1 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 19:58:33.40 ID:R4YgPJo3O
少し閲覧注意。

4 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:00:04.97 ID:R4YgPJo3O

 ある日ある時、私はある声を聞きました。

 それは低くてこもっていて聞き取りづらい、男の人の声。

 今まで何とも思わなかった様なその声が、
 何故か、とてもはっきりと私の耳に舞い込んだんです。


 その声の主は、同じクラスの男の子。
 背が高くて痩せていて、長い前髪で目元が隠れています。

 でも痩せているだけで、彼は実は整った顔立ちをしてるんです。

 鼻筋はしゅっと通ってるし、目尻の下がった切れ長の目。

 誰もそれには気付かないし、彼も気付いてないんだと思います。

 それに、私は彼の外見は、悪く言ってしまうとどうでも良いんです。


 私の目ではなく、耳が彼を追い求める。
 私の耳の後ろ側を優しく低く撫でる、彼の声。

 初めて聞いたその瞬間、首の後ろをざわざわと
 優しく甘く嘗められた様な気持ちだったんです。


5 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:02:04.02 ID:R4YgPJo3O

 低くてこもってる、聞き取りにくい声。
 彼の雰囲気がそのまま反映された様なその声が、私は大好きです。

 あの声で耳元をくすぐられたら、背筋に気持ち良いぞくぞくが駆け抜ける。
 聞いているだけで表情がゆるむ、こそばゆくてしょうがなくなる。

 気持ち良い声。

 みんなが聞き取りにくい、辛気臭いと嫌うあの声は
 どうしようもなく、どうしようもなく気持ち良い声。

 もっと、耳元で囁いてください。
 私、純粋にあなたの声が好きなんです。

 私、ああ、私、



 あなたの声に、恋をしています。


         【夏に恋するようです】
      『−声とJKと変態−』



7 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:04:03.27 ID:R4YgPJo3O

 私はその日の休み時間、いつもの様にお友達とお話をしてました。
 その内容は宿題やお勉強、昨晩観たテレビの事と言った他愛もない物ばかりです。

 特に意味も無ければ理由も無い、ただ穏やかな空気を楽しむ為の会話。

 私はそれが嫌いではありません。
 寧ろ、みんなが楽しんでくれているなら嬉しい位です。


 お友達がきゃらきゃらと、楽しそうにドラマについて話しています。

 賑やかな教室の中、彼女の声がクラスメイト達の声と同化して行く。

 ああ賑やかだなあ、そんな事を思う私の耳には
 たくさんの声が一緒くたになって、ざわざわと入り込みます。

 誰かを呼ぶ声、返事する声、高い声に低い声。
 その中にかき消されそうな、木の根っこみたいな声。


 あれ、?


9 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:06:05.12 ID:R4YgPJo3O

 低くて、小さくて、誰かに返事をする声。

 お友達に向けていた顔をきょろきょろと、色んな方向に向ける。
 聞き覚えのない低い声に、首を傾げながら。

 ぼそぼそと話す声を追って、私は教室の中を見回して
 視界のはしっこに引っ掛かったのは、大きくて曲がった背中。


(´・ω・`)「でさ流石君、次の日曜なんだけど、どうかな?」

( ´_ゝ`)「…………ごめん、俺は……」


 ぞく。


(´・ω・`)「そっか……」

( ´_ゝ`)「……ごめん…………弟が、行くと……思うから」


 ぞくぞく。


11 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:08:07.61 ID:R4YgPJo3O

(´・ω・`)「ううん、無理言ってごめんね、それじゃ」

( ´_ゝ`)「ん……」


 ぞく、ん。


 あ、れ?
 あれ、れ?

 変、なんだか、体の奥が変です。

 すごく、背中や耳の後ろがぞわぞわする。
 でも気持ちの悪いぞわぞわじゃなくて、少し、違うんです。


 私は、猫背の彼から目が離せません。
 窓際の後ろから三番目に座る彼から、目が離せないんです。

 あ、背中が、ぞわぞわが気持ちいい。


12 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:10:05.02 ID:R4YgPJo3O

 少しずつ引いて行くぞわぞわに身を抱いて、軽く俯きます。
 そして、ゆっくり机の木目を見つめる彼から視線を外しました。


 クラスメイトの男の子と話していたのは、背の高い、猫背の男の子で。

 ええと、ええと、名前は、確か、流石兄者くん。
 隣のクラスに双子の弟さんが居る、背の高い男の子の、はずです。

 耳の後ろを撫でられた様なぞわぞわに肩を竦めていたら、
 目の前に座るお友達が、いぶかしげに私に声をかけてきました。


o川;゚ー゚)o「……デレちゃんっ、デレちゃんっ! ……聞いてた?」

ζ(゚−゚;ζ「へなっ!? ぇ、あ、はひっ?」

o川;゚ー゚)o「なんやーへなって……もう、聞いとらんかったなぁ?」

ζ(゚ー゚;ζ「ご……ごめんなさい、キューちゃん」

o川;゚ー゚)o「キュウリのお漬け物みたいな呼び方はやめてー……」

ζ(゚ー゚;ζ「あ、じゃ、じゃあ…………トーちゃ」

o川;゚ー゚)o「立ち位置から変わってまう、変わってまうよデレちゃん!」

ζ(゚ー゚;ζ「ご、ごめんなさひ……」

13 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:12:08.31 ID:R4YgPJo3O

o川;゚ー゚)o「やっぱキューちゃんで良いや……ところで、何見てたん?」

ζ(゚ー゚;ζ「ぇ、その、あの……」

o川*゚ー゚)o「角度からしてあっちー……だとー……」

ζ(゚ー゚;ζ「あ、あの、あんまり、見なくても、その」

o川*゚ー゚)o「…………流石くん?」

ζ(゚ー゚;ζ「や、あ、ち、違うんですっ、声、あの、あんまり聞いた事なくてっ」

o川*゚ー゚)o「あー……流石くんって無口やもんね、声も低くてこもっとるし」

ζ(゚ー゚;ζ「は、はひ」

o川*゚ー゚)o「双子の弟くんは明るいんやけどねー……」

ζ(゚ー゚;ζ「へぁ……」

o川*゚ー゚)o「……」

ζ(゚ー゚;ζ「……」


14 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:14:22.41 ID:R4YgPJo3O

 あ、なんだか、視線が痛いです。

 男の子をじっと見てたのがバレちゃうのは少し恥ずかしくて、
 ついはぐらかしちゃったたのですが、もしかしたら肯定した方が楽だったかも。

 お友達である直野さん、直野キュートちゃんが私を見ています。

 キューちゃんは焦げ茶の髪に、ポンポンのついた飾りを二つつけています。
 とっても可愛らしいお顔で、私よりは大きいですが背も低め。

 特徴的な彼女の言葉遣いは、なんだかとても落ち着くんです。

 とても大事なお友達の一人、キューちゃん。


 そんなキューちゃんの視線を、私は笑顔で受け止めているのですが、
 きっと、その笑顔はひきつっているんだと思います。

 何かを探る様なキューちゃんの視線にどう返事をするか。
 汗を流しながら考えていると、後ろから声をかけられました。


15 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:16:28.28 ID:R4YgPJo3O

(´・ω・`)「直野さん、河合さん」

o川*゚ー゚)o「ん? 委員長どないしたん?」

ζ(゚ー゚*ζ「どうしたんですか?」

(´・ω・`)「今度の日曜にクラス合同の課外授業があるんだ」

o川*゚ー゚)o「あー先生が言うとったねぇ」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、それの参加についてですか?」

(´・ω・`)「うん、先生に参加者集めを言われたんだ。二人はどうする?」

o川*゚ー゚)o「あー……ほんならうち行くわ、どうせ参加者少ないんやろ?」

(´・ω・`)「うん、ありがたやです……河合さんは?」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、私も」



   ( ( ´_ゝ`)「…………ごめん、俺は……」 )



ζ(゚−゚*ζ!


16 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:18:10.50 ID:R4YgPJo3O

ζ(゚−゚*ζ

o川*゚ー゚)o「……デレちゃん?」

ζ(゚ー゚*ζ「あ……ごめんなさい、私は遠慮します」

(´・ω・`)「そっか……わかった、ごめんね」

ζ(゚ー゚*ζ「いえ、こちらこそごめんなさいです」

(´・ω・`)「うーん……参加者は今のところ二人かぁ……」

o川;゚ー゚)o「……まさか、うちと委員長だけ?」

(´・ω・`)「……うん」

o川;--)o「ただのデートやないの、それ……」

(´・ω・`)「あ、でも先生が居るからそれはないと思うよ」
  _,
o川*゚听)o「そこは少しくらい照れたりしてくれへん?」

(´・ω・`)?
  _,,
o川#゚听)o「…………恥ずかし腹立つわぁ……」


17 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:20:04.10 ID:R4YgPJo3O

(´・ω・`)「じゃ、他のクラスで聞いてくるよ」

ζ(゚ー゚*ζ「いってらっしゃいです」

o川#゚ー゚)o「いってらヘタレ眉毛」

(´・ω・`)ショボン


 委員長の男の子、眉山くんがしょんぼりと教室から出て行きます。
 その後ろ姿を見送りながら、キューちゃんが舌を出していました。

 二人は仲が良いんだな、と少しだけ羨ましい気分になります。

 私は男の子と、どう関われば良いのかよく分かりません。
 ですから、キューちゃんみたいに男女問わず仲良く出来るのが羨ましいんです。


 焦げ茶の髪の毛はさらさらの直毛で、私の癖っ毛とは全然違う。
 あのポンポンのついたゴム、私がつけると髪の毛に埋まっちゃう。

 小柄だけど私よりは背が高いし、細い手足がしゅっとしてて綺麗。


18 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:22:05.71 ID:R4YgPJo3O

 何でもまっすぐに意見を言えるし、物怖じしないし、
 なんだか、糊のきいた白いシャツみたいな彼女が、すごく、羨ましいです。


o川*゚ー゚)o「どないしたん? デレちゃん」


 暑そうに開けられたシャツのボタンに、緩んだネクタイ。
 その隙間から覗くのは、キャミソールのレースとリボン。

 私の制服は、着崩れる事もなく頑固なまでにぴっちりそのまま。
 本当は暑いけれど、ボタンを外すどころかネクタイを緩める勇気もない。

 先生に怒られるのが怖いから、私はネクタイも緩められない。

 勇気がないんです、私には。
 平坦な道しか歩けない、意気地無し。

 キューちゃんには、ネクタイを緩められる勇気が
 誰にでも話し掛けられる勇気が、ある。


 良い、なぁ。


19 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:24:07.44 ID:R4YgPJo3O

ζ(゚−゚*ζ「……」

o川*゚ー゚)o「……デレ、ちゃん?」


 勇気。

 ちら、と視線を動かして、窓の方を見ます。

 そこには、相変わらず白いシャツにシワを寄らせた猫背の彼が座っていました。
 そっと耳の後ろを指先で撫で、さっきのぞわぞわを思い出す。

 彼の声を聞いて、私の体にぞわぞわが駆け抜けた。
 あのぞわぞわは、すごくすごく、気持ちよかった。


 またあのぞわぞわを味わいたい。
 そのためには、きっと、彼の声を聞かなきゃいけない。

 でもどうやって、彼の声を聞くの?


23 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:26:05.77 ID:R4YgPJo3O

 そんなの、話しかけるのが一番早い。

 決まってるじゃない、話しかけたら、彼はきっと返事をしてくれるもの。


 まあ、


ζ( − ζ(……話しかけられたら、苦労しないのにー……)


 ですよね。

 だってだって、男の子に話しかけるのはなんだか恥ずかしい。
 話しかけられたらお返事はするけれど、自分からなんて、そんな。

 ああでも、でも聞きたいんです。

 ああうでもでもでもでも


o川*゚听)o「ソイヤァッ!!」

ζ(゚−゚;ζ「はひっ!?」


24 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:28:04.19 ID:R4YgPJo3O

o川*゚ー゚)o「なーにを悶々とわちゃわちゃしとるん、デレちゃん」

ζ(゚ー゚;ζ「へひ、へ、ぇ?」

o川*゚ー゚)o「黙ったまんま一人でめっちゃ百面相しとったよ?」


o川*゚ヮ゚)o

o川*゚ー゚)o

o川 ゚−゚)o

o川 ゚ -゚)o
  _,
o川 ゚ -゚)o
  _,
o川 - -)o
  _,
o川*- -)o
  _,
o川///)o


o川*゚ー゚)o「こんな感じで」
   ,_
ζ(゚ヮ゚*;ζ「わはぁ……お恥ずかしいです……」


26 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:30:08.92 ID:R4YgPJo3O

o川*゚ー゚)o「で、どないしたん? キュウリに話してみ?」

ζ(゚ー゚;ζ「キュウリ……あ、いえ、そのぅ……」

o川*゚ー゚)o「ボケを殺した報いを受ける前に言うた方が得やでぇ」

ζ(゚ー゚;ζ「あっ、あのっ、どど、どうしたら話しかけられるのかなぁって!」

o川*゚ー゚)o「えぇ判断や。で、話しかけるって? 誰に?」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、あの…………キューちゃんは、男の子に話しかけられます、よね?」

o川*゚ー゚)o「何やうちえらい逆ナン女みたいな言い方やけど……かけれるよ?」

ζ(゚ー゚*ζ「……どうしたら、話しかけられるんですか?」

o川*゚ー゚)o「…………普通に、ちゃう?」

ζ(゚ー゚;ζ「ぬわー……」


27 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:32:04.65 ID:R4YgPJo3O

o川*゚ー゚)o「まぁそれは冗談として、別に構えずに話しかけてるからなぁ」

ζ(゚−゚*ζ「うー……何で話しかけられるんですかぁ……」

o川*゚ー゚)o「まぁ場合にもよるやんね、話しかけなあかんのかそうでもないのか」

ζ(゚ヮ゚*;ζ「や、その、あの……別に、かけなくてもなんですけど……その」

o川*゚ー゚)o(何やラブタイフーン感じるなぁ)

ζ(。_ 。`*ζ「……話しかけたいと言いますか、その……あの……声を……」

o川*゚ー゚)o(デレちゃんえらい顔になっとるでー、つか青春しとんなぁ)

ζ(_ _`*ζ「話しかけられたいと言いますか……きもちいいと言いますか……」

o川*゚ー゚)o(デレちゃん目ぇどこやー俯きすぎやでー、いや待て何やきもちいいて)

ζ(, ,`*ζ「どうすれば良いんでしょうか……これ……」

o川*゚ー゚)o(じぶん誰や、その前に何やこのラブフェスティバル開催しとる乙女)
   ,_
ζ(゚- ゚*ζ「……聞いてます?」

o川*゚ー゚)o「え? あ、うん? ああ聞いてる聞いてる?」


28 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:34:09.63 ID:R4YgPJo3O
   ,_
ζ(゚- ゚*ζ「……聞いてなかったでしょ?」

o川*゚ー゚)o「うん、ごめん。いやまあ待て待て乙女」
   ,_
ζ(゚^ ゚*ζ「なんですか?」

o川*゚ー゚)o(あ、その顔カワイイ様でイラッとした)

o川*゚ー゚)o「でなくって、要するに、誰かと話したいん?」

ζ(゚- ゚*ζ「んー……ちょっと、違う……かな?」

o川*゚ー゚)o「ほんなら、声を聞きたい?」

ζ(゚ヮ゚*ζ「あ、それです!」

o川*゚ー゚)o「んーむ……ほんならー……」

ζ(゚ワ゚*ζ ワクワク

o川*゚ー゚)o(口でけぇな)

o川*゚ー゚)o「……録音したら?」


29 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:36:09.43 ID:R4YgPJo3O

ζ(゚△゚*ζ「……録音、ですか?」

o川*゚ー゚)o「その人の声、録音して聞いたら?」

ζ(゚□゚*ζ

o川*゚ー゚)o(ふむ、流石にこのボケはデレちゃんにはキツかったか)

ζ(゚◇゚*ζ

o川*゚ー゚)o

ζ(゚q゚*ζ

o川*゚ー゚)o

ζ(゚々。*ζ

o川*゚ー゚)o(あかん突っ込みたい、うちがボケたのに突っ込みたい、怒濤の勢いで突っ込みたい)

ζ(^ヮ^*ζ

o川*゚ー゚)o(何やねんさっきまでの顔面崩壊の末にこのカワイイ笑顔て)


30 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:38:05.25 ID:R4YgPJo3O

o川*゚ー゚)o「あー……その、ごめんデレちゃ」

ζ(^ヮ^*ζ「ありがとうございますキューちゃんっ!」

o川*゚ー゚)o「ワオ予想外」

ζ(^ヮ^*ζ「分かりました、録音していっぱい聞きます!
      取り敢えず、帰りにボイスレコーダー買います!」

o川*゚ー゚)o「これは斜め上やでぇ、どないしようか」

ζ(゚ー゚*ζ「何がですか?」

o川*゚ー゚)o「ううん何でもないでー、うまくいくとえぇなー☆」

ζ(^ヮ^*ζ「はいっ! ありがとうございますっ!」

o川*゚ー゚)o(デレちゃん……あんた、予想以上にアホやったんやな……
      それ、話しかけられへんって言う事の解決には全くなってへんで……)

o川*゚ー゚)o

o川*゚ー゚)o(どないしよう)


31 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:40:09.73 ID:R4YgPJo3O

ζ(゚ー゚*ζ「寝る前とか、暇な時に聞いて……」

o川*゚ー゚)o(デレちゃん……)

ζ(^ー^*ζ「うふふっ……ふふふぅ」

o川*゚ー゚)o(なあ、デレちゃん……)

ζ(^ヮ^*ζ「ふふー……幸せかも知れませんー……」

o川*゚ー゚)o(デレちゃん、変やで……物凄い、変態みたいやで……)

ζ(-ヮ-*ζ「いーっぱい聞きたいなぁ……色んな事……うふふー」

o川*゚ー゚)o(あかん、うちのせいでデレちゃんがおかしぃなってしもた)

ζ(゚△゚*ζ「あ、でも」

o川;゚ー゚)o「ゆべしっ?」

ζ(゚- ゚*ζ「……どうやって、録音しましょう?」

o川;゚ー゚)o「……ボイスレコーダーに向かって、話してもろたら?」

ζ(^ワ^*ζ「あっ、なるほどー! ありがとうございますっ!」
  _,
o川 ;−;)o(デレちゃん…………半端なく頭、悪なっとるで……)


32 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:42:07.37 ID:R4YgPJo3O


 放課後、私はどこか疲れた顔のキューちゃんと別れました。

 キューちゃんはがっくり肩を落として、軽く手を振って足早に帰ってしまいました。
 何かあったのでしょうか、少し心配です。

 鞄を肩からかけて、靴を履き替えようと下駄箱の扉を開けます。
 そして外靴を出して、上履きを脱ごうとした時、ある事に気付きました。


ζ(゚−゚*ζ「あ……辞書、忘れて来ちゃった」


 少し軽い鞄に首を傾げてから、机の中に英語の辞書を忘れた事を思い出しました。

 もう良いかな、とも思いましたが、今日出された宿題は英語が多い。
 さすがに辞書がないと、ちょっぴり大変です。

 しょうがない、と外靴を戻して、私は教室へと戻って行きました。


 窓や扉から流れ込む夕暮れ時の風は、昼間に比べると涼しい。

 僅かに緩和される暑さに、少しばかり、体が軽いです。


34 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:44:07.61 ID:R4YgPJo3O

 ほとんど聞いた事も無いような、低い声。
 どうして私がこんなに、彼の声に固執しているのか。
 それは、私自身にもよくわかりません。

 ただ彼の声が、低くてぼそぼそした声が、気持ち良かったんです。

 だからその声をまた聞きたくて、もっと聞きたくて、もっと気持ち良くなりたくて。

 ああ、やっぱり私、変です。
 思い出すだけで背中がざわざわする声。

 私、あの声に酔わされてる。
 流石くんの声が、私を壊して行くんです。

 どうすれば良いのか分からない
 だけど気持ち良くなりたいから、あの声を求める。


 聞きたいの、聞かせてほしいの、もっと壊してほしいの。

 ああ私、すごくはしたない女の子みたい。

 でも、もっともっと、欲しいんです。


35 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:46:01.54 ID:R4YgPJo3O

 身を抱いてぞわぞわを堪能しながら、がらり、辿り着いた教室のドアを開けた。

 夕方の赤に塗られた教室。
 そのはしっこに、ぽつりと存在する影。


ζ(゚−゚*ζ「ぁ……」

( ´_ゝ`)「…………ん、?」

ζ(゚−゚*ζ「流石……くん」

( ´_ゝ`)「……かわ、い……か?」


 赤くてうっすら暗い教室に、一人で存在する人。

 その人は顔を隠す様な長い前髪で、しゅっと通った鼻筋に下がった目尻。
 痩せているけれど、とても背の高い人。

 襟の隙間から覗く鎖骨が、とてもくっきりと見える人。
 こつんと出っ張った喉仏が、少し太い首を飾る人。


 気持ち良い声を発する、その人。


36 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:48:04.91 ID:R4YgPJo3O

ζ(゚−゚*ζ「ぁ……ま、まだ……帰って、なかったんですか?」

( ´_ゝ`)「…………ああ」

ζ(゚−゚*ζ「ど、どうしたんですか? 何かあったんですか? もう暗くなりますよ?」

( ´_ゝ`)「…………」

ζ(゚△゚;ζ「あ、う……あうあう……」


 どどどどどうしようどうしよう。

 突然の事でびっくりしちゃって、何を言えば良いのか分かりません。
 ぽろぽろと溢れて行くのは、畳み掛ける様な質問。

 ああもう、無口な流石くんがこんな問い掛けに全部答えてくれるのでしょうか。
 無口な方にそれをさせるのは無茶です、無茶ですよ、あああもうっ。

 あわあわ。
 私は戸惑って混乱して、どうすれば良いのかと右往左往。

 ただ辞書を取ってまた明日と言えば良いだけ、何も戸惑う事はない。
 それなのに、私は混乱してしまっていました。


37 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:50:04.53 ID:R4YgPJo3O

 引っ込んでいた汗が、ぶわりとあふれだす。
 夏の暑さの所為ではなく、原因不明の冷たい汗が私を濡らして行きます。

 私が今にも目をぴよぴよ回すんじゃないかと思った時、
 窓際の席から届いた、低い声。


( ´_ゝ`)「……委員長が、忙しかった……から」

ζ(゚−゚;ζ「ふぎゃっ!?」

( ´_ゝ`)「先生に…………その分の仕事、任された……」

ζ(゚−゚;ζ「あ、そ……そうなん、ですか?」

( ´_ゝ`)゙

ζ(゚−゚;ζ「……まだ、いっぱいあるんですか?」

( ´_ゝ`)

( ´_ゝ`)"


39 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:52:15.46 ID:R4YgPJo3O

 私の問いに、流石くんは少しの間を置いてから首を横に振りました。

 今の間は何だろうと首を傾げ、そたと流石君の席に近付いてみました。
 すると、流石くんの机には山盛りの紙束とホッチキス。

 紙にはびっしりと文字が書いてあり、その一番上には「課外授業」の文字。
 私が目を丸くすると、流石くんは困った様に肩を落としてしまいます。



ζ(゚−゚*ζ「これ……日曜、の?」

( ´_ゝ`)

( ´_ゝ`)゙

ζ(゚−゚*ζ「こんなにいっぱい……これ、合わせてホッチキスで止めるんですか?」

( ´_ゝ`)゙

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ私、お手伝いさせて下さい」

(;´_ゝ`)そ


40 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:54:05.48 ID:R4YgPJo3O

ζ(゚ー゚*ζ「二人でやった方が早いですよ、ね?」

(;´_ゝ`)「…………かわ、い、は……早く、帰った方が……」

ζ(゚ー゚*ζ「やです」

(;´_ゝ`)

ζ(^ー^*ζ「私、この癖っ毛みたいに頑固なんです
      だからお手伝いさせて下さい、一緒にやって早く帰りましょう?」

(;´_ゝ`)

(;´_ゝ`)゙

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、椅子持ってきますね!」

(;´_ゝ`)゙

ζ(゚ー゚*ζ「んっしょ、と……さ、始めましょう!」

(;´_ゝ`)゙


41 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:56:04.67 ID:R4YgPJo3O

ζ(゚ー゚*ζ「重ねてー……合わせてー……ぱっちんな」

(;´_ゝ`)

ζ(゚ー゚*ζ「合わせてー……重ねてー……ぱっちんな」

(;´_ゝ`)

ζ(゚ー゚*ζ「重ねて合わせてー……ぱっちんな」

(;´_ゝ`)

ζ(゚ー゚*ζ「えいしょ、のいしょ、ぱっちんな」

(;´_ゝ`)

ζ(゚ー゚*ζ「えいこらよいこら……ぱっちんな」

(;´_ゝ`)

ζ(゚ー゚*ζ「ぱっちんぱっちんぱっちんなっと」

(;´_ゝ`)(集中……出来ん……)


43 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 20:58:13.42 ID:R4YgPJo3O

(;´_ゝ`)「…………かわ、い?」

゙ζ(゚- ゚*ζ!

(;´_ゝ`)?

ζ(゚ー゚*ζ「あ、な、何ですかっ?」

(;´_ゝ`)「……かわいは、ひとり、ごと…………多い……のか」

:ζ( ヮ *ζ: ゾクッ

ζ(゚ー゚*;ζ「あ……ご、ごめんなさい、うるさかったですか?」

(;´_ゝ`)「…………いや、そうじゃ、無い……が」

:ζ( ヮ *;ζ: ゾクゾクッ

ζ(゚ー゚*;ζ「ご、ごめんなさい、独り言……小さい頃からの癖で」

(;´_ゝ`)「そう……なのか」
   ,_
:ζ( △ *;ζ: ゾクゾクゾクッ

(;´_ゝ`)(…………かわい……なんか、変な奴……だな)


45 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:00:04.03 ID:R4YgPJo3O

 ああもうやっぱり気持ち良い。
 この声、ずるいです、私の耳を嘗めるみたいに撫でる。

 ぱちんぱちん、とホッチキスが音を立てる。
 少しずつ出来て行く課外授業の資料。

 独り言をぐっと押さえ込んで、静かにその作業に没頭する。
 何か言わないかなあ、流石くんに喋ってほしいなあ。

 そんな事を考えながら、ちらちらと流石くんの顔を盗み見る。
 たまに目が合って、少し焦って視線を外して、作業。


 電気を消した教室には、ぱっちんぱっちん、ホッチキスの音ばかりが転がっていました。

 私は流石くんとなかなか言葉を交わせず、よく分からない自己嫌悪に陥ります。
 敬語、嫌かなあ、話しづらいかなあ。
 もっともっと、聞きたいなあ。

 はふん。


48 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:02:05.77 ID:R4YgPJo3O

─ ( ´_ゝ`) ─



 俺が一人、教室で作業をしていると、女子が教室に入って来た。

 その女子は、クラスや学年全体から人気のある小柄な女子。

 名前は確か、河合デレ。
 そう言った事にあまり興味のない俺でも、名前くらいは知っていた。

 小柄で、顔はまあ、人気があるくらいだからきっと可愛いのだろう。よく分からないが。
 上の方で二つに結ってある、長くて色の薄い癖っ毛が特徴的だ。

 ふわふわの癖っ毛は、細くて柔らかそうだと見ていて思う。

 高くて細い声は、赤い紐を結わえた小さい鈴みたいに綺麗で。
 俺とは正反対の、よく通る綺麗に透き通った声。

 高くてもうるさくはない、耳に心地好い声。

 彼女の容姿にはあまり興味はないが、
 教室の隅に座っているだけでもよく耳にするその声は、実は、結構好きだ。


49 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:04:09.65 ID:R4YgPJo3O

ζ(゚ー゚*ζ「さ……流石くんは、好きな事とかありますか?」

( ´_ゝ`)

( ´_ゝ`)゙

ζ(゚ー゚*ζ「そ、それは何ですか? 私はその、お掃除とか好きで、その、あの」


 河合は、机を挟んで俺の前に座っている。
 そして困った様な顔をして、俺に話し掛けてくる。

 俺は、身内以外と話すのが苦手だ。
 口下手と言うか、人付き合いがうまくはない。

 だから学校ではいつも喋らず、教室の隅っこで俯いている。
 隣のクラスには双子の弟が居るが、学校ではあまり関わりがない。

 家族が同じ学校に居ても、一緒に居る事がなかなか無いのは
 きっと、よくある事なのではないだろうか。


50 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:06:03.87 ID:R4YgPJo3O

 俺は河合に話しかけられても、なかなか返事が出来ない。
 首を縦や横に振って、意思表示をするだけ。

 だがそれをすると、河合は余計に困った顔をする。
 こんな喋らない俺に、戸惑いながらも言葉を差し出す河合。
 その言葉を受け取っていながらも、言葉を返す事が出来ない。

 無性に申し訳ない気持ちになって、なんとか声を捻り出そうとする。
 けれど口から溢れるのは、低くこもった、我ながら聞き取りづらい声。

 ああ、申し訳ない。
 気をつかって話しかけてくれているだろうに。


 俺が俯いて黒いホッチキスを握りしめていると、
 視界の端でふわふわ揺れる薄茶の髪が、くんにゃりと項垂れるのが分かった。


ζ(。 。`*ζ「…………ご……ごめんなさい、変な事を聞いてしまって……」

(;´_ゝ`)!

"(;´_ゝ`)"


 ええい、喋らんか俺。


53 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:08:22.15 ID:R4YgPJo3O

 河合が困り果てた顔で俯き、ぱちぱちとホッチキスを動かしている。
 俺が返事をしないから参ってしまったのだろう、ああどうしよう、どうしよう。

 俺は変な汗をかきながら、何とか返事をするために言葉を探す。

 家庭的じゃないか、綺麗好きなんだな、とても良い趣味だ。
 そんな言葉が浮かびはするが、それを口にする事は出来ない。

 だいたいこんな言葉は、思っていても口下手の俺に言える訳がない。
 弟ならきっと、へらっと笑って軽く返すだろう。

 でも俺にそんなスキルはない。
 なぜか弟に僅かな殺意が芽生えた。


(;´_ゝ`)「あ……そ…………あの……」

゙ζ(。 。`*ζ そ

(;´_ゝ`)「……? あ、か、かわ、い、?」

:ζ( △ `*ζ: ビクッ

(;´_ゝ`)? ? ?


54 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:10:13.24 ID:R4YgPJo3O

 必死こいて話しかけると、河合は小さな体をびくりと跳ねさせる。
 そしてプルプルと小刻みに震えて、拳をぎゅっと強く握った。

 さっきから思っていたが、なぜ俺が話しかけると河合は震えるのだろうか。
 ビビりと言う感じではないし、驚いているのとは様子が違う。

 いつも、誰かに話しかけられても、河合はへんにゃり笑って返事をする。
 それなのに、俺が話しかけると震える。

 俺の時だけ。


( ´_ゝ`)「…………」


 俺の声が、そんなに、何か、アレなのか?

 気持ち悪いとか、虫みたいだとか、そんな感じなのだろうか。

 そう思ったら、余計に口を閉ざしてしまう。

 理由を聞いてみたいが、
 クラスメイトと言う事以外に関わりのない河合に、そんな事を聞くのも、アレだし。


57 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:12:25.32 ID:R4YgPJo3O

 だが俺は自分の好奇心を蹴っ飛ばして、いつのまにか口を開いていた。


( ´_ゝ`)「…………かわい、は……何で、」

゙ζ(゚△゚*;ζ「はひっ!?」

( ´_ゝ`)「……震えるん……だ?」

:ζ(゚△゚*;ζ:「はひ、へ、ひへっ? あ、ご、ごめんなはいっ!?」


 噛んだ。


( ´_ゝ`)「…………謝ら、なくて……良い」

:ζ(゚−゚*;ζ:「ひゃ、え、は、はひぃっ」

( ´_ゝ`)「…………」


 河合は、変だ。


58 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:14:06.68 ID:R4YgPJo3O

 ひゅ、と身を引いて体をびくびく震わせる河合。
 綺麗に切り揃えられた前髪が、汗に濡れて額に張り付いていた。

 なんとなくその前髪が気になって、ホッチキスを置いて、そっと手を伸ばした。
 がた、と椅子から腰を浮かせた俺は河合に近付いて前髪をつまむ。


( ´_ゝ`)「河合…………汗……」

::ζ(/△//;ζ::「はびゃいぇうっ!?」


 河合の前髪を指先で横に流して、呟いた。
 その瞬間、河合が一際大きく跳ねて変な悲鳴を上げた。


 …………そうだ、俺は気持ちの良い外見や声をしているわけじゃない。
 普段ほとんど喋らず、教室の隅で俯いている様な人間なんだ。
 面倒だからと前髪は伸ばしっぱなしで、ガリガリに痩せてて猫背で。

 失念していた。
 俺に近付かれたら、嫌な思いをする人間なんて、ごまんと居るだろうに。

 俺は、何をナチュラルに女子に近付いて前髪に触って、何をしてるんだ。

 アホか俺は、すごいアホか俺は。

 う、うわ、うわああああああああああああああ

60 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:16:18.24 ID:R4YgPJo3O

(; _ゝ )「…………悪、い……あの、あ、の」

ζ( ヮ *;ζ

(; _ゝ )「……かわ、い、?」

ζ(゚△゚*;ζ「はひゃい! は、はい? はいっ!?」

(; _ゝ )「…………そ、の……近付いて、ごめ……ん」

ζ(゚ー゚*;ζ「のぇ?」

(; _ゝ )「ごめ……あの…………俺、あの……」

ζ(゚ー゚*ζ「……どうしたんですか? 流石くん」


 それはこっちのセリフでもあるんだが。


(; _ゝ )「俺……近付いたら、……気持ち、悪い……だろ」

ζ(゚−゚*ζ「へ?」


62 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:18:14.35 ID:R4YgPJo3O

(; _ゝ )「声とか、も、あの…………気持ち……悪い、し」
   ,_
ζ(゚- ゚*ζ"

(; _ゝ )「…………ごめ、ん」
  ,,_
ζ(゚- ゚*ζ"


 俺が根性を絞り出して謝罪をすると、河合はなぜか不機嫌そうな顔をし始めた。

 眉間に皺を寄せて、口を尖らせる河合。
 その顔を見ると、俺はどんどん追い込まれて行く。

 そんなに不快だったのか、そんなに嫌だったのか。
 どうしよう、どうしよう、

  ,,_
ζ(゚- ゚*ζ「…………流石くん?」

(;´_ゝ`)「っ」
  ,,_
ζ(゚- ゚*ζ「何をいってるんですか?」

(;´_ゝ`)「ぇ……あ、…………え……?」
  ,,_
ζ(゚- ゚*ζ「流石くんは気持ち悪くなんかありませんよ」


65 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:20:06.47 ID:R4YgPJo3O

(;´_ゝ`)「え……」
  ,,_
ζ(゚- ゚*ζ「変なこと言わないで下さい、流石くんの声は気持ち良いです」

(;´_ゝ`)
  ,,_
ζ(゚- ゚*ζ

(;´_ゝ`)
  ,,_
ζ(゚- ゚;ζ

(;´_ゝ`)「…………え?」
  ,,_
ζ(゚△゚;ζ「あ……いえ、その……あの……」

(;´_ゝ`)「………………気持ち……良、い……?」
  ,,_
ζ( △ ;ζそ

(;´_ゝ`)「…………」


 河合が、更に変だ。


67 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:22:09.44 ID:R4YgPJo3O
  ,,_
ζ(゚△゚;ζ「いえあのあのそのあの今のはあのあのあのその」

(;´_ゝ`)「か、……河合」
  ,,_
ζ( △ ;ζ「ちがあのいまのはそのええとそのあのあのあのあのあのあばばばばばばば」

(;´_ゝ`)「と…………時に落ち着け……河合……」
  ,,_
ζ( △ ;ζ「うびゃふっ」

(;´_ゝ`)「……」
   ,,_
ζ(∩-∩;ζ


 河合は顔を手で覆い、俯いてしまった。

 俺はそんな河合の奇声や行動よりも、さっきの言葉が耳から離れないでいた。
 ついさっき、俺が自分を気持ち悪いと言った時の、河合の反論。

 俺の声は気持ち良いと言う、奇妙な言葉。

 俺の、声が、気持ち良い?


 いや、ないない。


70 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:24:30.27 ID:R4YgPJo3O

 河合がやっちまったと言わんばかりの顔を隠している。
 椅子に腰をおろして、俺はそれを見る。

 きっと、さっきのは何かの間違いだ。
 そうに違いない。
 と言うか、気持ち良いって何だ。
 色々とおかしいだろう。


 そう勝手に自分を納得させようとしていると、
 河合が勢い良く顔をあげて、俺を見上げた。

  ,,_
ζ(゚△゚*;ζ「流石くんっ!」

(;´_ゝ`)「!?」
  ,,_
ζ(゚△゚*;ζ「私、流石くん好きですっ!」

(; _ゝ )「!!?」


 ぅゎぁ。


72 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:26:08.51 ID:R4YgPJo3O

(; _ゝ )「………………は、?」
  ,,_
ζ(゚△゚*;ζ「好きですっ!」

(; _ゝ )「ぁ…………や……お、落ち着、」
  ,,_
ζ(゚△゚*;ζ「流石くんの声がっ!」

(  _ゝ )
  ,,_
ζ(゚△゚*;ζ「流石くんの声が、好きですっ!」


 何だろうか、この奇妙な騙された感は。

 いや別にいやあの俺が好きはないとは思っていたがいや待て落ち着け

  ,,_
ζ(゚△゚*;ζ「だから流石くんっ!」

(; _ゝ )
  ,,_
ζ(゚△゚*;ζ「流石くんの声、録音させて下さいっ!!」


 なんたるちあ。


75 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:28:05.59 ID:R4YgPJo3O
  ,,_
ζ(゚△゚*;ζ「駄目ですかっ!?」

(; _ゝ )「………………ぁ……や……別に……」
  ,,_
ζ(゚△゚*;ζ「良いですかっ!?」

(; _ゝ )「………………はい」
  ,,_
ζ(゚△゚*;ζ「ありがとうござひまふっ!」


 噛んでる噛んでる。


 自棄になったと言う言葉がぴったりな、河合の顔と言葉。
 俺はその妙に力強い言葉に負けて、頷いてしまうのだった。

  ,,_
ζ(゚△゚*;ζ「じゃ、じゃあ明日かりゃっ! 放課後っ! 待っててきゅだひぃっ!!」

(; _ゝ )「わ…………わかっ……た……」


 そして、奇妙な約束までしてしまうのだった。

 しかも河合、すごい噛んでる。


80 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:32:03.36 ID:R4YgPJo3O
─ ζ(゚ー゚*ζ ─


 昨日、私は自棄っぱちで流石くんと約束をしました。
 その約束は、放課後に声を録音させて貰うと言う約束。
 流石くんの声にびくんびくんしながら、それでも約束をもぎ取った私。

 そんな昨日の私を誉めたい様な、叱りたい様な気持ちに陥りながら
 買ったばかりのボイスレコーダーを、そっと指先で撫でていました。

ζ(゚ー゚*ζ「…………えへ」

 恥ずかしいしぞくぞくしたし、ちょっぴり後悔もしています。
 けどそれと同時に、私は今、すごく嬉しいんです。

ζ(^ー^*ζ「えへへ……うふふふふぅ……」

 これで、いつでも流石くんの声が聞けます。
 寝る前だってお勉強中だって、いつだって。
 そう思ったら、嬉しくて嬉しくてしょうがなくて、顔が緩みます。


ζ(^ヮ^*ζ「うへへー……」

o川;゚ー゚)o「デレちゃん……キモいで……」

ζ(゚△゚;ζ「ぱしへろんだすっ!?」

o川;゚ー゚)o「あうあうあー……」

82 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:34:22.93 ID:R4YgPJo3O

 いつの間にか私の前に座っていたキューちゃんが、
 頬杖をつきながら、私に呆れた様な顔を向けていました。

 私は慌ててボイスレコーダーをポケットにしまって、頬を押さえます。
 うわあうわあ見られた見られました恥ずかしい顔。


ζ(゚ー゚;ζ「いい、い、いつのまにそこに座ってっ!?」

o川;゚ー゚)o「いつの間にもクソも……うちの席ここやでー……」

ζ(゚△゚;ζ「まっぷるっ!」

o川;゚ー゚)o「……るるぶ」


 そう言えば廊下側から三番目で後ろから二番目の席、
 つまり私の席の前がキューちゃんの席でした。
 二年になった時からそうなのに、私は何をいってるんでしょうか。あうあうあ。

 キューちゃんが後ろを、私の方を向いてため息。
 そのため息を長い癖っ毛が受け止めて、ふわ、と揺れた。


84 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:36:20.90 ID:R4YgPJo3O

o川;--)o「デレちゃん……取り敢えず、放課後までは顔しゃっきりさせとき」

ζ(゚△゚;ζ「何で放課後とっ!?」

o川;--)o「ユー独り言おっきいでー……」

ζ( △ ;ζ「なんとぉっ!?」
  _,、
o川 ;Д;)o(心の底からアホやこの子は……)


 なぜかキューちゃんに頭を撫でられながら、私は自分の頬を撫でて俯きます。
 うわうわうわ恥ずかしいです、恥ずかしいですもうやだあ。

 でもキューちゃんのほそっこい手は少し気持ち良くて、嬉しいです。


 嬉しいや恥ずかしいを抱えた私のそばを流れる時間は、あっと言う間に過ぎる。


 気が付けば待ち望んでいた放課後で、私と流石くんは向かい合って座っています。
 昨日よりやや暗いめの流石くんは、
 肩を落としたまま、私が言った通りの言葉をボイスレコーダーに乗せています。

 私はそれを、きっと端から見ても幸せそうな顔で見ていました。


87 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:38:33.08 ID:R4YgPJo3O



( ´_ゝ`)「……こんにちは、かわ、い」

ぴっ

( ´_ゝ`)「……こんばん、は……かわい」

ぴっ

( ´_ゝ`)「あさー……あさーだよー……おは、よう…………かわい……」

ぴっ

( ´_ゝ`)「…………いい天気、ですね……かわい」

ぴっ

( ´_ゝ`)「……かわ、い…………お元気、ですか」

ぴっ


90 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:40:34.95 ID:R4YgPJo3O

( ´_ゝ`)「…………河合、もう、無理」

ぴっ

( ´_ゝ`)「……かわ、い」

ぴっ

( ´_ゝ`)「………………もう、止めてくれ」

ぴっ

( ´_ゝ`)「……………………かわい……」

ぴっ  かち

ζ(゚ー゚*ζ「流石くん、」

( ´_ゝ`)「……」

ζ(゚ー゚*ζ「もう、止めたいですか?」

( ´_ゝ`)゙


93 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:42:25.91 ID:R4YgPJo3O

ζ(^ー^*ζ「じゃあ、今日はこれで最後にしますねっ!」

( ´_ゝ`)「今日は……」

ぴっ  かち

( ´_ゝ`)「……」

ζ(゚ー゚*ζ「んじゃ、えっと流石君、これ読んでください」

( ´_ゝ`)「…………」

( ´_ゝ`)

ζ(゚ー゚*ζ「お願いしますっ」

(  _ゝ )「………………べ……別に、あんたのためじゃ……ないんだから……」

ぴっ  かち

ζ(^ー^*ζ「ありがとうございました流石君! それじゃあ、また明日!」

(  _ゝ )「……あ、ぁ」


ぴっ  かち


96 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:44:06.59 ID:R4YgPJo3O

 彼の言葉を、吐息一つも逃さないように録音しよう。
 彼が吐き出すあいうえおの繋がりが、そのまま幸せになるから。

 放課後の録音会が終わると、流石くんは疲れきった顔で帰って行きました。
 その広い背中にありがとうございますをいっぱいぶつけて、頭を下げる。

 そして、引っかける形のイヤホンを耳につけて、ボイスレコーダーに繋ぎます。


  『「…………いい天気、ですね……かわい」』


 ぞわぞわぞわ。

 たまらなく甘ったるくて猫じゃらしみたいなぞわぞわが、
 耳から頭の中を、さわさわさわと優しく撫でて行く。

 狭い肩をぎゅうと抱いて、そのぞわぞわに酔いしれた。


  『「……かわ、い…………お元気、ですか」』


 あああ、元気じゃないですあなたの声で、いえ元気なんでしょうか、ああ。ああ。


98 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:46:10.40 ID:R4YgPJo3O
 砂糖を奥歯で噛み締めるよりも甘い。
 子猫の毛を撫でる指先よりも優しい。

 耳から私を犯す彼の声に、肌が粟立ちます。
 何かを孕んでしまいそうなくらいの気持ち良さが、私を壊そうとします。
 壊そうとするんです。

 お腹の奥が熱くて、瞳孔がきゅうとなる。
 熱を持つ頬に、身を抱いたまま、私は廊下で崩れ落ちる。

 今までどうしてこの声を、気にもとめなかったの。
 どうしてこんなに愛しくて気持ち良い声に気付かなかったの。
 何で私はこの声をこうまでも快感として受け取ってしまうの。

 ああわからない、わからないんです、でも気持ち良いんです。
 はしたないまでの気持ち良さ。
 私は緩みきった顔を赤くして、座り込んだままで宙を見つめます。

 端から見れば、頭がおかしく見られるでしょう。私自身、そう思うんですから。
 でもこの身を包む、そう、恍惚。

 それには全くあらがえず、ただただ純粋に、ひたすらに気持ち良さを貪る。


  『「……………………かわい……」』


 もっと呼んで、もっとちょうだい、もっと、もっと、私を、私に、感じさせて下さい。


100 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:48:04.11 ID:R4YgPJo3O

─ ( ´_ゝ`) ─



 あの約束から、一週間が経った。

 河合は飽きもせず、俺の声を録音しては嬉しそうに笑う。
 放課後の録音会は、半分が苦痛で、半分がよくわからないもやもや。

 よくネタが尽きないものだと思いながら、
 俺はいろんな言葉が書かれた紙を握りしめ、それをぽつぽつと口にしていた。

 おはようだの、こんにちはだの、ツンデレだのクーデレだの。
 様々な言葉を、様々な言い方で口に出す。
 俺の声は一つも欠けずに、小さな機械に録音されて行く。

 それはどうにも奇妙で、少し、いや、結構、苦痛だ。
 この声を録音される事が、色々話さねばいけない事が。


 しかしそれが一週間も続けば、流石に諦めと言う言葉を持ち始めるもの。

 俺は録音すべき言葉を吐き出し終わると、そそくさと教室を後にする。


102 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:50:36.41 ID:R4YgPJo3O

 昨日も、今日も、明日も変わらず録音される。
 一週間経つのだから、そろそろ慣れても良いものだろうに。

 一週間と言っても、土日の二日があるから実質は五日なのだが。


( ´_ゝ`)「…………ただいま」

(´<_` )「お帰り、今日も遅いな」

( ´_ゝ`)「……ああ」


 肩を落として玄関のドアを開ければ、俺を出迎えたのは双子の弟。

 俺と同じ顔なのに、何故だかイケてるメンズ感が漂う弟。
 なぜか無性に腹が立つ。

 しかしそれも無理はない。

 伸ばしっぱなしの放ったらかしの俺と違い、弟の髪は綺麗に整えられている。
 服装だって、常にジャージで過ごす俺と違って、家の中でも小綺麗な格好。

 持ち上げた前髪に清潔そうな格好、そして良い愛想。

 俺と一緒にするには、少し、無理があるんだ。


104 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:52:15.66 ID:R4YgPJo3O

 余計に気分が落ち込んだ状態で、ジャージに着替えて夕飯を食う。
 おかずの唐揚げを妹に根こそぎ持って行かれたが、怒る気にもなれなかった。

 もそもそと米粒を口に押し込んで、味噌汁で流し込む。
 それを数回繰り返し、茶碗が空っぽになると、ごちそうさまを転がした。

 自分が使った食器を洗い、頭をわしわし掻きながらダイニングを出て行く。


 自室に戻った俺は、ベッドにどさりと倒れ込んで目を瞑った。

 瞼に浮かぶのは、薄茶のふわふわ。

 ここ数日、なぜだか河合の姿が目に焼き付いて、離れないでいた。


 何日も間近で見ていると、今まで気付かなかった事が分かったりもする。


 例えば、河合は身長のわりに意外と肉付きが良かったり。
 あの髪の毛がコンプレックスらしかったり。
 優等生だと思っていたが、実は言うほどでもなかったり。
 ひたすら変だったり。


107 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:54:21.82 ID:R4YgPJo3O

( ´_ゝ`)「…………」

( ∩_ゝ∩゙


 気が付けば河合の事を考えていると気付いた俺は、寝転がったまま頭を抱えた。

 変だから気になる、頭に残る、それだけだ。
 色恋沙汰は、面倒だから好きじゃないんだ。

 ああ、疲れる。
 頭の中にティーカップ咲きのまんまるい薔薇みたいな笑顔が満ちて、疲れる。
 オレンジがかったピンク色が、
 噎せかえるほどの甘い匂いを撒き散らしている気がして、俺は息を吐いた。


 きっつい。

 手をどけて、枕を握りしめながらその端を噛んだ。
 閉じた瞼に浮かぶのは癖っ毛、握って撫でてみたい長い髪。

 耳あたりから頭の中のピンク色がこぼれ出しそうになった時、
 こんこん、とノックの音が部屋に転がった。


111 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:56:03.46 ID:R4YgPJo3O

( ´_ゝ`)「……んー」

(´<_` )「俺だ、入るぞ兄者」

( ´_ゝ`)「おー……」

(´<_` )「何だ、何を溶けてるんだ兄者」

( ´_ゝ`)「…………あー……」

(´<_` )「喋れ」

( ´_ゝ`)「……どうしたんだ弟者、突然」

(´<_` )「……いやなに、最近兄者の様子がおかしく見えて」

( ´_ゝ`)「…………」

(´<_` )「何かあったのか?」

( ´_ゝ`)「……いや……別に」

(´<_` )「…………」

( ´_ゝ`)「…………」


113 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 21:58:03.85 ID:R4YgPJo3O

(´<_` )「そうだ、こないだの課外授業なんだが、見事に人が来なくてな」

( ´_ゝ`)「あー……」

(´<_` )「俺と兄者のクラスの女子を除けば、あとは委員長達と教師だけ」

( ´_ゝ`)「……楽しかった、か?」

(´<_` )「全然」

( ´_ゝ`)「だろうな……」

(´<_` )「まあ兄者のクラスの女子、直野さんの妹は可愛いかったのが救いだ」

( ´_ゝ`)「…………あー……」

(´<_` )「直野さんは美人だからな、あの家系は美人揃いだ」

( ´_ゝ`)「直野……シュール……だっけな」

(´<_` )「ああ、卒業したがもう一つ姉が居るらしい」

( ´_ゝ`)「…………女系だな」

(´<_` )「ああ、少し婿に行きたい」


115 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:00:15.07 ID:R4YgPJo3O
(´<_` )「…………兄者」

( ´_ゝ`)「……ん?」

(´<_` )「最近、河合デレになつかれてるみたいだな」

( ´_ゝ`)「…………まあ……」

(´<_` )「ほう……」

( ´_ゝ`)「…………」

(´<_` )「ファッキン」

(;´_ゝ`)「!?」

(´<_` )「ファッキン」

(;´_ゝ`)「……に、二回……言うなよ」

(´<_` )「ファントムキングダム」

(;´_ゝ`)「変な略し方……するなよ」

(´<_` )「喰世王ルートって良いよな」

(;´_ゝ`)「ゲーム変わってるから……」


119 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:02:24.66 ID:R4YgPJo3O

(´<_` )「首根っこへし折るぞ」

(;´_ゝ`)「こえぇよ……」

(´<_` )「そこはダメット乙だろ」

(;´_ゝ`)「…………」

(´<_` )「女主人公は俺の嫁」

(;´_ゝ`)「いや……そんな事、言われても……」

(´<_` )「…………」

(;´_ゝ`)「…………」

(´<_` )「……何で俺じゃなくて兄者なんだ、顔一緒なのに」

(;´_ゝ`)「え……あ、や……その……」

(´<_` )「俺のが明るくて社交的でイケメン的で成績も運動も優秀なのに」

(;´_ゝ`)「……それが、じゃ……ない、かな」

(´<_` )「え?」


121 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:04:11.95 ID:R4YgPJo3O

(;´_ゝ`)「河合が好きなのは……俺の、声……らしいから」

(´<_` )

(´<_` )「余計むかつくわ」

(;´_ゝ`)「えぇぇ……」

(´<_` )「何だよ声が好きって、一緒じゃないのか俺と」

(;´_ゝ`)「……知らん」

(´<_` )「俺さ」

(;´_ゝ`)?

(´<_` )「河合が、好きなんだが」

(;´_ゝ`)そ

(´<_` )「だから兄者、死ね」

(;´_ゝ`)「……そんな事で、死にたくない」

(´<_` )「そんな事だとてめぇ」


122 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:06:08.92 ID:R4YgPJo3O

(;´_ゝ`)「そんな事、言われても……なぁ……」

(´<_` )「言っておくぞ兄者」

(;´_ゝ`)「え?」

(´<_` )「河合はやらん」

(;´_ゝ`)「……や、だから……そう言われても……」

(´<_`#)「あああああだからそれがムカつくんだよファッキン!!
      ファッキンナウッ!!」

(;´_ゝ`)そ

(´<_`#)「河合に好かれて平然としてるその陰気な面がムカつくんだああああああああああ!!!!」

(;´_ゝ`)「ふ……双子に顔の事を言われた……」

(´<_`#)「だぁらっしゃあああああああッ!!
      河合はやらん! 分かったなッ!?」

(;´_ゝ`)「…………ど、どうぞ……」

(´<_`#)「あああああああああああああああガッデェエムッ!!!!」


124 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:08:06.12 ID:R4YgPJo3O

(;´_ゝ`)「……そ、そんなに河合が好きなのか……」

(´<_`#)「一年の頃からなッ!!」

(;´_ゝ`)「ど……どこが、そんなに良いんだ……?」

(´<_` )「全部」

(;´_ゝ`)(弟者から……こんなアホな言葉を聞くとは……)

(´<_` )「性格は少し変わってるが素直で良い子だし」

(;´_ゝ`)(その……少し変わってるで、ちょっと迷惑してるんだけど……な)

(´<_` )「顔は文句無しに可愛いし、ふわふわの髪の毛は触り心地良さそうだし」

(;´_ゝ`)(それは確かに……そうだけど……)

(´<_` )「運動はそこそこだが成績は良いし、料理も裁縫も出来る家庭的さ」

(;´_ゝ`)(ボイスレコーダー……持ち歩いてる様なやつだけどな……)


126 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:10:09.07 ID:R4YgPJo3O

(´<_` )「浮いた噂を今まで聞いた事もなかった」

(;´_ゝ`)(聞かないだけかも知れないぞ、それ……)

(´<_`#)「なのについに聞いた浮いた噂の相手が兄者ああああああああああッ!!!!」

(;´_ゝ`)(弟者こえぇ……恋とやらは人を変えるんだな……)

(´<_` )「それとな」

(;´_ゝ`)?

(´<_` )「胸が、良い」

(;´_ゝ`)「…………」

(´<_` )「授業中に見たスクール水着、はみ出さんばかりのボリューム
      張り、形、色、最高だと思わないか兄者」

(;´_ゝ`)「……俺、小さい方が……良いわ……」

(´<_`#)「この童貞があああああああああああああああ!!!!」

(;´_ゝ`)「…………いや、それは弟者も、だろ」


129 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:12:15.44 ID:R4YgPJo3O
(´<_` )

(;´_ゝ`)

(´<_` )「ファッキンガッデムジャップイエローモンキー死ね死ね死ね死ね死ね死ね団」

(;´_ゝ`)「途中の二つは……お前もだろ……」

(´<_`#)「と! に!! か!!! く!!!!
      河合は!!!!! 俺が!!!!!! 貰う!!!!!!!」

(;´_ゝ`)(耳いてぇ……)

(´<_` )「何か言えよ、と言うか河合にときめかないお前は男じゃない」

(;´_ゝ`)(俺の趣味は……無視なのか……)

(´<_` )「このロリコン」

(;´_ゝ`)「いや……それは違う……」

(´<_` )「じゃあ何だ、二次元限定か」

(;´_ゝ`)「や……と言うか……アグレッシブな子は……」

(´<_` )「死ね、腹の底から死ね、ベリー死ね、アルケミスト死ね、アスキー大爆発」

(;´_ゝ`)「意味わからんぞ……」

131 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:14:09.42 ID:R4YgPJo3O

(´<_` +)「全く、兄者がムカついてついこのクールなフェイスが壊れてしまった」

(;´_ゝ`)「それ、化けの皮……」

(´<_` )「鼻むしるぞ」

(;´_ゝ`)「これ、俺らのアイデンティティー……だろ……」

(´<_` )「黙れ、右向きは他にも居るんだよ」

(;´_ゝ`)「えぇ……」

(´<_` )「とにかくだ兄者、お前は敵な」

(;´_ゝ`)「……」

(´<_` )「文句あるのか」

(;´_ゝ`)「まあ……山盛り……」

(´<_` )「死ね」


 なぜ俺は、双子の弟に宣戦布告されなきゃいけないんだろうか。


133 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:16:17.44 ID:R4YgPJo3O

─ ζ(゚ー゚*ζ ─



(´<_` )「河合、辞書を貸してもらえるか?」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、はい、どうぞ!」

(´<_` )「ありがとう、兄者も忘れたみたいでな」

ζ(゚ー゚*ζ「いえいえ」


(´<_` )「河合、明日の合同授業に使うのは何だったっけ」

ζ(゚ー゚*ζ「えっと……体操着だけだったと思います」

(´<_` )「ああ、ありがとう」


(´<_` )「河合、購買に行くが何かいるか?」

ζ(゚ー゚*ζ「んー……いえ、特にないです、ありがとうございます」


134 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:18:06.12 ID:R4YgPJo3O

(´<_` )「河合、」
  _,,
o川;゚听)o「こっちのクラスに来すぎや」

(´<_` )「気にするな、で、河合」
  _,,
o川#゚听)o(何やこいつストーカーか)

ζ(゚ー゚*ζ「は、はい、何ですか?」

(´<_` )「放課後、予定は空いてるか?」

  _,,
o川;゚−゚)o!

(;´_ゝ`)!


(´<_` )「空いてたら、一緒に行きたいところがあるんだ、河合」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、予定があるので無理です、ごめんなさい」

(´<_` )「そう、か……予定って?」

ζ(゚ー゚*ζ「言えません」
  _,,
o川;゚听)o(ずんばらばっさり……)


137 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:20:08.34 ID:R4YgPJo3O
  _,,
o川;゚听)o「……何や、流石くんの弟が倍プッシュしてくんなぁ」

ζ(゚ー゚*ζ「ですねー、どうしたんでしょうね」
  _,,
o川;゚听)o

ζ(゚ー゚*ζ「キューちゃん?」
  _,,
o川;゚听)o「え、あ、うん、何でも」

ζ(゚ー゚*ζ「お友達いっぱい居るみたいなのに……どうしたんでしょ?」
  _,,
o川;゚听)o「知らん、知らんがな、ところで予定って何なん?」

ζ(>ヮ<*ζ「もうっ、言わせないで下さいっ!」
  _,,
o川;゚听)o(……流石兄、大変やなぁ……責任感じるわぁ)
  _,,
o川;゚听)o
  _,,
o川;゚听)o「楽しい?」

ζ(^ー^*ζ「はい、幸せです」


139 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:22:04.64 ID:R4YgPJo3O

o川*゚ー゚)o

,,o川*゚ー゚)o コソッ

o川*゚ー゚)o「(デレちゃん……流石くんの声聞いて、何しとるん?)」

ζ(゚ー゚*ζ「(? 聞きながら宿題とか……)」

o川*゚ー゚)o「(……流石くんの声、聞いてたら……どんな感じ?)」

ζ(゚ー゚*ζ「(んー……お腹の奥が熱くなって、ぞわぞわします)」
   _,
o川;*゚听)o

ζ(゚ー゚*ζ「(それで、耳のとがこそばくって、背中が撫でられたみたいになって)」
   _,,
o川;*゚听)o

ζ(゚ー゚*ζ「(何だかすごく、気持ち良いんです、身体中が)」
   _,,
o川;///)o

ζ(゚ー゚*ζ「(キューちゃん?)」
   _,,
o川;///)o(……何や、聞いとる方が恥ずかしいわぁ……)


140 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:24:57.30 ID:R4YgPJo3O

o川;゚ー゚)o「(と、取り敢えず……気持ち良いんやね……)」

ζ(^ー^*ζ「(はい、すっごく)」

o川;゚ー゚)o(何やこの友達から性癖を暴露されたみたいな気分)


 キューちゃんが、またがっくりと肩を落としています。

 何かあったのかと聞いてみたら、ちらりと私を見てから
 訛りの強い口調で「何でも無いよ」と、遠くを見る様にへれっと笑っていました。

 何でも無いようには見えないんですが、ここはキューちゃんの言葉を信じます。
 お友達を信用するのは大事だよねと言うと、また疲れた顔で笑われたのですが。


 最近、流石くんの声を聞いていると、不思議な気分になります。

 最初はただぞわぞわが訪れるだけだったのですが、
 日を重ねるにつれて、流石くんの顔が浮かぶ様になって来たんです。

 細い目とか、しゅっとした鼻筋とか、表情のない、あの顔。
 ボイスレコーダーに向かってぽつぽつと話しかける顔。


143 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:26:05.78 ID:R4YgPJo3O

 私は流石くんが好きです。

 でも私が好きなのは、流石くんの声です。
 あの気持ち良くてしょうがない、あの声。

 流石くん本人には、お友達以上の感情はありません。

 ないはず、なんですが、



o川*゚ー゚)o「流石くんやぁ、最近疲れてるやんね」

(;´_ゝ`)「え……あ……そ、そう、か……?」

o川*゚ー゚)o「うん、死相が出とんで死相が」

(;´_ゝ`)「な……なんと……」

o川*゚ー゚)o「あとアレやな」

(;´_ゝ`)?

o川*゚ー゚)o「雰囲気変わったし、話すの、何か慣れてきとるね」

(;´_ゝ`)!


145 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:28:19.81 ID:R4YgPJo3O

o川*゚ー゚)o「なんでかなー? 何かあったんかなー?」

(;´_ゝ`)「あ、い、え、や、あ、あの、その……」

o川*゚ー゚)o「もしかしてー……」

(;´_ゝ`)

o川*゚ー゚)o「(デレちゃんのお陰?)」

(; _ゝ )そ

o川*゚ー゚)o「まあ流石くん、イケメン寄りやし」

(;´_ゝ`)「よ……寄り、なのか……?」

o川*゚ー゚)o「何や、イケメンって言ってほしい?」

(;´_ゝ`)「い、いや……そう言う、つもりでは……」

o川*゚ー゚)o「冗談やがな、真に受けんと突っ込み」

(;´_ゝ`)「…………すまん……」


149 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:30:07.00 ID:R4YgPJo3O

 ……流石くんが誰かと話してるのを見ると、何だか、もやもやします。

 別に流石くんが誰と話そうと、なんら問題はありません。
 でも何となく、もやもやしてしまいます。


 流石くんの声を聞くのは、お話するのは、私の、


ζ(゚−゚ ζ


 私の、?

  ,、_
ζ(- - ζ?


 私の、何なんでしょう。

 私、なんか、変だ。


151 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:32:05.08 ID:R4YgPJo3O

 好きなのは声。
 たまらない快感をくれる声。
 私を気持ち良くしてくれる声。

 あの声に身震いする人は、他にはいない。
 あの声をここまで愛するのは、私だけ。

 それだけは断言出来る。
 あの声は私の

 私の、私の、



o川*゚ー゚)o「流石くんも前髪あげーな、その方がイケメンやで」

(;´_ゝ`)「うおっ、!?」


 白い手が、流石くんに触れた。

 額を撫でる様に、細い指が、彼の、眉に、触れてる。


154 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:34:05.39 ID:R4YgPJo3O

o川*゚ー゚)o「おーイケメンイケメン、弟くんみたいやん」

(;´_ゝ`)「ふ……双子、だからな……」

o川*゚ー゚)o「双子やけどなんか見分けつくなぁ、やっぱ一人の人間やねんな」

( ´_ゝ`)「……双子をなんだと、思ってたんだ」

o川*゚ー゚)o「ほら、双子ってすごい繋がり濃そうやから」

( ´_ゝ`)「…………まあ」

o川*゚ー゚)o「お、今ちょっと笑ったな。双子てあくまでそっくりさんなだけやのなぁ」

( ´_ゝ`)「いつまで、やってるんだ……前髪」

o川*゚ー゚)o「おっと失礼」


 お友達とお友達が、話してるだけ。
 じゃれあってるだけ。

 変な事じゃない、よくある、普通の、事。

 普通の事。
 普通の事、なのに。

 どうしてそれが流石くんとキューちゃんだったら、胸が、気持ち悪いの。

157 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:36:12.44 ID:R4YgPJo3O

 私に何が起きたの。
 昨日までは普通だった、昨日までは平気だった。

 突然、私の中の普通が音を立てて崩れた。

 恋愛感情なんて持ってない、持ってないわ。
 だって私が好きなのは彼の声であって彼じゃない。

 違う、違うのよ、違うの。
 これは違う、キューちゃんに抱いてるこれは、嫉妬じゃないの。


ζ( -  ζ「……キューちゃん…………お手洗い、行ってきます」

o川*゚ー゚)o「ん? あ、うん、いってらっしゃーい」

o川*゚ー゚)o「(……なあなあ、やっぱし触られるのはデレちゃんやないと嫌ー?)」

(;´_ゝ`)「(そ、そう言うのは、止めろ)」

o川*゚ー゚)o「(ういやつういやつ、デレちゃん泣かせたらぶっとばすでぇ?)」

(;´_ゝ`)「(だから直野……)」

o川*゚ー゚)o「(恋ってな、自分では案外気付かんもんやねんで? 恋は人を変えるでぇ?)」

(;´_ゝ`)「(…………止めんか)」


158 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:38:10.49 ID:R4YgPJo3O

 ふらふらと、俯いてお手洗いに向かった。
 一番奥の個室に入り、便座に腰を降ろす。

 ぎゅう、と身を抱いて、体を小さくした。


 楽しそうに話していた、流石くんとキューちゃん。
 楽しそうに、楽しそうに。

 私と話す時は、いつも困った顔をするのに。
 私と話す時は、目なんて見てくれないのに。
 私と話す時は、あんな顔してくれないのに。

 どうして、少しだけ、笑ったの。
 私には、声しか、くれないのに。

   ,_
ζ( -  ζ


 私がほしいと言わないから、くれないの?
 キューちゃんには、言われなくても、あげたのに?

 ねぇ、どうして、どうしてよ、


162 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:40:39.46 ID:R4YgPJo3O

 ポケットから、イヤホンとボイスレコーダーを取り出した。
 耳にピンクのイヤホンをつけて、ボイスレコーダーを操作する。

 すると耳から流れ込むのは、彼の声。

 ぞわぞわぞわ、粟立つ肌に、身を抱く腕に力がこもる。


 こんにちはだの、おはようだの、それはごくありふれた言葉たち。
 けれどそのありふれた言葉は、私をどうしようもなく壊して行く。

 身を抱くのを止めて、足を上げて三角座りの状態になる。
 きゅうと切なく熱をお腹を、そっと手のひらで撫でてみた。

 ぞくぞく。
 足の付け根から、甘い何かが駆け巡る。


 私は流石くんの声に翻弄される様に、そっとそっと、スカートの中に手を入れる。

 今まで触れた事もない様な場所に、人差し指を押し付けた。


 びくん。
 体が、跳ねる。


164 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:42:07.18 ID:R4YgPJo3O

 白い下着越しに触れたそこは、熱を持って少しだけ湿っている。
 ぐ、と指を強く押し付けると、体がさっきよりも強く跳ねた。

 お腹の奥が、更に切なさを増す。

 それは経験した事のない感覚で、私はぼやりとした恐怖を抱く。
 けれど指は、私の恐怖に気付きもしない様に、勝手に動いてしまっていた。

 ぐ、ぐ、と何度も下着を押す。
 一本しか感じていなかったそこの柔らかさを、いつの間にか他の指でも感じていた。

 何度も何度も、そこを押した。
 どうすれば良いのか分からなくて。

 押せば押すほど、私の中の甘ったるい何かが加速して行く。
 呼吸は荒くなるし、顔や身体中が熱くなる。


 どうしよう、どうしよう、これ、どうしよう。

 まだるっこしいぞわぞわに襲われて、私の体から力が抜けて行く。


165 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:44:09.58 ID:R4YgPJo3O

 あ、ああ、


  『「……なあ…………かわ、い」』


 あああ、ああ、あ


  『「…………かわい……」』


 あ、ぅ、ああ、あ、あ


  『「かわい…………なあ、……」』


 あ、ああ、あああ、あ、あ、


  『「……………………かわい……」』


 あ、ん、


167 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:46:06.87 ID:R4YgPJo3O

 くち、と下着が音を立てた。

 違う、正しくは下着がじゃなくて、じゃなくて、


ζ( ヮ *ζ「は…………ぁは……あははぁ……」


 お父さん、お母さん、お姉ちゃん

 私は、いやらしい子です。


 力が抜けて、だらしなく開いた足の間。
 下着の横から、指を滑り込ませた。

 めくれ上がったスカートを見ながら、私は指を動かした。

 耳を嘗める様な彼の声に、吐息に欲情して。
 私はただ、気持ち良いを貪った。

 それはもう浅ましくていやらしい、下品な女となりながら。
 くちくち、ぐちぐちと水っぽい音をさせながら。


 私は彼の声で、


171 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:48:16.67 ID:R4YgPJo3O


o川*゚ー゚)o「あ、お帰りデレちゃん」

ζ(^ー^*ζ「ただいま、キューちゃん」

o川*゚ー゚)o「ん? どしたん、顔あっかいで?」

ζ(゚ー゚*ζ「そう、ですか?」

o川*゚ー゚)o「うん、熱ある?」


 キューちゃんの手は、少し汗ばんでいたけど気持ちよかった。
 だから私は笑って、何でもないよと返す。

 大事なお友達。
 彼女を悲しませたくないから、私は全部飲み込む。

 絶対に吐き出さない。
 醜い物は、見せたくない。

 浅ましい女でごめんなさい、キューちゃん。


 腹部に残る熱を撫でて、私は放課後を待った。
 この気持ち、確かめたい。


174 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:50:14.82 ID:R4YgPJo3O


 目の前には流石くん。
 俯いて、机に置かれたボイスレコーダーに話しかけている。

 私はそれを真っ直ぐに見つめながら、ぼんやりとしていた。


 整った顔立ち。
 前髪に隠されて、誰も気付かない。

 けれど私は知っていた。
 彼の声を知るよりも早く、知っていた。

 どうして知っていたのだろう。
 どうして気付いていたのだろう。

 彼の外見に興味はない、愛しているのはその声だけ。

 声だけ。


ζ(゚−゚*ζ「……」


 本当に?


176 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:52:21.50 ID:R4YgPJo3O

 ぼんやりしながら、私は流石くんの声を聞く。

 低くて、こもってて、ぼそぼそ喋る暗い声。
 そのまとわりつく様な声が、


( ´_ゝ`)「おはよう……河合、今日も良い、天気だな」


 あ、れ?


ζ(゚−゚*ζ?


 あれ、何か、違う。

 流石くんの声はいつもと同じ筈なのに、なんだか違って聞こえた。

 どうしてだろう、なぜだろう。
 何がどう違うのか自分でも分からなくて、首をかしげた。


179 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:54:22.42 ID:R4YgPJo3O

─ ( ´_ゝ`) ─



 何だか、河合の様子がおかしかった。

 いつもはにこにこ笑いながら俺を見て、聞いているのに
 今日は、なぜか心ここにあらずと言った感じで、表情がない。

 どうしたんだろう。

 しかも、無表情な河合はいつもは感じない、妙な、甘ったるい物を感じる。

 汗ばんだ首筋や、癖っ毛が張り付いた薄いピンクの頬。
 スカートからすらりとのびる白い太股は妙に、妙に、触れたくなる。


 どうしたんだ俺は。
 熱に、浮かされているのか。

 こんな事は考えちゃ、いけない。
 いけないんだ。


183 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:56:04.86 ID:R4YgPJo3O

 汗を吸って濡れた髪に触れたい。
 手触りの良さそうな、肉付きの良い太股に触れたい。
 白い肌に朱がさした頬に、小さな唇に、長い睫毛が飾る目元に。

 ああもう、どうしたんだ。
 こんな事を考えるのは俺じゃなくて、そう、弟者のがキャラ的に。


 ああ、ああもう

 何で、そんな顔で見つめてくるんだ。

 無表情なのに妙に艶っぽい、そんな顔で。

 なんなんだよ、なんなん、だよ、なあ。


 俺は深く俯いて、悶々した何かを隠す様に言葉を吐き出す。

 紙に書かれた文字を追って、ぼそぼそと喋る。

 ちらちら、目が勝手に河合を見ようとする。

 河合って、なんか、可愛いんだ、な。
 うがあ。


186 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 22:58:17.70 ID:R4YgPJo3O

 とにかく、変な気分を振り払うために、言葉をひねり出した。


( ´_ゝ`)「おはよう……河合、今日も良い、天気だな」


 が、河合は、

  ,、_ ?
ζ(゚- ゚*ζ


 河合は、やっと無表情を崩して、首を傾げた。

 首を傾げながら難しい顔をする河合に、俺は戸惑う。

 どうしたのだろう、何か、いけなかったのだろうか。

 首をひねる河合に声をかけようとした瞬間、河合の方から声をかけてきた。


190 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:00:17.07 ID:R4YgPJo3O

ζ(゚- ゚*ζ「……流石くん……声、変わりました?」

( ´_ゝ`)「え……?」

ζ(゚- ゚*ζ「なんか……雰囲、違うんです……」

(;´_ゝ`)「ぇ、ぇ?」

ζ(゚- ゚*ζ「なんだろう……この感じ……?」


 河合がまた、首を傾げる。


 声が変わった?

 いや、声変わりは中学の時に済ませたし、喉の調子も悪くはない。

 他に声が変わる様な要因は思い当たらなくて、
 どうしたんだろう、と俺も首を傾げた時。

 ふと、直野の言葉が頭に浮かんだ。


191 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:02:08.78 ID:R4YgPJo3O

   ( o川*゚ー゚)o「雰囲気変わったし、話すの、何か慣れてきとるね」 )


 話し慣れた、雰囲気が変わった。
 それは、河合の友人である直野の言葉。

 慣れたのはあるかも知れないが、雰囲気は、


   ( o川*゚ー゚)o「恋ってな、自分では案外気付かんもんやねんで?」 )


 あ、

 や、で、でも、
 そんな事で、そんな、俺が、変わるとか、



   ( 恋は 人を変えるでぇ? )


(  _ゝ )


 分かったから、俺の負けだから、勘弁してくれ、直野。

 死にそうだ。

195 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:04:05.41 ID:R4YgPJo3O

 どうしよう。


 俺、か、かか、河合が、好き、なのか?

 この、目の前で子犬みたいに多い髪の毛を揺らして考え込む、河合、が?


 ど、どうしよう、どうしよう、どうしよう。


 俺、か、河合、好きなら、

 俺の声が、変わった、ら


 もう、河合に好かれなくなってしまう。


 どう、しよう。


198 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:06:06.63 ID:R4YgPJo3O

ζ(゚- ゚*ζ「……今日は、これくらいにしておきましょうか」


 びく、と河合の言葉に肩が跳ねる。
 ど、どうしよう、おお、俺の声が、声、


ζ(゚- ゚*ζ「ありがとうございました…………また明日、流石くん」


 河合が、どこか不機嫌そうな顔で席を立つ。
 鞄を持って、椅子を戻して教室から出て行こうとする。

 俺はただただ狼狽えて、間抜け面を晒しながら、席を立った。

 何か、何か、声を、かけなきゃ。


(;´_ゝ`)「ぁ…………か……河合っ!」

ζ(゚△゚;ζ「っ!? あ、きゃっ!!」

(;´_ゝ`)「待っ、あ、うおぉっ!?」


201 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:08:08.51 ID:R4YgPJo3O

 小さな後ろ姿を、声を大きくして呼び止めた。
 それを聞いた河合は驚いた様に飛び跳ねて、俺を振り返

 ろうとして、転んだ。


ζ(>△<;ζ「あぎゃっ!」

(;´_ゝ`)「か、河合っ! 悪い、大丈夫、かっ?」

ζ(-△-;ζ「いてて……ご、ごめんなさい……」

(;´_ゝ`)「いや、あ、その、俺、が……っ!」


 見事に背中から転んだ河合に駆け寄って、
 痛そうに後ろ頭を撫でる河合の前へと回り込み、しゃがむ。

 そして立ち上がらせようと手を差し伸べた俺は、はっと息を飲んだ。


 白い太股、めくれたスカート。
 ちらりと覗くのは、白のレース。


203 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:10:04.53 ID:R4YgPJo3O

 視線をずらして、俺はそこを見なかったフリをする。
 凝視はするな、絶対するな、て言うか見るな。

 白のレース、微かに食い込んだそこ、小さなリボン、河合の、かわ、あ、


 うわああああああああああああああああああああああ


ζ(゚- ゚*ζ「どうしたんですか? 流石くん……固まってますよ?」

(;´_ゝ`)「あ、ああっ、やっ、いえっ、あのっ…………大丈夫……か?」

ζ(゚ー゚*ζ「……はい、ありがとうございます」


 やっと見れた河合の笑顔に、俺はほっとした。

 ほっとした後で、なんとも言えない気分になった。

 俺、もうダメかも知れんね。


205 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:12:18.30 ID:R4YgPJo3O

 俺が狼狽えながら手を差し伸べていると、
 河合は一瞬だけ戸惑いを見せてから、すぐに笑って、俺の手に小さな手を重ねた。

 手のひらにかけられた体重、小さくて柔らかくて、少し汗ばんだ細い手。
 強く握ったら、小魚みたいに壊れそうな手だった。

 俺の手がでかすぎるのだろうか。
 河合の手は、とんでもなく小さく感じる。

 そっと河合を立ち上がらせると、河合は俺を見上げて、にっこり。


ζ(^ー^*ζ「流石くんの手、大きくて落ち着きます」

(;´_ゝ`)「っ!」

ζ(^ー^*ζ「おっきくて、気持ち良い手、です」


 きゅうと握られた指が、なぜだか、熱くて熱くて、たまらなかった。


208 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:14:17.99 ID:R4YgPJo3O



(´<_` )「はぁ……河合……」

(;´_ゝ`)「ただい……弟者、気持ち悪いぞ……」

(´<_` )「んだとこら鷲鼻がお帰り死ね」

(;´_ゝ`)「いや、だって……なぁ……」

(´<_` )「河合、今日はピンクのブラか……」

(;´_ゝ`)「何で知ってるんだよ…………下は白かったぞ」

(´<_` )

(;´_ゝ`)

(´<_` )「おい、面貸せ」

(;´_ゝ`)「鏡見た方が早いぞ……」

(´<_`#)「黙れ待て何で河合のパンツの色知ってんだお前ちょマジふざけんなっておいどう言う事だよてめぇ」

(;´_ゝ`)「弟者、壊れてるから……色々と……」


210 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:16:11.62 ID:R4YgPJo3O

(´<_`#)「だからお前はおまあああああああああああああああああああああああ」

(;´_ゝ`)

(´<_` )「柄は?」

(;´_ゝ`)「…………レース……ぽかった」

(´<_` )「リボンは?」

(;´_ゝ`)「前に、小さい……ピンクの……」

(´<_` )「…………ふっ……ふふふっ……」

(;´_ゝ`)(うわあ……こえぇ……つか、きめぇ……)

(´<_` )「……取り敢えず、見た経緯を」

(;´_ゝ`)「…………河合が、目の前で……転んだ……」


212 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:18:39.10 ID:R4YgPJo3O
(´<_` )「助け起こしたのか?」

(;´_ゝ`)「まあ……そこは、人として……」

(´<_` )「手は柔らかかったか?」

(;´_ゝ`)「……ああ……それに、細かったし……小さかった」

(´<_` )「ほう……河合はどんな反応を?」

(;´_ゝ`)「え……」


  ( ζ(^ー^*ζ「流石くんの手、大きくて落ち着きます」 )


( ´_ゝ`)

(*  _ゝ )

(´<_` )「分かった、俺は今から兄者を殺す」

(;´_ゝ`)「え、ぇぇ……」


215 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:20:10.67 ID:R4YgPJo3O

(´<_`#)「何を頬っぺた赤くしてんだ気持ち悪いマジふざけんなふざけんなって
      河合の、か、河合の手、かわ、あ、あああああああああああああああ!!!!」

(;´_ゝ`)「……弟者、これ以上……犯罪は、止めとけよ……」

(´<_` )「良かろう、ならば兄者を殺して終わりにする」

(;´_ゝ`)「勘弁してくれ……」

(´<_` )「頼むから、河合と触れあわないでくれよ……
      兄者個人に恨みはないが、河合と何かあったら凄い殺したくなるんだ……」

(;´_ゝ`)(どう見ても……恨みあるだろ、それ……)

(´<_` )「なぁ……放課後に河合と会うの止めてくれよ……俺の河合と……」

(;´_ゝ`)「弟者のじゃないし……俺は、呼ばれてるだけだぞ……」

(´<_`#)「まじむかつく、何で俺は呼ばれないんだよ」

(;´_ゝ`)「…………だから、声、だろ……?」


217 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:22:05.24 ID:R4YgPJo3O
(´<_` )「何? 兄者の声と俺の声がどう違うの? 何なの? お前何なの?
      今までモテなかった癖にモテメンの俺を差し置いて何なの? リア充気取りたいの?」

(;´_ゝ`)「お前、イケメン滲み出したモテボイスだろ……」

(´<_` )「そう考えたらお前は非モテボイスだな」

(;´_ゝ`)

(´<_` )

(´<_` )「え、何?非モテボイスじゃなきゃ駄目なの?」

(;´_ゝ`)「知らんがな……」

(´<_`#)「もうそれお前非モテボイスじゃないだろふざけんなよおおおお!!!!」

(;´_ゝ`)「だから、知らんがな……」

(´<_` )「声質一緒だろ……なのに何で兄者なんだよ……やだもう……死にたい……」

(;´_ゝ`)「……」

(´<_` )「何か言えや」

(;´_ゝ`)「…………キャラ、崩壊してるな……」

(´<_` )「凄い黙れ」

218 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:24:17.46 ID:R4YgPJo3O

(´<_` )

(´<_` )「ところで兄者」

(;´_ゝ`)「う、うん?」

(´<_` )「河合でオナニーした事あるか?」

(;  ゝ ).'。.゚,「ぶべらぼっ!!?」

(´<_` )「うわきたねっ」

(;´_ゝ`)「な、ぇ、なっ? えぉあっ!?」

(´<_` )「日本語でおk、で、した事あるのか?」

(;´_ゝ`)「ね……ねぇよ……弟者と一緒にするなよ……」

(´<_` )「殺すぞお前、俺もねぇよ」

(;´_ゝ`)「…………はぁ……」


221 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:26:22.32 ID:R4YgPJo3O
(´<_` )

(;´_ゝ`)

(´<_` )「河合のさ」

(;´_ゝ`)

(´<_` )「胸も良いが、太股、たまらんよな」


 兄弟だなあ。


(´<_` )「全体的に肉付き良いけど太ってるわけではなく、しかし細くもなく」

(;´_ゝ`)

(´<_` )「あのむっちりした脚とか、たまらんよな」

(;´_ゝ`)

(´<_` )「……撫で回して嘗めて挟まれてぇなあ……河合の太股に……」


 本当に、兄弟だなあ。

 死にてぇ。

223 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:28:04.85 ID:R4YgPJo3O

(´<_` )「でな、兄者」

(;´_ゝ`)「何なんだよ……お前は……」

(´<_` )「もし兄者と河合が付き合った場合な」

(;´_ゝ`)「ね……ねぇよ…………」

(´<_` )「俺は、躊躇いなく河合を寝取る」

(; _ゝ )そ

(´<_` )「覚悟しておけ兄者、同じ部屋にお前が居ても俺は河合を襲う」

(; _ゝ )「……ぇ…………ちょ……」

(´<_` )「寧ろヤらせてくれって土下座する」

(;´_ゝ`)「ぅおい……」

(´<_` )「…………俺もそろそろ本気を出す…………忘れるなよ、兄者」

(;´_ゝ`)「……」

(´<_` )「俺は河合が兄嫁になっても襲う気満々だし、寧ろ燃えたぎるからな」


 この駄目人間め。

226 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:30:15.30 ID:R4YgPJo3O
(´<_` )「つか、結局好きなのか? 河合の事」

(;´_ゝ`)「……らしい」

(´<_` )「らしいってお前」

(;´_ゝ`)「そう、らしいんだが……いまいち……実感が」

(´<_` )「河合と居るの楽しい? つい目で追う? 可愛いとか思っちゃう?」

(;´_ゝ`)「…………まあ」

(´<_` )「死ね」

(;´_ゝ`)「えぇ……」

(´<_` )「だいたい何だ、俺にはあんな事を言っておいて実は好きでしたって」

(;´_ゝ`)「いや、だから……実感が……」

(´<_` )「言い訳は聞きたくない、抜け駆けした上に両思いか? あ?」

(;´_ゝ`)「……ないない」

(´<_` )「もう良い、俺は河合の夢を見るために寝る! おやすみ!」

(;´_ゝ`)「…………おやすみ」


228 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:32:06.54 ID:R4YgPJo3O

 弟者が部屋に戻って行く。
 俺もそれに続いて、歯磨きをしてから自室に戻り、寝巻きに着替えた。

 電気を消すと、もそもそベッドに潜り込む。


( ´_ゝ`)「…………」


 なんか、悶々するな。


(  -_ゝ-)「…………」


  ( (´<_` )「河合でオナニーした事あるか?」 )


(;  ゝ ).'。.゚,

(;  ゝ )

(  _ゝ ))"


230 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:34:09.05 ID:R4YgPJo3O

 河合の手、指、脚
 河合の目、頬、口
 河合の髪、声、


 思い出すのは容易で、それらを自分の思う姿にさせるのも容易。

 髪を下ろすだの、笑わせるだの、服を脱がすだの。
 頭の中でなら、いとも容易い事。

 ネクタイを緩めて、ボタンを外して、髪をほどいて、スカートを


  ( ζ(^ー^*ζ「おっきくて、気持ち良い手、です」 )


(  _ゝ )"

(  _ゝ )

(  _ゝ )「…………ティッシュ……」


 何、この罪悪感。

 死にたい。

231 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:36:08.72 ID:R4YgPJo3O

─ ζ(゚ー゚*ζ ─



 優しく差し伸べられた大きな手のひら。
 そこに重なった私の手。

 ああ、一晩経っても、手のひらが熱い。

 彼の声を聞きながら、彼の手を思い出す。
 身体中を撫でられている様な錯覚に、私はベッドでか細い悲鳴をあげていた。


ζ(゚ー゚*ζ「でねキューちゃん、起きたらパジャマ着てなかったんです」

o川; )o.'。.゚,

ζ(゚ー゚*ζ「どうしたんですか?」

o川;゚ー゚)o「……学校で、そんな事、言うない」

ζ(゚ー゚*ζ「ぬぁ?」

o川;゚ー゚)o「何やねんその微妙に可愛くない鳴き声……」


232 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:38:46.82 ID:R4YgPJo3O

ζ(゚ー゚*ζ「あ、そうだキューちゃん」

o川*゚ー゚)o「ん?」

ζ(゚ー゚*ζ「私、流石くんが好きです」

o川*゚ー゚)o「うん知ってる」

ζ(゚ー゚*ζ「声だけでなく、彼自身が」

o川*゚ー゚)o「うん知ってる」

ζ(゚ー゚*ζ「彼を思い出して一人でするくらい」

o川*゚ー゚)o「うん知ってる、でも学校とかで言うの止めよな」
   ,_
ζ(゚- ゚*ζ「何で知ってるんですかぁ……」

o川*゚ー゚)o「自分ほんまにアホやな」
   ,_
ζ(>△<*ζ「アホくないですっ!」

o川*゚ー゚)o「いーやアホや、どう見てもアホや、そんなデレちゃんが好きやねんけど」

ζ(゚ー゚*ζ「デレるの早いですね」

o川*゚ー゚)o「常にデレとる子が何を言う」


237 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:40:21.11 ID:R4YgPJo3O

ζ(゚ー゚*ζ「でね、だからねキューちゃん」

o川*゚ー゚)o「うん?」

ζ(゚ー゚*ζ「私は、流石くんのものになりたいんです」

o川*゚ー゚)o「うん」

ζ(゚ー゚*ζ「流石くんを、私のものにしたいんです」

o川*゚ー゚)o「うん」

ζ(゚ー゚*ζ「だから、」

o川*゚ー゚)o「大丈夫」

ζ(゚−゚*ζ

o川*゚ー゚)o「うち、他に好きな人おるから」

ζ(゚−゚*ζ!

o川*゚ー゚)o「でも、デレちゃんが告白するまで、あんま関わらん様にする」

ζ( − *ζ


239 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:42:14.76 ID:R4YgPJo3O

o川*゚ー゚)o「嫉妬すんの、別におかしい事やないんやから」

ζ( − *ζ

o川*゚ー゚)o「寧ろ、嫉妬すんのが普通やねん」

ζ( − *ζ

o川*゚ー゚)o「特定の人を好きになるて、そう言う事やと思うねん」

ζ( − *ζ

o川*゚ー゚)o「せやからデレちゃん、そんな、泣きそうな顔、せんといて」

ζ( − *ζ

o川*゚ー゚)o「うちも、泣きそうになるから」

ζ( − *ζ「…………ごめんなさい」

o川*゚ー゚)o「うちこそごめん、無神経で」

ζ( − *ζ「……キューちゃん、……大好き……です」

o川*゚ー゚)o「うちもデレちゃん大好きよ、女の子の中では、いっとう好きよ」


242 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:44:11.42 ID:R4YgPJo3O

 キューちゃんが、困った様に、はにかむ様に笑顔をくれた。
 私はそれに笑顔を返せなくて、俯いてしまう。

 キューちゃんを見ていると、涙が溢れそうになる。
 なぜだか分からないけど、涙が、


o川*゚ー゚)o「ね」

ζ( − *ζ「う、?」

o川*゚ー゚)o「告白は、すんの?」

ζ( − *ζ「……はい」

o川*゚ー゚)o「そっか……」

ζ( − *ζ「…………大丈夫……かな」

o川*゚ー゚)o「は?」

ζ( − *ζ「こ……断られたら……どうしよう……」

o川;゚ー゚)o(ねーよ)


244 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:46:15.15 ID:R4YgPJo3O
ζ( − *ζ「断られたら私……私……っ」

o川;゚ -゚)o

o川;゚ -゚)o「う……うじうじしとったら流石くん奪うでー」

ζ(゚△゚;ζ「ダメぇっ! ダメ絶対ダメあげないっ!!」

o川;゚ー゚)o(所有物か)

o川*゚ー゚)o「……ま、その元気あるなら大丈夫やて、つかいま敬語ちゃうかったな」

ζ(゚△゚;ζ

o川*゚ー゚)o?

ζ(゚△゚;ζ「本当だ……最近、敬語使ってない……」

o川;゚ー゚)o「口に出しとる時は基本的に敬語やから気にしぃな」

ζ(゚−゚*ζ「……今日、放課後……します」

o川*゚ー゚)o「…………頑張れよ」

ζ(^ー^*ζ「はいっ!」

(´<_` )「何を頑張るんだ?」

ζ( △ ;ζ「ぱしへろんだすっ!!?」

245 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:48:05.69 ID:R4YgPJo3O

o川*゚ー゚)o「帰れ」

(´<_` )「断る。で、何を頑張るんだ?」

ζ(゚ー゚;ζ「や、あの、その、あの」

(´<_` )「ところで、放課後に予定は」

ζ(゚ー゚;ζ「あります」

o川#゚ー゚)o「帰れ」

(´<_` )「断る」

o川#゚ー゚)o「千枚通しでたこ焼きみたいにめんたまグリグリ回すぞボケ」

(´<_` )「何それこわい」

o川#゚ー゚)o「ええから帰れやド変態」

(´<_` )「何で知ってるんだお前」

o川#゚ー゚)o「死ね」

(´<_` )「うっふん」


248 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:50:05.80 ID:R4YgPJo3O

 流石くんの弟さんとキューちゃんがじゃれあってます。
 私はそれから逃れる様に、そっと席を立って
 こっそり、流石くんの席まで足を運びました。

 あ、なんか、気持ちが落ち着いてて気持ち良い。


ζ(゚ー゚*ζ「……流石くん」

(; _ゝ )そ

ζ(゚−゚*ζ「? 流石、くん?」

(; _ゝ )))「な、な……何、だ、」

ζ(゚−゚*ζ))「あの、今日、」

(; _ゝ )三そ ズザッ


 あれ。


251 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:52:08.45 ID:R4YgPJo3O

 流石くんが、いつもに増して目を合わせてくれません。
 私から逃げよう逃げようと、椅子から立ち上がって後退りをする始末。

 あれ、あれ。
 私、変な事したんでしょうか?

 いえその変な事はしましたけど、その、
 それとはちょっと、違う、感じ。


ζ(゚−゚*ζ「……流石くん?」

(; _ゝ ),,「なんっ、だ、?」

(´<_` )「何してんだお前」

o川*゚ー゚)o「邪魔しぃな糸目」

(´<_` )「直野、この世には白目と同じくらい糸目がいるんだ」

o川*゚ー゚)o「わけ分からんわ死ね」

(´<_` )「断る」


253 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:54:38.56 ID:R4YgPJo3O
ζ(゚−゚*ζ「ね、ねぇ……流石くん……」

(; _ゝ )三 ザッ

ζ(゚−゚*ζ「…………」

o川*゚−゚)o(……これは流石に、ちょっと)

(´<_` )(ああ、オナニーでもしたのかこいつ)

o川;゚−゚)o「(ちょ、ちょっと弟、何とかしぃな)」

(´<_` )「(何で俺が河合と兄者の間を取り持たなきゃいけないの?)」

o川#゚ー゚)o「(間を取り持つか、この場で死ぬか、どちらか選べ)」

(´<_` )「(分かったからコンパスで目ぇ狙うの止めて)」

o川#゚ー゚)o「(軟弱者は消え失せろ)」

(´<_` )「兄者」

(; _ゝ )?

(´<_` )「男に後退の二文字はねぇ」

(; _ゝ )!?

o川;゚听)o「(そのネタをそっちまで持ってくなああああ!!)」

255 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/19(日) 23:56:39.92 ID:R4YgPJo3O
すみません、ちょっとトイレ休憩挟みます。
すみません。

260 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:00:35.68 ID:vjHHUwP4O
ただいま戻りました、すみません。
あと30レスちょいだと思います、すみません。

261 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:02:04.44 ID:vjHHUwP4O

(;´_ゝ`)「な……なん、だよ……」

(´<_` )「うるせぇ変態」

(; _ゝ )そ

o川;゚ー゚)o「寧ろ変態は自分やろが」

(´<_` )「トータルで見ればそうだが今は兄者のが問題だ」

o川;゚ー゚)o「自覚あるんかこの変態、つーか何で流石くんのが」

:(; _ゝ ): ガクブル

o川;゚听)o「何でダメージ受けとんねんッ!?」

(´<_` )「まあ無理もない、健全な証拠なのにな」

o川;゚听)o

o川///)o「…………あぁ……」

(´<_` )「うわ理解しちゃったよこいつ、ニュータイプか」

o川;゚ー゚)o「……流石くん……あんまり、気にしぃなね……」

(;´_ゝ`)!?


264 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:04:06.34 ID:vjHHUwP4O

o川*゚ー゚)o「若い子には……よくある事やから……」

(;´_ゝ`)「ぇ……あ……え……?」

o川*゚ー゚)o「好きな子オカズは、若さの特権やで……」

(;´_ゝ`)「り……理解されたくない事を理解された……」

o川*゚ー゚)o「大丈夫……放課後なったら、その苦しみから解き放たれるから……
      な、デレちゃ」

ζ( − ζ「弟者さん」

(´<_` )「あ、はい」

ζ( − ζ「放課後のお誘い、お受けします」

o川;゚听)o「デレちゃあんッ!?」

o川;゚听)o


  ( o川*゚ー゚)o「でも、デレちゃんが告白するまで、あんま関わらん様にする」 )


o川; )o(やってもうたああああああああああああ!!!!)


265 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:06:13.60 ID:vjHHUwP4O

o川; )o(うわああああああああかんあかんあかん言った側から)

(;´_ゝ`)「……直野?」

o川; )o(つかめんどくせぇなあもう恋する乙女ってやつぁああああああ)

(;´_ゝ`)「お、おい、直野、」

o川; )o(でも初恋+やっと自覚したデレちゃん相手やったら無理もないかでも)

(;´_ゝ`)「な……直野ー……?」

o川; )o(うわうわうわどうしよ舌の根ぇ乾かん内にデレちゃん裏切っとる)

(;´_ゝ`)「おーい……」

o川#゚听)o「じゃかぁしゃボケぇッ!! ちったあ危機感もたんかい童貞がッ!!」

(;´_ゝ`)「ひぃっ!?」

o川#゚听)o「空気読めや糸目ッ! お前が気にすんのはうちやなくてあっちやろがぁッ!!」

ζ( − ζ「……仲、良いですね…………直野さん」
  _,、_
o川 ;;)o「びゃあああああ!! ごめんなざいデレぢゃああああああんッ!!」


268 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:08:06.54 ID:vjHHUwP4O

ζ( − ζ「じゃあ、放課後に」

(´<_`*)「ああ、またな河合」

  _,
o川 ;;)o

(;´_ゝ`)?

  _,
o川 ;;)o(めんどぐざいよう……)

ζ( − ζ
  _,
o川 ;;)o(でもそんなめんどくさいデレちゃんが好き……)

(´<_`*)〜♪
  _,
o川 ;;)o(弟死ねよぉ……)

(;´_ゝ`)???
  _,
o川 ;;)o(こいつはもっと死ねよぉ……)
  _,
o川 ;;)o
  _,
o川 ;;)o(うぢが一番死にだい……場引っ掻き回しスキル消したい……)

269 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:10:09.38 ID:vjHHUwP4O


 キューちゃんに悪気がないの、分かってる。
 これがめんどくさくて醜い嫉妬だとも、分かってる。

 でも、苦しい。
 私の分からない話、私が入れない話題。

 彼に避けられ、彼に近付けない。
 でもキューちゃんは、彼の側に居られる。

 どうして、分からない。
 もう、何が分からないのかも分からない。

 ただ彼の側に行きたかった、話したかった、それだけよ。
 それだけなの、それだけなのよ。

 なのにそれが出来なかったから、悔しくて、悔しくて、寂しくて。


 誰か教えて、叩き付けて。

 私が今、どれだけ醜いのかを。


272 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:12:22.70 ID:vjHHUwP4O

 好きな人が遠くて、寂しい。
 お友だちが遠くて、寂しい。

 側に居る人が居ないと、寂しい。
 私は、とても、とても、嫌な女だ。


 昼休みが終わって、授業が終わって、私はきっとひどい顔。
 自分でも分かる、涙が出るくらい醜いと。


 泣きそうな顔をするキューちゃんから、
 困った顔をする流石くんから、顔を背けて席を立つ。

 鞄を持って、何か言いたそうな二人に背を向け、歩き出した。
 二人の視線が、いやと言うほど背中に突き刺さる。

 ああ、ああ、嫌な女。
 大事な大事なお友達を、自分が押し付けた約束を振り払って。

 嫌な、人間。


273 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:14:07.45 ID:vjHHUwP4O

 二つに結い上げた髪、髪をまとめるゴムに手を伸ばして、そっと引いた。
 はらりと流れる様に、長い髪が落ちる。

 色素の薄い薄茶の髪、痛みやすくて大嫌い。
 くにゃくにゃと頼りなくくねった癖っ毛、まとまらなくて大嫌い。


 二つのゴムを乗せた手を見下ろす。

 小さい手、肉体労働を知らない、傷のない手。
 何も掴めないし、何も掬えない、嫌い。


 階段の踊り場、大きな鏡に映る私の姿。

 太い手足、小さすぎる背、生っ白い肌、邪魔な脂肪、ひどい顔。

 みんなみんな、嫌い。


 真っ直ぐな髪が欲しかった。
 細い手足が欲しかった。
 もっと高い背が欲しかった。

 もっともっと、可愛いげのある人間に生まれたかった。

 みんなは可愛いと言ってくれる、でも本当は、全然可愛くなんかないんだ。


276 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:16:04.89 ID:vjHHUwP4O

 自分を見ていると、涙が出そうになった。
 だから私は鏡から顔を背けて、階段を駆け降りる。

 軽い髪がふわふわと跳ねて、邪魔でしょうがない。
 でもお母さんやお姉ちゃんが似合うと言ってくれるから、切れない。
 重い体に太い手足、ダイエットをしようと何度も思った。
 けどお母さんやお姉ちゃんが必要ないと怒るから、出来ない。

 ああ私がない、私がいない、私はどこ。
 私の声を聞いて、ねぇ、名前を呼んでよ。

 低い声で私を呼んで。
 こもった声で私を呼んで。
 聞き取りづらいあの声で私を呼んで。

 河合って、呼んで、私を呼んで。
 前髪に隠れた目で、ちらりと私を見て。
 その大きな手のひらで私を支えて。
 長い腕で私を抱いて。
 広い胸に額を押し付けさせて。

 お願い呼んで、私を呼んで下さい。



 「河合、?」


278 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:18:07.30 ID:vjHHUwP4O

 低い声に、私は勢い良く顔をあげた。

 そこにあったのは、切れ長の目に通った鼻筋、整った顔立ち。

 持ち上げられた、前髪。


ζ(゚−゚ ζ「ぁ…………流石、くん……」

(´<_` )「どうしたんだ? ずっと、俯いてたぞ」

ζ(゚−゚ ζ「い、え……何でも……ありません…………」

(´<_` )「……そう、か」


 低いけど、不思議とよく通る声。
 私を呼ぶ声は、あの声によく似ている筈なのに、違う。

 そっと、大きな手が私の髪を掬い上げた。
 手のひらでその感触を楽しむ様に軽く握ってから、くしゃくじゃ、と頭を撫でる。

 少し固くて大きな手のひらを頭に感じて、私は瞼を下ろす。

 少し、嬉しい。
 なのに何で、少し、寂しいのだろう。


281 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:20:02.84 ID:vjHHUwP4O

(´<_` )「髪を下ろしてるのも、似合うな、河合」

ζ(゚ー゚*ζ「……ありがとう、ございます……弟者さん」

(´<_` )「ああ……手触りも、柔らかくて良い」

ζ(゚ー゚*ζ「ぅあ、こそばいです、弟者さん」

(´<_` )「あ、悪い」


 私の頭をくしゃくしゃにして、弟者さんは笑った。
 よく似た顔は、毎日見ていても、笑ったところは


ζ( -  ζ

(´<_` )「……河合?」


 ざわ、と玄関から吹き込む風が私の髪やスカートを揺らした。
 長い髪が顔にかかって、見えなくなる。

 少し鬱陶しいけれど、私は風に感謝した。

 目の前に立つ弟者さんに、私のひどい顔を見られずに済んだから。


282 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:22:06.79 ID:vjHHUwP4O

 下駄箱の影で、私と弟者さんは向かい合って立っている。
 開け放たれた玄関の扉、夕日を透けさせるガラス。

 うっすら赤く染まった私たち。
 頭を撫でる手が、後頭部へと優しく降りる。

 そして突然、後ろから頭を押す様に力がこめられて


ζ( △ ;ζ「わぶっ!?」

(´<_` )「河合ゲットだぜ」

ζ( △ ;ζ「へ、ぅえ? わ、私はポケモンですか?」

(´<_` )「ポケモンだったらどんなに楽か」

ζ( △ ;ζ?


 ぽふ、と顔が弟者さんのお腹の辺りに当たる。
 後頭部と背中に回された手に、まるで私を抱き締める様に力がこめられた。

 背の高い弟者さん、その顔を見上げようと顔を上へ向けた。

 けど弟者さんの顔は思ったよりも近くにあって、私は目を丸くしてしまった。


283 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:24:17.84 ID:vjHHUwP4O

ζ(゚△゚;ζ「わっ、びっくりした」

(´<_` )「すまん」

ζ(゚△゚;ζ「…………どうしたん、ですか?」

(´<_` )「さて」


 くっつくと、こんなに近くに顔がくるのか。

 私がそう驚いて、目を丸くしたまま弟者さんを見上げていると
 弟者さんは少しだけ困った様に笑ってから、少し腰を屈めた。


 近付く整った顔。
 髪が、額に触れる。

 私が今どんな状況におかれているか、私は分からずにいて。

 顔を傾けた弟者さんの息が、唇にかかった。



 ヒュ  ゴッ

286 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:26:06.50 ID:vjHHUwP4O

( <_(#(o三「うべしっ!?」

ζ(゚△゚;ζ「うぇっ?」
  _,,
o川#゚听)「おいたはそこまでじゃボケこらァアッ!!」

ζ(゚△゚;ζ「うひょわあっ!?」
  _,,
o川#゚听)「デレちゃん大丈夫ッ!? 口汚れてないかッ!?」

ζ(゚△゚;ζ「き……キューちゃん……?」
  _,,
o川#゚听)「おうさ!! さっきはごめんな大丈夫ッ!?」

ζ(゚△゚;ζ「あ、は、はい、あの、こちらこそ……」
  _,,
o川#゚听)「なら良かった! おいこらツラぁ上げんかい変態がァッ!!」

(´<_(# )「マジ痛い」
  _,,
o川#゚听)「当たり前じゃボケェッ!!」

(´<_(# )「物凄い邪魔をするな直野、物凄い邪魔」
  _,,
o川#゚听)「黙れ」


287 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:28:05.08 ID:vjHHUwP4O

 肩を上下させたキューちゃんが、ずかずかとこちらへと歩いて来ます。
 その焦げ茶の髪には、髪飾りがひとつしか存在しません。

 ふと足元を見たら、ピンクのポンポンがついた髪飾りが転がっていて
 ひょいとそれを拾い上げ、すぐそばまでやって来たキューちゃんに差し出しました。


ζ(゚ー゚*ζ「は、はい、これ……」

o川*゚ー゚)「お、ありがと……っしょと」

o川*゚ー゚)o +

ζ(゚ー゚*ζ「ところでキューちゃん……何でここに?」

o川*゚ー゚)o「物凄い邪魔しにきた」

ζ(゚ー゚*ζ「なんの邪魔?」

o川*゚ー゚)o「そこのド変態の邪魔」


289 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:30:14.09 ID:vjHHUwP4O

o川*゚ー゚)o ζ*゚ー゚)ζ    (´<_(# )


ζ(゚ー゚*ζ「どへんたい?」

o川*゚ー゚)o「ド変態」

(´<_(# )「ド変態」

o川*゚ー゚)o「微塵に砕けろ」

ζ(゚ー゚*ζ「……なんで、邪魔?」

o川*゚ー゚)o「デレちゃんの純潔を、お節介にも守るため」

ζ(゚ー゚*ζ「純潔? 危なかったんですか?」

o川*゚ー゚)o「すごおく」

(´<_(# )〜♪


o川*゚ー゚)=o)<_(# )


292 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:32:08.46 ID:vjHHUwP4O

o川*゚ー゚)o「それよりデレちゃん、色々やらなあかん事、あるんちゃう?」

ζ(゚- ゚*ζ「あ……」

o川*゚ー゚)o「ほら、はよやっといで」

ζ(-△-;ζ「…………キューちゃん、さっきはひどい事して本当にごめんなさいっ!!」

o川;゚听)o「別にそれは今や無くてもええがなっ!?」

ζ(-△-;ζ「弟者さんもごめんなさいっ!
      お誘いお受けしたけど、やっぱり無理ですっ!!」

(メ#<_(# )「気にするな、予想はしてた」

ζ(-△-;ζ「本当にごめんなさいっ!! 私、すごく嫌な女で」
  _,,
o川;--)o「ええからはよ教室いかんかいッ!!」

ζ(゚△゚*ζ「教室?」
  _,,
o川#゚听)o「あんたの好きな人が待っとるからはよ行けぇいッ!!」

ζ(゚△゚;ζ「なんとぉっ!?」
  _,,
o川#゚听)o(さすがにイラッとしてもーたぞゴルァ)


293 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:34:05.87 ID:vjHHUwP4O

ζ(゚△゚;ζ「わっ、わかりました! 行ってきますっ!!」
  _,
o川;--)o「おー行ってこい行ってこい」

(´<_` )
  _,
o川;- -)o=3

(´<_` )「…………はぁ」
  _,,
o川;-听)o「何やねん」

(´<_` )「……結構、真剣に好きだったんだがなぁ……」
  _,,
o川;゚听)o「あ、アレで?」

(´<_` )「…………文句あるのかよ」
  _,,
o川;-Д-)o「無いけどやぁ……」

(´<_` )「まあ、兄者に譲るさ…………今はな」
  _,
o川 ゚−゚)o「…………真面目にしとったらイケメン寄りやのになぁ……」

(´<_` )「何だ、ラブホ行きたいのか?」
  _,,
o川#゚皿゚)o「誰が行くか童貞」


296 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:36:03.10 ID:vjHHUwP4O

 キューちゃんに怒鳴られるがままに、私は階段を駆け上っていた。

 さっきまでずっと抱えていた、ぐろぐろした嫌な気持ちは
 顔を赤くして怒るキューちゃんを見たら、どこかへ飛んで行ってしまった。

 ああごめんなさい、あんなに大好きな人に嫉妬をして。
 こんなに汚い気持ちを抱いた私を、守ってくれて。

 どうして、キューちゃんを一瞬、嫌いになれたのだろう。

 数分前の私の事すら、私にはもう分からない。
 なんて頭が悪いんだろう。

 今はただ、ひたすらに走る。
 汗ばんだ肌に張り付く長い髪を流しながら、太くて短い手足を必死に動かして。

 ああもう、体が重い!
 思うように動けない!

 やっぱり、ダイエットしよう。


 そんな事を考えながら、私は教室の扉を蹴飛ばすように開いた。


299 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:38:08.20 ID:vjHHUwP4O

ζ(゚△゚;ζ「流石くんっ!!」

(;´ ゝ`)「もごがっ!?」

ζ( △ ;ζ「なんか縛られてるうっ!?」

(;´ ゝ`)「もがが、むぐががっ!?」


 ばあんと扉を開け放った私の目に飛び込んできたのは、薄暗い教室。

 そして、椅子に縛り付けられ、猿ぐつわを噛まされた流石くんの姿。

 私の姿に、流石くんがもごもごと何かを言います。
 けれど何を言っているのかは流石に分からなくて、慌てて流石くんに駆け寄る。

 がっちりと椅子に結びつけられた紐を、もたもたほどいて流石くんの背中を見上げた。
 広くて大きな背中、白いシャツにはシワが寄り、汗が染みている。

 少し長い髪が襟の辺りにかかっていて、私は少しだけ、安堵した。


 ああ、流石くんだ。


301 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:40:32.86 ID:vjHHUwP4O

 手足と胴体を縛っていた紐、縄跳びの紐をほどいて、立ち上がる。
 流石くんは自由になった手で猿ぐつわを外し、深々とため息を吐いた。


(;´_ゝ`)「い……いてぇ……」

ζ(゚ー゚;ζ「だ、大丈夫ですかっ?」

(;´_ゝ`)「あ……ああ……」

ζ(゚ー゚;ζ「でも、何で縛られて……?」

(;´_ゝ`)「帰ろうとしたら……直野が、じっと……待ってろって……」

ζ( △ ;ζ「うびゃお」


 ああう、それ、きっと私の所為です。

 赤い跡のついた手首を撫でながら、流石くんがちらりと私を見ます。
 私はそれが何だか、恥ずかしくて、視線を外した。


302 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:42:10.88 ID:vjHHUwP4O

 ああ逃げないで、言わなきゃ。
 やっとやっと自覚したの、キューちゃんが導いてくれたの、言わなきゃ。


 前髪に隠されたあなたの顔が整っている事を知ってました。

 こつんと出た喉仏の形も、鎖骨の形も知ってました。

 背が高いけれど体は細くて、すじばった手をしている事を知ってました。

 得意科目も苦手科目も、お弁当によく入ってるおかずも知ってました。


 本当は広い大きな背中を見てました。
 いつのまにか前髪で隠れた横顔を見てました。
 自覚はなかったけれど、私はきっと、
 あなたの低くてこもった声を、本当はずっと聞きたかった。

 気にしていないと思っていたあなたを、気にしていました。
 どうでも良い筈のあなたの姿を、目で追っていました。

 嫉妬なんかじゃないと言い聞かしていた
 でも私は、あなたと話す一番の友達に嫉妬するくらい

 ああ好きです、あなたが好きです
 声だけじゃない、私を欲情させる声だけじゃない

 あなたが好きなんです、いっとうあなたが好きなんです。

304 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:44:05.31 ID:vjHHUwP4O

ζ(゚−゚*ζ「……っ流石くん、私っ」

( ´_ゝ`)「すまん……河合」

ζ(゚−゚;ζ「ぇ……?」

( ´_ゝ`)「俺、河合の事、考えなくて……」

ζ(゚−゚;ζ「へ、へ?」

( ´_ゝ`)「……本当に、ごめん……俺、」


 やっと言おうと顔をあげた私を待っていたのは、
 妙に深刻そうな顔をした流石くんの、謝罪。

 わけがわからなくて、私は首を傾げて目をまんまるにしてしまう。

 椅子に座ったままの流石くん、その前に立つ私。

 蒸し暑い夕方の空気が、教室いっぱいに溢れて私たちを包む。
 カーテンの埃っぽさが、蒸し暑さに際立たされる。


309 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:46:04.34 ID:vjHHUwP4O

 ぽつりと頬に汗が伝う。
 けれどそれを拭う余裕はなくて、ただ流石くんを見つめるだけ。

 ええと、ええと、何を、言ってるの?


( ´_ゝ`)「……俺、河合で……あの…………そ、の……」

ζ(゚−゚;ζ「流石……くん?」

( ´_ゝ`)「あ……の…………」

ζ(゚−゚;ζ「…………」

( ´_ゝ`)「…………」


 何かを言おうとしては、金魚みたいに口をぱくぱくさせて空気を吐くだけ。

 思い詰めた彼の口から、なかなか言葉が吐き出されない。


 もう、待つの、いや。
 暑いし、もう胸がいたいくらい、はじけてしまいそうなんです。


314 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:48:04.11 ID:vjHHUwP4O

 胸の辺りが爆発しちゃいそう、と邪魔っけな胸をどかす様に手を押し付けた。

 そして、ひとつ息を吐いてから、大きく吸って


ζ(゚−゚;ζ「流石くん」

(;´_ゝ`)「なっ……何、だ?」

ζ(゚−゚;ζ「好きです」

(; _ゝ )三´  `

(;∩_ゝ )「ぇ……あ、あぁ……こ……こここ、声、か、? でも俺、声、変わって、」

ζ(゚−゚;ζ「声、も、です」

(;´_ゝ`)「え、?」

ζ(゚−゚;ζ「私は、流石くんが好きです、あなたが好きです、声が変わっても、」

(;   )三´_ゝ`


319 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:50:06.29 ID:vjHHUwP4O

(;∩  )「ちょ、ぇ、ぁ、え? え、えぉ?」

ζ(゚−゚*ζ「……ごめんなさい、今日」

(;´∩ )「ぉあっ?」

ζ(- -`*ζ「私から無理やりした約束……破って、ごめんなさい」

(;´_ ∩)「あ、い、いや……気に、するな……?」

ζ(゚−゚*ζ「ありがとう、ございます……」

(;´_ゝ`)「…………」

ζ(゚−゚*ζ「……嫌、ですよね……」

(;´_ゝ`)「はいっ!?」

ζ(。 。`*ζ「…………こんな、変で嫌な女……」

(;´_ゝ`)「やっ、いや、あ、あの、ぜぜぜ、ぜんっ、ぜっ!?」

ζ(_ _`*ζ「こんなはしたない……いやらしい女……」

(;´_ゝ`)「ホワッツ!?」


323 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:52:11.54 ID:vjHHUwP4O

ζ(-△-`*ζ「ごめんなさい……わ、わす、忘れて下さい……」

(;´_ゝ`)「ぇ、あ……いや、その…………こ、断る」

ζ(゚△゚`;ζ「えぇっ!?」

(;´_ゝ`)「いや、だっ、そ、あの…………お、俺も……す、すす、す」

ζ(゚△゚*ζ?

(;´_ゝ`)「す……す、……き」

ζ(゚△゚*ζ「すすきの?」

(;´_ゝ`)「違っ! 好きですよっ!?」

ζ(゚△゚*ζ「へ……?」

(;´_ゝ`)「あ゙」


324 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:54:11.02 ID:vjHHUwP4O

ζ(゚□゚*ζ

(;´_ゝ`)

ζ(゚◇゚*ζ

(;´_ゝ`)

ζ(゚q゚*ζ

(;´_ゝ`)

ζ(゚々。*ζ

(;´_ゝ`)(顔芸……)

ζ(^ヮ^*ζ

(*´_ゝ`)


330 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:56:25.21 ID:vjHHUwP4O

ζ(>△<*ζ「えりゃーっ!!」

(;´_ゝ`)「ぬわスっ!?」


 よくわからないぐるぐるドキドキした何かが、私の中で跳ね回る。
 それを押さえきれなくて、私は椅子に腰掛けたままの流石くんに、飛び付いた。

 流石くんの脚を跨いで腰掛け、背中に腕をいっぱい伸ばして回す。
 広い胸に頬を押し付ければ、私はダッコちゃんみたいに、流石くんにしがみつく。


(;´_ゝ`)「かっ、かかかかかかっか、かわ、いっ!?」

ζ(^ヮ^*ζ「うへー」

(* _ゝ )そ


 何だろう、何だろうこれ。

 私は流石くんが好きで、それで、流石くん、私を好きって、好きって。
 ああ顔がゆるんで、しょうがない。

 うわあ、あ、うわああ、何、これ、何これ、嬉しい、嬉しい。


 お腹の奥が、ぎゅう、と熱を持つ。

333 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 00:58:10.09 ID:vjHHUwP4O

ζ(- -*ζ「…………あ゚ー……」

(;´_ゝ`)「か、河合……あの、あ、の」

ζ(゚ー゚*ζ「はい?」

(*´_ゝ`)「ぁ……ぇ……その…………す……好き、……です」

ζ(^ー^*ζ「私もですっ」

(* _ゝ )

(  _ゝ )そ

(; _ゝ )

ζ(゚−゚*ζ?

ζ(゚△゚*ζ「……う?」

(; _ゝ )

ζ(゚△゚*ζ「何か、ある……う? これ、何ですか?」

(; _ゝ )「気、気に、す、すす、する、な」

ζ(゚△゚*ζ???


336 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 01:00:03.64 ID:vjHHUwP4O

 何かがお腹の下に当たって、私は首を傾げた。
 けれど、ぽんぽん頭を叩く様に撫でられてしまえば、顔がゆるんでしまう。

 長い髪に、筋っぽい指が絡む。
 流石くんの胸に頬擦りすると、髪の毛ごと抱き締められて。

 胸いっぱいの嬉しさや照れ臭さ、耳元で名前を呼ばれる気持ち良さ。
 ああ、録音した声じゃない、本当に耳元で囁かれてる。

 熱い息と一緒に吹き掛けられる声は、私をどんどん溶かしてゆく。
 気持ち良くて、とろ、と流石くんにしなだれかかってしまいます。


 そっと、大きな手のひらが私の顔を上へ向けさせる。
 少し震える、ぎこちない動き。

 ゆっくり近付いてくる顔。
 私はこれから何をされるか分かって、瞼を下ろした。


 あなたが好き。
 気持ち良い声をくれる口も、指先も、心も。

 だからどうか、私を飲み込んで、飲み込まれて、ああ、気持ち良いを共有したいから。

 重なろうとする唇も、そっとそっとスカートに忍び込む手も、受け入れる。


340 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 01:02:03.66 ID:vjHHUwP4O
  _,
o川;//-/)o「…………何しとんねん……」

ζ( △ ;ζ「おぎゃあっ!?」

(; _ゝ )「うぼぁっ!?」

(´<_` )「学校で淫交か、ちょっと教師呼んでくるわ」

ζ(/□//;ζ「びゃああっ! ごめんなさいやめてくださいっ!?」

(; _ゝ )
  _,
o川;//-/)o「……お、お家でしよな、それは……」

ζ(/□//;ζ「はひっ! ごめんなひゃひっ!!」

(´<_` )「おい兄者、おっきさせたまま死ぬな、腹上死か」

(;´_ゝ`)「そこまで行ってないっ!!」

(´<_` )「当たり前だボケナス、ほら河合を離せ、奪って逃げるから」

(;´_ゝ`)「だ……断固、拒否する……」


344 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 01:04:05.07 ID:vjHHUwP4O
  _,
o川;//-/)o「…………取り敢えず……今日はもう、帰り?」

ζ(/□//;ζ「ひゃひっ」
  _,
o川;//-/)o「あ、あとの事は、まあ……ふ、二人の自由やから……」

ζ(/□//;ζ

ζ(゚□゚*;ζ

ζ(゚△゚*;ζ「……あの、うち、今日は私しか……」

(;´_ゝ`)「ホワイッ!?」
  _,
o川;゚听)o「お誘いはえぇッ!!」

(´<_` )「俺も行って良いか?」
  _,
o川#゚听)o「死ぬか消えるか土下座してでも生き延びるか」

(´<_` )「心からすまんと思ってはいる、反省は今後もしない」
  _,
o川# 皿 )o

(´<_` )「すまん、顔怖いから、すまんってごめん本当ごめん」


347 ◆XCE/Wako2nqi 2009/07/20(月) 01:06:55.92 ID:vjHHUwP4O
 (; _ゝ )  ζ(゚△゚;ζ

  ( ´_ゝ`) ζ(゚ー゚*ζ

  (*´_ゝ`)ζ(^ヮ^*ζ


 ちょっぴり変わってるけれど、大好きでたまらない人たち。

 大好きなお友達、大好きなあの人。


 耳元で囁く、低くて、こもってて、少し聞き取りづらい声。
 私が愛してやまない、あの人、声。


 暑い夏の夕方に、語ったのはまだまだ青臭い愛。

 自分の思いや人の思いに振り回されながら、私たちはそっと声を交わした。



  大好きです。

  俺も、大好きだ。



おわり。

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