3 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:04:21.65 ID:7SXm4qtHO

 ひとたび終えます東西いくさ。

 しかし困った事に、黒が退いた町にはいまなおその傷跡が残る。

 辻斬りとも云える、何者かがこちらを見つめる。
 両の目玉を涙に濡らし、人を襲うは女の影。

 ごめんなさいごめんなさい。
 人を傷付けそう繰り返す、悲しい女は何処の人ぞ。



     ( ^ω^)百鬼夜行のようです。

      【十二話 百載無窮が人の業。 前】



 ごめんなさい、ごめんなさい。
 傷付けなければいけないの。

 そうしなければ、再び巡り会えぬと云われたから。

 そうしなければ、いけないの。


5 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:06:06.44 ID:7SXm4qtHO

 壊された家屋、傷付いた人々。
 それらを建て直し、次のいくさの為に妖怪達は走り回る。


(;,^Д^)「怪我人はこちらへ! ちゃんと並んで下さい!」

(#゚;;-゚)「とそんさん、動いたらあかんよぉ……」

(;,^Д^)「誰か蝦蟇氏を呼んで下さい! 傷薬が足りません!」

(#゚;;-゚)「河童のほまさんも呼んで来てぇ……うちの軟膏も足りへん……」

('(゚∀゚;宦u医者の手が足りないよ! 何で守ってたのにこんなに怪我人がいるんだよ!」

(;,^Д^)「ああちゃんと診ますから! 押さないで、皆さん怪我をなさってるんです!」

(#゚;;-゚)「はわわ……えらい騒ぎやぁ……」

('(゚∀゚;宦uな、なおるよ! だからそんなみんな泣かないでだよ!」

(;,^Д^)「とそんさん! 内臓出るから動かないで下さい! お店は大丈夫ですから!」

('(゚∀゚;宦uええい何でだよ! 何で人間がこんなに怪我してるんだよぉ!」


8 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:08:34.95 ID:7SXm4qtHO

(;,゚Д゚)「それはそっちじゃねェ! こっちだ!」

( ゚∋゚)「木材持ってきましたよ」

(;,゚Д゚)「向こうの家に持ってってくれ! ああ大工が足りねェ! 儂ャあ木工屋だぞ!?」

ミ,,゚Д゚彡「おいこれは此処で良いのか?」

(;,゚Д゚)「おう、向こう手伝ってやってくれ!」

( ΦωΦ)「どれ、我輩も手伝おう」

(;,゚Д゚)「ありがてぇ! つか狐は何処行きやがったあんにゃろぅあああッ!!」

(´・ω・`)「むきゅ」

(;,゚Д゚)「久々だな手前……つか手前じゃねェよ! 九尾の方だよ!」

(´・ω・`)σ「むっきゅ」

(;,゚Д゚)「あ、手前んちに居るの?」

(´・ω・`)゙「むひゅー」

(#,゚Д゚)「殴って連れて来い」


10 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:10:05.30 ID:7SXm4qtHO

(;^ω^)「被害は少ないかと思ったけど……」

(;'A`)「門の方に意識がいってたから解らなかったが、結構な被害だったのな……」

(;^ω^)「死人が出てないのが救いかお……」

(;'A`)「旦那様に家に居る様に云われたが……手伝わなくて良いのかな」

(;^ω^)「わからんお……何か客が来るとは云われたけどお……」

ξ゚听)ξ「内藤さん」

( ^ω^)「お、つん! もう大丈夫なのかお?」

ξ゚听)ξ「はい、私は妖怪ですから傷の治りは早いですし」

( ^ω^)「おー……でも未だ余り動かない方が良いお?」

ξ゚听)ξ「そうですね……未だ激しく動くと出そうです」

(;^ω^)「何が!? ねぇ何が!?」

ξ゚听)ξ「モツが」

(;^ω^)「止めて出さないで! モツは出さないで!?」


12 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:12:21.91 ID:7SXm4qtHO

川 ゚ -゚)「む、どくおだ」

('A`)「お、くう」

川 ゚ -゚)「相変わらず冴えないおっさんだな」

('A`)「泣くぞ」

川 ゚ -゚)「可愛くなくなったなお前は……」

('A`)「何年経ってると思ってンだ……」

川 ゚ -゚)「このくうは可愛いままだぞ」

('A`)「お嬢では無くなったけどな」

川 ゚ -゚)

('A`)

川 ゚ -゚)「歯ぁくいしばれ」

('A`)「へっ、ちびに何が出来」キンッ

(゚A゚)

川#゚ -゚)「ざまーみさらせ」


13 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:14:25.17 ID:7SXm4qtHO

(;゚A゚)「坊っちゃん……俺……きん……」

(;^ω^)「腰とんとん、腰とんとん」

(;゚A゚)「引っ込んだ……目一杯引っ込んだ……ほ、ほわぁあああああああああああ…………」

(;^ω^)「変に煽るから殴られるんだお……股間を」

(;゚A゚)「痛いってレベルじゃねェ……何この……未知の……責め苦……」

ξ゚听)ξ?

(^ω^ )「つんは知らなくて良いおー、綺麗なままで居ておー」

川 ゚ -゚)「男はな、股間を蹴ったりすると泣くんだ」

ξ゚听)ξ「はあ……何でですか?」

川 ゚ -゚)「それはな、」

(^ω^ )「くうちゃーん」

川 ゚ -゚)「ほい」

(^ω^ )「めっ」

川 > -<)キャア


17 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:17:15.86 ID:7SXm4qtHO

( ^ω^)「しかし、つんもくうちゃんも無事そうで良かったお」

('A`)「だな、これだけは救いだ」

川 ゚ -゚)「つん、また食べて良いか?」

ξ゚听)ξ「流石に駄目です」

川 ゚ -゚)「ちぇっ」

爪'ー`)y‐「町の被害自体は少ない方なんだけどねー」

( ^ω^)「防ぎ切れなかった分が悔やまれるお……」

爪'ー`)y‐「でも最小限には抑えた方さぁ、少ない人数でよくやったよぉ」

( ^ω^)「そうかおね……僕何もしてない気がするけど……」

爪'ー`)y‐「空気主人公のさだめだねぇ、まぁ感情移入出来るたいぷじゃないし君ぃ」

( ^ω^)「まっこと失敬だお……」

( ^ω^)


19 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:18:51.91 ID:7SXm4qtHO

( ^ω^)「何なちゅらるに混ざってるんだお狐どん」

爪'ー`)y‐「いけめん様のお通りだよぉ」

( ^ω^)「帰れ人気きゃら」

爪'ー`)y‐「あははははぁ、不人気泣かないでぇ?」

( ^ω^)

爪'ー`)y‐

( ^ω^)「くうちゃん、食べておしまい」

川 ゚ -゚)「くぴぽー」

爪'ー`)y‐「あ、ごめんごめん待って無投票こんび」

(#^ω^)

川#゚ -゚)


23 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:20:58.98 ID:7SXm4qtHO

川#゚ -゚)「くうは投票時に出番なかっただけだ!」

爪'ー`)y‐「はいはぁい」

川#゚ -゚)「十一話まで期間があったらくうだって!」

( ^ω^)

川#゚ -゚)

( ^ω^)

川 ゚ -゚)「ごめん……内藤ごめん……くうが悪かった……心から悪かった……」

( ^ω^)「気にしてないおー気にしてないおーどうせ空気不人気主人公だから気にしてないおー」

ξ゚听)ξ「不人気でも好きですよ?」

(^ω^*)「あ、もう全部どうでも良くなったお」

('A`)イラッ

川 ゚ -゚)イラッ

爪'ー`)y‐イラッ


25 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:22:32.16 ID:7SXm4qtHO

( ^ω^)「ところで、お狐どんは何でまたここに?」

爪'ー`)y‐「あー、お客様連れてきたんだよぉ」

( ^ω^)「お客様?」

爪'ー`)y‐「先代様ぁ、どぞぉ」

(`・ω・´)「結構待たすなあ、ふぉっくす……」

爪'ー`)y‐「あはははぁすみませーん先代様ぁ」

( ^ω^)

('A`)

(`・ω・´)「やあ文太郎、元気かい?」

( ^ω^)「お」

(`・ω・´)「お?」

(*^ω^)「おじいさまああああああ!!」

(;゚A゚)「おじいさまああああああ!?」


26 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:24:36.69 ID:7SXm4qtHO

 山伏の如き白い装束を纏い、笠を外して男は朗らかに笑う。

 精悍な顔立ちにきりりと上がった眉。
 若く、好青年と云うに相応しい容貌の男。

 坊っちゃん以外に内藤の姓を持っていた、唯一の男である。


(*^ω^)「しゃきんのじっちゃん! いつ戻ってきたんですかお!?」

(`・ω・´)「うん、この間戻ってきたばかりだよ。それにしても、僕の事を覚えていたのかい?」

(*^ω^)「ぶっちゃけ赤ちゃんの頃に出てったんだから顔なんか覚えてるわけないお!」

(`・ω・´)「ははは、だろうね。しかし大きくなったね」

(*^ω^)「おー! でも話しはずっと聞いてたし、また会いたかったんだお!」

(`・ω・´)「うん、素直な良い子に育ったみたいで安心したよ、文太郎は良い子だね」

(*^ω^)「おっおっ! ありがとうだお!」


27 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:26:26.53 ID:7SXm4qtHO

(;'A`)「ぇ……あの、え……?」

(`・ω・´)「やあ、君が餓鬼のどくお君だね?」

(;'A`)「あ、は、はい、そうです」

(`・ω・´)「話はよく聞いていたよ、君も元気そうで何よりだ」

(;'A`)「え……話って、誰から……?」

(`・ω・´)「ほら、君達が飼っているあれだよ」

( ^ω^)「お?」

(;'A`)「え?」


      (´・ω・`)「むっきゅーん!!」


( ^ω^)

('A`)


29 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:28:45.81 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「やあ、戻ってきたね、しょぼん」

(´・ω・`)「むきゅ!」

('A`)「……しょぼん?」

(´・ω・`)「むきゅ?」

(`・ω・´)「僕の尾は、立派に働いているかい?」

( ^ω^)「お! 影は薄いけど立派に働いてくれてますお!」

('A`)「尾……?」

(`・ω・´)「ああ、このしょぼんは僕の尾なんだ、ほら」

( ^ω^)「おっ、じっちゃん尾っぽが八本しかありませんお」

(`・ω・´)「僕の尾を一本千切って、命を吹き込んだのがしょぼんだからね」

('A`)「……そうだったの?」

( ^ω^)「云わなかったかお?」

('A`)「いや俺は聞いてねェ」


30 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:30:49.61 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「良かった、しょぼんは僕の云う事を聞かない困った尾だったからね」

(´・ω・`)

(`・ω・´)「勝手にうろうろしたり、余計な事を云ったりしてはいないかと不安だったんだ」

(´・ω・`)

(`・ω・´)「これは口が軽いしすぐ調子に乗るからね、扱いに困ったら尾を変えるよ」

(´寃ヨ嫣)

(`・ω・´)

(´寃ヨ嫣)

(`・ω・´)「しょぼん、何かしたね」

(´寃ヨ嫣)「むひょー……」

(`・ω・´)「君は全く、不真面目な管狐だ……」

(´寃ヨ嫣)「むひぃ」


31 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:32:14.99 ID:7SXm4qtHO

( ^ω^)「しかしじっちゃん、何でまた急に?」

(`・ω・´)「ああ、この間までは南の方に居たんだがね、不穏な噂を聞いたから戻ってきたんだ」

( ^ω^)「不穏な、と云うと……」

(`・ω・´)「僕が戻った頃には、もう殆ど騒ぎが終わりかけていたね」

( ^ω^)「あー……南でも噂になってましたかお、此処の事……」

(`・ω・´)「あの排他的な天狗達が、此処を手伝う為にと騒いで居たからね」

( ^ω^)「南は確か、烏天狗達の里なんかがあるんでしたかお?」

(`・ω・´)「うん、南は翼持ちや海の者が多いね。余所者には警戒心が強いが、身内には優しい」

( ^ω^)「北は?」

(`・ω・´)「北には雪女なんかが居るね、狐も多い。余所者に優しいけど、油断すると痛い目に会う」


33 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:34:54.28 ID:7SXm4qtHO

( ^ω^)「となると、東は比較的普通なのかお?」

(`・ω・´)「東には妖怪が少ない、人間の手が多く伸ばされているから生きづらくもあるよ」

( ^ω^)「おー……都会的ですお」

(`・ω・´)「そうだね、流れも速いから妖怪には不向きではある」

( ^ω^)「西は……まあ、そのままかお」

(`・ω・´)「おっと、その先入観は頂けないかな」

( ^ω^)「お?」

(`・ω・´)「東に都がある様に、西にも都はあるんだ。
      目につく物は西の荒くれものが多いけど、穏やかな妖怪だって多いよ」

( ^ω^)「おー、そうなんですお?」

(`・ω・´)「ああ、しゅうなんかもその都の近くの者。あとは鎌鼬がそうかな」


36 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:36:21.79 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「きゅうは西の荒くれものの輪の中に居た方だが、西だって悪い所ではないんだよ」

( ^ω^)「おー……西にも色々あるんですおね……」

(`・ω・´)「ああ、食べ物の美味しさは東西南北で最たるものだしね」

(*^ω^)「お!」

(`・ω・´)「北も食べ物は美味しかったよ、向こうでは生臭と云われる物だって美味しく食べられる」

(*^ω^)「おー……何処にも良いところがありますおー……」

(`・ω・´)「南は少し野性味が強いが、輪に入れればとても良い所だ
      余所者に厳しいのは元々厳しい思いをしてきたからであって、本当は優しい奴等さ」

( ^ω^)「南はあったかくて人柄が良さそうですお!」

(`・ω・´)「ああ、君の友人の弟者君も南の出身だろう? 彼も人柄はよく、面倒見も良い」

(*^ω^)「おっおっ、友達を誉められるのは嬉しいですお!」


38 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:38:43.80 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「東は人間が多い分、発達も早い。色んな事を試して力にしている、良い所だよ」

(*^ω^)「おー」

(`・ω・´)「何処にも良い所、悪い所がある。けれどその悪い所を良い物で補う、素晴らしい物だ」

(*^ω^)「何処にも良し悪しがあるんですおね」

(`・ω・´)「そう、だから何処が悪で何処が善と決め付けるのは良くない」

( ^ω^)「おっ……解りましたお! 広い視野を持ちますお!」

(`・ω・´)「うん、広きを知るは決して悪い事じゃないからね。
      先入観で凝り固まった目を持つよりも、ずっと良くて素晴らしい事だよ」

( ^ω^)「じっちゃん……かっこいいですお……」

(`・ω・´)「ははは、僕はただ旅をして色んな物を見てきただけだよ
      その合間に様々な事を考えて、その時の最善を探して行動に起こすだけさ」

(*^ω^)(ちょうかっけえ……)


40 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:40:25.09 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「だから僕の孫にあたる文太郎にも、様々な物を見て、感じて欲しい
      いずれはこの町を背負う事になるだろう、重い家名があるけれどね」

( ^ω^)「お……それでも、僕は立派に大地主として立ちたいと思いますお!」

(`・ω・´)「うん、僕が出て行ってしまって迷惑をかけたからね、それに関しては心から申し訳ない」

( ^ω^)「そんな事はありませんお! じっちゃんのお陰で、この町があるんですお!」

(`・ω・´)「ははは、僕は何もしていないよ、ただ町を必要とする人達が多く居ただけさ」

( ^ω^)「でも、そのお陰で救われた人はいっぱい居ますお!」

(`・ω・´)「うん……僕は自分がした事を振りかざすのは苦手だけど、
      そうして幸せになれた人が少しでも居るのなら、それは僕としても、何よりも幸せだよ」

(*^ω^)(じっちゃんまじいけめん……)

(`・ω・´)「…………内藤の姓を君に持たせた事を、心苦しく思った事もあった
      この小さくも人の多い町を、妖怪の君が背負う事になるのだからね」

( ^ω^)「そんな事っ!」

( ^ω^)

( ^ω^)「え?」


43 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:42:17.58 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「ん?」

(;^ω^)「えっ……あの……妖怪……?」

(`・ω・´)「うん、妖怪」

(;^ω^)「えっ……えっ? えっ?」

(`・ω・´)「何だ、未だ知らなかったのかい?」

(;^ω^)「えっ、ちょ、えっ? ええっ? な、そ、えっ? 僕、人間じゃ……?」

(`・ω・´)「違うよ?」

(;^ω^)「ええええええええええっ!?」

(`・ω・´)「ああ、未だ気付いてないのか」

(;^ω^)「何それ初耳だお!? 何!? 僕は何の妖怪!?」

(`・ω・´)「んー……そうか、しゅう達からも聞いていないのか」

(;^ω^)「すげえ人間って云ってますお!? 人間として育てられましたお!?」


46 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:44:11.24 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「あー……もしかしたら、しゅうも杉浦も知らないのかな……それとも云ってないだけか」

(;^ω^)「ね、ねえ何!? 僕は何!?」

(`・ω・´)「君は立派な妖怪だよ?」

(;^ω^)「いやだから何!? 僕は何!?」

(`・ω・´)「その問いこそが答えだよ」

(;^ω^)「お……?」

(`・ω・´)「大丈夫、焦らなくても良い。未だ知る時じゃないだけで、君は必ずそれに気付く」

(;^ω^)「いずれ、わかる……と?」

(`・ω・´)「そう、その時が来れば、考えずともそれは見付かる。
      だから穏やかにその時を待てば良い、焦って探しても、君は混乱するばかりだ」

( ^ω^)「お……解り、ましたお……」

(`・ω・´)「以下、文太郎の正体を考察するレス禁止ね」

(;^ω^)「う」


49 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:46:12.70 ID:7SXm4qtHO

( ^ω^)「……妖怪、ですかお……」

(`・ω・´)「そう、君は人間ではない。でも、それに悲観はしなくて良い」

( ^ω^)「はいですお、僕は妖怪が大好きですお、だから」

(`・ω・´)「だから、百鬼夜行を成したいと思った」

( ^ω^)「お……知ってましたかお」

(`・ω・´)「災難だったね、ただ百鬼夜行を成そうとしただけなのに、いくさに巻き込まれて」

( ^ω^)「いえ、困難はあるだろうとは思ってましたお」

(`・ω・´)「それだけじゃない」

( ^ω^)「お?」

(`・ω・´)「西の妖怪と云えど、好きなものを傷付けてしまうのだから」

( ^ω^)「あ……」

(`・ω・´)「知らずの内に、葛藤はあった筈だ。好きなものを傷付ける矛盾に対して」

( ^ω^)「……」

(`・ω・´)「一度は怒りに染まった事もあっただろう、守るべきものの為と思っただろう
      けれど、愛すべき妖怪と人間の為に何かを傷付ける事が悲しいと、思った筈だ」

54 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:48:19.85 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「守るべきものの為に戦う、それは正しいだろうね
      けれど大切な物を守る為、大切な物を奪い続ける矛盾。     出典さんほら」

( ^ω^)「じっちゃん、真面目な雰囲気をぶち壊さないで」

(`・ω・´)「ははは、あのしゅうと杉浦の親だよ僕は」

( ^ω^)「ああ……」

(`・ω・´)「その反応を見ると、あの二人は相変わらずなかなかのものだね」

( ^ω^)「今日も今日とて馬鹿夫婦ですお」

(`・ω・´)「あー、昔からそうだよ」

( ^ω^)「あー、やっぱりね」

(`・ω・´)「人の目を気にしない所だけは何とかしてほしいものだね、うん」

( ^ω^)「いつ妹か弟が出来るかと戦々恐々ですお」

(`・ω・´)「ああ、それは無いよ」

( ^ω^)「お?」

(`・ω・´)「しゅうは、体の片側と一緒に、子を育てる腹を奪われたからね」

( ^ω^)「お……」

56 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:50:27.17 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「しゅうが母に固執するのは、もう子を産めないからだ
      ただ一人だけ産み落とせた子を奪われ、あの子は狂った様に泣いていた」

( ´ω`)「おー……」

(`・ω・´)「……立派な母になろうとしていた、愛する夫と子と共に、幸せに生きる筈だった」

( ´ω`)「……」

(`・ω・´)「複雑だね…………あの子は子を奪われたから、君達の母となったのだから」

( ´ω`)「僕は……」

(`・ω・´)「人とはね、文太郎」

( ´ω`)「お……?」

(`・ω・´)「人とは、皆が平等になる事は難しいんだ。誰かの幸が誰かの不幸である様に
      この輪は崩れず、平等に与えられる幸とは少ない。与えられたとしても、満足はしない」

( ´ω`)「…………」


58 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:52:15.77 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「誰かが幸を吸い、誰かの不幸を呼ぶ事もある。それは皆、一緒だ」

( ´ω`)「でも……僕は、誰かが不幸なのは悲しいお……」

(`・ω・´)「……誰かの幸が誰かの不幸になり、誰かの不幸が誰かの幸になる
      しかし場合によっては、誰かの不幸がまた、誰かの不幸を呼ぶ事もある……君の様に」

( ´ω`)「……」

(`・ω・´)「悲しいなら、君は笑っていなさい
      君の笑顔は幸を与える、それは君の、妖怪としての力でもある」

( ´ω`)「お? ……僕の、力……?」

(`・ω・´)「そう、君は珍しい、幸を与える事の出来る妖怪だ
      座敷童子の様に顕著な物では無いけれど、幸を吸わずに幸を与える事が出来る」

( ´ω`)「僕が……人に、幸を……」

(`・ω・´)「君は怒るよりも悲しむ子、悲しむよりも喜ぶ子、君の幸せは人の幸せを呼ぶ
      ただ君がひとたび怒れば、それは不幸を呼んでしまう、幸は吸わない諸刃の剣だ」


60 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:54:19.80 ID:7SXm4qtHO

( ´ω`)「僕は、何の妖怪なんでしょうかお……僕にそんな力があるなんて……」

(`・ω・´)「じゃあもうケセランパサランで良いよ」

(;^ω^)「しりあすっ! しりあす持ってかないでっ!?」

(`・ω・´)「ほら、笑った」

( ^ω^)「お……」

(`・ω・´)「笑っていなさい文太郎、君の笑顔は誰かの力になるのだからね」

( ^ω^)「……でも、友達と思ってた男に、嫌がられましたお……」

(`・ω・´)「本心だと思うかい?」

( ^ω^)「お……だって……」

(`・ω・´)「信じる事は悪くはない、でも目の前の物を全て鵜呑みにして信じ込むのは愚かだよ」

( ^ω^)「おー……難しいですお……」

(`・ω・´)「疑う事は苦手かも知れない、けれど一歩引いて全てを見る目を持ちなさい
      全てを信じ込んでしまうと視野を狭める、だから悲しくても、疑う事を知りなさい」

( ^ω^)「……はい、ですお……頑張りますお」


64 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:56:43.05 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「君は、本心を飲み込む」

( ^ω^)「お?」

(`・ω・´)「感情的な子供な君が、本当の君だと思うかい」

( ^ω^)「お……でも、僕は僕ですお?」

(`・ω・´)「君をも欺く君が、君の中にある」

( ^ω^)「僕を欺く僕……ちゅうにくせえお……」

(`・ω・´)「しりあすしりあす」

( ^ω^)「ははは、何を今さら」

(`・ω・´)「ははは、まあ確かに…………その君と、うまく折り合いをつけなさいね」

( ^ω^)「……まだよくは解らないけど、把握ですお」

(`・ω・´)「うん…………君のよく解らない部分こそが、妖怪の部分だからね」

( ^ω^)「謎妖怪ですかお、僕は……」

(`・ω・´)「あながち間違ってはいないね。あとケセランパサランだから以下文太郎の正体当て禁止」

(;^ω^)「またー……そうやってめたらないで下さいおー……」


66 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 21:58:23.29 ID:7SXm4qtHO

('A`)

爪'ー`)y‐

('A`)「このおいてけぼり感」

爪'ー`)y‐「蛇っ子と鬼っ子、手伝いに行っちゃったしなぁ」

('A`)「しかも真面目な話だから入れねぇ」

爪'ー`)y‐「あははぁ、先代様かっけーぇ」

('A`)「概ね同意、伊達じゃねェな」

爪'ー`)y‐「しかし……お坊っちゃんがケセランパサランとはなぁ……」

('A`)「なァ……まさかケセランパサランとは……」

爪'ー`)y‐

('A`)

爪'ー`)y‐「鬼っ子、お茶」

('A`)「はいよ」


70 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:01:30.12 ID:7SXm4qtHO

爪'ー`)y‐「連れてきた現九尾のいけめん空気っぷり切ないなぁ」

(´・ω・`)

爪'ー`)y‐「どぉ思う? 口軽っ子ちゃん」

(´・ω・`)「むきゅ」

爪'ー`)y‐「ん?」

ビターン(´・ω・`)三つ)ー )y‐「ゆべしっ!?」

爪;#)ー`)y‐「え……な、何で急に殴られたのぉ!? いけめんだから!?」

(´・ω・`)「むきゅーむっきゅっきゅ」

爪;#)ー`)y‐「……ああ、ぎこが怒ってたの……」

(´・ω・`)「むひゅ」

爪;#)ー`)y‐「あと私怨?」

(´>ω<`)

爪#)ー`)y‐「あまり私を怒らせない方が良い」

(;´>ω<`)

71 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:03:12.33 ID:7SXm4qtHO

('A`)「お茶入れてきた……って、何しょぼん結んでんだ」

爪#)ー`)y‐「嫉まれたのでぇ」

('A`)「じゃあしょうがねェな、はい茶」

爪#)ー`)y‐「ありがとーぉ、飲んだらぎこの手伝いに行くよぉ」

('A`)「おー行ってこい行ってこい」

爪#)ー`)y‐「あ、そうだ」

('A`)「あん?」

爪#)ー`)y‐「ここ数日ねぇ、また辻斬りの噂と被害が増えてるんだぁ」

(;'A`)「はァ!? 鎌鼬は辻斬り廃業したぞ!?」

爪#)ー`)y‐「これが鎌鼬とは違うんだよねぇ……斬られたと云うか、裂かれた、なんだぁ」

(;'A`)「裂かれたって……何で?」

爪#)ー`)y‐「……爪で」


75 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:04:42.75 ID:7SXm4qtHO

(;'A`)「爪ってェと……獣か……?」

爪#)ー`)y‐「……あるいは、」

(`・ω・´)「鬼、かな」

爪#)ー`)y‐「あ、先代様」

(;'A`)「鬼っても、この町の鬼は俺と……くうは、子供だし……それくらいしか。お茶どんぞ」

(`・ω・´)「何も町の人とは限らない、この間の騒動で紛れ込んだのかも知れないし。ありがとう」

(;'A`)「紛れ込んだ鬼……ってのは、怖ェな、それ……。茶菓子どんぞ」

(`・ω・´)「しかし、鬼か……この間の牛鬼はのしたんだけどなあ。ありがとあちち」

(;'A`)「牛鬼ィ!? そんなもんまで来てたのか!? 焼きたてなんで気を付けて」

(`・ω・´)「西の門に居てね、ふぉっくすの居場所を聞こうとしたら女の子を苛めてたから。美味しいな」

(;'A`)「西門ってとそんの……あの怪我は牛鬼の所為かよ……ッ。あざっす」


77 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:06:39.38 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「腕を取られたみたいだね……あの傷では、蝦蟇の油も効かないか……。ボリボリ」

(;'A`)「刀傷とか、綺麗な傷だと腕取れてもくっつくんだけどな……。ボリボリ」

(`・ω・´)「腕を砕かれた後から千切られていた、あれでは繋げる事は出来ないね……。ボリボリ」

(;'A`)「うへえええ、とそん大丈夫かよ……骨や肉が潰れてたら、流石に無理なんだよな。ボリボリ」

(`・ω・´)「腹の傷は皮膚と肉を裂かれただけだから治るけど……骨はね……。ボリボリ」

(;'A`)「とそん誰よりも満身創痍じゃねぇか……様子見に行ってやれば良かったな……。ボリボリ」

(`・ω・´)「お煎餅美味しいねこれ」

('A`)「出来が良いッスね、焼き直しなのにうめぇ」

(`・ω・´)「何処のお煎餅? ちょっとお土産に欲しいな」

('A`)「旦那様のお手製です」

(`・ω・´)「杉浦ェ……」


79 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:08:26.59 ID:7SXm4qtHO

('A`)「辻斬りの件も、調べてみなきゃ……駄目ッスかね」

(`・ω・´)「駄目ッス」

('A`)「面倒と云っては」

(`・ω・´)「駄目ッス」

('A`)「嫌っつゥのも」

(`・ω・´)「駄目ッス」

( ^ω^)「どくお諦めろお、じっちゃんには敵わんお」

('A`)「何となくは解ってた」

( ^ω^)「んじゃ、後で行ってみるかお」

('A`)「まーた悪い奴も出るもんだなァ」

( ^ω^)「おー、悪い子は成敗ですお」


82 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:10:19.43 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「文太郎」

( ^ω^)「お?」

(`・ω・´)「この世にはね、絶対悪なんて存在しないんだよ」

( ^ω^)「お……?」

(`・ω・´)「悪と呼ばれる物にも良い所があり、それらの方向を変えてやれば良い物にもなるんだ」

( ^ω^)「……兵器も使い方、って感じですかお?」

(`・ω・´)「そう、だから文太郎、君は叩き潰すのではなく、正しいに等しき道を教えてあげなさい」

( ^ω^)「正しいに等しき道…………正しいにも、種類があるから、ですかお?」

(`・ω・´)「僕らの正義が絶対とは思ってはいけないと云う事、完璧な正しさなんてないのだから」

( ^ω^)「……解りましたお、じっちゃん。視野を広く、心を広く、ですおね」

(`・ω・´)「ああ、文太郎や……忘れてはいけないよ……」

( ^ω^)「お前は冥府に巣喰う亡者どもの手から、この世界を守る為の最後の黄泉の番人」

(`・ω・´)「あ、云われちゃった」

( ^ω^)「じっちゃん、もうさんほらネタ控えて下さいお」


85 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:12:26.74 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「好きなんだよね、ああいったネタ臭さ」

( ^ω^)「だからってじっちゃん……まあ良いお」

(`・ω・´)「流されちゃった……」

( ^ω^)「……じっちゃん、絶対悪は存在しないんですかお?」

(`・ω・´)「ああ、大抵の生き物には必ず良い所がある
      一見は良い所に見えずとも、見方を変えれば良い物になる」

( ^ω^)「それすら、見えない場合は?」

(`・ω・´)「人の心や魂は、見えないだろう?
      それを感じてあげる事が大事で、感じてやれば互いに何かが通じ合うよ」

( ^ω^)「魂の底から腐れ外道でも、悪ではないんですかお?」

(`・ω・´)「どうしようもない罪人なんかは、中には居るかもしれないね」

( ^ω^)「それらは、悪では?」

(`^ω^´)「それは悪じゃない、クズって云うのさ文太郎」

( ^ω^)(うん、ただの善人ではないと思ってた)


90 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:14:58.10 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「悪には人を惹き付ける物があるから悪なんだよ
      悪にも花がある、それにそぐわぬただの愚者はクズだ」

( ^ω^)「じっちゃん、発言が恐ろしく恐ろしいですお」

(`・ω・´)「しかしクズも集まれば」

( ^ω^)「塵も積もれば?」

(`・ω・´)「ゴミになるね」

( ^ω^)「燃やせよもう」

(`・ω・´)「駄目だよ文太郎、地域にあった処理をしないと環境汚染に繋がる」

( ^ω^)「あー、だいおきしん出ますおね」

(`・ω・´)「一つ一つは小さくても、きちんとやれば良い事にも繋がるからね
      まあマイ箸とか個人的には好きだし割り箸の産地によってアレだけど
      割り箸って使わない木材から作られてたりするからあんまりエコでもなかったりする」

( ^ω^)「じっちゃん、あんた何処を旅して来たの」

(`・ω・´)「色々行ったよ、ラダトームとか」

( ^ω^)「何処だよ」


93 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:16:28.85 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「まあそれはさておき、さて行こうか」

( ^ω^)「お?」

(`・ω・´)「辻斬りだろう? 僕も手伝うよ、皆に挨拶もしたいし」

( ^ω^)「おー! ありがたいですお!」

(`・ω・´)「僕が先頭だから文太郎達は後ろ並んでね、四人まで」

( ^ω^)「どらくえはもうええっちゅうねん」

(`・ω・´)「ちぇっ…………あれ、ふぉっくすは?」

('A`)「ぎこの旦那を手伝いに行きました」

(`・ω・´)「話し込んでる間にずいぶん人が減ったと思ったら」

('A`)「大旦那、話が長いです」

(`・ω・´)「ははは、長旅からの帰りだから、ついね」

( ^ω^)「はよ行きますおー」

(`・ω・´)「あ、待って先頭は僕で、並べ替え並べ替え」


95 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:18:35.69 ID:7SXm4qtHO


( ^ω^)「おっとさーん!」

( ΦωΦ)「む、坊主か」

( ^ω^)「おお……おっとさんが額に汗して働いてる……辻斬りについて何か知ってますかお?」

( ΦωΦ)「ふむ……辻斬り、か……」

(`・ω・´)「やっほー杉浦」

( ΦωΦ)「おお、親父殿」

(`・ω・´)「ははは、こんなむさい息子は嫌だな、それより久々だね」

( ΦωΦ)「うむ、久し振りでありますな、ゾーマは倒されましたか?」

(`・ω・´)「竜王も倒したよ、指先一つで」

( ^ω^)「だからあんた何処に行ってたんですかお」

(`・ω・´)「色々だよ色々、それより辻斬りは?」

( ΦωΦ)「申し訳ない事に、女らしいと云う話しか聞きませんな」


101 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:20:35.28 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「ふむ……じゃあ杉浦」

( ΦωΦ)「む?」

(`・ω・´)「煎餅焼いて?」

( ΦωΦ)「また今度で良ければ」

(`・ω・´)「よっしゃ約束ね」

( ΦωΦ)「はいはい、相変わらずでありますな親父殿」

(`・ω・´)「だから僕より親父臭い息子は嫌だって」

(´ΦωΦ)「本当に相変わらずでありますな……」

( ^ω^)「昔からこうなんですかお……」

(´ΦωΦ)「好青年の様な風貌と発言の癖に妙に子供臭いのだ……」

(`・ω・´)「あ、狸の子! 久々だね、彼女は出来たかい? B迄は行った?」

(;,゚Д゚)「まーた再会早々あんたは……答えやせんよ……」

( ^ω^)

(´ΦωΦ)


104 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:22:56.63 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「お、狸の子の弟!」

(;,^Д^)「せ、先代九尾様!?」

(`・ω・´)「や、久々だね。彼女出来た? 相変わらずぺどこん?」

(;,^Д^)「何ですか出会い頭に! ぺどこんとか失礼な!」

(`・ω・´)「ははは、知ってるよ、小さい女の子に手を出したんだろう?」

(;,^Д^)「出してませんよ! 止めて下さい!!」

(`・ω・´)「相変わらず意気地が無いなあ全く、そんなんじゃあ駄目だよ」

(;,^Д^)「さらりと犯罪を勧めてませんか!?」

(`・ω・´)「気のせい気のせい、あ、狢の子ー!」

(;,^Д^)「何なんですか、もう……」

(`・ω・´)「この町はぺどこんばっかりだなあ」

(;,^Д^)「止めて下さいよ! もう!!」


105 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:24:17.99 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「お、あれは」

,,,( ^Д^)「どっこい生きてる井戸の中ぁん」

(`・ω・´)「尻に筒入れてパンッ!!」

(;^Д^)「ひぎぃっ!? 俺っちのとらうまっ!!?」

(`・ω・´)「やあ蝦蟇の子」

(;^Д^)「あ、先代さん……」

(`・ω・´)「パンッ!!」

(;^Д^)「止めて!? 本当それ止めて!?」

(`・ω・´)「んじゃ次行こうか」

(;^Д^)「ふりぃぃぃぃだぁぁぁぁぁぁぁぁむ!!!!」


109 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:26:13.18 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「おーい、犬の子ー」

(;TДT)「狼!!」

(`・ω・´)「や、久々だね」

(;TДT)「うわ、先代さん」

(`・ω・´)「うわ?」

(;TДT)「あ、や、い、うわーい先代さん!」

(`・ω・´)「傷だらけでどうしたの?」

(;TДT)「流すのかー……ちょっと双子の姉に……」

(`・ω・´)「ああ、格好良くばとる始まると思ったのに出番と共にばっさり切られ
      その後は触れられもせずに脳内補完よろしくと投げっぱなされたんだったね。
      ねぇどんな気分? 見せ場と落ちを省かれてどんな気分? ねぇねぇ トントン」

(;TДT)

(;寇D)

(`・ω・´)「いえーい、次行こうか」

(;^ω^)「ごめん……もか、本気でごめん……」


114 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:28:19.09 ID:7SXm4qtHO


(`・ω・´)「いやー、なかなか情報集まらないね!」

(;^ω^)「ね! じゃありませんお……人の心をめためたにしといて……」

(`・ω・´)「大丈夫、人じゃない!」

(;^ω^)「じっちゃん……弾けてませんかお……?」

(`・ω・´)「作った故郷に戻ってきてじじい大はっする☆」

(;^ω^)(あかん、じっちゃんからくっくるに似た匂いがする……もうあかん……)

(`・ω・´)「まあ粗方おちょくったし、しゅうの所に行こうか」

(;^ω^)「やっぱりおちょくりめいんだったのかお……」

(`・ω・´)「いやあ、子供だった子が図体ばかり大きくなってたからね」

( ^ω^)「つい懐かしくて?」

(`・ω・´)「いや、みんな僕より大きくなってて正直腹が立ったから」

( ^ω^)「じっちゃん、大概にして」


116 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:30:03.80 ID:7SXm4qtHO



( ^ω^)「おっかさーん、失礼しま」

(`・ω・´)「やっほー! しゅうー!」

( ^ω^)(じじい)

lw´‐ _‐ノv「あらん……父上様でござりんす……?」

(`・ω・´)「ぱぱ上だよしゅう! 久々だね! 相変わらず美人だね!」

lw´‐ _‐ノv「あらあら、父上様ったら……いつお戻りになりんした?」

(`・ω・´)「つい先日さ、元気そうで良かった。君は寂しがり屋の泣き虫さんだからね」

lw´‐ _‐ノv「父上様ったら……そんな昔の事を仰有らないで下さいましな」

(`・ω・´)「ははは、今でもすぐ泣く癖に、そら高いたかーい」

lw´‐ _‐ノv「まあ旦那様に毎夜鳴かされてはおりんす」

(`・ω・´)「相変わらずだね君達は」

lw´‐ _‐ノv「父上様こそ」

( ^ω^)(何なのこの親子)


121 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:32:13.14 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「そうだ、君の糸を頼りに来たんだ」

lw´‐ _‐ノv「辻斬り、でござりんす?」

(`・ω・´)「そう、流石だねしゅう。町に張り巡らされた蜘蛛の巣は健在か」

lw´‐ _‐ノv「雨の日には溶けてしまいんす……この間の騒動で、随分切れてしまいんした」

(`・ω・´)「そうか……何か、少しでも情報はあるかい?」

lw´‐ _‐ノv「ん……女の鬼である事は、確か」

(`・ω・´)「ふむ……」

lw´‐ _‐ノv「それと、その鬼は西の鬼でありんす」

(`・ω・´)「……容貌は解るかい?」

lw´‐ _‐ノv「長い黒髪、淑やかな女、悲しそうに謝る鬼……緋色の着物を、靡かせ走る」

(`・ω・´)「…………そう、か」

lw´‐ _‐ノv「……父上様」


124 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:34:11.39 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「文太郎」

( ^ω^)「お?」

(`・ω・´)「西に行く、君はどうする」

(;^ω^)「おっ!? 何でまた敵陣にっ!?」

(`・ω・´)「行かなければ、ならないからさ」

(;^ω^)「じっちゃん……?」

(`・ω・´)「君には町がある、だから残っても良い。そうなれば僕は一人で行く」

( ^ω^)「……」

(`・ω・´)「しゅう、有り難う。僕は西へ行くよ」

( ^ω^)「僕も」

(`・ω・´)「……」

( ^ω^)「僕も、行きますお」

(`・ω・´)「……大丈夫かい?」

( ^ω^)「はい、ですお」

126 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:36:17.45 ID:7SXm4qtHO

lw´‐ _‐ノv「町は、わっち達にお任せを……お行きやんせ、お坊っちゃん」

( ^ω^)「……有り難う御座いますお、おっかさん」

(`・ω・´)「じゃあ、行こう。急いて行かなければいけない」

  『ちょっと待ってくれ』

( ^ω^)「お?」

(´<_` )「同行、許してくれないか?」

( ^ω^)「弟者……でも、傷は……?」

(´<_` )「もう動ける、俺も行かせてくれ」

( ^ω^)「……」

(´<_` )「……俺にも、西に行く理由があるんだ」

( ^ω^)「襲われないとは、限らないお?」

(´<_` )「それでも」

(`・ω・´)「あ、それは大丈夫」


129 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:38:05.57 ID:7SXm4qtHO

( ^ω^)「お? 大丈夫なんですかお?」

(`・ω・´)「うん、だって僕が居るし」

( ^ω^)

(`・ω・´)「これも居るし」

( ^ω^)?

(`・ω・´)っ(  ^^)

( ^ω^)

( ^ω^)「何を懐から出した」

(`・ω・´)っ(  ^^)「ぼこって縮んだ牛鬼の瓶詰め」

( ^ω^)「……」

(`・ω・´)「……」

( ^ω^)「じっちゃん」

(`・ω・´)「はい」

( ^ω^)「自由すぎる」


133 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:40:13.48 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「徹底的に痛め付けたからね、もう西の怖いのは一つ潰したよ」

( ^ω^)「あんた叩き潰すなって云ってなかったかお」

(`・ω・´)「それは文太郎に、僕は場合によっては叩き潰す」

( ^ω^)「じじい」

(`・ω・´)「ついに口に出したね」

( ^ω^)「じっちゃんあんた自由すぎるお、勝手に動きすぎて物凄く順調に書けてんだお」

(`・ω・´)「ははは、良い事じゃないか」

( ^ω^)「話が進まねーんだお」

(`・ω・´)

(`^ω^´)゙

( ^ω^)イラッ

(´<_` )「……牛鬼、鼠みたいな大きさになってるな」

ヾ(  ^^)ノシ ワチャワチャ


137 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:42:28.45 ID:7SXm4qtHO

(´<_` )「……で、ついてって良いのか?」

(`・ω・´)「良いよ?」

(´<_` )「…………有り難う御座います」

(`・ω・´)「君のお父さんにはお世話になったしね」

(´<_` )「え、父者?」

(`・ω・´)「うん、酒とか相当貰ったよ。無理矢理」

(´<_` )「何してるんですかあんた」

(`・ω・´)「泣いてたけど」

(´<_` )「人の父親泣かせないで下さい」

(`・ω・´)「お母さんとは呑み比べしたよ」

(´<_` )「本当に何してんの、母者も何してんの」


139 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:44:22.09 ID:7SXm4qtHO

( ^ω^)「…………おっかさん、行ってきますお」

lw´‐ _‐ノv「ごめんなさいましね、お坊っちゃん」

( ^ω^)「いえ、僕も行かねばならんのですお、町を背負う者として」

lw´‐ _‐ノv「や、父上様の相手を押し付けて」

( ^ω^)「みんな辟易してんですかお」

lw´‐ _‐ノv「自由すぎて……」

( ^ω^)「ええ……おっかさんにそう云わせるとかどんだけ……」

lw´‐ _‐ノv「良い人ではありんすけど……ね……」

( ^ω^)「立派でお強い人ではあるけどお……」

(`・ω・´)「ははは、そんなに誉めてくれても良いよ」

( ^ω^)「あんたはしりあす貫く術を持って下さいお」

(`・ω・´)「無理、だって飽きる」

( ^ω^)(くそじじい)


141 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:46:04.13 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「じゃあ行ってくるよしゅう、他の子達にもよろしくね」

lw´‐ _‐ノv「はいな、行ってらっしゃいませ」

(`・ω・´)「ほら二人とも僕の後ろに並んで、一列で」

( ^ω^)「だからもうそのネタは良いから」

(`・ω・´)「これで終わると思うかい?」

( ^ω^)「いや終わらせましょうお」

(`・ω・´)「ふぁいふぁんよりどらくえ派なんだよね」

( ^ω^)「ふぁいふぁん……」

(`・ω・´)「えふえふはふぁいなるふぁいとの略だろう?」

( ^ω^)「歳が出ましたお」

(`・ω・´)

( ^ω^)

(`・ω・´)「じじいだもの」

( ^ω^)「はいはい」


143 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:48:06.32 ID:7SXm4qtHO

('A`)「あ、大旦那に坊っちゃん……に、弟者」

(`・ω・´)「やあどくお、西に行くよ」

('A`)「本当に自由でやんすね」

(`・ω・´)「常識には囚われない紳士かつ大人の男と云う意味で受け取るよ」

('A`)「大人は縦一列に並んで歩きやせん」

(`・ω・´)「子供心を忘れない良い男だろう?」

('A`)「はいはい、で、西に?」

(`・ω・´)「ああ、ちょっと用があってね」

('A`)「……同行しますよ、早く行きましょう」

(`・ω・´)「うん、B押して急ごうか」

('A`)「びーだっしゅあったっけな……」


145 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:50:18.55 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「あ、みんなのぱらめーた見とこうか」

( ^ω^)「見れませんから」

(`・ω・´)「よっと」

0

( ^ω^)

(`・ω・´)「うん、まあまあだね」

( ^ω^)「いや、いやいや、どうやった」

(`・ω・´)「せれくと辺り押した」

( ^ω^)「おいげーむ脳、大概にしろ」

(`・ω・´)「弟者君のはっと……」



(`・ω・´)「うん、まあまあ」

(´<_` )「どう云う事なの……」


148 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:52:12.35 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「どくおはっと」



(`・ω・´)「お、強いね」

('A`)「まあ、長生きなんで……」

(`・ω・´)「うんうん、良い事だよ」

( ^ω^)「……じっちゃんのは?」

(`・ω・´)「僕? 僕のはね……よっと」



( ^ω^)

('A`)

(´<_` )

(`^ω^´)゙

( ^ω^)「ちーとじゃねえかお明らかに」


150 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:54:33.67 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「ちーとだなんて失礼な、それっ」


0



(´<_` )「何の話だよこれ……妖怪話じゃないのか……」

('A`)「もう諦めろよ……大旦那だからしょうがねェよ……」

(´<_` )「どれだけどらくえ引っ張るんだよ……」

('A`)「しょうがないだろ、大旦那なんだから……」

(´<_` )「……」

('A`)「……」

(´<_` )「……早く行こうぜ……」

('A`)「…………うん」


155 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:56:13.29 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「あー楽しかった、行こうか」

( ^ω^)「……じっちゃん」

(`・ω・´)「ん?」

( ^ω^)「あんまりやってると流石に怒りますお」

(`・ω・´)「ははは、ごめんごめん、じじいはっするしちゃった」

( ^ω^)「ははは」

(`・ω・´)「ははは」

( ^ω^)

(`・ω・´)

( ^ω^)「大概にしろじじい」

(`・ω・´)「本当ごめんね」


160 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 22:58:04.48 ID:7SXm4qtHO

( ^ω^)「ったくもう……何でこんなに脱線しなきゃいけないんですかお……」

(`・ω・´)「いや、つい……反省はしてるよ(たぶん)」

( ^ω^)

(`・ω・´)

( ^ω^)「ところで、何で急に西へ?」

(`・ω・´)「流された……うん、ちょっと会わなきゃいけなくて」

( ^ω^)「会う?」

(`・ω・´)「ああ、僕が探し続けた人に」

( ^ω^)「……西に、居るんですかお?」

(`・ω・´)「居るよ、必ず」

( ^ω^)「…………そう、ですかお」


162 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 23:00:15.75 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「すまないね、僕の我が儘に付き合わせて」

( ^ω^)「それは気にしてませんが……その、人とは?」

(`・ω・´)「僕が旅に出た、理由の人さ」

( ^ω^)「お……」

(`・ω・´)「僕は人を探す為に、旅に出たんだ。会いたくて会いたくてしょうがないから」

( ^ω^)「恋人さん、ですかお?」

(`・ω・´)「うん、ずうっと昔に将来を誓い合った恋人だよ」

( ^ω^)「……」

(`・ω・´)「西にも行ったんだけど……まさか、見落としてたなんてね
      ……長く生きすぎたかな、勘がすっかり鈍ったみたいだ……」

( ^ω^)「じっちゃん……」


166 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 23:02:04.38 ID:7SXm4qtHO

(`・ω・´)「僕はね、文太郎」

( ^ω^)「お?」

(`・ω・´)「僕は昔、人間だったんだよ」

( ^ω^)「えっ……でも、じっちゃんは狐じゃ……?」

(`・ω・´)「遠い遠い、気が遠くなるほど昔に、病で死んだ人間さ
      そして死んでから 僕は狐に見初められて、狐としての命を与えられた」

( ^ω^)「じっちゃん……人間だった、のかお……」

(`・ω・´)「もう、昔過ぎる昔の事だよ…………人間だった頃の恋人に、今から会いに行くんだ
      何年何十年、何百年に何千年……嫌になるほど生きてきた、それでも巡り会えなかった」

( ^ω^)「…………」

(`・ω・´)「けれど、やっと会える…………鬼になってしまったのは、僕の所為だろうか」

( ^ω^)「嬉しい、ですかお?」

(`・ω・´)「ああ……胸が張り裂けんばかりに高鳴るよ、やっと彼女を、また胸に抱ける」


168 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 23:04:04.18 ID:7SXm4qtHO

(`-ω-´)「彼女を探す為に旅をしていたのに……元の場所に戻って会えるなんてね」

( ^ω^)「因果な、ものですお」

(`-ω-´)「何度も嫌になったけれど、生き続けて良かった……
      彼女にまた会えると云うだけで、僕が生きていた理由になる……」

( ^ω^)「……じゃあ、急ぎましょう。日が暮れる前に、急いて」

(`・ω・´)「うん、有り難う、皆」

( ^ω^)「……僕は、百鬼夜行のお願いに行くだけですお」

('A`)「俺は坊っちゃんのお守りですから」

(´<_` )「俺は兄者と妹を、助けに行くだけです」

( ^ω^)「だから、じっちゃんの為についてくんじゃありませんお」

('A`)「そうそう」

(´<_` )「だから、気にしないで下さい」

(`-ω-´)「…………良い子達に、育ったね……」


171 ◆XCE/Wako2nqi 2010/06/27(日) 23:06:03.35 ID:7SXm4qtHO


 ああ、やっと君に巡り会える。
 だからもう、僕の所為で泣く事を止めて。

 僕は探し続け、君は待ち続けたのだろうね。
 見つけるのが、遅くなってしまったね。


 でも、もう良いよ。
 君を、抱き締めに行くから。



 先代九尾の御狐様。
 その方は、長く生き、恐ろしく強いお方。

 されどされども、彼のお方も人とかわりは御座いません。

 恋に惑い恋に迷い、恋に堕ちては繰り返す。
 愛しい女をただ一人、ずうっとずうっと想い続けた先代様。


 さあ、想いを届けに参りましょう。



 『十二話前編 おわり。』


inserted by FC2 system