- 310 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:16:28 ID:0d1J9tdoO
行く道は様々、賑やかな街や静かな村。
時には冷たい風を、時には暖かな風を受けて歩いて行く。
周囲にはいつも移り変わり続ける景色。
聞こえるのは人の声や風の音、喧騒も静けさも耳へと流れ込む。
石畳を踏み、土を踏み、景色の中を渡り歩くのは、三人。
一人はどこか情けない顔をした、人の良い魔導師。
もう一人は、表情を浮かべず自由に振る舞う戦士。
その二人の間に居るのは、明るく元気な女の子。
【旅のようです】
【四話 おい、休憩しろ】
閲覧注意
彼らの間にはいつも、穏やかでいて賑やかな空間が存在する。
立ち絵
- 312 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:18:18 ID:0d1J9tdoO
わたしは今、洞窟に居ます。
じめじめと薄暗い空間、妙にひんやりしていて水っぽい空気。
植物は岩肌に生える苔やキノコ、ぼんやりと光るそれらのお陰で道が照らされている。
先頭に先生、その後ろにわたし、最後尾にはおっちゃん。
先生は地図を見ながら、ランタン片手に先を歩く。
ミセ*゚ー゚)リ「せんせ、もう洞窟入って三日目だけど」
(´・_ゝ・`)「今日には出られるよ」
ミセ*゚ー゚)リ「あーよかった……じめじめして苦手だなぁ、洞窟」
(‘_L’)「食う物が無いな」
(´・_ゝ・`)「まあキノコくらいしか無いね」
ミセ*゚ー゚)リ「……ところでせんせ、この光るキノコ食べられるの?」
(´・_ゝ・`)「食べられるよ」
ミセ*゚ー゚)リ「マジか」
(´・_ゝ・`)「その代わり、食べたらお腹で光るけ」
(‘_L’)ボヤァ
(´・_ゝ・`)
(‘_L’)
- 313 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:20:45 ID:0d1J9tdoO
ミセ*゚ー゚)リ「せんせ、おっちゃんのお腹が光ってる」
(´・_ゝ・`)「うん、今見た」
ミセ*゚ー゚)リ「味はどうだった?」
(‘_L’)「普通」
ミセ*゚ー゚)リ「…………せんせ、トイレ行ったらこれどうなるの」
(´・_ゝ・`)「光るよ」
(‘_L’)「光るうんこか……」
ミセ*゚ー゚)リ「見たいけど見たくないなそれ……」
(´・_ゝ・`)「普通に見たくないよそれ……」
(‘_L’)「嫌でも見る事になるんだが」
(´・_ゝ・`)「人の話を聞かずに食べるから」
(‘_L’)「食えると聞いたら食わねばならんと」
(´・_ゝ・`)「その発想はおかしい」
- 316 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:22:30 ID:0d1J9tdoO
ミセ*゚ー゚)リ「面白いもの無いなー……つまんないなー」
(´・_ゝ・`)「勉強するにも洞窟で出来る事はしつくしちゃったからね」
ミセ*゚ー゚)リ「気温が低いとかー、滑りやすいとかーキノコが光るとかー」
(´・_ゝ・`)「地下洞窟だから日差しは無いし、居心地は悪いね」
ミセ*゚ー゚)リ「んもー洞窟やだなー……森のが良いや……」
(‘_L’)「そんなに変な森に行きたかったのかお前」
ミセ*゚ー゚)リ「悪くない」
(´・_ゝ・`)「いや良くもない」
ミセ*゚ー゚)リ「せんせー何か面白い事ないー?」
(´・_ゝ・`)「面白い事か……そうだなぁ」
(‘_L’)「魔物が出るとか」
(´・_ゝ・`)「面白いかなそれ」
- 317 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:24:10 ID:0d1J9tdoO
(‘_L’)「いや、そこに居る」
(´・_ゝ・`)「ん? ……ああ本当だ、メラ」
(‘_L’)「そんなあっさりと」
(´・_ゝ・`)「だってただのスライムだったし」
ミセ*゚ー゚)リ「あれ、せんせこれ何?」
(´・_ゝ・`)「んー……あ、お金だね」
ミセ*゚ー゚)リ「スライムが落としたの?」
(´・_ゝ・`)「みたいだね」
ミセ*゚ー゚)リ「何で小銭ドロップするの?」
(´・_ゝ・`)「魔物は光り物を集める習性が結構あるからね、前に通った人が落としたのかも」
ミセ*゚ー゚)リ「へー、それを拾ってるのか……」
(‘_L’)「敵が金を落とすのにも理由があったんだな」
- 318 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:26:11 ID:0d1J9tdoO
ミセ*゚ー゚)リ「……お、何だあれ」
(‘_L’)「箱だな」
ミセ*゚ー゚)リ「開けても良い?」
(´・_ゝ・`)「気を付けてね、横から開けて」
ミセ*゚ー゚)リ「ほーい……っと、罠なーし」
(´・_ゝ・`)「魔物も住んでなかったね」
(‘_L’)「お、金だ」
ミセ*゚ー゚)リ「わお、千円だ」
(‘_L’)「いわゆる宝箱だな」
ミセ*゚ー゚)リ「しょっぱい宝」
(‘_L’)「そんなドライな」
ミセ*゚ー゚)リ「何でこんな箱あるの? 魔物?」
- 319 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:28:27 ID:0d1J9tdoO
(´・_ゝ・`)「んー……ああ、箱に国の紋章が彫ってある、訓練コースだったんだね」
(‘_L’)「あー、冒険者育成のアレか」
ミセ*゚ー゚)リ「お、なになに?」
(´・_ゝ・`)「国が新人冒険者の訓練のために、洞窟とかに仕掛けやアイテムを設置してたんだ」
(‘_L’)「この洞窟がその訓練のコースにあったんだな、この箱は新人が取りこぼした分」
ミセ*゚ー゚)リ「へー、そんなのあったんだ……これ貰って良いの?」
(´・_ゝ・`)「良いよ、手に入れた物は各自の自由に出来る」
(‘_L’)「新人冒険者育成コースってもう無いだろ」
(´・_ゝ・`)「無いね、僕らが若い頃に廃止された、今は別の体験実習があったはず」
ミセ*゚ー゚)リ「何か本当に生々しいなー……」
(´・_ゝ・`)「まあダンジョンに宝箱なんて普通は無いからね」
(‘_L’)「あったとしたらこう言う取りこぼしか、魔物が集めてた分か」
ミセ*゚ー゚)リ「宝箱開けるのに抵抗覚えるわ……」
- 320 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:30:34 ID:0d1J9tdoO
(´・_ゝ・`)「ミセリ君はあんまりそう言うのは知らないからね」
ミセ*゚ー゚)リ「うーん、国の主催したやつとかは一般人には関係無いからなぁ」
(´・_ゝ・`)「一応は一般参加も出来るけど、有名なイベントじゃないしね」
(‘_L’)「そういや昔参加したな」
ミセ*゚ー゚)リ「どんな結果だった?」
(‘_L’)「他の参加者をちぎっては投げちぎっては投げ」
_,
ミセ;゚д゚)リ「なにしてんの!?」
(‘_L’)「早い者勝ちなのに俺が取った分に文句言うからつい」
_,
ミセ;゚д゚)リ「ああ、それは……」
(´・_ゝ・`)「フィレンクト、そのイベントは早い者勝ちじゃなくて個数決まってた様な」
(‘_L’)「マジか」
(´・_ゝ・`)「寧ろ早さを競うイベントだった様な」
(‘_L’)「だから失格だったのか……」
_,
ミセ;゚д゚)リ(駄目だこの大人……)
- 321 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:32:10 ID:0d1J9tdoO
(‘_L’)「お前は参加してたのか、あのイベント」
(´・_ゝ・`)「僕は魔導師部門だから呪文の早唱えだった」
(‘_L’)「何それ地味」
ミセ*゚ー゚)リ「せんせの順位は?」
(´・_ゝ・`)「二位だったよ、一位と圧倒的な差があったけど」
ミセ*゚ー゚)リ「……一位ってもしかして」
(´・_ゝ・`)「うんドクオさん、あの人完璧に呪文暗記してるんだもん」
ミセ*゚ー゚)リ「でも普通は暗記するんじゃないの?」
(´・_ゝ・`)「平均五分かかるような長文暗唱」
_,
ミセ;゚д゚)リ「なっげぇ!!」
(´・_ゝ・`)「それを早口かつそらで唱えきって堂々の二分三十秒だった」
_,
ミセ;゚д゚)リ「きめぇ!!」
- 323 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:34:56 ID:0d1J9tdoO
(´・_ゝ・`)「ドクオさんは色々と人智を越えてるからなぁ……」
_,
ミセ;゚д゚)リ「さすがは生きるチート……」
(´・_ゝ・`)「唱え終わってから倒れてたけど」
_,
ミセ;゚д゚)リ「体力ねぇ!!」
(‘_L’)「あの人確かその後で大会出禁になってなかったか」
(´・_ゝ・`)「なった、優勝かっさらい過ぎて」
(‘_L’)「いくつ持っていったか、優勝」
(´・_ゝ・`)「魔導大会、クイズ、詠唱、あと何だっけな……総合成績も独走してた」
(‘_L’)「…………キモいな」
(´・_ゝ・`)「否定しきれないレベルの実力だとは思う」
('A`)「えっきし!」
川 ゚ -゚)「また風邪ですかご主人様、キモいですよ」
('A`)「え、どんな言いぐさなのそれ」
- 324 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:37:04 ID:0d1J9tdoO
ミセ*゚ー゚)リ「ふーん、冒険者育成かぁ……」
(´・_ゝ・`)「気になる?」
ミセ*゚ー゚)リ「うん、ちょっとやってみたい」
(´・_ゝ・`)「じゃあそのつもりで、この洞窟を越えようか」
ミセ*゚ー゚)リ「うん!」
(´・_ゝ・`)「本来ならソロプレイだけど、今回は教師付きって事で」
ミセ*゚ー゚)リ「んーと、どうすれば良いの?」
(´・_ゝ・`)「いかに被害を抑えて安全かつ早く洞窟を抜けるかだね」
ミセ*゚ー゚)リ「む、これじゃさっきとかわんない」
(´・_ゝ・`)「そんなもんだよ、僕らは出来るだけ黙って見ておくから自分のやりたいように」
ミセ*゚ー゚)リ「ほーい、罠とかも残ってるかも知んないから気を付けなきゃね」
(´・_ゝ・`)「そうそう、注意して色々見てね」
ミセ*゚ー゚)リ「はーい! 頑張るぞー!」
(‘_L’)「腹減った」
ミセ*゚ー゚)リ「わーい台無しだぁ!」
- 325 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:38:53 ID:0d1J9tdoO
(´・_ゝ・`)「フィレンクト、少し空気を読もうか」
(‘_L’)「空腹に無茶を」
(´・_ゝ・`)「いやそうかも知れないけど」
ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃんはわたしの成長を妨げるのか……」
(‘_L’)「胸の成長が悪いのは俺のせいではない」
ミセ*゚ー゚)リ
(‘_L’)
ミセ*゚ー゚)リ「渦なす生命の色、七つの扉開き力の塔の天に到らん! アルテマ!!」
(‘_L’)「アルテマ!?」
(´・_ゝ・`)「しかしMPが足りない」
ミセ*゚ー゚)リ「命拾いしましたね、今日はMPが足りない様だ」
(‘_L’)「一瞬素で焦った……」
- 326 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:41:15 ID:0d1J9tdoO
ミセ*゚ー゚)リ「と言うか前も言ったよね、わたしこれからだから、ね?」
(‘_L’)「あーはいはい」
_,
ミセ#゚Д゚)リ「震えろ、命つなぎ止める光、力の塔となれ! 完全アルテマ!!」
(‘_L’)「完全アルテマ!?」
(´・_ゝ・`)「ミセリ君、いちいちそんなガチ詠唱しないの」
(‘_L’)「どんな教育してるんだお前は、教師も教師なら生徒も生徒か」
(´・_ゝ・`)「大地の怒りがこの腕を伝う! 防御あたわず! 疾風、地裂斬!!」ゴッ
(‘_L’)「痛い!!」
(´・_ゝ・`)「余計な事を言うから」
(‘_L’)「本の角で殴っただけだぞ今の!?」
(´・_ゝ・`)「僕が拳術を使えるわけもなく」
(‘_L’)「まあそうだけど」
- 327 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:42:44 ID:0d1J9tdoO
(´・_ゝ・`)「はいはい、もうしょうがないから休憩しよう」
ミセ*゚ー゚)リ「んもー、早く抜けたいのにー」
(´・_ゝ・`)「お腹も空いてきたし丁度良いよ、お昼にしよう」
ミセ*゚ー゚)リ「はぁーい」
(‘_L’)「飯何だ」
(´・_ゝ・`)「早い者勝ちのおにぎり」
(‘_L’)「いただいたッ!!」
_,
ミセ#゚Д゚)リ「あーっ! おっちゃんズルい! またせんせのおにぎり独り占めした!!」
(‘_L’)「うっめ超うっめぇ」
_,
ミセ#゚Д゚)リ「せーんーせーぇー!!」
(´・_ゝ・`)「はいはい、こっちのパンで我慢して、また作るから」
_,
ミセ#゚皿゚)リ「うぅぅぅぅぅぅ……おっちゃんのばーかばーか! ほーも!!」
(‘_L’)「知るか超うめぇ」
(´・_ゝ・`)「いや待て最後の罵りがおかしい、面倒でも否定して」
(‘_L’)「飯うめぇ」
(´・_ゝ・`)「否定して!! そう言うアレだと思われたくない!!」
- 329 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:44:23 ID:0d1J9tdoO
- _,
ミセ#゚−゚)リ「もうほもは知らん、せんせごはん」
(´・_ゝ・`)「ねぇやめてよホモホモ言うの……僕そっちの趣味ないよ……」
(‘_L’)「別にお前は言われてないぞ」
(;´・_ゝ・`)「そうだけど嫌です! 町中で言われたらもう滞在できない!!」
(‘_L’)「別にどうでも良い」
(;´∩_ゝ∩`)「無頓着過ぎる!!」
(‘_L’)「別に良いだろ、そう言う趣味の人間は世の中には意外と居るだろうし」
(´・_ゝ・`)「そうだけど事実ではない事でつつかれたくない」
(‘_L’)「なるほど」
(´・_ゝ・`)
(‘_L’)
(´・_ゝ・`)「えっ、何? その真顔」
(‘_L’)「デミタス」
(´・_ゝ・`)「はい」
(‘_L’)「おかわり」
(#´・_ゝ・`)「無いよ!!」
- 330 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:46:13 ID:0d1J9tdoO
(´・_ゝ・`)「あーもう疲れた、早速疲れた……さっさと食べて洞窟抜けよう……」
ミセ*゚ー゚)リ「お疲れさませんせ」
(´・_ゝ・`)「取り敢えず君のせい」
ミセ*゚ー゚)リ「てへぺろっ☆」
疲れた顔の先生が紙に包まれたものを鞄から取り出し、わたしに二つ差し出す。
それを受け取り開いてみると、包まれていたのはビスケットサンド。
ローストしたお肉とナッツ、くたびれたレタスが挟まるそれをひとかじり。
少し湿ったビスケットと、脂身の無いお肉の食感は絶妙にもそもそ。
ナッツの歯ごたえにレタスの水分、チーズクリームで多少はマシに感じる。
しかし口の水分を持ってかれる事にかわりはなく、先生が入れてくれたお茶で押し流す。
味はと言うと、特別美味しくもなく不味くもなく、なんとも無難な味でした。
ミセ*゚〜゚)リ「……びみょう」
(´・_ゝ・`)「安いからね」
- 331 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:48:32 ID:0d1J9tdoO
もそもそとサンドを食べ終え、もう片方の包みを開く。
同じようなビスケットサンドが姿を見せたけど、こちらは少し甘い匂い。
挟まれているのはブルーベリーが混ざったチーズのクリーム、申し訳程度の果物。
食感は先程よりは幾分マシで、甘酸っぱさがなかなか。
けれどやっぱりご馳走には程遠く、恨みがましくおっちゃんがぱくつくおにぎりを見ていた。
ミセ*゚ー゚)リ「ごちそーさまー」
(´・_ゝ・`)「はいはい、フィレンクトを睨まないの」
_,
ミセ*゚3゚)リ「だーっておっちゃんばっかおにぎり独占してるしー」
(´・_ゝ・`)「なら早い者勝ちで勝てる様になりなさい、またつくってあげるから」
_,
ミセ*゚ー゚)リ「……おっちゃん、次は負けないからね」
(‘_L’)「やってみろ、握り飯は渡さん」
(´・_ゝ・`)「そこまでおにぎりに情熱を注げる君達は何なんだろう」
- 333 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:50:06 ID:0d1J9tdoO
ミセ*゚ー゚)リ「せんせってさ」
(´・_ゝ・`)「ん?」
ミセ*゚ー゚)リ「彼女居なかったんだね」
(´・_ゝ・`)
ミセ*゚ー゚)リ
(´・_ゝ・`)「僕をいじめたいの?」
ミセ*゚ー゚)リ「いや、料理上手だから」
(´・_ゝ・`)「ああ……いや、何かおかしい……」
ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃんは彼女居たの?」
(‘_L’)「覚えてない」
ミセ*゚ー゚)リ「どっちだよ」
(‘_L’)「そいつの方が居たぞ」
ミセ*゚ー゚)リ「マジかよせんせ」
(´・_ゝ・`)「まあ若い頃はそれなりに」
ミセ*゚ー゚)リ「何で別れたの?」
- 334 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:52:11 ID:0d1J9tdoO
(´・_ゝ・`)
ミセ*゚ー゚)リ
(´・_ゝ・`)「フラれた」
ミセ*゚ー゚)リ「何で?」
(´・_ゝ・`)
ミセ*゚ー゚)リ
(´・_ゝ・`)「仕事ばっかしてたから」
ミセ*゚ー゚)リ「しょうがないね」
(´・_ゝ・`)「しょうがないね」
ミセ*゚ー゚)リ「で、おっちゃんは?」
(‘_L’)「ついていけないってフラれた」
ミセ*゚ー゚)リ「しょうがないね」
(‘_L’)「しょうがないな」
- 335 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:54:09 ID:0d1J9tdoO
ミセ*゚ー゚)リ「つかせんせイケメンじゃん、モテないの?」
(´・_ゝ・`)「初めて言われたよそれ」
ミセ*゚ー゚)リ「マジかよ、みんな見る目ねーな」
(‘_L’)「実は昔から言われてた」
ミセ*゚ー゚)リ「マジかよ」
(´・_ゝ・`)「マジかよ」
(‘_L’)「お前アレだ、上級生からも人気あった」
(´・_ゝ・`)「マジかよ……」
(‘_L’)「男の」
:(´∩_ゝ∩`):「ホモかよ!!」
ミセ*゚ー゚)リ「何かホモ多いなー……」
(‘_L’)「まあ男子の寮に居たからな」
- 336 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:56:07 ID:0d1J9tdoO
ミセ*゚ー゚)リ「ああ……いやでも学校は共学でしょ?」
(‘_L’)「性別で受ける授業が別れる事は多かった」
ミセ*゚ー゚)リ「ああもうホモだわ」
(‘_L’)「嫌な世の中だな」
(´・_ゝ・`)「フィレンクトの方が男社会だと思うけど」
(‘_L’)「何度か告白された」
(´・_ゝ・`)「男に?」
(‘_L’)「男に」
ミセ*゚ー゚)リ「嫌な世の中だなぁ……」
(‘_L’)「嫌な世の中だな……」
(´・_ゝ・`)「もうやだこのホモの多い世界……」
(‘_L’)「彼女作れよ」
(´・_ゝ・`)「今は別にいらない」
(‘_L’)「俺もだ」
- 338 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 21:58:16 ID:0d1J9tdoO
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ将来わたしがお嫁さんになってあげようか」
(´・_ゝ・`)「どっちの?」
ミセ*゚ー゚)リ
(´・_ゝ・`)
ミセ*゚ー゚)リ「生活面で考えてせんせ」
(´・_ゝ・`)「よし」
(‘_L’)「もう無職ではないぞ、戦士になったぞ」
ミセ*゚ー゚)リ「勲章どこにあんの?」
(‘_L’)「パンツにつけてる」
ミセ*゚ー゚)リ「もうその時点で駄目だわ」
(‘_L’)「マジかよ……」
ミセ*゚ー゚)リ「めんどくさいし二人のお嫁さんで良いや」
(‘_L’)「重婚出来たっけ」
(´・_ゝ・`)「無理だね」
- 339 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:00:50 ID:0d1J9tdoO
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあせんせ、わたしに彼氏出来たらどうする?」
(´・_ゝ・`)
ミセ*゚ー゚)リ
(´・_ゝ・`)「取り敢えず経歴を聞く」
ミセ*゚ー゚)リ「生々しいよ」
(‘_L’)「取り敢えず骨の2、3本は折る」
ミセ*゚ー゚)リ「怖いよ」
(´・_ゝ・`)「ミセリ君に恋人か……これから出来たりするんだよなあ……」
(‘_L’)「恋人作ってどうするんだ?」
ミセ*゚ー゚)リ「えっ…………わかんない」
(‘_L’)「じゃあしばらくは出来んな」
ミセ*゚ー゚)リ「どう言う意味よそれ」
(‘_L’)「恋にすら恋してない奴が恋人とか出来るわけ無いだろ」
ミセ*゚ー゚)リ「うわぁ……おっちゃんが正論っぽい事言った……」
- 340 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:02:51 ID:0d1J9tdoO
(´・_ゝ・`)「だって僕は別にそこまで凄い遺伝子でも無いしなぁ」
(‘_L’)「普通そうだしな」
(´・_ゝ・`)「フィレンクトは…………まあ無職だしなぁ……」
(‘_L’)「いや今は戦士だから」
(´・_ゝ・`)「遺伝子で言うとドクオさんの方がヤバい」
(‘_L’)「あれはヤバい」
ミセ*゚ー゚)リ「でもドクオさんって彼女居ないよね」
(‘_L’)「完全無欠の童貞だな」
(´・_ゝ・`)「しれっと言わない」
(‘_L’)「寧ろ性欲あるのかあの人」
(´・_ゝ・`)「…………無いかも」
(‘_L’)「人間として珍しすぎる部類だろ……」
(´・_ゝ・`)「寧ろ人間を越えてるよ……」
ミセ*゚ー゚)リ「ドクオさん……」
- 341 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:04:42 ID:0d1J9tdoO
(‘_L’)「まあお前には関係ない話だな」
ミセ*゚ー゚)リ「わたし? 何で?」
(‘_L’)「初潮まだだろ」
ミセ*゚ー゚)リ
(‘_L’)
ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃん」
(‘_L’)「うん」
ミセ*゚ー゚)リ「死ね」
(‘_L’)「ストレートに言われた」
(´・_ゝ・`)「フィレンクト」
(‘_L’)「うん」
(´・_ゝ・`)「死ね」
(‘_L’)「何かごめん」
- 342 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:06:42 ID:0d1J9tdoO
(´・_ゝ・`)「ほら、いつまでも話してないでそろそろ行くよ」
ミセ*゚ー゚)リ「ほーい」
(‘_L’)「おかわり」
(´・_ゝ・`)「無いってば」
ミセ*゚ー゚)リ「……」
(´・_ゝ・`)「どうしたのミセリ君」
ミセ*゚ー゚)リ「ホモについて考えてた」
(´・_ゝ・`)「何でそんなにホモ推しなの? 何で引っ張るのそのネタ?」
ミセ*゚ー゚)リ「気になるお年頃だから」
(´・_ゝ・`)「やめて、男の二人連れを見たら脳内で掛け算する様になりそうだからやめて」
ミセ*゚ー゚)リ「あと身近にホモが居たらネタ的に面白そうだから」
(´・_ゝ・`)「面白さのためにホモを推さないで! 面白くない!」
ミセ*゚ー゚)リ「面白くないかなぁ、結構面白そうだけど」
(‘_L’)「お前もうそっちの素養あるわ」
(;´・_ゝ・`)「腐臭が漂いそうな事はもうやめて!! お嫁さんは女性が良い!!」
- 343 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:08:44 ID:0d1J9tdoO
(;´・_ゝ・`)「もう本当にいつまでホモネタ引っ張るの……ほら行くよ……」
ミセ*゚ー゚)リ「でもホモでもロリコンでもないってつまんないよね」
(;´・_ゝ・`)「普通が一番だよ!!」
ミセ*゚ー゚)リ(これだからせんせをからかうのは止められない)
(‘_L’)(ろくでもない事を考えてるんだろうなこいつ)
(;´・_ゝ・`)「ああもう……本当に早く洞窟抜けて宿で休みたい……」
ミセ*゚ー゚)リ「夜這いしていいですかー!」
(;´・_ゝ・`)「駄目に決まってるでしょうが!!」
(‘_L’)「いいですかー!」
(´・_ゝ・`)「死ね」
(‘_L’)「精一杯ボケに乗ったんだからちゃんと突っ込めよ……」
(´・_ゝ・`)「流れ的に色んな意味で洒落にならないから死ね」
ミセ*゚ー゚)リ「それはダメだよおっちゃん、言って良い事と悪い事があるよ」
(‘_L’)「えぇ……」
- 344 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:10:15 ID:0d1J9tdoO
(´・_ゝ・`)「はいはいもうホモ禁止、僕は普通の女性のお嫁さんが欲しいです」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあもう四年くらい待ってね」
(´・_ゝ・`)「はいはい」
ミセ*゚ー゚)リ「む、本気にしてないな」
(´・_ゝ・`)「はいはい」
ミセ*゚ー゚)リ「もう四年もしたらナイスバディになるからね!!」
(‘_L’)「ミセリ、世の中には言って良い嘘と悪い嘘がある」
_,
ミセ#゚Д゚)リ「どう言う意味だこらぁ!!」
(‘_L’)「お前がBカップ以上になる未来なんぞ存在しない、嘘は言うな」
_,
ミセ#゚Д゚)リ「か、勝手にわたしの未来を決めるなぁあああああ!!」
(‘_L’)「定められた未来だ、諦めろ」
_,
ミセ#゚Д゚)リ「未来は自分の手で掴み取るものだよ!!」
(´・_ゝ・`)「地図地図っと……よし、道はこっちか」
- 345 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:12:23 ID:0d1J9tdoO
(´・_ゝ・`)「二人とも、洞窟で話のネタも何も見つからないからって下ネタに走らないで」
(‘_L’)「他にネタが無い」
ミセ#゚ー゚)リ「胸に関しては謝って」
(‘_L’)「さーせんっしたー」
ミセ#゚ー゚)リ
(‘_L’)
< 秘孔拳!!
< たわば!!
(´・_ゝ・`)「ランタンの油は……まだ十分あるね、はい出発ー」
ミセ#゚ー゚)リ「はーい」
(#)_L’)「はーい」
- 346 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:14:17 ID:0d1J9tdoO
(´・_ゝ・`)「地図を見るからにもう少しではあるんだけどなぁ……」
ミセ*゚ー゚)リ「夜までには抜けるっしょ」
(´・_ゝ・`)「まあね、でも夜に抜けても宿が見つかるかどうか」
ミセ*゚ー゚)リ「あー……野宿だと風邪引くかな」
(´・_ゝ・`)「それは大丈夫だと思う、こっちの方は気温が高いから」
ミセ*゚ー゚)リ「そうなの?」
(´・_ゝ・`)「うん、熱源があるからね、いつでも夏」
ミセ*゚ー゚)リ「……つまり冬だけど泳げるって事?」
(´・_ゝ・`)「そう言う事、水着でも買おうか」
ミセ*゚ー゚)リ「よっしゃー! 海だー!!」
(‘_L’)「ただのでかい水溜まりだろ?」
ミセ*゚ー゚)リ「夢も希望もロマンも無いねおっちゃん……」
- 348 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:16:51 ID:0d1J9tdoO
(‘_L’)「しかも水飲めないんだろ」
(´・_ゝ・`)「飲んでみる? そこらへんの水溜まりはしみだした海水だけど」
(‘_L’)「どれどれ」
(´・_ゝ・`)「さ、行こうかミセリ君」
ミセ*゚ー゚)リ「ほーい」
(‘_L’)「しょっぺぇ!!」
(´・_ゝ・`)「当然の結果なのに……」
ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃん……」
(‘_L’)「この水で煮物とかしたら塩がいらないんじゃないか」
(´・_ゝ・`)「雑菌とか居るよ」
(‘_L’)「煮沸消毒で」
(´・_ゝ・`)「塩が出来るね」
(‘_L’)
(´・_ゝ・`)
(‘_L’)「エコだな」
(´・_ゝ・`)「エコかなぁ……」
- 349 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:18:45 ID:0d1J9tdoO
ミセ*゚ー゚)リ「まず火を焚くからエコじゃなくない?」
(‘_L’)「ああ、そうか」
(´・_ゝ・`)「エコの定義がよくわからない」
ミセ*゚ー゚)リ「どうでも良いけどさっきからちらほら魔物出てきてる」
(´・_ゝ・`)「うん、そうだね」
(‘_L’)「技名も言わずにメラ撃つの止めろよ」
(´・_ゝ・`)「アギラオ」
(‘_L’)「デビチルやってるからって!」
(´・_ゝ・`)「ブフーラ」
(‘_L’)「寒い!」
(´・_ゝ・`)「実は未だにどの魔法がどの属性か分かってない」
(‘_L’)「お前もう終盤まで進んでただろ……」
- 350 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:20:35 ID:0d1J9tdoO
ミセ*゚ー゚)リ「せんせさ、普通の魔導師なんだよね?」
(´・_ゝ・`)「うん、普通」
ミセ*゚ー゚)リ「何で時々えげつない魔法とか覚えてるの?」
(´・_ゝ・`)「君と同じ理由だよ」
ミセ*゚ー゚)リ「なんだ大魔導師か」
(´・_ゝ・`)「そうそう大魔導師」
(‘_L’)「だから敵しか撃てないのも撃てたのか……」
(´・_ゝ・`)「あとは人より少し多目に魔力溜められるだけ」
ミセ*゚ー゚)リ「それは生まれつき?」
(´・_ゝ・`)「うん、だから学費免除して貰ってた」
ミセ*゚ー゚)リ「なるほど、素質があると認められたんだね」
(´・_ゝ・`)「フィレンクトは何でだっけ」
- 351 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:22:13 ID:0d1J9tdoO
(‘_L’)「俺は身体能力」
(´・_ゝ・`)「ああ、昔から運動神経は良かったもんね」
(‘_L’)「体力と足の早さでは上位だった」
(´・_ゝ・`)「逃げ足とかね」
(‘_L’)「よく教師に追い回された」
(´・_ゝ・`)「それは君の態度の問題」
(‘_L’)「鎧の中にカエル入れたくらいでガチギレしなくても良いのにな」
(´・_ゝ・`)「それは怒るわ」
ミセ*゚ー゚)リ「おっちゃんがされたらどうする?」
(‘_L’)「兜を被せて鉄パイプで殴る」
(´・_ゝ・`)「フィレンクト……」
ミセ;゚ー゚)リ「鬼畜の所業だ……」
- 352 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:24:14 ID:0d1J9tdoO
わいのわいのと盛り上がる雑談。
先生はつまらないだの、おっちゃんは問題児だの。
平和に洞窟を抜けられそうだなと思ったわたしの視界に、何かが入り込む。
ふとその方向へ目を向ければ、道の先にぽてんと転がる茶色い何か。
遠目に見ればただの毛玉で、動いている様子は無い。
先生とおっちゃんが掴み合いをしているので、わたしは一人それに近付いてみる。
ミセ*゚ー゚)リ「なんだこりゃ……毛玉?」
茶色くて、わたしの頭くらいの大きさをした毛玉。
爪先でつんつんとつついてみれば、突然もこもこと動き出した。
ひょこ、と毛の間から目が見える。
手足は無いけどぽよぽよと跳ねて、わたしの爪先を押し返す。
ミセ*゚ー゚)リ「? …………せんせー、何これー?」
- 353 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:26:13 ID:0d1J9tdoO
わたしが先生を振り返って問い掛けると、先生は驚いた顔でこちらへ駆け寄る。
足元の毛玉を見下ろすと、大きく口を開けてわたしを狙っていて。
驚き後ずさるよりも早く、誰かに襟首を思いきり引っ張られた。
がちん、と空を噛む毛玉の歯。
わずかに飛び散る赤い何かと、背中から倒れ込むわたし。
ミセ;゚−゚)リ「な……なに、あれ……」
(;´・_ゝ・`)「ミセリ君! 怪我は!?」
ミセ;゚−゚)リ「無い、だいじょぶ…………っせんせ血ぃ出てる!!」
(;´・_ゝ・`)「大丈夫、これくらいな……らっ!」
ミセ;゚−゚)リ「ッ!」
先生がわたしを背中から抱え込み、毛玉を思いきり蹴飛ばす。
呻き声をあげて弾き飛ばされた毛玉に、先生はわたしを立たせて下がらせる。
駆け寄ってきたおっちゃんに保護され、わたしは安全圏へと移動。
- 354 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:28:17 ID:0d1J9tdoO
(‘_L’)「おいデミタス! 何だあれは!」
(;´・_ゝ・`)「下級に見えるけど、実際は狂暴な上級魔物……ッ……いたた」
ミセ;゚−゚)リ「せ、せんせ怪我治さなきゃ!」
(;´・_ゝ・`)「それより先に、あいつを何とかしなきゃね……何でこんな所に……」
先生が立ち上がり、かすり傷のついた頬から流れる血を拭う。
そんな先生に駆け寄ろうとしたら、おっちゃんに腕を捕まれて動けない。
危ないからだろうと分かってはいるものの、その手を振り払おうで腕を振るった。
蹴飛ばされた毛玉がまた跳ねて、こちらへと向かってくる。
それを迎え撃とうと、火球を手の中に作り出す先生。
しかし大きく跳び跳ねた毛玉は、突然、ぶわりと大きく膨れ上がって。
ミセ;゚−゚)リ「せんせぇっ!?」
弾ける様に、毛玉は大量に増殖した。
- 355 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:31:04 ID:0d1J9tdoO
(;´・_ゝ・`)「ッ────!?」
声も無く、驚愕に目を見開く先生。
大量の毛玉に襲い掛かられ、倒れ込んで。
何かがちぎれる音がした。
ミセ;゚−゚)リ「…………ぇ……」
(‘_L’)「デミタスッ!!」
ミセ;゚−゚)リ「おっちゃん……あれ、ねぇ…………なに、あれ……」
(‘_L’)「ッ……見るな! そこに居ろ!!」
毛玉が先生に群がり、抵抗も出来ないその身体を蹂躙する。
まるで無力な状態の先生は、あちこちを噛まれて、かじられて、血が噴き出して。
わたしを離したおっちゃんと、わたしの足元に、何かが転がった。
- 356 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:32:30 ID:0d1J9tdoO
それは、いつもわたしの頭を撫でてくれていたもの。
わたしを抱き締めてくれたもの。
わたしの涙を拭ってくれたもの。
ミセ; − )リ「ぁ…………あ……」
わたしはその場にへたりこみ、先生の腕を抱き上げた。
力無くぐったりと、まだ暖かい先生の腕。
噛み切られた断面からは、血がぼたぼたとこぼれ落ちる。
唇を震わせて、わたしはなにも言えなくて、ただ見開いた目から、涙があふれた。
ミセ; − )リ「せん、せ……うそ…………うそ……」
先生はわたしを残して死なないって、約束した。
●
- 358 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:34:14 ID:0d1J9tdoO
おっちゃんが弾けた様に走り出し、毛玉を思いきり蹴散らす。
先生に群がる毛玉を殴って、ちぎって、放り投げて、必死に先生を救いだそうとして。
(‘_L’)「デミタス! デミタスッ!!」
(;´ _ゝ `)「フィレ……ク、ト…………」
(‘_L’)「デミタスッ!!」
(;´ _ゝ `)「ミセリ君……は……」
(‘_L’)「ッ……無事だ! お前が守った!!」
(;´ _ゝ `)「そ、か……良か……た……」
(‘_L’)「こいつら……ッ!!」
腰から下げた剣を、鞘から抜く。
しかしその手を、弱々しく押さえる手。
- 359 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:36:22 ID:0d1J9tdoO
(;´ _ゝ `)「駄目……あれは……毒が……」
(‘_L’)「ッ、だったら……」
(;´ _ゝ `)「早く、ミセリ君を……連れ、……逃げ……」
(#‘_L’)「ふざけるなッ!! あいつの保護者はお前だッ!!」
(;´ _ゝ `)「け、ど……」
おっちゃんの背中、力無く投げ出された先生の手足。
かじられたのか、剥き出しになった肉と骨。
お腹から溢れる血、臓物、咳き込む先生の鼻と口からも血が流れて。
わたしは、頭が急激に冷えて行くのを感じた。
わたしの先生。
わたしだけの先生。
わたしだけの家族。
先生を悲しませるものも、傷付けるものも、わたしは絶対に許さない。
絶対に、絶対に、
- 361 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:39:03 ID:0d1J9tdoO
ミセ − )リ「せん、せ……を……」
(‘_L’)「ミセリ……ッ馬鹿が、見るなッ!!」
ミセ − )リ「ゆ、さな……ぜったい…………ぜったい…………」
(‘_L’)「……ミセリ、?」
先生の腕を抱き締める手に、熱がこもる。
全身が熱くて熱くて燃え尽きてしまいそうなのに、頭だけが嫌ってくらいに冷たくて。
ミセ# Д )リ「先生を傷付けるものなんて…………ッわたしが全部全部壊してやるんだからぁああああああッ!!!!」
(;‘_L’)「なッ!?」
わたしの怒号と共に舞い上がるのは、炎の渦。
全てを飲み込む様に沸き上がった渦は、わたしを中心に広がった。
おっちゃんと先生を傷付ける事は無く、ただ岩壁と地面を焦がして毛玉を燃やす。
- 362 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:40:19 ID:0d1J9tdoO
しばらくの間、いいや数秒かも知れない、視界は炎によって真っ赤に染まった。
けれどその炎は突然すべてかき消えて、その代わり、わたしの体から力が抜ける。
どさりとその場に崩れ落ちたわたしは、意識はあっても体は動かせなくて。
(;‘_L’)「おいミセリッ! ミセリッ!?」
(;´ _ゝ `)「ミセ、リ……く……」
先生とおっちゃんの声が、徐々に遠退く。
ああ、でも、先生の声。
先生の声が、ちゃんと聞こえる。
わたしは、先生を守れたのかな。
わたしだけの先生を、わたしは、
意識はぷつりと途切れる様に、暗転した。
- 364 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:42:07 ID:0d1J9tdoO
(;‘_L’)「こいつら……ッアホか!!」
ミセリが突如炎を巻き上げたかと思えば、ぱたりと倒れて意識を失った。
血を吐きながら震えるデミタスとミセリを交互に見やり、フィレンクトは立ち上がる。
腰から下げた剣をすらりと抜き、睨み付けるのは生き残った毛玉。
炎に怯んだ毛玉に向かって剣を振り上げ、横凪ぎにそれを斬り伏せる。
斬られた毛玉は体内から毒液を吐き出すが、ひょいとかわして一歩下がり、再び剣を構えて。
(;‘_L’)「……このアホ共を、さっさと連れて出ねば……ッ!」
ぽつりと呟き、毛玉共を容易く一掃。
毒があると知らずに突っ込めば、危なかったかも知れない。
しかしデミタスが譫言の様に与えてくれた知識は、それを回避させた。
どこまでも生真面目な奴だと剣を振るって血を飛ばし、鞘に納める。
(;‘_L’)「おいデミタス! 意識は…………デミタスッ!?」
- 365 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:44:04 ID:0d1J9tdoO
倒れるその肩を揺するが、反応は無い。
改めて傷を見れば、腹や脚を食い破られて血肉も臓物も、骨も覗いていて。
その傷は、まるで毒に侵された様に、紫色に変色していた。
(; _L )「…………マジかよ」
冷たい汗が頬を流れ、頭を冷やす。
慌てて首に巻いていたマフラーをデミタスの傷に巻き付けて、背中に背負う。
食い千切られたデミタスの腕を抱くミセリを小脇に抱えて、荷物を全て持ったかを確認。
最初の衝撃で外れたのか、ミセリの髪飾りが落ちているのを見付け、荷物の中に突っ込む。
そして忘れ物が無い事を確認するや否や、フィレンクトは勢い良く走り出した。
背中にかかる重さ。
暖かさを感じられない重量に、背筋が冷える。
呼吸音もごく小さく、ぐったりと力がまるで入っていない事が分かる。
- 366 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:46:10 ID:0d1J9tdoO
これは、思ったよりも危ないかもしれない。
傷だけなら町に急いで、ある程度は治す事が出来る。
しかしどうやら、デミタスは毒にやられている。
毒を治療する施設はあるのか、あったとしても解毒薬はあるのか。
もし毒の治療が出来なかったらどうする。
毒には種類がある、解毒薬も魔法も万能ではない。
ミセリは恐らく気を失っただけだが、デミタスは。
嫌な予感が思考を支配し、足の動きを加速させる。
途中に居た魔物を蹴散らし、息を荒くしてただただ走った。
早く早く町に行かなければ、ここを抜けなければ。
大丈夫、大丈夫だ、足には自信がある、足の早さで負けた事など一度もない。
ああでも、だけど。
この馬鹿が死んだら、誰が俺とミセリの世話をする。
誰が俺達の隙間を埋めてくれる、誰が満たしてくれると言うんだ。
- 367 ◆tYDPzDQgtA 2012/03/04(日) 22:48:10 ID:0d1J9tdoO
死なせるわけにはいかない。
たとえ腕が無かろうと、生きて貰わなければ困る。
腕が無ければ俺達がその腕になる。
足が無ければ俺達が背負って歩く。
(; _L )「クソが……ッ死ぬなよバカ共ッ!!」
孤独にはもう堪えられない。
この二人と共にした時間は失いたくない。
デミタスが死ねば、ミセリは二度と笑わない。
俺だって、もう二度と楽しいと思えない。
だから、どうか、誰でも良い。
俺達を救ってくれ。
おわり。