2 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:28:19.26 ID:oDiYlaDsO

 あやかしと人間が、手を取り合って生きている。

 あやかしと人間が、友人関係と云う事も珍しい事ではない。



     【( ^ω^)百鬼夜行のようです。】

       『第四話 狗神様の細道 前』



 けれども町に生きるあやかしも、中には人から距離を置く者も居る。


5 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:30:07.20 ID:oDiYlaDsO

 涼しくなってきた秋の空気に、男が一人、熱い茶を飲んで息を吐く。

 やっと風邪も治った、と、坊っちゃんは細い目を更に細くして笑った。
 その肩にかけられているのは、いつもの焦げ茶の羽織ではなく、赤い半纏。

 熱も引いたし咳も鼻水もすっかり良くなった。

 これでいつも通りだと、坊っちゃんは首にふかふかを巻いてほっとする。


 風邪を引くとどくおが怖いからなあ。

 しょぼんは分かりやすく心配をしてくれるが、どくおは叱る事が先に来る。


 まあ、親代わりだからなあ。


 首に巻いたしょぼんの腹辺りの毛に顔を埋めて、体温の暖かさを感じる。

 庭に咲いていた夏の花は萎れ、風鈴も片付けられてしまった。
 すっかり夏も終わったか。

 そう思うと、どこか寂しい気もしてしまう。
 また来年、お会いしましょうね。


9 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:32:14.21 ID:oDiYlaDsO

 坊っちゃんがそんな事を考えていると、とんとんと縁側の戸を叩く音が響いた。

 何事かと、のんびり音の方へと顔を向ける坊っちゃん。
 顔の向きを変え、音の主を見付けるや否や、坊っちゃんは嬉しそうに顔を綻ばせた。


(*^ω^)「おっ、つん!」

ξ゚听)ξ「おこんにちは、内藤さん」

(*^ω^)「どうしたんだお? 仕事中じゃあねえのかお?」

ξ゚听)ξ「少し抜けて来ました、これをお返しに」

(*^ω^)「お?」


 縁側に立っていたのは、髪を二つに結った愛らしい娘っ子。
 坊っちゃんの幼馴染みである、つんだった。

 その手に握られたるは、綺麗に畳まれた焦げ茶の羽織。
 それは先日、つんに貸したまま忘れていた物だった。


11 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:34:16.79 ID:oDiYlaDsO

ξ゚听)ξ「先日は有り難う御座いました」

(*^ω^)「おっおっ」

ξ゚听)ξ「それと、すみませんでした」

(*^ω^)「お?」

ξ´兪)ξ「私が羽織をお借りした所為で、内藤さんがお風邪を召されてしまったと……」

(*^ω^)「気にするなおー」

ξ´兪)ξ「気にします……お見舞いにも来られなくて、本当に申し訳ないです……」

(*^ω^)「あっと云う間に治ったから気にするなお!」

ξ´兪)ξ「でも……どくおさんもお怒りになられたでしょう……」

(*^ω^)「気にするなお!」

ξ;´兪)ξ「き、気にします……もう、大丈夫なんですか?」

(*^ω^)「へーきのへーまだお!」


14 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:36:19.55 ID:oDiYlaDsO

ξ*´兪)ξ「そ、それなら良かったです……
      お見舞いには来られませんでしたが、心配してましたので……」

(*^ω^)「お……有り難うだお、つん」

ξ*´兪)ξ「内藤さん……」

(*^ω^)「お……」

('A`)

ξ;゚听)ξ「こ、この豆大福ッ!!」

(;´ω`)そ「おおっ!?」

('A`)「仲ァ良いなお前ら、千切って投げンぞ」

ξ;゚听)ξ「す、すみません……」

(;´ω`)「理不尽だお……」

('A`)「煩ェ畜生が」

(;´ω`)「ええ……」


15 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:38:16.66 ID:oDiYlaDsO

('A`)「お前さんは風邪ェ引いちゃいねェか」

ξ゚听)ξ「は、はい、内藤さんのお陰で」

('A`)

ξ゚听)ξ

('A`)

ξ;゚听)ξ

('A`)「なら良かった」

ξ;゚听)ξ(怒っては……ない、のに……怖い……?)

('A`)「まあ上がってけ、桜餅作ったんだ」

( ^ω^)「桜餅って時期でもねえお、椿餅が食いてえお」

('A`)「蹴鞠会でもねェのに誰が作るか」

( ^ω^)「ええ……」


17 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:40:24.08 ID:oDiYlaDsO

('A`)「ところで、羽織を返しに来ただけなのか?」

ξ゚听)ξ「あ、いえ、あやかしの情報をお伝えに」

('A`)「あやかしの? 知り合いか?」

ξ゚听)ξ「はい、友人に」

('A`)「その友人ッてのがあやかしなのか」

ξ゚听)ξ「いえ、友人は人間です」

('A`)「ほう、珍しいなそいつは」

ξ゚听)ξ「女の子なんですが、一反木綿を連れていて」

('A`)「おォ、そいつは良いな、定番だ」

ξ゚听)ξ「でしょう、ですのでお伝えに来たんです。これから出られますか?」

('A`)「ああ、構わねェ」

ξ゚听)ξ「では、行きましょうか」

('A`)「おう」

( ^ω^)


19 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:42:07.50 ID:oDiYlaDsO

 つんに連れられ、どくおと坊っちゃんが町を行く。

 坊っちゃんはどこか拗ねた顔で、どくおは何時もと変わらぬぼんやり顔。
 つんはつんで、どくおに包んで貰った桜餅を仕舞いながら先を行く。

 坊っちゃんの首に巻き付いたしょぼんが、くわわ、と欠伸をした。


 特に言葉を交わしもせず、ただただつんは歩くばかり。
 横道へ入り細道へ入り路地裏へ入り、人の気配が少なくなって行く。

 ついには三人分の足音と呼吸音、管狐の小さな鼾しか聞こえなくなった。


 黙ってついて行くどくおと坊っちゃんも、少しばかり怪訝な顔をし始めて。

 つんの細い背中へ声をかけようとした時、細道を抜けて大きな通りへと出た。


( ^ω^)「お、ここは……」

('A`)「この辺りは、余り来た事がねェな……」


21 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:44:08.61 ID:oDiYlaDsO

ξ゚听)ξ「内藤さん達は、きっと来ないと思います」

( ^ω^)「何でだお?」

ξ゚听)ξ「先刻の道を一本曲がると、連れ込み茶屋があるんです」

(;'A`)「ぅべふっ」

(;^ω^)「つ、つん……何故にこんな所へ……」

ξ゚听)ξ「友達のお店がこの辺りにあるんです」

(;^ω^)

(;'A`)

ξ゚听)ξ「如何わしいお店じゃありませんから」

(;^ω^)「如何わしい店だったら脱兎の如く逃げ帰るお……」

(;'A`)「俺も……」

ξ゚听)ξ(何と云う男らしく無さ……)


24 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:46:13.02 ID:oDiYlaDsO

 まあ着いてきて下さいと、呆れを交えて呟くつん。
 その言葉に渋々頷き、二人は辺りをきょろきょろと見回しながら着いて行く。

 民家に等しい建物は多い物の、何故だか人の気配が無い。
 活気の無さすぎるその通りは、余りにも静かで寒々しい。

 誰も住んでいないのかと坊っちゃんは首を傾げ、民家の一つをひょいと覗く。
 しかし家の中には何もなく、ただ虚しく埃が積もっては蜘蛛の巣が張られていて。


( ^ω^)「誰もいねえお……?」

('A`)「……だな」

ξ゚听)ξ「この辺りは町の外れで、ひどく不便なんです」

( ^ω^)「お」

ξ゚听)ξ「だから数年前に、皆が町の中心へと引っ越したんですが」

('A`)「あー…………あァ、あったあった」

( ^ω^)「お?」


27 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:48:02.91 ID:oDiYlaDsO

('A`)「そういやァ俺も手伝ったな、引っ越し」

ξ゚听)ξ「ええ、私もお手伝いしました」

( ^ω^)

('A`)

ξ゚听)ξ

ξ゚听)ξ「覚えて、ませんか?」

(;^ω^)

('A`)「……」

ξ゚听)ξ「……」

(;^ω^)「…………多分その時、神社で昼寝してたお……」

('A`)

ξ゚听)ξ


29 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:50:07.55 ID:oDiYlaDsO

('A`)「ま、ここに住んでた奴等も今は楽してンだろ」

ξ゚听)ξ「その代わり、友人は嘆いてました」

('A`)「あン? 何でまた」

ξ゚听)ξ「ええと、それが、」
    ,_
  (゚Д゚#トソン「客が来ねェェェェェェェェェェェェッ!!!!」

ξ゚听)ξ「って」

('A`)

ξ゚听)ξ

( #)ω^)

  ,_
(゚Д゚#トソン

  ,_
(゚Д゚;トソン


30 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:52:06.51 ID:oDiYlaDsO

 通りの奥から下駄を蹴飛ばし叫んだのは、前下がりのおかっぱ頭をした娘子で。
 落ち着いた深緑の着物を乱れさせ、苛立ちに顔を歪めていた。

 が、すぐ側までやって来て居た三人の姿を見付けると、冷たい汗を頬に垂らす。
 そして慌てて蹴飛ばした下駄を拾って履き、にっこりと笑って。


(^ヮ^;トソン「いらっしゃいませェ!」

ξ゚听)ξ「今さらそんなに媚びを売られても」

(^ヮ^#トソン「うるせえ」

ξ゚听)ξ「やっぱりお客さん来ないんですね、とそん」

(^ヮ^#トソン「来る訳ねえだろ」

ξ゚听)ξ「可愛屋には来ないんですか? 顔は可愛いから看板娘になれますよ」

(^ヮ^#トソン「どう云う意味だそれ、あたしは自分の店を畳む気はねえよ」

ξ゚听)ξ「もう、相変わらず強情ですね」

(^ヮ^#トソン「うるせえ」

(;'A`)

(;^ω^)

35 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:54:13.81 ID:oDiYlaDsO
  ,_
(゚、゚トソン「つうかよ、何しに来たんだてめぇ」

ξ゚听)ξ「冷やかしに」
  ,_
(゚皿゚#トソン「帰れ畜生が」

ξ゚听)ξ「冗談です、お願いに来ました」
  ,_
(゚、゚トソン「あにをだよ」

ξ゚听)ξ「百鬼夜行に、参加して頂けないかと」
  ,_
(゚、゚トソン「あたしは人間だ」

ξ゚听)ξ「知ってます」
  ,_
(゚Д゚#トソン「ひっぱたくぞてめぇ」

ξ゚听)ξ「と云うかとそんにではなく、あの子に」

(゚、゚トソン「……」

ξ゚听)ξ「いらっしゃるんでしょう?」
  ,_
(゚、゚トソン「…………おい、だい! こっち来いッ!」

36 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:56:07.18 ID:oDiYlaDsO

 つんと同じ位の、年頃の娘。
 とそんと呼ばれる娘は、営業用の笑顔を崩して不貞腐れた様な顔をする。

 顔の作りは愛らしく、茶の混じった黒髪は綺麗に切り揃えられている。
 紺の前掛けを着けたとそんは、腕を組んでつんを睨む。

 その口から吐き出される言葉は、顔に似合わず乱暴で、品はいまいち無く聞こえた。

 そんなとそんがつんから目を反らし、通りの奥に向かって誰かを呼んだ。


 すっかり娘同士の会話においてけぼりを食らい、
 困った顔をする坊っちゃんとどくおが通りの奥を覗き込む。

 と、奥から現れたのは


/ ゚、。 / ヒラヒラヒラ


 少しばかり変わった形の、薄い青をした長い布。


38 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 01:58:16.81 ID:oDiYlaDsO

/ ゚、。 /ヒラリ

ξ゚听)ξ「お久し振りです、だい」

/ ゚、。 /゙ コクコク

ξ゚听)ξ「元気にしてましたか?」

/ ゚、。 /゙ コクコク

ξ゚听)ξ「とそんに虐められてませんか?」

/ ゚、。 /゙ コクコク
  ,_
(゚皿゚#トソン「つんてめぇ面貸せや」

ξ゚听)ξ「冗談です」
  ,_
(゚、゚トソン「てめぇの冗談は真顔で云うから嫌いだ」

ξ゚∀゚)ξ「冗談です」
  ,_
(゚、゚;トソン「ごめんすっげえ怖い」

ξ゚听)ξ「失礼な、飲みますよ」
  ,_
(゚、゚;トソン「止めろ蛇女」


40 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:00:10.60 ID:oDiYlaDsO

( ^ω^)「お前さんが……一反木綿……?」

/ ゚、。 /゙ コクコク

( ^ω^)「おー、思ってたより可愛いもんだお」

/*゚、。 /

( ^ω^)「触ってみても良いかお?」

/*゚、。 /゙ コクコク

( ^ω^)「おー……おっおっ、上等な手触りだおー」

/*゚、。 /

( ^ω^)「おっおっ、なかなか表情も豊かだおー」

/*゚、。 /

(´・ω・`)

/ ゚、。 /?

(( )´・ω・` ))プクー

('A`)「拗ねんなしょぼん」


44 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:02:12.18 ID:oDiYlaDsO

( ^ω^)「おーよしよし、かいぐりかいぐり」

゙(*´・ω・`) /*゚、。 /゙

('A`)「長物に好かれンな坊っちゃん」

( ^ω^)「おっおっおっ」

(゚、゚トソン「ところで」

( ^ω^)「お?」

(゚、゚トソン「誰だてめぇら」

(;^ω^)「お!?」

(;'A`)「お、おいおい……坊っちゃん知らねェのか……」

(゚、゚トソン「知らねぇよ、誰だ」

ξ゚听)ξ「大地主のお坊っちゃんです」

(゚、゚トソン

(^ヮ^*トソン「いらっしゃいませぇっ!」

(;´ω`)「おおっ!?」


45 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:04:03.84 ID:oDiYlaDsO

(^ヮ^*トソン「本日はどの様なご用件で? お坊っちゃん」

(;´ω`)「お、おお……? 何だお急に……」

(^ヮ^*トソン「何か買ってけオラァッ!!」

(;´ω`)そ

(;'A`)「化けの皮ァ剥がすの早すぎやァしねェか……」

ξ゚听)ξ「とそん、顔が怖いです」

(^ヮ^#トソン「ぶっち咬ますぞてめぇら」

(;´ω`)「よ、用件は先刻も云った様に、百鬼夜行で……」

(^ヮ^トソン

(;´ω`)

(^ヮ^トソン

(;´ω`)「何か買うから笑うの止めてくれお……こええお……」

(^ヮ^#トソン「最後のが失礼な発言って分かってんのかてめぇ」


47 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:06:10.77 ID:oDiYlaDsO

 まあ立ち話もなんだから、と、とそんが三人を連れ
 通りの奥にひっそりと存在する、古びた店へと連れて行く。

 入り口には「都村屋」と書かれた、立派な看板があり
 年代物の店ではあるが、掃除は行き届いていて塵の一つも落ちてはいない。

 店内に陳列されている品物は、日用品から用途の分からぬ物まで様々。
 しかしどれも小綺麗で、売り物として申し分無い物ばかり。

 店主らしきとそんも、愛想を売る事は得意らしく
 坊っちゃん達にお茶を淹れてくれた一反木綿も、思いの外可愛らしい。


 それなのに繁盛している様子が全く無いのは、
 間違い無く、この辺りに人が住んでいないからだろう。

 店先の椅子に腰掛けた三人へ、一反木綿がお茶を持ってくる。
 とそんは店の奥で前掛けを外し、戻ってくる所だった。

 戻って来たとそんの首にゆったりと巻き付き、一反木綿は落ち着いた顔。
 どうやら、立ち位置としてはしょぼんに近いらしい。


48 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:08:08.71 ID:oDiYlaDsO

( ^ω^)「しかし……一反木綿を飼ってるのかお?」

(゚、゚トソン「ちげぇよ」

( ^ω^)「お? でも、一反木綿を従えてるんだお?」

(゚、゚トソン「死者が出た事を知らせる布
      その布が意思を持ち、妖怪になったのがこいつ」

( ^ω^)「おー……一反木綿ってえのは、九十九神みてえなのかお」

(゚、゚トソン「他所じゃどうかは知らねぇけどな、あたしの家は元々、布を織る事を生業としてた」

( ^ω^)「お」

(゚、゚トソン「んでこいつは、あたしが織った死に布だ」

( ^ω^)「と云う事は」

(゚、゚トソン「あたしは、こいつの親だ」

( ^ω^)「お……なるほど……」

(゚、゚トソン「だい、あたしにも茶」

/ ゚、。 /゙ コクコク

( ^ω^)(親って云うか夫だお)

51 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:10:08.05 ID:oDiYlaDsO

( ^ω^)「とそんは幾つなんだお? 店を持つには若い気がするお」

(゚、゚トソン「十六、店はあたしの死んだじい様が持ってたもんだ」

( ^ω^)「お、と云う事は祖父のを継いだのかお」

(゚、゚トソン「……じい様が店やってんの、好きだったんだよ、よく構ってくれたし」

( ^ω^)「お……」

(゚、゚トソン「だから、潰したくねぇから継いだ」

( ^ω^)「立派な娘さんだお……」

(゚、゚トソン「そう思うなら何か買えや」

(;´ω`)「い、良い話だったのに……」
  ,_
(゚皿゚トソン「こんな昔話で腹が膨れるわきゃねぇだろ」

(;´ω`)「現実的過ぎるお……」


52 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:12:20.07 ID:oDiYlaDsO

('A`)

ξ゚听)ξ

('A`)「いっつもああなのか、あいつァ」

ξ゚听)ξ「悪く思わないであげて下さいましね、根は良い子なんです」

('A`)「……娘にしちゃア口が悪ィな、気も強い」

ξ゚听)ξ「だいと二人で生きてますから、気が強くなきゃ生きられないんです」

('A`)「…………そ、か」

ξ゚听)ξ「……はい」

('A`)「……」

ξ゚听)ξ「……」

('A`)「天涯孤独ッてェのには、弱いンだよなァ……」

ξ゚听)ξ「……桜餅、分けてあげても良いですか?」

('A`)「おう……好きにしろや」

ξ゚ー゚)ξ「……ありがとう御座います、どくおさん」


53 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:14:03.99 ID:oDiYlaDsO

( ^ω^)「しっかし、そんなにお客来ねえのかお?」
  ,_
(-、-トソン「来ねぇ」

(;^ω^)「おー……場を移すのは……無理かお」
  ,_
(-、-トソン「移っちまったらこの店じゃなくなんだろ」

( ´ω`)「おー……取り敢えず何か買うお……」
  ,_
(-、-トソン「あんがとよ、客らしい客なんざ滅多に来ねぇからな」

( ^ω^)「たまには来るのかお?」
  ,_
(-、゚トソン「たまにガキがお使いに来たりはすっけど、滅多に来ねぇ」

(;^ω^)「お……本当に繁盛してないんだお……」
  ,_
(-、-トソン「云うな豆大福が」

( ´ω`)


54 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:16:03.88 ID:oDiYlaDsO

(゚、゚トソン「……だい」

/ ゚、。 /?

(゚、゚トソン「参加すっか、百鬼夜行」

/ ゚、。 /

/ ゚、。 /゙ コクコク

(゚、゚トソン「よし、良かったじゃねぇか豆大福」

( ^ω^)「お、有り難うだお、だい!」

/*゚、。 /

(゚、゚トソン「じゃ、これ買え」

(;´ω`)「そ……それ、箪笥だお……」

(゚、゚トソン「品は良い」

(;´ω`)

(゚、゚トソン「阿呆面すんな、代わりに妖怪の情報もやる」

( ^ω^)!


56 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:18:05.37 ID:oDiYlaDsO

(゚、゚トソン「盛岡屋ってあんだろ」

( ^ω^)「お、知り合いが山ほど居てるお」

(゚、゚トソン「この店の裏に連れ込み茶屋があってな」

(;^ω^)「お?」

(゚、゚トソン「盛岡屋の旦那は、その連れ込み茶屋にガキを連れ込むんだ」

(;^ω^)「おお!?」

(゚、゚トソン「しかもガキの泣き喚く声が凄くてよ、普通にしてても聞こえてくる」

(;^ω^)「おおお!!?」

(゚、゚トソン「盛岡屋の旦那は妖怪だ、だから、弱味握りゃあ手伝わせられんだろ」

(;´ω`)「…………なんちゅう……」

(゚、゚トソン「あとはあれだ、狗神」

( ^ω^)「いぬがみ?」


60 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:20:24.96 ID:oDiYlaDsO

(゚、゚トソン「知らねぇのかよ、狗神」

( ^ω^)「おー……名前くらいなら……」

('A`)「隻腕の親父だろ」

( ^ω^)「お?」

(゚、゚トソン「そう、頑固者のおっさん」

('A`)「町に住んじゃア居るが、人と関わろうとしねェンだ」

(゚、゚トソン「ま、憑き神だからな」

('A`)「人間も好いちゃアいねェだろうしな」

(゚、゚トソン「けどよ、あいつが居たら百鬼夜行に良い味付けになんぞ」

('A`)「確かになァ、だが狗神を引き込むなァ難しくねェかァ?」

(゚、゚トソン「外堀から埋めてきゃ良いじゃねぇかよ」

('A`)「外堀ィ?」

(゚、゚トソン「狗神にゃ白稚児が居るだろ」


62 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:22:03.31 ID:oDiYlaDsO

('A`)「白稚児ってェと……狗神の使い魔みてェなモンだったか」

(゚、゚トソン「おう」

('A`)「その白稚児から、引き込めッてのか?」

(゚、゚トソン「そゆ事」

('A`)「しッかし、白稚児がどんなガキかも分からねェからなァ」

(゚、゚トソン「ま、その辺はてめぇらで何とかしろ」

('A`)「ま、そうだわな」



( ^ω^)

ξ゚听)ξ

( ^ω^)「あの子たち何の話してるの」

ξ゚听)ξ「私にもよく分かりません」


66 ◆XCE/Wako2nqi 2009/09/27(日) 02:24:16.24 ID:oDiYlaDsO
 今度は坊っちゃんとつんが話に入れず、席を変えて縮こまる。

 どくおととそんの会話は、この町の事やら妖怪の事を把握している事が大前提で。

 どちらかと云うと引きこもりがちな坊っちゃんと、自ら人へ関わろうとはしないつん
 そんな二人には、いまいちよく分からない話であった。

 辛うじて分かった事と云えば、次に頼みに行くのは狗神と白稚児。
 そして、どうやら狗神は手強そうだと云う事だけ。

 坊っちゃんとつんは顔を見合わせて、小さく肩を竦めて笑った。


 あの女嫌いが、わざわざ娘子に話しかけている。
 その理由は、甘ったるい甘ったれた理由を含む。

 しかしあの餓鬼ならば、まあ良い事かと目を細くした。

 つんが持つ桜餅を二人で分けながら、町の住人について話す二人を見ていた。
 その眼差しは、ひどくひどく穏やかな物。


 後日に訪れる、獣の鳴き声など想像もせず。



 『残り 八十三匹』

 おしまい。

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