3 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:02:33.57 ID:Ngn1B6zKO


 この町には、有名な奴等が居る。

 一人は長髪の色男。
 一人は武骨な大男。
 一人は寡黙な優男。

 町の人々は、奴等を纏めてこう呼んだ



     【( ^ω^)百鬼夜行のようです。】

       『第一話 三大遊男』



 さあさ、先ずはその内の一人。
 色男を、百鬼夜行に誘おうか。


5 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:04:08.86 ID:CxwgEbFTO

 からりん、ころりん。
 下駄を鳴らして男が歩き、その後ろをもう一人の男が着いて行く。

 下駄を鳴らすのは生成りの着物に焦茶の羽織、首に管狐を巻く男。
 この町の大地主たる内藤様のお坊っちゃん。

 ふやけた笑顔に肉付きのよろしいその体、
 肌の白さを合わせて見れば、そいつは丸で大福餅。
 おっおっ、と変わった口調で笑ってみると、町人達はどこか心が和んでしまう。


 坊っちゃんの後ろに着いて歩くは、青鼠色の浴衣に白の手拭い頭に巻いて
 生え際の左右にちょこんといらっしゃる角を隠す、痩せた黒髪の男が一人。

 痩せた男の名はどくお、人に成りたいあやかしであり、
 その正体はなんと鬼、鬼は鬼でも畜生と変わらぬ扱いを受ける、餓鬼である。


 一人と二匹か二人と一匹か、数え難きはその組み合わせ。

 坊っちゃんの首に巻き付く管狐が、むきゅうと小さく鳴いていた。


6 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:06:07.76 ID:Ngn1B6zKO

 そんな二人が向かう先は、馴染みの甘味処『可愛屋』。
 名の通り、愛らしい看板娘達で溢れる、町一番の甘味処。

 しかし二人の目的は、看板娘を愛でる事にあらず。


( ^ω^)「腹減ったお」

('A`)「何か食うか?」

( ^ω^)「中華食いてえお」

('A`)「無茶を云うなド阿呆」

( ^ω^)「酢豚食いてえお」

('A`)「共食いかッてんだ」


 勿論、食事が目的でもない。


8 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:08:17.96 ID:CxwgEbFTO

 知人の神社から出て、空きっ腹を抱えながら数分歩けば目的地へと辿り着く。
 決して大きくは無いが小さすぎもせず、客の入りは上々の甘味処『可愛屋』。

 そこを前にして、坊っちゃんとどくおは空き切った腹を撫でていた。


( ^ω^)「取り敢えず」

('A`)「取り敢えず」

( ^ω^)「腹を満たすお」

('A`)「今回ばかりは賛成だ」

( ^ω^)「うおーい、団子と大福と饅頭と餡蜜とわらびもちと水羊羹くれおー」
  _,
ミセ;/Д゚)リ(;'A`)「食い過ぎだっ!!」

( ^ω^)「お?」

('A`)「ン?」

ミセ*/ー゚)リ「う?」


10 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:10:05.13 ID:Ngn1B6zKO
( ^ω^)「誰かと思ったら、みどりちゃんじゃあねえかお」

('A`)「よう、相変わらず切れ味鋭い突っ込みだァな」

ミセ;/ー゚)リ「みどりちゃんは止めて、みせりっす、みせり」

( ^ω^)「おっおっ、取り敢えず茶あとさっき云ったのくれお、みどりちゃん」

('A`)「俺にも茶ァ、あときな粉の団子よろしくな、みどりちゃん」
  _,
ミセ;/Д゚)リ「だーからみどりちゃんは止めーっちゅーに!
      おかみさん、お茶二つと団子二つと大福と饅頭と餡蜜とわらびもちと水羊羹ひとっつ!!」

o川*゚ー゚)o「はいはーい、食い過ぎやっちゅうに」

( ^ω^)「客なんだから別に良いじゃねえかお……」

ミセ*/ー゚)リ「回転率が悪くなるってなもんですよー、内藤のお兄さん」

( ^ω^)「えぇ……客なのに店の回転率を気遣わにゃあならんのかお……」

ミセ*/ー゚)リ「そりゃお兄さん、大地主さまっすから」

('A`)「坊っちゃんだけどな」

ミセ*/ー゚)リ「跡継いでないの?」

('A`)「ないの」

12 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:12:30.51 ID:Ngn1B6zKO

 元気良く、飛び跳ねんばかりの勢いで明るく笑う娘が接客をしていた。
 その娘は坊っちゃんにもどくおにも、物怖じせずに話し掛けては笑ってみせる。

 娘の名は、みせり。
 橙色の着物に前掛けをつけ、襷をかけて袖を避けている娘っ子。

 みせりは固く癖のある髪をしており、手拭いを眼帯の様にして右目を隠していた。
 因みに、無論、この娘も妖怪である。

 長椅子に並んで腰掛けた二人は、忙しなく動き回る娘達を目で追う。
 ふわりと風に乗ってやって来る甘い匂いに顔を緩めて、
 坊っちゃんはきょろきょろ、と何かを探して首を巡らせる。


ミセ*/ー゚)リ「ほい、取り敢えずお茶と団子っすー」

( ^ω^)「お、有り難うおみどりちゃん」

('A`)「おう、悪いなみどりちゃん」

ミセ#/ー゚)リ「そろそろ怒んよお兄さん方」

( ^ω^)「ほら、営業すまいる営業すまいる」

ミセ#/ヮ^)リ「はいにっこり、お代貰いましょうか」

( ^ω^)「まさかの有料すまいる」

14 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:14:13.78 ID:Ngn1B6zKO

ミセ*/ー゚)リ「ところで内藤さんのお兄さん、今日もつん姉さまがお目当てで?」

(;^ω^)「おっ!? お、い、いや、あの、ち、違うおっ?」

ミセ*/ー^)リ「にひひっ、すみに置けないっすねーお兄さん、うりうりこんなろっ」

('A`)

ミセ*/ー゚)リ「どくおのお兄さん、顔が怖いっすよ」

('A`)「地顔だ」

ミセ*/ー゚)リ「良いじゃないっすかー、坊っちゃんのお嫁さん候補っすよ?」

('A`)「まだ早い、つゥか、そう云う話じゃあねェよ」

ミセ*/ー゚)リ「う? んじゃどんなお話?」

('A`)「妖怪集めに来たんだよ、女あさりじゃねェっての」

ミセ*/ー゚)リ「ありゃりゃ? 妖怪とは何でまた?」


16 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:16:05.91 ID:Ngn1B6zKO

('A`)「それがな、」


 色々あって女嫌いのどくおだが、みせりは子供だと思って居るのか
 どくおはどこぞの巫女様と違い、ごく普通に接する。
 可愛いげのある動作で首を傾げるみせりに、どくおが説明をしようと口を開いた。


 その瞬間、ある男が走り出した。

 みせりの小さな肩にどんとぶつかり、店の奥から飛び出した男。
 みせりとどくおが驚いて目を丸くしていると、女の叫び声が響いた。

  _,
o川#゚听)o「食い逃げやあああッ! 誰か捕まえてぇぇぇぇぇッ!!」

(;'A`)「食い逃げッ!? ちょ、おい待てそこのやろ」
  _,,
ミセ#/Д゚)リ「待ぁっちやがれ食い逃げめぇっ!!
      このみせり様から逃げられっと思うなあああああッ!!」

(;'A`)「ぇ、ぇぇぇっ……?」


18 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:18:14.78 ID:Ngn1B6zKO

 両手で抱いていた盆を投げ捨て、みせりが怒鳴りながら走り出した。

 ぽんと捨てられた盆をどくおが受け止めた頃には、
 もう食い逃げ男も、鬼の形相をしたみせりも見えなくなっていて。


(;'A`)「……韋駄天かってェの」
  _,
o川#゚听)o「この可愛屋で食い逃げなんぞするたァ、ふってぇ野郎やでッたく……」

(;'A`)「きゅう姐さん……あれ、良いのか? 追ってッちまったが」

o川*゚ー゚)o「ん? かまへんかまへん、みせりちゃんから逃げれる奴ァ居らん」

(;'A`)「いや……危なくねェのか?」

o川*゚ー゚)o「大丈夫よ、あれ、人間やったもんさ」

(;'A`)「ああ……ちびっこくても妖怪にゃ敵わんか」

o川*゚ー゚)o「そゆ事、それより団子無くなってんで」

('A`)「え?」

((*)^ω^))「うめえ団子うめえおー」

('A`)


21 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:20:21.45 ID:Ngn1B6zKO

('A`)「団子、おかわり」

(メ#)ωメキ)「僕にもおかわりくれおー」

o川*゚ー゚)o「自分らが来たらほんに金になるわぁ」

('A`)「良かったな」

o川*゚ー゚)o「回転率めっちゃ悪なるけどね」

('A`)「店中の甘味持ってくからな、お茶おかわり」


 はいはい、と店主であるきゅうが四本の腕を揺らして、店の奥へと消えて行く。
 妖怪である妖怪が減った町には珍しく、ここの店主はその姿を変えていない。

 その理由は「便利だから」なのだが、
 その事も相まって、坊っちゃんはここを気に入っていた。


22 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:22:14.17 ID:Ngn1B6zKO

 もっとも、一番気に入っている理由は


ξ゚听)ξ「お待たせしました、団子三つと大福と饅頭と餡蜜とわらびもちと水羊羹です」

(*^ω^)「お! つん!」

ξ゚听)ξ「あら、今日は内藤さん、お茶のおかわりどうぞ」

(*^ω^)「有りが」

('A`)「あんがとよ、嬢ちゃん」

ξ゚听)ξ「いえ、ごゆっくりどうぞ」

(*^ω^)っ)A`)「おっおー!」


 この店の一番たる看板娘、綺麗な巻き毛を二つに結った無愛想な娘。

 お坊っちゃんの幼馴染み、つんが居るからなのだが。


23 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:24:12.00 ID:Ngn1B6zKO

ξ゚听)ξ「あら、みせりちゃんは?」

( ^ω^)「みどりちゃんなら食い逃げ追っかけてったおー」

ξ゚听)ξ「ああ、なるほど……危ないから止める様に云ってるんですけれど」

('A`)「みどりちゃんは無鉄砲だからなァ、妖怪とは云え危ねェぜ」

( ^ω^)「お、元気なのはみどりちゃんの良いとこだけど、過ぎるのは良くねえお」

ξ゚听)ξ「……あの、みどりちゃん、って? みせりちゃんの事ですか?」


('A`)「おう、あだ名だあだ名」

ξ゚听)ξ「どうして、みどりちゃん?」

( ^ω^)「みどりちゃんが字を書き始めた頃、まだ字が下手でお」

('A`)「そン時に書いたみせりが、みどりに見えたんだ」

ξ゚听)ξ「ああ……それで、みどりちゃん」


27 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:26:13.56 ID:Ngn1B6zKO

ξ゚听)ξ

( ^ω^)

('A`)

ξ゚听)ξ

ξ゚听)ξ「……なかなか、見えないですよ?」

( ^ω^)「それだけ下手だったんだお」

('A`)「壊滅的だったな」

ξ゚听)ξ「…………あ、ところで、妖怪がどうとか聞こえたんですが」

( ^ω^)「おっ、そうだお!」


 簪を抜いて、地面にみせりと書いてから首を傾げるつん。
 まあ良いかと顔を上げれば、思い出した様に坊っちゃんへと話し掛けた。


29 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:28:23.59 ID:Ngn1B6zKO

 運ばれてきた山盛りの甘味を、次々と口に放り込んでは噛み砕いて飲み下す。
 早食いではあるがしっかりと味を堪能してから、坊っちゃんが茶をすする。

 隣ではどくおがじじむさく茶をすすり、それを軽く見てから、坊っちゃんは口を開いた。


( ^ω^)「妖怪が妖怪でなくなる前に、ちょいとお祭りをしたいんだお」

ξ゚听)ξ「………………あ、なるほど」

( ^ω^)「で、百鬼夜行をしたく思ったんだお」

ξ゚听)ξ「それで、妖怪を集めにここへ?」

( ^ω^)「お、つんは手伝ってくれるかお?」

ξ゚听)ξ「はい、喜んで」

(*^ω^)「お!」


32 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:30:07.74 ID:Ngn1B6zKO

('A`)「悪いが店の子らにも伝えといてくれねェか? 今、皆に云うのは迷惑だろ」

ξ゚听)ξ「あ、かきいれ時ですからね……はい、分かりました、任せて下さい」

('A`)「悪いな、嬢ちゃん」

ξ゚听)ξ「いえ、微力ではありますが、少しでもお力になりたいですから」

('A`)「おう、有り難うな」

( ^ω^)

(´・ω・`)

( ^ω^)「しょぼん、あーん」

((*)´・ω・`))「むきゅー」

( ^ω^)「美味いかおー、ここの甘味は特別美味いからおー」

((*)´>ω<`))「むきゅっ」

( ^ω^)「おっおっ、流石に素人なんぞじゃあ本職には敵わんおー」

('A`)

('A`)「いや、負けねェし」


35 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:32:04.87 ID:Ngn1B6zKO

('A`)「寧ろ素人のが質に気遣うってなァもんでやんすよ坊っちゃん」

( ^ω^)「あーはいはい、この団子の美味いこと美味いこと」

((*)´・ω・`))「むきゅうっ」

('A`)「大量生産と一緒にすんなってェんだよ、見ろよほら、団子焦げてンだろ」

( ^ω^)「もっしゃもっしゃ、うまーだお」

((*)´・ω・`))「むきゅんむきゅんむきゅー」

('A`)「いや俺のが上手く作れるってェの、団子の形崩れてるしよこれ」

o川*゚ー゚)o「おい坊主、面ァ貸さんかい」

('A`)「え?」

o川*゚ー゚)o「店主の前で、ようそんな口利けんなぁ坊主」

('A`)「え?」

o川*^ー^)o「ちょっと裏まで来いやボケこら、吉備団子にしたるわ」

('A`)

('A`)「本当すんやせん」


37 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:34:14.87 ID:Ngn1B6zKO

 運ばれてきた甘味をあらかた食い終わり、坊っちゃんが満たされた腹を撫でる。
 口の端に餡をつけるしょぼんは、坊っちゃんの首に絡まって満足げな顔。

 しょぼんに付いた餡を指で掬って嘗めてから、
 坊っちゃんは、隣にどくおが居ない事にへろりと笑った。


( ^ω^)「あー腹八分目、ご馳走様だお」

ξ゚听)ξ「お粗末様でした、ところで内藤さん」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「可愛屋の妖怪は、皆が百鬼夜行のお手伝いをすると思います」

( ^ω^)「お」

ξ゚听)ξ「次は、どちらの妖怪にお願いに行かれるんですか?」

( ^ω^)「おー……実は、まだ考えてないんだお」


40 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:36:07.55 ID:Ngn1B6zKO

 木の盆を抱いたつんが、坊っちゃんに問い掛ける。
 すると坊っちゃんは、少しばかり困った様に腕を組んで、頭を傾けた。

 取り敢えずとここに来たが、次の事は考えていなかった。
 突然妖怪の元に行くのも気がひけるし、量が多くてどこへ行けば良いかも分からぬ。

 坊っちゃんが眉尻を下げていると、つんが一つ提案した。


ξ゚听)ξ「じゃあ、多くの子分を従える方の所へ行っては?」

( ^ω^)「子分、かお?」

ξ゚听)ξ「はい、この町の三大遊男のお一人」

( ^ω^)「お……お! なるほどだお!」

ξ゚听)ξ「今日も変わらず花魁の元にいらっしゃると思いますよ、お狐様」

( ^ω^)「おっおっ! あの狐は馴染みも深いし、ちょっくら行くお!」

ξ゚听)ξ「行ってらっしゃいまし、内藤さん」

( ^ω^)「行ってくるお、有り難うおつん!」


41 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:38:20.76 ID:Ngn1B6zKO
 代金にと小判を一枚置いて、坊っちゃんが立ち上がる。

 妖怪でなくなった妖怪、しかし可愛い幼馴染みのつんは、頭が良い。
 愛想は余り良くないが、意外と優しいし可愛いところも沢山知ってる。

 坊っちゃんは、この幼馴染みが大好きだった。
 向こうが自分をどう思ってるかは分からんが、幼い頃より好きだった。

 しゃんとした背筋に敬語は、互いの立場の違い故。
 しかし耳に心地よいつんの声は、とても優しく温かく。


(メ)A(#)

( ^ω^)

(;^ω^)「うおべっくらこいた! どくお何だおその顔!?」

(メ)A(#)「きゅう姐さんは、怖ェ」

(;^ω^)「…………あぁ……」

(メ)A(#)「四本腕で丸められた」

(;^ω^)「……きゅう姐さん、馬鹿力だからお……」

o川*^ー^)o「何かおっしゃった?」

(;^ω^)「いへぇっ!? ごごごご馳走様でしたお失礼するお!!」

42 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:40:07.06 ID:Ngn1B6zKO

 ずたぼろのボロ雑巾になったどくおを小脇に抱えて、
 にっこり笑顔の店主から逃げる様に、坊っちゃんは新たな目的地へと走った。

 その背中を見送りながら、可愛屋の店主ははだけた着物の襟元から腕をぬうと出す。
 本来の位置に存在する腕を組み、背中から生える長い腕を曲げ、腰に手を当ててる。

 その顔は年齢を感じさせぬ程に若々しく、ここ数十年、その姿に変化のない愛らしさ。
 鮮やかな黒髪を一つにまとめて、綺麗なお団子にしていた。


o川*゚ー゚)o「んっとにもう、賑やかしい子ぉらやねぇ」

ξ゚听)ξ「どくおさんは、子ってお歳ではないと思いますけどね」

o川*゚ー゚)o「うちからすりゃお稚児よお稚児、可愛いもんや」

ξ゚听)ξ

ξ゚听)ξ「きゅうさん、お歳は……」

o川*゚ー゚)o「捻るで」

ξ゚听)ξ「ごめんなさい」


45 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:42:07.86 ID:Ngn1B6zKO

 可愛屋から走って離れ、十分な距離をあけてから坊っちゃんはどくおを下ろした。
 顔に痣は残ったものの、どくおはしっかりとした足取りで歩き始める。


( ^ω^)「おー……きゅう姐さんはつええお……」

('A`)「怖ェよ姐さん……」

( ^ω^)「そういや、どくおは姐さんも平気なのかお?」

('A`)「女と云うより、馴染みの店の店主だからな」

( ^ω^)「なるほどだお、…………じゃあはいんの姐さんは?」

('A`)「あいつ嫌い」

(;^ω^)「うおい」

('A`)「女ってなァ喧しいしすぐ泣きやがる、面倒ったらありゃしねェ」

(;^ω^)「……つんは喧しくねえお」

('A`)「ぎゃあぎゃあ云わんが口煩ェ」

(;^ω^)「おー……」


47 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:44:18.46 ID:Ngn1B6zKO

('A`)「野郎やがきとつるんでる方が、気楽で良いってなもんだ」

(;^ω^)「……」

('A`)「ンだよ」

(;^ω^)「……何でもねえお、盛岡屋に行くお」

(;'A`)「うげ、女郎屋かよ……」

( ^ω^)「お、お狐どんが居る筈だから乱入するお」

(;'A`)「仕置きされんぞ……」

( ^ω^)「ついでに取り立てるおー」

(;'A`)「……女郎屋かァ…………行きたくねェな……」

( ^ω^)「見世に放り込むお」

(;'A`)「わァったよ……」


48 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:46:10.79 ID:Ngn1B6zKO

 肩を落とすどくおを連れて、坊っちゃんは盛岡屋と呼ばれる場所へ向かった。

 盛岡屋とは、町の中央に存在する女郎屋。
 芸者遊びが主な店ではあるのだが、夜には遊女を買う事も出来る店。

 どくおは、そんな色を売る女で溢れた店が苦手でしょうがなかった。


 からりんころりんと下駄を鳴らして暫く歩けば、道行く人々の毛色が変わり行く。
 先程までのごく普通に道を行く人々とは違い、その目はどこか色を感じる。

 女郎屋の周りに居る人は、大概がそんなもの。

 如何に遊ぶかと色めく人々の隙間を縫って、坊っちゃんとどくおは足を動かす。


 そして、ぴたりと二人の足が止まった。

 目の前には、高く聳える豪奢な楼閣。
 楼閣の足元には、見世に群がる男共。

 それを見て、坊っちゃんは今が夕方である事に気付いた。


49 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:48:03.00 ID:Ngn1B6zKO

 ぽつぽつと灯りをともし始める提灯、灯籠、場違いなネオン。
 夜が近付き、町はざわりと暗い色を持つ。

 どちらかと云えば、坊っちゃんもこういった雰囲気は苦手である。
 眉尻を僅かに下げて軽く俯くと、盛岡屋の暖簾をくぐった。


(´<_` )「いらっしゃいませ…………おや、内藤の坊っちゃん」

( ^ω^)「おっ、流石の弟者、久しぶりだお」

(´<_` )「お久し振りです内藤の坊っちゃん、珍しいですね、女郎屋に来るとは」

( ^ω^)「別に娘っ子を買いに来たんじゃないお、あと集金」

(´<_` )「後で兄者に持って行かせますよ」

( ^ω^)「おっおっ、把握だお」

(´<_` )「ところで、ご用は集金だけですか? そうは思えませんが」

( ^ω^)「お……流石は流石の弟者だお」

(´<_` )(ややこしいなあ)


50 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:50:11.53 ID:Ngn1B6zKO

 盛岡屋の入り口に待機していた黒羽織の男が、静かに頭を下げる。
 しかし相手がよく知る坊っちゃんであると、驚いたように眉をあげた。

 細い目に高い鼻をした男は、流石の弟者。
 盛岡屋で働く下男の一人であり、坊っちゃんやどくおの友人でもある。

 今は立場上敬語だが、普段は彼の兄と共に、崩れた言葉で話してくれる。


( ^ω^)「お狐どんは来てるかお?」

(´<_` )「ええ、重の間に」

( ^ω^)「んじゃちょっくら失礼」

(´<_`;)「待て待て待て塩大福、お得意様の所に乱入するな」

( ^ω^)「そう固い事云うなお、減るもんじゃなし」

(´<_`;)「下手すりゃ客が減るだろう、止めんか塩大福」

( ^ω^)「塩大福は美味いお、んじゃちょっくら失礼して」

(´<_`;)「だあから止めんか!!」


52 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:52:39.94 ID:Ngn1B6zKO

(´<_`;)「おいどくお、お前が何とかしろ! お前のだろう!」

('A`)

('A`)「え?」

(´<_`;)「聞いとけよ!!」

('A`)「あァ悪い、女郎屋が苦手なもんだから」

(´<_`;)「ああもうだから! 坊っちゃん止めろ!」

('A`)「無理」

(´<_`;)「お前なあっ!!」


 がっくりと肩を落として渋い顔をするどくお。
 弟者は坊っちゃんの襟首をがっしと掴んで引き留め、そんなどくおに助けを求める。

 しかしどくおはそんな事に気も遣らず、ただすれ違う女を見ては項垂れるばかり。


53 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:54:10.15 ID:Ngn1B6zKO

 勝手に客が居る間へと行こうとする坊っちゃん。
 坊っちゃんを必死に止める弟者。
 それらを無視するどくお。

 そんな賑やかしい三人へ、僅かに高く女らしい声がかけられた。


|゚ノ ^∀^)「あれあれ? 如何なすったの御三方?」

( ^ω^)「お! れもな!」

|゚ノ ^∀^)「御今晩は、内藤様! 随分と賑やかしいけれど、何で御座いましょ?」

(´<_`;)「いや、坊っちゃんが重の間に行くってきかなくて」

|゚ノ ^∀^)「んん? 行けばよろしいんでなくって?」

(´<_`;)「えぇぇ!?」

|゚ノ ^∀^)「ねぇ、内藤様」

( ^ω^)「おっおっ」

(´<_`;)「良くないだろ……ッて云うか、れもなの姉さん! 客は!?」

|゚ノ ^∀^)「ほったらかしー」


55 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:56:09.24 ID:Ngn1B6zKO

 階段をとんとんと降りて来て、三人に声をかけたのは鮮やかな金髪の妖怪。
 名をれもなと云い、いつでも可愛らしい笑顔を浮かべた『うれっこ』遊女。

 緋色の打ち掛けを引き摺って、
 火の入っていない煙管で、きゃっきゃと坊っちゃんの額をこつんと叩く。

 その笑顔も行動も、丸で童女の様に愛らしいものだから、誰も咎めたりはしない。


(´<_`;)「客放っといちゃ駄目でしょうッ!? 何してらっしゃるんですか!!」

|゚ノ ^∀^)「んだってー、御狐様ったら私じゃなくて私の禿っ子にお熱なんだもの」

(´<_`;)「だ、だからって……」

|゚ノ ^∀^)「良いのよう、御狐様からすれば、私の方が御邪魔虫なんだから」

( ^ω^)「そんなに、れもなの禿っ子は可愛いのかお?」

|゚ノ ^∀^)「そりゃもう、気弱だけど、末は盛岡屋を担う太夫ってね」

( ^ω^)「おっおっ、ちょいと見てみたいお」

|゚ノ ^∀^)「どうぞどうぞ、お部屋へいらっしゃいな!」

(´<_`;)「部屋には客が居るだろうがあああああ!!」


56 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 00:58:07.65 ID:Ngn1B6zKO



 盛岡屋二階、最奥に存在するは『重の間』。

 花魁れもなを主とするその部屋には、一人の禿っ子と一人の男が座していた。


 禿っ子は地味な紺の着物を纏い、二つに結わえた髪に山桃の飾りをつけている。
 その顔はどこか気弱で頼りなく、何時でも申し訳なさそうな困った顔。

 目の前には、にこにこと自分を見る男。
 その対応に困り果てては、困り顔がより一層こゆくなる。


 男の方は、長い髪を余らせながら一つに結い、人の良さそうな笑みを浮かべる。

 白の着物は艶やかな絹の手触り、それを纏める朱の帯。
 どこから出ているのか、帯の下からは豊かな金色がふさふさと揺れていた。

 男は禿っ子の頭を撫でては、己の頭にある、つんと尖った一対の耳を跳ねさせる。
 ふわふわ手触りの良い九本の尾が、禿っ子の頬を優しく撫でた。


57 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:00:28.44 ID:Ngn1B6zKO
⌒*リ´・-・リ「ぉ……おきつねさま、あの……こ、こそばい、です」

爪'ー`)y‐「んー? 何処がこそばゆいのかなぁ?」

⌒*リ´・-・リ「ぁ、あの、あのぅ……頬っぺた、さわさわ、せんで下さい……」

爪'ー`)y‐「頬っぺた撫でられるのは嫌かぁ、んじゃ、こっち」

⌒*リ;´・-・リ「ひゃ、わ、わわ、やめ、やめ、やめて、くださぃ……」

爪'ー`)y‐「可愛いなぁ、りりちゃんはぁ」

⌒*リ;´・-・リ「あ、あぅ……ぅ」


 尾の先で頬を撫でると、りりと呼ばれた禿っ子は眉尻を下げて身を捩る。

 ならば、と尾が撫でたのは細い首筋。

 ひゃあと小さく悲鳴を上げるその姿に、男の整った顔はでれりと緩むばかり。
 りりは締まりのない男の顔に、戸惑いを隠せず俯いてしまわれた。


 自分を可愛がってくれるのは嬉しい事であり、嫌な気分になりはしない。

 しかしこの男は、自分ばかりを構って可愛がり、
 姉女郎であるれもなを、部屋の主を部屋から追い出してしまった。

 嬉しくない訳ではないが、れもなの禿としては、ひどく複雑な心境である。

58 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:02:07.14 ID:Ngn1B6zKO

 姉女郎は、云われるがままに部屋を出ていってしまわれた。

 自分を買いに来た筈の男に、部屋から追い出される。
 それはどんな気分だろうと考えただけで、りりは更に困り顔になる。

 そして男は、そんなりりの困った顔を見れば見るほどに顔を緩めるのだ。


⌒*リ´・-・リ「おきつね、さま……ぁの、」

爪'ー`)y‐「りりちゃーん、名前で呼んで?」

⌒*リ;´・-・リ「へ? ぇ、あ、ぅ?」

爪'ー`)y‐「名前、通り名じゃなくって、名前、ねぇ?」

⌒*リ;´・-・リ「ふ……ふぉっくす、さま……?」

爪*'ー`)y‐「おぉ! きたこれ!!」

⌒*リ;´・-・リ


59 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:04:14.06 ID:Ngn1B6zKO

 幼女が舌足らずに名前を呼んだーだのとはしゃぐ男を見て、りりは肩をかくりと落とす。

 その落とした肩を、男、ふぉっくすがぎゅうと引き寄せた。


⌒*リ;´・-・リ「ぅひゃっ!?」

爪'ー`)y‐「ふはははは、可愛いなぁりりちゃん! 頭から喰ってしまいたいさ!」

⌒*リ;´・-・リ「へひっ!? た、食べ、食べないで、くださぃ……っ」

爪'ー`)y‐「ぅふははははは!! 喰ったら無くなるから喰わないさ!! 今は!!」

⌒*リ;´・-・リ「ぃ、今は!?」


 狐の耳をぴくりと跳ねさせ、九尾を揺らしてりりを離さぬ様にと抱え込む。

 冗談かも本気かも分からぬ顔で言われてしまえば、りりはさっと顔を青くする。
 もちろん冗談ではあるのだが、その反応見たさに、ふぉっくすは意地悪く笑った。


61 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:06:05.02 ID:Ngn1B6zKO

 妖怪を保つ妖怪、狐共の頂点に君臨するは麗しき黄金色。
 形良く整った顔立ちに白い肌、身は細いが高い背。

 色男と呼ぶが相応しいその外見と、狐共を統べるその力。
 町の女に部下共が、憧れ羨むその男。


 名は『ふぉっくす』、白面金毛九尾の狐。
 由緒正しく、気高き狐の親玉である。


 が、


爪*'ー`)y‐「りぃりちゃぁんっ、可愛いなぁ可愛いなぁ可愛いなぁふははははははぁ」

⌒*リ;´・-・リ「ぅや、わ、あわわわわわわ……」



 狐の親玉は、幼女趣味らしい。


63 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:08:02.75 ID:Ngn1B6zKO

 もっとも、本人の力は強くとも今は妖怪を亡くした妖怪ばかり。
 部下の大半が人間に成るか、ただの狐に戻ってしまっている。

 数年前までは狸の群と激しくやり合い争って、妖怪の二角とまで呼ばれていた。

 が、今は見る影もなく。
 現在はただの幼女趣味。


 九本の尾っぽが泣いているぞと云われたかは知らんが、その変人振りは凄まじく
 今となっては耳と尾を生やしただけの、顔が良いだけの色男。

 まあ、でれでれと緩んでいても色男は色男。
 狸と争わなくなってからも、取り巻きはなかなか減らぬもの。


爪*'ー`)y‐「あぁでも我慢出来ないなぁあああ頂きまぁあああああす」

⌒*リ;´・-・リ「きゃっ、きゃー! きゃーっ!? きゃぁあーっ!!?」

爪*'ー`)y‐「ぅふははははははははははぁ!!」


 何故、取り巻きが減らないのだろうか。


64 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:10:15.63 ID:Ngn1B6zKO

 花が描かれた行灯からは、ぼんやりとした灯りが洩れては部屋を照らす。

 天蓋付きの寝台に姿見、打ち掛けが投げ付けられた化粧箪笥、帯を掛けられた琴。
 可愛らしい人形に豪奢な簪、艶やかな帯に打ち掛け、派手な襦袢。

 散らかり放題の重の間は薄暗く、組み敷かれた童女の鎖骨を仄かな灯りが照らしていた。


 部屋の主が脱ぎ散らかした着物が、皺だらけになっている寝台。
 そこには、一人の童女と一人の男。

 抱え上げられ押し倒されて、童女は目を真ん丸にして男を見上げていた。

 にこにこ、微笑む男。
 その頭上では、狐の耳が童女の全てを聞く為にと向けられている。


 男の指が幼い頬を撫で、唇が細い首を這う。
 ゆっくりとほどかれて行く帯にも、童女は何も出来ずに目を丸める。

 薄い唇を割って、赤く濡れた舌が細い首筋を嘗める。
 未発達な身をぴくりと震わせ、童女はか細い声を上げた。

 徐々に頬へと朱が挿す様を見つめながら、男は嬉しげに顔を歪めた。

 いただきます、と再び小さく囁いて。


65 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:12:34.69 ID:Ngn1B6zKO

|゚ノ ^∀^)「御免なさいな御狐様、その子は未だ御客が取れないのよう」

爪; )y‐「わっふうッ!?」

|゚ノ ^∀^)「それ以上しちゃったら御仕置きよう?」

爪;'ー`)y‐「あ……あははぁ、お帰り……れもな」

|゚ノ ^∀^)「て云うか」

爪;'ー`)y‐「え?」

|゚ノ ^∀^)「それ以上りりに手ぇ出したら、尾っぽの根本に突っ込む」

爪;'ー`)y‐「ごめぇんねっ」


 りりを組み敷いていたふぉっくすのすぐ後ろに立っていたのは、部屋の主。

 ばってん形の髪飾りを付けたれもなは、愛らしくにこやかに笑って、
 ふぉっくすの肩をがっしと掴み、りりから引き剥がした。

 豊かな尾の一本をぐわしと握り締めて、千切らんばかりに力を込める。

 ごめんごめんと尾から伝わる痛みにふぉっくすは涙を浮かべ、
 りりの乱れかけた着物を正してやり、れもなに差し出した。


66 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:14:07.66 ID:Ngn1B6zKO

|゚ノ ^∀^)「りりちゃん大丈夫? 痛くはない?」

⌒*リ;´・-・リ「は……はぃ……」

爪;'ー`)y‐「痛い痛い痛いごめんってばぁれもな」

|゚ノ ^∀^)「御黙りやんせ」

爪;'ー`)y‐「はい」

|゚ノ ^∀^)「大体、禿っ子に手を出すなんて何を考えてらっしゃるの?」

爪'ー`)y‐「え、ナニを」

|゚ノ ^∀^)「はい?」

爪'ー`)y‐「いえ」

|゚ノ ^∀^)「手を出すのは、この子が見世に立てる様になってからになさいましな」

爪'ー`)y‐「えぇー、待ってたら僕じい様になっちゃうよぉ?」

|゚ノ ^∀^)「ほざけ九尾」

爪'ー`)y‐「ごめんなさい」


70 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:16:21.95 ID:Ngn1B6zKO

|゚ノ ^∀^)「次にやったら、どうなるか分かってらして?」

爪'ー`)y‐「はい」

|゚ノ ^∀^)「もしやったら、血も精力も吸い尽くすわよ」

爪'ー`)y‐「はい」

|゚ノ ^∀^)「じゃありりちゃんに一言」

爪'ー`)y‐「愛してる」

|゚ノ ^∀^)「ちょっと誰か流石の子を呼んで下さいましなぁ、仕置きよーう」

爪'ー`)y‐「ごめんねぇりりちゃん、怖かったよねぇ」

⌒*リ;´・-・リ

|゚ノ ^∀^)「全くもう、狐の親分さんなんだからもうちょいとしゃっきりなさってよう」

爪'ー`)y‐「良いじゃなぁいの、僕らしか居ないんだしぃ」

(;'A`)( ^ω^)

爪'ー`)y‐


爪'ー`)y‐「え?」

71 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:18:15.37 ID:Ngn1B6zKO

 よしよし、とりりを抱き締めて頭を撫でるれもな。
 寝台に寝転がり、冗談めかして笑うふぉっくす。

 開け放たれた障子の向こう側からそれを見つめる、二人の男。

 幼い頃から遊び相手になっていた坊っちゃんはともかく、
 妖しく勇ましき妖狐の姿ばかりを見てきたどくお。
 二人は、最早憐れとさえも云えるふぉっくすの姿に、哀しそうな顔をしていた。


( ^ω^)「…………」

(;'A`)「…………」

爪'ー`)y‐

爪'ー`)y‐「え?」

( ^ω^)「……久しぶりだお、お狐どん」

(;'A`)「……久しぶり、狐のおやっさん」

爪'ー`)y‐

爪'ー`)y‐「え、何で?」


73 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:20:09.86 ID:Ngn1B6zKO

|゚ノ ^∀^)「何が?」

爪'ー`)y‐「いや、何で坊っちゃんと鬼がここに居るの?」

|゚ノ ^∀^)「連れてきたから」

爪'ー`)y‐「え?」

( ^ω^)「…………どくお、あれがかのお狐どんだお」

(;'A`)「…………」

( ^ω^)「幻滅したかお?」

(;'A`)「おゥよ」

爪'ー`)y‐「え、ちょ、待って? え? 何これ? ちょっと、え?」

( ^ω^)「……一応、あの姿見られるのは嫌なのかお……」

爪'ー`)y‐「そりゃそうじゃなぁい? だってほら、面子ってもんがね?」

(;'A`)「…………」

爪'ー`)y‐「そんな顔しないでくれない?」


74 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:22:11.11 ID:Ngn1B6zKO

|゚ノ ^∀^)「で、坊っちゃんほら、御用件を云わなきゃ」

( ^ω^)「百鬼夜行、手伝えお」

爪'ー`)y‐「はい? 何で?」

( ^ω^)「手伝わないと、暴露すんお」

爪'ー`)y‐「あ、手伝います、そいつぁもう手伝います、で、何で?」

(;'A`)「……」

爪'ー`)y‐「ねぇちょっと、鬼子ちょっと教えて頂戴よ」


゙爪'ー`)y‐  "(('A`;)


爪'ー`)y‐「うわぁ何これ、哀しい」


76 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:24:14.76 ID:Ngn1B6zKO

( ^ω^)「れもなの馴染みだお? 何か云ってやらんのかお?」

|゚ノ ^∀^)「馴染みだけど間夫じゃないものう」

( ^ω^)「お、ところでれもなは手を貸してくれるかお?」

|゚ノ ^∀^)「百鬼夜行? 良いわよう、りりと一緒に参加するわ。私も思い出作りしたいもの」

( ^ω^)「おっおっ、有り難うお」


爪'ー`)y‐

爪'ー`)y‐「あれ、僕だけおいてけぼり?」

( ^ω^)「黙ってろお変態」

爪'ー`)y‐「うわぁ、傷付くぅ」

( ^ω^)「あーはいはい」


78 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:26:21.54 ID:Ngn1B6zKO

 ふぉっくすの取り巻きが減らない理由は、その趣味を隠しているかららしい。
 まあそんな事はどうでも良くて。

 袖に仕舞った腕を組み、坊っちゃんは戸惑うふぉっくすに吐き捨てる。

 この狐の性癖は分かっちゃ居たが、目の当たりにすると余り気分は良くない。
 昔から良くしてくれた相手ではあるが、こうなってしまえばどうしようもない。

 狐から逃げる様に、自分の後ろへと隠れるどくお。
 それに気付いた坊っちゃんは、ひっそりと溜め息を吐いた。


( ^ω^)「……ま、弟者とも約束したし……もう良いかお」

(;'A`)「お……おう……」

爪'ー`)y‐「…………ま、同族に見られなかっただけ良いかぁ」

( ^ω^)「え?」

爪'ー`)y‐「え?」

(´・ω・`)「むきゅ?」

爪'ー`)y‐


82 ◆XCE/Wako2nqi 2009/08/13(木) 01:28:09.48 ID:Ngn1B6zKO

 坊っちゃんの襟巻きと化していた管狐が、ひょこと顔を上げた。

 つぶらな目がふぉっくすをとらえ、しっかりと目が合い
 がくん、とふぉっくすが崩れ落ちる。


 嘘だぁぁ等と叫んでは、禿っ子に抱き着く狐の親玉。

 その情けない姿をぼんやりと眺めて、
 坊っちゃんとどくおは、れもなへと軽く手を振って座敷を後にした。


 二人と一匹がのんびり自宅に戻り、気高い筈の狐はお稚児にすがって声を上げる。

 外はもう真っ暗で、灯りをともした提灯、灯籠、場違いなネオン。
 夜に染まった町の中は、ひどくあやしい色でざわめくばかり。

 妖怪を亡くした妖怪が、ざわりざわりと跋扈する夜は、まだまだこれからである。



『現在 九匹』

おわり。

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