2 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:09:07.82 ID:F1HnI8x+O

 さあ、もう残る時間は長くはなし。

 次のいくさが迫る時。
 あやかし共が終わる時。

 夜行は徐々に列を成し、近付く終わりの時はすぐそこ。



     ( ^ω^)百鬼夜行のようです。

      【十四話 百挙百全と行きはせず。 後編】



 数多の思いを手繰り寄せ、紬ぎこよりて糸にしよう。

 皆の小指を繋ぐ糸、全てを巻き込む皆の意図。

 終わりは近し、夜明けは遠し。
 列を成せ成せ妖怪共。
 胸の内を語りつつ。


3 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:12:32.80 ID:F1HnI8x+O


 こん、と下駄が鳴く。
 夜が更けようとも辺りは未だ騒がしく、人も妖怪も構わずに、開いた目を爛々と輝かせる。

 坊っちゃんは一人、お山のお上の石畳。
 己が拾われた場所で、ぼんやり夜空を見上げていた。

 曇りのない星空。
 月が共に出るあやかしの夜。

 お山の下では灯りが灯っているのに、空はそんなもの気にしていない様に星が瞬く。


( ^ω^)「…………空は高いおー……」


 一人ぽつりと呟いて、その場にてんと座り込む。

 下界の賑やかな声も、今は遠い。
 静かな夜に、風の音と衣擦れだけが広がる。


 考え事をするには、持ってこいな夜だ。


5 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:15:26.56 ID:F1HnI8x+O

( ^ω^)「僕は……妖怪」


 人間として、育てられてきたけれど。


( ^ω^)「そして、双子」


 知りたくもなかった、知りたかった事。


( ^ω^)「…………僕は、東のお頭状態」


 彼と対立する、お頭。


( ^ω^)「……おー…………」


 何だか、とても頭が痛い。


6 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:18:22.67 ID:F1HnI8x+O

 どくおが、いやに深刻な顔で僕に問い掛けた。

 お前は家族と、殺し合えるのか。

 僕は、笑って答えた。

 殺せるわけがない。


 じっちゃんから、聞かされた後だったんだ。
 お前の双子は、西のお頭だよと。

 僕はもう知ってたんだよ、どくお。
 本当は知ってたんだよ。

 実は僕は今、とんでもない状況に居る事を。


 でも、不思議と冷静なままだった。
 何処かで、その答えを、誰かから聞かされるのを待っていた様に。

 ああやっぱりと、僕の中の何かが、困った様に笑ったんだ。
 鈴を転がす様に、何かが笑ったんだ。


 あれはきっと、僕の中の僕なんだろうな。


8 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:22:04.14 ID:F1HnI8x+O

 僕は何者か。
 その問いの答えを、ずっと探して待っていた。

 そうしてその答えは、双子だと知らされた時に、ぱきんと音をさせて降り立った。

 ぱきんと。
 鍵が開いた様に。


 僕は妖怪で。
 僕は双子で。
 僕は東を統べる者。

 みんなきっと、もう本当は解っているんだよ、どくお。
 でも、目の前にある答えに、何故か気付かないで見落としているんだ。

 僕自身がそうだった様に。
 ずっと僕の側に居た君ですら、見落としているんだ。


 ぬるりぬるりと、つかみ所のないそれ。
 飄々としていて、それがそれだと気付かせないそれ。

 僕は、そんな妖怪だから。

 誰も、気付く筈がなかったんだ。


9 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:24:45.03 ID:F1HnI8x+O

 あの時、鏡が割れた。
 西に行った時、突然割れたあれ。

 あれは、僕の全てを映そうとしたから割れたんだね。
 ごめんよ、西の妖怪、僕なんて映そうとしたから。


 そしてごめんよ、長岡、僕の兄。

 君の妖怪としての力は、生まれ落ちた時、僕が殆ど持っていってしまったんだ。



  「文太郎、力の強い妖怪はね」

  「双子として生まれ落ちてしまったら、そこから運命は別れるんだ」

  「双子の両方に、力が全て宿る事はない」

  「つまりね、文太郎」


   君は兄から、妖怪として必要なものを、みんな持っていってしまったんだよ


10 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:27:12.28 ID:F1HnI8x+O

 僕に与えられた扇に、どんな意味があるのか、僕は察してしまった。
 彼に与えられた刀が、どんな意味を持つのかも。

 僕は妖怪で、妖怪としての力を兄から奪って、ただひとつの鈴と扇を持つ。
 僕の兄は妖怪としての力を奪われ、いくつもの鈴と刀を持つ。


 刀は、奪われた力を補うための、暴力的な力。

 扇は、力を流し靡かせる、補助としての力。


 扇を持つのは、双子の内、力が強い者の証だった。
 そして刀を持つのは、弱い者の証。

 僕は生まれ落ちた時に、兄の幸を吸い取ってしまったんだね。

 幸を吸わぬ妖怪だと云っていたのに、じっちゃんは嘘つきだ。

 そう云うとじっちゃんは困った顔で、それは他人に限りだと呟いた。


 もう、どうしようもないや。

 どうしようも、ない。


11 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:30:13.71 ID:F1HnI8x+O

( ;ω;)「お……」

( ;ω;)

( ⊃ω;)「おー…………」


 ごめん。

 ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい。

 僕の、ただ一人の兄。
 兄さん、ごめんなさい。

 あなたは、僕の所為で、幸が少なくなってしまった。

 僕の、兄として生まれたばっかりに。

 僕が生まれた、ばっかりに。


( ⊃ω;)「おー……おー……っ」

( ⊃ω)「おーん……おーんっ……!」


12 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:33:28.39 ID:F1HnI8x+O

 何が、みんな大好きだよ。
 何がみんなを幸せにしたいだよ。
 何が僕は妖怪みんなが大好きだよ。

 唯一の肉親を、不幸に叩き込んでおいて。

 何が、何が、あああああ。


( ;ω;)「……僕が、笑うのは……っ自分が、傷付きたくないからだお……っ」

:( ;ω;):「僕が泣くのは……っいつだって僕の、ためだお……っ!」

::( ;ω;)::「おー……っ! おーんっ、おーんっ! おぉーんっ!!」


 僕はなんて業の深い生き物なんだろう。
 ただの偽善と我が儘を振りかざして、人の為だと吐くなんて。

 ああ兄さん、兄さん、兄さん。
 僕の唯一の、純粋な友達だった兄さん。
 地面が好きだと笑った兄さん、僕の隣で笑った兄さん、僕を友達だと照れ臭そうに笑った兄さん。

 兄さん、兄さん、兄さん、兄さん。

 もう僕は苦しいよ、現実が苦しいよ、過去なんて、本当は知らないままの方が良かったんだ。


13 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:36:16.90 ID:F1HnI8x+O

 知りたがったのは僕、知りたくないと泣くのも僕。
 ああ、僕はなんてどうしようもない男なんだろう。

 この涙は、僕のためのもの? 兄のためのもの?

 決まってる、僕のためだ。
 自分が傷付きたくないから、傷付くのが怖いから、逃げるために泣いてるんだ。

 ああでも兄さん。
 僕は本当に、兄さんが好きだったんだ。

 僕をそのまま見てくれた、唯一の友達だったから。


 「ンだよ、また泣いてんのかよお前は」

( ;ω;)「っ!」
  _
( ゚∀゚)「……相変わらず、お前はすぐ泣くのな」

( ;ω;)「なが、お、か……?」
  _
( ゚∀゚)「よう、文太郎」

( ;ω;)「な、で……ここ……?」


15 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:40:05.66 ID:F1HnI8x+O
  _
( ゚∀゚)「俺は良い子だからよ、伝えに来たんだ…………三日後、攻めるって」

( ;ω;)「っ!!」
  _
( ゚∀゚)「……準備しとけよ、文太郎……次は、俺はお前を」

( ;ω;)「長岡っ」
  _
( ゚∀゚)「…………」

( ;ω;)「お前さんは……お前さんは、僕の……っ」
  _
( ゚∀゚)「知ってるよ、……馬鹿弟」

( ;ω;)「兄、さん……」
  _
( ゚∀゚)「止めろよ、気持ちの悪い……お前に兄って呼ばれたら、くすぐったくてしょうがねぇよ」

( ;ω;)「……ぉ」
  _
( ゚∀゚)「……泣くの止めろよ、俺が虐めたみたいだろ」

( ⊃ω;)「ごめ、お」
  _
( ゚∀゚)「…………」

( ⊃ω;)「…………」


18 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:43:22.28 ID:F1HnI8x+O
  _
( ゚∀゚)「今はさ」

( ⊃ω;)「お……?」
  _
( ゚∀゚)「お頭じゃなくて、良いよな……?」

( ⊃ω;)「長岡……」
  _
( ゚∀゚)「うん……あの、何だ…………ごめんな」

( ⊃ω;)「お……? 何で、長岡が謝るんだお……?」
  _
( ゚∀゚)「いや、その……あの時、お前は要らないとか、云ったからな」

( ⊃ω;)「そんなの……」
  _
( ゚∀゚)「お前は、要るよ……俺も本当は、お前が要るんだよ」

( ⊃ω;)「お、?」
  _
( ゚∀゚)「だってお前は、俺の唯一の肉親だし……元だけど、友達なんだ」

( ⊃ω;)「僕だって……長岡が要るお……」
  _
( ゚∀゚)「そっか……」


20 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:46:34.60 ID:F1HnI8x+O

( ^ω^)「……長岡は、僕が嫌いなんじゃ、ないのかお?」
  _
( ゚∀゚)「……嫌いではねェよ」

( ^ω^)「お……僕は、長岡が好きだお、友達だし、家族だからお」
  _
( ゚∀゚)「…………うん」

( ^ω^)「だから、僕は……申し訳ないんだお」
  _
( ゚∀゚)「あん?」

( ^ω^)「僕が一緒に生まれた所為で、長岡は……妖怪としての力が、殆どないんだお」
  _
( ゚∀゚)「あー……やっぱりな」

( ^ω^)「お……」
  _
( ゚∀゚)「薄々さ、解ってたよ……だって俺は妖怪として育てられたのに、まるで人間だ」

( ^ω^)「僕は、人間として育てられたお」
  _
( ゚∀゚)「……あーあ、やんなるなぁ」

( ^ω^)「おー……」


22 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:49:14.18 ID:F1HnI8x+O
  _
( ゚∀゚)「例えばさ、殿様の子供が、双子だとするだろ」

( ^ω^)「お?」
  _
( ゚∀゚)「普通は、兄が跡を継ぐだろ」

( ^ω^)「お」
  _
( ゚∀゚)「でも兄が無能だと、弟が継ぐ事もあるんだよな」

( ^ω^)「お……」
  _
( ゚∀゚)「お前は、その弟なんだな」

( ^ω^)「…………僕は……」
  _
( ゚∀゚)「俺は、お前に嫉妬するよ」

( ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「平和な家に、両親、友達も女も居る」

( ^ω^)「お……」
  _
( ゚∀゚)「兄の俺より、ずっとずっと、妖怪としての力も強くて、みんなから可愛がられて」


24 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:53:32.37 ID:F1HnI8x+O
  _
( ゚∀゚)「俺は、家族も居ないしろくな家もない……力もなけりゃ友達も居ない」

( ^ω^)「長岡……」
  _
( ゚∀゚)「お前は本当に、俺にない物ばかり持ってる
      羨ましいし、嫉むよ……どうしようもないって解ってても、羨ましいよ」

( ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「ごめんな……文太郎、兄貴が愚痴ってよ」

( ^ω^)「そんな、事……そんな事、ないお……」
  _
( ゚∀゚)「……ありがとよ、お前もこんな事云われたって、困るだけだよな」

( ^ω^)「長岡は、兄さんは……僕を、恨んではないのかお……?」
  _
( ゚∀゚)「恨んじゃいねぇよ……弟恨んでどうすんだ」

( ^ω^)「お……」
  _
( ゚∀゚)「…………今は、今だけはさ……よわっちい人間で……居ても良いよな」

( ^ω^)「……うん」
  _
( ゚∀゚)「……ごめんなぁ……」


26 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:56:53.26 ID:F1HnI8x+O


 ねぇ、長岡。

 何だよ、文太郎。

 長岡は、空と地面、どっちが好きだお?

 あー……地面かなぁ、命を育てるのは、地面だからなぁ。

 僕は、空が好きだお……雨を降らせる、空が好きだお。

 そっか、地面だけじゃ駄目なんだ、水がなきゃな。

 空も、空だけでは何も生めないんだお。

 地面と空が一緒になって、やっと命になるんだな……。

 だお……。

 俺は、地面が好きなのに……空に生まれちゃったんだな……。

 僕は空が好きなのに、地面に生まれたお……。

 …………一緒に、命を作れる様に……なるのかなぁ……。

 なれたら、良いお……。


29 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 21:59:09.85 ID:F1HnI8x+O



( ・3・)「あるぇ、うちのお坊っちゃんは?」

(-@∀@)「散歩に行きましたよ」

( ・3・)「ふーん……ま、今日くらいは自由にさせよっか」

(-@∀@)「ええ、少しくらい自由にさせてあげましょう」

( ・3・)「……育て方、間違えたかなぁ……」

(-@∀@)「何ですかいきなり、あの子の親権は渡しませんよ」

( ・3・)「いやいやそんな離婚調停中の夫婦じゃあるまいに」

(-@∀@)「それより、渉は知りませんか?」

( ・3・)「自分から振ったのに流した……帰ってきたよ、縮んでたからわむてが治してんよ」

(-@∀@)「……何で縮んだの……?」

( ・3・)「えっ……知らない……」


30 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 22:02:18.02 ID:F1HnI8x+O

人il.゚ヮ゚ノ人「んっとにもう……しゃきん様に取っ捕まるなんて」

(  ^^)「あれから逃げろって方が無茶です……」

人il.゚ヮ゚ノ人「逃げなさいよ、なっさけないわねぇ……ほら六目も何か云いなさいよ」

(…∀…)「腹減った」

人il.#゚ヮ゚ノ人「餓えてろ」

(; ^^)(あやや、また喧嘩したのかなこの二人……ぼるじょあたすけてー……)

(-@∀@)「おやおや渉やっと戻りましたか、大きさ的な意味でも」

(  ^^)「あさひ、丁度よか」

   メコォ
(#-@∀@)⊃) ^^)アアン


(#-@∀@)「帰還したなら僕に報告をしなさい僕に、馬鹿ですかあなたは馬鹿ですね馬鹿」

(#);^^)(そうやって怒るから報告しなかったのに……)

(#-@∀@)「返事は馬鹿!!」

(#);^^)「ごみんなしゃい……」


31 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 22:05:14.76 ID:F1HnI8x+O

爪゚ー゚)「わむて様、そちらが終わりましたらこっちもお願いします」

爪゚∀゚)「結構怪我人が残ってるからなー」

爪゚A゚)「それと、次のいくさに向けての確認もお願いしますー」

人il.゚ヮ゚ノ人「あーはいはい、行ってくるから大人しくしてなさいよ渉」

(#);^^)「はーい……」

( ・∀・)「おい六目、お前も手伝え」

(…∀…)「チッ、面倒くせぇなァ……」

( ・∀・)「黙って働けよ、呪うぞ」

(…∀…)「うるせェってんだ、頭から喰うぞ」

( ・∀・)「宿儺を嘗めんなよお前、ガチで殺すぞ」

(…∀…)「やってみろボケが」

( ・∀・)「うっさいわ俺の類似品の癖しやがって」

(…∀…)

( ・∀・)


40 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 22:45:08.09 ID:EGDMRB3qO

(…∀…)「……類似品?」

( ・∀・)「そうだよ廉価版」

(…∀…)「廉価版……」

( ・∀・)「ほら行くぞるいーじ、働け働け」

(…∀…)「お前……一番傷付く事云うよなァ……」

( ・∀・)「傷付かない事云っても楽しくないだろ、ほら行け類似品」

(…∀…)「止めろよ、もう……うんこ……」

( ・∀・)「死ねおら」

(…∀…)「心が死ぬわ……」

( ・∀・)「死んで良いからさっさと働け間抜け」

(…∀…)「もう良いよ、解ったよ糞が……」

( ・∀・)「殺すぞおら」

(  ^^)(仲良いなーあの義兄弟)


41 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 22:48:25.89 ID:EGDMRB3qO

( ・3・)「……みんな忙しそうだねぇ」

(  ^^)「そりゃ、三日後に大騒ぎですから」

( ・3・)「それもそっか」


┗(^o^ )┓三

,,( ・□・)

(゚¥゚  ),,

('e')~~

( ´曲`)〜♪

【+  】


( ・3・)「みんな楽しそうだねぇ」

(  ^^)「一気に消費しましたね」

( ・3・)「いい加減ぎりぎりだからねぇ」


42 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 22:51:25.67 ID:EGDMRB3qO

(  ^^)「百匹でしたっけ」

( ・3・)「うん、計算合わなくて狂ってるよ」

(  ^^)「ははは、まあなんとかなるでしょ?」

( ・3・)「結構笑いごっちゃ無いんだよねこれが」

(  ^^)「えっ……そんなに……?」

( ・3・)「うん、そんなに……」

(  ^^)「…………ぼるじょあ」

( ・3・)「ん?」

(  ^^)「僕らは、間違ってます?」

( ・3・)「何よ、朝日と云い渉と云い……俺もだけど」

(  ^^)「うん……何かねー、めらんこりっく」

( ・3・)「めらんこかー……」

(  ^^)「まあ、今さらどうこう出来ないけどー……」


43 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 22:54:23.62 ID:EGDMRB3qO

( ・3・)「俺たちはさ、渉」

(  ^^)「はい?」

( ・3・)「もうね、後戻りって出来ないのよ」

(  ^^)「……」

( ・3・)「今さらね、お坊っちゃんのために何て云っても、無茶なのよ」

(  ^^)「……うん」

( ・3・)「だって俺たちはね、西の屑として生きるってずーっと前に決めちゃったでしょ?」

(  ^^)「……そうだけどぉ」

( ・3・)「今さらね、いいこちゃんにはなれないのよ渉」

(  ^^)「……」

( ・3・)「掃き溜めで生まれて掃き溜めで育ってね、自分たちのためだけに生きるって決めたよ」

(  ^^)「…………」

( ・3・)「お坊っちゃんを拾って育てて……俺たちも狂っちゃったね」

(  ^^)「うん……でも、お坊っちゃんはかわいいよ」


45 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 22:57:11.19 ID:EGDMRB3qO

( ・3・)「当然でしょ、お坊っちゃんは俺たちの子供なんだから」

(  ^^)「……みんな、僕らの仲間みんな……お坊っちゃんが好きだもんね」

( ・3・)「あの六目ですら我が子の様に可愛がっちゃってるんだよ、可愛くないわけないよ」

(  ^^)「…………うー」

( ・3・)「お坊っちゃんは、たぶん俺たちが思ってるほど子供じゃないよ
      お坊っちゃんはもう西のお頭として生きるって決めてる、お頭として町に攻め込むよ」

(  ^^)「……あうあう」

( ・3・)「せふせふ、だから俺たちも覚悟決めようよ渉、甘ったるい気持ちは忘れてさ」

(  ^^)「……うん」

( ・3・)「俺たちは、町に嫉妬して、楽しくて、壊すのが好きで、町に攻め込むの」

(  ^^)「ぼるじょあ……」

( ・3・)「それが、俺たちでしょ?」

(  ^^)「…………うん、今さらね、考えたって無駄だよね……」

( ・3・)「無駄かはわからないけどさ、……西の悪たれとして、最後までやっちゃうしか無いんだ」


46 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:00:18.22 ID:EGDMRB3qO

(  ^^)「でもぉ……僕は、お坊っちゃんに申し訳ないです……」

( ・3・)「あーもーやめなさいよ、そうやってへにゃへにゃしてる渉は気持ち悪いよ」

(  ^^)「き、気持ち悪いとは失敬な……」

( ・3・)「ほんとの事でしょ、ほらいつも通りこれからも応援してくださいねって云ってろ」

(  ^^)「うぇー……」

( ・3・)「本当にもう……」


 渉は、変なところがお人好しなんだから。


 あのね渉、もうね、それが間違ってるかどうかなんて関係ないんだよ。

 だって改心するには遅すぎるだろ?
 それに、改心する気があるわけじゃなし。

 これは俺たちが選んだ道で、俺たちが進むしかなかった道なんだよ。
 分岐点があったとしたら、それはずーっとずーっと昔だよ。


47 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:03:15.94 ID:EGDMRB3qO

 もし別の道に進めたとして、昔の俺たちが、別のきれいな道を選ぶと思うかな

 思わないよね、つまりさ、自業自得なんだよ。

 俺たちがいまこうして胸がちくちくしてるのは、自業自得なんだよ。

 若い頃は良かったよ、後先考えずに暴れ倒して、私利私欲のために本能に忠実で。
 でもさ、年老いてから俺たちは、あの子を我が子として受け入れちゃったんだ。

 俺たちは本当はね、守るものなんて作っちゃいけなかったんだよ。
 良心の種をね、これ以上育てちゃいけなかったんだよ。


 だってほら、俺たちはいま、胸がちくちく痛いでしょ。

 これはさ、お坊っちゃんを育ててしまったから痛いんだよ。
 俺たちはただの悪たれだったのに、子供を育ててしまったから。


 でも俺はこの胸のちくちく、嫌いじゃないんだ。
 後戻りは出来ないって解ってるけど、俺はこの胸のちくちくを大事にしたまま、暴れて死にたいよ。

 ねぇ渉、俺たちは間違ってたかなんて考えちゃ駄目だよ。


 俺たちは、最初っから、間違ってるんだから。


49 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:06:22.02 ID:EGDMRB3qO



( [)

([ )

( ∴)?

ヾ([ )ノシ

( ∴)

( ∴)゙

,,,( ∴)⊃⊂( [)゙



( [)「ゴェ」

(`・ω・´)「ん? ああ、木霊かい?」

( [)「ゴェゴェェゴェ」


50 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:09:33.32 ID:EGDMRB3qO

(`・ω・´)「あー……あーあーなるほど、把握把握」

( [)「ゴェン」

(`・ω・´)「うん、邪魔しないであげて、この事は僕が皆に伝えておくよ」

( [)゙

(`・ω・´)「有り難う木霊、あの子達をそっとしててくれて」

( [)"

(`・ω・´)「……普通の子として会える、最後の機会だろうからね」

( ∴)「……ゴェ?」

(`・ω・´)「うん? ……あの子達は双子だよ、幸せになりたかった双子」

( ∴)「ゴェ……」

(`・ω・´)「……僕がもっとしっかりしてれば、二人とも幸せに出来たのかな?」

( ∴)"

(`・ω・´)「ははは……そうだよなあ、無理だろうな……可哀想な事をした、みんな、みんなに」


51 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:12:29.29 ID:EGDMRB3qO

(`・ω・´)「少しの間、じじいの愚痴と懺悔を聞いてはくれないかい?」

( [)"

( (⊂( ∴)゙

(`・ω・´)「有り難う、女の子は優しいね」

( ∴)そ

(`・ω・´)「……僕は昔はね、確かに力の強い妖怪だったんだ、本当に本当に昔の事だけど」

( ∴)゙

(`・ω・´)「杉浦達が若い頃にはもう、力は随分と衰えてた……だから狐の大将しか出来なかった」

( ∴)?

(`・ω・´)「本当は東のお頭をしてくれって何度も頼まれてたけどね……もう、その時には老いていたんだ」

( ∴)「ゴェ……」

(`・ω・´)「僕は本当に、長く生きすぎただけの狐……今やただの、生き字引でしか無いんだよ……」


52 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:15:32.06 ID:EGDMRB3qO

(`・ω・´)「僕が生きる理由は、愛しい人を探すため、それだけのために生き続けた」

( ∴)

(`・ω・´)「他人の事なぞどうでも良いと思った時もあったけど……それじゃ、駄目なんだよね」

( ∴)゙

(`・ω・´)「力が全て枯渇する前に、後継者を育てたい気持ちもあった、子供を可愛がりたかった
      だから僕は杉浦としゅう、ふぉっくす何かを育てて、僕が隠居しても大丈夫な様にしたんだ」

( ∴)゙

(`・ω・´)「力を誇示する者が居れば、人は従うものだから……まあ、そんな子達も老いてしまったけどね」

( ∴)

(`・ω・´)「……そして僕は旅に出て、色んなものを見てきた、触れてきた、それで解った事がひとつ」

( ∴)?

(`・ω・´)「僕は強いと云う話が広まりすぎていた、それも、たっぷりの尾ひれを付けて」

( ∴)そ


54 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:18:25.58 ID:EGDMRB3qO

(`・ω・´)「確かに昔は強かった、それは嘘じゃない、でも相当若い頃の話だ
      とは云え今さら、本当はただの老い耄れでーすと云えるわけがないんだ」

( ∴)「……ゴェ」

(`・ω・´)「だって、僕がただのじじいだとばれたら、町にいちゃもん付けられるだろ?
      今を平和に生きてる者がいっぱい居るんだ、その平穏を壊すわけにはいかないんだ」

( ∴)゙

(`・ω・´)「……だから、さ……僕は強そうなふりを続けるしか無いんだよ……
      力が無い事は誤魔化して言いくるめて……必死こいて取り繕うんだ……」

( ∴)「……」

(`・ω・´)「なのに、この騒ぎ……いくさだよ……?
      そりゃ渉をひっぱたくくらいは出来たけど、前線に立つ体力があるものか……」

(;∴)「ゴ、ゴェ……」

(`・ω・´)「正直、じじいどうすれば良いのかなあ……普段なら馬鹿云って流すけど……
      このいくさで、馬鹿な事を云えるわけないし……でもそうしたら、力が無いとばれる……」

(;∴)「ゴェェ……」

(`・ω・´)「嘘を嘘で塗り固めたバチが、こんなとこで帰ってくるんだもんなあ……ああ……」


55 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:22:00.06 ID:EGDMRB3qO

,,( ^Д^)「オヤシロサマー」

(`・ω・´)「誰がだこの牛蛙、と云うかいま忙しいんだよ」

(;^Д^)「牛蛙……あのねぇん先代様…………この町の古株にはバレてるよぉ?」

(`・ω・´)

( ^Д^)

(`・ω・´)「えっ?」

( ^Д^)「いや、力がもう無いの」

(`・ω・´)「えっ、えっ?」

( ^Д^)「そりゃそうでしょ……あんた幾つだと思ってるの先代様ぁん……」

(`・ω・´)「えっ、何それ、僕の苦労は?」

( ^Д^)「無駄骨?」

(`・ω・´)「ぶち殺すぞライミー」

(;^Д^)「ご、ごめ!?」


58 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:25:32.83 ID:EGDMRB3qO

(`・ω・´)「つか、えぇ……えー……何それぇ……云えよぉ……」

( ^Д^)「んだってぇん……先代様、俺っちたちのために頑張ってくれてるからぁん……」

(`・ω・´)「んだよもう……萎えるわぁ……」

( ^Д^)「まあまあ……でも有り難かったんですよぉ? みんな感謝してるしぃん」

(`・ω・´)「うんまあ……役立ってたなら良いけど……」

( ^Д^)「今まで俺っちたちのために頑張ってくれてたから、今度は俺っちたちが頑張る番
      先代様が若いと思ってた奴等も、もう老い耄れってくらいに年寄りですからねぇん」

(`・ω・´)「……」

( ^Д^)「だから恩返しですよぉん恩返しぃ、次の世代のためにもぉ……って、なんすか?」

(`・ω・´)「お前、たまに可愛い事云うよなぁ……ちゅーしてやろうかちゅー」

(;^Д^)「えっ、あ、そっ、い、結構です……」

(`・ω・´)「素で返すな牛蛙が……突っ込めよ……」

(;^Д^)「ご、ごめ……」


59 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:29:31.78 ID:EGDMRB3qO

(`・ω・´)「……肩の荷がちょっと降りたと、思って良いのかな?」

( ^Д^)「うん、先代様が無理に強がんなくても、俺っちたちが補佐するんでぇん」

(`・ω・´)「僕の次の世代が若いと思ってたのに、もう次の世代を育てる歳になったんだなあ……」

( ^Д^)「妖怪だから分かりにくいし長生きだけどぉん……ぶっちゃけ、みんなじじばばっす……」

(`・ω・´)「ははは……年寄りの冷や水だよなあ、これ……」

( ^Д^)「はは……俺っちたちも含まれますしねぇん、それ……」

(`・ω・´)「と云うかお前の歳でその口調ってどうなの?」

( ^Д^)「あんたが云いますかぁん……」

(`・ω・´)

( ^Д^)

(`・ω・´)「見た目が正義」

( ^Д^)「可愛いが正義」


61 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:32:15.97 ID:EGDMRB3qO



(゚、゚トソン「あーいてて……くっそ、未だ動けねぇか……」

ミセ;゚ー゚)リ「とそんさぁん……人間なんだから無茶しちゃ駄目だよ……」

(゚、゚トソン「るっせぇな、これじゃ店にも戻れねぇや……」

ミセ;゚ー゚)リ「お店はわたし達がちゃんと見てますからー……」

(,,^Д^)「そうですよ、良い子ですから大人しくしてて下さい」

(゚、゚トソン「うるせぇよろりこん」

(;,^Д^)「ろり……もう良いです、ろりこんでも何でも良いですから……」

(゚、゚トソン「否定はしねぇのか」

(;,^Д^)「しても無駄じゃないですか……」

(゚、゚トソン「ろりこんなのか?」

(;,^Д^)「何で改めて普通に聞くの?」


63 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:35:02.03 ID:EGDMRB3qO

(,,^Д^)「ろりこんと云うか、その……昔でぃさんは、すとーかーの被害に会ってましてね……」

(゚、゚トソン「すとぉかぁ……」

(,,^Д^)「それから守ってる間に、その……なつかれまして」

(゚、゚トソン「ほーう」

(,,^Д^)「な、何ですか……」

(゚、゚トソン「まあ、あのちびは歳の割には大人びてるしな」

(,,^Д^)「は、はあ……」

(゚、゚トソン「未だ手は出すなよ? 流石に壊れるぞ」

(;,^Д^)「出しませんよ失敬な! ぷらとにっくですよ!!」

(゚、゚トソン「ちゅーくらいなら?」

(;,^Д^)「そ、それは、あの……あーもーこの話おわりー!」

(゚、゚トソン「えー」

(#゚;;-゚)「えー」


66 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:38:52.00 ID:EGDMRB3qO

(゚、゚トソン

(,,^Д^)

(#゚;;-゚)

(゚、゚トソン「……でぃだな」

(#゚;;-゚)「でぃです」

    グイグイ
"(#゚;;-゚)っ(;,^Д^)"

(#゚;;-゚)「たからのにいさま、続きは……?」

(;,^Д^)「ありません、続きはありません」

(#゚;;-゚)「ぇー……そんなんずっこいわぁ……」

(;,^Д^)「ずっこくありません、お仕事に戻りましょう」

(#゚;;-゚)「せやったらうち、今日たからのにいさまと一緒に寝るぅ……」

(;, Д )「許して下さい……」

(゚、゚トソン(意外と尻に敷かれてんのな)


68 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:41:14.34 ID:EGDMRB3qO



|゚ノ ^∀^)「んっしょ、と……はー疲れるぅ……」

( ´∀`)「大丈夫モナ? 僕の細君」

|゚ノ ^∀^)「これっくらいへっちゃらよう、それよりほら、向こうのお手伝いもしなきゃっ」

( ´∀`)「モナ……れもな」

|゚ノ ^∀^)「ン?」

( ´∀`)「れもなは、此処の遊女モナ」

|゚ノ ^∀^)「……うん」

( ´∀`)「遊女と云うのは、誇り高き職だと聞くモナ……そんなれもなを店から奪うのは……」

|゚ノ ^∀^)「もな君……」

( ´∀`)「それに、身請け金と云う物が必要モナ?
      ……モナは、お恥ずかしい事に、人間としては全く裕福ではないモナ……」

|゚ノ ^∀^)「そんな事……そんな事、気にしないで? れもながどうとでもするから……」

( ´∀`)「れもな……」


70 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:44:15.29 ID:EGDMRB3qO

|゚ノ ^∀^)「とは云え……もな君も人間としてのお仕事探さなきゃね……」

( ´∀`)「お恥ずかしいモナ……」

|゚ノ ^∀^)「良いのよう、れもなの貯金もいっぱいあるし……もな君が居るだけで、幸せだもの」

( ´∀`)「れもな……僕もれもなが側に居るだけで、幸せモナ……」

|゚ノ ^∀^)「もなくぅん……」

ミ(´・_ゝ・`)「話は聞かせて貰った」

|゚ノ;^∀^)「ぬるっと入って来ないでよう雇い主様……」

ミ(´・_ゝ・`)「聞かせて貰った」

|゚ノ ^∀^)「はいはい」

ミ(´・_ゝ・`)「ええと、……身請け金の事は気にするな? 私が何とかする……簡単に云うな君は」

|゚ノ ^∀^)「?」

ミ(´・_ゝ・`)「まあ雇い主だから何とかは出来るけど、だからって……ゲフッ 痛い」

|゚ノ;^∀^)「雇い主様……何してるの……? と云うか何か出てるわよう」


71 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:48:28.64 ID:EGDMRB3qO
ズルリ |゚ノ ^∀^)っミセ*゚ー゚)リミ(´・_ゝ・`)

モドシ ,,|゚ノ ^∀^)っミ(´・_ゝ・`)


|゚ノ ^∀^)「……どんな腹話術してるのよう、みどりちゃん」

ミ(´・_ゝ・`)『み、みどりなんて居ないよ花魁さま! ただの狢だよ!』

|゚ノ;^∀^)「気持ちわっるう!!」

ミ(´・_ゝ・`)「……そんな訳で、身請け金は何とかなるらしい」

|゚ノ;^∀^)「損するの自分だって解ってる……?」

ミ(´・_ゝ・`)「金銭的には損害だが気分的には役得だから」

|゚ノ ^∀^)?

|゚ノ ^∀^)

,,,|゚ノ ミ(´・_ゝ・`)


|゚ノ ^∀^)「なるほど、みどりちゃんのちゅーで了承しちゃったのね」

ミ(´・_ゝ・`)『ぶわぁあっ! 云わないでよ花魁さまのばかぁあああっ!!』

|゚ノ ^∀^)(本気で気持ち悪いわこの図……)

74 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:52:31.06 ID:EGDMRB3qO

|゚ノ ^∀^)「でもごめんねみどりちゃん……れもなの所為で……」

ミ(´・_ゝ・`)『い、いいよ……別に減るわけじゃないし……』

|゚ノ ^∀^)「でもれもなの所為でみどりちゃんの口が腐ったら流石に責任感じるわあ」

ミ(´・_ゝ・`)『くさんの!?』

ミ(´・_ゝ・`)「……れもな、雇い主を嫌いすぎではないかい」

|゚ノ ^∀^)「気のせいよう変態様、あ間違えた雇い主様」

ミ(´・_ゝ・`)『(変な上下関係見えた……)』

li*^ヮ^)「おとーさーん! おかーさーん!」

|゚ノ ^∀^)「あ、もれなちゃん! 走っちゃ駄目よう、転んじゃうわ?」

li*^ヮ^)「へーきっ……わ、わぶっ!」

|゚ノ ^∀^)「もう、だから云ったのに……大丈夫? 怪我は?」

li*^ヮ^)「へーき! もれなは強い子だもんっ!」


75 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:55:18.27 ID:EGDMRB3qO
    ヒョコ
ミセ*゚ー゚(´・_ゝ・`)

ミセ*゚ー゚)リ「……平和だね、家族って」

(´・_ゝ・`)「ああ」

ミセ*゚ー゚)リ「いーな、おかーさん……何か憧れるや……」

(´・_ゝ・`)「なるか?」

ミセ*゚ー゚)リ「違うわおかーさん欲しいってんだよ」

(´・_ゝ・`)「ふむ……確かに、初潮も未だでは母親にはなれないか……」

ミセ*゚ー゚)リ「ちょっと黙って変態、九歳できたらちょっとはえーよ」

(´・_ゝ・`)「個人差はあるが、つまり今なら中」

( ‘_L’)つ)_ゝ・`)メコォ

(´#)_ゝ・`)「予想はしていた」

(‘_L’)「お前は、本当にどうしようも無いな」

(´#)_ゝ・`)「大丈夫だ、自覚もしている」

(‘_L’)「死ね」


78 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/01(日) 23:58:43.61 ID:EGDMRB3qO

(´・_ゝ・`)「それよりも、大丈夫なのか犬神」

(‘_L’)「何が、だ」

(´・_ゝ・`)「蝙蝠、君を殺した相手だろう」

(‘_L’)

(´・_ゝ・`)

(‘_L’)「そうだった、気がする」

(´・_ゝ・`)「忘れてたのか」

(‘_L’)「死ぬ前の、話だ、今さら気にはして、いない」

(´・_ゝ・`)「……とらうまなのだろう」

(‘_L’)「かも、知れん」

(´・_ゝ・`)「また奴等を迎え撃つ事になるんだ」

(‘_L’)「どうせ、奴等は遊びで俺を、殺しただけだ」

(´・_ゝ・`)「だが、」


82 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:01:48.94 ID:jrqjAYXAO

(‘_L’)「大して、意味もない事、死ぬ前の事、俺は今、生きている」

(´・_ゝ・`)「…………」

(‘_L’)「気にして、いては、生きて行けん」

(´・_ゝ・`)「まあ、君が良いなら構わな」

|::━◎┥「お茶いらんかねー」

(´・_ゝ・`)

(‘_L’)「頂く」

|::━◎┥「どうぞ、茶筒の付喪神特製の緑茶です」

(‘_L’)「美味い、な」

|::━◎┥「おおきに」

(´・_ゝ・`)「私も頂こう」

|::━◎┥「どうぞ、ほうじ茶です」

(´・_ゝ・`)「どうしてそうなった」


83 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:04:20.29 ID:jrqjAYXAO



( ´_ゝ`)「よいしょ……これはここで良いのか? 弟者」

(´<_` )「ああ、そこに置いておいてくれ」

∬´_ゝ`)「弟者、お茶ちょうだい」

(´<_` )「姉者、此処は茶屋じゃない」

l从・∀・ノ!リ人「おだんごちょーだいなのじゃー」

( ´_ゝ`)「妹者……お団子は甘味処じゃないと無いんだ……」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「私にもお茶を貰えるかい」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「何なら私が淹れるけど」
 _、_  
( ,_ノ` )y━・~「灰皿を貸してくれないか」

(´<_` )「おい何だこの勢揃いは」


84 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:07:41.13 ID:jrqjAYXAO
 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「手伝いに来たんだよ、また攻め込まれるらしいからね」
 _、_  
( ,_ノ` )y━・~「南と北の手助けだ、有り難く思いな」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「お茶淹れたよ」

(´<_` )「……色々引っくるめてありがとう」

∬´_ゝ`)「父者、私にもちょうだい」

( ´_ゝ`)「姉者……父を顎で使うのは、どうかと……」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「はいどうぞ」

(´<_` )「父者も少しは怒ってくれ……」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「次期南のお頭だから……」

(´<_` )「姉者……凄いんだな……」

∬´_ゝ`)「崇めても良いわよ」


85 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:10:10.27 ID:jrqjAYXAO

( ´_ゝ`)「ところで、おじさんは母者の弟なんでしたっけ……?」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「北から飛び出して南に来て、私と義兄弟の契りを交わしたんだよ」

( ´_ゝ`)「その後で母者と結婚したのか……」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「そうなるね、最初は私も驚いたよ」

(´<_` )(同じ顔が並ぶと我が家族ながら鬱陶しいな……)

l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃい兄者ーおだんごー」

(´<_` )「はいはい、可愛屋行ってくるから兄者あとよろぴこ」

( ´_ゝ`)「あ、ああ……解った……」

l从・∀・ノ!リ人「おだんごおだんごー」

∬´_ゝ`)「お土産よろしくー次期北のお頭」

l从・∀・ノ!リ人「任せろなのじゃー」

(´<_` )(兄達を差し置いて……この子怖い……ビクンビクン)


88 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:13:14.68 ID:jrqjAYXAO

( `ー´)「おーい、向こうで手が足りないらしいぞー」

( ノAヽ)「んぇー、すぐ行くノーネ」

( `ー´)「俺も行くか、お世話になっちゃってるし」

( ノAヽ)「お前は町に馴染みすぎなノーネ」

( `ー´)「俺だけじゃないんじゃネーノ?」


(,,゚Д゚)「おい狐と狸、こっち手伝え」

イ从゚ ー゚ノi、「むー……」

从´ヮ`从ト「はいはーい」

(;TДT)「あの、姉ちゃん……手伝……その……」

リi、゚ー ゚イ`!「手伝うからしゃっきりしろ」

(;TДT)「はひ……」


( `ー´)「……何なのあいつら」

( ノAヽ)「知らんわ」


89 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:15:47.71 ID:jrqjAYXAO

( ノAヽ)「しかしまー、取っ捕まった西の残党が町に馴染む馴染む」

( `ー´)「だなー、不思議と馴染む」

( ノAヽ)「お前の事なノーネ」

( `ー´)「まあそうだけど……不思議なんだよな」

( ノAヽ)「んあ?」

( `ー´)「この町に居るとな、どんなにヤル気満々で来た奴等もほだされるんだ」

( ノAヽ)「お前は元からなノーネ……」

( `ー´)「いや俺は置いといて、狐も狸も狼も……あんなに殺気満々で来たのにさ」

( ノAヽ)「そりゃこの町だからなノーネ」

( `ー´)「この町だから?」

( ノAヽ)「ここのお頭のぼんぼんは、妖怪を人間にするノーネ」

( `ー´)「なにそれこわい」


90 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:18:14.37 ID:jrqjAYXAO

( ノAヽ)「ここのぼんは相手をへにょへにょにしてほだほだのほぐほぐにするノーネ」

( `ー´)「意味は解るけどもうちょっと云い方があるんじゃネーノ?」

( ノAヽ)「他にどう云えと……」

( `ー´)「例えばこう、あいつには人の心をほだし穏やかにさせる力がある、とか……」

( ノAヽ)(こいつ頭良いな……)

( `ー´)「他にも取っ捕まった奴等は居るけど、みんな町の復興やってるし……何だここ」

( ノAヽ)「お前はぼんに会った事あるノーネ?」

( `ー´)「いや、背中をちらっと見たくらいかな」

( ノAヽ)「あいつは人を従えさせて敵意を無くさせる力があるノーネ」

( `ー´)「背中見ただけでなるのか?」

( ノAヽ)「うんにゃ、その力を母親の蜘蛛が、町に張り巡らせた糸と一緒に町中に広げてるノーネ」

( `ー´)「なにそれこわい」

( ノAヽ)「まー力つっても相手の気持ちを落ち着かせる程度なノーネ
      従えさせると云うより人に好かれやすいってだけだし、それは力っつーか性格なノーネ」

( `ー´)「力あんのか無いのかわかんねーな……」

91 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:21:10.70 ID:jrqjAYXAO

( ノAヽ)「でも」

( `ー´)「ん?」

( ノAヽ)「その力は、妖怪からしたら厄介なノーネ」

( `ー´)「?」

( ノAヽ)「ノーネたち妖怪は、気持ちがのほほんとしちゃうと人間に近付くノーネ」

( `ー´)「あー……あーあー、つまりぼんぼんの所為で人間になるって事か」

( ノAヽ)「そ、だからこの町に居ると妖怪は人間になっちゃうノーネ」

( `ー´)「はー……妖怪好きなのに人間にさせちゃうって、ある意味きっつい力じゃネーノ……」

( ノAヽ)「本人は気付いてるか知らんけど、かなりの板挟みなノーネ」

( `ー´)「母親は解ってて力を広げてるのか?」

( ノAヽ)「母親からすれば、それが平穏に繋がるからしてるんじゃないノーネ?」

( `ー´)「あー……まあ、妖怪だらけより人間多い方がマシだろうしな……母親もきついだろうなー」


93 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:24:29.94 ID:jrqjAYXAO

( ゚∋゚)「ほら駄弁ってないで働く働く」

ミ,,゚Д゚彡「次の進軍も近いだろうから、急げよお前ら」

( `ー´)「へーい……こいつらは?」

( ノAヽ)「ぼんの側近の二人なノーネ」

( `ー´)「あ、ども、鬼のねーのです」

( ゚∋゚)「陰摩羅鬼のくっくるです」

ミ,,゚Д゚彡「火車のふさ」

( `ー´)「……大変っすね」

( ゚∋゚)「まあ皆さん良い人ですから、楽しんでやってますよ」

ミ,,゚Д゚彡「あとなあぶらすまし、間違いがあるぞ」

( ノAヽ)「ノネ?」

ミ,,゚Д゚彡「あの馬鹿の力は、人を幸せにする力だ」

( ノAヽ)「…………つまり、妖怪から人間になる事が幸せなノーネ?」

ミ,,゚Д゚彡「ま、あながち間違いじゃないかもな……ほら行け」


94 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:27:10.27 ID:jrqjAYXAO



('A`)「あー……疲れたー」

川 ゚ -゚)「お疲れだなどくお」

('A`)「うん疲れた……朝から走り回ってたし……」

川 ゚ -゚)「そんなに大変なのか、町のふっこー」

('A`)「坊っちゃんがちょろちょろ居なくなるから……」

川 ゚ -゚)「お前もうちょっと子離れする様子を見せろ」

('A`)「俺が鬼の内はお断りします……」

川 ゚ -゚)「ほんと駄目だこいつ、早く何とかしなきゃ」

('A`)「坊っちゃんが結婚でもしたらなァ……」

川 ゚ -゚)「つんに早くしろって云おう……」

('A`)「よりいっそう世話役を発揮するのに」

川 ゚ -゚)「やっぱ止めておこう……と云うかだから子離れせえっちゅうねん」


96 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:30:19.88 ID:jrqjAYXAO

('A`)「だって俺の生き甲斐だったんだぜ……いきなりは無茶だろ……」

川 ゚ -゚)「虐待してたのにか」

('A`)

川 ゚ -゚)

('A`)「どこで聞いたの?」

川 ゚ -゚)「つんから聞いたの」

('A`)(あの蛇娘……)

川 ゚ -゚)「おまえは本当にくずだったんだな……」

('A`)「お、お前の所為でひねてたんだよ……」

川 ゚ -゚)

('A`)

川 ゚ -゚)「お茶」

('A`)「へい」


98 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:33:29.40 ID:jrqjAYXAO

川 ゚ -゚)「だがなどくお、お前は内藤をねこっかわいがりし過ぎだ」

('A`)「いーだろ別にィ……減るもんじゃなしィ……」

川 ゚ -゚)「くうから見たお前への評価と友好度とときめき度は減りゆく一方だぞ」

('A`)

川 ゚ -゚)

('A`)「それは困るな……」

川 ゚ -゚)「だろ、だから少しはかっこよくなれ、お前はくうの夫になるんだぞ」

('A`)「俺の腰ほどしか身長ない癖に何を云うか」

川 ゚ -゚)「やっかましいわ、こないだまでぼいんぼいんのむっちむちだったわ」

('A`)「あーはいはい、ようじょようじょ」

川 ゚ -゚)「噛み殺して良い?」

('A`)「すんません」

川 ゚ -゚)「今度ふざけた事を云ったらあばらについた残り肉までこそいでまとめて焼いて食うぞ」

('A`)「痛そうなのに美味そうだよ……」


99 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:34:25.04 ID:jrqjAYXAO

('A`)「そんな事より聞いてよあろえりーな」

川 ゚皿゚)シャー

('A`)「坊っちゃんが西のお頭と双子なんだよ、俺どうすれば良いの?」

川 ゚ -゚)「無視かこいつ……知らんわ、普通に殴れよ」

('A`)「いや、坊っちゃんの肉親を問答無用で殴るのは流石に……」

川 ゚ -゚)「何を躊躇ってるんだお前は、相手は敵なんだろ」

('A`)「敵……だろうけど……」

川 ゚ -゚)「肉親とかは関係ない、たとえ誰であろうと大事なものを壊そうとするなら噛み殺せ」

('A`)「…………うう」

川 ゚ -゚)「双子やなんやと云うのは当人同士の問題だろう、お前が悶々しても無駄だぞ」

('A`)「でもよォ……」

川 ゚ -゚)σそ「大体、それは向こうにも失礼だ」


101 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:34:42.75 ID:jrqjAYXAO

('A`)「失礼……?」

川 ゚ -゚)「ん、向こうは向こうなりに覚悟して、本気でかかってくるんだぞ」

('A`)「まあ、だろうけど……」

川 ゚ -゚)「向こうだって何も考えてないわけじゃないし、悩まないわけじゃない、意味を見出だそうともする」

('A`)「……元西の妖怪としての意見か?」

川 ゚ -゚)「西にいた頃のくうは頭がおかしかった、でも解るんだよ
      あいつらはあいつらなりに苦しんで、悲しんで、嫉妬して、頭がぐちゃぐちゃなんだ」

('A`)「…………でも、それをこっちに向けられるのはおかしい、よな?」

川 ゚ -゚)「ああ、でもな、もうこっちに向けて暴れる事しか出来ないんだよ、あいつらは馬鹿だから」

('A`)「……」

川 ゚ -゚)「今さら共存しましょなんて云えないのは、解ってるんだろう?」

('A`)「解ってる、けど……」

川 ゚ -゚)「じゃあ、どうするか選ぶ事なんか出来ないって、解ってるんだろうが」


102 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:35:03.96 ID:jrqjAYXAO

川 ゚ -゚)「あいつらは、この町を壊したい、みんな殺して遊びたい、そう云ってる」

('A`)「…………」

川 ゚ -゚)「でもな、本当はな…………あいつらは、死にたいから来るんだ」

('A`)「死にたい、から……?」

川 ゚ -゚)「朝日とかわむてとか、その辺は長生き過ぎて妙に強くなった、だから簡単には死なない
      でも本当はもう生き疲れてるし、自分を満たす事にも疲れてしまってる、希望が見えないんだ」

('A`)「……何で、そんな……」

川 ゚ -゚)「だから、あいつらはもうこの選択肢しか残ってないんだ、選ぶ事はもう出来ない」

('A`)「……俺たちにも、もう選択肢、ないのかな……」

川 ゚ -゚)「無いな、あいつらを迎え撃って殺してやるくらいしか出来ない」

('A`)「…………うー……」

川 ゚ -゚)「無責任なやつらだ、我が子の事を考えながらも自分の死をそっと願う、気付いてないかもだけど」

('A`)「自分では気付かない内に、死を望んでる……か」

川 ゚ -゚)「……くうたちは、生きたくても生きられなかったのにな」


103 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:35:22.01 ID:jrqjAYXAO

川 ゚ -゚)「どくお、もう覚悟を決めろ」

('A`)「……」

川 ゚ -゚)「奴等は自分の意思で、覚悟を決めてここに来る、それを真正面から受け止めろ」

('A`)「それが最善……かな……」

川 ゚ -゚)「最善だの最悪だの知った事か、受け止めるしか道がないのに、悩んだところで意味があるか」

('A`)「……くうは相変わらずだな」

川 ゚ -゚)「惚れたか?」

('A`)「人の心配を他所にずんずん進んで周りの目も気にせずに堂々とアホな事を云う」

川 ゚ -゚)「貶してんじゃねーか」

('A`)「誉めてるよ、くうのそう云うとこ好きだぞ」

川 ゚ -゚)「あらいやん」

('A`)「本当にろまんすが似合わんなお前」


104 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:36:12.23 ID:jrqjAYXAO



ξ゚听)ξ「…………」

ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん……大丈夫?」

ξ゚听)ξ「うん、平気……風が気持ち良いですね」

ζ(゚ー゚*ζ「ん……ね、お姉ちゃん?」

ξ゚听)ξ「はい?」

ζ(゚ー゚*ζ「でれ、もう働いてるし……尾っぽの事も気にしてないよ」

ξ゚听)ξ「……はい」

ζ(゚ー゚*ζ「だからね、お姉ちゃん……でれの事を優先して、自分を殺すの、やめてね」

ξ゚听)ξ「…………」

ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんが敬語なの、自分を圧し殺して完璧であろうとするからでしょ?」

ξ゚听)ξ「……小さい頃からの、ただの癖です」


105 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:36:34.60 ID:jrqjAYXAO

ζ(゚ー゚*ζ「……でれの前では……もう、普通で良いよ……?」

ξ゚听)ξ「…………でれ」

ζ(゚ー゚*ζ「ん、」

ξ゚ー゚)ξ「……ありがと」

ζ(^ー^*ζ「ううん……いっつもありがと、お姉ちゃん……」

ξ*^ー^)ξ「私こそ……でれが居たから、生きられたもの……」

ζ(゚、゚*ζ「それ内藤さんにも云ってたでしょ」

ξ*^ー^)ξ「ふふっ……でれも内藤さんも、だーいすきだからね」

ζ(゚ー゚*ζ「んもー……早く内藤さんをお兄ちゃんにしてよねー」

ξ;*゚听)ξ「んなっ!?」

ζ(゚ー゚*ζ「内藤さんが相手なら将来安泰だよー、でれも内藤さんならかもんかもんだし」

ξ;*゚听)ξ「ななななななにをいっひぇえぉうわぁわわわわわぅぇ」

ζ(゚ー゚*ζ(あー……だから二人の間の展開が遅いんだー……)


106 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:37:10.72 ID:jrqjAYXAO

ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん、ちゅーくらいしたの……?」

ξ;*///)ξ「なっなななななななななっ!?」

ζ(゚ー゚*ζ「……手は繋いだ?」

ξ;*///)ξ「そそそそれはあのそのあわわわぅぇぶぉぇあ」

ζ(゚ー゚*ζ「…………」

ξ;*///)ξ「…………」

ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん……赤ちゃんがどうやってできるか知ってるよな……?」

ξ;*゚听)ξ「えっ……こ、こうのとりさんが持ってくるんじゃ……?」

ζ(゚ー゚*ζ(だめだこりゃー)

ξ;*゚听)ξ「あ、あれ……畑でとれるんだっけ……橋の下……?」

ζ(゚ー゚*ζ「……ちゅーしたら出来るんだよ」

ξ;*///)ξそ「なんとぉっ!?」

ζ(゚ー゚*ζ(うわーい簡単に騙せたー)


107 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:37:29.51 ID:jrqjAYXAO

ξ;*///)ξ「ちゅー……ちゅーで……じゃあ、私……内藤さんの赤ちゃん……」

ζ(゚ー゚*ζ「いつしたのー?」

ξ;*///)ξ「じ、じゅうねんくりゃひまえ……」

ζ(゚ー゚*ζ(年頃のかっぽーだよね、この人たち……?)

ζ(゚ー゚*ζ「……大丈夫、それは時効、次のちゅーで出来る」

ξ;*///)ξそ「にゃんとぉおっ!?」

ζ(゚ー゚*ζ(お姉ちゃん、もう少し人を疑う事を知った方が良いと思うの……ばい、年の離れた妹)

ζ(゚ー゚*ζ(奥さまのところで働かせてもらえるようになってから、でれは一気に大人の階段のーぼる……)

ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん、内藤さん好き?」

ξ;*゚听)ξ「へ……は、はひ……」

ζ(゚ー゚*ζ「どれくらい好き?」

ξ;*゚听)ξ「い、いっぱい……」


108 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:37:57.36 ID:jrqjAYXAO

ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんは、内藤さんのためにどんな事が出来る?」

ξ;*゚听)ξ「……で、出来る事は……みんな……」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあお姉ちゃんは、内藤さんのために、内藤さんの家族を殺せる?」

ξ゚听)ξ「……でれ?」

ζ(゚ー゚*ζ「殺せる?」

ξ゚听)ξ「…………それが内藤さんのためになると、間違いないのなら、私はやるかも知れない」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃ……内藤さんのために、死ねる?」

ξ゚听)ξ「……死にたくは、ない」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

ξ゚听)ξ「だって、私はでれと一緒に生きたいし、内藤さんと生きたい」

ζ(゚ー゚*ζ「……お姉ちゃん」

ξ゚听)ξ「だから、死なないで済む道を選ぶ、誰も死なない道を」

ζ(゚ー゚*ζ「さっき、殺すって云ったのに?」


109 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:38:15.85 ID:jrqjAYXAO

ξ゚听)ξ「云ったでしょうでれ、私はそれが内藤さんのためになるなら、と」

ζ(゚ー゚*ζ「うん」

ξ゚听)ξ「誰かを殺す事が、内藤さんのためになると、思うの?」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

ξ゚听)ξ「もし内藤さんが誰かを殺せと云うのなら、私は殴ってでも理由を問い質す
      誰かのためになる人殺しなんて、あの方が許すわけがない、だからそれは有り得ない」

ζ(゚ー゚*ζ「……内藤さんのこと、本当に好きなんだね」

ξ゚听)ξ「ええ、大好き……だって、私の足だもの」

ζ(゚ー゚*ζ「…………奥さまが云ってたの」

ξ゚听)ξ「毒婦の君が?」

ζ(゚ー゚*ζ「内藤さんは、西の人と双子なんだって」

ξ゚听)ξ「…………だから、私に変な事を聞いたのね」


110 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:38:36.99 ID:jrqjAYXAO

ζ(゚ー゚*ζ「西の人にも、家族がいるんだろうし……でも、殺しに来るんでしょ?」

ξ゚听)ξ「……」

ζ(゚ー゚*ζ「西の人をむかえうって、殺すしか道はないって云う人もいる……
      お姉ちゃんは、内藤さんにそんな事させたがらないし、じゃあ、どうするのかな、って」

ξ゚听)ξ「私たちが死ぬか、相手を殺すか、それしか道が無いと云うわけ?」

ζ(゚ー゚*ζ「……らしいよ」

ξ゚听)ξ「…………ふふっ」

ζ(゚ー゚*ζ「?」

ξ゚ー゚)ξ「ふふふっ……馬鹿ね」

ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん……?」

ξ^ー^)ξ「内藤さんが、二つの選択肢に振り回されるものですか」

ζ(゚、゚*ζ「どう云う、こと……?」

ξ*^ー^)ξ「内藤さんはね、みんなが思ってるより頭が良い方なのよ?
      選択肢なんて、増やすに決まってるわ……だあれも死なない、選択肢をね」


112 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:39:06.38 ID:jrqjAYXAO



( ^ω^)「……空が、白んできたお」
  _
( ゚∀゚)「……だな」

( ^ω^)「…………長岡」
  _
( ゚∀゚)「ああ……これで、お別れだ」

( ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「……またな、内藤…………次の俺は、お前の敵だ」

( ^ω^)「僕は……僕は町を守るために……お前さんと、対峙するお」
  _
( ゚∀゚)「俺は……俺の、西の意思を守るために……お前と対峙するよ」

( ^ω^)「……また今度、僕の魂の片割れ」
  _
( ゚∀゚)「ああ、またな……俺の体の片割れ」


 さようならではなく、また今度。

 じっくりと話し込んだ事により、戸惑い狂いそうな頭は冷静さを取り戻す。
 そしてそっと手を振って、二人は泣きそうな顔で笑い合い、静かに別れた。


113 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:39:35.47 ID:jrqjAYXAO

 三日後、兄は全てを壊しにやって来る。
 三日後、僕はそれをどんな顔で受け止めれば良いのか。


 少し欠けた月に向かい、跳ねる様に山を降りる後ろ姿。
 ああ、君はまるでうさぎのような身のこなし。

 土の中に巣を作り、ぴょんぴょん跳ねて魅せるうさぎ。
 君はきっと、うさぎになりたかった鳥なのだろう。


 僕は、鳥になりたかったうさぎ。
 鳥の様に優雅に空を舞いたいと、無様に地面で跳ねるだけ。

 湿った穴蔵がお似合いの、空に憧れる馬鹿なうさぎ。


 双子の二羽の、別れた道は。
 もう二度と、戻る事はないのだろうか。

 穏やかに、共に生きる道など、ないのだろうか。


114 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:39:51.00 ID:jrqjAYXAO

 ただ、幸せになりたくて。
 ただ、満たされたくて。
 ただ、愛されたくて。

 誰もが願うそれらを求め、進んだ道は別れ道。
 全てを別つ、わかれみち。

 その先にあるのは地獄かはたまた極楽か。
 どちらが地獄でどちらが極楽か。


( ^ω^)「……甘ったれを、舐めるなお」


 この先に、或いはその先に地獄が待つと云うならね、兄さん。


 この僕が、この扇で、
  木々をへし折り山を砕き、土を抉りて 道を作ってみせよう。

 皆が幸せに微笑んで、人として生きられる道だ。

 これが甘ったれの僕が作る、甘ったれの為の道なんだ。


 良いぜ兄さん、かかってこい。
 僕は全てを、この二本の腕で、抱き止めてやる。


116 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/02(月) 00:40:47.74 ID:jrqjAYXAO

 人も妖怪も、仇も兄も関係ない。
 この腕で、全てをがっしと抱き止めるんだ。

 僕は東のお頭で、此処を守る最大の砦となってみせよう。

 全てをなぎ倒す腕は、父に教わった。
 そして、全てを抱き止める腕は、母に教わった。


 僕はこの町のお頭になろう。
 僕はこの町の父親になろう。

 僕はこの町を抱き締める腕。
 僕はこの町を扇ぐそよかぜ。


 僕はこの町を、この町に訪れる物を、全てを、愛そう。


 さあ、全てを終わらせる戦が、始まる。



 『十四話後編 おわり。』


inserted by FC2 system