4 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:07:31.91 ID:M7IVC2H6O

 やっと会えた。
 やっと出会えた。

 僕だけの愛しい人。
 私だけの愛しい人。

 長い長い、長過ぎる時をさ迷った。
 長い長い、長過ぎる時を待ち続けた。


 ああ やっと、やっと 果たされますね あの約束。



     ( ^ω^)百鬼夜行のようです。

      【十二話 百載無窮が人の業。 後】



 僕らが結ばれる。
 私達が結ばれる。

 この時を 待って、いました。


8 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:09:00.00 ID:M7IVC2H6O

 鬱蒼と繁る西の森。
 てっこらてっこら歩くのは、四人分の男の足。

 急ぎ足で辿り着いた西の土地。
 御天道様は未だ傾かぬ、心地よいまでの昼下がり。


 西の山の麓の森を、ただ息を殺して歩いていた。

 不思議と妖怪達の姿は見えず、辺りはしんと静まり返っている。


( ^ω^)「誰も居ないお……?」

('A`)「気持ち悪いくらいに静かだな……」

(´<_` )「西の奴等も、流石に警戒してるのかもな」

(`・ω・´)「ほらね、大丈夫でしょ?」

( ^ω^)「これもじっちゃんぱわーですかお?」

(`・ω・´)「いや知らないけど」

( ^ω^)


9 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:10:10.80 ID:M7IVC2H6O

( ^ω^)「今さらだけど」

(´<_` )「ん?」

( ^ω^)「あんだけ引っ張った先代がこんなきゃらで、納得出来るのかお」

(´<_` )「俺としてはどうでも」

( ^ω^)「いや、読んでて」

(´<_` )「良いだろもう、読んでる方もいい加減に諦めつつあるだろ」

('A`)「十二話だしな、これももう」

( ^ω^)「あと三話で終わるおねー……」

(´<_` )「お前ら、主人公なのに出てこない事多かったな……」

( ^ω^)「云うなお……」

('A`)「ま、最後までこんな感じで付き合って貰おうぜ」

( ^ω^)「最後までぬるいなー」


12 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:12:43.92 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「良いじゃないか、こんな爽やか好青年が終盤で出てきたんだから」

( ^ω^)「あーはいはい爽やか爽やか」

(`・ω・´)「出てすぐの君の素直さは何処に行ったんだい文太郎……」

( ^ω^)「たった半話で諦めましたお」

(`・ω・´)「もっと熱くなれよ……しじみがトゥルルッて頑張ってるんだから……」

( ^ω^)「何その中途半端な引用……」

(`・ω・´)「見たの随分前なんだもん……」

( ^ω^)「そんなネタ使うなお……」

(`・ω・´)「じじいだもの……記憶力も弱まるよ……」

( ^ω^)(都合の悪い時だけじじい気取りやがる)

(`・ω・´)「何か云ったかい最不人気主人公」

( ^ω^)「だーらいつまで引っ張るのそのネタ」

(`・ω・´)「僕が飽きるまで」

( ^ω^)「くそじじい」


18 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:14:07.04 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「全く可愛い孫がぐれたよ牛鬼」

ヾ(  ^^)ノシ ワチャチャ

(`・ω・´)「可愛いようでまるで可愛くないね君、しょたの癖に」

(  ^^)……

(`・ω・´)「ははは、じじいに敵うと思うなよ小わっぱ」

ピュー 三(  ^^)

(`・ω・´)「あ、逃げた」

( ^ω^)「何してんですかお……逃がしてどうすんの……」

(`・ω・´)「いや、まさか逃げるとは……ぼーるに入れとけば良かったな……」

( ^ω^)「主人公達が連れ歩く以外では逃げてもおかしくありませんお」

(`・ω・´)「ろけっとだんでも逃げないのに……」

( ^ω^)「んじゃろけっとだん以下なんでしょうお」

(`・ω・´)「この孫なかなか云いよる」


24 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:16:11.25 ID:M7IVC2H6O

('A`)「坊っちゃん、大旦那をあんまり構わないで」

(´<_` )「先代様は話の腰を折る天才だからな」

(`・ω・´)「今褒められた?」

(´<_` )「全然、ほら行きましょう」

('A`)「帰るまでに日が暮れるのは勘弁っすよ」

(`・ω・´)(こいつら……僕の扱い方をもう覚え始めたと云うのか…………くくく、将来有望だ)

( ^ω^)

(`・ω・´)

( ^ω^)「道はこれで良いんですかお」

(`・ω・´)「うん、ここ真っ直ぐ。と云うか本当に僕の受け流し方が上手になったね君達」

( ^ω^)「半日かからず扱い方を覚えるようなきゃらなのが悪いんですお」

(`・ω・´)「あ、僕の所為なんだそれ」


28 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:18:32.51 ID:M7IVC2H6O

(´<_` )「しかし……本当に誰も居ないな……」

('A`)「このまま俺ら四人で終わらないだろうな……」

(´・ω・`)

('A`)「あ、居たのしょぼん」

(´・ω・`)「むきゅ……」

( ^ω^)「喋らないだけで結構居るおね、しょぼん」

(´・ω・`)「……」

(`・ω・´)「出番が皆無より良いじゃないか」

(´・ω・`)「むひぃ」

( ^ω^)「暑いからあんま首に巻きたくなくなってきたお……」

(´゚ω゚`)!?

('A`)「坊っちゃん……しょぼんを全否定してやんなさんな……」

( ^ω^)「だってこれ、予想以上に蒸れる……」


31 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:20:22.82 ID:M7IVC2H6O
(´<_` )「……一本道だし、敵は出ない……暇なくらいだな」

('A`)「確かに……何かあっても困るが、暇だ」

( ´_ゝ`)「じゃあ代わってくれよ……」

(´<_` )「暇は素晴らしい事だ、問題が起きないんだからな」

( ´_ゝ`)「羨ましい限りだ……」

(´<_` )「全く兄者は面倒ばかりを抱えやすい」

( ´_ゝ`)「そう云うな……好きでやってるんじゃないんだ……」

(´<_` )「はいは……」

(´<_` )

(゚<_゚; )「兄者ァアッ!?」

(;´_ゝ`)「あ、ああ……兄者……」

(゚<_゚; )「何で普通に混じってるんだよ!? 何してるんだよ!?」

(;´_ゝ`)「た、炊き出し……」

(゚<_゚; )「本当に何してんの!?」


37 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:22:19.45 ID:M7IVC2H6O

(;´_ゝ`)「や、西の奴等が忙しそうだから……」

(´<_`;)「だから……炊き出し?」

(;´_ゝ`)「ああ……何か、大勢で出掛けて戻ってきたらぐったりしてたから……」

(´<_`;)「何で敵に気ィつかってんだよ……」

(;´_ゝ`)「…………暇だった」

(´<_` )「暇なんじゃねーか」

(;´_ゝ`)「だって……山の仕事とかもうほとんど無くて……」

(´<_` )「雑用やらされてるのか?」

(;´_ゝ`)「ああ……装束繕ったり、炊き出ししたり……肩揉んだり……」

(´<_` )「何処の家政婦だお前は」

(;´_ゝ`)「か、家政夫だよ……」

(´<_` )「変わらんわドアホウ」


44 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:24:30.90 ID:M7IVC2H6O

(´<_` )「……まあ良い、見張りは居ないのか?」

( ´_ゝ`)「ああ……随分捕まったりしたみたいで、次の進軍の為に残ったのは控えてるらしい」

(´<_` )「ただ捕まっただけじゃなかったんだな兄者」

( ´_ゝ`)「そりゃ……まあ……主に雑用しかしてないけど……」

(´<_` )「ふーん、んじゃあ行くか」

( ´_ゝ`)「え?」

(´<_` )「え? じゃねーよ、兄者助けに来たんだぞ」

( ´_ゝ`)「あ、そ、そうだったのか……」

(´<_` )「……」

( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「名残惜しいの?」

( ´_ゝ`)「…………ちょっとだけ」

(´<_` )「思ったより優遇されてたのな、心配して損した、ついでに怪我して損した」

( ´_ゝ`)「ご、ごめん……でも二、三回くらいは死にかけたし……」


47 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:26:54.43 ID:M7IVC2H6O
(´<_` )「ほらもう行くぞ、あと妹者助けたら俺は満足だ」

( ´_ゝ`)「う、うん…………炊き出し足りるかな……」

(´<_` )「一応敵だから、そこまで心配するな」

( ´_ゝ`)「うん……」

(´<_` )「…………炊き出しだけはしてきて良いよ……」

( ´_ゝ`)「…………有り難う……」

( ^ω^)「……まあ、あの……出来るだけ、早くね?」

( ´_ゝ`)「あ、はい……すみません……」

(´<_` )「良いから早くしろ」

( ´_ゝ`)「あの……別れの挨拶は……」

(´<_` )「しこたま殴るぞ」

( ´_ゝ`)「ご、ごめん……」


49 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:28:53.39 ID:M7IVC2H6O

( ^ω^)「……思ったより元気だったお」

(´<_` )「意外と優遇されてたんだな……」

(`・ω・´)「ま、西の妖怪とひとくくりにしても色々居るからね、そりゃ気の良い奴も居るさ」

(´<_` )「それもそうか…………何か変な感じだけど、中にはそんなに悪くない奴も居るか」

(`・ω・´)「そ、先日の進軍も上に云われたから参加した輩が意外と居たしね」

(´<_` )「西も結構世知辛いんだなァ……」

(`・ω・´)「人間と大して変わらないものさ、向こうさんにも理由があって来ているんだ
      やむを得ずとか、しょうがなくとか、向こうにも向こうの正義があってしているしね」

(´<_` )「…………西の、朝日なんかは……何を正しきにしてるんだろうな……」

(`・ω・´)「彼らは、自己を得る為にだよ」

(´<_` )「自己?」

(`・ω・´)「ああ、彼らは誰かに自分を見てほしいんだよ。それにもまた理由がある、本能的な理由が」

(´<_` )「……見られたい、か」


52 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:30:53.18 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「西は都に近い場所でないと、荒くれ者の輪に入る事が多い」

(´<_` )「都寄りだと、比較的穏やかな奴が多いですしね」

(`・ω・´)「ああ、……それと、西は何処よりも…………孤児が多い」

(´<_` )「……そういや、西って発達自体は遅いですね」

(`・ω・´)「そうなんだ、南とはまた違う野性……と云うのかな
      西は、本能的に生きる妖怪が特に多い……生きる事に貪欲なんだ」

(´<_` )「南はまあ、野性的と云えばそうですけど……毛色が違いますし」

(`・ω・´)「発達が遅く、本能的に生きる西の妖怪。
      発達が遅い理由は本能的に生きるから、本能的に生きる理由は、発達が遅いから」

(´<_` )「…………悪循環ですね」

(`・ω・´)「ああ……けれど、頭が悪いわけでは無いんだよね」

(´<_` )「……悪知恵」

(`・ω・´)「そうそれ、本能的に生きるにも多少の知恵を付けなきゃ生きにくいからね」


57 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:32:42.98 ID:M7IVC2H6O

(´<_` )「まるで猿山だな、此処は……」

(`・ω・´)「だが、猿山には群れを統べる者が居る」

( ^ω^)「…………長岡」

(`・ω・´)「……君の友人だったかな、文太郎」

( ^ω^)「元友人……ですお」

(`・ω・´)「……彼の事は、僕も最近まで知らなかった。いつの間にか、猿山の大将になっていた」

(´<_` )「だが、此処の妖怪は強い奴も多いのでは? 突然なれるものでは……」

(`・ω・´)「其処が謎なんだよねー」

(´<_` )「え」

(`・ω・´)「元々は此処をまとめてたのってあさぴーだし、未だ若いのになあ」

(´<_` )「あさぴーてあんた」

(`・ω・´)「昔はよく遊んだもんだよ、すぐ泣くんだあいつ」

(´<_` )「本当に遊んでたんですね、朝日で」


59 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:34:17.35 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「朝日の周りにはね、三匹の妖怪が居た
      その内の一匹が、さっき逃げた牛鬼の山崎だよ」

(´<_` )「残りの二匹は?」

(`・ω・´)「土蜘蛛の六目と……橋姫、わむて」

(´<_` )「……牛鬼とか土蜘蛛とか……言い伝えられてるくらいの相手じゃないか……」

(`・ω・´)「昔からくっついて生きてきた四人組……と云っても昔はもう数人居たけど」

( ^ω^)「残りの数人は……」

(`・ω・´)「死んだよ、今よりもっと若い頃に」

(´<_` )「…………それ、坂田とかみのるとか、居ませんでした?」

(`・ω・´)「お、知ってるの?」

(´<_` )「はい、もう本当に噂と云うか……昔話くらいでしか、聞いた事はありませんが」

(`・ω・´)「ま、ゆとりだからなあ……しょうがないさ、知ってるのももう老害くらいかもね」

(´<_` )(何か馬鹿にされた気分……)


60 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:36:31.56 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「その四人はー……いや、もう二人くらい居た気が……気のせいかな……」

(´<_` )?

(`・ω・´)「山崎と一緒に居た……何だっけ、そんなには強くない……」

( ´_ゝ`)「……ぼるじょあ?」

(`・ω・´)「それだ! ああすっきりした!!」

( ´_ゝ`)「山崎の相棒だけど……あっちはただの鬼ですから……」

(`・ω・´)「そうそう! 地味だから何か忘れてた!」

( ´_ゝ`)「あと此処の頭は元々、山崎でしたよ」

(`・ω・´)「うんうん、山崎が頭やってたけど、昔からの仲間が死んで止めたんだよね」

( ´_ゝ`)「で、それを引き継いだのが朝日ですね。結局、当時の連中で残ってるのはほんの少し」

(`・ω・´)「六目に山崎にわむてに、ぼるじょあ……後はちらほら程度かな」

( ´_ゝ`)「でも昔からの山崎達を慕ってた連中は残ってます、今でも根強く、しっかりと」


63 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:38:13.89 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「弟者君、意外と詳しいじゃないか」

( ´_ゝ`)「すみません……兄者です……」

(`・ω・´)

( ´_ゝ`)

(`・ω・´)「あ、お兄さんの方か……炊き出し済んだ?」

( ´_ゝ`)「あ、はい……こっそりと」

(`・ω・´)「どうせ借りてた寝間着をちゃんと畳んでその上にお世話になりましたとか一筆書いたんでしょ」

( ´_ゝ`)「…………」

(`・ω・´)「図星だね」

( ´_ゝ`)「すみません……つい……」

(`・ω・´)「律儀だねー、君は捕まってたのに」

( ´_ゝ`)「…………見てたら、何だか……その、……」

(`・ω・´)「可哀想、だった?」

( ´_ゝ`)「…………はい……失礼だと、思ってますが……」


66 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:40:17.72 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「……歩きながら話そうか」

( ´_ゝ`)「あ、はい……」

(`・ω・´)「もう暫く空気しててね、三人共」

( ^ω^)「おー」

('A`)「へーい」

(´<_` )「はーい」

(;´_ゝ`)

(`・ω・´)「……何処が、どう可哀想だった?」

( ´_ゝ`)「あ、はい、その……あの…………何だか、必死なんです」

(`・ω・´)「……」

( ´_ゝ`)「最初は捕まって、縛られてたんですけど……色んな奴等がひっきりなしに覗きに来て……
      目が会うと、嬉しそうに俺を馬鹿にするけど……目をそらしたら、慌てて顔を覗く……」

(`・ω・´)「……まるで、子供だよね」

( ´_ゝ`)「はい……何か、構ってほしい子供みたいで……
      俺がどんな反応をしても喜ぶのに……無反応だと、焦りが見えるんです……」


68 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:42:06.98 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「…………彼らは、見られる事が幸せだ。誰かに見られて、自己を得たいんだ」

( ´_ゝ`)「……無視すると、癇癪を起こす奴も居ました……泣き出す奴も……
      外から来た奴に無視されたりするのが、とらうまみたいで……見てて、痛々しくて……」

(`・ω・´)「……だから、律儀に構ってたのかい?」

( ´_ゝ`)「…………だって、一人は、寂しいと思うんです……
      俺は兄弟が多いけど……一人になったり、無視されたら……きっと寂しくてしょうがない」

(`・ω・´)「なるほど……君は文太郎並のあまちゃんなんだなあ……」

( ´_ゝ`)「す、すみません……」

(`・ω・´)「……怖くは無かったのかい? 自分を殺すかも知れない相手に」

( ´_ゝ`)「怖がるだけでも、相手が満たされるって……気付きました
      それに……泣く所を見たら、怖いよりも、……可哀想が、勝ったんです」

(`・ω・´)「…………ふうむ、君は本当にお人好しだなあ……」

( ´_ゝ`)「自分でも……そう、思います……」


71 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:44:07.60 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「泣きながら、自分を見ろって叫ぶ姿は……本当に子供にしか見えなかっただろう」

( ´_ゝ`)「……はい」

(`・ω・´)「彼らは子供っぽくて、野性的で、幸せに餓えている……
      どうしようもなく哀れな存在とも云える、可哀想で可愛い奴等さ」

( ´_ゝ`)「……あなたは、平等に……全てを愛するんですね」

(`・ω・´)「じじいだから、ね……」

( ´_ゝ`)「……そう云えば、あなたは?」

(`・ω・´)「ん? 先代九尾」

( ´_ゝ`)

(`・ω・´)

(;´_ゝ`)「なっ、なななななっ!? 何で先代九尾殿が!?」

(`・ω・´)「おー東に住んでなくても知ってるのか、僕も有名になったなあ」

(;´_ゝ`)「そりゃ、まあ……色々……噂に……悪戯とか……迷惑とか……」

(`・ω・´)「あー……悪評の方ね……」


72 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:46:06.85 ID:M7IVC2H6O

(;´_ゝ`)「悪戯とおちょくる事が得意で……叱ろうとしたらすぐ逃げる……って」

(`・ω・´)「ああうん、最高に事実、逃げ足だけなら誰にも負けない」

(;´_ゝ`)「先代殿……強いんじゃ……?」

(`・ω・´)「強いよ? でも叱られたくないでしょ?」

(;´_ゝ`)「…………と云うか、強いなら……此処で西の奴等を殴って止めたら、良いのでは……」

(`・ω・´)「あーそれね、したいけどね、無理なの」

(;´_ゝ`)「な、何で……?」

(`・ω・´)「僕、尾っぽ一本足りないでしょ?」

(´・ω・`)

(;´_ゝ`)「あ、確かに……」

(`・ω・´)「東の妖怪だから、東に居たら尾っぽ無くてもそれなりに力を出せるけどね
      東から離れたらねー、力が出せなくなっちゃうの、尾っぽ足りないから、尾っぽが」

(´ ω `)


74 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:48:08.36 ID:M7IVC2H6O

( ´_ゝ`)「つまり、此処では力が出せない……と?」

(`・ω・´)「うん、九尾の尾は力の塊だからね。一つでも欠ければ形が崩れる
      形が崩れてしまえば力を出す為の、こう……電池が足りない感じ」

( ´_ゝ`)「あー……」

(`・ω・´)「まあ多少は力出るけど……西の軍勢をこの状態で一挙に引き受けちゃうのはね……」

( ´_ゝ`)「……なるほど、だから……西そのものを潰しはしないんですね」

(`・ω・´)「うん、じじい電池一個抜けてるから」

( ^ω^)「じっちゃん、来る時にじっちゃん居たら大丈夫って……」

(`・ω・´)「ああそれね、逃げ足」

( ^ω^)

(`・ω・´)「取り敢えず君達抱えて逃げるこまんど連打くらいならいけるから」

( ^ω^)「ほんっとくそじじい」

(`・ω・´)「意外と役立たずでごめんねー☆」


79 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:50:13.42 ID:M7IVC2H6O

( ´_ゝ`)「……先代殿は、色々、見たんですね……」

(`・ω・´)「伊達に長生きしてないよ、生きるだけだったけどね」

( ´_ゝ`)「でも……町を、お作りになった」

(`・ω・´)「求める人が居たからさ、だから手を貸しただけ。その後、町を育てたのは皆だ」

( ´_ゝ`)「…………何かを成せるのは、凄いです」

(`・ω・´)「誰にでも、何かを成す事は出来るよ。僕はじじいだけど、さして特別ではない」

( ´_ゝ`)「…………俺には、孤独を除いてやる事も……出来ません」

(`・ω・´)「時間がかかるよ、孤独が相手じゃ……それか、相当な荒療治じゃなきゃ無理だ」

( ´_ゝ`)「……」

(`・ω・´)「……泣き虫だろう、あれは……可哀想なくらい、泣き虫だ……」

( ´_ゝ`)「はい……」

(`・ω・´)「君は……優しいなあ……」


81 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:52:09.46 ID:M7IVC2H6O

( ´_ゝ`)「ただの、哀れみだと……思います……俺には、孤独がありません」

(`・ω・´)「それでも、何かを助けたい気持ちは確かだ」

( ´_ゝ`)「……哀れみでも、良いんでしょうか……」

(`・ω・´)「切っ掛けが何であれ……それは汚れのない気持ちだよ
      それを無下にする事は、当人であれ……してはいけない事じゃないかな」

( ´_ゝ`)「…………はい」

(`・ω・´)「時間はかかっても……救いたければ救えば良い、君の赴くままに」

( ´_ゝ`)「難しいけど……そう、したいです……」

(`・ω・´)「それが誰であれ、泣いていたら助けたくなる……哀れみからでも、助けたい」

( ´_ゝ`)「それが、別の感情になる事は……ありますか?」

(`・ω・´)「あるよ……時に従い、感情も何もかも、移ろうものだ
      憎しみが愛情に、愛情が憎しみに、全てが形を変えてしまう」

( ´_ゝ`)「……変わらない事は、幸せで、悲しいですね……」


84 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:54:20.40 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「僕も、始めは哀れみだったのかも知れない」

( ´_ゝ`)「え……?」

(`・ω・´)「苦労を重ねて、悲しみと苦しみを重ねて、それでも必死に生きていた
      その姿がたまらなく哀れで……美しくて、悲しくて……僕は、彼女に恋をした」

( ´_ゝ`)「先代殿……」

(`-ω-´)「僕は何時しか彼女を愛していた……一目見た時からなのか、愛したんだ
      彼女も僕の思いに応えてくれた、僕が思いを告げるより早く、僕を愛していると」

( ´_ゝ`)「……」

(`-ω-´)「約束をしたんだ、夫婦になると……彼女が全てを終えたら迎えに行くと
      …………なのに、僕は約束を果たせず、先に逝ってしまった……彼女の涙だけ残して」

( ´_ゝ`)「先代殿……その、彼女、は……?」

(`-ω-´)「…………」

( ´_ゝ`)「先代、殿……?」

(`・ω・´)「其処に居る……君の事だよ……」


    「僕の、ぺにさすさん」


87 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:56:08.79 ID:M7IVC2H6O


 ざあ、と風が吹く。

 いつの間にか、森の深く深くまでやって来た。
 話す間に辿り着いてしまいますは、西の森の奥深く。

 鬼の女が、住まう場所。


 しゃきんは一歩前へと踏み出して、木々や草の間に隠れる黒髪を見付けた。

 小刻みに震える細い背中。
 緋色の着物を纏うその背中。

 悲しそうに微笑んで、もうひとつ、声をかける。


(`・ω・´)「ぺにさすさん」

 「っ!」


 ぴくん、と震える。

 そして恐る恐る、ゆっくりと、こちらを向いて。


92 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 21:58:04.16 ID:M7IVC2H6O

('、`*川「しゃきん……さん……?」

(`・ω・´)「そう、しゃきんだよ……ぺにさすさん」

('、`*川「ぇ……ぇ……? ど、う……して……?」

(`・ω・´)「君を探して、君を求めて……君を救いに、掬いに……此処まで来たよ」

('、`*川「う、そ……嘘……だって、だって……しゃきんさんは……」

(`・ω・´)「顔をよく見せて、そして僕を見て……さあ、僕は、此処に居る……生きて、此処に居るよ」

('、`*川「あ、あっ……あああ……っ! しゃきんさん、しゃきんさんなの? 本物、なの……っ?」

(`・ω・´)「さあ僕に触れて、頬に触れて、君に触れさせて……暖かさを、感じてみて」

( 、 *川「しゃきんさん、しゃきんさん……! ああっ、ああっ! しゃきんさん……っ!!」

(`・ω・´)「……やっと、つかまえた……僕の愛しい、僕だけの人……」

(;、;*川「しゃきんさん、しゃきんさん、しゃきんさん……っ! どうして、どうして……っ!?」


94 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:00:42.89 ID:M7IVC2H6O

 震える細い指を、しゃきんがそっと絡めとる。
 涙をはらはら、信じられないと云う様に名を呼ぶ女を、強く抱き締めた。

 長すぎる迄の時の中を生き続け、ようやく見つけたその姿。

 生きる理由、生きる糧、存在の意味が胸の中にある。

 その幸せを噛み締めながら、しゃきんは優しく微笑んだ。


(;、;*川「私、私、しゃきんはもう……居ないって……死んでしまったって……」

(`・ω・´)「ああ、一度は死んだ……それは確かだよ」

(;、;*川「あなたが死んでしまって、私……あなたを追って……」

(`・ω・´)「……すまない、ぺにさすさん……悲しませてしまって」

(;、;*川「あ、ああ……あああ……っ!」

(`・ω・´)「僕は此処だよ……此処に、生きて居るよ……」


97 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:02:05.33 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「ああ、やっと見つけたね、ぺにさすさん……ずっとずっと探していたんだよ
      僕が死に、狐として生まれ変わったのはもう何百年前だろうね」

(;、;*川「嘘……嘘、うそ、嘘……そんな、そんな、」

(`・ω・´)「やっと、つかまえたんだ……僕の愛しい人」

(;、;*川「しゃきん……さ、ん……」

(`・ω・´)「御免ね遅くなって、ずっと、一人で寂しい思いをさせたね、ぺにさすさん」

(;、;*川「ぁ、あ、ああ、ああああ、ああああああぁぁ……っ!!」

(`・ω・´)「ああ、もう泣かないで……僕に涙を与えないで……君こそが僕の生きる意味なんだ」

(;、;*川「私……私……あなたを甦らせたくて……生き返らせたくて……」

(`・ω・´)「何を、してきたんだい……?」

(;、;*川「黒い方々が……っあなたを甦らせるには、死と血が必要だって……!」

(`・ω・´)「っ!」


100 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:04:13.86 ID:M7IVC2H6O

( ^ω^)「じっちゃん……よろしい、ですかお……?」

(`・ω・´)「ああ、文太郎……君の仕事をしなさい」

( ^ω^)「…………ぺにさすさん、ですかお?」

(;、;*川「あな、た……は?」

( ^ω^)「僕はその方の、血の繋がらない孫……そして、東の町の次期頭」

(;、;*川「っ……!? ごめ、なさい……ごめんなさい、ごめんなさい……っ!」

( ^ω^)「責める前に、あなたにお聞きしたいのですお
      …………あなたが、ここ最近、町で出没していた、辻斬り……ですかお?」

(;、;*川「最近、じゃ……ないの……違うの……前から、ずっと……っ」

( ^ω^)「なるほど……鎌鼬の騒ぎの影で、していたのですかお……」

(;、;*川「鎌鼬の子達が、居たから……居たから、隠れて……っ私……!」

( ^ω^)「泣かないで下さいお、僕はあなたを裁きたいんじゃありませんお……」


103 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:06:07.71 ID:M7IVC2H6O

(;、;*川「だって、だって私、私……たくさん人を傷付けて、殺して……」

( ^ω^)「……?」

(;、;*川「あ、ああ……あああっ……こんな人殺しじゃ、しゃきんさんの側に……居られないわ……」

( ^ω^)「あの、ぺにさすさん……?」

(;、;*川「ごめんなさい、ごめんなさい……っごめんなさいごめんなさい……っ!!」

( ^ω^)「待って下さいお……町では、誰も死んでませんお……?」

(;、;*川「へ……だって、私……たくさん……血を……」

( ^ω^)「町には、優秀な医者が居ますお……恐らく、死んだと思い込んだだけでは……?」

(;、;*川「…………死んで、ないの……?」

( ^ω^)「はいですお、先日の進軍でも、誰も」

(;、;*川「あ……あっ……その、騒ぎに乗じて……私……」

( ^ω^)「……そこでも紛れ込んで、辻斬りをなさっていましたかお」

(;、;*川「ごめんなさい、ごめんなさいっ……南の門は、人が少なくて……だからっ……」

( ^ω^)(ぷぎゃー帰ったらどつき回す)


109 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:08:30.73 ID:M7IVC2H6O

(;、;*川「ひっ……ぇぐっ……ごめんなさい……ごめんなさいぃ……っ」

(;^ω^)「おー……そんなに泣かないで下さいお……」

(;、;*川「だって、だってだわ……私、悪いこと……たくさん……」

( ^ω^)「……では、辻斬りの理由を聞かせて下さいお」

(;、;*川「黒い方々が……さ迷う私に、生き返らせたいなら……って」

( ^ω^)「朝日、ですかお? 眼鏡の、小柄な」

(;、;*川「……? 違うわ……大柄で、仮面の方と……可愛らしい女性……」

( ^ω^)「朝日じゃない、となると……」

( ´_ゝ`)「六目と、わむてと……かな」

( ^ω^)「……ふむ」

( ´_ゝ`)「朝日は……色恋沙汰には首を突っ込まないから……あの二人なら、解る」

( ^ω^)「わむてってのは、長岡と一緒に居た……?」

( ´_ゝ`)「はい……一見、普通の女です」


112 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:10:30.22 ID:M7IVC2H6O

( ´_ゝ`)「わむては橋姫ですから……好きな人を甦らせる為とかなら……」

( ^ω^)「嘘を吹き込んでも、おかしくはない、と」

( ´_ゝ`)「……六目も、何か、似た様な感じで……色恋沙汰だと、同じように……」

( ^ω^)「土蜘蛛……何かあったのかおね……」

( ´_ゝ`)「それは解りませんが……多分、あの二人で多分間違いないと思います」

( ^ω^)「…………ぺにさすさん」

(;、;*川「はっ……い……」

( ^ω^)「怯えないで下さいお、あなたはただ良い様に弄ばれていただけですお」

(;、;*川「へ……?」

( ^ω^)「多分、あなたを使って遊んでいただけですお」

(;、;*川「……嘘……だったの……?」

( ´_ゝ`)「命を呼び戻すのは……そう、容易い事じゃありません……」

('A`)「その死んだ方が、相当強い憎しみとかでも持ってない限り、な」

(;、;*川「じゃあ、じゃあ私……私、なんて事を……!」


115 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:12:26.69 ID:M7IVC2H6O
( ^ω^)「弄ばれていたと云え、あなたは己の為に人を傷付けましたお」

(;、;*川「ごめ、ん……なさっ……」

( ^ω^)「僕は誰かを裁く力はありませんお
      だからあなたがそれを悔いるなら、どうか、罪滅ぼしを」

(;、;*川「する、するわっ……だって私……私の為に……っ人を……っ!」

( ^ω^)「……では、どうぞ僕らの町へ」

(;、;*川「……へ?」

( ^ω^)「あなたは鬼、恐らくは一度死に、思いの強さにより黄泉返った事から鬼となりました
      色や恋と云う物は、そうして人の魂を歪ませますお。あなたは結局、妖怪になりました」

(;、;*川「あ……」

( ^ω^)「僕が成したいと思うは、百鬼夜行の大行進
      あなたとじっちゃんが求めるは、共に幸多く生きる事」

(;、;*川「……」

( ^ω^)「それは共に、東の町にて成される事柄
      そうしてあなたが人を襲ったのは東の町────罪滅ぼしをする、場所ですお」

(;、;*川「……町へ……町へ行っても、良いの……? 私は、私は罪人なのに……?」

( ^ω^)「その罪と向き合う為にも……どうぞ、御決断を、ぺにさすさん」

116 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:14:48.00 ID:M7IVC2H6O

(;、;*川「…………町へ行く事が……許されるなら、許されるなら私……皆さんに、謝りたいの……」

( ^ω^)「あなたが傷付けた人は、皆、生きている筈ですお
      どうぞあなたの赴くままに、皆へ謝罪し、罪を滅ぼしをて下さいお」

(;、;*川「……有り難う、お孫さん……」

( ^ω^)「いいえ、僕は何も出来ませんお。あなたを許すは僕ではありませんからお」

(;、;*川「…………でも、その前に……もうひとつの罪を……滅ぼさせて……」

( ^ω^)「お……?」

(;、;*川「おいで、おいで……妹者ちゃん……」

( ´_ゝ`)「!」

(´<_` )「!」

l从・∀・ノ!リ人「呼んだのじゃー? ぺにさすのお姉さま」

(;´_ゝ`)「い、妹者っ!」

(´<_`;)「大丈夫か!? 怪我はないか!?」


118 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:16:23.71 ID:M7IVC2H6O

l从・∀・ノ!リ人「あり? おっきい兄者とちっちゃい兄者なのじゃ、どうしたのじゃー?」

(´<_`;)「どうしたじゃないっ! 助けに来たんだっ!」

(;´_ゝ`)「お前が連れ去られて、心配したんだぞ!?」

l从・∀・ノ!リ人「妹者はぺにさすお姉さまに連れて来られただけなのじゃ?」

(´<_`;)「立派な誘拐だよ!!」

(;、;*川「……ごめんなさい……寂しくて、可愛くて……勝手に…………ごめんなさい……」

(;´_ゝ`)「……ただ、寂しかったから、ですか?」

(;、;*川「色々、歩き回ったの……甦らせる方法を探して……でも見つからなくて……
      その時、その子が優しくしてくれて……嬉しくて、寂しくて……っ私……」

l从・∀・ノ!リ人「ぺにさすお姉さま泣いてたのじゃ、だから妹者が寂しいのどっかやりたかったのじゃ」

(´<_`;)「…………妹者はお前そっくりだな、兄者……」

(;´_ゝ`)「あ、うん……なんかごめん……」


121 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:18:09.05 ID:M7IVC2H6O

(;、;*川「怪我は、してない筈……無理矢理連れてきてしまったから……傷付けない様にしてたの」

l从・∀・ノ!リ人「お菓子とか貰ったし、優しくしてもらったのじゃー」

(;、;*川「……ごめんなさい、妹者ちゃん……怖かったでしょ……?」

l从・∀・ノ!リ人「ぜんぜん? おっきい兄者達と離れてるのは寂しかったけど、ぺにさすお姉さま居たし」

(´<_` )(('、`*川>>>>>>>俺ら か)

(;´_ゝ`)(止めろよ……泣きたくなる……)

l从・∀・ノ!リ人「……でもお姉さま、もう寂しくないのじゃ?」

(;、;*川「……うん」

l从・∀・ノ!リ人「じゃあ大丈夫なのじゃ! お姉さまが寂しくないならそれで良いのじゃ!」

(;、;*川「妹者ちゃん……」

(´<_` )(俺、妹者と兄者助けに来て怪我したんだけどな……)

(;´_ゝ`)(な、なんかごめん……)


124 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:20:06.65 ID:M7IVC2H6O

(;、;*川「……本当に、本当にごめんなさい……大切な人を、拐って……」

(´<_` )「……もう良いよ、妹者も元気だし」

( ´_ゝ`)「もう……そんな事、しなくて済みますからね……」

(;、;*川「ごめんなさい……本当に……」

(´<_` )「…………そこは有り難うでしょうが」

(;、;*川「あっ……あ……あり、がとう……」

(´<_` )「はいはい、俺も目的終えたし……帰りますか」

( ^ω^)「僕も目的終えたしおー」

(`・ω・´)「僕の目的はぺにさすさんだけだからね、思ったより簡単に済んで良かった」

(;、;*川「皆さん……」

(`・ω・´)「ほら何時まで泣いてるんだいぺにさすさん、もう泣く必要は無いよ?」

('、*川「しゃきんさん……有り難う…………迎えに、来てくれて……」


127 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:22:08.36 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「ずっと待たせてしまったのは、僕だからね……」

('、`*川「それでも、それでもだわ……来て、くれたもの……」

(`・ω・´)「ぺにさすさん……もう、離さないからね」

('、`*川「ええ……ずっと一緒、もう……もう、離れたくないわ……」

( ^ω^)(この二人だとばかっぽぅって云えない……)

('A`)(云ったら駄目だと思う……)

(´<_` )(先代様、きゃらの差が激しいな……)

( ´_ゝ`)(なんか……普通だ……)

(`・ω・´)「君達、人の純愛何だと思ってるの」

('、`*川?

(`・ω・´)「大丈夫、随分歳を取ってしまったって話だよ」

( ^ω^)(若い頃は普通だったのかお……)

(`・ω・´)(うるさいなーもう、ぺにさすさんの前では昔の真面目な僕で居させてよ)


128 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:24:14.19 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「まあ良いさ、さあ行こうぺにさすさん」

('、`*川「ええ、ええ……しゃきんさん……」

   『妬ましいわ』

(`・ω・´)「ッ!」

   『ああ、妬ましいわ……恨めしいわ……嫉むわ、嫉むわ、嫉むわ……』

(`・ω・´)「参ったな、これは……」

人il. ヮ ノ人「愛し合う二人だなんて……妬ましいわ……憎らしいわ……」

(`・ω・´)「……久し振り、わむて」

人il.゚ヮ゚ノ人「お久し振りしゃきん様……妬ましいわ……妬ましいわ、ああ嫉むわ……」

(`・ω・´)「相変わらずだね、わむて……色恋沙汰には敏感だ」

人il.゚ヮ゚ノ人「東には想いが溢れすぎてるわ……腹立たしいったら、ありゃしない」

(`・ω・´)「うーん…………取り敢えず、見逃してはくれない?」

人il.゚ヮ゚ノ人「くれない☆」

(`・ω・´)「ですよねー☆」


131 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:26:30.81 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)(うーん、参ったなーわむてかー)

( ^ω^)(強いんですかお?)

(`・ω・´)(弱かったらこうして出てこないと思うよ)

( ^ω^)(まあそれもそうか……どうします?)

(`・ω・´)(この大所帯守って戦うのは、現実的じゃあないね)

( ^ω^)(と、云うことは)

(`・ω・´)(もちろん)

人il.゚ヮ゚ノ人「何ひそひそしてるのかしら」

(`・ω・´)「あ、作戦会議」

人il.゚ヮ゚ノ人「邪魔するわよ?」

(`・ω・´)「ですよねー☆ ま、もう終わったけど」

人il.゚ヮ゚ノ人「じゃ、どうする? しゃきん様」


132 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:28:26.01 ID:M7IVC2H6O

(`・ω・´)「もちろん」

人il.゚ヮ゚ノ人「もちろん?」

(`^ω^´)「逃げるが勝ちさ☆」


 ぴょんと跳ねるは先代九尾。

 その足が地面へ降り立ったその時には、もうその姿は人ではなく。

 巨大は八尾の狐へと姿を変え、尾で坊っちゃん達をくるりと捕まえると、背中へぽいと乗せた。


(`^ω^´)「またねわむて! 町で会おう!」

人il.;゚ヮ゚ノ人「あ、ちょっ! もーっ! 逃げるとか卑怯でしょーっ!?」

(`^ω^´)「今は戦う時ではないのさ! 明日って今さ! ははははは!!」

人il.;゚ヮ゚ノ人「逃げながら云うなーっ!! こらーっ!!」

(`^ω^´)「ばーいびー!!」


136 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:30:20.20 ID:M7IVC2H6O

人il.;゚ヮ゚ノ人「…………もう見えないし……ほんっと逃げ足早いわね、しゃきん様……」

(…∀…)「何だ、逃したのか」

人il.゚ヮ゚ノ人「しょうがないでしょ……しゃきん様の逃げ足は異様に早いもの……」

(…∀…)「……相変わらずだなァ、あの人ァ……」

人il.;-ヮ-ノ人「昔からそうだったわね……ちょっかい出しに来ては怒られたらすぐ逃げる」

(…∀…)「…………敵だけどな、今はァよ」

人il.゚ヮ゚ノ人「でも、あの人はわむて達にも優しかった」

(…∀…)「すぐに消えっちまったがな」

人il.゚ヮ゚ノ人「……それでもわむて、あの人は好きよ」

(…∀…)「これから、あの人が作ったもん壊すのにかァ?」

人il.゚ヮ゚ノ人「…………」

(…∀…)「嫌なら止めッちまえ、お前なんざ居ても居なくても変わらねェや」

人il.゚ヮ゚ノ人「……ふん」


140 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:32:22.70 ID:M7IVC2H6O

(…∀…)「わむてが町を襲うのは、何でだ」

人il.゚ヮ゚ノ人「……妬ましいからよ、わむて達と違って、満たされてる町の奴等が」

(…∀…)「はん」

人il.゚ヮ゚ノ人「六目は、何で?」

(…∀…)「さァな、楽しいからだよ」

人il.゚ヮ゚ノ人「…………嘘つき」

(…∀…)「あ?」

人il.゚ヮ゚ノ人「あの女を、苦しめたいからの癖に」

(…∀…)「…………」

人il.゚ヮ゚ノ人「馬鹿みたい、振られたからってずっと引き摺って」

(…∀…)「……黙ってろ、馬鹿女」

人il.゚ヮ゚ノ人「ふん……馬鹿馬鹿しい」


143 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:34:21.95 ID:M7IVC2H6O

(…∀…)「良いから、遊んでないで次の準備でもしてろ」

人il.゚ヮ゚ノ人「煩いわね、根暗」

(…∀…)「ちっ……喰い殺すぞ馬鹿が…………じゃあな」

人il.゚ヮ゚ノ人「ふん、さっさとあっち行きなさいよ」


人il.゚ヮ゚ノ人「……」

人il.゚−゚ノ人「…………馬鹿馬鹿しい……振られたの、引き摺って……」

人il. − ノ人「馬鹿……みたい…………わむて、こんな気持ち、まだ引き摺って……」

人il.- ノ人「…………憎まれても、恨まれても……思われてるのが……妬ましい……」



 あの女郎蜘蛛が、妬ましい。



149 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:36:26.34 ID:M7IVC2H6O

人il. − ノ人「何よ何よ何よ……わむてのがずっと……好きだったのに……」

人il. − ノ人「そんなの気付かずに、あっさり振ってさ……あんな蜘蛛に……」

川 ゚ 々゚)「蜘蛛ぉ?」

人il. − ノ人「ッ!」

川 ゚ 々゚)「蜘蛛……どこぉ? 蜘蛛はどこぉ?」

人il. − ノ人「此処には居ないわよ、狂人」

川 ゚ 々゚)「あらぁ、あらあらあらぁ? ……あなたが云うのぉ? 恋に狂った女の癖にぃ?」

人il. − ノ人「黙れ蛞蝓、塩でも掛けられたいの」

川 ゚ 々゚)「あはぁはあはあはぁ……女の嫉妬って、こわぁい」

人il.# − ノ人「黙れ蛞蝓風情がっ! お前だって同じ様なものだろうが!!」

川 ゚ 々゚)「くるうはぁ、別に嫉妬してないわよぉ? おねぇさまを、取り戻すだけぇ」

人il.# − ノ人「それは雷獣に妬いたからだろうが狂人ッ!!」

川 ゚ 々゚)「ちがうよぉ?」

人il.# − ノ人「はぁ!? 何がどう違うっての!?」


151 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:38:14.05 ID:M7IVC2H6O

川 ゚ 々゚)「おねぇさまはねぇ……あのけだものに捕らえられてるのぉ」

人il.# − ノ人「はぁ……? 馬鹿じゃないの? あの二人は夫婦よ?」

川 ゚ 々゚)「それはちがうのぉ……おねぇさまかあいそ……けだものなんかに捕まって……」

人il.# − ノ人「……話になんない」

川 ゚ 々゚)「くるうがねぇ……助けてあげるのよぉ? かあいそなおねぇさま、助けるのぉ……」

人il.# − ノ人「…………現実も見えない狂人は、楽しそうで良いわね」

川 ゚ 々゚)「ぁはあはあはぁは……おねぇさまぁおねぇさまぁ……助けてあげるぅ……
      だからくるうをねぇ……抱き締めてくれるのよぉ……頭を撫でてくれるのぉ……」

人il.# − ノ人「……勝手に云ってろ、害虫」

川 ゚ 々゚)「抱き締めてぇ、頭を撫でてぇ……そしたらぁ、そしたらねぇ……
      くるうが溶かして……とろとろにしてぇ……食べてあげるからぁ……」

人il.# − ノ人「…………こんな愚図にでも、愛されてるのが……妬ましいわ……」


156 ◆XCE/Wako2nqi 2010/07/04(日) 22:40:10.36 ID:M7IVC2H6O

 あはあは、と笑う狂った女。
 それが耳障りなのか、耳を押さえて駆け出す女。


 西にて巡るその思惑は、人と変わらぬ嫉妬に満ちる。

 愛されなかった憎しみと。
 愛されたかった悲しみと。
 愛してあげると利己を振りかざす。


 ああ妬ましい妬ましい妬ましい。
 嫉むわ嫉むわ嫉むわ嫉むわ。

 誰かに求められる事が、誰かに愛される事が。
 何もかも持っていない物を持っている。

 その全てが、妬ましいから。


 みんな、みんな、こわしてやりたいの。


 『十二話後編 おわり。』


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