- 2 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:02:45.59 ID:umyeeOD8O
-
町は大騒ぎのてんてこまい。
やれ誰を守りに置くだの、やれ何を守るだの。
坊っちゃんを先頭に乗っけまして、皆がそれに従いましょう。
町の者は一致団結。
妖怪人間構わずに、町を守れと奮起する。
( ^ω^)百鬼夜行のようです。
【第八話 百聞一見 餓鬼姫の御姿。 前】
そんな大騒ぎの中。
ふらり現れたるは、黒髪美しい角持ち女。
誰かを求めてふらふらと、町の周りをふらふらり。
- 3 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:04:11.06 ID:umyeeOD8O
-
ξ゚听)ξ「町に……妖怪が、攻め込む……?」
( ^ω^)「お……」
ξ゚听)ξ「そんな、どうしてそんな事を……」
( ^ω^)「西の輩は、僕らには解らない事を考えているお……」
ξ゚听)ξ「…………また、誰か死にますか……?」
( ^ω^)「死なせないお」
ξ゚听)ξ「内藤さん……」
( ^ω^)「死なせない、絶対に。……だからつん、つんも手を貸してくれお」
ξ゚听)ξ「…………はい、勿論」
大変な騒ぎに飲み込まれた町。
そんな中、坊っちゃんとつんは深刻そうな顔で言葉を交わす。
つんは事態を漸く飲み込めたのか、団子の包みを持つ手が震えていた。
- 4 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:06:16.84 ID:umyeeOD8O
-
lw´‐ _‐ノv「はふ……表に出たのは、久々にありんす……」
( ΦωΦ)「大丈夫であるか? しゅう」
lw´‐ _‐ノv「はいな、旦那様……たまには外の空気も良い物でありんす」
( ^ω^)「おっとさん、おっかさん」
lw´‐ _‐ノv「はいな」
( ^ω^)「弟者は、大丈夫ですかお?」
lw´‐ _‐ノv「未だ完治はしておりんせん。でれちゃんに見て貰っとりんす」
( ^ω^)「おー……」
( ΦωΦ)「息子よ」
( ^ω^)「お?」
( ΦωΦ)「一人匿うも二人匿うも同じ、我輩の屋敷へ力持たぬ者達を招こうと思う」
( ^ω^)「お……い、良いのですかお?」
( ΦωΦ)「構わん、我輩とてこの町を好いて此処に居るのだ」
( ^ω^)「おっとさん…………解りましたお、お願いしますお」
- 5 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:08:48.47 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「みんなー! 人間さん達は安全の為に盛岡屋か僕の家へ避難するお!
収まりきらなかった人達はおっとさん、雷獣邸に行く様にしてくれお!」
爪'ー`)y‐「盛岡屋の守りは僕らがするよぉ、だから安心してねぇ」
ミ,,゚Д゚彡「内藤んちは俺らが守れば良いわけだな」
爪'ー`)y‐「にゃんこと鳥が居るんだっけぇ? 戦力的に大丈夫?」
ミ,,゚Д゚彡「お前らには劣るだろうけど、何とか持ちこたえるだけの力はあるぞ」
爪'ー`)y‐「うんうん、じゃあもし手が足りなかったら誰か派遣するよぉ」
ミ,,゚Д゚彡「おう」
爪'ー`)y‐「……君、飼われるの嫌がってたわりにはやる気あるねぇ」
ミ,,゚Д゚彡「……元は外の妖怪でも、情くらいあんだよ……」
爪'ー`)y‐「ははぁん、情が移ったねぇ?」
ミ,,゚Д゚彡「うるせー…………一応、俺の小屋もあるんだ、……守らなきゃしょうがねぇだろ」
爪'ー`)y‐「にゃんこがでれたよーぉ!」
ミ#,゚Д゚彡「ふぎゃーす! 止めろうぜぇ!」
- 6 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:10:38.74 ID:umyeeOD8O
-
(,,゚Д゚)「盛岡屋はでけぇからな、俺も守りに入る」
ノパ听)「神社は任せろおおおおおおおッ!!」
(;,゚Д゚)「……神社は大事だろうが、お前はもっと人の多い所に行ったらどうだ」
ノパ听)「神社には子供と人間しか居ないんだぞ! 私が守らなくて誰が」
从 ゚∀从「神社は私に任せて、君は町を守り賜えよ」
ノパ听)「あれぇえええええええッ!?」
从 ゚∀从「私の神社と私の子だ、私が守る。巫女を嘗めない事だね」
ノパ听)「…………じゃあ町を守るぞぉおおおおおおおおッ!!」
o川*゚ー゚)o「うちは自分の店と店の子を、他にも避難してくる子が居るならその子らも守ろか」
lw´‐ _‐ノv「わっちと旦那様は、わっちらのお家で避難してきた子達を守りんす」
(,,゚Д゚)「狼の野郎は森山を守るつって、もう山の方に行ったぞ」
爪'ー`)y‐「山の主だからねぇ」
- 8 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:12:56.57 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「おー、着々と進んで行くお……」
('A`)「事が急ぎだからな」
( ^ω^)「お、んじゃ手の空いてる力のある奴らは町全体の警備を頼むお!
出来れば家屋の破壊も防げるなら防ぎたいお!」
(,,^Д^)「僕は診療所を守ります、患者さんが多いですから。事が過ぎたら各方向に様子を見に」
(*゚ー゚)「うちは町の警備を、相手を転ばして足止めするんは得意やから」
( ^ω^)「おっおっ、みんな頼んだお!」
('A`)「しかし……盛岡屋とうちと雷獣邸だけで町の奴らみんなを匿えるのか?」
( ^ω^)「おー……無理に前線に出たら、危ないからお……」
(´・_ゝ・`)「半数以上はうちで匿える」
( ^ω^)「うお、出た」
(´・_ゝ・`)「うちには地下もある、貯蔵も多い、安心すると良い」
('A`)「…………地下なんかあったのか」
(´・_ゝ・`)「上では出来ない事をする為に作られた」
('A`)「何か理解したからもう良いわ」
- 9 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:14:25.57 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「守りの方は……こんなもん、かお?」
('A`)「だな、人間の避難場所とそこの守りは確保した」
( ^ω^)「おー、人間達を守る事はこれで出来そうだお……」
('A`)「あとは」
( ^ω^)「お?」
('A`)「町の四方にある門と通りを、守らなきゃな」
( ^ω^)「おー……そうだお、町の中心に来る前に止める事も大事だお」
('A`)「西門は固めなきゃな」
( ^ω^)「でも、裏をついて別方向から来る可能性も……」
('A`)「朝日は羽、あるんだよな……」
( ^ω^)「空の警備も必要だお……」
('A`)「空……」
( ^ω^)「空……」
- 10 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:16:43.27 ID:umyeeOD8O
-
('A`)「……なァ、俺らの周りに空いける妖怪って……」
( ^ω^)「…………ほとんど、居らんお……」
( ´∀`)「僕が居ますモナ」
( ^ω^)「お」
('A`)「? 誰だ?」
( ^ω^)「お、れもなの探し人だお」
( ´∀`)「もなぁと申しますモナ、もなと軽く呼んでやって下さいモナ」
('A`)「おう、俺はどくお、よろしくな」
( ^ω^)「もなさんは……烏、でしたお?」
( ´∀`)「八咫烏モナ、僕は空から町の警護をしましょう」
('A`)「でも、あんた此処に来たばかりで……良いのか? そんな事を頼んで」
( ´∀`)「此処はれもなが住まう土地、いずれは僕らも此処に腰を据えるつもりモナ」
( ^ω^)「お……有り難うだお、よろしくお願いしますお!」
( ´∀`)「いえいえモナ」
- 13 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:19:12.65 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「あ……でも一人で町の空は、辛くないですかお?」
( ´∀`)「モナ、妹が居ますので一緒にしますモナ」
( ^ω^)「妹さん?」
( ´∀`)「はいモナ、がなー! おいでモナー!」
( ‘∀‘)「はいはーい」
( ´∀`)「ほら、ご挨拶」
( ‘∀‘)「子供扱いしないでよ、もう……もなの義理の妹
紅雀のがなです、不束者ですがよろしくお願いします!」
( ^ω^)「おー、がなさんかお! よろしくですお!」
( ‘∀‘)「鳥と蛾のあいのこ妖怪です、毒も持ってるから戦えるわ!」
( ^ω^)「おっおっ、心強いお!」
('A`)(似た様な顔の奴らが並んでる……)
- 14 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:20:33.32 ID:umyeeOD8O
-
('A`)「あと空の方は、天狗達に頼みに行っても良いかもな」
( ^ω^)「お、……でも天狗は気難しいからお……」
('A`)「余所者に厳しい、排他的なところがあるしなァ……」
ξ゚听)ξ「あ、それでしたら」
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「さっき“いいおとこ”の人が居ましたから、お願いしてみましょうか」
( ^ω^)「まさかの大天狗阿部さん」
('A`)「この鼻でお相手つかまつるってか……じゃあ頼む、あの人は気さくな人だしな」
ξ゚听)ξ「解りました、あと私も町の警護……内藤さんのお宅に続く道を守ります」
( ^ω^)「お……良い、のかお……?」
ξ゚听)ξ「蛇は負けません、私はあなたの蛇ですから。それでは」
( ^ω^)「つん……」
('A`)「…………あれ、怒らせると本気で怖いからな……」
( ^ω^)「うん……」
- 15 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:22:31.98 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「じゃあ門の守りを決めるおー!」
( ^Д^)「はーい!」
( ^ω^)
( ^Д^)
( ^ω^)「ああ、蝦蟇かお」
( ^Д^)「君のあんよくっつけたの俺っちの油だからね? ね? 存在忘れないでね?」
( ^ω^)「じゃあ蝦蟇は南の門頼むお」
( ^Д^)「わぁい問答無用だよぉう…………把握」
( ^ω^)「蝦蟇は何だかんだで強い妖怪の筈だからお、一匹でもいける筈だお、頑張れお」
( ^Д^)「わぁい……これはこれ以上お前に出番なんてねーよプギャーwwwwふらぐ……」
( ^ω^)「はい次ー」
( ^Д^)「泣いてなぁいもぉん……」
- 16 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:24:25.60 ID:umyeeOD8O
-
ミセ*/ー゚)リ「ほーい!」
( ^ω^)「お、みどりちゃん」
ミセ*/ー゚)リ「はいはいみどりみどり、北の門はおやっさんちがあるから、そこ守る!」
( ^ω^)「…………みどりちゃん、が……?」
ミセ*/ー゚)リ「みせりちゃんが」
( ^ω^)「門を守……る……?」
ミセ*/ー゚)リ「何か文句ありますかい」
( ^ω^)「…………無茶だお……」
ミセ*/ー゚)リ「んだとこんなろ、白稚児なめんなってーのよ?」
( ^ω^)「ええ……だって、みどりちゃん……子供……」
ミセ*/ー゚)リ「子供だから守れないなんて、ただの逃げ。わたしはわたしにやれる事をやる」
( ^ω^)「お……」
ミセ*/ー゚)リ「みせりはおやっさんと一緒に、北の門を守る。負けないさ、だってこの町を守りたいから」
- 18 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:27:37.26 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「でも、流石に心配だお……」
ミセ*/ー゚)リ「でーじょぶだってば、ご飯があればおやっさんも強いし」
从 ゚∀从「じゃあ、私の使いを寄越そうかい?」
ミセ*/ー゚)リ「ありゃ、巫女さん……良いの? 神社も手薄っしょ?」
从 ゚∀从「私が守る物は神社と我が子、それくらいならいける筈さ。
だから、長く使ってないけれど、式神みたいな物を寄越してあげるよ」
ミセ*/ー゚)リ「……あんがと巫女さん、巫女さんも頑張ってね!」
从 ゚∀从「嗚呼、勿論さ」
( ^ω^)(何かみどりちゃん出してたら主人公の座がやばい)
('A`)(しょうがない、なんかもうしょうがない)
ミセ*/ー゚)リ「んじゃわたしもう行くね! またねー!」
( ^ω^)=3ホッ「またおー!」
- 20 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:31:05.11 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「残るは西と東門、かお……」
('A`)「東、か……うちの方向だな」
( ^ω^)「…………東門は、僕らが受け持つお」
('A`)「……おうよ」
( ^ω^)「しかし、一番の問題の西門が……」
('A`)「あっちは確か、過疎区……だよな」
( ^ω^)「人の被害は少ないだろうけど……ううん……」
('A`)「力のある奴らは、町の警護……だしな」
( ^ω^)「おー……参ったお」
('A`)「他、他……なァ」
(゚、゚トソン「おう、野郎共」
( ^ω^)「お、とそん」
- 21 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:33:02.03 ID:umyeeOD8O
-
('A`)「あんま出とると危ねェぞ、早めに荷物持って避難しとけ」
( ^ω^)「そうだお、とそんは生粋の人間なんだからお」
(゚、゚トソン「その事だけどな」
( ^ω^)「お?」
(゚、゚トソン「西門を、あたしに任せろ」
(;^ω^)「お、おぉっ!?」
(;'A`)「な、なに云ってンだお前!? そんな事、」
(゚、゚トソン「あたしには守るもんがある」
(;^ω^)「で、でも人間にそんな……っ!」
(゚、゚トソン「あたしは、祖父さんが遺した店を守る義務があるんだよ」
(;'A`)「店は警護の奴らが、何とかっ!」
(゚、゚トソン「それに、あいつらは店から離れられねんだよ、あの三馬鹿共は」
- 22 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:34:29.77 ID:umyeeOD8O
-
(゚、゚トソン「祖父さんの時代から居続けるあいつらを置いて、店から逃げる訳にはいかねぇ」
( ^ω^)「お……でも…………」
(;'A`)「もしお前に何かあったら、意味無いだろうが……」
(゚、゚トソン「店から離れて、あいつら見捨ててのうのうと生きるくらいなら、あたしは店と心中する」
( ^ω^)「とそん……」
(;'A`)「…………そんなに、大事か」
(゚、゚トソン「愚問だな、あたしが一人じゃなかったのはあの店のお陰だ」
( ^ω^)「……寂しい思いをした原因が、店でも、かお?」
(゚、゚トソン「まあ、祖父さんが店やってなきゃあたしはもっと自由だったかもな
こうして、わざわざ死にに行く様な真似もしなくて済んだだろうし」
( ^ω^)「それでも、」
(゚、゚トソン「あたしは、店が好きだ」
( ^ω^)「……」
(゚、゚トソン「寂しくなったのも、寂しくならなかったのも、店があったから
もし店が無かったらなんて、何度も何度も考えたよ、祖父さんを恨んだ事もある」
- 23 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:36:17.32 ID:umyeeOD8O
-
(゚、゚トソン「でもな、もうがきじゃねんだよ、あたしは」
( ^ω^)「……僕より若い、くせに」
(゚、゚トソン「覚悟が違うぜ内藤よ、傾いた店をずっと支えてきたんだ
お前はその日食う飯に困った事があるか? お前にすきま風の寒さに泣いた事はあるか?」
( ^ω^)「…………無いお、僕はいつでもあたたかい部屋で、あたたかい場所で、生きてきたお」
(゚、゚トソン「温室育ちを自覚してるのは嫌いじゃねぇな」
( ^ω^)「……だから僕には、とそんの気持ちを理解しきる事は出来ないお」
(゚、゚トソン「当然だ、あたしにもお前が理解できない、それは誰でもそうだろうよ」
( ^ω^)「…………」
(゚、゚トソン「何度も憎んだし何度も恨んだ、だい以外の妖怪なんざと馴れ合っても満たされないと思った
だから何度も、何度もあたしは店の奴らを足蹴にしたり、虐げた事がある」
('A`)「……」
(゚、゚トソン「でもな、あいつらは可愛いよ、たまに来てくれるつんも可愛いよ
めげずに飽きずにずっと、ずっと、あたしの側に居て、あたしを支えてくれたんだ」
- 24 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:38:28.61 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「とそん、」
(゚、゚トソン「こんな根性悪のためにな、ずっとだぜ、何年も何年も、十年近くだ
……大馬鹿野郎共だよ、馬鹿のする事だ。さっさとみかぎれば良いのをずっと」
( ^ω^)「…………とそんは、みんなが大好きなのかお」
(゚、゚トソン「ああ、こんな馬鹿に馬鹿みてぇに尽くす馬鹿が嫌いになれるわけがねぇ」
( ^ω^)「……僕も、とそんが好きだお」
(゚、゚トソン「悪戯された記憶しかねぇけど、あたしもお前らは好きだよ」
('A`)「……なァ、とそん」
(゚、゚トソン「ありがとよ、止めてくれて」
('A`)「…………友達、だもんな」
(゚、゚トソン「……お前らに守るもんがある様に、あたしにも守るもんがある
あたしの守るもんは、店と、家族……それだけだよ、お前らとそう変わらねぇ」
- 25 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:41:55.34 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「…………とそん」
(゚、゚トソン「生きろよ、お前ら」
( ^ω^)「とそんも、生きろお、絶対に」
(゚、゚トソン「それは大地主の命令か?」
( ^ω^)「友達としてのお願い、だお」
(゚、゚トソン「…………じゃあ、あたしからもお願いだな」
( ^ω^)「お……生きるお」
(゚、゚トソン「……」
('A`)「……行けよ、とそん」
(゚ー゚トソン「…………またな、友達共、つんによろしくな」
( ^ω^)「御武運を……っ死ぬなお!」
(^ー^*トソン「当たり前だろうが! ばーかっ!!」
- 26 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:44:17.68 ID:umyeeOD8O
-
('A`)「……行っちまったな」
( ^ω^)「とそんなら大丈夫だお、絶対」
('A`)「…………おう」
いやになるほどのものを背負った小柄な背中が、人混みの中に消えて行く。
小さな娘が、小さな家族と小さな店を守るために、命すら惜しもうともしていない。
十と幾つかの小娘だ。
綺麗に切り揃えたおかっぱ頭を揺らす、男勝りな言葉の小娘だ。
そんな小娘でも、死ぬる覚悟を持つ。
これは、それだけの事態。
このいくさを甘く見てはいけないと、再確認せざるをえない。
- 28 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:46:14.91 ID:umyeeOD8O
-
数日の内に、西の妖怪が訪れる。
今度のいくさは、それほどの被害は出ないだろう。
しかしその次に訪れるいくさは、双方が本気を全て出さねばなるまい。
今の内に全ての準備を整え、その次のいくさも迎え撃てる様にせねば。
小さな綻びがあれば、そこから裂けて、全てが駄目になる。
着々と、準備は進む。
各門の砦も、守りの体勢に入ろうとしている。
人間や力無き妖怪は、盛岡屋や屋敷に集まり始めた。
森山の方はどうだろうか。
そう坊っちゃんが思った時に、獣が姿を見せた。
(;TДT)「うおーい」
( ^ω^)「お、もか」
(;TДT)「町の方はどうだー?」
- 29 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:48:18.15 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「ご覧の通り、準備は進んでるお」
(;TДT)「山の方なんだけどなー」
( ^ω^)「お?」
(;TДT)「木霊と天邪鬼が怪我をしてたから、保護しといたぞー」
(;^ω^)「お! びこは大丈夫かお!?」
(;TДT)「大した怪我じゃないし、天邪鬼も腕が取れてるけど大丈夫だー」
(;^ω^)「腕!?」
(;TДT)「何か、千切られたらしいぞー……」
(;^ω^)「え、ええ……」
(;TДT)「ただ」
( ^ω^)「お?」
(;TДT)「おれが行った時には、もう手当てされてたんだー……」
( ^ω^)「おー、優しい人が手当てを…………誰がしたんだお……?」
(;TДT)「わからん」
- 30 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:50:36.82 ID:umyeeOD8O
-
(;TДT)「手当てされた木霊と天邪鬼、泣いてる火の玉が居るだけで他にはいなかった」
( ^ω^)「おー……と云うか、誰に千切られたんだお? 朝日かお?」
(;TДT)「? 何か、女らしいぞー」
( ^ω^)「朝日……は、小柄だけど男だったお?」
('A`)「まァ、野郎だったな」
( ^ω^)「おー……? じゃあ朝日の仲間かお?」
(;TДT)「あさひ……って、誰だー?」
( ^ω^)「この戦の原因の奴だお」
(;TДT)「わ、悪い奴なのかー!?」
( ^ω^)「悪い悪い」
('A`)「悪い悪い」
- 32 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:52:17.22 ID:umyeeOD8O
-
(;TДT)「そ、そーなのかー……悪い奴だったのかー……」
( ^ω^)(知らずにばたばたしてたのかお……)
('A`)(相変わらずのへたれさで落ち着くな……)
( ^ω^)(もか楽しいよもな)
('A`)(……最中、食いたいな)
( ^ω^)
('A`)
( ^ω^)(作れお)
('A`)(このいくさが終わったら……俺、最中作るんだ)
( ^ω^)(おお、死亡ふらぐ死亡ふらぐ)
('A`)(坊っちゃんも立てとけ)
( ^ω^)(お主も悪よのう)
('A`)(お代官様こそ)
- 34 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:54:16.47 ID:umyeeOD8O
-
(;TДT)「あ、その女だけど」
( ^ω^)「お?」
(;TДT)「火の玉が北の方に行けって嘘ついたらしいけど、北の方見に行っても居ないんだー……」
( ^ω^)「お……? 何で嘘ついたんだお?」
(;TДT)「何か、どくお探してたって」
(;'A`)「俺ェ!?」
(;TДT)「火の玉はそう云ってたぞー」
(;'A`)「え……女が俺探してた……? 何だそれ、告白……?」
( ^ω^)「よう、もて男」
(;'A`)「いやそんなのどうでも良い、雌は苦手だ」
( ^ω^)
(;TДT)
- 37 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:56:06.92 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)(童貞風情が……)
(;TДT)(余裕たっぷりなのかー……)
(;'A`)「不穏な空気を感じるから止めてくれ、と云うか、俺の知り合いにそんな物騒な女居ねェぞ」
(;TДT)「でも、どくおの行方を追ってたって」
(;'A`)「またんきの腕千切ったんだろ? そんな怖い女は知らねェよ」
(;TДT)「むー……じゃあ、個人的な怨みかー……?」
(;'A`)「外で恨まれる様な事はしてねェぞ……?」
( ^ω^)「町では?」
(;'A`)「あの頃は俺も若かった」
( ^ω^)「全くだお」
(;'A`)「…………ゴメンネ」
( ^ω^)「もか、他にその女の情報は? 十分脅威たりうるお」
(;'A`)「……」
- 39 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 21:58:39.76 ID:umyeeOD8O
-
(;TДT)「黒髪で、角があったらしいぞー」
( ^ω^)「角……黒髪……」
(;'A`)「角有りの知り合いは少ないからなァ……」
( ^ω^)「角って事は、蟲か鬼……」
(;'A`)「町に鬼なんざ殆ど居ねェよな」
( ^ω^)「どくおの他に見た記憶は無いお」
(;'A`)「俺の他…………鬼……」
(;TДT)「覚えはないかー?」
( ^ω^)「僕には無いお、だからどくおも」
(;'A`)「鬼……俺の、他…………鬼……?」
( ^ω^)「……どくお? どうしたお……?」
(;'A`)「……何か、引っ掛かるな……」
- 41 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:00:22.58 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「まあどくおは元々、外の妖怪だから鬼を見た事があってもおかしくはないお」
(;'A`)「ああ……でも何か、もうちょっとで……引っ張り出せそうな……」
( ^ω^)「おー? 餓鬼仲間でも居たのかお?」
(;'A`)「…………餓鬼?」
( ^ω^)「お? どくおは、餓鬼だお?」
(;'A`)「……もか」
(;TДT)「なんだー?」
(;'A`)「餓鬼は……どうやって、生まれる……?」
(;TДT)「? 本来なら悪行を重ねた人間が地獄に落ち、その地獄の餓鬼道で苦しむ奴ら?」
(;'A`)「……特殊な、餓鬼は?」
(;TДT)「…………餓えと渇きに苦しみ、怨みなんかを抱いて死んだ子供が、餓鬼になったりする」
- 42 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:02:24.46 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「どうしたんだおどくお、突然」
(;'A`)「俺が……それなんだよ」
( ^ω^)「特殊な餓鬼……かお?」
(;'A`)「ああ、俺は一度死んで、餓鬼として黄泉返った」
( ^ω^)「……餓えと渇きに苦しんで、死んだのかお……?」
(;'A`)「……ああ」
( ^ω^)「お……でも、それが……?」
(;'A`)「…………俺が黄泉返ったのは、特に理由もなく、だった
無縁塚で、理由もなく起きた……亡者によくある事だ」
( ^ω^)「まあ……確かに、夜になると起き出すのは、亡者によくある事だけど」
(;'A`)「…………」
( ^ω^)「……なんだおどくお、何かあるならはっきり云えお?」
- 44 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:04:24.63 ID:umyeeOD8O
-
(;'A`)「いや、だって……でも……あの……」
( ^ω^)「云いなさいお」
(;'A`)「はい……あの、俺が死ぬ前……女が居たんだ」
( ^ω^)
(;'A`)「いや、がきの頃だからただの幼馴染み」
( ^ω^)「ああ、なるほど、僕にとってのつんみたいな感じかお」
(;'A`)「そうそう……んで、きょうだいみたいに育ってな、仲は良かった」
( ^ω^)「お」
(;'A`)「……でもな、あの……俺ら親無しで、遠縁の夫婦に二人で引き取られて」
( ^ω^)「……」
(;'A`)「…………その時、大飢饉で」
( ^ω^)「あー……見えてきたおー……」
- 48 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:06:43.19 ID:umyeeOD8O
-
(;'A`)「その義理の親は、厳しいけど優しい人達だった。
がきの頃はそれを恨んだが、今はあれが優しさだったって思える感じでな」
( ^ω^)「おー、まあそれもよくある事だお」
(;'A`)「うん……でもがきの頃の俺らは、そうは思えなくて……逃げようとしたり、してな」
( ^ω^)「わるがきめ」
(;'A`)「そん時ゃよ、外は餓えた妖怪だらけで……危なくて、外に出るなって云われてて」
( ^ω^)「……何年前?」
(;'A`)「何百年前かなァ……まァ、だから俺らに逃げ場はねェし飯も無かったわけで」
(;TДT)「あー……それ、知ってるぞー」
(;'A`)「ああ、もかは知ってるのか」
(;TДT)「雨が全く降らなかった時期だー……山の方も、被害が大きかった……」
(;'A`)「そっちも、そうだったんだな……みんな、餓え死にしちまったよ」
(;TДT)「妖怪もたくさん死んだ……人間も、そうだったのかー……」
- 50 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:08:55.64 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「それと、今度の女が……?」
(;'A`)「……俺を、呼んでたんだな、その女」
(;TДT)「う、うん……」
(;'A`)「…………くう」
( ^ω^)「く、う……?」
(;'A`)「……幼馴染みの、名前…………俺が残して、死んだ女……」
(;^ω^)「!」
(; A )「……嘘だよな、くう……あいつが、気の強いあいつが、惨めな餓鬼になんか……」
(;TДT)「どくお」
(; A )「……おう」
(;TДT)「一つ、教えよう」
(; A )?
- 52 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:10:44.19 ID:umyeeOD8O
-
(;TДT)「誇りと憎しみ両手に掲げ、怨みつらつら死んだのならば」
(; A )「……」
(;TДT)「それは、その憎しみが余りにも強ければ…………鬼は、神にすらなりうる」
(; A )「ッ!?」
( ^ω^)「神……そんなもんに、なれるのかお……?」
(;TДT)「この地では、神には容易くなれる、付喪神だって神の一つ
八百万の神が居る様に……鬼が神になっても、おかしくないぞー……」
(; A )「じゃ、じゃあ、待てよ、じゃあ……くう、は……」
(;TДT)「餓鬼くう、否……餓神、くう……」
(;^ω^)「うえ……がみ……?」
(; A )「か、み…………」
- 55 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:12:34.55 ID:umyeeOD8O
-
(; A )「…………くうが……そんな、死んで、黄泉返って……あいつが、そんな惨めな、事……」
(;^ω^)「ど、どくお! 落ち着けおどくお!」
(; A )「だって、だってだぞ!? 元々はあいつ、良いとこのお嬢さんで……それで……」
(;^ω^)「落ち着けお、よしよしお、どくお、落ち着けおっ」
(; A )「だって…………俺みたいに……惨めな格好になる、なんて……そんな……っ」
(;^ω^)「どくお……」
(; A )「何で……餓鬼の、なりそこない……みたいに……っ」
(;TДT)「でも、どくお」
(; A )「う……?」
(;TДT)「餓神は、どくおを呼んでいた……それも、憎む様にらしいぞー……」
(; A )「…………へ?」
- 56 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:14:23.40 ID:umyeeOD8O
-
(;TДT)「こう云うのは、酷だと思うけど…………餓神は、」
( ^ω^)「どくおへの憎しみをもってして、黄泉返った」
(;TДT)「…………うん、……そうだと、思うぞー……」
(; A )「……は……ぇ……?」
( ^ω^)「どくおの話ともかの話を合わせれば……そうなるお」
(;TДT)「どくおへの怨みを抱いたまま死に、怨みによって黄泉返った……」
( ^ω^)「その可能性が、凄く……高いお」
(; A )「くう、が……俺を、? なん……ぇ……?」
( ^ω^)「どくお、しっかりしろお」
(; A )「くうが俺を、うらんで……なん、で……?」
( ^ω^)「…………どくお、それは、きっと……」
私を置いて死に逃げた。
- 59 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:16:15.97 ID:umyeeOD8O
-
ずっと一緒だよ。
一緒に逃げ出そう。
一緒に生き延びよう。
一緒に、一緒に。
生まれた時から死ぬ時まで。
一緒、一緒だよ。
二人で生きようね。
二人で逃げようね。
二人で、幸せになろうね。
小さな約束。
ゆびきりげんまん。
うそついたら、はりせんぼん、のーます。
ゆぅび きぃったぁ。
- 61 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:18:33.48 ID:umyeeOD8O
-
かたかたと震えるどくお。
その肩を支える坊っちゃん。
ああそうだ、約束したんだ。
二人でずっと一緒だと。
ずっとずっと一緒だと。
どうして忘れていた。
どうして記憶に蓋をした。
ああ違う、違う違う。
ほんとはとうに気付いてた。
坊っちゃんの元で生きる様になる、前から、外で生きていた頃から。
大事な半身の存在を、無理に否定して消していて、過去を消したくて、ほんとは。
女嫌いの原因は、くうの、存在。
最後に見た彼女の顔は、憎しみに歪んでいたから。
- 62 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:20:46.01 ID:umyeeOD8O
-
それはそれは過去の事。
いにしえの記憶の中の事。
幼い娘と幼い男児。
親無し子達の哀れな末路。
悲しみ死ぬか、憎しみ死ぬか。
餓えと渇きの苦しさに、耐え兼ね手放す幼い命。
ずっと一緒だと。
約束したのに。
二人で幸を得ようと。
約束、したのに。
嗚呼、嗚呼、嗚呼。
憎しみの神となった愛しい存在。
その姿にさせたのは、誰の、所為?
- 63 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:22:09.81 ID:umyeeOD8O
-
(; A )「坊っちゃん……俺、俺、ァ……ああっ……」
( ^ω^)「泣くな、泣くなどくお」
(; A )「俺の所為で……くうは……狂った、のか……?」
( ^ω^)「どくお、しっかりしろお」
(; A )「くう……ああ、くう……俺ァ、ああ…………っ」
( ^ω^)「どくおッ!」
(; A )「っ!」
( ^ω^)「悲しみは横に置けお、今は耽る暇はないお」
(; A )「…………ああ……」
( ^ω^)「このいくさが終われば、僕が肩を抱いてやる」
(; A )「……わか、……た」
- 64 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:24:23.72 ID:umyeeOD8O
-
( ^ω^)「もか、その餓神は今、何処へ?」
(;TДT)「山に聞いたけど、北に少し行った所から姿を消してる……」
( ^ω^)「……このままじゃ、朝日達以外にも恐ろしいものが訪れるお」
(;TДT)「探してはみるけど、見つかるかどうか……」
从 ゚∀从「坊っちゃん」
( ^ω^)「お、はいんの姐さん……神社に戻ったんじゃ?」
从 ゚∀从「いや何、嫌な話を聞いてね、伝えに来た」
( ^ω^)「嫌な、はなし?」
从 ゚∀从「恐らくその餓神だろうがね、近くに居るよ」
(;^ω^)!?
(; A )!!
- 66 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:26:30.76 ID:umyeeOD8O
-
从 ゚∀从「ひっきぃに外の声を伺って貰っていたら、聞いたらしいのだよ」
( ^ω^)「……餓神の声、かお?」
从 ゚∀从「嗚呼、餓鬼を恨む声がね…………町の、すぐ側で」
( ^ω^)「それは……本当、に?」
从 ゚∀从「あの子が嘘を吐くかイ?」
(; A )「…………じゃあ、本当に……そこに、くうが……?」
从 ゚∀从「そうなるね、警備を更に強める必要がある」
( ^ω^)「もか、皆に伝えてくれお! 大変なものが来ていると!」
(;TДT)「が、がう!」
(; A )「……俺の所為で……くうが……皆にも、迷惑が……」
( ^ω^)「止めろおどくお、お前さんだけの所為じゃあ無いお」
(; A )「ご、め……俺……」
- 68 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:28:21.17 ID:umyeeOD8O
-
从 ゚∀从「……こんな時だがね、どくお」
(; A )「ん……?」
从 ゚∀从「君の身の上話を、聞かせてはくれないかイ?」
(; A )「俺、の?」
从 ゚∀从「嗚呼、憎しみのみでこんな時に餓鬼が目覚めるとは思えない
だから詳しく聞いて、彼女が如何に君を恨んでいるかを把握し、目覚めた理由を探る」
( ^ω^)「姐さん……」
从 ゚∀从「聞かせてくれ賜え、君の話を…………くうの話を、私達に」
(; A )「…………解った……なァ、巫女」
从 ゚∀从「何だイ?」
(; A )「くうは…………救われる、かな……」
从 ゚∀从「……巫女は万能じゃあない、神の道には死は禁忌…………
しかしね、私は我が子の様に可愛い君達を苦しむ姿は見たくない」
(; A )「じゃあ……」
从 ゚∀从「巫女に出来うる全ての事をすると、約束はしよう」
- 70 ◆XCE/Wako2nqi 2010/05/02(日) 22:30:21.45 ID:umyeeOD8O
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誰かが何処かで泣いている。
誰かが何処かで鳴いている。
憎らしい、悲しい、怨めしい、寂しい。
餓えに狂った神が泣き叫ぶ。
半身とし生きていた男を探して、鳴き叫ぶ。
どうして私をおいて逝ったの。
どうして私をおいて逃げたの。
どうして私をおいて、幸せになったの。
約束したのにどうして、どうして。
幼いままの頭。
餓鬼の姫が、狂う。
『八話前編 おわり。』