1 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:05:46 ID:arFx55Dc0

 まだ肌寒い日もある春の暮れ。
 僕が彼女を初めて見たのは、市内の小さな図書館だった。


 しゃんと伸びた背筋、手元の本へ落とされる眼差しは、不思議な落ち着きを感じる。

 セーラー服の襟はぴんと角が立っていて、白い指先がページをめくる度に空気を動かす。

 彼女の持つ雰囲気と言うと、静謐と言った言葉が、しっくりと馴染んだ。


 窓から吹き込む微風が、彼女の切り揃えられた黒髪をさらりと揺らす。

 顔にかかる髪を避ける際に、僕と目があった事を忘れてはいない。


 あの時、僕は胸に甘いぬくもりを覚えてしまったから。


 一目惚れとでも言うのだろうか。
 彼女の清楚な横顔に、不思議と惹かれてしまったのだ。
 絹糸のような黒髪が、白く細い指先が、ぞっとするほど魅力的だったから。



【君の世界を僕が救うようです】

2 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:06:27 ID:arFx55Dc0

 僕が図書館に足を運ぶ度に、彼女はいつも同じ席で本を読んでいた。
 最初は何となく立ち寄っただけだったのだが、彼女を見てから、なぜか意味もなく通う様になってしまって。

 お陰で赤川次郎の吸血鬼シリーズの並んでる分を読破してしまった。
 一つの棚を占拠した上に隣の棚にまで侵食するこの人は何者なんだろう。 しかもすごくおもしろい。


 彼女からは少し離れた位置に座り、今日はホームズのシリーズにでも手を出そうと思っていた。

 この位置からなら彼女も見える、いやチラ見程度だけど。 ストーカーじゃないし本が目的だけど。

 しかしそんな僕に、ふと、影が落ちた。


(#゚;;-゚)「…………ねぇ」


 視線を上げたその先には、大した距離も置かず、その彼女の顔が存在して。


(;・∀・)「へ」

(#゚;;-゚)「あなた、見てたでしょ……?」

(;・∀・)「え、ぁ、えっ?」


 あっやっべこれ。
 バレてた。
 ストーカーみたいに週四で図書館通って他校生チラ見してたのバレてた僕の高校生活終わるのではこれ。

3 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:06:48 ID:arFx55Dc0

(;・∀・)「そっ、んな……ことは……無い、んじゃな↑いかな?」

(#゚;;-゚)「うそ、……私、分かってるから」


 あーくそきっつい声引っくり返ったのスルーで倍きっついこれ。


(;・∀・)「いやっそ、いやっそっんなことないんじゃなっですかね……?」

(#゚;;-゚)「私、分かってるから」

(;・∀・)「わか、ぇ、分かって?」

(#゚;;-゚)「あなただったのね、……私が探していた人は」

( ・∀・)


 あっこれ良くない気配を感じる。

4 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:07:14 ID:arFx55Dc0

(#゚;;-゚)「あなた、名前は……」

(;・∀・)「えっあその」

(#゚;;-゚)「ううん……言わなくても分かる……そう、あなたは……」

(;・∀・)゙ ゴクリ

(#゚;;-゚)「モラ……」

(;・∀・)そ

(#゚;;-゚)σそ「モララエル……!!」ビシィ

( ・∀・)

(#゚;;-゚)「ついに出会えた……いいえ、出逢えた…………そう、邂逅を、果たせたわ……」

( ・∀・)


 あぁー。
 これ良くない何かだー。

5 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:07:56 ID:arFx55Dc0

 確かアレだ、あのえーと、前世。 前世厨とか言うガチであればあるほどヤバいやつ。

 あーやっべどうしよう、僕一目惚れの相手がガチでヤバめのアレだったの。
 早めに逃げ、あー逃げられない手を掴まれたすべすべでひんやりしてるちょっと照れる悔しい。


( ・∀・)「……あー……えーと……モララーです……」

(#゚;;-゚)「そう……こちらでの字《あざな》はそう言うのね……」


 あーしんどいしんどいこれ。


(#゚;;-゚)「そうね……モララエルは真名……しかし諱《いみな》でもある……」


 あーうん好きだよねーあざなとかいみなとかそう言うの好きだよねーその括弧きついなー。


(#゚;;-゚)「ふふ、ならここではこちらの世界の名前で呼ぶわ、モララー……」


 笑顔がかわいいからクッソくやしいです。

6 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:08:23 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「あー……はい、あの僕もう帰りますんで……んじゃ」

(#゚;;-゚)づ「待って」ギュ

( ・∀・)「くそー待つしかないなー袖握られたら待つしかないなー」

(#゚;;-゚)「私はでぃ、ディッセンバー・トゥエンティフォーよ」

( ・∀・)「下手くそなクリスマスイブかよ……」

(#゚;;-゚)「こちらでの言葉は私もまだ慣れていなくて、少し不格好かしら」

( ・∀・)「前向きだなあ」

,,(#゚;;-゚)「もしおかしいと思ったなら正して頂戴」ペト

( ・∀・)「あぁーくそーずるいなー女子高生がくっついてくるのずるいなー」

(#゚;;-゚)「何が卑怯なの?」

(,,^Д^)「健全な少年は女性に近付かれると困惑するものですよでぃさん」

( ・∀・)「そうだよほんとただの健全な男子高校生でうわ何か増えた」

7 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:09:47 ID:arFx55Dc0

(,,^Д^)「私はでいさんの忠実なる僕、タカラと申します」

( ・∀・)「まともな方? 同調する方?」

(,,^Д^)「こちらの世界ではでぃさんは少々奇異に思えるかもしれませんがご容赦ください」

( ・∀・)「分かんないなーこれどっちか分かんないなーもーやだなー」

(#゚;;-゚)「奇異……? こちらの世界ではこの様な格好が普通なのでは無いのかしら……」

( ・∀・)「ふつ……えーと……ふつう……?」

(,,^Д^)「ふつうの定義が乱れていますねモララー様」

( ・∀・)「やめてよ様付けしんどいよ……」

(#゚;;-゚)「この書にもこの様な格好の女性が出てくるわ」

( ・∀・)「ラノベだよ、なろう系のラノベだよそれ」

(,,^Д^)「黒髪ロングに黒セーラーで傷痕持ちと来れば役満の筈では?」

( ・∀・)「お前分かってて言ってんだろ」

8 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:11:10 ID:arFx55Dc0

(,,^Д^)「過剰な黒で構成された立ち姿、素晴らしい出来ですでぃさん」

(#゚;;-゚)「しかしモララーは納得できないみたいだわ」

( ・∀・)「取り敢えず傷痕どこにあるの」

(#゚;;-゚)「異世界のコンシーラーで隠してあるわ」

(,,^Д^)「こちらの方に傷は見えませんがあちらの方には見えますよ」

( ・∀・)「あーもーやだーぁ」

(#゚;;-゚)「この格好はお気に召さない?」

( ・∀・)「帰りたい」

(#゚;;-゚)「待って」

(,,^Д^)「どうぞ座って」グイグイ

( ・∀・)「やだ帰いたいいたい何その力押さえつけるのやめて肩が痛いよ座るから」

(,,^Д^)「モララー様はお優しい……」

( ・∀・)「様付けしんどい……何だよ僕より細いのに何でそんな強いの……」

(,,^Д^)「聖獣ですので」

( ・∀・)「しんどい……」

9 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:11:53 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「……それで、何なんですか……僕もう三毛猫ホームズ借りて帰りたいんですけど……」

(,,^Д^)「わざと突き放す様な敬語……これが技なのですね……」

( ・∀・)「帰りたい」

(#゚;;-゚)「私には使命があって、あなたを探していたの」

( ・∀・)「へい」

(#゚;;-゚)「あなたが来る事を察知してここに顕現したのだけれど」

( ・∀・)「へい」

(#゚;;-゚)「でもあの……ちょっと……この書が面白くて……そっちに夢中に……」

( ・∀・)「おい使命」

(,,^Д^)「娯楽の乏しい世界で生きてこられたので……ついのめり込んでしまったんです……」

( ・∀・)「重そうな設定ぶっこむな」

10 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:12:18 ID:arFx55Dc0

(#゚;;-゚)「そう、それはさておき、あなたはある魔王の生まれ変わりなの」

( ・∀・)「魔王の方だったかー」

(#゚;;-゚)「そして私はあなたを封じた勇者の末裔」

( ・∀・)「勇者の方だったかー」

(#゚;;-゚)「あなたを封じて幾星霜……長らく平和は守られてきた」

( ・∀・)「へい」

(#゚;;-゚)「新たなる魔王が世界を闇に包み、我々にはそれに対抗しうる手段が無いの」

( ・∀・)「へえ」

(#゚;;-゚)「そこで古代の魔王の生まれ変わりである、あなたの力を借りざるをえなくなってしまった」

( ・∀・)「ほう」

(#゚;;-゚)「この世界に転生したあなたに魔王時代の狂暴性が無い事はわかった……だからこそ、会いに来たの」

( ・∀・)゙「ほーん……?」ソワ…

(,,^Д^)(ちょっと楽しくなってきてる……)

11 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:12:43 ID:arFx55Dc0

(#゚;;-゚)「だから、どうかお願い……私たちの世界を救ってほしいの」

( ・∀・)「残念な事にただの人間だからしんどいです」

(#゚;;-゚)「いいえあなたには魔王としての力を持って生まれている、それは封じられているだけ!」

( ・∀・)「解放出来ないから帰って良い?」

(#゚;;-゚)「勇者からの封印は解いた……だから、後はあなたの意思次第なの!」

(,,^Д^)「もう少し話を聞いてくださいモララー様」

( ・∀・)「解放されないのは僕そのものだった……様付けしんどい……」

(#゚;;-゚)゙「お願いモララー、あなたの力が無いとあの世界はきっと滅んでしまう」キュ

( ・∀・)「手を握られると何でも頷きそうになるなぁこれ」

(,,^Д^)゙「お願いしますモララー様」キュ

( ・∀・)「様付けしんどいし同じ音なのに何でチョークスリーパーを選んでしまったんだやめろ」

(#゚;;-゚)「駄目よタカラ、こちらの世界の人間は首にじゃれると死んでしまうらしいわ」

(,,^Д^)「何と……!?」キュゥ

( ・∀・)「力を込めるな」

12 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:13:11 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「あーもー帰りたい」

(#゚;;-゚)「あなたも、本当はうっすらと過去の記憶があるんじゃないかしら」

( ・∀・)「ないです」

(#゚;;-゚)「なら何故、私をあんなに見ていたの?」

( ・∀・)

(#゚;;-゚)「魔王としての記憶があるか……いえ、その血が私を求めたのかも知れない……」

( ・∀・)

(#゚;;-゚)「私に何らかの既視感を抱いていた……だから、私に視線を向けてしまった……違う?」

( ・∀・)「違います」

(,,^Д^)「モララー様は週四でこの地に足を運んでいた……未だ不完全だったのかも知れません」

( ・∀・)「様付けしんどい……日参したら完全体なのかよ……」

(,,^Д^)「完全体のストーカーですね」

( ・∀・)「お前さっきから何かじわじわ腹立つなぁ」

(,*^Д^)「えっ……」ポ…

( ・∀・)「何なんだよその反応、もはやこえーよ何なんだよ」

(#゚;;-゚)「ふふ、タカラったら……」

(,*^Д^)「へへ……」

( ・∀・)「うわぁ何その、何なのその感じ、気ッ持ち悪いなぁ」

13 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:13:50 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「あーもう五時になる、帰ろ」

(#゚;;-゚)「何処へ行くと言うのモララー」

( ・∀・)「おうちにかえろうと言うのですが」

(#゚;;-゚)「待って、あなたに見捨てられたら私……私……っ」

( ・∀・)「あーやめてー僕が悪い感じになるこの何かアレやめてーでもかわいいなー」

(#゚;;-゚)「私、その……えっと……顕現してから元の世界って言うか家に戻ってなくて……」

( ・∀・)「えっ……」

(#゚;;-゚)「今はそこのお店の裏にある箱を屋根にして生活してるの……」

( ・∀・)「青空スリーパーかよぉ!!」

(,,^Д^)「何その呼び方」

(#゚;;-゚)「やっとあなたと言葉を交わせたから私もう……嬉しくて……うれ、う、ぅぅ……」

( ・∀・)「おいお前この子どんな生活送ってたんだよおい!! おまえ!!」

(,,^Д^)「コンビニの裏で廃棄品食べてしのいでます」

( ・∀・)「本物にせよダメなアレにせよもうお巡りさん呼ぶ案件だろ!!!」

('、`*川「静かにねー」

( ・∀・)「あ、ごめんなさい……」

14 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:14:37 ID:arFx55Dc0

(#゚;;-゚)「うぅ……夜間は冷えて……すごく寒いから暖かい風が出る箱に寄り添うの……ひぐ……」

( ・∀・)「やめてよぉ……室外機に寄り添う中二モデルに全振りした女子高生を想像したくないよぉ……」

(#゚;;-゚)「しかも良い匂いがするの……」

( ・∀・)「裏のコンビニの隣は焼肉屋だもんね……暴力的にお腹空くよね……」

:(#∩;-∩):「私もうあの寝床に帰りたくないぃ……」

( ・∀・)「おい聖獣(他称)!! おい!! この勇者の末裔を早く児童保護センターに連れてけ!!」

(,,^Д^)「この辺は交番も公衆電話も無いんですよねぇ」

( ・∀・)「図書館でも言えば電話貸してもらえるよ!! 司書さーん!! 電話貸してくださーい!!」

(,,^Д^)「いけません!!」ガッ

( ・∀・)「急にミランダ警告されそうなレベルで後ろ手に手首を捻り上げないで」

(,,^Д^)「でぃさんも私もこの世界では戸籍も国籍も国債もありません」

( ・∀・)「最後の何だよ」

(,,^Д^)「ですからこの世界でそう言った公の機関に素性を探られてしまうと非常に困るのです」

( ・∀・)「もとの世界では国債持ってるのかよ」

15 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:15:30 ID:arFx55Dc0

(,,^Д^)「だからあなたには黙秘権があります」ギリギリ

( ・∀・)「えぇ……発言が不利な証拠として使われる可能性があるのぉ……」

(,,^Д^)「と言う事で電話はお控え下さい」

( ・∀・)「直接警察署に連れてって良い?」

(,,^Д^)「あなたには弁護士を呼ぶ権利があります」ギリギリ

( ・∀・)「お前の方が呼ぶ羽目になるぞ」

(,,^Д^)「証拠を残さなければ……?」

( ・∀・)「サイコパスかよぉ……」

(#ぅ;-゚)「ぐすん……喧嘩は駄目よタカラ……」

(,,^Д^)「精神コマンドの説得ですよでぃさん」

( ・∀・)「根性か何かの間違いだろサイコパスおい」

(#゚;;-゚)「駄目よ、ちゃんと話し合いで解決しなきゃ、戦争を起こしに来たわけでは無いのだから」

( ・∀・)「僕は訴訟を起こしたいです」

16 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:15:56 ID:arFx55Dc0

(#゚;;-゚)「タカラがごめんなさいモララー、その……私もう落ち着いたから……うん……」

( ・∀・)「そんな悲しい顔されるとすごくつらい」

(,,^Д^)「モララー様って語彙力が切ないですよね」

( ・∀・)「様付けしんどいって言うかお前そろそろとっちめるぞ」

(,,^Д^)「とっちめる……!?」

(#゚;;-゚)「そう、そうよね……あなたには帰る家があるのだもの……帰るべきだわ……」

( ・∀・)(家に帰りにくいのかな……まさか虐待とか、核家族とか……間違いなく家出だよな……)

(#゚;;-゚)「私達も行きましょうタカラ……今日は廃棄? があると良いのだけれど……」

(,,^Д^)「昨日は廃棄ほとんど出ませんでしたからね……」

( ・∀・)(勇者の末裔はともかく、こっちの自称聖獣は何なんだろう……歳は近そうだけど……)

(,,^Д^)(ハッ……モララー様が私を見ている……)

( ・∀・)(見た感じはブレザー、細身、優等生っぽくはある……どこの制服だろ……)

(,*^Д^)(いけませんモララー様……私は……私は男で……!)ポッ…

    メリ
( ・∀・)づ)Д^)゙

17 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:16:18 ID:arFx55Dc0

(,#)Д^)「なにごと」

( ・∀・)「おまえが何かムカつく事を考えてたってのは分かる」

(,#)Д^)「さすが魔王の生まれ変わり……心を読む事もお手の物とは……」

( ・∀・)「ムカつく事を考えてたんだな?」

(,#)Д^)

(,∩Д^)゙「策士、策に溺れるとはこの事ですか……」

( ・∀・)「策士気取りか」

(,,^Д^)「魔王の末裔は流石に口も頭も回る……」

( ・∀・)「生まれ変わりじゃないのかよ」

(,,^Д^)「流石は魔王の生まれ変わり……重箱の角をつつくのがお得意で……」

( ・∀・)「おまえもう喧嘩売ってるんだよな? 喧嘩売ってるんだろ?」

(#゚;;-゚)(モララーはタカラと仲良しね……)

(#゚;;-゚)b(でも二人が仲良くなれば我々の使命を果たしやすくなる……偉いわ、タカラ……!)グッ

( ・∀・)(ホモ推しされた……!?)ヒッ

(,,^Д^)(でぃさんがまたボケてる)

18 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:16:44 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「はー、もうどうしよ」

(,,^Д^)「どうしたんですか、変なのに絡まれて早く帰りたいけど現代社会の闇に触れてしまって放置出来ない罪悪感に苛まれたような顔をなさって」

( ・∀・)「色々言いたいけど取り敢えずセリフの半分くらいで改行しろ」

(,,^Д^)「そんな生真面目なところがあなたの魅力ですよね……」

( ・∀・)「初対面の男が訳知り顔で僕の魅力を語ってくる……もはや死にたさすら感じる……」

(,,^Д^)「でもその素直になれないところは良くありませんよ?」

( ・∀・)「素直な気持ちしかおまえにぶつけてねーよひっぱたくぞ」

(#゚;;-゚)「だ、駄目よモララー? 暴力は駄目よ?」オロオロ

( ・∀・)「何なんだよ勇者の末裔なのに暴力に困惑するのかよ……かわいいな……」

(,,^Д^)「既に一回殴られたのに」

(#゚;;-゚)「た、鍛練はしてたけど長らく平和だったから……魔物と戦った事とか無くて……」

(,,^Д^)「新しい魔王が来た時に初めて戦ってとんでもない事になりましたよね」

(#゚;;-゚)「忘れて」

(,,^Д^)「まさか服と鎧だけを溶かすスライムが実在するとは」

(#゚;;-゚)「忘れなさい」

( ・∀・)「続けて」

19 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:17:17 ID:arFx55Dc0

(,,^Д^)「しかも粘液にあんな効果を持ったヌルヌルした触手生物まで居るだなんて……」

(#゚;;-゚)「忘れてやめてやめて忘れて」

( ・∀・)「続けて」

:(#゚;;-゚):つ< ・∀・)「ごめん」

(,,^Д^)「まさか粘液の効果で全裸でも羞恥心を持たずバーサク状態で相手をズタズタにするだなんて……」

( ・∀・)「まじかよ……」

(#∩;-∩)「きらい」

(,,^Д^)「フフッ……でぃさんかわいい……」

( ・∀・)「おまえほんと歪んでんな……気持ち悪いわ……」

(,,^Д^)「そんなわけで勇者の末裔は戦闘アレルギーになりまして」

( ・∀・)「勇者の末裔は何かすごい力で世界救ったりしないのかよ……」

(,,^Д^)「剣を握ると顔真っ赤で泣き出すように」

( ・∀・)(見たい……)

:(#゚;;-゚):プルプル

20 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:17:45 ID:arFx55Dc0

(,,^Д^)「だからモララー様のお力が必要なんです」

( ・∀・)「おまえがどうにかしろよ聖獣、しんどいから様付けやめて」

(,,^Д^)「聖獣は乗り物か召喚獣枠だからそんな世界救うほど強くないです」

( ・∀・)「切なさ乱れ撃ちかよ」

(,,^Д^)「しかし時間がありませんモララー様」

( ・∀・)「しんどい」

(,,^Д^)「先程から帰り支度をした司書さんがこちらを生ぬるい眼差しで眺めています」

(;・∀・)「あー! 五時半あー過ぎてたあー!! ごめんなさいごめんなさい!!」

('、`*川「六時くらいまでは待てるよ」

(;・∀・)「帰ります帰りますごめんなさい!!」

(#゚;;-゚)「ハッ 待ってモララー……!」ギュ

(・∀・ )"「待ちます!!」ビタッ

(,,^Д^)(性欲に忠実だなあ)

21 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:18:34 ID:arFx55Dc0

(#゚;;-゚)「私には……この書の続きを知る必要がある気がするの……」

( ・∀・)

(#゚;;-゚)

( ・∀・)「すみません貸し出しまだいけます?」

('、`*川「機械落としちゃったからここに名前と番号書いてー」

(,,^Д^)(融通きくなあこの司書さん)

( ・∀・)「モララー……っと……すみません騒がしくして」

('、`*川「他に利用者の方が居る時は静かにねー」

(,,^Д^)(29歳独身美人司書Fカップって感じかな……)

( ・∀・)「おまえどこ見てんの」

(,,^Д^)「性の権化」

( ・∀・)「本当にどこ見てんの?」

22 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:19:03 ID:arFx55Dc0



( ・∀・)「はー……司書さんが優しくて良かった……」

(,,^Д^)「司書さんがやらしくて良かった?」

( ・∀・)「耳と頭のどっちが悪いのおまえ」

(,,^Д^)「聖獣ですから善の権化みたいなもんですよ?」

( ・∀・)「きったねぇ聖獣」

(#゚;;-゚)「ねぇモララー……あの……」

( ・∀・)「はいはい、本どうぞ」

(#゚;;-゚)「い、良いの……?」

( ・∀・)「今週中に返す事と、汚したり無くしたりしない事、本当は又貸しはダメなんだからね」

(#゚;;-゚)「ご、ごめんなさい……でも大事に読むわ!」

( ・∀・)「うーんかわいいなー」

(,,^Д^)「モララー様って心の中に言葉を留めておきませんよね」

( ・∀・)「しんどいからそろそろ様付けやめて」

23 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:19:38 ID:arFx55Dc0

(,,^Д^)「良かったですねでぃさん」

(#゚;;-゚)「うん!」

( ・∀・)(うーん、家出……だろうけど、何なんだろうなぁ……。 育ちは良さそうだし……)

(,,^Д^)「しかしその本はそんなに面白いんですか?」

(#゚;;-゚)「うん、えっとね、女の子が主人公で」

( ・∀・)(聖獣(他称)にそそのかされた良いとこのお嬢さんとかなのかなぁ……うーん……)

(,,^Д^)「その女の子がどんなひどい目にあうんですか?」

(#゚;;-゚)「あ、あわないよ? 同級生? の男の子に恋をするんだよ?」

( ・∀・)(マジでコンビニ裏に住んでるなら、警察か学校に連絡した方が良いよなぁ……)

(,,^Д^)「ははあ、さては女の子が複数登場してくんずほぐれつするアレですね?」

(#゚;;-゚)「くん……? お、女の子は主人公の友達しか出てこないよ……?」

( ・∀・)(せめてどこの生徒か分かればなぁ……んー……マジだとしたら放置はなぁ……と言うか異世界設定で日本語読めるのな……)

(,,^Д^)「じゃあビデオレター展開とかですか?」

(#゚;;-゚)「びでお……?」

( ・∀・)「聖獣ちょっとおまえ呼吸と喋るのやめて」

24 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:20:02 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「人が真面目に悩んでんのにおまえさっきからアレな話にしたがるのやめろ」

(,,^Д^)「アレとは何ですかはっきり言って下さい聖獣なのでこの世界の人間の言葉は不馴れなんです」

( ・∀・)「ディッセンバーもうこいつ放置して家に帰った方が良いよ」

(#゚;;-゚)「か、帰りたいけど……でも使命があるから……」

(,,^Д^)「私を放置して帰りたいんですか……?」

(#゚;;-゚)「えっ? ち、違うよ、おうちに帰りたいだけだよ?」

(,,^Д^)「でぃさん……そんなに私の事が迷惑だったんですか……」

(;#゚;;-゚)「違うよっ!? そんなことないよ!? ほ、ほんとよ? 迷惑じゃないよ?」オロオロ

(,,^Д^)(でぃさんかわいい……)ゾクゾク

( ・∀・)「悪趣味な事すんな変態」

(,,^Д^)σ「うふふ冗談ですよでぃさんもちろん分かってますよ私の事大好きですもんね」ツンツン
 _,
(#゚;;-゚)"「…………タカラきらい」プイ

(,,^Д^)「うふふふ」

( ・∀・)(うわぁ気持ち悪い……)

25 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:20:26 ID:arFx55Dc0

(,,^Д^)「まあでぃさんは勇者の末裔、私は聖獣ですからご心配には及びませんよ」

( ・∀・)「…………」

(,,^Д^)「あっ信用してない目」

(#゚;;-゚)「? 大丈夫だよモララー、私ちゃんとできるよ」

( ・∀・)「かわいい」

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚)ゞ「あなたが心配する事など何も無いわ……私は勇者の末裔、我が身くらい守れるもの……」サラァ

( ・∀・)「かわいい」

((#゚;;-゚))プクー

( ・∀・)「つらい」

(#゚;;-゚)「な、何が?」

( ・∀・)「つらいから僕は帰るけど何かあったらちゃんとお巡りさん呼ぶんだよ」

(#゚;;-゚)「? うん……」

( ・∀・)「あの変態に気を付けるんだよ?」

(#゚;;-゚)「タカラは聖獣よ?」

( ・∀・)「聖獣(変態)に気を付けるんだよ?」

(#゚;;-゚)「うん……?」

26 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:20:56 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「それじゃ」

(#゚;;-゚)「うん……でも使命のこと忘れないでね、あっ違、その身に与えられし宿命を忘れてはいけないわ」

( ・∀・)

(#゚;;-゚)ゞ「私は必ずや使命を果たしてみせる……あなたも覚悟を持っておいて頂戴」サラァ

( ・∀・)「普通に喋って良いよ」

(#゚;;-゚)「勇者の末裔だからちゃんとしなさいって言われてるんだもん……」

( ・∀・)「その喋り方教えたの誰?」

(#゚;;-゚)「タカラよ?」

(・∀・ )

(,,^Д^)+

( ・∀・)"(かわいいから良いか……)プイ

(,,^Д^)そ

27 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:21:20 ID:arFx55Dc0

(,,^Д^)「さ、でぃさん行きましょう」

(#゚;;-゚)「うん……あっ」グゥゥ

(,,^Д^)「昨日は食べるものがありませんでしたからね……」

(#゚;;-゚)「今日は何かあると良いなぁ……私この間のあれが食べたい……」

(,,^Д^)「肉のお弁当ですね、750円とか言うリアルな金額なのがつらいですね……」

(#゚;;-゚)「うー……日が落ちると寒い……」

( ∩∀∩)「あーもーあーもー!! 何か奢るからー!! もー!!!」

(#゚;;-゚)!?

(,,^Д^)「チョッロ(モララー様そんなお気遣い無く)」

( ・∀・)「12月にしか奢らねーから」

(,,^Д^)「私は叙々苑でお願いします」

( ・∀・)「男子高校生の財布には四千円しか入ってねーよ」

(,,^Д^)「予算把握しました」

( ・∀・)「ぶっとばすぞ」

28 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:22:02 ID:arFx55Dc0

(#゚;;-゚)「わ、悪いわモララー……あなたはまだ学生と言う身分なんでしょう?」

( ・∀・)「こんなの無視できないよぉ……」

(#゚;;-゚)「そ、それに私だって勇者の末裔よ! プライドくらいあるもの、そんな施しは」グゥゥ

( ・∀・)

(#゚;;-゚)

( ・∀・)「肉まん食べる?」

(#∩;-∩)「たべるぅ……」

(,,^Д^)「じゃあ私ピザまんで」

( ・∀・)「こっちの輪に入ってくんな浮浪者もどき」

(,,^Д^)「心にしみるーゥ」

,,,( ・∀・)「ちょっと待ってて、そこのコンビニ入るから」

(#゚;;-゚)「うん……」

(,,^Д^)

(#゚;;-゚)

(,,^Д^)「でぃさん、すみません私のせいで」

(#゚;;-゚)「……タカラは何も悪くないわ、しょうがない事だもの」

(,,^Д^)「しかし、私のせいでこんな事に……」

(#゚;;-゚)「謝らないでタカラ……今はつらいけど、きっと幸せになれるもの……」

(,,^Д^)「はい……」

29 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:22:36 ID:arFx55Dc0

(#゚;;-゚)「私は、その……決められた道ばかり歩んできて……こんな生活になったけど……
     その、今は少しだけ、少しよ? いっぱいはやだけど……少しだけ、楽しいって思うの」

(,,^Д^)「でぃさん……」

(#゚;;-゚)「あ、あったかいベッドで寝たいし、お風呂にも入りたいし、ご飯もちゃんと食べたいからね?」

(,,^Д^)「ふふ、分かってますよ……すみません、でぃさん」

(#゚;;-゚)「……あなたが居て良かったわ」

(,,^Д^)「私も、あなたのお側に居られて幸せで」

「ココアよー」ジュッ
( ・∀・)つ□#)Д^)"

(,,#)Д^)「とてもあつい!!!」

( ・∀・)「はい12月、やけどしないでね」

(#゚;;-゚)「あ、ありがとう……でも、良いの?」

( ・∀・)「ん?」

(#゚;;-゚)「学生と言う身分は一般的にお金をそんなに持ってないと聞くわ……それなのに……」

( ・∀・)「良いよお小遣い月末に貰えるから、バイトも考えてるし」

(#゚;;-゚)「ばいと……」

( ・∀・)「身分証明出来ないとろくなバイト出来ないからダメだよ」

30 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:23:10 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「ほら冷めるから食べて」

(#゚;;-゚)「い、いただきます……」

(,,^Д^)「いただきます」

(#゚;;~゚)「おいひい」モフモフ

(,,^~^)「このハイカロリー食品感がたまらない」モフモフ

( ・∀・)(コンビニ横の路地に座り込んで肉まんとピザまん食ってる育ちの良さそうな美男美女……)

( ・∀・)

( ・∀・)(警察には言えない家庭の事情とかあるのかなぁ……)

(#゚;;-゚)「こちらの食べ物は味が濃いのね……」

(,,^Д^)「海が近いのではないでしょうか」

(#゚;;-゚)「そっか、海の水はしょっぱいものね……」

( ・∀・)(小学生の会話かよ……)

(#゚;;-゚)「私にはこちらの貨幣価値はよくわからないのだけど、これは高値なのかしら」

(,,^Д^)「108円ですよ」

(#゚;;-゚)「どれくらいの価値なの?」

( ・∀・)(108円くらいの価値だなぁ)

31 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:23:47 ID:arFx55Dc0

(,,^Д^)「そうだでぃさん、お持ちになったアレは?」

(#゚;;-゚)「あ、アレね、こっちで役に立つのかしら」ゴソゴソ

( ・∀・)(黒いカードとか出てきたらどうしよう……)

(#゚;;-゚)つ「はい」ジャラァ

( ・∀・)

(#゚;;-゚)

( ・∀・)

(#゚;;-゚)「だ、ダメよタカラ……やっぱりこっちじゃ石ころみたいなものなんだわ……」

(,,^Д^)「うーん一般通貨なんですけどねぇ……」

( ・∀・)「……これは?」

(#゚;;-゚)「金よ?」

( ・∀・)「きん」

(#゚;;-゚)「向こうではこれだけあれば三日くらいはご飯を食べられる筈なんだけど……」

(,,^Д^)「こっちじゃまずこれでは支払えませんでしたからねぇ……」

32 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:24:19 ID:arFx55Dc0

(#゚;;-゚)「もし少しでも価値があるのなら、これをこの世界の通貨に出来たら良いのに……」

(,,^Д^)「うーん、金じゃイマイチかもしれませんねぇ……」

( ・∀・)

(#゚;;-゚)つ「ねぇモララー、この世界では金に価値はある?」ズシッ

( ・∀・)

(#゚;;-゚)「モララー?」


 手渡された皮袋は、予想より遥かにずっしりと重い。

 袋からじゃらじゃらと出てくるのは、眩しいような金色。
 けれどけばけばしいメッキの様な色ではなく、高級感を持った色だった。

 重い、でもメッキっぽくはない。
 爪を少し立ててみると、うっすらと爪の跡が残る。

 金属に間違いはないだろうが、これが本物なのかはわからない。
 しかし、小道具にしては手が込みすぎてる。

33 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:24:43 ID:arFx55Dc0

 手のひらの上の、金と思われる何か。

 目の前には、僕を見上げる少女。
 その傍らには、僕らを見守る男。

 二人とも制服姿で、年は同じくらいに見えて、襟も袖も僕の着ている制服よりぱりっとしていて。
 振る舞いも物腰も、僕よりランクの高い家庭で育ったんだろうなと分かるほどで。

 それなのに二人ともおかしな言動を繰り返して、僕の淡い初恋すらも台無しにして行く。


 世間知らずのご令嬢とお付きの人とか、そんな感じなのかな。
 お互いに付き合い長そうだし、何か二人の世界入ってたし。

 聖獣のせいだとか何とか言ってたし。
 あれか? 身分違いの恋で駆け落ちか?
 だから警察にも厄介になれないとかそう言う? じゃあなんで僕に絡んできたんだ?

 と言うかそうだとしたら僕すごい滑稽じゃない?
 一目惚れした女の子は駆け落ちの最中でした?
 それなのにかわいいだの何だの言って世話焼いて?


 あーもー。

 あぁーーーもぉーーーーー。



 もう、僕のキャパは限界だ。

 ワケわかんない事言われて、絡まれて、付き合って、ああもうこれ僕すごくバカみたい。

34 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:25:06 ID:arFx55Dc0

(#・∀・)「帰る」

(#゚;;-゚)「えっ」

(#・∀・)「これも返す、もう図書館には行かない、バイバイ」

(;#゚;;-゚)「ま、待ってモララー、どうしたの? 私おこらせることした?」

(,,^Д^)「どうしたんですかモララー様、そんな急に」

(#・∀・)「しんどい!!!」

(;#゚;;-゚)"「ひっ」

(#・∀・)「もう良いよワケわかんないよ!! 生まれ代わりだの末裔だの聞きたくないよ!!」

(;#゚;;-゚)「だ、だって……使命が……」

(#・∀・)「使命とかそれこそワケわかんないよ!! なんで僕を巻き込むんだよ!!」

(;#゚;;-゚)「ま、魔王の……」

(#・∀・)「僕は生まれも育ちもこの町の生粋の人間だよ!!!」

(;#゚;;-゚)「あ、あう……生まれ代わり……」

(#・∀・)「もう良い!! 聞きたくない!!」

:(;#。゚;;-゚):「ひぅ……」

35 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:25:53 ID:arFx55Dc0

(#・∀・)「おまえも!! なんなんだよ!! 分かっててやってんだろ!? なんで止めないわけ!?」

(,,^Д^)「まあまあ、どうどう、ここまで良く素の状態で付き合って頂けたと思ってます本当に」

(#・∀・)「おまえだって分かってんだろ!? ワケわかんない事言ってるってさぁ!!」

(,,^Д^)「寧ろここまで一度もキレなかったのが凄いと思います、素晴らしい忍耐力です」

(#・∀・)「もうさぁ!! おまえらの都合に僕を巻き込むなよ!! 駆け落ちだか何だか知らないけど!!」

(;#゚;;-゚)「ちがうよ!!?」

(#・∀・)「じゃあなんなんだよもう!!!」

(,,^Д^)(全力で否定食らうと少しつらい)

(;#゚;;-゚)「モララーわかったから、ごめんなさい! 急に変なことばっかり言ってごめんなさい!」

(#・∀・)「謝るくらいなら最初からやんないでよ!! 変な事情聞かせないでよ!!
     最後まで付き合えない僕が間抜けみたいじゃん!! ここに来て女の子に怒鳴り付けて最低じゃん!!」

(,,^Д^)(自覚あるんだー)

(;#゚;;-゚)「ごめんなさいするから落ち着いて! ちゃんと説明するから! ごめんなさいだから!」

(#・∀・)フーフー

(,,^Д^)「ココア飲みます?」

     メゴォォォ
(#・∀・)三づ#)Д^)「僕が買った僕の分を勝手に半分以上飲んでんじゃねーぞクルルァア!!!」
           アヒン

(;#゚;;-゚)「タカラー!!」

36 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:26:19 ID:arFx55Dc0

(#゚;;-゚)「ご、ごめんね? モララーごめんね? 困ったよね? ごめんね?」

( ・∀・)「僕こそ怒鳴ってごめんね……ひぃん……」

(,,#)Д^)「私には?」

( ・∀・)「おまえはしんどけ……」

(#゚;;-゚)「えっと、えっとね、ちゃんと説明するから、ごめんね、こっちの話押し付けてばっかりだったよね」

( ・∀・)「うん……もう謝らないで……僕こそごめんね……」

(#゚;;-゚)σ「私たちのおうちで話す?」

( ・∀・)「その段ボールの事を指しているなら公園にでも行った方がマシだぁ……」

(#゚;;-゚)「落ち着いて話せるならでこでも良いから、モララーが行きたいとこ行こ?」

(,,^Д^)「あっちにホテル通りありますよ」

(#゚;;-゚)「宿屋があるの?」

( ・∀・)「性獣を黙らせる方法ってある?」

(#゚;;-゚)「耳の後ろをしたたか殴り付けると寝るよ?」

( ・∀・)「物理攻撃か……」

37 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:26:50 ID:arFx55Dc0



(#゚;;-゚)「ここの椅子で良い?」

( ・∀・)「うん……母さんにメールしたから時間かかっても良いよ……」

(#゚;;-゚)(めーる?)

(,,^Д^)(義母って響き強いよなぁ……)

(#゚;;-゚)「えっとね、私たちの素性なんだけどね」

( ・∀・)「うん」

(#゚;;-゚)「説明してもたぶん分かってもらえないと思うの」

( ・∀・)「うん、……うん?」

(#゚;;-゚)「だからね、直接見てもらった方が早いと思うの」

( ・∀・)「待って、何を? 何を見るの?」

(#゚;;-゚)「ちゃんと説明はするから、ちょっと待ってね?」

( ・∀・)「…………もうここまで来たら、最後まで付き合います……」

38 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:27:18 ID:arFx55Dc0

(#゚;;-゚)「ありがとう、モララー……じゃあタカラ、行くよ」

(,,^Д^)「お任せあれ」

( ・∀・)(何が始まるんだろう……)

(,,^Д^)っ~~~「我らが力に従い賜え!」ミョイー

( ・∀・)「あっ何か始まった」

(#゚;;-゚)っ~~~「開け! 扉よ!!」ミョイー

( ・∀・)「あっ短かった」


 ミョインミョインミョイン ホワワワァ…


( ・∀・)

(#゚;;-゚)「さ、行きましょモララー」

( ・∀・)「えっ待って、何なのこの宙に空いた穴は」

(#゚;;-゚)「異世界への扉よ?」

( ・∀・)「えっ」

(#゚;;-゚)?

( ・∀・)「あっ」

(,,^Д^)ニコッ

( ・∀・)

( ・∀・)(マジのやつかー……)

39 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:27:41 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「えー……えぇ待っ……えぇー……うわ穴の中すごく明るいナリぃ……」

(,,^Д^)「向こうは昼間ですねー」

( ・∀・)「わー……わぁー……牧歌的ぃー……」

(,,^Д^)「田舎なんですよねー」

( ・∀・)「あぁー……不思議な生き物がいるぅー……足元に擦りよってきたぁー……やわらかーい……」

(,,^Д^)「森の動物ですねー」

( ・∀・)「あーこれ異世界だぁー……足を踏み入れたら爽やかな風が頬を撫でるぅー……」

(,,^Д^)「空気がきれいですよねー」

( ・∀・)「あー……あぁぁー…………これ完全に現代日本じゃないどこかだぁー……」

(,,^Д^)「納得しました?」

( ・∀・)「せざるをえねぇー……」



 現代日本の常識が打ち崩された。

40 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:28:23 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)σ「…………あー……えーと……勇者の末裔?」

(#゚;;-゚)ノ

( ・∀・)σ「あー……聖獣?」

(,,^Д^)ノ

(σ・∀・)「…………魔王の生まれ変わり?」

(#゚;;-゚)σ

(,,^Д^)σ

( ・∀・)「ガチのやつぅ……?」

(#゚;;-゚)゙

(,,^Д^)゙

( ・∀・)

( ∩∀∩)「ふぇぇ……」

(,,^Д^)「生ふぇぇ頂きましたー」

( ・∀・)∩「耳の後ろを斜め45度?」

(#゚;;-゚)゙「手刀で垂直に」

(,,^Д^)「やめて(迫真)」

41 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:29:41 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「でー……えー……何? 僕の封じられし力が必要なんだっけ?」

(#゚;;-゚)「そんなかんじ」

( ・∀・)「どうやって出すの?」

(#゚;;-゚)「力んだら出るかも?」

(つ・∀・)つ「マジかー、ふーんっ」グググ

(,,^Д^)(もうツッコミすら放棄した……)

(・∀・ )つ「出そうにないや」

(#゚;;-゚)「そっかぁ」

(,,^Д^)「あ、魔王来てる」

(#゚;;-゚)「えっうそやだなんで」

”( ・∀・)づ「マジ? 魔王どれ?」


    ボ//
( ・∀・)つhttp://llllllll.llllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll
     \    ミ゛ュィィィィィイ

42 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:30:02 ID:arFx55Dc0

<チュドゥ
<ボギャアアアアア

<ウワーマオウサマー


( ・∀・)つ

(#゚;;-゚)

(,,^Д^)

( ・∀・)「あっ……やっべーの出た気がする……」

(,,^Д^)「そんなうんこ漏らしたみたいな言い方しないで下さいよ……」

( ・∀・)「……なんで魔王居たの?」

(#゚;;-゚)「わかんない」

(,,^Д^)「醤油でも借りに来たんじゃないですか?」

( ・∀・)「昭和かよ」

(#゚;;-゚)(しょうゆ……?)

43 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:30:24 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「……魔王死んだ?」

(,,^Д^)「死んだっぽい?」

( ・∀・)「一撃で?」

(,,^Д^)「いやー先代魔王の生まれ変わりお強い」

( ・∀・)

(,,^Д^)

( ・∀・)「門限過ぎるから帰って良い?」

(,,^Д^)「お疲れさまでした」

(#゚;;-゚)「しょうゆってなに?」

(,,^Д^)「ほらでぃさんバイバイして」

(#゚;;-゚)ノシ「あっ、えっ、あ、ありがとうねモララー」

( ・∀・)ノシ「うんバイバーイ」

(#゚;;-゚)ノシ「またねー」

( ・∀・)ノシ「また会う時は普通の女子高生だといいなー」

(,,^Д^)゙「わかりました」

(・∀・ )「おまえじゃねえよ」

44 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:31:23 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)

( ・∀・)「あー」

( ・∀・)「濃い一日だった」


 一目惚れした女の子をチラ見するために足繁く通った図書館。
 不純な動機ではあったが、ずいぶん読書をしたものだ。

 しかし今後あそこに立ち寄る事は無いだろう、と言いたいが又貸しした本を返して貰ってない。
 弁償だこれ。


 僕の恋の相手は、艶やかな黒髪に黒のセーラー服。
 白い肌とほっそりした体つきの、きれいな少女だった。

 物腰は穏やか、と言うか中二。
 だと思ったら、実際はごく普通の女の子。

 自称勇者の末裔だと思ったらガチの勇者の末裔で。

 つまり服だけを溶かすスライムにマジで襲われたと言う事で。
 やっぱり詳しく話を聞けばよかった。

45 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:32:19 ID:arFx55Dc0

 あとは自称聖獣。
 つか性獣。
 余計な事しか言わない。
 次に会う事があったら耳の後ろを斜め45度から垂直に殴ろう。


 あー、疲れた。

 僕の恋は無惨に砕け散ったけど、まあ何か、世界を救ったような感じはなきにしもあらずで。

 もう良いや、帰ったらご飯食べてお風呂入って寝よう。
 遅くなったのは友達の相談に乗ってたって感じで言い訳して。


 それにしても、何かビーム出たなぁ。
 でもあれらを現実だったと認識するのは諦めて、何か夢を見たんだと思っておこう。

 何にせよ、彼女たちに会う事はもう無いだろう。
 少し惜しい事をしたのか、それとも日常に戻れた事を喜ぶべきか。


 なんて事を考えながら、すっかりぬるくなった、ほとんど残ってないココアを飲み干した。

46 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:33:31 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「…………はぁ」

( ・∀・)「かわいかったんだけどなー……」

( ・∀・)「僕が魔王の生まれ変わりかぁ……」

( ・∀・)「いやいや、もう忘れよう、現実だとしても受け止めきれない」

( ・∀・)つ「よし、ただいまー」ガチャ

(,,^Д^)「お帰りなさーい」

(・∀・ )「お母さん今日のごはんはー?」バタン

(,,^Д^)「もうこの子ったら、帰ったそばからもう」

( ・∀・)「僕さーカレーにエビフライ乗ってるのがいいなー」ゴソゴソ

(,,^Д^)「そう言うのは朝の内に言ってちょうだい、もう」

( ・∀・)「ところでお母さん」

(,,^Д^)「なあに?」

( ・∀・)「人んちで人の母親に扮してる変態は警察呼べば良いのかな」

(,,^Д^)「やめて(迫真)」

47 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:34:09 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「なに? なにしてんの? お母さんは? ぱふぁってなったの?」

(,,^Д^)「ちょっと作品が違う気がしますけど、奥様ならキッチンでハンバーグ焼いてらっしゃいます」

( ・∀・)「んでおまえなんなの? おまえのほうなの?? なんなのおまえ???」

(,,^Д^)「おっと分かりやすく私の存在を嫌悪していらっしゃる」

,,(#゚;;-゚)「あ、モララーおかえりなさい」

( ・∀・)「居たー!」パァァ

(,,^Д^)「正直この状況で喜べるモララー様もちょっとおかしいと思いますよ?」

( ・∀・)「しんどい。 どうしたの12月、忘れ物? 大丈夫? この変態を押さえ付けてくれる?」

(#゚;;-゚)づ「えっとね、本借りっぱなしだったから」ガッ

(,,^Д^)「でぃさん」

(∩・∀・)「返しに来たの?」スッ

(,,^Д^)「モララー様」

(#゚;;-゚)「できればね、読み終わりたくって……その……じゃなくってね、モララーの力はまだ必要なの」

「えっ、まだ何か居たの?」
( ・∀・)#), Д )三^ ^ ペポーイ
 ⊂彡 ゴッシュ

48 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:34:47 ID:arFx55Dc0

(#゚;;-゚)「ううん、今後同じような事が起きないために、モララーの力を借りて向こうの世界を守るの」

( ・∀・)「僕は何をすれば良い?」

(#゚;;-゚)「私が一緒にいたら、私を仲介して向こうにモララーの力が届くの、溜める形だからそんなには時間はかからないけど」

( ・∀・)「つまり?」

(#゚;;-゚)「本もまだ読めてないし、その……しばらくこっちに居て良い?」

( ・∀・)゙「いいよ」

(;#゚;;-゚)「ちゃんと考えた?」

( ・∀・)゙「うん」

(;#゚;;-゚)(うそだ……なにも考えてない顔してる……)

( ・∀・)「お母さんに説明しなきゃ」

(#゚;;-゚)「あ、それは大丈夫」

( ・∀・)「もうした?」

(;#゚;;-゚)「タカラが洗の  マインド    いいかんじにした……から……」

( ・∀・)「そっかーなら安心だーーー」

(;#゚;;-゚)「ごめんね……ごめんね……なんかごめんね……思考放棄しないでね……」

49 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:35:07 ID:arFx55Dc0

( ・∀・)「良いよ、じゃあハンバーグ食べよっか」

(#゚;;-゚)「あ、わ、私ね、手伝ったよ! おいしそうに出来たよ!」

( ・∀・)「わーーーーい」

(#゚;;-゚)「……モララー、迷惑だったら言ってね? ちゃんと別のとこに行くからね?」

( ・∀・)「いやもういっそ家に下宿する方が安心だし僕はラノベの主人公なんだと思えば諦められる」

(;#゚;;-゚)「ごめんねぇ……」

( ・∀・)「ラノベの主人公ならしょうがない」

(;#゚;;-゚)「モララー……」

( ・∀・)「じゃあ、しばらくよろしくね、でぃちゃん」

(#゚;;-゚)!

(*#゚;;-゚)「えへへー……よろしくね、モララー」

( ・∀・)「全てを赦そう……」

(;#゚;;-゚)「神様なの……?」

50 ◆XuvvuSgErk 2017/08/19(土) 00:35:51 ID:arFx55Dc0

 こうして、僕の家には一人と一匹の居候がやってきた。

 そう遠くない未来、僕らは手を取り合い共に戦う事になるだろう。
 いやならないか。 ビームで倒せるか。

 それでも、まあなんか、たぶん大スペクタクルな事が。
 世界を揺るがす感じの戦いに身を投じたり大恋愛を果たしたりとか




~ 1年後 ~



(#゚;;-゚)「今までありがとう、モララー」

(,,^Д^)「お世話になりました……うう……」

( ・∀・)「二人とも、一年間お疲れさま……!」

(#゚;;-゚)「さよならモララー……!」

(,,ぅД^)「さよなら、モララー様……!」

( ・∀・)「ふふ、最後までしんどいなおまえ……!」



 何事もなく使命をやり遂げた二人は、何事もなく帰って行った。



 おわり。

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