- 76 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 22:51:05.90 ID:zJZzxIaYO
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\ / く l ヽ._.ノ ', ゝ \ < おっぱい! >
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ヽ._> \__)
- 78 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 22:53:40.02 ID:zJZzxIaYO
-
時には夜行の列から外れ、互いの胸を明かしてみよう。
恋の花に愛の花。
弓引く乙女の底力。
町の娘のはなやぎは、胸に乗せたる想いの重さ。
( ^ω^)百鬼夜行のようです。
【番外編 百発百中 その胸射抜け。 】
恋に恋せよ乙女達。
意中の殿方仕留めるために、時にはほのぼの穏やかに。
弓引き射止めよ乙女達。
恋の矢片手に眼光鋭く。
- 83 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 22:55:23.48 ID:zJZzxIaYO
- _,
ξ#゚听)ξ「ばれいんです、とそん!」
,_
(゚、゚;トソン「……は?」
_,
ξ#゚听)ξ「ばてれんたいんです! 二月の!」
,_
(゚、゚;トソン「意味が解らねぇし、ばれんたいんだし、取り敢えず帰れ」
_,
ξ#゚听)ξ「そうです、そのばてれんなんです!」
,_
(゚、゚;トソン「いやだから……もう何だよお前いきなり、意味解らねぇ……」
_,
ξ#゚听)ξ「私は二月にちよこれいとを渡すどころか妹に食べられてしまい時期も逃しました!」
,_
(゚、゚;トソン「……そうかよ」
_,
ξ#゚听)ξ「だから! 私は!」
,_
(゚、゚;トソン「人間でも止めるのか?」
_,
ξ#゚听)ξ「違います! 内藤さんに何かを贈るんです!!」
,_
(゚、゚;トソン「……勝手に贈れよ、つか元から人間じゃねぇって突っ込めよお前……」
- 86 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 22:58:02.24 ID:zJZzxIaYO
- _,
ξ#゚听)ξ「とそん!!」
,_
(゚、゚;トソン「本当に人の話聞くの嫌いだなお前……んだよ」
_,
ξ#゚听)ξ「何をどう贈れば良いか知恵を貸して下さい!!」
,_
(゚、゚;トソン「断る」
_,
ξ#゚听)ξ
,_
(゚、゚;トソン
ξ゚听)ξ「え?」
,_
(゚、゚;トソン「……いや、断る」
ξ゚听)ξ「…………」
,_
(゚、゚;トソン「…………」
ξ゚听)ξ「……なんで?」
,_
(゚、゚;トソン「めんどっちい」
- 88 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:00:37.91 ID:zJZzxIaYO
-
ξ゚听)ξ「仮にも友達にそう吐き捨てますかあなたは……」
(゚、゚;トソン「だってお前、私に色恋沙汰の相談とかよ……」
ξ゚听)ξ「とそんは好きな方はいらっしゃらないんですか?」
(゚、゚;トソン「い、いねぇよ……」
ξ゚听)ξ
(゚、゚;トソン
ξ゚听)ξ「本当に?」
(゚、゚;トソン「ほ、本当に……」
ξ゚听)ξ「絶対に?」
(゚、゚;トソン「ぜ、絶対に……」
ξ゚听)ξ「嘘吐いたら、生卵飲ませますよ?」
(゚、゚;トソン「いやお前じゃねぇんだから……」
- 89 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:02:48.39 ID:zJZzxIaYO
-
ξ゚听)ξ「だって、だってですよ? 年頃の娘が恋をしないなんて異常とも云えますよ?」
(゚、゚;トソン「知らねぇよんなもん……つか、お前はそんなにしてんのかよ」
ξ゚听)ξ「私は十年以上の片想いをしていますから」
,_
(゚Д゚;トソン「な、なげぇッ!?」
ξ゚听)ξ「だってですよ、私はあの方と初めて会った日から、ずっと想いを重ねてきたんです」
(゚、゚;トソン「……内藤?」
ξ゚听)ξ「はい」
(゚、゚;トソン「…………ずっと疑問だったんだけどよ」
ξ゚听)ξ「はい?」
(゚、゚;トソン「お前、うわばみだけどさ、贔屓目に見ても見なくても平均以上に顔は良いじゃねぇか」
ξ゚听)ξ「でれの方が可愛いですよ?」
(゚、゚;トソン「この姉馬鹿が、否定はしねぇけどあの手の面って女受けはいまいちだぞ」
ξ゚听)ξ「飲みますよ」
(゚、゚;トソン「やめろ。いやだから、お前は可愛いだろうが」
- 93 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:05:49.37 ID:zJZzxIaYO
-
(゚、゚トソン「平均以上の面と頭と気立てのお前が、何であれを好きなんだ?」
ξ*´兪)ξ「そ、そう真正面から褒められると照れますねこれは……」
(゚、゚トソン「胸は全くねぇけどな」
ξ゚听)ξ
(゚、゚トソン「あいつは育ちは良いが甘ったれのボンボンだろ、何がそんなに良いんだか」
ξ゚听)ξ「噛み砕きますよ」
(゚、゚トソン「一応ごめん」
ξ゚听)ξ「大体、たったそれだけの情報で内藤さんの良さを計らないで下さい」
(゚、゚トソン「あー? だから、どこが何でそこまで良いんだよ?」
ξ゚听)ξ「ふむ…………じゃあ、お話ししましょう、長くなりますが」
(゚、゚トソン「やっぱ良いわ帰れ」
::ξ#゚゚皿゚゚)ξ::シャーッ!!
(^ヮ^*トソン「うっわーい超聞きてぇなっ!!」
- 95 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:08:22.51 ID:zJZzxIaYO
-
ξ--)ξ「こほん、あれはですね、私がまだ四つかそこらの時です」
(-、-;トソン「へーへー……こいつ本当につんでれしてねぇな……」
ξ゚听)ξ「私は、友達が居ませんでした」
(-、-;トソン「んだよそのいきなりのぼっち宣言……」
ξ゚听)ξ「未だ、変化が下手だったんです。この様に人の形を保つ事が出来ませんでした
とそんと出会ったのは変化が上達してからですが、昔は半身が蛇の異形者でしたから」
(-、゚トソン「まぁ蟒蛇の一族はそうだろうな、下半身が蛇」
ξ゚听)ξ「両親は未だ健在でしたが多忙で家を空ける事が多く、妹も居ません」
(゚、゚トソン「妹は七つか其処らだから……歳離れてんな」
ξ゚听)ξ「はい、でれは両親の今わの際に産み落とした卵ですから」
(゚、゚トソン「……ちょっと腰折るけど…………何で、亡くなったんだ?」
ξ゚听)ξ「…………外で……、襲われました」
- 97 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:10:51.35 ID:zJZzxIaYO
-
ξ゚听)ξ「……両親は共に外へ出て、他所の町などに装飾品を売りに行っていました
その帰りに、外の妖怪に、追い剥ぎに襲われて、瀕死の状態で町に戻って来ました」
(゚、゚トソン「……」
ξ゚听)ξ「母はでれを身籠っていて、その仕事から戻って来たら暫く家に居る筈だったんです」
(゚、゚トソン「……そっか」
ξ゚听)ξ「……襲った犯人、どうなったか知ってますか?」
(゚、゚トソン「いや……どう、なった? 捕まったのか?」
ξ゚听)ξ「…………私の一族は、何だと思います?」
(゚、゚トソン「? 蟒蛇、だろ?」
ξ゚听)ξ「蛇蠱です」
(゚、゚トソン「へび、みこ……って、」
ξ゚听)ξ「蠱毒の一種ですよ、始まりは呪術の道具、そこから時が流れて憑き物筋
私達は、その憑き物である毒蛇です」
- 98 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:12:34.65 ID:zJZzxIaYO
-
(゚、゚トソン「へー……犬神と似た様なもんか、蠱毒は知ってるけどそう関わりねぇし」
ξ゚听)ξ「……」
(゚、゚トソン「んだよ」
ξ゚听)ξ「引かないんですか?」
(゚、゚トソン「引いてほしいの?」
ξ;゚听)ξ「あ、いえ、その……怖がらないのかと思って」
(゚、゚トソン「別に、てめぇが悪さするわけじゃねんだろ」
ξ;゚听)ξ「は、はい……でも蛇蠱は、内臓に食い込み食い荒らして相手を殺す者ですよ?」
,_
(゚Д゚;トソン「何だそれ! こえぇっ!!」
ξ;゚听)ξ「怖がるの遅いですよ……」
- 100 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:15:05.28 ID:zJZzxIaYO
-
(゚、゚;トソン「……予想以上だなお前」
ξ゚听)ξ「はぁ……それに私は、一族でも珍しい蛇の目を継いでいます」
(゚、゚トソン「じゃのめ? 傘か?」
ξ゚听)ξ「よくある、相手を石化させるあれです」
(゚、゚;トソン「蛇盛り沢山だなお前……」
ξ゚听)ξ「試してみます?」
(゚、゚;トソン「いや結構、どんな目になるのか気になるけど」
ξ++)ξ゙
(゚、゚トソン「何その顔」
ξ゚听)ξ「蛇の目」
(゚、゚トソン(予想以上にしょっぺぇ)
ξ++)ξ゙
(゚、゚トソン「止めんか」
- 101 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:17:25.81 ID:zJZzxIaYO
-
(゚、゚トソン「取り敢えず、犯人がどうなったのかは何となく解った」
ξ゚听)ξ「そうですか?」
(゚、゚トソン「えぐい話は聞きたくねぇんだよ、どうせ内臓食い荒らされて死んだんだろ」
ξ゚听)ξ「まあそうですね」
(゚、゚トソン「予想通りだ馬鹿野郎」
ξ゚听)ξ「父が最後まで母を守ろうとしたんですけどね、町に住んで長かったものですから」
(゚、゚トソン「あー……衰えてたのか」
ξ゚听)ξ「蛇蠱の筋がこれか、とよく笑われていたみたいです。元は、弱い筋ではありませんから」
(゚、゚トソン「……」
ξ゚听)ξ「まあ、その筋も私達の代で終わりです」
(゚、゚トソン「悲しいか?」
ξ゚听)ξ「多少は、でも所詮は憑き物ですから。
本来なら、もっと早くに薄れるべきの、忌むべき血筋です」
- 103 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:20:05.85 ID:zJZzxIaYO
-
(゚、゚トソン「……妖怪は大変だな、血筋とか種族とか」
ξ゚听)ξ「それは人間もでしょう?」
(゚、゚トソン「……ま、それもそうか」
ξ゚听)ξ「話が随分それてしまいましたね、戻しましょう」
(゚、゚トソン「おう、悪い」
ξ゚听)ξ「いえ…………それで、ああそうだ、私は友達が居なくて」
(゚、゚トソン「うん」
ξ゚听)ξ「いつも一人で、はいんさんの神社で遊んでいました
半身蛇の異形では、皆が気味悪がってしまいましたから」
(゚、゚トソン「…………人間も、我が儘だよなぁ……人の良い事云うけど、結局は差別だ」
ξ゚听)ξ「でも私は好きですよ、良い所も悪い所も」
(゚、゚トソン「…………可愛いなお前は」
ξ゚听)ξ「とそんもね」
- 104 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:23:17.86 ID:zJZzxIaYO
-
はいんの姐様に構われて、つんは一人でとんとん手鞠。
歳の近い子供達は、皆、人の姿を持っている。
あやかしの子であろうとも、異形と云う程の者は他には居らず。
下半身が蛇の尾では、かけっこもままならず。
動きは遅く、見た目は異形。
社交的とは云えぬつんの性格。
ひとりぽっちになる事は、容易く予想の出来る事。
昔から口下手で、厳しい両親の教えに従い、言葉はいつでも固い敬語。
表情を表に出す事も、楽しそうにする事も下手だった。
子供は時に残酷で、己と違えば異端と思う。
脚の持たないつんを笑い、石を投げては逃げて行く。
それを追う事も、怒る事も泣く事も、つんには上手く出来なかった。
- 105 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:24:19.50 ID:zJZzxIaYO
-
いつでも一人。
巫女や蟻に構っては貰えるが、その孤独は埋まる事を知らず。
一人でつく鞠の音。
てんてんと、孤独に響く。
ふと、その鞠がつんの手から離れた。
受け止めそこねた鞠はころころと、境内を転がり行く。
慌てて鞠を追い掛けるが、つんの動きは鈍く、追い付けず。
階段の下へと転がり落ちた鞠を追い、下を覗こうとした時。
「おっ」
小さな悲鳴が、聞こえた。
- 106 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:26:51.97 ID:zJZzxIaYO
-
「ふむ、大丈夫か」
「おー、いたいおー……」
「手鞠か、上から落ちてきたのであるな」
「おー? きれいですお」
「うむ、綺麗であるな」
階段の下から聞こえる会話。
幼い声と低い男の声。
ゆっくりと登る足音と共に、人影が登って来るのが見えて。
「お、ちちうえ」
「む?」
「おんなのこがいますお」
「ほう」
- 109 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:29:05.46 ID:zJZzxIaYO
-
ひょいと姿を現したのは、つんの手鞠を持った、身なりの良い幼子で。
癖のある茶色い髪に、ほやほやとした穏やかな笑顔。
にこにこ朗らかに笑いながら、とことこと幼子がつんの元へと駆けて来る。
そして、手鞠をずいと差し出した。
「きみのかお?」
「ぁ……は、はい……」
「なくさなくてよかったお、おとしちゃだめだお!」
「ご、ごめん、なさい…………ありがとう、ございます」
「おっ、きみのなまえはなんだお? ぼくはないとーだお!」
「ないとー……さん?」
「だお!」
「わ、わたしは……つん、です……とうげん、つん……」
「とーげん?」
「あ、み、みょうじ、です……」
- 111 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:32:07.21 ID:zJZzxIaYO
-
「息子よ、勝手に行くでない」
「お、ごめんなさいおちちうえ!」
「ふむ、これは……蛇の娘か?」
「! は、はじめ、まして……」
「とうげん……頭元家の蛇か、娘が居ると云っていたな」
「……? わたしのうちを、ごぞんじですか?」
「うむ、馴染みである。息子をよろしく頼むぞ、頭元の娘」
「は、はい!」
ふわふわと、大きい武骨な手が小さな頭を撫でる。
それは両親とはまるで違うが、とても優しい温もりで。
つんは嬉しそうに目を細め、それを見ていた幼子も、嬉しそうな顔をした。
- 112 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:35:10.27 ID:zJZzxIaYO
-
「我輩は巫女に話をしに行く、良い子にして居るのだぞ」
「はいですお!」
「……」
「お?」
「りっぱな、おとうさま、ですね」
「お、りっぱだお!」
「……あなたは、きみわるく、おもわないんですか?」
「なにがだお?」
「…………わたし、を」
「なんでだお?」
「あの……へび、だから」
「おー? おっぽ、きれいだお」
「へ……」
- 114 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:38:07.42 ID:zJZzxIaYO
-
「うろこがきらきらしてるお、きれいだお!」
「…………」
「ぼくはふつうのあししかないし、へんしんできないお、うらやましいお」
「……わたしは、ひとのあしが、うらやましいです」
「お? そうかお?」
「…………はい、へびだと、いじめられます、それに……どこにもいけない」
「じゃあぼくが、きみのあしになるお!」
「はい、?」
「きみがどっかいきたいなら、ぼくがつれてくお!」
「へ、ぇ、?」
「だからきみは、ぼくのかわりにぼくのおっぽになってほしいお!」
「…………は、はい」
「やくそくだお!」
「……はい!」
- 118 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:43:42.19 ID:zJZzxIaYO
-
「じゃあ、よろしくだおつん、ぼくのおっぽ!」
「……よろしく、です……わたしのあし、ないとうさん」
「おっおっ、つんのおとうさんはいないのかお?」
「わ、わたしのちちは……おしごとにでてますので……」
「あんまりあえないのかお?」
「……はい」
「じゃあぼくといっしょだお!」
「? でも、おとうさまが……」
「ちちうえはほんとのおとうさんじゃないし、あんまりあえないお……」
「あ……ご、ごめんなさい……」
「でも、つんがいるお! おうちにも、その……こわいけど、かぞくいるお」
「こわい、かぞく?」
「おー……どくおっていうんだお、ちょっとこわいんだお……」
「こわいん、ですか?」
- 119 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:46:46.74 ID:zJZzxIaYO
-
「おー…………いっつもおこってて、たたいてくるお……」
「!?」
「でも、ぼくのかぞくだお! こんどあわせるお!」
「……はい」
それから、戻ってきた少年の父が偉大なる雷獣公であると知るのはすぐの事。
そして、雷獣公から、息子を頼むと任されるのも、すぐの事であった。
ふやふやと微笑む優しさに、心は溶かされ暖まり。
淡く甘く幼い恋心となる事には、未だ気付かず。
それからと云うものの、あの笑顔が孤独を埋めてくれた。
一人の寂しさは、あたたかな笑顔で消え去った。
小さな心の小さな支え。
つんの二つほど歳が上の坊っちゃんは、歳よりも少し幼い。
精神的な年齢は、つんの方が上とも云える。
- 120 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:50:25.11 ID:zJZzxIaYO
-
暇があれば二人で遊び、つんがいじめられれば、坊っちゃんが棒っ切れを振り回して追い回す。
坊っちゃんは、喧嘩は弱いが足は早く、泣きながらもいじめっこ達を撃退した。
逆に坊っちゃんがいじめられた場合は、つんが言葉で追い詰めた。
子供には避けられがちなつんは、大人から礼儀正しい子だと人気がある。
坊っちゃんと仲良くなり、言葉を口にする事にも慣れたつんに、口喧嘩で勝てる者は居なかった。
悪戯もよくした。
蛙を捕まえて、いじめとは怒られた事もあった。
その時は、二人並んで説教を受けたものだが。
寂しい二人の幼子がした事は、案外すぐに許された。
今まではなかった刺激。
つんを連れてそこらじゅう、悪戯しつつ駆け回る。
楽しくて楽しくてしょうがなかった。
つんが人に化けられる様になっても、その日々は終わらない。
毎日毎日楽しくて、戸惑いながらもたくさん笑った。
- 121 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:53:16.96 ID:zJZzxIaYO
-
やんちゃな子供時代。
やり過ぎる坊っちゃんをつんが叱る事も、坊っちゃんを馬鹿にする子供を叱る事もあった。
けれど、つんが激怒する事は、無かった。
あの時までは。
それはある日のある時、ある昼下がり。
昼から遊びに行こうと約束していた坊っちゃんが、いつまでも経っても現れない。
その事を不思議に思い、つんが坊っちゃん宅を訪れた。
もう足もある、雷獣公から坊っちゃんを任せられ、妙な使命感もあった。
それよりも強い、坊っちゃんを想う気持ちもあった。
そんなつんの耳に飛び込んだのは、坊っちゃんの泣きじゃくる声だった。
- 122 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/25(日) 23:57:10.87 ID:zJZzxIaYO
- 「失礼します内藤さん、いらっしゃいま」
「ごめんなさいお、ごめんなさいお! ごめんなさいおっ!!」
「す……か…………?」
「いたいお、いたいおっ! ごめんなさいおっ!」
「ッせんだよガキがッ! へらへら笑って殴られたらすぐ泣いて、泣けば良いと思ってンのかッ!?」
「ごめんなさいお、ごめんなさいお! ごめんなさいお! ごめんなさいおっ!!」
「うるせェ黙ってろッ! だからガキは嫌いなんだよ鬱陶しいッ!!」
「あぐっ、ぅっ……ごめんなさいお、ごめんなさいおっ……」
「うっせェ泣くなッ!! ガキがァッ!!」
「ぅ、あぅっ……うっ、ぐ……ごめ、なさ……お……」
幼子を蹴る男の姿。
小さく丸まって泣きじゃくる幼子の声。
顔や体に残る打撲痕。
血の滲んだからだ、くちもと。
さあっと、血の気が引くおとが、きこえた、きがした。
- 123 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:00:05.79 ID:0O+nvpQ8O
-
あの内藤さんが泣いている。
あの内藤さんが殴られている、蹴られている。
いつもふわふわ幸せそうに笑うあの顔が。
今は涙と血と恐怖で染まっている。
あれは何だ。
あれは、何だ。
内藤さんが、内藤さん、わたしの、ないとうさん。
わたしの、だいすきな、ないとうさん、が、泣い、て
「お前ぇええええええええええッ!!!!」
「ッ! な、ッ!?」
「内藤さんに何をしている、何をしているッ!? なぜ内藤さんを殴るッ!?」
「ンっだよガキが、お前は黙っ」
「黙れ外道がッ!! お前が内藤さんを殴る道理がどこにあるッ!? 内藤さんがお前に何をしたッ!?」
- 124 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:02:07.84 ID:0O+nvpQ8O
-
「ぉ……つん……?」
「内藤さん、大丈夫ですか内藤さんッ!?
……ッ私の、私の大好きな内藤さんを……よくも泣かせたな…………ッ」
「チッ……ガキがこぞって鬱陶しい……ガキに解るかよ、幸せそうに育ったガキにッ!!」
「だから内藤さんを泣かせるのか、お前の利己で内藤さんを泣かせるのか」
「だったら何だッてんだよガキがッ!!」
「………………喰い殺してやる」
「ァあ?」
「石にして腹からはらわたから喰い荒らして殺してやる噛み砕いてやる
へびみこはお前の腹から喰い潰し喰い荒らし苦痛だけを与えてやる
私ははへびみこのつん、私は内藤さんの蛇、私は内藤さんの鱗、尾、毒、
念仏を唱えろ外道、内藤さんを泣かせるのかなら牙を剥く、蛇を怒らせた罪は重いと知れッ!!!!」
「なっ……!? なん、おいッ! ……な……ッ!?」
- 128 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:04:15.75 ID:0O+nvpQ8O
-
座敷へ飛び込み、坊っちゃんを抱き締めたつんが男を睨む。
両の眼を見開いて、言葉を吐き出し睨み付ける。
すると、男の足から、じわじわと温もりが消えて行くのが解った。
足の先から徐々に、動かなくなる。
冷たくなる。
石化していってるのだと気付いたのは、男の脛まで石となった後で。
己の足から、つんに目を向けた。
その幼い双眸は、憎しみのみで彩られていた。
ぞっ、と背筋が冷える。
一度死んだ男でもこんな目は、見た事がなくて。
「おー……つん……?」
「! 内藤さん!? 大丈夫ですか!?」
「どくお……いじめないで、くれお……」
「ッ!?」
- 130 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:06:22.34 ID:0O+nvpQ8O
-
「ちょっと、こわいけど……ぼくの、かぞくだおー……」
「…………ッ解り、ました」
「お……ありがとうお、つん…………ごめんなさいお、ごめんなさいおー……」
「……私にまで、謝らないでください…………内藤さんは悪くないんです」
「おー……ごめんなさいお……」
「……内藤さん……」
ごめんごめんと繰り返す小さな体に、つんはぎり、と歯軋りをした。
どうして謝るのか解らなくて、ただただ男が恨めしくて。
己の無力さを呪い、つんの目に、涙が滲んだ。
石化から逃れられた男はこの後に、坊っちゃんの両親からこってりと絞られる事になるが。
それはまた、別の話。
- 132 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:08:24.85 ID:0O+nvpQ8O
-
ξ゚听)ξ「と、云う馴れ初めでした」
(゚、゚;トソン「お前の怖い話しとのろけじゃねーか……」
ξ゚听)ξ「怖い?」
(゚、゚;トソン「こえーよ……覚醒してんじゃねぇか……」
ξ゚听)ξ
(゚、゚;トソン
ξ++)ξ゙
(゚、゚;トソン「止めろ」
ξ゚听)ξ「そんな訳で、協力して下さい」
(゚、゚;トソン「何がどう云う訳か解らねぇししたくねぇ」
ξ++)ξ゙
(゚、゚;トソン「手伝ってやるから止めろ」
- 136 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:10:33.30 ID:0O+nvpQ8O
-
(゚、゚トソン「……大体、何をどう手伝うんだよ」
ξ゚听)ξ
(゚、゚トソン
ξ゚听)ξ
(゚、゚トソン「考えて無かったな」
ξ;゚听)ξ「そ、そんな事は、あの、その」
(゚、゚トソン「あの大福に何かやるのは解ったけどよ、何をやるんだ?」
ξ;゚听)ξ「え、えっと、その」
(゚、゚トソン(それを聞きに来た事も忘れてんなこいつ)
ξ;゚听)ξ「な、内藤さんの好きなもの……とか……?」
(゚、゚トソン「何が好きなんだよ」
ξ;゚听)ξ「あ、甘い、もの?」
(゚、゚トソン「どくおが作るしお前んとこ食いに来るだろ」
ξ;゚听)ξ「あ、そ、そっか……えっと……」
- 137 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:12:40.11 ID:0O+nvpQ8O
-
(゚、゚トソン「つか、どくお悪かったんだな」
ξ゚听)ξ「仲直りしましたから、悪くはありませんよ」
(゚、゚トソン「へー」
ξ゚听)ξ「それより、どうしましょう……殿方は何を貰えば喜ぶんでしょうか?」
(゚、゚トソン「あたしに聞くなよ、そう云うの無縁だっつの」
ξ゚听)ξ「むう…………では、町で聞いてみましょうか?」
(゚、゚トソン「行ってこーい」
ξ゚听)ξ
(゚、゚トソン
ξ++)ξ゙
(゚、゚;トソン「わーったよもう、着いてきゃ良いんだろ」
ξ*^ヮ^)ξ「ありがとうございます!」
(゚、゚トソン(めんどくせー)
- 139 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:14:35.89 ID:0O+nvpQ8O
-
(゚、゚トソン「じゃ、どっから行く?」
ξ゚听)ξ「手当たり次第で」
(゚、゚トソン「お前って意外と力業で押し通すよな」
ξ;゚听)ξ「だ、駄目でしょうか……」
(゚、゚トソン「別に、あたしは良いと思うけど」
ξ*゚听)ξ
(゚、゚トソン「あ?」
ξ*゚听)ξ「とそんが殿方だったら、惚れていたかも知れませんね……」
(゚、゚;トソン「おい止め……いや…………やっぱ止めろ」
ξ゚听)ξ「何ですかその間」
(゚、゚トソン「経済的な面で考えた」
ξ゚听)ξ「現実的ですね……」
- 141 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:16:40.30 ID:0O+nvpQ8O
-
(゚、゚トソン「良いから、その辺で聞いて回るぞ」
ξ゚听)ξ「はーい」
(゚、゚トソン「おいそこの野郎、女から物貰うなら何が良い?」
(*゚∀゚)「俺?」
(゚、゚トソン「おう」
(*゚∀゚)「よく男って解ったなァ……つか何だァ? いきなり」
(゚、゚トソン「良いから答えろよ女装癖」
(;*゚∀゚)「ちげーよ姉のお古だよ! ったくもう……貰うもんつっても、姉様から貰った物なら何でも」
(゚、゚トソン「はい次ー」
(;*゚∀゚)「性格悪いだろお前ッ!?」
(゚、゚トソン「よく云われるしのろけはもう腹一杯、はい次次」
(;*゚∀゚)「このまな板女うぜえええええ!!」
(゚、゚トソン
- 142 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:18:14.09 ID:0O+nvpQ8O
-
(゚、゚トソン「さて、次はあれ行くか」
ξ;゚听)ξ(つうさん……御愁傷様です……)
(゚、゚トソン「おい、女から貰うなら何が良い?」
(;^Д^)「ぶ、ぶしつけも良いトコだよぉ!?」
(゚、゚トソン「あ、何だ蝦蟇か。次行こう」
(;^Д^)「失礼と云うか酷い!?」
(゚、゚トソン「だって蝦蟇とか無いわ、きもいわ」
(;^Д^)「き、きもくないよぉ!? 今は人の姿だよぉぉぉう!?」
(゚、゚トソン「うっせぇ」
ξ゚听)ξ「あ、ぷぎゃーさん」
::((; Д ))::「ひいいいい蛇っ娘ぉぉぉぉぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!?」
- 144 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:20:08.31 ID:0O+nvpQ8O
-
( ;Д;)「うわああああああんまた丸飲みにされるぅぅぅぇぇぇぇああああああああッ!!」
(゚、゚トソン「あ、逃げた」
ξ゚听)ξ「? どう、したんでしょうか?」
(゚、゚トソン「また……つってたな」
ξ゚听)ξ「ですね」
(゚、゚トソン「……あれ、飲んだ事あるのか?」
ξ゚听)ξ「すぐ吐き出しましたよ?」
(゚、゚トソン
ξ゚听)ξ?
(゚、゚トソン「次行こう次、うん、そりゃ逃げるわ」
ξ゚听)ξ? ? ?
- 146 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:22:06.75 ID:0O+nvpQ8O
-
( ^^ω)「思いがこもってれば何でも良いホマ!」
( ´ー`)「甲羅の掃除する道具が欲しいヨ」
('(゚∀゚宦u何でも良いよ! 好きな娘からなら何でも嬉しいよ!」
¥・∀・¥「お金で買えるもの以外かなー」
/ ,' 3 「平穏」
(=゚ω゚)ノ「特にないよぅ!」
|(●), 、(●)、|「うーん、大きさの合う靴かな?」
( ・ω・)「本が欲しいんよ」
( "ゞ)「出番」
N| "゚'` {"゚`lリ「可愛い男の子」
( ´Д`)「>>1さん」
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「アーマーシステム」
- 148 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:24:14.43 ID:0O+nvpQ8O
-
ξ゚听)ξ「なかなか参考になる意見がないですね……」
(゚、゚;トソン「いや待て、何か待て! 何だあれ!?」
ξ゚听)ξ「町の妖怪さん達ですが」
(゚、゚;トソン「一気に捻り出したなおい!!」
ξ゚听)ξ「しかし、これと云う意見が……」
(゚、゚;トソン「…………真心でもやれよ、もう……」
ξ゚听)ξ「まごころを君に、ですか……」
(゚、゚;トソン「せかい系の匂いがしたけどもう突っ込まねぇ……」
ξ゚听)ξ「…………答えに、なってないですよね、これ……」
(゚、゚トソン「……まあな」
ξ;´兪)ξ「……」
(゚、゚トソン「……」
ξ;´兪)ξ「…………どうしよ……」
(゚、゚トソン「んー……」
- 151 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:27:13.40 ID:0O+nvpQ8O
-
(゚、゚トソン「もうさ、てめぇに熨斗つけて『私がぷれぜんと☆』でもしろよ」
ξ;´兪)ξ「で、出来るかぁっ!!」
(゚、゚トソン「じゃあもうめんどくっせぇな悩んでんじゃねぇよ」
ξ;´兪)ξ「だ、だって……」
(゚、゚トソン「うだくだ悩んだところで時間が過ぎるだけだろうが、もうその辺で適当なもん買おうぜ」
ξ;´兪)ξ「う、うう……わかりました……」
(゚、゚トソン「あ、団子美味そう団子」
ξ;´兪)ξ「それ、とそんが食べたいだけでしょ……」
(゚、゚トソン「もうこれで良いだろ、あとはお前の気持ち次第で」
ξ;´兪)ξ「…………解りました……」
(゚、゚トソン「あーあ、無駄に疲れた……」
- 153 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:29:50.70 ID:0O+nvpQ8O
-
(゚、゚トソン(……大体、あいつも「つんがくれた物なら何でも嬉しいお!」って云うに決まってんだろ)
(゚、゚トソン(今日はろくな事ねぇな……のろけ聞かされて歩き回って)
(゚、゚トソン(……ま、たまにはその辺うろつくのも良いか)
(゚、゚トソン(…………歳の近い友達なんて、つんくらいしか居ねぇしな……)
(゚、゚トソン(…………)
(゚、゚トソン(あたしもぼっちじゃねぇか)
ξ゚听)ξ「とそん?」
(゚、゚;トソン「うぉっ!?」
ξ゚听)ξ「お団子買って来ましたから、行きましょうか?」
(゚、゚;トソン「お、おう」
ξ゚听)ξ「あ、これどうぞ」
(゚、゚トソン「ん? これ団子だろ」
ξ゚听)ξ「今日は付き合って貰いましたから、お礼です」
(゚、゚トソン
- 154 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:32:21.08 ID:0O+nvpQ8O
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ξ゚听)ξ「? とそん?」
(゚、゚トソン「お、おう、貰ってやるよ」
ξ゚听)ξ「……素直じゃないの」
(゚、゚トソン「う、うるせぇよ、大体こんなのはお前の立ち位置だろうが」
ξ-听)ξ「私はつんでれしてないつんですもの」
(゚、゚;トソン「こ、こんにゃろ」
ξ゚听)ξ「……」
(゚、゚;トソン「な、なんだよ」
ξ*^ー^)ξ「……今日は、有り難う御座いました」
(゚、゚;トソン「う……」
ξ*^ー^)ξ「お店があるのに、付き合ってくれて」
(゚、;トソン「うう……」
ξ*^ー^)ξ「今度とそんが何かあった時は、私に云って下さいね」
(宦A;トソン「ううう……」
- 155 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:34:50.19 ID:0O+nvpQ8O
-
ξ*^ー^)ξ「……えへ、とそんは可愛いですね」
(宦A;トソン「お、おまえ……あたしがこう云うの苦手だと……」
ξ*^ー^)ξ「私は、素直に思った事を云ってるだけです」
(宦A;トソン「……もっとつんでれしろよぉ…………」
ξ*^ー^)ξ「ふふ、とそんの涙腺が緩いの、私が一番よく知ってますし」
(宦A;トソン「やっぱわざとか……」
ξ*^ー^)ξ「ほら行きましょう、内藤さんに渡しに」
(宦A;トソン「一人で行けよぉぉぉ…………ちくしょぉぉぉぉ……」
顔を隠すとそんの手を引いて、つんが坊っちゃんを探しに歩き出す。
片手にはお土産の団子、もう片手には親友の手。
やっぱりこいつには勝てないな、ととそんは心で呟いた。
恋する乙女ってやつにゃあ、勝てる気がまるでしない。
- 157 ◆XCE/Wako2nqi 2010/04/26(月) 00:36:33.21 ID:0O+nvpQ8O
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何やら町は騒がしく、盛岡屋の方へと人が集まっているのが見えた。
どうしたんでしょう?
知らねぇよ……。
そんな言葉を交わしつつ、二人が盛岡屋へと足を伸ばす。
もしかしたら内藤さんが居るかもしれない。
そうしたら、これを渡して何て云おう。
人前だと恥ずかしいから、こっそり渡そうかな、なんて。
盛岡屋の前までやって来たつんは、とそんを振り返って笑った。
未だに顔を隠す親友が、可愛らしくて。
穏やかな日々が、そこから終わりを告げるとは、知る事もなく。
ただ、恋に胸をときめかせながら、幸せそうに歩いていた。
『番外編 おわり。』