- 2 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 00:36:14.63 ID:jkVisx9oO
-
【閲覧注意】
- 5 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 00:38:07.17 ID:jkVisx9oO
-
闇の中、犬は土の中に埋められていた。
頭だけを地面から出し、目の前には生肉が一つ。
森の中、犬は涎を垂らして舌を伸ばした。
もう十日程、何も口にしてはいない。
目の前にある肉を何とか食もうと、唾液を垂らし、舌を目一杯伸ばす。
しかし舌先は肉に触れる事無く、血の匂いだけが鼻を突く。
ひゅうひゅうと、荒く細い息を吐く。
右目に突き刺さった短刀が、ふるりと揺れた。
血膿を垂れ流す右目、腐った肉が短刀の重みに負けて裂ける。
しかし犬は、もう痛みすらも感じはしない。
ただ血走り明後日の方を向いた左目を、必死に肉へと向けようとしていた。
吠える事も喚く事も出来なくなった、ただの犬。
ただの犬は、今や死にかけの犬。
空腹に見開かれた目、痩けた頬に震える頭。
そんな犬を見下ろす、人の影。
- 7 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 00:40:19.02 ID:jkVisx9oO
-
ざんと振り下ろされた銀の刃が、犬の頭を刎ね飛ばす。
犬の目は明後日の方へぐるりと回り、声を上げる事もなく事切れた。
転がる頭を持ち上げて、影はげらげら下品に笑う。
影の姿は、幼い少年の形をしていた。
【( ^ω^)百鬼夜行のようです。】
『第四話 狗神様の細道 後』
残されたるは犬の死骸。
首を刎ねられ前足を切られ、ひどく痩せこけた犬の死骸。
犬が最後に見た物は、真っ白い月と子供の影。
- 10 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 00:42:07.41 ID:jkVisx9oO
-
ふと瞼を持ち上げると、己が肘置きに身を任せて転た寝をしていた事に気付く。
のそりと傾いていた身を起こし、すっかりよれてしまった白装束を見下ろす。
ぼんやりした目を辺りに巡らせれば、座敷には己しか居ない事が分かった。
ああ、白稚児はまだ戻っていないのか 最近は帰りが遅い。
そんな事を考えては、犬の耳を持つ頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
頭に乗っていた烏帽子が、床へと落ちた。
夜に眠ると、嫌な夢を見てしまう。
眠るまいとしているのに、一人になると眠ってしまう。
ああ、白稚児が居れば。
あの賑やかしい白稚児が居れば、目もさえる。
男はのったり立ち上がり、烏帽子を拾い上げて座敷の隅へと放る。
無精髭の生えた顎を左手で撫でて、半開きの右目を瞬かせた。
- 11 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 00:44:10.95 ID:jkVisx9oO
-
障子をぱしんと開けて、外へと出る。
冷たくなった風が頬を撫でた。
闇に落ちた世界の中で、爛々と煌めく白い月を見上げ、右目を細くする。
潰れた右目に光は届かぬが、左の目から入る明かりにつられて動く。
眉をきゅと寄せ、高い鼻の先をするりと指先で撫でてから息を吐く。
人間の匂いが、嫌と云う程に溢れた町。
決して好めぬ匂いは、己の存在の根底からなる出来事の所為か。
男、狗神は人を好まない。
元より人に憑く事が前提の妖怪。
それなのに、憑く事をしない狗神。
好みはしないが憎みもしない、稀なるけだもの。
狗神はぼさぼさの髪をぐしゃりと掻き上げて、
苛立たしげに、障子の縁をがつんと蹴った。
(‘_L’)「…………未だ、帰らんか、白稚児め」
ぽつりと呟き、人差し指の爪を噛む。
そしてその指で障子に穴をぷすりと開けて、座敷へと戻った。
- 12 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 00:46:14.66 ID:jkVisx9oO
-
くう、と鳴る腹を押さえる。
自炊などしよう筈もない狗神は、奥歯をぎりりと噛み締めて
側にあった化粧箪笥を、目一杯力を込めて蹴り上げた。
苛立ちに顔を歪め、脂汗が頬を伝う。
歪む顔は苛立ちの他にも、どこか恐怖に似た物も混ざって見えた。
ぐううと低く唸り、己の頬へ爪を立てる。
空腹を紛らわせ様と力を込めれば、薄い頬の肉を爪が裂く。
空腹は、恐ろしい。
目の前の肉を食えずに殺された夜を思い出す。
空腹は、憎らしい。
地の中は冷たく息苦しく、ただただ痛みばかりが己を襲った。
嗚呼、腹が減った。
障子の骨をがんと殴り、木屑へと変えても空腹はおさまらない。
それどころか、腹は余計に減るばかり。
- 13 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 00:48:21.25 ID:jkVisx9oO
-
獣の耳をぺたりと伏せて唸る。
長い爪は頬やら肩やら腹に食い込み、赤く濡れていた。
腹が減ったと獣の声で叫ぼうとした時に、
がらり、反対側の障子が開いた。
「たっだーいまっ! …………って、何だこれ!?」
(‘_L’)「白稚児……」
「もー、おやっさんまた暴れたの? お腹空いたなら自分で作りなよ」
(‘_L’)「お前、何の為に存在するか、忘れとらんか」
「わたし間違ってないよ、だってわたしは仕事行ってるもんさ」
(‘_L’)「…………良いから、飯にしろ」
「あーはいはい…………あり、わたしの化粧箪笥……」
(‘_L’)「蹴った」
- 14 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 00:50:09.92 ID:jkVisx9oO
-
「…………壊れてるよ? おやっさん」
(‘_L’)「だから、蹴った」
「こっ……こんなろおおおおお!! わたしのなのにいいいいいいいッ!!」
(‘_L’)「すまん。 飯にしろ」
「おやっさんのぶわぁあああああかッ! でっきらいだあああああああああッ!!」
(‘_L’)「喧しい、大体、貴様、戻るのが遅い」
「わたしはおやっさんと違って仕事してんのっ! この無職っ!!」
(‘_L’)「…………」
「……ごみんなさい」
白稚児と呼ばれる娘が帰宅すると、嫌な静けさを纏っていた座敷に灯がともる。
狗神はどっかとその辺りに腰を降ろして、機嫌の悪そうな顔で娘を見る。
しかし娘は己の所有物を壊された事に頬を膨らませ、狗神の額をごんと小突いた。
その細い体から血の匂いを感じながら、狗神は黙って夕食を待っていた。
- 16 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 00:52:11.92 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「中華食いてえ」
('A`)「諦めろ」
( ^ω^)「じゃあ酒饅頭食いてえお」
('A`)「明日作る」
( ^ω^)「ならば良し」
(´・ω・`)「むきゅ」
( ^ω^)「お、しょぼんはきんとん食いたいのかお」
('A`)「明日作る」
( ^ω^)「あとみたらし団子」
('A`)「明日作る」
( ^ω^)「おはぎ」
('A`)「明日作る」
( ^ω^)「どくお、そうやって軽はずみな約束はしない方が良いお」
- 17 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 00:54:40.05 ID:jkVisx9oO
- 生成りの着物に焦げ茶の羽織、首には金色狐のふかふか襟巻き。
すっかり冬の装いとも云える格好で、少しばかり体格の良い男が歩く。
冬の装いに見えはするが、一年中この格好をする男。
癖のある髪を揺らしながら、男、
大福の様に柔らかな笑顔の坊っちゃんは、隣をあるく男を見た。
隣を歩くのは、青灰色の浴衣を纏う痩せた男。
しっとりぺったり細い髪を頭に沿わせて、目の下を隈が縁取っている。
顔色は良くなく人相も良くはない、そんな男の額からは、
二本の角が、こっそりと長い前髪の隙間から顔を覗かせていた。
よく見れば半開きの口からは小さな牙が見える男、餓鬼どくお。
その装いは、季節を感じさせない。
( ^ω^)「お前さん、風邪引かないかお? そんな薄着で」
('A`)「これでも鬼だぞ、坊っちゃんと一緒にすんな」
( ´ω`)「どうせ体弱いお……」
('A`)「そう思うなら鍛えろ小肥り、振られンぞ無職」
(;´ω`)「おま、気にしてる事をずばんばんと……」
('A`)
(;´ω`)「…………善処するお……」
- 19 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 00:56:18.06 ID:jkVisx9oO
-
坊っちゃんとどくおが居る場所は、町の中心部に存在する盛岡屋。
先日とそんから聞いた話を頼りにやって来たは良いが、
何をする事もなく、ただそこに立ち尽くしては話していた。
そんな二人の横をするりと横切る、小さな藍色の影。
ん、と坊っちゃんが首を傾げてそちらを向こうとした瞬間
聞き覚えのある声が、前から訪れて耳へと流れ込んだ。
爪*'ー`)y‐「りぃりちゃああああああああああああんぅふははははははははははははははぁ」
⌒*リ;´・-・リ「きゃ、きゃあーっ!」
( ^ω^)
('A`)
見覚えのあるお狐様が、二人の横を通り抜けた藍色を追い掛けていた。
- 21 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 00:58:17.65 ID:jkVisx9oO
-
爪*'ー`)y‐「りぃりちゃぁんりぃりちゃぁん可愛いりぃりちゃぁぁああああああああああん」
⌒*リ;´・-・リ「ぅあ、や、あわわわわわ……」
爪*'ー`)y‐「僕のりぃりちゃぁぁぁぁぁぁんぅふはははははははははははぁ」
⌒*リ;´・-・リ「や、やーっ! やーっ!! ぃやーっ!!」
爪*'ー`)y‐「逃げないでよぉほら何でも買って上げるよぉほらほらほらおねだりしてよぉぅふふははははははははははははははぁ」
⌒*リ;´・-・リ「きゃー! きゃー! きゃぁあーっ!!」
爪*'ー`)y‐「おっかけっこも悪くないよねぇ待て待て待てぇ捕まえちゃうぞぉふははははははははははははははぁ」
( ^ω^)
('A`)
爪*'ー`)y‐
爪'ー`)y‐「やぁ、坊っちゃんに鬼子、久し振りぃ」
- 22 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:00:08.33 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「ああ、うん、久し振り」
('A`)「……久し振り」
爪'ー`)y‐「止めてよぉその目、人を変態みたいにぃ」
( ^ω^)「何一つ間違ってないお」
('A`)「あァ、間違っちゃいねェ」
爪'ー`)y‐「え、何それ、僕どんな扱い?」
( ^ω^)「変態」
('A`)「幼女趣味」
爪'ー`)y‐「これでも狐の中で一番偉いんだよ?」
( ^ω^)「……ああ、うん、」
('A`)「……まァ、うん」
爪'ー`)y‐「ちょっとぉ止めてよ、僕は普通だよぉ?」
( ^ω^) ( 'A`)
爪'ー`)y‐「無言が何より堪える」
- 24 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:02:03.70 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「……大丈夫かお? りりちゃん」
⌒*リ;´・-・リ「は……はひ……」
( ^ω^)「全くこの変態、ついに外でも本性を現す様になったのかお」
('A`)「そういやァ、人に見られるのは嫌がってたのに」
爪'ー`)y‐「あー、それがねぇ」
( ^ω^)「お?」
爪'ー`)y‐「坊っちゃんの狐から、広まっちゃったみたいでさぁ」
( ^ω^)
('A`)
爪'ー`)y‐
(*´-ω-`)。o スヤスヤ
- 25 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:04:09.45 ID:jkVisx9oO
- ( ^ω^)「……強く生きてくれお……」
爪'ー`)y‐「別に良いよぉもう」
('A`)「なんか……ごめんな……」
爪'ー`)y‐「良いってばぁ、だっていっそ気楽だしぃ、それに」
( ^ω^)「それに?」
爪'ー`)y‐「外でりりちゃんを見掛けても、我慢しなくて良い」
( ^ω^)
爪*'ー`)y‐「そんな訳でりぃりちゃぁぁぁぁぁぁん僕と茶屋でも行って甘ぁいの食べようねぇ白いどろどろのでお口のまわり汚しちゃおうねぇ僕が綺麗にしてあげるからねぇぅふふははははははははははははぁ」
⌒*リ;´・-・リ「ひゃっ、きゃー!? きゃーっ!? きゃあーっ!!?」
( ^ω^)「どくお、れもな呼ぶお」
爪'ー`)y‐「ごめんそれだけはやめて」
( ^ω^)「あと往来で変な事を云うのは止めるお」
爪'ー`)y‐「甘味処でくりいむぜんざい食べようかと思っただけなんだけどなぁ」
(^ω^ )「どくお、れもな呼ぶお」
爪'ー`)y‐「ごめんなさい」
- 26 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:06:02.67 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「で、何してんだお」
爪'ー`)y‐「それは僕の台詞なんだけどなぁ」
( ^ω^)「僕らはちょいと、盛岡屋の旦那に用があるんだお」
爪'ー`)y‐「んんん? あの狢の小僧に用事ぃ?」
('A`)「あァ、お前からすりゃ小僧なんだァな」
爪'ー`)y‐「あれぇ、鬼子は彼奴より下だっけぇ?」
('A`)「滅多と会わねェから分からん」
爪'ー`)y‐「僕や狸に比べりゃ狢も犬も随分下だよぉ、僕らからすれば君らと変わらないさぁ」
( ^ω^)「いや、それはどうかと思うお」
爪'ー`)y‐「そーぉ? どっちにしろ耳も尖ってないお子様わんわんさぁ」
('A`)「お前の差しで物を計るなッてェンだ」
爪'ー`)y‐「だってねぇ、もう何百……いや千かな、生きてるか分からないんだからぁ」
( ^ω^)(落ち着きの無いじじいだお)
爪'ー`)y‐「今なぁんか傷付いたぁ」
- 28 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:08:07.38 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「所で、りりちゃんは何をしてたんだお?」
⌒*リ´・-・リ「あ、あの……おつかいものの帰りですぅ……」
( ^ω^)「お、なら早く戻ってれもなの所に行くお、引き留めて悪かったお」
⌒*リ´・-・リ「ぃ、いぇ……ありがとうございました、失礼しますぅ……」
ぺこんと頭を下げたお稚児は、
二つに結った髪をぴょこぴょこ揺らし、盛岡屋の暖簾をくぐる。
その小さな後ろ姿を惜しそうに眺めながら、狐の色男が耳をへにょりと寝かせた。
爪'ー`)y‐「あーん……りりちゃん行っちゃったぁ……」
('A`)「あのなァ……」
爪'ー`)y‐「あーあぁ、良いなぁ……れもなは、りりちゃんになつかれててぇ」
( ^ω^)「姉女郎なんだから当たり前だお?」
爪'ー`)y‐「…………見付けて拾ったのは、僕なのになぁ」
('A`)「ァん?」
爪'ー`)y‐「……何でも無いさぁ…………はーあぁ……つまんなぁいのぉ」
- 29 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:10:10.38 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「…………そんなに、りりちゃんが好きなのかお?」
爪'ー`)y‐「好きさぁ、可愛いじゃなぁい」
( ^ω^)「どう、好きなんだお?」
爪'ー`)y‐「どう、だと思うぅ?」
( ^ω^)「お……」
爪'ー`)y‐「ぅふははは、好きだよぉ大好きさぁ、僕はあの子を愛してるんだからねぇ」
( ^ω^)「何でまた……その、こんなに歳の離れた……」
爪'ー`)y‐「坊っちゃんも云うかい?」
( ^ω^)「お?」
爪'ー`)y‐「この町では、妖怪と人間の間から子が生まれるのはおかしくないよねぇ」
( ^ω^)「……おかしくは、ないお、この町では」
爪'ー`)y‐「それと一緒じゃなぁい?」
( ^ω^)「お……」
- 30 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:12:14.86 ID:jkVisx9oO
-
爪'ー`)y‐「好きだったらさぁ、種だの歳だの性別だの、どうでも良いよねぇ」
( ^ω^)「ふぉっくす……」
爪'ー`)y‐「僕はあの子に恋をした、白面金毛九尾の狐が人間の娘に恋をした
丸で安いお伽噺の様だけれど、僕は確かにあの子に恋をしたんだよぉ」
( ^ω^)「……お、人間……? りりちゃんは、妖怪じゃないのかお?」
爪'ー`)y‐「元は人間だったのさぁ、今は妖怪だけれどねぇ」
( ^ω^)「…………どうして、好きになったんだお?」
爪'ー`)y‐「一目惚れって知ってるぅ?」
( ^ω^)「お……ま、まあ……一目惚れしたのかお?」
爪'ー`)y‐「そうだよぉ、純愛だよねぇ」
('A`)(美談だが端から見れば変態に変わりはねェ)
爪'ー`)y‐「失礼なぁ、美談は美談でしょぉ?」
('A`)「神通力で読むな、こんな事に使うな」
- 31 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:14:07.77 ID:jkVisx9oO
-
爪'ー`)y‐「まぁ、ねぇ」
( ^ω^)「お?」
爪'ー`)y‐「良いじゃなぁい、狐の頭が、大の男がお稚児に恋をしたってさぁ」
( ^ω^)「…………まあ」
爪'ー`)y‐「当人らの問題っちゃ、そうなんだからさぁ」
('A`)「ま、同意の上ならな」
( ^ω^)「小さい子なんだから、あんまり変な事はするなお? 嫌われるお」
爪'ー`)y‐「別に、幼い内は手を出さないさぁ」
( ^ω^)
('A`)
爪'ー`)y‐「ごめん出そうとした」
- 33 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:17:31.39 ID:jkVisx9oO
- ( ^ω^)「と云う事は、盛岡屋の旦那もそうなのかお」
('A`)「かも知れねェな」
爪'ー`)y‐「なぁにぃ? 狢の小僧もぺどぉ?」
('A`)(ぺど自覚あった)
( ^ω^)「らしいお、連れ込み茶屋に娘っ子連れ込むとか」
爪'ー`)y‐「うわぁ変態だぁ」
('A`)(お前が云うな)
( ^ω^)「三大遊男の三人全員がそっち系かお……」
爪'ー`)y‐「あーぁ、狸の嫁さんも結構若いもんねぇ」
( ^ω^)「色男が全員そっち系とか、町娘達が泣くお……」
爪'ー`)y‐「色男って僕だけじゃなぁい?」
( ^ω^)
爪'ー`)y‐
( ^ω^)「事実なだけに腹が立つ」
爪'ー`)y‐+
- 35 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:19:04.58 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「しっかし、此処に居れば出てくるかと思ったけど出てこないお」
爪'ー`)y‐「あーぁ、引きこもりだからねぇ彼奴」
('A`)「でもよ、たまにゃア出るんだろ?」
爪'ー`)y‐「うん、よく友達の所には行ってるみたぁい」
( ^ω^)「友達?」
爪'ー`)y‐「雷獣様とか狗神だよぉ、雷獣様は最近は遠くに行ってるらしいけどぉ」
( ^ω^)「雷獣……」
('A`)「雷獣、か……」
爪'ー`)y‐「そういやねぇ、雷獣のとこの夫婦は僕らより年上だよぉ」
('A`)「幾つだ雷獣夫婦」
爪'ー`)y‐「さぁねぇ、老いないからねぇあの二人も」
- 37 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:21:03.04 ID:jkVisx9oO
-
爪'ー`)y‐「さっ、てとぉ」
( ^ω^)「お?」
爪'ー`)y‐「僕はそろそろ行くよぉ、無職って訳じゃないしぃ」
( ^ω^)「おー、またおふぉっくす」
('A`)「またな」
爪'ー`)y‐「まったねーぇ」
金色の色男が、豊かな尾を揺らしてその場から立ち去った。
三大遊男、その内の一番目立つ男。
長い髪をした色男ふぉっくすは、思いの外、しっかりと物を考えているらしかった。
武骨な大男の狸、ぎこも遊男と言われてはいるが、
あの男は惚れた女が芸者故に、なのだろう。
- 38 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:23:31.58 ID:jkVisx9oO
-
そうなると、最後に残るは寡黙な優男。
ふぉっくすが「狢の小僧」と呼ぶ、盛岡屋の若旦那。
名を「盛岡でみたす」と云い、種は狢。
無口ではあるが全く喋らないと云う訳ではなく、
その優しげな顔をしておきながら、鬼畜な事を平気でする。
例えば、幼子を茶屋へ連れ込み犯す、等。
まあ、噂に過ぎぬのは確かなのだが。
( ^ω^)「しかし……滅多に外に出ないのに手伝ってくれるかお……」
('A`)「さァなあ……手伝ってくれりゃァ良いんだがねェ……」
( ^ω^)「おー……あ、お茶おかわり」
('A`)「あ、俺も」
o川*゚ー゚)o「はいよー」
- 39 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:25:41.56 ID:jkVisx9oO
-
坊っちゃんとどくおは可愛屋の長椅子に腰掛けて、ぼんやりと背中を曲げていた。
あんな所でぼうっとしていても、疲れるばかりで会えはしないだろう。
そう考えた二人は、のたのた可愛屋まで引き返して来ては茶をすする。
( ^ω^)「はー……なかなかうまく行かんお……」
('A`)「当ッたり前だ、最初から上手く行くと思うな」
( ´ω`)「おー……」
('A`)「時間かけりゃアみんな手伝ってくれるッて、な?」
( ^ω^)「……お、頑張るお」
('A`)「おう、頑張れ」
( ^ω^)「お!」
o川*゚ー゚)o「ほいお茶、何の話しとんの?」
( ^ω^)「お、有り難うお……盛岡屋の旦那の話だお」
o川*゚ー゚)o「ああ、狢っ子?」
( ^ω^)「ええ、やっぱり子供扱い」
- 40 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:27:20.88 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「……むじな」
('A`)「狢?」
( ^ω^)「狢って、狸と同義じゃ無かったのかお?」
o川*゚ー゚)o「獣としては狸やら鼬って云われるけどね、実際はよう分からんのよ
せやから狢は『よう分からん物』と云う妖怪、狢は狢なんや」
( ^ω^)「ほへー……流石はきゅうの姐様だお……」
o川*゚ー゚)o「アホほど長生きやからねぇ」
( ^ω^)「お、そういやきゅう姐様は何の妖怪だお?」
o川*゚ー゚)o「んー……まあ、蠱毒の生き残りとだけ云っとくわ」
( ^ω^)「お? それは一体……」
('A`)「姐さん、客が呼んでるぜ」
o川*゚ー゚)o「はいはーいお待ちをー!」
( ^ω^)?
- 42 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:29:06.02 ID:jkVisx9oO
-
('A`)「あのなァ坊っちゃん……」
( ^ω^)「お?」
('A`)「姐さんはな、蟲なんだよ……云わせてやンな」
(;^ω^)「おお!?」
('A`)「確かきゅうの姐さんは百足だ、百足」
(;^ω^)「と云う事は……」
('A`)「んァ?」
(;^ω^)「……四本腕どころか、本当はもっと腕やら足が沢山?」
('A`)
('A`)「云うな」
( ^ω^)「はい」
- 43 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:31:24.75 ID:jkVisx9oO
-
ミセ*/ー゚)リ「あり、坊っちゃんとどくおさんだ」
( ^ω^)「お、みどりちゃんかお」
('A`)「よう、みどり」
ミセ*/ー゚)リ「みせりね、みせり、いらっしゃいまし。何の話してたのー?」
( ^ω^)「可愛屋の妖怪は人の話に食い付く食い付く」
ミセ*/ー゚)リ「ありゃ、聞いちゃ駄目でした?」
( ^ω^)「構わんおー、妖怪の種の話だお」
('A`)「そういやァみどりは何の妖怪だ?」
ミセ*/ー゚)リ「ん? わたし白稚児」
( ^ω^)
('A`)
ミセ;/ー゚)リ「え、な、何?」
- 44 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:33:31.00 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「何で冒頭で隠してたんだお……」
('A`)「隠せてねェしよ……」
_,
ミセ;/Д゚)リ「な、何の話よぉ!? 何なんです!?」
( ^ω^)「何でもねえお、取り敢えず百鬼夜行を手伝ってくれお」
_,
ミセ;/Д゚)リ「い、良いけど……」
( ^ω^)「狗神様も」
_,
ミセ;/Д゚)リ「難しい事ゆった!!」
('A`)「やっぱ難しいのか?」
_,
ミセ;/Д゚)リ「おやっさん引きこもりだし……」
( ^ω^)「この町は引きこもりだらけかお」
_,
ミセ;/Д゚)リ「他にも居んの?」
('A`)「狢の旦那」
_,
ミセ;/−゚)リ !
- 46 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:35:08.82 ID:jkVisx9oO
- _,
ミセ;/Д゚)リ「ま、まあ云うだけ云うけど……じゃ、わたし仕事があるんで」
( ^ω^)「おー、頑張れおー」
('A`)「……嫌いなのかね、狢」
( ^ω^)「お?」
('A`)「険しい顔してたぜ」
( ^ω^)「元からじゃねえかお? 変顔の代表だしお」
('A`)「そうでなく、何か、怯えてた様な……」
( ^ω^)「おー……?」
山の様に重ねられた皿から最後の団子を取り、坊っちゃんが口へと運ぶ。
忙しそうに働くみせりやきゅうを見ながら、不思議そうに首を傾げた。
何やら、一悶着あるような、ないような。
面倒な事が無ければ良いが、と息を吐いて、もぐもぐ団子を咀嚼した。
やはり、どくおの作る団子の方が美味であった。
- 47 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:37:03.65 ID:jkVisx9oO
- ◎
すっかり暗くなった町の中、仕事を終えた可愛屋が暖簾を下ろす。
後片付けをする店主へと頭を下げて、一人の娘がしゃんと背を伸ばした。
ミセ*/ー゚)リ「お疲れさまでした、姐さんっ!」
o川*゚ー゚)o「お疲れさん、遅くまで有り難うね」
ミセ*/ー゚)リ「その分、お給金に色つけてくださいね?」
o川*゚ー゚)o「はいはい、遅くなる前に帰りや?
最近は美人局何かが多いみたいやから、巻き込まれなね」
ミセ*/ヮ^)リ「はあい! また明日!」
前掛けを外して袖を下ろしたみせりが、風呂敷包みを片手に手を振った。
そして店主に背を向けると、その笑顔を消して風呂敷を持つ手に力を込める。
- 48 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:39:04.32 ID:jkVisx9oO
-
ミセ /− )リ「……美人局とは……ちょっと、違うんだけどね」
ぽつりと呟き、主の待つ住処とは逆方向へと歩き出す。
そして可愛屋から随分離れた所で、辺りを見回してから建物の影に身を隠す。
手早く帯を解いて着物を脱ぐと、風呂敷の中から白い着物を取り出した。
ささっとそれを身に纏い、右目を覆う手拭いを外して頭に乗せる。
顔を隠す様に乗せられた手拭いの隙間から、左目だけがちらりと覗く。
手拭いを外した事によって降りた髪。
着物を畳んで風呂敷に包むと、隠してあったゴザと共に持ち上げた。
その姿は、そう
丸で、夜鷹のそれであった。
- 49 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:41:02.68 ID:jkVisx9oO
-
みせりは昼には見せない笑みを口許に浮かべ、人気の少ない通りを歩く。
頭に乗せた手拭いの端を噛みながら、ちらりと辺りを見回し、客を探す。
目についたのは、身なりの悪くはない男。
その側へとゆっくり歩み寄り、隣へ立つと、愛嬌たっぷりに微笑んでみせた。
イ ルノー^)リ「ねぇね、ちょいとそこなお兄さん……わっちを買ってかないかい……?」
『あん? ……何だ夜鷹か……』
イ ルノー^)リ「ふふ、哀れな夜鷹に恵んでおくれよう、お兄さん……っふ、うふふっ……」
男に擦り寄る幼い体に、男は唾を飲み込んでみせりを見る。
襟から覗く白い首に鎖骨、膨らみの分からぬ様な幼い乳房が透けて見えた。
しかし幼さを感じさせないその言葉遣いと仕草に、
男は頭の中で、揚代の勘定をし始める。
- 51 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:43:03.41 ID:jkVisx9oO
-
ごくりと唾を飲み込めば、男の手がみせりの左頬を撫でる。
若々しく、其処らの夜鷹とは違い、張りと柔らかさを持つ肌だった。
頬に触れるだけでも吸い付くように心地好い肌だと分かる。
これならば、着物の下の肌はどれだけ上等か。
半分しか見えぬが、顔も愛らしい。
この娘が夜鷹の値段で買えるなら、買わぬ方が損だと言えよう。
男はにたりと笑いながら、みせりの顔をよく見ようと腰を屈める。
幼い娘は、それだけでも値が張る。
そう考えれば、この娘は破格の安さだ。
『ほう……結構可愛い顔してんじゃねぇか』
イ ルノー )リ「可愛い……? わっちが、可愛いっての……?」
『あ……? あぁ、そりゃ、』
- 53 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:45:08.54 ID:jkVisx9oO
-
誘い文句を口にすると、みせりはおかしそうにころころ笑った。
空いている手を男の腹の辺りに当てて、さもおかしそうに。
袖で口許を隠して笑い、手拭いでその顔が見えなくなる。
と、みせりは勢い良く、手拭いを外して
イ ル。∀゚)リ「こんな顔でも……可愛いってぇのかいッ!?」
『ひっ……ッ!?』
はらりと落とされた手拭い。
その下にある右の目は、醜く歪み崩れて居た。
それを見た男は顔を青くして後退り、情けない悲鳴を上げて逃げ出した。
ああ情けない、右目が崩れてるだけじゃないか。
みせりは機嫌の悪そうな顔をして、
左手に握られた男の財布を、風呂敷の中へと捩じ込んだ。
- 54 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:47:32.91 ID:jkVisx9oO
-
小娘が一人働いた所で、その給金はたかが知れている。
己が食う分すら稼げやしないが、可愛屋の店主は出切る限りの額を包んでくれる。
これ以上、可愛屋の店主に迷惑はかけられない。
そして、主に無心するのは、もっと嫌で。
病で死にかけの己を拾い、白稚児として生まれ変わらせたのは狗神。
その狗神に、迷惑なんぞはかけられない。
この崩れた顔の己を雇ってくれる、育ててくれる。
それだけが支えで、それだけが唯一で。
生きるためならば、何でもするさ。
例えば、がきを買おうとする野郎の財布を頂いたり。
血は見せない、殺しちゃいない、悪い事だが天罰と思え。
みせりは顔を歪め、手拭いを頭に乗せた。
この身を買わせた事なんて、一度もない。
みんな逃げて行くのだから。
買われる事なんて
一度も、なかったんだ。
- 56 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:49:04.27 ID:jkVisx9oO
-
イ ルノ− )リ「…………死んじまえ、がきを買う様な奴らは」
ぽつりと呟き、歩き出す。
その脳裏に浮かぶのは、ただひたすらな痛み。
何度もこの仕事をしてきたが、一度だって本当に買われた事はなかった。
崩れた顔を見せれば、誰もが悲鳴を上げて逃げて行く。
あの男以外は。
あの男以外は、皆、逃げて行った。
みせりを初めて汚したあの男、以外は。
(´・_ゝ・`)「娘」
イ ルノ− )リ「ッ!?」
- 58 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:51:04.61 ID:jkVisx9oO
-
ふらふらと歩いて居たみせりの足が、自然と止まっていた。
すると、何時からそこに立っていたのか、一人の男が口を開く。
短く僅かに癖のある黒髪、そこから生える獣の耳。
飾り気は無いが上等な着物を纏うその男は、静かにみせりの前までやって来た。
細い手を取り、腰を屈める事もせずにみせりを見下ろす。
その、威圧感。
(´・_ゝ・`)「さあ、行こうか」
イ ルノ− )リ「…………やだ……」
(´・_ゝ・`)「君に金は渡した筈だ」
イ ルノ− )リ「……でも、やだよ…………」
(´・_ゝ・`)「…………」
イ ルノ− )リ「…………痛いのは……もう、やだ……」
- 61 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:53:03.80 ID:jkVisx9oO
-
絞り出すように呟くみせりを、ひょいと腕で抱き上げた。
みせりが声を上げるよりも早く、その口を押さえて顔を近付ける。
口を手で押さえられたみせりの目の前へ、男の顔が迫る。
大きく黒目の大きな目玉に、通った鼻筋の高い鼻。
整った顔立ちのそれは、表情をぴくりとも変えずにみせりを見つめていた。
その威圧感に涙を浮かべ、みせりは体を小刻みに震わせる。
すると男は、薄い唇をそっと開いた。
(´・_ゝ・`)「私は、君を買った」
イ ルノ− )リ
(´・_ゝ・`)「私には、君を自由にする権利がある、そうだね」
イ ルノ− )リ
ぽろり。
みせりの目から、涙が零れた。
- 63 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:55:07.86 ID:jkVisx9oO
-
あれは、何時だっただろうか。
つい最近の筈なのに、もう随分と前の事の様に感じる。
いつもの様に、こうして男を誘っては財布を抜き取って。
そんな『悪事』を働いていると、ある男が目に入った。
それは滅多に表へ出てこない、盛岡屋の旦那。
盛岡でみたす、その人だった。
あの盛岡屋の旦那ならば、たんまり金も持っているだろう。
それに、盛岡屋の旦那がこんな手口には引っ掛かりやしないだろう。
上手く行かなかった時は、冗談だと笑って逃げてしまおう。
もし他の男と同じ様に引っ掛かったなら、それはそれで美味しい。
がきに手を出そうとする奴には天罰さ、なんて。
そう思って、軽い気持ちで、近付いた。
- 65 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:57:32.56 ID:jkVisx9oO
-
イ ルノー )リ『ちょいと、そこなお兄さん……わっちを買ってかないかい……?』
(´・_ゝ・`)『……夜鷹か』
イ ルノー )リ『哀れな夜鷹に恵んでおくれよう、お兄さん……っふ、うふふっ……』
(´・_ゝ・`)『構わない、どうやら君は可愛らしい顔の様だ』
イ ルノー )リ『可愛い……? わっちが、可愛いっての……?』
いつもの手口で、いつもの言葉。
用意しておいた言葉を口にするだけで、
盛岡屋の旦那は、表情を変えずに頷き、手を差し出す。
ああ何だ、やっぱりこいつもそうなのか。
じゃあ、脅かして財布を頂こうか。
にやりと笑って、みせりは手拭いを外した。
いつもの、様に。
- 66 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 01:59:16.44 ID:jkVisx9oO
-
イ ル。∀゚)リ『こんな顔でも……可愛いってぇのかいッ!?』
(´・_ゝ・`)
イ ル。∀゚)リ
(´・_ゝ・`)
イ;ル。∀゚)リ
(´・_ゝ・`)『行こうか』
イ;ル。∀゚)リ『ぇ、ぁ、あ、あの、?』
(´・_ゝ・`)『地べたでするのは好まない、畳の方が君も良いだろう』
イ;ル。∀゚)リ『いえ、あの、え、え? ま、待ち、わたし、顔、?』
(´・_ゝ・`)『それが、どうしたと云うんだい』
イ;ル。∀゚)リ『え? え? ま、待っ、待って? わたし、よ、妖怪だよ?』
(´・_ゝ・`)『そう、私もだ。さあ行こう』
イ;ル。∀゚)リ『いや、だから、その、わたし子供だし、妖怪で、こんな顔、え?』
- 68 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:01:14.88 ID:jkVisx9oO
-
(´・_ゝ・`)『私は、君を買うと云った』
イ;ル。∀゚)リ『はひっ』
(´・_ゝ・`)『君は買われた、私に』
イ;ル。∀゚)リ『……は、ひ』
(´・_ゝ・`)『さあ、行こうか』
イ;ル ∀ )リ『は……ひ』
それはもう、拒絶など出来る空気ではなく。
軽く言いくるめて逃げ出せる様な男でも、なかった。
相手が悪かった。
そう、相手が悪かったのだ。
優しい顔をしているからと、嘗めてかかった結果がこの様。
狢とは、『よくわからない生き物』なのだ。
大人しい顔の内側で、何を考えているか等、理解出来よう筈もない。
しかし幼いみせりは、盛岡屋の旦那が狢と云う事すらも知らなかった。
- 69 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:03:12.54 ID:jkVisx9oO
-
『やぁああああああッ!! 痛い、いだいよぉっ!! やだあああああああああッ!!!!』
『ふむ、生娘だったのか』
『やだっ、ひ、ぃ、いだいっ! いだいからぁあっ!! 無理だってばあああああッ!!』
『金ならば渡した、君に私を拒否する権利は無い筈だ』
『やっ、は、ぁ、ひっ、ひぎぅッ! ぐぇ、ぉ、ぁ゙あ゙あああああああああッ!!』
『ふむ、入り切らないか』
『あが、ぁ、ぐぇうっ! いだっ、いだい、よぉッ!! やぁあああぁああッ!!』
『ふむ、』
『いや、やっ、いやあああっ!! 抜いてッ! 抜いてってばぁああッ!!』
『…………』
『ごめんなざいっ、ごめんなざぃいッ!! ゔあ゙あ゙あ゙あああああああああああんッ!!!!』
- 71 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:05:09.93 ID:jkVisx9oO
-
連れて行かれたるは連れ込み茶屋。
でみたすは顔を隠す事もせず堂々と、幼い娘を座敷へ連れて行き、押し倒した。
必死で顔を隠していた手拭いを剥ぎ取り、両手をそれできつく結ぶ。
乱暴に開かれた着物を中途半端に脱がせ、幼い体に手を這わせた。
人間の頃につけられた傷跡に、病の跡。
それらを嘗めて、未発達な肉体を蹂躙した。
その平らに等しい胸に触れれば、みせりは肩を震わせた。
その可愛らしい唇を貪れば、みせりはほろほろ涙を流した。
その幼い蕾を引き裂けば、みせりは白い喉を晒して泣き叫んだ。
獣に其の身を壊されて、白稚児はただただ泣き叫ぶ。
痛い苦しい悲しい嫌だ。
ただただひたすら泣き叫ぶ。
痛いよ 助けて いぬがみさま。
- 73 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:07:02.95 ID:jkVisx9oO
-
幼い体にそんな物を受け入れられる訳もなく、そこは無惨にも引き裂かれる。
血を流して涙を流して、声を張り上げて叫んだ。
喉から血が出んばかりの勢いで、優しさの欠片もないその行為に泣き叫んだ。
痛みと云えた物でもない、激痛と呼ぶにも易しい痛み。
本当に、身を引き裂かれる痛みにみせりは泣き狂った。
己の耳へ、ぶちぶちと身が裂ける音が届くのだ。
薄い肉を裂いて、抉り込み、骨をみしみし軋ませて。
己の体が、壊されて行くのだ。
その恐怖たるや、想像を絶する物で。
目の前で無表情に己を犯す男の存在が、恐怖を更に強くさせる。
痛くて恐ろしくて、みせりは己の所業を呪った。
あの様な、すりの真似事をしていたから、こんな目にあった。
悪事を働けば、その身には罰がふりかかる。
みせりはただただ泣き叫び、ごめんなさいを繰り返す。
もうしませんもうしませんだからもうやめてくださいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
- 76 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:09:19.48 ID:jkVisx9oO
- 『ひ、ぃ……ぇぐっ……ごめんなざい……ごめんなざいぃっ……』
『…………』
『も、じないがらぁ……ごめんなざい……ごめんなざい……っ』
『何故、謝る?』
『ひぐっ、ぅ……わたしが、騙したり、した、からっ……』
『私は、騙されては居ない』
『ぇ……』
『私はただ、君を買っただけだ』
『……じゃ、あ……』
『次は何時、あの場に立つ』
『へ……?』
『何時、あの場に立つ』
『…………来、週……』
『そうか、なら、また来週に』
『やっ…………やだ、やだぁ……っ』
- 78 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:11:13.64 ID:jkVisx9oO
-
泣きじゃくり、みせりは子供の顔でいやいやと頭を横に振った。
そんなみせりの姿に、でみたすは懐から小さな包みを取り出し
みせりの上でその包みを開き、中身をばら蒔いた。
赤く濡れた布団の上に巻き散らかされたのは、小判。
何十枚と云う小判を散らかされ、みせりは目を真ん丸にして顔色を無くした。
『これで、足りるか』
『…………な……で…………何でぇ……っ』
『云っただろう、私はただ、君を買いたいだけだ』
『ふ……っう、ぅぅ……ぅ、うわぁあああああんっ! うぁああぁぁあああぁああッ!!』
ああ、罰は終わらない。
この小判はきっと、わたしを地獄へ落とす金。
わたしは地獄へ落ちたのだ。
- 80 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:13:20.28 ID:jkVisx9oO
- ◎
イ ルノ− )リ「……」
つい最近の過去に思いを馳せて、みせりは布団の上で足を投げ出し、座っていた。
乱れきった着物、足の間から流れる赤。
何度抱かれ様とも、この身は裂ける。
その度に血を流し、痛みに涙を流す。
幾度抱かれ様が、この身はきっとあの男を拒絶する。
散らかされた小判を指先で集めて、そっと風呂敷の中に仕舞った。
でみたすの姿はどこにもなく、座敷にはみせり一人だけ。
叫びすぎて痛む喉を押さえ、枯れた涙に眉を寄せた。
イ ルノ− )リ「…………死んじまえ……がきを、買う奴なんて……」
恨み言だけが、今のみせりを支えていた。
己が悪いと分かっていても、全てをそのまま受け入れる事は、出来なかった。
それはきっと、幼さ故。
十やそこらの子供には、出来なかった。
- 82 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:15:16.23 ID:jkVisx9oO
-
着替えをし、血を拭って身支度をする。
そしてふらふら茶屋を後にすると、みせりは主が待つ住処へと戻る。
落ち込みきっていた顔を無理に笑わせ、元気良く障子を開ける。
すると腹を空かせた主が、むくれた顔でみせりを迎えた。
呆れた顔で夕飯の支度をして、一緒に食事をして。
適当に話なんかをして、風呂に入って眠りにつく。
翌朝早くに目を覚まし、朝食の用意をしてから
眠らずに座敷の隅で膝を抱えていた主に行ってきますと伝え、仕事に行く。
それが、日常。
狗神は人としての仕事はしていないが、たまに、誰かを祟れと云う依頼が来る。
一つ祟れば、暫くは食って行けるだけの金が入る。
狗神は対象が死なぬ程度に適当に祟り、金を貰って生きていた。
そうして今まで生きて来たし、これからもそれは変わらない。
白稚児を迎え入れてから生活はある程度変わったが、変わりはしない。
ただ適当に、生きる為だけに生きている。
- 83 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:17:17.85 ID:jkVisx9oO
- ◎
そんな狗神様の住処の前に、二人の男が立っていた。
( ^ω^)「…………ここなのかお?」
('A`)「らしい」
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
( ^ω^)「入りづらいお」
('A`)「人様ン家だからなァ……」
生成りの着物の坊っちゃんと、その首に巻き付いて眠る管狐。
その隣には頭に手拭いを巻いた、痩せた男。
狗神様宅の前で、どうしたものかと首を捻っておられた。
- 84 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:19:10.76 ID:jkVisx9oO
-
みせりにああは云ったが、任せっぱなしと云うのも忍びない。
ならば、と裏の巫女様に場所を聞いてここまでやって来た。
しかし突然、百鬼夜行を手伝ってくれ等と殴り込むのもどうだろう。
それではただの迷惑だし、下手をすれば役人を呼ばれかねない。
(;^ω^)「むう…………参ったお」
('A`)「……まァ、取り敢えず話だけでもしてみようぜ」
(;^ω^)「おー……」
取り敢えずの手土産である、桜餅をたっぷり詰めた重箱を片手に
とんとん、と入り口の障子を軽く叩いてみせた。
狗神様がこんな事で出てくるとは思えないが、取り敢えず。
がらり。
(‘_L’)「…………何用だ」
( ^ω^)(出て来た)
- 87 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:21:34.33 ID:jkVisx9oO
-
(;^ω^)「お、ええと、その、お願い事が……」
(‘_L’)「…………」
(;^ω^)「…………あの」
(‘_L’)「……入れ、立ち話も、何だろう」
( ^ω^)(意外と友好的)
障子を開けた狗神様に従い、坊っちゃんとどくおが頭を下げて部屋へと上がる。
失礼しますと小さく呟き、座敷の中をきょろりと見回した。
片付いては居るが、散らかっている。
と云うのも、みせりが片付けた側から狗神様が散らかすので、そう云った印象を受けるのだが。
狗神様は隅に積んであった二枚の座布団を床に投げて置くと、
己は所定の位置へ、どっかと腰掛けて片膝を立てて肘置きに身を任せた。
坊っちゃんとどくおは恐る恐る座布団へ座り、偉そうな体勢の男を見上げる。
- 88 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:23:05.66 ID:jkVisx9oO
-
白い装束に、黒い烏帽子。
半開きの右目は潰れており、右腕は二の腕の途中から存在しない。
髪の間から覗く犬の耳と、口からこぼれる犬歯。
ああ、人ではないこの姿。
この男は、確かに狗神なのだ。
(‘_L’)「お前達、は、誰だ」
( ^ω^)「あ……内藤と申しますお、おこんにちはですお」
('A`)「どくお、鬼だ」
(‘_L’)「…………ふぃれんくと、狗神だ」
( ^ω^)「お……それで、あの」
(‘_L’)「待て」
( ^ω^)「お?」
- 89 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:25:11.54 ID:jkVisx9oO
-
(‘_L’)「その包みは、」
('A`)「あァ、桜餅」
(‘_L’)
( ^ω^)
('A`)
( ^ω^)「どうぞ、お好きにお食べ下さいお」
(‘_L’)「すまん、な」
どくおが重箱の包みをほどき、坊っちゃんが蓋を開けて差し出した。
狗神ふぃれんくとは尖った爪が飾る指を伸ばして、乱暴に桜餅を掴む。
掴むと云うよりも、握ると云った方が正しいその持ち方に、どくおが眉を寄せる。
が、ふぃれんくとがそれを葉ごと口の中へ放り込むのを見て、肩をかくりと落とす。
- 90 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:27:15.16 ID:jkVisx9oO
-
ふぃれんくとは飢えた犬そのものの食い方で、桜餅を次々に口へ入れる。
がつがつと、決して綺麗では無いが、妙に腹の減る食い方であった。
一つを口に捩じ込み、咀嚼して飲み込む迄に、空いた手を次の桜餅に伸ばす。
両手に持った桜餅をがつがつ食って、無くなるとまた手を伸ばす。
その圧倒される様な食い方に、坊っちゃんとどくおは呆気に取られて目を丸くした。
そしてどくおはそっと立ち上がり、失礼と小さく告げて台所へと移動する。
坊っちゃんはただぽかんとした顔で、
どくおの背中を見てから、ふぃれんくとの食いっぷりに間抜け面をするばかり。
(;^ω^)「あの……美味しい、かお?」
(‘_L’)「美味い」
(*^ω^)
何だか、嬉しい。
- 91 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:29:37.71 ID:jkVisx9oO
-
('A`)「台所借りたぜ、ほら、茶ァ」
(‘_L’)「すまん」
( ^ω^)「取り敢えず、沢山あるからゆっくり食うお、喉に詰まるお」
(‘_L’)「うむ」
('A`)「溢すな溢すな、勿体ねェ」
すっかり子供扱いをされているにも拘わらず、
ふぃれんくとは気にする様子もなく、ただひたすらにがっつく。
三段あった内の二段を食い尽くし、三段目の半分以上を食ってから、手を止めた。
どくおが淹れた茶をすすり、やっと満たされたらしい腹を撫でる。
よく食うなあと、二人がふぃれんくとの顔を見上げると、
険しかったその表情は、随分と柔らかい物へと変貌を遂げていた。
('A`)「…………そうか、狗神は空腹に弱ェんだな」
(‘_L’)「……ああ、空腹は、嫌いだ」
('A`)「俺もだ、俺は餓鬼だからな」
- 93 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:31:04.71 ID:jkVisx9oO
-
(‘_L’)「…………」
( ^ω^)「腹は満たされたかお? 足りないならまた持ってくるお」
('A`)「山ほど作ったからな、好きなだけ食え」
(‘_L’)「……今は、良い」
( ^ω^)「そうかお? なら良いんだけどお……」
(‘_L’)「…………用とは、何だ」
( ^ω^)「お、百鬼夜行をするんだけど、それを手伝って貰いたいんだお」
(‘_L’)「構わん」
(;'A`)「早ェなオイ」
(‘_L’)「餅が、美味かった」
(*'A`)
(*^ω^)
- 104 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:45:13.76 ID:jkVisx9oO
-
やっと落ち着いたらしいふぃれんくとと話していると、
どうやら、思ったよりも気難しい相手ではない事が分かった。
祟る憑き神、そして獣。
その所為で持たれがちな、悪く恐ろしいと云う先入観。
しかし実際は、慣れてしまえば腹を減らした犬そのもの。
向こうから心を開けば、意外にも話しやすい相手であった。
先程の桜餅の話や、狗神としての話。
白稚児の話に飢えの話、様々な話をする事が出来た。
最初の緊張感は何処へやら、ごく普通に談笑をしていた。
すっかり打ち解けた三人の間に流れる空気は、ひどく穏やかな物で。
と、入り口の障子を、とんとんと叩く音がした。
ふぃれんくとが顔を上げてのっそり立ち上がり、客を見に行く。
坊っちゃんとどくおはそれを見ながら、思ったより良い人だ等と話していて。
- 109 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:48:03.29 ID:jkVisx9oO
-
(‘_L’)「客が、増えた」
( ^ω^)「お?」
('A`)「居ても良いのか?」
(‘_L’)「構わん、入れ、狢」
(´・_ゝ・`)「失礼するよ」
(‘_L’)「盛岡屋の男だ、知っている、か」
(´・_ゝ・`)「盛岡でみたすと云う、すまないね、邪魔をして」
( ^ω^)「あ、いえいえこちらこそだお盛岡さん…………盛岡さん?」
(;゚ω゚)そ
(;゚A゚)そ
- 111 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:51:05.12 ID:jkVisx9oO
-
(´・_ゝ・`)「ん……どうしたんだい」
(;゚ω゚)「い、いえその……初めましてお……」
(´・_ゝ・`)「ああ、君は、内藤の」
(;゚ω゚)「はいですお、内藤の倅ですお」
(´・_ゝ・`)「どうしたんだい、そんなに驚いて」
(;゚ω゚)「まさかこんな風に会うとは思ってなくて驚いたんですお」
獣が二匹、仲が良さそうに並んで座る。
その向かいに座る坊っちゃんとどくおは、戸惑いを隠せずに顔を見合わせた。
突然現れた客でみたすは、あの盛岡屋の旦那。
頭の中に巡るのは、とそんから聞いた噂話。
幼子を茶屋に連れ込み、泣き叫ぶ声が聞こえる、と云う。
しかし目の前のでみたすを見てみると、そんな事をする男には見えなくて。
顔だけを見ると、ただの人が良さそうな男なのだが。
- 112 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:54:07.55 ID:jkVisx9oO
-
(‘_L’)「今日は、如何した、珍しい」
(´・_ゝ・`)「少し、相談があってね」
(‘_L’)「相談とは、何だ?」
( ^ω^)(僕ら本当にここに居て良いのかお)
('A`)(分かんねェ、下手するとやべェ話を聞くかも知れねェ)
(´・_ゝ・`)「好いた娘が居るのだがね」
( ^ω^)(凄い普通な相談だったお)
('A`)(帰りてェ)
( ^ω^)(止めなさい)
(‘_L’)「どんな、娘だ」
(´・_ゝ・`)「幼い娘でね、抱くと泣くんだ」
( ^ω^)(帰りてえ)
('A`)(止めなさい)
- 117 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 02:57:30.09 ID:jkVisx9oO
-
(‘_L’)「……それは、泣くだろう」
(´・_ゝ・`)「毒婦の君にも相談したが、同じ事を云われたよ」
(‘_L’)「幾つ、なのだ」
(´・_ゝ・`)「恐らく、未だ十か其処らだろうね」
(‘_L’)「それは、泣くな」
( ^ω^)(それは泣くお)
('A`)(それは泣くなァ)
(‘_L’)「毒婦の君には、どう、云われた?」
(´・_ゝ・`)「せめて、優しくしてやれと」
(‘_L’)「それは、当然では、ないか?」
( ^ω^)゙
('A`)゙
- 122 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:00:39.96 ID:jkVisx9oO
-
(´・_ゝ・`)「私としては、精一杯優しくしているつもりなのだがね」
(‘_L’)「それは、伝わって、いないな」
( ^ω^)゙
('A`)゙
(‘_L’)「しかし、泣かれるのに、抱けるのか」
(´・_ゝ・`)?
(‘_L’)「普通は、嫌がって、抱けんだろう」
(´・_ゝ・`)「ああ」
(‘_L’)?
(´・_ゝ・`)「金で、繋いでいるんだ」
(‘_L’)
( ^ω^)
('A`)
- 124 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:03:17.52 ID:jkVisx9oO
-
(‘_L’)「それは、駄目だな」
( ^ω^)゙
(´・_ゝ・`)「駄目なのか」
('A`)゙
(‘_L’)「お前、どう優しく、しているんだ」
(´・_ゝ・`)「痛むだろうと、早く事を済ませて居るよ」
(‘_L’)「それは、逆効果、だな」
( ^ω^)゙
('A`)゙
(´・_ゝ・`)「嫌がるだろうと、出来るだけ触れずに接吻もしていないよ」
(‘_L’)「それも、逆効果、だな」
( ^ω^)゙
('A`)゙
- 131 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:06:44.71 ID:jkVisx9oO
-
(‘_L’)「お前、それは、無いな」
(´・_ゝ・`)「無いかい?」
(‘_L’)「無い、なあ、お前達」
( ^ω^)「まあ無いお」
('A`)「流石に無い」
(´・_ゝ・`)「ふむ、しかしどうすれば良いだろう」
( ^ω^)「僭越ながらこの僕が一つ二つ云わせて頂くお」
(´・_ゝ・`)「うん?」
( ^ω^)「先ず、金で繋いでいると云ってたお」
(´・_ゝ・`)「ああ、それ以外に繋ぎ方が分からなくてね」
( ^ω^)「金で繋がれれば、その子は『自分は買われた立場であり、嫌でも拒絶出来ない』となるお」
(´・_ゝ・`)「ふむ」
( ^ω^)「そんなんで好きだの嫌いだの、分かる訳ねえお
寧ろ、嫌いだからこんな目に会わされていると思いかねないお」
(´・_ゝ・`)「ふむ」
- 134 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:09:15.73 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「そして二つ、ええと、その……早く事を済ませる、と……」
(´・_ゝ・`)「ああ、出来るだけ早く動き」
( ^ω^)「云わんでよろしい止めなさい」
(´・_ゝ・`)「ふむ」
( ^ω^)「此れがおかしいお」
('A`)゙
( ^ω^)「好きな娘かつ幼い娘に、何でそんな事が出来るんだお」
(´・_ゝ・`)「それは、」
( ^ω^)「痛がってるなら、その分も優しく時間を掛けて痛まない様に気遣うべきだお」
(‘_L’)゙
( ^ω^)「嫌がるだろうから触れないって阿呆かお、嫌がると分かってるなら最初からするなお」
('A`)゙
- 138 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:12:11.22 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「何処ぞの狐ですら気遣って幼い内には手を出さないんだお、忍耐持てお」
('A`)(嘘が一つ聞こえた)
(‘_L’)(流せ)
( ^ω^)「自分から幼子に手を出して金だけ渡して好き勝手に自分勝手
そんな事をしておいてその娘が好きだなんて、流石にむしが良すぎるお」
(´・_ゝ・`)「ふむ…………」
( ^ω^)「お前さんは自分がした事を思い返して、それが好いた娘にする事だと思えるのかお
思えるのなら、お前さんに誰かを愛する資格は無いお、一方的な行為に愛なんざねえお」
('A`)(坊っちゃんが怒ってやがる)
(‘_L’)(こう云った事には、厳しいのか)
('A`)(甘ったれの純愛野郎だからなァ)
- 142 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:17:04.51 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「お前さん、どうせ思いを告げる事もしてないんだお」
(´・_ゝ・`)「……ああ、どうにも口が下手でね……」
( ^ω^)「言葉が無くても伝えられるお」
(´・_ゝ・`)?
( ^ω^)「それこそ抱く時に精一杯優しくするだとか、抱き締めるだとか、接吻をするだとか
優しく頭も撫でてやらず、泣く娘をそのままにして思いが伝わるかお」
('A`)(やべェ、坊っちゃん怖ェ)
(‘_L’)(怖い、な)
(´・_ゝ・`)「…………そう、か……私は、やり方を間違っていたのだね」
( ^ω^)「間違い過ぎだお、嫌われるどころか憎まれかねないお」
(‘_L’)「内藤、落ち着け、その辺りに、してやれ」
( ^ω^)「…………すまんお、言い過ぎてたお」
(´・_ゝ・`)「いや……済まなかった、どうにも私は無知過ぎたらしい」
- 147 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:20:04.57 ID:jkVisx9oO
-
( ^ω^)「その子、大事にしてやってくれお……」
(´・_ゝ・`)「ああ、しかしもう私を嫌っているだろうね、みせりは」
(‘_L’)「また、修復すれば、良い…………みせり?」
(´・_ゝ・`)「ああ、好いた娘の名だよ」
(‘_L’)
( ゚ω゚)
( ゚A゚)
(‘_L’)「狢、歯を食い縛れ、殺す」
(;^ω^)「待て待て待て待て待ておおおっ!!?」
(‘_L’)「離せ、殺す」
(;'A`)「落ち着け落ち着けェエッ!!?」
(‘_L’)「殺す」
(;^ω^)「待てお落ち着けおその辺にしてやれおおおおっ!!!!」
- 155 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:23:15.43 ID:jkVisx9oO
-
狢を食い殺そうと立ち上がったふぃれんくとを二人で必死になって押さえ付け
平然とした顔で、不思議そうに首を傾げる狢の頭を平手で殴る。
逃げも隠れもせず、どくおに叩かれた頭を撫でるでみたす。
目の前で己を殺そうと暴れるふぃれんくとの姿を、本当に不思議そうに見ていた。
小一時間そんな事を繰り返し、やっと落ち着いたらしいふぃれんくとは
でみたすの耳を目一杯引っ張りながら、不機嫌そうな顔をする。
(´・_ゝ・`)「そうか、白稚児だったのかみせりは」
(‘_L’)「気安く、名を呼ぶな」
(´・_ゝ・`)「ふぃれんくと」
(‘_L’)「何だ」
(´・_ゝ・`)「君の白稚児を貰っても良いかい」
(‘_L’)「死ね」
(;´ω`)
(;'A`)
- 160 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:26:08.62 ID:jkVisx9oO
-
(´・_ゝ・`)「しようがないだろう、私はみせりに誘われたんだよ」
(‘_L’)「誘われた?」
(´・_ゝ・`)「ああ、夜鷹をしていた」
(‘_L’)
(;゚ω゚)
(;゚A゚)
(‘_L’)「それで、買ったのか」
(´・_ゝ・`)「ああ」
(‘_L’)「死ね」
(´・_ゝ・`)「けれど、私は金をちゃんと出したよ」
(‘_L’)「そう云う、問題では、ない」
- 164 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:29:16.66 ID:jkVisx9oO
-
(;^ω^)「まあ……その辺は当人らで話し合ってくれお……」
(;'A`)「その辺の事ァ俺らは知らねェからな……」
(´・_ゝ・`)「しかし、私はどうすれば良いのだろうか」
(;^ω^)「取り敢えずみせりちゃんに謝れお……んでちゃんと話せお……」
(´・_ゝ・`)「ああ、分かった」
(‘_L’)
(;'A`)「狗神の旦那も、ほら落ち着けよ……」
(‘_L’)「落ち着いて居る、しかし白稚児は、渡さん」
(;^ω^)(あんまり落ち着いてねえお……)
(;'A`)(落ち着いてねェな……)
(‘_L’)「白稚児は、俺の物だ」
( ^ω^)(ここにもぺどのにほひが)
('A`)(云うな)
- 169 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:32:21.27 ID:jkVisx9oO
-
取り敢えず後は勝手にしてくれ、と二人が狗神宅を後にする。
残された二匹が喧嘩をしようが、もう知った事ではない。
坊っちゃんとどくおは、空になった重箱をぶら下げながら歩く。
('A`)「しかし珍しいな、坊っちゃんがあんなに云うたァ」
( ^ω^)「お……」
('A`)「怒ってただろ、坊っちゃん」
( ^ω^)「……ちょびっとだけ」
('A`)「無理もねェけど……余り怒るなよ、怖ェんだよ坊っちゃんが怒ると」
( ´ω`)「すまんお……何か、カッとなっちまったお……」
('A`)「……良いさ、帰ろう、腹も減っただろ」
( ´ω`)「おー……」
('A`)「しょぼくれんな、オラ」
- 173 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:35:08.65 ID:jkVisx9oO
-
どくおに頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜられ、
背中をぐんにゃり曲げた坊っちゃんが、ううと小さく唸る。
まだまだこいつも、がきだなあ。
肩を揺らして可笑しそうに、小さな牙を覗かせてどくおが笑った。
手がかからなくなったと思っても、がきはがき。
幾つになっても、どくおからすれば坊っちゃんは坊っちゃんで。
だからこそ、坊っちゃんが色恋沙汰に興味を持つのは、少し良い気がしなかった。
親代わり故の独占欲かと、困った様に笑い、息を吐いた。
さて、今日の晩飯は何にしようか。
そうどくおが呟けば、坊っちゃんはぱっと顔を明るくして、何が食いたいかを口にする。
そして呆れた様に笑うどくおに、坊っちゃんもまた笑って。
これもまた、日常の風景であった。
- 180 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:38:07.94 ID:jkVisx9oO
- ◎
娘が一人、茶屋の座敷に居た。
布団の上で正座をし、己を買う相手がやって来るのを待つ。
イ ルノ− )リ「…………」
また、痛い思いをするのか。
自業自得だと分かっていても、また身を引き裂かれるのかと思うと冷や汗が出る。
ぎゅうと着物の裾を強く握っていると、廊下を歩く音が聞こえた。
男の足音だと下唇を噛み、恐怖を飲み込む。
すると、たん、と障子が開かれ、男が座敷へと足を踏み入れる。
みせりがのろのろと顔を上げれば、そこには予想通りの男の顔。
盛岡でみたすが、何時も通りの無表情で立っていた。
- 181 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:40:15.12 ID:jkVisx9oO
-
イ ルノ− )リ「…………また、痛いの、すんの……?」
(´・_ゝ・`)「…………いや」
イ ルノ− )リ「へ……?」
(´・_ゝ・`)「もう、君を買う事は止めようと思う」
イ;ルノ−゚)リ「ぇ……え、?」
(´・_ゝ・`)「今まで、済まなかったね、痛い思いばかりをさせて」
イ;ルノ−゚)リ「や、ぁ……あの……え?」
(´・_ゝ・`)「これは、詫びだと思って受け取って欲しい」
イ;ルノ−゚)リ「へ……ぇ、ええ……?」
(´・_ゝ・`)「それじゃあ、これで」
イ;ルノ−゚)リ「え、ちょ、ま……え、な、何……?」
- 187 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:42:27.63 ID:jkVisx9oO
-
現れてみせりの前で腰を屈めたかと思うと、
でみたすはずっしり中身の入った袋をみせりへ渡し、すぐに立ち上がる。
一方的によく分からない別れを切り出され、みせりは目を丸くするばかり。
別に痛い思いをもうしなくて済むのは、嬉しい事。
自分を買うのを止めると云う事は、もう解放されると云う事。
と分かっては居ても疑問は拭えず、出て行こうとするでみたすに
みせりは慌てて腰を上げて、その着物の裾を掴み、足止めをした。
イ;ルノ−゚)リ「ま……待って、待ってよ!? なん、なんなの? 急にっ!!」
(´・_ゝ・`)「これ以上、君を傷付けたくはない」
イ;ルノ−゚)リ「はぁ!? 何そんな今さら!!」
(´・_ゝ・`)「私は君を傷付けるつもりは無かった、だが実際は傷付けていた」
イ;ルノ−゚)リ「は、はぁ? ちょ、ま、待って、とりあえず座って話して、わけわかんない」
(´・_ゝ・`)「ふむ……」
- 188 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:44:24.95 ID:jkVisx9oO
-
イ;ルノ−゚)リ「……で……何で? こないだまで、あんなおっかなかったのに」
(´・_ゝ・`)「やはり、怖かったのか」
イ;ルノ−゚)リ「あたんまえでしょ、ぶぁっかじゃないの」
(´・_ゝ・`)「すまない」
イ;ルノ−゚)リ「…………ちょーし狂うなぁ……で、何でいきなり?」
(´・_ゝ・`)「今日、叱られてね。私のやり方は間違っていると」
イ;ルノ−゚)リ「間違ってる……?」
(´・_ゝ・`)「ああ、好いた娘にする事ではない、と」
_,
イ;ルノД゚)リ
(´・_ゝ・`)「良かれと思ってした事は、全て逆効果だとも教えられてね」
_,
イ;ルノД゚)リ「……はぁ」
(´・_ゝ・`)「そうだ、私は君が愛しいのだがね」
_,
イ;ルノД゚)リ「この状況でそれ云うの!?」
- 191 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:46:05.88 ID:jkVisx9oO
-
(´・_ゝ・`)「何か、また間違っていたかい?」
_,
イ;ルノД゚)リ(間違いってモンじゃねぇ……!!)
(´・_ゝ・`)「すまないね、どうにも私は口が下手で」
_,
イ;ルノД゚)リ(口下手とかじゃなくて生粋の阿呆だこいつ)
_,
イ;ルノД゚)リ「…………痛くしたり止めてくんなかったのは、何で?」
(´・_ゝ・`)「出来るだけ早く済ませた方が良いかと思って」
_,
イ;ルノД゚)リ(阿呆だ、本物の阿呆だ)
_,
イ;ルノД゚)リ「何か、言ってくれても……ああ口下手なのか……
せめてもっと優しく……こう、頭とか撫でてくれても……」
(´・_ゝ・`)「私に触れられるのは嫌がるかと思ってね」
_,
イ;ルノД゚)リ(阿呆とかじゃない、頭おかしいのかも知れない)
- 193 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:48:46.92 ID:jkVisx9oO
- _,
イ;ルノД゚)リ「……あの、夜鷹の真似事してたわたしが悪いんだけどさ」
(´・_ゝ・`)「ふむ」
_,
イ;ルノД゚)リ「嫌がられるの気にするなら、最初からすんなよ」
(´・_ゝ・`)「皆にも云われたよ」
_,
イ;ルノД゚)リ
(´・_ゝ・`)「だから、もう君を傷付けない様にと云いに来た」
_,
イ;ルノД゚)リ
(´・_ゝ・`)「私の無知故に君を傷付けてすまなかった、もう君を買いはしない」
_,
イ;ルノД゚)リ
(´・_ゝ・`)「そして、もう君に会う事も止めよう、本当にすまなかった」
_,
イ;ルノД゚)リ「ちょいまち」
(´・_ゝ・`)「うん?」
- 199 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:50:19.44 ID:jkVisx9oO
- _,
イ;ルノД゚)リ「あの……悪いの、わたしの方だから……」
(´・_ゝ・`)「しかし、」
_,
イ;ルノД゚)リ「だって、だまくらかして財布すってるんだし」
(´・_ゝ・`)「まだ、それは続けるのかい?」
_,
イ;ルノД゚)リ「……もう、止める、本当に」
(´・_ゝ・`)「そう、か」
_,
イ;ルノД゚)リ「んだから、あの、その……別に、会うのまで止めなくても……」
(´・_ゝ・`)「それは、私を許してくれると云う事かい?」
_,
イ;ルノД゚)リ「……うん、まあ……悪いの、みせりだし……」
(´・_ゝ・`)
_,
イ;ルノД゚)リ
(´・_ゝ・`)「また、抱いても良いのかい?」
_,
イ;ルノД゚)リ「それは止めて」
- 200 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:52:17.64 ID:jkVisx9oO
-
何とか和解、と云って良いのかは分からぬが、和解をしたらしいみせりとでみたす。
よく分からない関係ではあるが、二人はごく普通に茶屋から出て、帰路に就いた。
何か拍子抜けだな、とみせりは笑う。
しかし、もう悪い事は止めようと肩を竦め、方向を変えて番屋へと向かった。
風呂敷から大量の財布を取り出し、番屋の台にこっそりと置いて出て行く。
今まですってきた財布には、でみたすから貰った小判がぎっしり。
落とし物と一筆添えたし、これで少しばかり気分がすっきり。
溜め息混じりのみせりの顔は、少し穏やかで落ち着いていた。
さて、早く戻っておやっさんの夕飯にしないと、また拗ねてしまう。
軽い足取りでとんとんと歩き、元気良く玄関の障子を開けた。
ミセ*/ヮ^)リ「たっだーいまー!!」
(#‘_L’)
ミセ;/ヮ^)リ
- 203 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:54:04.84 ID:jkVisx9oO
-
「うぎゃああああああああああああ!!!?」
「お前、自分が何をしていたか、分かっているのか」
「ひっ!? うわああああああごめんなさいごめんなさ痛ああああああっ!!!!」
「夜鷹の真似事に、すりとは、お前は」
「ぎゃあああああっ!! 痛い痛い痛いお尻叩かなふぎゃああああああああああああっ!!!!」
「……」
「痛い痛いってごめんなさいごめんなさいもうしません本当にもうしませんっ!!!!」
「……」
「おやっさん何か云ってぎゃあああああっ!! 腫れる腫れるごめんなさああああああいいっ!!!!」
「……」
「本当にもうしませんごめんなさいっだあああああああああああああいっ!!!!」
- 207 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:56:16.24 ID:jkVisx9oO
- ◎
(゚、゚トソン「よう、大福と魚の骨」
( ^ω^)「お、とそん」
('A`)「魚の骨ってェのは俺か」
(゚、゚トソン「おう、変態から伝言だ」
( ^ω^)「居すぎてどれか分からんお」
(゚、゚トソン「百鬼夜行を手伝うってよ」
( ^ω^)「あ、でみたすかお」
('A`)「こないだ言い損ねたが、知ってたんだな」
( ^ω^)「って事は、もしかしたらみどりちゃんと上手く行ったのかお?」
(゚、゚トソン「行ったら行ったで問題だろうが」
('A`)「そりゃァそうだ」
- 210 ◆XCE/Wako2nqi 2009/10/01(木) 03:58:23.41 ID:jkVisx9oO
- 可愛屋の長椅子に腰掛けて、団子を貪る坊っちゃんとどくお
その前へふらりと現れたのは、都村屋の若き店主とそん。
一反木綿の背に乗り、ふわふわと浮かんでは綺麗に切り揃えられたおかっぱが揺れる。
その口から告げられたのは、盛岡屋のでみたすからの伝言で。
坊っちゃんはぼんやりそらを見上げ、ほっと息を吐いた。
狗神様の細道は 行きはこわくて 帰りはよいよい、ってか。
くすりと笑い、熱い茶をずずとすすった。
⌒*リ;´・-・リ「いやぁあああああああああっ!!」
_,
ミセ;/Д゚)リ「うぎゃあああああああああああっ!!」
爪*'ー`)y‐「待て待て待て待てりぃりちゃあああああんぅふはははははははぁ」
(´・_ゝ・`)「みせり待つんだ、逃げるんじゃない」
すっかり空も高くなったなあ、ああ、熱い茶がうまい。
『残り 八十一匹』
おしまい。