- 90 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:02:51 ID:1LjcggkAO
そこは深く暗く、鬱蒼とした森の奥の奥。
ぞろりと天を睨む様に聳える、蔦を這わせた灰色の塔。
周囲には森があるだけ。
聞こえるのは夜の鳥の声に木々のざわめき。
緑と土の匂いが溢れるそこに住むのは、二人。
一人は長身細身の、暗い顔をした魔導師。
もう一人は、非常に美しく整った顔立ちの従者。
【塔のようです】
【五話 これはいったい何です。】
そこはいつも、陰鬱とした空間に存在する。
- 91 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:04:09 ID:1LjcggkAO
('A`)「クー、お前メイドなんだからちょっとは働けよ」
川 ゚ -゚)「嫌ですよ、働くくらいなら死にます」
('A`)「なら死ねば良いのに」
川 ゚ -゚)「嫌ですよ何言ってるんですかご主人様、頭おかしいんじゃないですか」
('A`)
川 ゚ -゚)
('A`)「裏から薬草とってきて」
川 ゚ -゚)「わかりました」
('A`)「もう間違えてマンドラゴラ持ってこないでよ」
川 ゚ -゚)「あれ凄くうるさいんですよね」
('A`)「引き抜く時の声を聞いたら死ぬって言う植物なんだけどあれ」
川 ゚ -゚)「ピンピンしてますが」
('A`)「お前は何者だ」
- 92 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:06:14 ID:1LjcggkAO
('A`)「うん、またお隣さんから野菜が」
('A`)
('A`)「今度は冬瓜か……」
('A`)「スープにするくらいしか調理法が思い付かないなこれ」
('A`)
('A`)「成功した事あんのかな、お隣さん……」
('A`)「今度、教えに行こうかな」
('A`)「いや外に出るのめんどくさいから良いや」
('A`)「うん、まだ何か…………手紙か、また城からかな」
('A`)
('A`)?
('A`)「なんだこれ」
- 93 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:08:12 ID:1LjcggkAO
川 ゚ -゚)「とってきましたよご主人様、マンドラゴラ」
('A`)「お前は本当に中途半端な話の聞き方をする」
川 ゚ -゚)「あれ、何ですかそれ」
('A`)「魔王軍の方からお礼」
川 ゚ -゚)「へー、律儀ですね魔王軍も…………何ですかこれ」
('A`)「わからん」
川 ゚ -゚)「スーパーゲームボーイですかね」
('A`)「そうとしか見えないよな」
川 ゚ -゚)「本体ありませんよね」
('A`)「まずテレビが無いからな」
川 ゚ -゚)「スーパーゲームボーイに似た魔導具ですかね」
('A`)「かな、しかしどう使うやら」
- 94 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:11:22 ID:1LjcggkAO
川 ゚ -゚)「しかしまあ、両軍とも飽きずに戦争しますね」
('A`)「向こうさんも仕事だろうしな」
川 ゚ -゚)「ご主人様は死体を見た事がありますか」
('A`)「あるよ、虫とか」
川 ゚ -゚)「それは死体と言うより死骸」
('A`)「大して違わないだろ」
川 ゚ -゚)「虫の死骸見てもうへぇで済みますすけど、死体はもっと違うでしょ」
('A`)「そうでもないよ」
川 ゚ -゚)「え?」
('A`)「他人が死んで、そう悲しむのか?」
川 ゚ -゚)「悲しまないんですか?」
('A`)「可哀想だとは思うよ、故人や遺族の方に」
川 ゚ -゚)「それだけですか?」
('A`)「それ以上の感情が生まれたところで、何か出来るのか?」
川 ゚ -゚)「……出来ませんね」
- 95 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:12:19 ID:1LjcggkAO
('A`)「そう言う事だよ」
川 ゚ -゚)「でも、悲しみますよ、少しは」
('A`)「悲しんでも、何も出来ないからな」
川 ゚ -゚)「そう、ですけど」
('A`)「誰かが簡単に死なない環境を作る事に尽力する方がずっと効率的だ」
川 ゚ -゚)「効率厨が」
('A`)「事実だよ」
川 ゚ -゚)「理解は出来ますが、釈然としません」
('A`)「お前は若いからな」
川 ゚ -゚)「中年」
('A`)「中年だから、ドライになるんだよ」
川 ゚ -゚)「それにしたってご主人様、感情の起伏が無さすぎます」
('A`)「疲れる」
川 ゚ -゚)「クソが」
- 96 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:14:40 ID:1LjcggkAO
川 ゚ -゚)「もう少し泣いたり笑ったり出来ないんですか」
('A`)「お前が言うな」
川 ゚ -゚)「僕はこのクールなフェイスの向こうで魂が熱く燃えていますから」
('A`)
川 ゚ -゚)
('A`)「で?」
川 ゚ -゚)「ご主人様は僕が死んだら悲しみますか」
('A`)「わからん」
川 ゚ -゚)「従い甲斐の無いご主人様ですね」
('A`)「そうかもなあ」
川 ゚ -゚)「そう思うならもっと愛を下さいよ」
('A`)「めんどくさい」
川 ゚ -゚)「早々にお亡くなりになる事をお勧めしますご主人様」
('A`)「さすがに拒絶する」
- 97 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:16:23 ID:1LjcggkAO
川 ゚ -゚)「もう良いですご主人様のハゲ」
('A`)「髪はある」
川 ゚ -゚)「ハゲろ」
('A`)「嫌だ」
川 ゚ -゚)「おハゲ下さいませご主人様」
('A`)「丁寧に言っても嫌だ」
川 ゚ -゚)「ご主人様」
('A`)「うん」
川 ゚ -゚)「そろそろ夕飯の準備をしましょうか」
('A`)「うん」
川 ゚ -゚)「冬瓜のパスタにしますね」
('A`)「じゃあ俺はグラタンね」
川 ゚ -゚)「またですか……」
- 98 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:18:07 ID:1LjcggkAO
('A`)「悲しい、かあ」
川 ゚ -゚)「まだ悩んでるんですか」
('A`)「親が死んだって聞いて、悲しかったのかなあ俺」
川 ゚ -゚)「その時には僕まだ生まれてませんから」
('A`)「今とんでもなく悲しみが押し寄せた」
川 ゚ -゚)「ご主人様が僕くらいの歳の時にはまだ種にすらなってませんから僕」
('A`)「わかった、もうわかった、今すごく悲しい、俺とても悲しいから」
川 ゚ -゚)「ご主人様が二十歳の時に生まれてますから僕」
('A`)「ごめんやめて悲しい、これ半端無く悲しい、中年を思い知ったからやめて」
川 ゚ -゚)「良かったですね、ご主人様にも悲しむ心がありましたよ」
('A`)「わーいやったー全く嬉しくなーい」
川 ゚ -゚)「喜びましょうよ、多少は人間味があったんですから」
('A`)「こんな確認のしかたはしたくなかった」
- 99 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:20:05 ID:1LjcggkAO
川 ゚ -゚)「じゃあどんなのなら良かったんですか」
('A`)「メイドが死ぬとか」
川 ゚ -゚)「おほざきにならないで下さいご主人様、寿命的にはご主人様の方が遥かに先ですから」
('A`)「そんな新しく遠回しな死ねを聞いたのは初めてだ」
川 ゚ -゚)「ゲームじゃないんですからそう簡単に殺さないで下さいよ」
('A`)「お前がそれを言うのか」
川 ゚ -゚)「うるせー死ね」
('A`)「初めてかも知れないね、単刀直入な死ねは」
川 ゚ -゚)「はいはい、お隣さんにお裾分け持っていくから良い子にしてて下さいよ」
('A`)「何となく釈然としない言いぐさだ」
川 ゚ -゚)「あーはいはいそうですか」
('A`)「解せぬ」
- 100 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:22:33 ID:1LjcggkAO
('A`)「……」
('A`)「グラタンの作り方」
('A`)「は、別に良いか……」
('A`)「ぶっちゃけ冬瓜のグラタンって美味しいのかな……」
('A`)
('A`)「食うの俺じゃないしまあ良いか」
('A`)「もっと悲惨なものを食う運命だしなあ」
('A`)「そういや、確かに感情はあんま動かないかなあ」
('A`)「最後に泣いたの、いつだったかな……」
('A`)
('A`)「えっ、マジでいつだ」
('A`)
('A`)「思い出せない事実に泣きたい」
- 101 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:24:13 ID:1LjcggkAO
川 ゚ -゚)「ひとよーんであーくまのしょっかー」
('A`)「お帰りショッカー」
川 ゚ -゚)「ただいま戻りました、主に顔が怪人のご主人様」
('A`)
川 ゚ -゚)「かいじーんあやつーるきょうふだしょっかー」
('A`)「止めなさい」
川 ゚ -゚)「まさかの素の制止」
('A`)「邪魔な相手は許さんぞ」
川 ゚ -゚)「人呼んで悪魔のショッカー」
('A`)「若い子わからないからこのネタ」
川 ゚ -゚)「僕12歳ですけど」
('A`)「お前はもう別枠だよ」
川 ゚ -゚)「ひとよーんであーくまのしょっかー」
('A`)「ひとよーんであーくまのしょっかー」
- 102 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:26:16 ID:1LjcggkAO
川 ゚ -゚)「ご主人様あれでしょ、ディスクシステムの時代でしょ」
('A`)「否定はしない」
川 ゚ -゚)「僕もうPS2くらいからの世代なんで」
('A`)「殴って良い?」
川 ゚ -゚)「ご主人様が暴力で訴えようとするの初めてですね」
('A`)「謎の怒りにうち震える」
川 ゚ -゚)「腹立たしくて腹立たしくて震えるんですか、寂しくて会いたくて震えたりしないんですか」
('A`)「会いたい相手が居ない」
川 ゚ -゚)「生きてて楽しいですかご主人様」
('A`)「居たとしても会いに行く服がない」
川 ゚ -゚)「ご主人様の人生に何の彩りも感じない上に端から見ていて生きる理由が見当たりません」
('A`)「なぜお前に俺の人生にまでダメ出しをされなければいけないのだろうか」
川 ゚ -゚)「いやマジで」
('A`)「マジであればあるほど泣きたい」
- 103 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:28:34 ID:1LjcggkAO
川 ゚ -゚)「ご主人様、意外と感情豊かじゃないですか」
('A`)「そうかな」
川 ゚ -゚)「常に真顔ですけど」
('A`)「お前もな」
川 ゚ -゚)「僕ら二人を合わせてなんて呼ばれてるか知ってますか」
('A`)「いや」
川 ゚ -゚)「死体とネクロマンサー」
('A`)
川 ゚ -゚)
('A`)「なかなか的確だ」
川 ゚ -゚)「ああ……って納得しちゃうのが悔しいです」
('A`)「怪人操る恐怖だショッカー」
川 ゚ -゚)「邪魔な相手は許さんぞ」
- 104 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:30:16 ID:1LjcggkAO
('A`)「俺がネクロマンサーなのかな」
川 ゚ -゚)「でしょうね、見た目的な意味で」
('A`)「せっかくだから死体操る術でも覚えてみるか」
川 ゚ -゚)「ガチじゃないですか、笑い話にもならなくなりますよ」
('A`)「人を影でこそこそ笑うのならそれなりの覚悟をするべきだ」
川 ゚ -゚)「さすがご主人様、陰険かつ陰湿かつ陰鬱」
('A`)「どれだけ湿っぽいんだ俺は」
川 ゚ -゚)「足元からコケとキノコに侵食されてそうなくらい」
('A`)「なにそれこわい」
川 ゚ -゚)「そんなガチっぽい魔法覚えてどうするんですか、それよりもっと違うの覚えてくださいよ」
('A`)「たとえば?」
川 ゚ -゚)「トイレットペーパーが減らない魔法とか」
('A`)「切実じゃねーか」
- 105 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:32:19 ID:1LjcggkAO
川 ゚ -゚)「それよりショッカーが頭に回って離れないんですけど」
('A`)「奇遇だな、俺もだ」
川 ゚ -゚)「ご主人様」
('A`)「うん」
川 ゚ -゚)「テレビとスーファミ錬成してください」
('A`)
川 ゚ -゚)
('A`)「わかった」
川 ゚ -゚)「やったー」
('A`)「じゃあ錬成するから、それまで一人でショッカー歌ってて」
川 ゚ -゚)「地味にきついこと言いますねご主人様」
('A`)「ひとよーんであーくまのしょっかー」
川 ゚ -゚)「ひとよーんであーくまのしょっかー」
- 106 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:34:28 ID:1LjcggkAO
川 ゚ -゚)「かぜーがふくーみーよしょっかー」
川 ゚ -゚)「あらしーがあれるーちからーよしょっかー」
川 ゚ -゚)「せーかいはせーいふくいーだいなしょっかー」
川 ゚ -゚)「かいじーんあやつーるきょうふだしょっかー」
川 ゚ -゚)「じゃーまなあいてはゆるさんぞー」
川 ゚ -゚)「しゅつげきーそれゆけーかいじんぐーん」
川 ゚ -゚)「ひとよーんであーくまのしょっかー」
川 ゚ -゚)「ひとよーんであーくまのしょっかー」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「一番歌いきっちゃったぞおい……」
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「ご主人様ー、まだー?」
- 107 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:36:14 ID:1LjcggkAO
('A`)「出来たよ」
川 ゚ -゚)「ご主人様のわけのわからないポテンシャル」
('A`)「作れって言ったくせに、ほらテレビとスーファミ」
川 ゚ -゚)「わーいこれで僕も情報通」
('A`)「ここ電波が来てないよ」
川 ゚ -゚)
('A`)「あと地デジじゃない」
川 ゚ -゚)
('A`)「よく考えたらこの塔にコンセント無いわ」
川 ゚ -゚)
('A`)
川 ゚ -゚)「夕飯にしましょう」
('A`)「うん」
- 108 名も無きAAのようです 2011/11/04(金) 21:38:24 ID:1LjcggkAO
川 ゚ -゚)「ご主人様、今度地デジのために工事しましょうよ」
('A`)「やだよめんどくさい」
川 ゚ -゚)「ご主人様ってそう言う人間ですよね」
('A`)「あのテレビどうしようか」
川 ゚ -゚)「知りませんよあんなブラウン管」
('A`)「お前ってひどいよな」
川 ゚ -゚)「もう知りませんよ、ご飯食べたら寝ましょう」
('A`)「うん」
川 ゚ -゚)「結局魔王軍から届いたのなんだったんでしょうね」
('A`)「さあ?」
【四話 おわり】