3 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:05:10.27 ID:pedYtl+4O

 からりん ころりん。
 かんこん かんこん。

 まるっこい下駄を鳴らして、娘っ子が石の畳を蹴っ飛ばす。
 巻いたままの前掛けに、かけたままの襷。

 娘っ子は二つに結った柔らかな巻き毛を揺らして、ぼんやりと空を仰いだ。


 ああ、夏も終わったか。

 道端に転がる蝉の死骸をうっかり踏み砕き、びくりとして足元を見る。
 そして溜め息を一つか二つ転がして、止めていた足を動かす。

 これからこの手は、あかぎれだらけになるのだろうなあ。
 もう、ひび割れ始めて痛みがある。


 それでも、たった一人の家族の為に、仕事をせねばならない。

 仕事自体は嫌じゃあない。
 店主も優しく仕事仲間とも仲が良い。


 けれどこの手は、痛々しく傷付くもの。


5 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:07:10.69 ID:pedYtl+4O

 水に触れる仕事はつらいなあ。

 娘は小さく呟いて、冷える指先を擦り合わせる。
 かさかさ、とおおよそ年頃の娘らしからぬ音がした。

 今度、狸の診療所に薬を貰いに行ってみようかな。
 いやいやけれど、それはおぜぜが勿体無い。


 はあ、と娘は再び溜め息を吐く。


 早いとこ、お使いを終えて仕事に戻らねば。



     【( ^ω^)百鬼夜行のようです。】

       『第三話 朽縄』



 くちなわの娘 しゃらりからから 尾を鳴らす。



6 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:09:03.39 ID:pedYtl+4O

ξ゚听)ξ「…………ふぅ、寒くなってきましたね」

 髪を二つに結った娘は、桶にたっぷりの豆腐を崩さぬ様にとそろそろ歩いていた。

 下駄で石畳をかりかりと引っ掻き、しゃんと背中を真っ直ぐ伸ばす娘。
 胸には豆腐と水で満たされた桶、水面には娘の明るい髪の色が映る。

 二つに結わえられた髪は、一寸も崩れる事なく、形の良い巻き髪を保つ。
 整った顔立ちに白い肌、細っこい体を着物で隠すが、
 持ち上げられた袖から伸びる腕は、崩れそうな程に細く白磁の様に白い。


 しかしその腕には、青い刺青がこっそりと覗く。

 背から肩へ肩から腕へと伸びるは青の蛇。
 尾の端が姿を隠しきれず、娘の腕を這っていた。


 娘は態々それを隠す事も、見せびらかす風でもなく
 ただそこにある物をそのままにする様に、冷たくなり始めた風にさらしていた。


7 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:11:12.45 ID:pedYtl+4O

ξ゚听)ξ「それにしても……どうしてお豆腐……」


 仕事の合間に、店主にお使いを頼まれた娘子、つん。
 そのお使いの内容は、豆腐を買ってこいと云う物。

 どうして仕事中に豆腐なのだと首を傾げるも、
 つんは大人しく、豆腐小僧の元へと豆腐を買いに足を運んだ。


ξ゚听)ξ「まさかお夕飯……は、無い……か」
  _,
ξ;--)ξ=3


 何でも良いやと小さく溢し、眉を寄せて盛大に溜め息を吐いた。
 別に構いやしないのだが、特別手当てでもつかないかなあ。

 項垂れながらそんな事を思っていると、桶を抱く腕と下げた額に何かが当たった。

 固い様で柔らかく、上等な手触りの布地の感触。


8 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:13:04.77 ID:pedYtl+4O

ξ;゚听)ξ「はっ……す、すみません! 余所見を!」

( ^ω^)「お」

ξ;゚听)ξ「…………あら」

( ^ω^)「余所見は良くないお、つん」

ξ;゚听)ξ「は、はい」

( ^ω^)「当たったのが僕だから良かったけど、
      他のもんに当たると、怪我をしてたかも知れんお」

ξ;--)ξ「……申し訳御座いません、内藤さん」

( ^ω^)「おっおっ、怪我が無くて良かったお」

ξ;--)ξ「はい……」

( ^ω^)「ところで、今は仕事中じゃないのかお?」

ξ゚听)ξ「あ、きゅうさんにお使いをお願いされまして」

( ^ω^)「…………豆腐?」

ξ゚听)ξ「豆腐」


9 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:15:05.66 ID:pedYtl+4O

( ^ω^)

ξ゚听)ξ

( ^ω^)「これから店に戻るのかお?」

ξ゚听)ξ「はい」

( ^ω^)「じゃあ、ついでだから一緒に行くお」

ξ゚听)ξ「はい」


 つんがぶつかったのは、内藤の坊っちゃん。
 その柔らかな腹にだった。

 顔を上げれば、そこには人の良さそうなふやけた笑顔。

 見知った顔である事に安堵はしたが、珍しく坊っちゃんに叱られてしまい
 かくんと肩を落として、つんは申し訳なさそうに頭を垂れた。

 豆腐の入った桶に、しょんぼりした己の顔が映っていた。


 つんと坊っちゃんは並んで歩き、ゆっくりした歩みのつんに、坊っちゃんが合わせる。

 豆腐を僕が持とうかと一度提案したが、つんはそれをやんわり断った。


10 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:17:04.89 ID:pedYtl+4O

( ^ω^)「つんはいつも忙しそうだお」

ξ゚听)ξ「ええ、まあ暇ではありません」

( ^ω^)「暇でごめんなさい」

ξ゚听)ξ「内藤さんは、どうしてこの辺りへ?」

( ^ω^)「お」

ξ゚听)ξ「お一人は珍しいですよね」

( ^ω^)「おー、鎌鼬と契約して、暇だったからぶらぶらしてたんだお」

ξ゚听)ξ

( ^ω^)「暇でごめんなさい」

ξ゚听)ξ「穀潰し」

( ^ω^)「本当にごめんなさい」

ξ゚听)ξ「肥満体」

( ^ω^)「本当にごめんなさい」


11 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:19:07.18 ID:pedYtl+4O

ξ゚听)ξ「働いてはどうですか」

( ^ω^)「本当にごめんなさい」

ξ゚听)ξ

( ^ω^)

ξ゚听)ξ「穀潰し」

( ^ω^)「本当にごめんなさい」


 つんは、こう云う時は容赦が無い。


ξ゚听)ξ「は」

( ^ω^)「お?」

ξ><)ξ゚.・。「っくしゅん!」

( ^ω^)「おっと」


13 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:21:09.78 ID:pedYtl+4O

 一つ息を置いて、可愛らしいくしゃみをするつん。

 坊っちゃんはその顔へ羽織の袖で軽く当て、桶に唾が飛ぶのを妨害する。

 ぐす、と鼻を啜り、つんが恥ずかしそうに仏頂面を朱に染めた。

  _,
ξ*゚听)ξ「…………すみません」

( ^ω^)「おっおっ、寒くなってきたお」
  _,
ξ*゚听)ξ「……そうですね」

( ^ω^)「風邪、引かないように気を付けるお、つん」
  _,
ξ*゚听)ξ「…………はい」

( ^ω^)「ほい、これ着とくお」
  _,
ξ*゚听)ξ「は、はい」


 坊っちゃんが肩に羽織を掛けてくれても、
 どうにも、恥が勝って素直に礼を云えないつんであった。


14 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:23:11.38 ID:pedYtl+4O

( ^ω^)「つんの所は、二人家族だったかお」

ξ゚听)ξ「はい、妹と二人です」

( ^ω^)「でれちゃんだったかお?」

ξ゚听)ξ「はい」

( ^ω^)「彼女は、家に籠ったままなのかお?」

ξ゚听)ξ「はい、なかなか、人に化けられなくて」

( ^ω^)「おー……脚が蛇のままなのかお」

ξ゚听)ξ「はい、ですので仕事も見付からなくて」

( ^ω^)「まだ子供だからしょうがないお、七つだったかお?」

ξ゚听)ξ「はい、この年に七つになりました」

( ^ω^)「歳の離れた妹は可愛いお?」

ξ゚听)ξ「はい、ですので私が稼いで、お腹が減る事が無いように」

( ^ω^)「つんは良い子だお」
  _,
ξ*゚听)ξ


15 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:25:07.67 ID:pedYtl+4O

( ^ω^)「まあ、確かに蛇のままじゃ仕事は難しいお」

ξ゚听)ξ「一度は奉公に出た事はあるんですが」

( ^ω^)「お」

ξ゚听)ξ「尾のさばき方が下手で、散々物を壊したらしく、送り返されました」

(;´ω`)

ξ゚听)ξ「ですので、せめてもう少し動ける様になるまでは、私が養います」

( ^ω^)「お……じゃあ店賃は今度にしとくお」

ξ゚听)ξ「お幾らですか?」

( ^ω^)「云わんお」

ξ゚听)ξ「そうは行きません、ただでさえ割り引いて貰っていますのに」


16 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:27:11.50 ID:pedYtl+4O

( ^ω^)「良いんだお気にしなくて」

ξ゚听)ξ「良くありません、気にします」

( ^ω^)「良いんだお」

ξ゚听)ξ「良くないです」

( ^ω^)「良いんだお」

ξ゚听)ξ「良くない穀潰し」

( ^ω^)「本当にごめんなさい」

ξ゚听)ξ「お幾らですか?」

( ^ω^)「云わんお」

ξ゚听)ξ「言いなさい」

( ^ω^)「断るお」

ξ゚听)ξ「言いなさい穀潰し」

( ^ω^)「本当にごめんなさい」


17 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:29:20.14 ID:pedYtl+4O

ξ゚听)ξ「けれど、これ以上は」

( ^ω^)「じゃあ」

ξ゚听)ξ?

( ^ω^)「でれちゃんが働ける様になった、少しずつお願いするお」

ξ゚听)ξ「…………」

( ^ω^)「お」

ξ゚听)ξ「……分かりました」

( ^ω^)「おっおっ」

ξ゚听)ξ「でも、それじゃあ内藤さんの所は大丈夫なんですか?」

( ^ω^)「他からむしり取るお」

ξ゚听)ξ(鬼だ)

( ^ω^)「おっおー」

ξ゚听)ξ(鬼大福)


19 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:31:10.52 ID:pedYtl+4O

( ^ω^)「まあ」

ξ゚听)ξ?

( ^ω^)「籠ってばっかりじゃ、でれちゃんにも良くないお」

ξ゚听)ξ「そう、ですね……尾が嫌みたいで、外にも出なくて」

( ^ω^)「おー……人間に囲まれて産まれ育ったから、かお」

ξ゚听)ξ「恐らくは、私は私の尾を、誇りに思っているのですけど」

( ^ω^)「若い世代は、そんなもんなのかも知れないお……」

ξ゚听)ξ「……他に、人の形をしていない人は、なかなか居ませんからね」

( ^ω^)「お……化けていない妖怪の中なら、うまく行くのかお……」

ξ゚听)ξ「かも、知れませんけど……ね」

( ^ω^)「お……」


21 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:33:11.13 ID:pedYtl+4O

( ^ω^)「じゃあ、僕が仕事先を探してみるお」

ξ゚听)ξ「え、」

( ^ω^)「僕は百鬼夜行の為に、色んな妖怪の所に行くお
      だから、もしかしたら良い所が見付かるかも知れんお」

ξ゚听)ξ「で、でも、申し訳無いです」

( ^ω^)「何でだお?」

ξ゚听)ξ「だって、ご迷惑になるのでは」

( ^ω^)「ついでだと思えば、僕は何も苦労しないお」

ξ゚听)ξ「で、でも、」

( ^ω^)「おー?」

ξ゚听)ξ「…………お願いしても、よろしいでしょうか」

( ^ω^)「おっおー」


22 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:35:08.94 ID:pedYtl+4O

 こう云うのは、どうにも気が引ける物。
 しかし断るのもお願いするのも、角が立ちかねない事柄で。

 つんは散々悩み困ってから、僅かに胃を痛めながらお願いをした。

 坊っちゃんはそれを軽い調子で了承し、つんの悩みも困惑も気付きやしない。
 参った年上だと肩を落として、つんは桶をぎゅうと抱いた。


( ^ω^)「そう云えば、つんは蛇の家系だったお?」

ξ゚听)ξ「はい、朽縄の家系です、私達は余り身分は高くありませんが」

( ^ω^)「そうなのかお?」

ξ゚听)ξ「私達は、ただの青大将ですから」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「朽縄の最高位は白蛇です、青大将の突然変異」

( ^ω^)「おー……蛇の家系も色々あるのかお……」

ξ゚听)ξ「ええ、意外と」


24 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:37:10.50 ID:pedYtl+4O

( ^ω^)「白蛇さんは今も居るのかお?」

ξ゚听)ξ「居るんじゃないでしょうか、見た事はありませんが」

( ^ω^)「おー……つんは肌が白いから、白蛇だと思ってたお」

ξ゚听)ξ「いえ、私は青ですよ、ほら」


 ほら、と己の脚を蛇の尾に戻し、つんは人の上半身を持ち上げたまま
 地面をずるずると尾をくねらせて這ってみせる。

 それを見た坊っちゃんは、おおと小さく声をあげて、まじまじとそれを見詰めた。


 青みがかった灰銀色の、ぬらぬらと光る鱗。
 黒い鎖の模様が、じゃらりと音を立てる様な気すらした。

 朽縄の妖怪たるつんは、元々は人の姿をしていない。
 本来ならば、蟒蛇そのものである。

 しかしそれでは町では生きにくい為に、人の姿に化けている。

 それを知ってはいたが、なかなか本来の姿を見る機会は少なく。
 坊っちゃんは興味津々と云った具合に、
 くねる尾を押したりつついたりして見ていた。


26 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:39:11.59 ID:pedYtl+4O

 朽縄を、蛇を嫌う者は少なくはない。

 坊っちゃんも、飼って愛でる程には好いては居ない。

 けれどこう見れば、蛇と云うのは美しい。


 お天道様に照らされて、ぬらりきらきら鱗が光る。
 青を乗せた灰銀色は、お世辞ではなく美しい色合いをしている。
 触れてみればひんやりと、けれども確かに鼓動を感じる肉の中。


 それに何より、愛しの娘が蛇ならば
 蛇が嫌だのと云った気持ちは、何処かへ行ってしまう物。

 坊っちゃんは何処か嬉しそうに、つんの尾を、撫でていた。
 しかし撫でられているつんは、恥ずかしそうに眉を寄せていて。

  _,,
ξ*゚听)ξ「…………止めて下さい」

( ^ω^)「お?」
  _,,
ξ*゚听)ξ「どこを触ってるんですか、止めて下さい」

(;^ω^)「お、お?」


27 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:41:13.87 ID:pedYtl+4O
  _,,
ξ*゚听)ξ「いい加減にして下さい」

(;^ω^)「ご……ごめん、お?」
  _,,
ξ*゚听)ξ「……」

(;^ω^)???


 尾を撫で回していた当人は気付いて居ないが、この尾はつんの下半身。

 坊っちゃんが撫でたりつついたりしていた所は、つんの臀部にあたる所だった。


 それに気付かず何度も撫でては愛でる坊っちゃん。
 それを理解して居るので暫くは我慢したが、耐えられずにつんは眉を寄せる。

 百歩か千歩譲って撫でるのは構いやしないが、往来で何をするのだ
 と、噛み付こうとして止めた辺りは、つんもある程度は大人と云う事か。

  _,,
ξ*゚听)ξ「……」

(;^ω^)「……」
  _,,
ξ*゚听)ξ「い、行きましょう、早く」

(;^ω^)「お、は、把握だお」

28 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:43:23.53 ID:pedYtl+4O

ξ゚听)ξ「そう云えば内藤さん」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「落ち込んでいたの、治ったんですね」

( ^ω^)「お」

ξ゚听)ξ「鎌鼬の件で、ぐんにゃりなさっておいででしたでしょう」

( ^ω^)「お……気付いてたのかお……?」

ξ゚听)ξ「当たり前でしょう、ちゃんと見てますもの」

( ^ω^)

(*^ω^)

ξ゚听)ξ「何かあったら、私に仰有って下さっても構わないんですよ」

(*^ω^)「あ、ありがとうお……」


30 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:45:05.55 ID:pedYtl+4O

ξ゚听)ξ「百鬼夜行に参加をするとは云え、部外者ですが」

(*^ω^)「でも、その方が客観的に見られるから良いかも知れないお?」

ξ゚听)ξ「ええ、ですので、何かに悩んでいらっしゃいましたら、どうぞ
      お話くらいは、幾らでも聞きますからね」

(*^ω^)

ξ゚听)ξ「それに」

(*^ω^)?

ξ゚听)ξ「幼馴染みなんですから、こう云う時は甘えて下さいな」

(* ω )そ


 坊っちゃんがきょろきょろと辺りを見回すと、
 どうやら細い道に入ったからか、人気が全く無いに等しかった。

 ああ、だからか。
 つんは、二人になるとひどく優しい。

 ただでさえ緩んでいた顔を更にぐにゃぐにゃでろでろ緩ませて
 聞いている方が恥ずかしい、と云った具合に、俯いてしまわれた。


31 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:47:10.71 ID:pedYtl+4O

 嗚呼やっぱりつんは優しいなあ、可愛いなあ。
 幼い頃に比べれば仏頂面に磨きがかかったが、この優しさは変わらない。

 僕の愛しい娘っ子。


ξ゚听)ξ「内藤さん?」

(*^ω^)「お」

ξ゚听)ξ「先刻は、ごめんなさいましね」

(*^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「穀潰しなんて、失礼な事ばかり云ってしまって」

(*^ω^)「き、気にしてないお!」

ξ;´兪)ξ「人の目があると、その、ああ云った事を、その」

(*^ω^)「気にするなおつん、かいぐりかいぐり」

ξ*´兪)ξ「ぅえあ……頭を撫でないで下さい、子供じゃありません……」

(*^ω^)「おー、つんは可愛いおー」

ξ*´兪)ξ「や、ややややぅえゃ止めてくださひ……」


33 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:49:06.96 ID:pedYtl+4O

(*^ω^)「おっおー、かーいいおー」

ξ*´兪)ξ「は、恥ずかしいですから、内藤さん」

(*^ω^)「恥ずかしがってるつんも可愛いおー」

ξ*´兪)ξ「ぁ、あべし……」

(*^ω^)「おー、よしよしぐりぐり」

ξ*´兪)ξ「ゆげぇ……も、もう、恥ずかしいから止めてくださひ……」

(*^ω^)「よしよし嫌かお?」

ξ*´兪)ξ「嬉しいです」

(*^ω^)「んじゃよしよし」

ξ*´兪)ξ「ぶ、ぶるすこふぁー……」

o川*゚ー゚)o「何をいちゃこらしとんねんな自分ら」

ξ; )ξ「うぇあッ!? ななな内藤さん鬱陶しいから止めて下さい死ねッ!!」

     て
(;´ω`)そ


35 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:51:12.35 ID:pedYtl+4O

 二人でじゃれあっていると、いつの間にか細道を抜けていて。

 つんの仕事先である可愛屋の前を、するりと通り過ぎようとしている所を
 可愛屋店主のきゅうに、突っ込みを交えて呼び止められた。


o川*゚ー゚)o「……邪魔して申し訳無いけど、その子におぜぜ払とる身分やからね」

ξ*゚听)ξ「すみませんお使いから戻りました仕事に戻りまひゅッ!!」

o川*゚ー゚)o「ああ、うん、ごめんね」

(;´ω`)

o川*゚ー゚)o「主に坊っちゃん、ごめんね」

(;´ω`)

(;´ω`)「せちがれえ世の中だお……」

o川*゚ー゚)o「喧しいわ」


37 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:53:13.44 ID:pedYtl+4O

 短い逢い引きを終えて、坊っちゃんは店の奥へと消えて行くつんの背中を見つめる。

 そして懐から小さな袋を取り出して、きゅうの背中の腕にそれを渡した。


o川*゚ー゚)o「これは?」

( ^ω^)「つんに渡してほしいお」

o川*゚ー゚)o「これってー……あ、狸の軟膏」

( ^ω^)「食い物屋で使ってても問題無いらしいお」

o川*゚ー゚)o「つんちゃん、怪我しとった?」

( ^ω^)「手、荒れやすいからお」

o川*゚ー゚)o「ん、なるほど」

o川*゚ー゚)o

o川*゚ー゚)o(ええダンナしとるなあ)


38 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:55:03.87 ID:pedYtl+4O

( ^ω^)「じゃ、僕はこれで失礼するおー」

o川*゚ー゚)o「何も食べてかへんの?」

( ^ω^)「何も言わずに出たから、そろそろどくおに怒られるお」

o川*゚ー゚)o「あらま、ほんならまたねェ」

( ^ω^)「またおー」


 下駄をからりんころりん、生成りの着物に包まれた背中を少し曲げて
 坊っちゃんは肌寒いなと呟き、のんびりのんびりお屋敷へと戻って行った。

 鎌鼬の件で落ち込んでいたが、つんと少し話しただけで気分が浮かぶ。

 やっぱりつんは可愛いなあ。
 と、思い返しては顔を緩ませて笑みを濃くする。


 ああ、お腹が空いた。
 戻ったら、どくおに気味悪がられながら夕飯としよう。


40 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/18(金) 09:57:29.53 ID:pedYtl+4O




('A`)「で、風邪を引いたと」

(;´ω`)「お゙ー……」

('A`)「羽織はどうした羽織は、すぐ風邪引くから着てンだぞアレ」

(;´ω`)「……わ、忘れでぎだお゙……」

('A`)「阿呆、おら林檎食え阿呆」

(;´ω`)「ずり゙おろじでぐれ゙お……まるごどは無茶だお……」

('A`)「黙って食え、ッたく、しょぼんも巻かずに出るからだ」

(´・ω・`)「むきゅー?」

('A`)「阿呆が移るからあっちに行ってなさい」

(;´ω`)「ごめんお゙ー……僕が悪かっだお゙ー…………べっくしょん!! まもの」



 『変化無し』

 おしまい。

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