`)「すみません不審者が」

(‘_L’)「おい馬鹿やめろ」



 おわり。

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