- 46 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 20:59:21 ID:M6gdIC.kO
そこは深く暗く、鬱蒼とした森の奥の奥。
ぞろりと天を睨む様に聳える、蔦を這わせた灰色の塔。
周囲には森があるだけ。
聞こえるのは夜の鳥の声に木々のざわめき。
緑と土の匂いが溢れるそこに住むのは、二人。
一人は長身細身の、暗い顔をした魔導師。
もう一人は、非常に美しく整った顔立ちの従者。
【塔のようです】
【三話 これだからご主人様は。】
そこはいつも、陰鬱とした空間に存在する。
- 47 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:02:13 ID:M6gdIC.kO
('A`)「クー、さっきから何してるんだ」
川 ゚ -゚)「求人情報紙見てます」
('A`)「お前そんなにこの職場に不満があったのか」
川 ゚ -゚)「いえ別に、ただ色々すればもっと良い感じになるかと思って」
('A`)「良い感じって何だよ」
川 ゚ -゚)「カリスマなメイドとして敬われたり」
('A`)「家事の出来ないメイドが?」
川 ゚ -゚)
('A`)
川 ゚ -゚)「お昼にしましょう」
('A`)「うん」
- 49 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:04:26 ID:M6gdIC.kO
('A`)「しかし、敬われて楽しいか?」
川 ゚ -゚)「気持ち良いんじゃないですかね、ご主人様はどうですか」
('A`)「敬われた事はないからなあ」
川 ゚ -゚)「いえ、この絶世の美メイドにご主人様と呼ばれて」
('A`)
川 ゚ -゚)
('A`)「今度はカリフラワーかぁ」
川 ゚ -゚)「流さないで下さいよド腐れニート様」
('A`)「そんな顎と鼻の尖ったギャンブルで生計を立てる青年の様な呼び方はやめなさい」
川 ゚ -゚)「ご主人様ですよご主人様、追加料金とられますよこんなの」
('A`)「メイド喫茶でもご主人様は通常メニュー内だと思うよ」
川 ゚ -゚)「よく見てくださいよ、こんな美メイド他に居ると思います?」
('A`)「はいはい」
- 50 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:06:10 ID:M6gdIC.kO
川 ゚ -゚)「クソが、美メイドでしょうよ僕は、愛らしくも美しい傾国のメイドでしょうよ」
('A`)「何言ってんだ12歳児」
川 ゚ -゚)「なおさら希少価値ですよ、この若さにしてこの美しさ、ご主人様タマ無しだからもう」
('A`)「あるよ、全力で二つあるよ」
川 ゚ -゚)「キモいですねご主人様」
('A`)「お前は本当にひどいメイドだ」
川 ゚ -゚)「タマ無しじゃなきゃ僕を野放しにはしませんよ」
('A`)「野放しにしたつもりは無い、寧ろこんなメイドを野放しに出来るか」
川 ゚ -゚)「ああ、野放しにしたらそこらじゅうで国が傾きますよね」
('A`)「家事出来ないもんな」
川 ゚ -゚)「本当に腹が立ちますねご主人様は、いつ頃死ぬご予定なんですか」
('A`)「まだ死にませんーだ」
- 51 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:08:22 ID:M6gdIC.kO
川 ゚ -゚)「しかし、ご主人様は本当に名誉や地位に興味は無いんですか」
('A`)「名声とか?」
川 ゚ -゚)「あって困るもんでもないでしょう、僕ならかき集めますよ」
('A`)「興味無いし、それに地位とかあったらめんどくさいぞ」
川 ゚ -゚)「ご主人様がめんどくさがり過ぎなんです」
('A`)「地位なんか持ってみろよ、やる事なす事みーんな制限されるんだ」
川 ゚ -゚)「まあ、自由は無くなりますね」
('A`)「名声って事はそれだけ人に見られるんだ、そんな息苦しい生活があるかよ」
川 ゚ -゚)「む……」
('A`)「好きな時に寝て、起きて、本を読んで不味い飯食う生活が好きだよ、俺は」
川 ゚ -゚)「マゾですかご主人様」
('A`)「あれ、かっこいい話じゃなかった?」
川 ゚ -゚)「いえ、ご主人様がドマゾなだけの話です」
('A`)「あれえ」
- 52 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:10:36 ID:M6gdIC.kO
川 ゚ -゚)「つまり、高みを目指すつもりは無いと」
('A`)「専門分野は極めたいと思うよ」
川 ゚ -゚)「ご主人様って職業カンストして勇者になるタイプですよね」
('A`)「6は全員勇者にしてからが本番だよ」
川 ゚ -゚)「やっぱドマゾですねご主人様」
('A`)「否定できない気がする」
川 ゚ -゚)「ご飯出来ましたよ」
('A`)「カリフラワーの味噌汁ってなんか斬新だな」
川 ゚ -゚)「カリフラワーとかどう料理するのはよくわかりません」
('A`)「俺はグラタンにしてみた」
川 ゚ -゚)「何となく新感覚ですね」
- 53 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:12:21 ID:M6gdIC.kO
川 ゚ -゚)「……」
('A`)「どうした、カリフラワー不味かったか?」
川 ゚ -゚)「いえ意外と美味しいです」
('A`)「じゃあ何だ?」
川 ゚ -゚)「……ご主人様、僕は必要ですか?」
('A`)「止めろよシリアス路線、疲れるよ」
川 ゚ -゚)「茶化さない」
('A`)「普段茶化す側のくせに……必要だよ、外に出たくないし」
川 ゚ -゚)「それだけですか」
('A`)「一人はな」
川 ゚ -゚)「はい」
('A`)「一人きりだとな、寂しいよ」
川 ゚ -゚)「……」
- 54 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:14:11 ID:M6gdIC.kO
('A`)「親元から飛び出してここに住んで、気が付いたら親は死んでた」
川 ゚ -゚)「……ご主人様、」
('A`)「親の死に目にあえないどころか、墓の場所も知らないんだ俺は」
川 ゚ -゚)「……」
('A`)「まだ十代だった、天涯孤独になって、本としか向き合えなかった」
川 ゚ -゚)「ご主人様は、寂しいんですか」
('A`)「寂しいよ、寂しくない生き物なんて居ない」
川 ゚ -゚)「孤独が、力にもなるんですね」
('A`)「ああ……孤独だから、魔導師になれたんだろうなあ俺は」
川 ゚ -゚)「…………ご主人様は孤独が似合いますよ」
('A`)「厨二乙」
川 ゚ -゚)「すっげーむかつく」
- 55 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:16:50 ID:M6gdIC.kO
川 ゚ -゚)「何ですかもう、せっかく寂しそうなご主人様をこの胸で泣かせて差し上げようと思ったのに」
('A`)「胸無いだろ」
川 ゚ -゚)
('A`)
川 ゚ -゚)「無いですけどね」
('A`)「無いよな」
川 ゚ -゚)「無いと自覚してますが、改めて言われると何となく腹立たしいですね」
('A`)「良いじゃん、無いもんは無いんだから」
川 ゚ -゚)「そうですけど」
('A`)「ほら後片付けして」
川 ゚ -゚)「はーい」
('A`)「洗うと皿割るから置くだけにしろよー」
- 56 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:19:09 ID:M6gdIC.kO
('A`)
('A`)「喋りすぎたなあ……」
('A`)「孤独かあ……」
('A`)
('A`)「名声とかあっても、孤独は孤独、かあ」
('A`)「だったら、今のままで良いな」
('A`)
('A`)「クー、お茶しようか」
('A`)「俺がいれるから触らないで、そのお茶葉良いやつだからやめて、やめて」
('A`)「やめて! なみなみと茶葉入れないで!!」
('A`)「そのままお湯入れるのはもっとやめてえええええ!!」
- 57 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:20:03 ID:M6gdIC.kO
('A`)「……」
川 ゚ -゚)「どうしたんですかご主人様、顔が悪いですよ」
('A`)「唐突に暴言ですか」
川 ゚ -゚)「間違えました、顔は生まれつきですよね、顔色が悪いですよ」
('A`)「ああ、うん、もう良いや否定できないし……まずお前のせいだ」
川 ゚ -゚)「僕が何をしたんですか失礼な」
('A`)「一缶5kのお茶葉を駄目にしてくれたね」
川 ゚ -゚)「そんなもん買ってるから飯食えないんですよ」
('A`)「良いお茶は美味しいだろ……美味しい方が良いだろ……」
川 ゚ -゚)「僕は夏場に飲むきんきんに冷えた麦茶が世界で一番美味しいお茶だと思います」
('A`)
川 ゚ -゚)
('A`)「そうだね」
川 ゚ -゚)「はい」
- 58 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:22:05 ID:M6gdIC.kO
('A`)「クーは名声が欲しいのか?」
川 ゚ -゚)「いえ、もうどうでも良いです」
('A`)「そっか」
川 ゚ -゚)「ご主人様」
('A`)「うん」
川 ゚ -゚)「名声は良いですから仕事はしてください」
('A`)「今度は魔王軍に術式売ってみようか」
川 ゚ -゚)「どんな感じのを?」
('A`)「発動したらコショウが充満する術式」
川 ゚ -゚)「ご主人様はやっぱり鬼畜ですか、何で鼻がむずむずする魔法ばっかりなんですか」
('A`)「じゃあ辺り一面トリモチの海になる術式」
川 ゚ -゚)「ご主人様は戦場に個人的な感情で嫌がらせをしたいだけですよね」
- 59 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:24:04 ID:M6gdIC.kO
('A`)「何か良い術考えようぜ」
川 ゚ -゚)「発動したら目が充血する術式とか」
('A`)「めばちこ出来るとか」
川 ゚ -゚)「エロ本が全部机に並べられるとか」
('A`)「ベルトのバックルが突然吹っ飛ぶとか」
川 ゚ -゚)「利き手と逆の鋏を買うとか」
('A`)「厨二病が再発するとか」
川 ゚ -゚)「ジョジョ立ちしないと会話が出来ないとか」
('A`)「邪気眼が疼くとか」
川 ゚ -゚)「ひたすらサクランボを舌で転がし続けるとか」
('A`)「やおい穴が出来るとか」
川 ゚ -゚)「なにそれこわい」
- 60 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:26:08 ID:M6gdIC.kO
川 ゚ -゚)「やおい穴が出来たら人体ってどうなるんでしょうか」
('A`)「さあ」
川 ゚ -゚)「うんこどこから出るんでしょうね」
('A`)「肛門じゃね」
川 ゚ -゚)「ああ、肛門が二つ三つになる術式とか」
('A`)「息子が2、3本になるとか」
川 ゚ -゚)「何と奇遇な」
('A`)「ホモじゃねーか」
川 ゚ -゚)「そう言うニーズもありますよ、きっと」
('A`)「なにそれこわい」
川 ゚ -゚)「ご主人様が盾となり喜ぶ人も居ますよきっと」
('A`)「なにそれとてもこわい」
川 ゚ -゚)「盾に矛突っ込むんですよね」
('A`)「その盾って不良品じゃない?」
- 61 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:28:43 ID:M6gdIC.kO
川 ゚ -゚)「ご主人様」
('A`)「うん」
川 ゚ -゚)「攻めの反対語は?」
('A`)「特防」
川 ゚ -゚)
('A`)
川 ゚ -゚)「ポケモンかよ……」
('A`)「クー、攻めの反対語は?」
川 ゚ -゚)「ご主人様」
('A`)「ちょっと待って、それはどう言う意味なの」
川 ゚ -゚)「攻められたらご主人様を盾にして逃げます」
('A`)「お前は本当にメイドとしての自分を見直してみるべきだ」
川 ゚ -゚)「可愛いは正義です」
('A`)「もうやだこのメイド」
- 62 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:30:09 ID:M6gdIC.kO
川 ゚ -゚)「アホ言ってないでこの大量のカリフラワー何とかしてくださいよ」
('A`)「アホ言ったのは間違いなくお前だけどカリフラワーは足が早いな」
川 ゚ -゚)「お隣さん今度はカリフラワー魔法失敗したんですね」
('A`)「ホクホク……してるかな、一応」
川 ゚ -゚)「ご主人様、一回このカリフラワーで魔法使って下さいよ」
('A`)「食べ物を粗末にはしたくないなあ」
川 ゚ -゚)「カリフラワーを媒体に食べ物を出しましょうよ」
('A`)「じゃあやってみるかあ」
川 ゚ -゚)「魔方陣描きます?」
('A`)「いや、このくらいなら要らない」
川 ゚ -゚)「お隣さんはガチガチの魔方陣描いてるのに」
('A`)「もう八百屋やった方が良いんじゃないかなお隣さん」
- 63 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:32:10 ID:M6gdIC.kO
('A`)「よっと…………ドクオ・ソリテールの名において命ず、」
川 ゚ -゚)「そう言うの良いですから」
('A`)「本当にお前はひどい、わかったよちゃちゃっとやるよ」
川 ゚ -゚)「はいはい」
('A`)「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はカリフラワー!!」
川 ゚ -゚)「何その呪文」
('A`)「ちゃちゃっとやった結果がこれだよ」
川 ゚ -゚)「って事は本当は長々とそれを言うつもりだったんですか」
('A`)「うん」
川 ゚ -゚)「ご主人様おかしいです、主に頭部周辺が…………あ、カリフラワーが」
('A`)
川 ゚ -゚)
('A`)「ブロッコリーになった」
川 ゚ -゚)「何ですかこのミラクルは」
- 64 名も無きAAのようです 2011/11/02(水) 21:34:08 ID:M6gdIC.kO
川 ゚ -゚)「ご主人様、お野菜の錬金術師って称号はどうですか」
('A`)「そんなお野菜特化型錬金術は嫌だ」
川 ゚ -゚)「じゃ、夕飯はブロッコリーですね」
('A`)「お隣さんにお裾分け持っていってね」
川 ゚ -゚)「びっくりするでしょうねお隣さん」
('A`)「だろうね、じゃあまたグラタンでも作るか」
川 ゚ -゚)「昼夜グラタンとか胃もたれしますよ」
('A`)「若いんだから頑張れ」
川 ゚ -゚)「中年が」
('A`)「俺は今とても傷付いた」
川 ゚ -゚)「はいはい、夕飯作りましょうね」
('A`)「んー」
【三話 おわり】