- 20 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:26:22.74 ID:NjqtsWGoO
-
(; ^^)「ひんひん……熱かったし男臭かったです……」
ミ,,゚Д゚彡「大丈夫か鳥」
( ゚∋゚)「尾羽根がめらめら燃えてます、まあ鶏冠は無事ですが」
ミ,,゚Д゚彡「お前、本当に超人だよな……」
( ゚∋゚)「鳥人ですから」
(; ^^)「何なんですこいつら……相手する方が疲れる……」
ミ,,゚Д゚彡「いや、俺様は普通だから、これがおかしいの」
( ゚∋゚)「尾羽根あたっく」
(; ^^)「あつぅうううっ!?」
ミ,,゚Д゚彡「……お前、手負いなのにわざわざ何で来たんだ?」
"( (; ^^)「……」
ミ,,゚Д゚彡「答えられねェ事なのかよ」
"( (; ^^)「……と云うか、云う意味がありません」
- 27 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:28:32.34 ID:NjqtsWGoO
-
ミ,,゚Д゚彡「……なら、殺すぜ?」
"( (; ^^)「どうせ死ぬ覚悟で来ましたですよ……」
ミ,,゚Д゚彡「…………おい、答えろよ、何で来たのか」
"( ( ^^)「……嫌です」
ミ,,゚Д゚彡「嫌々で済むと思うなよ、お前は俺様の飼い主の友達を殺しかけたんだぞ」
"( ( ^^)「…………」
ミ,,゚Д゚彡「いい加減にしろ、答えねェと殴り飛ばすぞ」
"( ( ^^)「どうぞ、それでも喋りませんから」
ミ,,゚Д゚彡「お前、その傷で俺様に勝てると思うのか? 死ぬぞ?」
"( ( ^^)「だから、その覚悟で来ました」
ミ,,゚Д゚彡「……あと鳥、お前もケツ押し付けてんな」
"( ( ^^)「すごく不愉快です……熱いし……」
( ゚∋゚)「てへっ☆」
- 36 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:30:32.72 ID:NjqtsWGoO
-
牛鬼の体には、先日やられたらしい生々しく残る。
端から見れば怪我を負っている様には見えないが、その装束の下は未だ血の滲む傷。
どうやら先代様は、容赦無く半殺しの目に会わせたらしい。
老いた力は無いと云いながら大した物だ、そう肩を竦める牛鬼、山崎。
しかもその傷の上から、ひどい火傷を負わされてしまった。
傷の治癒に力を注いでいる今は、体を守る為に固くする力がない。
本来ならば力の差は明らかな筈なのに、こんな下位の妖怪達に遅れをとっている。
悔しいと云う気持ちもあるが、それよりも、焦りの方が強い。
このままじゃ、このままじゃ間に合わない。
あの子が死んでしまったんじゃ、意味がないんだ。
あの子が生きている内に、少しでも、何かを壊して殺さなきゃ。
- 42 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:32:15.78 ID:NjqtsWGoO
-
( ^^)「……」
ミ,,゚Д゚彡「なァ、俺様らは殺す事も死ぬ事も許されてねェんだ」
( ^^)「…………」
ミ,,゚Д゚彡「そんなじゃもう戦えねんだろ、だからさっさと降伏……ッ!?」
へたりこむ山崎の前に立つふさに、腕を振り上げる。
爪が頬をかする痛みに驚いて一歩退くと、それを追いかけて山崎は立ち上がり、腕を振るう。
ぶん、ぶん、と左右の腕を振り回して、少しでもふさを傷付けようと。
しかし鬱陶しそうな顔をしたふさが、ぶおんと左腕を薙げば、
山崎は簡単に、ぽんと後ろへと弾き飛ばされてしまった。
( ^^)「い、……た」
ミ,,゚Д゚彡「何なんだよ、お前は……もう無駄だろ? 力も出せないのに、何を」
( ^^)「……っ!」
ミ,,゚Д゚彡「うわっ、と……だからっ! 無駄な抵抗すんなよッ!?」
- 49 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:34:33.41 ID:NjqtsWGoO
-
( ^^)「っ! やっ!」
ミ#,゚Д゚彡「だか、ら…………うざってェんだよッ!!」
(; )「ぎゃうっ!」
ミ#,゚Д゚彡「何なんだお前はッ!! 無駄って解ってンのに何なんだよッ!!?」
(; ^^)「う、ぐ……たぁっ!」
ミ#,゚Д゚彡「いでっ…………お前なァッ!!」
( ゚∋゚)「ふささん」
ミ#,゚Д゚彡「ぁあ!?」
( ゚∋゚)「良いから、大人しくしてて下さい」
ミ,,゚Д゚彡「あ……? ンっだよ……っいて」
(; ⊂)「やっ! たぁっ! えいっ!」
ミ,,゚Д゚彡「…………」
( ;;)「やあっ! えいっ、えいっ! たぁあっ!!」
ミ,,゚Д゚彡「何で……そんな、必死なんだよ……全然、当たってもねぇのに……」
- 58 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:36:12.82 ID:NjqtsWGoO
-
ぶんぶんと、当たりもしない腕を振るう。
本来ならば、戦に出られる様な状態ではない。
それでもふらふらと、ぽろぽろ涙を流して、子供の様に腕を振った。
それは、とそんを襲ったあの牛鬼とは、まるで違う。
あの時の力強さも、余裕も、今はどこにもない。
ただただひたすらに、必死に、少しでも傷付けようとするだけで。
ミ,,゚Д゚彡「何で……何で、泣いてんだよ……おい」
( ;;)「泣いて……なんかっ! ないっ!」
ミ,,゚Д゚彡「止めろよ…………なあ、止めてくれよ……もう」
( ;;)「やっ、だ……っやだぁああっ!!」
ミ,,゚Д゚彡「何だよ……何で、そんな……」
( ;;)「たあっ、やぁっ! うわぁああんっ!!」
- 68 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:38:05.55 ID:NjqtsWGoO
-
ぽろぽろ涙が止まらなくて、不甲斐ない自分が悔しくて、何も出来ない自分が許せなくて。
どうして、どうしてあの時、先代様からすぐ逃げなかったんだろう。
ずたぼろにされて、体を小さくして傷を治さなきゃいけないくらいずたぼろに。
もう、本当は力なんてないよ。
店憑き達に、先代様に、みんな持ってかれたんだよ。
体だって傷だらけで、人間の子にやられた傷だって残ってるんだよ。
戦える体なんかじゃないよ。
これじゃ誰も殺せないよ。
でも、やらなきゃいけないんだよう。
やらなきゃ、駄目なんだよう。
( ;;)「うわぁあっ! うわあぁぁあああああんっ!! ぁあああああぁあああんっ!!」
あの子のために、しなきゃ駄目なのに。
誰も、殺せないよ。
- 74 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:40:33.80 ID:NjqtsWGoO
-
ミ,,゚Д゚彡「なあ、くっくる……こいつ……」
( ゚∋゚)「…………そろそろ、出てきてくれませんか?」
ミ,,゚Д゚彡「え、」
( ゚∋゚)「見てるの、解ってるんですよ」
ミ,,゚Д゚彡「な、え?」
くっくるが何かに声をかけると同時に、山崎は渾身の力を込めて、爪を伸ばす。
きょとんとしていたふさに、鋭い爪が突き刺さろうとした瞬間。
( ・3・)「あーあ、ばれてたんだ……鳥さん凄いよ」
( ゚∋゚)「それほどでも」
山崎の爪は、深々とぼるじょあの胸に突き刺さっていた。
- 80 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:42:29.87 ID:NjqtsWGoO
-
( ;;)「なん……で……なんで、邪魔……するんです……?」
( ・3・)「邪魔だと、思う?」
( ;;)「僕は……っ僕はあの子を……裏切るわけにはいかないんですっ! だからぁっ!」
( ・3・)「もう止めなよ……もう、十分だよ」
( ;;)「十分なんかじゃないっ! 結局……僕は誰も殺せてないよぉっ!!」
( ・3・)「良いんだよ、殺さなくて良いから……あの子は、解ってくれるから」
( ;;)「よくないっ! よくないよぼるじょあぁっ! それじゃ駄目だよぉっ!!」
( ・3・)「渉……」
ぼるじょあから爪を引き抜き、その場に崩れ落ちる。
わんわんと、子供みたいに声を上げて泣く肩を抱いて、ぼるじょあは少し切なそうな顔をした。
その様子を不思議そうな顔で眺めるふさと、無表情に見詰めるくっくる。
背中を震わせて泣く山崎は、嗚咽を交えながら叫ぶだけ。
- 84 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:44:22.96 ID:NjqtsWGoO
-
( ;;)「僕はっ……僕は、あの子のために……っ」
( ・3・)「渉……お前が死んじゃったら、あの子はもっと傷付くよ
彼らは殺しはしないって云うよ、だからもう止めて、渉」
( ;;)「うっ、ぁ……ぁあああああぁあああんっ!! うわあぁぁあああああんっ!!」
( ・3・)「……もう、良いんだよ…………良いんだよ……」
( ;;)「もっと……もっと! あの子に……っ愛情を示してあげたかったのにぃっ!!
僕に、は……僕にはこんなやり方しか出来ないよぉおおおっ!!!!」
ミ,,゚Д゚彡「あ…………お前、もしかして……」
( ・3・)「俺たちはねぇ……西のお頭の、育ての親だよ」
ミ,,゚Д゚彡「…………何となく、解った……だから、必死だったのか」
( ・3・)「あの子……お頭は、もうすぐ死ぬから……死のうとしちゃってるの、解るから」
( ゚∋゚)「だから、少しでも愛情を示す代わりに……誰かを殺そうとした、と」
( ・3・)「間違ってると思うよ……でもねぇ、
こうやって忠誠心を見せる事でしか、愛情を示せないんだよ……渉は、特にさ」
- 90 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:46:07.40 ID:NjqtsWGoO
-
( ・3・)「朝日も、わむても、六目も、それなりに立場を作ってあの子に接してたよ
母親だったり、父親だったり、両方だったり……俺は、兄として」
ミ,,゚Д゚彡「……それ、は?」
( ・3・)「渉は、その立場を作れないままだったんだよねぇ……兄でもないし、友でもない
だから、忠誠心しか渉には無いんだよ……あの子に従って、あの子の為に動くしか」
( ゚∋゚)「…………私達は、あなた達を殺しません、許されていませんから」
( ・3・)「うん」
( ゚∋゚)「しかし、誰かがあなた達を裁くでしょう、どの様な結果かは解りませんが」
( ・3・)「……うん」
( ゚∋゚)「…………あなた方に、どうか、幸多からん事を……」
( ・3・)「ありがとね、鳥さん……俺達も、死ぬ覚悟はあるから」
ミ,,゚Д゚彡「…………後味、わりーなァ……」
( ゚∋゚)「連れて行きましょう、ふささん」
ミ,,゚Д゚彡「……おう」
- 97 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:48:06.18 ID:NjqtsWGoO
-
川д川「ん、と……長岡さま、こっちかな……」
川д川「やっぱり気になるなぁ……でも、やることしなきゃ……」
川д川「取り敢えず、あっちに行ってみて…………あ」
川 ゚ -゚)「なあ、ここに待機なのか?」
ξ゚听)ξ「待機です」
川 ゚ -゚)「あっちこちからすごい声してるぞ?」
ξ゚听)ξ「他の方が行ってるって解ってますから」
川 ゚ -゚)「行っちゃだめか?」
ξ゚听)ξ「駄目です」
川д川「女の子が二人……あんまり殺したくないし、こっそり通ろうかな……」
川д川「んしょ、んしょ……こっそり……こっそり……」
- 103 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:50:05.72 ID:NjqtsWGoO
-
川д川「よいしょ、こっから通って……」
川 ゚ -゚)
川д川
川 ゚皿゚)シャーッ
川; д川ビクッ
ξ゚听)ξ「何してるんですかくうさん……あら、その方は?」
川 ゚皿゚)「ここ通ろうとしてた、くせ者だ」
川; д川「あ、あの……その……」
川 ゚皿゚)「くって良いか!」
ξ゚听)ξ「駄目です、落ち着きなさい」
川 ゚ -゚)、 チェッ
- 110 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:52:18.13 ID:NjqtsWGoO
-
川; д川「あ、のぅ……私……」
ξ゚听)ξ「お名前は?」
川; д川「あ、さ、貞子です……渡辺貞子……」
ξ゚听)ξ「私はつん、蟒蛇です」
川; д川(こっちは普通そう……良かった……)
ξ゚听)ξ「その格好は……西の方ですか?」
川; д川「は、はい……」
ξ゚听)ξ「申し訳ありませんが、ここを通すわけにはいかないんです」
川; д川「あ……この先、通っちゃ駄目なんですか?」
ξ゚听)ξ「はい、駄目です」
川; д川「ど、どうしても?」
ξ゚听)ξ「はい、どうしても」
- 118 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:54:14.44 ID:NjqtsWGoO
-
川; д川「あの……な、何で?」
ξ゚听)ξ「ここを、愛しい人に任されてますから」
川; д川「私は、その……愛しい人のためにも、ここを通らなきゃいけないんです……」
ξ゚听)ξ「んー、困りましたね……通すわけにはいかないし……」
川; д川「んと……じゃあ、力ずくで通らせてもらうしか……」
ξ゚听)ξ「そうですね、じゃあ私は力ずくであなたを止めます」
川; д川「あ、はい……じゃあ、よろしくお願いします」
ξ゚听)ξ「はい、こちらこそ」
川; д川「えっと……く、黒猫の貞子! おして参る! ……で良いのかな」
ξ゚听)ξ「蟒蛇のつん、此処より先には通させん! ……で、良いでしょうか」
川 ゚ -゚)(何なのこいつら)
- 128 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:56:44.78 ID:NjqtsWGoO
-
きしゃー、ぎぇぴー、等と云いながら始まった女の戦い。
それを冷ややかな目で、足元の蟻の巣に小石を詰めつつ眺めるくう。
こいつらは真剣なのか冗談なのか、本当に解りづらい。
もしかしたら本気でボケてる可能性もあるから困る、と鼻から溜め息を漏らした。
丸でじゃれあいの様な戦い。
引っ掻くだの尾で殴るだの、戦いとは呼べない戦い。
しかしそれを繰り広げる二人は、非常に真剣な眼差し。
心から真面目に、この茶番とも云える戦いをしている。
それに気付くと、くうは眉間を指で押さえながら俯いた。
_,,
川 ゚ -゚)(盛大なネタ振りじゃ……ないんだよな……)
川д川「ぶ、ぶるすこふぁー!」
ξ゚听)ξ「ち、ちょぎっぷりぃぃぃ!」
_,,
川 ゚ -゚)(誰か何とかしろよ……くうは断るけど……)
- 137 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 00:58:41.15 ID:NjqtsWGoO
-
川д川「もるすぁー!」
ξ゚听)ξ「へぎょみつー!」
川д川「もぴゃー!」
ξ゚听)ξ「うびゃー!」
_,,
川 ゚ -゚)「……つん」
ξ゚听)ξ「あ、は、はい?」
_,,
川 ゚ -゚)「いい加減にしろ」
ξ゚听)ξ「えっ?」
川д川「えっ?」
_,,
川 ゚ -゚)(はいボケてなかったー)
_,,
川 ゚ -゚)「いや、あのな、端から見てな、全く真剣に見えない」
ξ゚听)ξ「えっ……お、大真面目だったんですが……」
川д川「ど、どうしましょ……」
- 143 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:00:13.84 ID:NjqtsWGoO
- _,,
川 ゚ -゚)「いやもうな、しんけんじゃーって名前くらい真剣に見えない、一瞬ばかにされてるのかと」
ξ゚听)ξ「し、しんけんじゃーは関係ないじゃないですか……」
川д川「彼らも大真面目ですよ……」
_,,
川 ゚ -゚)「いやそれは良いから、真面目にやれよ」
ξ;゚听)ξ「で、ですから……」
川; д川「私達、真剣に……」
_,,寃~
川#゚皿゚) ⊃そ バンバン「だから真剣にみえないの! 誠意をみせろ! くうには見えないの!!」
ξ;゚听)ξ「す、すみません!?」
_,,
川#゚皿゚)「おまえはくうとやりあった時の本気はどこいった!! がちだっただろ!!」
川; д川「あ、あわわ……」
_,,
川#゚皿゚)「おまえもおまえだ!! 人とか呪い殺しそうなつらしといて!!」
:ξ;゚听)ξ川; д川: ビクビク
- 148 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:02:17.55 ID:NjqtsWGoO
-
ξ;゚听)ξ「え、えっと……本気と云われても……どうしよう……」
川; д川「私、出来るだけ人とか殺したくないですし……」
ξ;゚听)ξ「私も、あまり誰かを傷付けるのは……」
川; д川「つんさん、悪い人じゃなさそうですし……」
ξ;゚听)ξ「貞子さん、比較的普通だし……」
川; д川「…………どうしましょ?」
ξ;゚听)ξ「どう、しましょ……?」
A _,,A
川#゚゚皿゚゚)シャーッ
ξ;゚听)ξ「ひぃいっ!」
川; д川「がちで鬼状態!」
- 152 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:04:08.83 ID:NjqtsWGoO
-
川#゚ -゚)「おい、大体おまえ!」
川; д川「は、はひ!」
川#゚ -゚)「おまえは愛する男のためなら、人を殺せるのか!?」
川; д川「は、はぁ……自分から殺したいとは思いませんけど……長岡さまのためなら……」
ξ゚听)ξ「……愛する方のために人を殺すなんて、本当にその方のためになるんですか?」
川д川「あ……当たり前です……私はあの方のために生きて殺しますから……」
川#゚ -゚)「お前に自我は無いのか! 愛する男が間違った方向へ進もうとしているのにただ従うのか!?」
川д川「……従う事が、私の愛であり忠誠心ですから……」
川#゚ -゚)「ふざけるなッ!! 何が忠誠心だ!? なぜとめてやらんッ!?」
川д川「だって、だって私はあの方のためだけに生きてるんだもの……!!」
川#゚ -゚)「はぁ!? 愛してるならなぜ叱ってやる事すらしないんだ!?」
川д川「私はあの方が全て、あの方に従うことが愛なんだもの! あの方を否定なんて出来ないよぉっ!」
- 160 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:06:19.27 ID:NjqtsWGoO
-
川#゚ -゚)「ならお前は愛する男が死にに行こうとする背を、
止めるなと云う言葉に従い止めないのか!?」
川д川「だから!! 従うって……ば…………へ?」
川#゚ -゚)「おまえはあの男を死地へ送り出したんだぞ!? 何で止めなかったんだ!?」
川; д川「ぇ、あ……はい? ……死……?」
ξ゚听)ξ「……あの方は、私の愛する方と殺し合いをしに来ました
あなたは、それを知らなかったんですか……?」
川; д川「知ってる……知ってる、けど……長岡さまが、死ぬわけ……」
ξ゚听)ξ「…………内藤さんと長岡さんの事は、よくは知りません……
けれど内藤さんは云いました、くうも云う……長岡さんは、死ににやって来ると」
川; д川「あ…………ぇ……嘘……? 長岡さま、死ぬ……へ……?」
川#゚ -゚)「知らずに、気付かずに送り出したのか……おまえは……ッ!!」
川; д川「だ、て……長岡さま…………ぁ……長岡さま、待って……」
- 165 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:08:30.30 ID:NjqtsWGoO
-
くうとつんに云われて、漸く気付いた事態に、貞子はさっと顔色を無くした。
殺し合うとは聞いていた。
けれど何故か、長岡が死ぬ事なんて頭に無かった。
きれいにすっぽりと、長岡の死と云う結末だけが頭から抜け落ちていて。
ただ、ああ弟を殺すなんてかわいそう、としか思っていなくて。
ああどうして。
どうして、愛しい人の死を、想像もしなかった?
自分達の勝利しか、想像していなかったのはなぜ?
盲信し過ぎていたと云うのだろうか。
何と愚かなのだろう。
あの方が死ぬなんて、有り得ないなんて、なんて、
不思議と、涙が止まらなかった。
- 170 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:10:14.19 ID:NjqtsWGoO
-
川っд;川「ぁ、あ……ああ……長岡……さま、死ぬなんて……そんなの……」
ξ゚听)ξ「無いと、言い切れますか?」
川っд;川「…………」
ξ゚听)ξ「……ごめんさい貞子さん……私はそれでも、あなたを通す訳にはいかないの……」
川っд;川「ぅあ、ぁ、あああっ……長岡さまぁ……長岡さまぁあっ……!!」
川#゚ -゚)「傲慢と慢心で、人は容易く死ぬ
おまえはそれも解らなかったのか、盲信していて気付かなかったのか」
川っд;川「それ、は……」
川#゚ -゚)「おまえは、あの男の本心に気付けていなかったと云う事だ」
ξ゚听)ξ「くう……止めてあげて下さい……」
川#゚ -゚)「黙っていろつん、くうはこいつに云ってるんだ、この大事な事に気付かなかった馬鹿に!」
川っд;川「あ……」
- 177 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:12:33.58 ID:NjqtsWGoO
-
川#゚ -゚)「それなのに、愛だと?
おまえの愛なぞあの男に届くものかよ! 己の事しか考えない愛なぞ要るかよ!!
おまえはあの男が好きだと云いながら、
あの男を愛する己に陶酔し、あの男の心の中すら見えなかったんだ!!
解るか黒猫!? おまえはお前の慢心と盲信により最愛の男を見殺しにするんだ!!
おまえが殺すんだ! おまえが気付けていたら奴は何処にも行かなかったかも知れないのに!!
気付けていたら、解っていたら! 再び巡り会うのに、何百と云う時を重ねずに済んだのに!!!!」
ξ゚听)ξ「……くう、」
川# - )「くうは、くうはそうして、愚かな己に気付き悔いる時も長らく与えられなかった!!
くうが愚かなばかりに、己しか愛さなかったばかりに! くうは愛する男を殺したんだ!!
お前も同じだ、お前もくうと同類だ! お前は愛する男を死地に投げ込んだ人殺しなんだ!!
解るか!? なあ解るか!? なあ、なあ!! くうが、どくおが! どれだけ苦しんだか!!
どうして、どうしてまた同じ様なものを見なければならないんだ!! なあ!!?
どうして……ッ何であいつを止めてやらなかったんだよぉおおおおぉおおおおおおおおッ!!!!」
腹の底から捻り出すような、くうの怒号。
それは己の過去と、目の前で泣き崩れる女が重なったからこそ。
こんな思いを、誰にも味わわせたくない。
こんな思いを、もう抱きたくなんかない。
過去の己への怒りもまぜっこぜに、くうは叫んだ。
- 181 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:14:16.01 ID:NjqtsWGoO
-
川# - )「はっ……はぁ…………はぁ……馬鹿が……大馬鹿者が……っ」
ξ゚听)ξ「くう、くう……」
川っд;川「ふっ……ぅ、ぐっ……ひぐっ……長岡……さまぁ」
ξ゚听)ξ「貞子さん……」
川っд;川「長岡さま……あなたが死ぬ事なんて、貞子は…………貞子は、想像もしませんでしたぁ……」
ξ゚听)ξ「……貞子、さん」
川っд;川「あなたが死んだら……貞子の存在価値は、何処にも無くなる……の、に…………ぁは、は、あはは……」
崩れ落ちる二人の女を、つんが両腕に抱く。
左腕に小さなくうを、右腕には細身な貞子を。
静かに泣きじゃくり、肩を震わせる二人。
その背中を懸命に、つんは撫で続ける。
そして、ぼんやりと暗い空を見上げて、僅かに微笑んだ。
「信じましょう……私の愛しい方を…………あの方なら、きっと─────」
- 187 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:16:28.77 ID:NjqtsWGoO
-
西門前、金棒片手に立つ男。
普段は頭に巻く手拭いは、今は金棒の持ち手へて結ばれている。
青灰色の浴衣と、長めの黒髪をばさばさと風に揺らし、どくおは空を見上げていた。
生暖かい風、生臭い風。
そこらじゅうから悲鳴の上がる、町の中。
まるで叫喚地獄だと呟き、そっと目蓋を下ろす。
ああ、遠くでくうが叫んでいる。
きっと、俺達の事だ。
あいつは、ああ見えて俺との事を悔いている。
もう気にしていないのに、馬鹿な奴だなあ。
坊っちゃんは、大丈夫かな。
大丈夫だろうな。
だって、けせらんぱさらんだしな。
- 195 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:18:40.57 ID:NjqtsWGoO
-
('A`)「さ、て……」
金棒を握ったまま、ぐ、と背筋を伸ばしてのびをする。
それから、門の上をちらりと見て、口を開いた。
('A`)「降りてこいよ朝日」
風の音に紛れてしまいそうな囁きだった。
しかしそれをしっかりと聞いた影は、けらけらと笑いながら、降り立つ。
門の上から降りてきた黒い影は、どくおの胸ほどまでしかない大きさ。
小柄で甲高い声の妖怪は、癪に障る声を放つ。
(-@∀@)「おやおやおやおや気付かれていましたか餓鬼畜生
愚図な餓鬼畜生にしてはなかなか賢いものですねぇ」
('A`)「お前のつまんねェ挑発には乗らねぇや
……それより、何をするか解ってるな」
- 201 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:20:23.72 ID:NjqtsWGoO
-
(-@∀@)「何の事でしょう何の事でしょう? 僕には餓鬼畜生の云う事なぞ解りませんが」
('A`)「いつまでも、虚勢はってんな」
(-@∀@)「……ほう?」
('A`)「ここにゃ俺とお前だけだ、素のお前でかかってこい、ぶっ飛ばしてやるからよ」
(-@∀@)「……あは……あははははははっ、あなたは本当に馬鹿みたいですねぇ、餓鬼畜生」
('A`)「みたいじゃねェ、馬鹿なんだよ俺も」
(-@∀@)「…………ふん、良いですよ、解りました。……僕も久々に、遊ぶ事は止めましょう」
('A`)「ああ、来い蝙蝠……何として何とやりあうか、理解してんな?」
その場で跳ねて、けらけらと笑っていた朝日がぴたりと止まる。
どくおの全てを見透かす様な言葉に肩を竦め、真面目そうな声で返した。
眼鏡の奥の目は静かにどくおを見据え、僅かに視線をそらし、小さく頷く。
挑発に乗らない、見透かされている。
もう、遊んでは、いられないのか。
- 207 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:22:37.24 ID:NjqtsWGoO
-
(-@∀@)「……ええ……我らが最愛のお坊っちゃん、その育ての父として」
('A`)「そう、同じ立場に居るお前は、俺がぶっ飛ばさなきゃいけねェんだ」
(-@∀@)「…………良いですよ、ええ構いません……僕も、同じ場所に立つあなたがね
……嫌いで嫌いで、しょうがありませんでしたから」
('A`)「……嫉妬か?」
(-@∀@)「そう、そうですとも、僕はあの子の親として、家族としては立てませんでした
なのにあなたは、餓鬼のあなたが、お坊っちゃんと血肉魂分け与えられた弟君の家族である
それも親だけではない、兄とし、友とし、使用人とし……
恵まれ過ぎた場所に立つあなたが、腹立たしくて口惜しくて、気が狂いそうです」
('A`)「……ひとつ、馬鹿な事を聞くぜ…………何故、家族として立てなかった?」
(-@∀@)「あの子は我らがお頭様、僕らはあくまで以前のお頭、立場を弁えなければいけません」
('A`)「俺は……俺はただの糞みてぇな餓鬼で、
その辺ふらふらしてた屑だ……それでも俺は、坊っちゃんの家族だ」
(-@∀@)「……だから、嫉むんですよ……あなたは僕らに出来ない事をして、立てない場所に立つ」
- 212 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:24:37.98 ID:NjqtsWGoO
-
('A`)「立とうと思えば、立てたんじゃねぇのか?」
(-@∀@)「それは屑の、屑なりの、自尊心です……あなたと違い、僕らには下の者が、多く居ます」
('A`)「そいつらに、家族ごっこをしてると思われたくなかったのか?」
(-@∀@)「それもあります、もちろんあります……けれど違う
親在りがお頭だと皆に認められはしない、甘く見られる……それは避けたかった」
('A`)「…………お前は、どうしてそれを、選んじまったんだよ……」
(-@∀@)「……馬鹿ですねぇ、僕も……今、今ようやく、もっと綺麗な道を選びたかったと思う……
以前は強がって、気付かないふりをして……でも今はね、……後悔をしているんですよ……」
('A`)「もう、後戻りが出来ない状況になって、……やっと後悔するのかよ……ッ」
(-@∀@)「本当は、もっと早くにしてたのかなあ…………僕にはもう、解りません……僕らは、老いてしまいました……」
('A`)「…………もう一つ、問う……」
(-@∀@)「……はい」
('A`)「お前は、死にたいか」
- 217 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:26:14.43 ID:NjqtsWGoO
-
(-@∀@)「あ…………はっ、あはっ……あはは、は、ははぁ…………何ですか……急、に……」
('A`)「うちのちびが、云ってたんだ……お前らは、死にたがってると」
(-@∀@)「……あの餓鬼は、お喋りですねぇ……」
('A`)「否定はしないんだな」
(-@∀@)「……どうぞ、罵って下さい
僕は拾い子に過酷な運命を背負わせて後戻り出来なくさせたのに勝手に一人で後悔し
更には普通の子に育ててあげられなかったからと悲観しもう早く死にたいと願う屑だと」
('A`)「……馬鹿だな、本当に」
(-@∀@)「ええ、もう、自覚します」
('A`)「しかも、自分勝手で最低だ」
(-@∀@)「西の悪たれなぞ、こんなもんです」
('A`)「…………じゃあ、終わらせてやるよ、朝日……
俺の我が子であり、弟であり、友であり、主人の坊っちゃん、
その双子の兄の育ての親……朝日、俺がお前をぶち壊して、もう苦しまない様にしてやるよ」
(-@∀@)「あ、ああ…………ありがとう……ございます……」
- 220 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:28:07.01 ID:NjqtsWGoO
-
もう最後だと解っているのか、朝日は全てをさらけ出して言葉にする。
今まで飲み込んでいた苦しみも嫉妬も後悔も、みんなみんな吐き出して。
その姿は、今までの性悪のそれとはまるで違う。
ただ悲しそうに、寂しそうに我が子への思いを紡ぐ父。
眼鏡の奥の目には、悲しみしか見えなかった。
どうして、もっと早く。
そんな自問自答は、誰もが繰り返した終わりの見えない無限に続く回廊。
どうしてと、思い始めた頃には、もう何もかもが手遅れで。
今さら引き返す事は出来ないし、引き返す道は闇に飲まれた後。
後ろを振り返ったところで、そこに広がるのは底の見えない闇ばかり。
道を間違えた事に気付いても、もはや先に進む事しか出来やしない。
その先に崖があろうが、地獄が待とうが。
もう、進むしかない。
自ら、己を飲み込む為に口を開く地獄へと飛び込むだけ。
他に道は、無いんだ、もう。
- 225 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:30:46.33 ID:NjqtsWGoO
-
間に合って。
間に合ってくれ。
どうか、あいつが作る道が繋がる様に。
早く早く、あいつの道が、こいつらの道に繋がる様に。
森を、地面を引き裂いて、全てに繋がる道を作れ。
坊っちゃん、こいつらを、この馬鹿共を、救ってやってくれ。
俺は、こいつを憎み殺す事は、出来ないから。
たん、とどくおが地を蹴る。
金棒を振り上げて、朝日の元へと走る。
朝日はもう、戦う事も諦めた様に、疲れきった顔で、
嬉しそうに、悲しそうに、泣きそうな顔で笑っている。
そんな朝日へと、どくおの金棒が降り下ろされた。
- 229 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:32:24.74 ID:NjqtsWGoO
-
「此ォ処は何ォ処の細道じゃ」
「雷獣様の細道じゃ」
「ちィっと通してくだしゃんせ」
「西の妖怪 通しゃせん」
「己の双子の兄弟にィ とどめをさしに参ります」
「行きはよいよい 帰りは見えぬ」
「それでも殺めに 通りゃんせ 通りゃんせ」
からん ころん、ちりりん。
下駄の音と鈴の音が二人分、町の中へとこだまし消えた。
- 232 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:34:25.74 ID:NjqtsWGoO
-
裾の襤褸けた真っ赤な羽織に、鉄紺色の着流し。
羽織と同じ色の帯には、鈴を付けた一本の刀。
頭には斜めに付けた狐面、短い髪だか頬に流れる髪束は長く、右側は鈴を下げた赤い紐で飾られて。
赤い鼻緒の下駄、左足首には髪を飾る物と同じ紐と鈴。
嗚呼、君は変わらない。
出会った時と、何一つ変わらない格好で、其処に立つ。
こちらを向いたその顔が。
悲しみに満ちたその目だけが、あの頃とは違う。
そしてその目の理由は、僕なんだ。
僕の、双子の兄。
そして、友人だった男。
( ^ω^)「…………長岡」
- 238 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:36:50.12 ID:NjqtsWGoO
-
焦げ茶の羽織に生成りの着物。
質の良さそうな召し物に、羽織と同じ色の帯を締める。
黒に近い茶の足袋履いて、きれいな桐の下駄を履く。
帯に挟んだ扇子には、見覚えのある赤い鈴が結わえられ、ちりちりと音を奏でる。
ふわふわ癖のある、赤茶けた子犬の様な髪。
大福みたいにふやふやと、今も変わらず笑う顔。
初めて見たあの時から、なんにも変わっていない容貌。
でもその笑顔には、溢れんばかりの悲しみが宿る。
その悲しみの理由は、俺なんだよな。
俺の、双子の弟。
そして、友人だった男。
_
( ゚∀゚)「……よう、内藤……」
- 241 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:38:05.38 ID:NjqtsWGoO
-
二人の男は静かに静かに再会し、対峙する。
心から友と呼びあった男。
知りたくなかった双子の血。
対立し合う、互いの立場。
呪われた血とでも云おうか、それともいっそ笑おうか。
愛しい友よ、兄弟よ、最大の敵となる男よ。
君と、殺し会いに来たよ。
( ^ω^)「……三日振り、だお……長岡」
_
( ゚∀゚)「ああ、三日振りだな……内藤……」
( ^ω^)「本当は…………会いたく、なかったお」
_
( ゚∀゚)「俺もだよ……俺もだ、内藤……」
- 247 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:40:29.59 ID:NjqtsWGoO
-
( ^ω^)「会えば、お前さんと殺し合う事になる」
_
( ゚∀゚)「解っていても、理解していても本当は嫌だった」
( ^ω^)「それでも僕らは、会ってしまった」
_
( ゚∀゚)「再び会ってしまったから……もう、逃げる事は出来ない」
( ^ω^)「…………後悔は、し尽くした」
_
( ゚∀゚)「尽きる訳がねぇけどよ……もう、し尽くした……」
長岡が、その辺りに打ち捨てられた刀を爪先で起こす。
それを内藤の方へと放り、顎をしゃくって拾えと言葉なく云う。
嫌そうに、苦しそうに刀から目を背ける。
拾いたくない、拾えば始まってしまうから。
拾いたくない。
けれど兄は、それを許さない
- 250 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:42:16.18 ID:NjqtsWGoO
- _
( ゚∀゚)「さあ刀を取れ、そして俺と殺し合おう」
( ^ω^)「……兄さん、僕にはあなたを殺す事は出来ません」
_
( ゚∀゚)「いいや駄目だ、それじゃあ駄目なんだよ弟、お前はお前の町と仲間を守るため
そして俺は俺達の意思を守るために、どちらかが死ぬまで踊らなければいけないんだ」
( ^ω^)「兄さん、」
_
( ゚∀゚)「さあ刀を取れ、三度目はない、さあ俺に向かえ、刀を振り上げろ、始めようたった一人の弟」
芝居がかった言い回しで、長岡はにっと笑う。
その笑顔が、涙を堪える為だと解ったから、内藤も涙を堪える為に刀を拾った。
ずしりと、重い。
くろがねの重みとは、命の重さとでも云うのだろうか。
誰の物かは解らない、どれだけ血を吸ったかも解らない。
けれどその重さだけは、手からしっかりと伝わる現実。
目をそらしたくてしょうがない、重い現実。
- 254 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:44:29.78 ID:NjqtsWGoO
- _
( ゚∀゚)「…………どうしてだろうな」
( ^ω^)「……」
_
( ゚∀゚)「お前がどうして、魂の片割れなんだろうな」
( ^ω^)「兄さん……」
_
( ゚∀゚)「あの頃はよ、あの頃は、俺ら、友達になれたかも、知れなかったのにな」
( ^ω^)「違うお兄さん……僕らは、確かに友達だったんだお」
_
( ゚∀゚)「……どうして、どうして……お前が、双子なんだろうなあ……」
( ^ω^)「そうも、そんなにも……僕が、憎いかお?」
_
( ゚∀゚)「いいや、いいや、お前が憎いんじゃねえよ
俺は何も憎まねえ、これに嘘はねえ、俺は嘘をつかねえんだよ」
( ^ω^)「知っているお、知っているお、兄さん」
_
( ゚∀゚)「俺が元々、攻め込もうと思ったのは、楽しいからだ
何かを壊すのが楽しいからよ、だから、だからよ、俺は」
( ^ω^)「今は、今も、楽しいかお?」
_
( ゚∀゚)「…………おかしいなあ……楽しく、ねえんだよ」
- 258 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:47:02.65 ID:NjqtsWGoO
-
( ^ω^)「兄さん……」
_
( 宦ヘ )「哀しいんだ、悔しいんだ、苦しいんだよ
お前は俺の双子だ、魂の片割れだ、こうも似てねえのに双子なんだよ
その双子であるお前は、そうも、朗らかに笑うんだ、ふやふやと、大福みてえに
どうして、どうしてだろう、俺は、こんなに歪んで、崩れっちまって
羨ましいんだお前が、お前が、幸せそうに笑えるお前が
ああ、ああ、どうしてだ、どうしてだよ、俺はこうで、お前はそうで、ああ、ああああ」
( ^ω^)「…………兄さん、兄さん、泣くなお、泣くな」
_
( ;∀;)「哀しいよ、なあ哀しいよ、どうしてだよ
哀しいなんて今まで感じた事なんざなかった、なのに、なのによ」
( ^ω^)「……人間に、近づいてしまったんだお、お前さんも」
_
( ;∀;)「お前は妖怪がいなくなるのが哀しいくせに、妖怪を人間にさせる力を持つ
それはきっと、お前がそんな顔で笑うからだ、幸せそうに、人間の顔で笑うから
俺は……俺、は…………お前に会うまでは、こんな、あああああ、」
( ^ω^)「泣かないでくれお……頼むお、悲しまないでくれお……兄さん」
_
( ;∀;)「………………やろう、始めよう、俺が終わるかお前が終わるか、最後の最後
これで、この騒動も、俺も、終わる、終わらせてみやがれ──────俺の弟ォォオッ!!!!」
- 264 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:48:42.91 ID:NjqtsWGoO
-
そう、長岡は涙をはらはら零しながら叫ぶ。
すらりと刀を鞘から抜いて、顔を上げて内藤を睨んだ。
同じ境遇であった筈なのに、片方は朗らかに笑い、片方は歪み笑う。
歪んだ笑みを叩き込まれた兄は、弟に嫉妬をしたのか。
それとも、己の境遇を嘆き悲しむか、怒りに狂うか、いっそ、笑うか。
兄である長岡の頭と胸の中は、様々な感情でごちゃ混ぜで。
ただ自分でも理解出来ていることは、この弟が弟である悲しさ。
そして、現しようもない哀しみと孤独に飲み込まれそうな所を、
嫉妬と言う今にも千切れそうな縄で、ふらふらと支えられていると言う事。
出会った時は、双子などと知る由もなかった。
二度目にあった時は、何という甘ったれだと言う嘲り。
三度目には、どこか懐かしく、気が合うと思えた。
四度目は、もう心を許そうとしていた。
五度目、生まれて初めて、友達と言う存在が持てると思った。
そうして六度目、互いは敵同士であった。
- 268 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:50:04.94 ID:NjqtsWGoO
-
嗚呼、何という、報われないこの魂。
我が半身たる存在を友と思い、そして敵と思い。
嗚呼、嗚呼、報われやしない。
この手のひらには、確かな幸など乗りはしない。
ただ、乗ろうとしてぬか喜びした所で、するりと指の隙間から落ちて行くのだ。
自分が不幸だと思った事も、哀しいだの寂しいだの、思った事はなかった。
けれどこの弟と出会ってから、今まで自分が座していた場所の脆さ、汚さに気付いた。
だが気付いた所で、もう遅かった。
もう、どうしようもなかった。
遅すぎた、そう、何もかも、何もかもが、遅すぎて。
今更、良い子になど、成れる筈もなかったのだ。
だから。
- 277 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:52:36.77 ID:NjqtsWGoO
-
終わりにするんだ。
終わらせてもらうんだ。
たった一人の肉親に、全てを終わらせてもらうんだ。
俺にはもう、何もないから。
_
( ;∀;)「悪役はよ、悪役らしくよ…………派手に、散らせてくれやァアッ!!!!」
もう、突き進んで、突き進んで、壊してもらおう、何もかも、俺すらも。
咲いてみせよう悪の花、派手な散り際凛々と。
散ってみせよう悪の花、百万散華が花吹雪。
一握りの兄の威厳と、歪んだ家族への愛情片手に、
長岡は泣き笑いながら、双子の弟へと刀を振り上げ、走った。
- 281 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:54:10.41 ID:NjqtsWGoO
-
振り上げられた刀を、がきんと刀で受け止める。
振り回される刀の一振り一振りを、すべて受け止め、受け流す。
兄は泣いている。
自分の所為で、兄は泣く。
いやと云うほど痛む胸を押さえる事も叶わず、内藤は必死に兄の攻撃を受け止める。
こちらから、刀を振る事は出来ない。
だって、この刀では道は作れない。
銀色に輝く刃では、血に濡れた道しか作れない。
これじゃ駄目なんだ、兄さん。
これでは人を殺すだけ、何も救えない。
兄さんこれは、終わりしか作られない、始まりがないよ。
気付いて、気付いて、
(; ω )「兄……さんッ!!」
- 291 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:56:08.41 ID:NjqtsWGoO
- _
( ;∀;)「くそっ、くそっ! 前が……ッ見えねぇよ!! 畜生がッ!!」
(; ω )「兄さん……ッこれじゃ、駄目なんだお! これじゃ!!」
_
( ;∀;)「関係ねぇんだ! 解ってる、解ってるよッ!! これは無駄だってッ!!」
(; ω )「兄さんッ! これじゃ何にも始まらないおッ!! 終わりしかないおッ!!」
_
( ;∀;)「終わらせたいんだ俺はッ!! 俺にはもう終わりしかないんだよォッ!!」
(; ω )「違う、違うおっ! 兄さんは終わるだけじゃないッ!!」
_
( ;∀;)「違わねぇよぉおおおおッ!!」
ざん、と内藤の胸が斜めに引き裂かれる。
羽織と着物を裂き、皮膚を裂いて血が噴き出す。
しかし致命傷には至らぬそれに奥歯を噛み締めて、兄の刀を弾いた。
兄の手も、弟の手も震えていた。
様々な理由を混ぜて、かたかた震える手。
それを止める事は叶わず、何度も刃を振り回す。
- 306 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 01:58:40.12 ID:NjqtsWGoO
-
(; ω )「兄っ、さんッ!!」
_
( ;∀;)「ッ……俺だって…………っ俺だって幸せになりたかったんだよぉおおおおおおッ!!!!」
(; ω )「なら……なら僕の幸せをあげるお!! 僕は今まで独り占めしてきたからッ!!!!」
_
( ;∀;)「もう遅いんだよ文太郎ッ!! 俺はもう幸せになっちゃ駄目なんだああああああッ!!」
(; ω )「そんな事ない!! そんな事があるわけないおッ!! 兄さんはこれから幸せにッ!!」
_
( ;∀;)「なれねぇよ! なれないんだよ!! もうなっちゃ駄目なんだッ!!
俺はお前に殺されなきゃッ! 殺されなきゃもう何も終わらないからッ!!」
(; ω )「終わらせるだけじゃ駄目なんだああああああッ!!!!」
_
( ;∀;)「それでも終わらなきゃ何にもならねぇんだよおおおおおおッ!!!!」
兄は泣き、弟は汗を流して立ち回る。
涙でぼやける視界に足を取られ、何度も転びそうになって。
それでも、血を流す弟に刃を向けた。
弟は、もう涙は流してきた。
あの時に、もうみんな流した後だから、今この場では絶対に、泣かない。
- 315 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:00:24.23 ID:NjqtsWGoO
- _
( ;∀;)「頼む、頼むよ文太郎ォッ!! 俺を殺してくれよッ!!」
(; ω )「僕に……殺せるわけないだろぉおおおおッ!!」
_
( ;∀;)「頼むよぉおおおおッ!! もう辛いよッ!! もう苦しいよッ!!
嫉妬して惨めな思いして双子の弟に刃を向けるのは辛いよぉおッ!!」
(; ω )「じゃあ、じゃあ! その刀を下ろしてくれおッ!!」
_
( ;∀;)「無理だよそれは無理だよぉっ!! 俺にはもうこれしか出来ないんだよぉおッ!!
もう嫌だよ! 辛いのは嫌なんだ!! 苦しいよ文太郎、助けてくれよッ!!
壊したいのに壊したくない!! 死にたいのに死にたくないッ!! 殺したくないッ!!
後生だから俺を助けてッ!! 文太郎、俺を助けてよぉおおおおおおおおおおッ!!!!」
悲痛なまでの兄の悲鳴に、弟は思わず刀を向けた。
そして真っ直ぐに、兄を貫く為に、走って。
それは、避ける事は容易な太刀筋。
隙ばかりの、簡単に避けられる突き。
ぞぐり。
手のひらに、肉を突き刺す感触が伝わった。
- 324 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:02:09.95 ID:NjqtsWGoO
-
(; ω )「…………ぁ……」
気が付くと、兄の懐の中に居た。
震える手を刀から離しても、持っていた刀は地に落ちない。
代わりに、ぽたぽたと、真っ赤な何かが地面に落ちて、広がって、染み込んで。
(; ω )「に……さ…………兄、さん…………兄さん……?」
_
( ;∀;)「ぁ…………文、太郎…………」
恐る恐る顔を上げて、兄の顔を見た。
すると兄は驚いた顔で、涙をこぼしながら、それでも笑って。
血を吐いて、崩れ落ちた。
- 335 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:04:35.69 ID:NjqtsWGoO
-
(; ω )「兄、さん……兄さんどうして…………どうして、避け、なかっ……?」
_
( ∀ )「……俺が、避けたら……お前もう、二度と俺を殺せないだろ……?」
(; ω )「そ、な…………兄さん……僕は……」
_
( ∀ )「ありがとう……俺の弟…………俺もう、生きて苦しみたくないんだ……
我儘だって解ってる、けど……これも、悪としての生き様と、そして死に様と思ってくれよ……」
(; ω )「ずるい、ずるいお兄さん……そんな……」
_
( ∀ )「……最後まで、兄らしい事をしてやれなくて……ごめんなぁ」
倒れた兄を抱いて、弟はその頬を撫でる。
まだ暖かいけれど、すぐに冷たくなる。
それを解っていたから、兄は凄く晴れ晴れとした顔をしていたから。
弟は唇を引き結び、俯いて涙を堪えた。
兄が死ぬ。
この手で殺す。
皆を救うと決めた手が、肉親を殺す。
- 342 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:06:54.42 ID:NjqtsWGoO
-
あの時、兄を刺してあげなければいけないと思った。
兄の悲痛な声を聞くのが怖くて、解放してあげたくて。
す、と血の気の引いた顔が、冷静さを取り戻す。
兄殺しは、もう逃れられない現実。
この手を血に染め、大きすぎる業を背負う。
このまま、罪人となるか。
否か。
( ω )「…………兄さん……兄さんは、生まれ変わるなら……どうなりたいお……?」
_
( ∀ )「そうだな……そうだなあ……幸せに、普通に…………ただ普通に、生きたいなあ……」
( ω )「兄、さん」
_
( ∀ )「ごめんなあ……俺は最後まで、お前を傷付けるだけだったや……」
( ω )「……僕が、僕が兄さんの、願いをいつか……叶えますお……」
_
( ∀ )「ありがとう、ありがとう文太郎……友になってくれて、俺を見てくれて……兄と呼んでくれて……」
- 348 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:08:14.52 ID:NjqtsWGoO
-
兄の肌が冷たくなる。
死が近い、こんなにも死は近い。
左腕で兄を抱き、右手で兄の手を握る。
冷たい。
( ω )「…………おやすみなさい……兄さん」
_
( ∀ )「ああ、おやすみ……文太郎…………おやすみ……」
静かに静かに、呼吸が浅くなる。
兄は眠る様に、目蓋を下ろす。
弟は兄の呼吸が途絶える前に手を離し、懐に右手を入れた。
取り出したのは、小さな数珠。
それをそっと掲げて、ただひとつ、涙をこぼして振り下ろした。
しゃらん。
鈴の様な音をさせ、二人の世界は静寂に包まれた。
- 359 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:10:13.83 ID:NjqtsWGoO
-
家族が欲しかった。
友達が欲しかった。
暖かい家が欲しかった。
遊びに行って、泥だらけになって帰って。
怒られるけれど、湯気ののぼる夕食がある。
優しい母が欲しかった。
厳しい父が欲しかった。
可愛いきょうだいが欲しかった。
喧嘩して怒られて、拗ねて泣いて家出して。
とぼとぼ帰って怒られて。
それでも優しく頭を撫でて欲しかった。
家族が欲しかった。
幸せが欲しかった。
普通で良かった。
特別なんて要らなかった。
幸せになりたかった。
みんな大好きだった。
でも普通に、幸せに、なりたかった。
- 372 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:12:33.23 ID:NjqtsWGoO
-
ミ,,゚Д゚彡「よっと……これで全員か?」
lw´‐ _‐ノv「はいな、これでおしまい」
ミ,,゚Д゚彡「ふーん…………大丈夫か、お前」
( ^^)「……へーきです」
ミ,,゚Д゚彡「あっそ」
(…∀…)「あーあ、捕まっちまったなァ」
( ^^)「六目は良いとこなしです」
(…∀…)「喧しいわ、泣いてた癖に」
(-@∀@)「ありんこにたかられて喚いてたのは?」
(…∀…)「……俺です」
( ・3・)「六目は本当に良いとこ無しだよねぇ……」
(…∀…)「もう止めて……」
- 383 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:14:31.48 ID:NjqtsWGoO
-
川 ゚ 々゚)「おねぇさまぁ……くるう達、どうなさるのぉ……?」
lw´‐ _‐ノv「んー……今、考えておりんす」
川 ゚ 々゚)「くるう、もう良い子になるって決めたからぁ……おねぇさまの側でなくて、良いわぁ」
lw´‐ _‐ノv「くるう……」
人il.゚ヮ゚ノ人「ふん、ばっかみたい」
lw´‐ _‐ノv「…………わむて」
人il.゚ヮ゚ノ人「このわむての前で、茶番を繰り広げるのは止めてもらえる? 不愉快だわ」
川 ゚ 々゚)「おねぇさまの事、悪く云わないでぇ……」
人il.゚ヮ゚ノ人「……何よ、あんたは狂ってりゃ良いのよ馬鹿女」
lw´‐ _‐ノv「……わむて」
人il.゚ヮ゚ノ人「…………ふん、ばっかみたい」
lw´‐ _‐ノv「……」
- 390 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:16:27.20 ID:NjqtsWGoO
-
人il#.゚ヮ゚ノ人「大体わむてはね! あんたのその澄ました面がだいっきらいなのよ!!」
lw´‐ _‐ノv「……」
人il#.゚ヮ゚ノ人「何よ何よあんたなんてただのかたわものじゃないのっ!!
我が子も抱けない癖に何が母よ!! だったらわむての方が母に相応しいわよ!!」
lw´‐ _‐ノv「……ぬしさまも、母に固執いたしんすか」
人il#.゚ヮ゚ノ人「なっ……!!」
lw´‐ _‐ノv「ぬしさまに何と申されましょうが、わっちは母……これは揺らぎんせん」
人il#.゚ヮ゚ノ人「るっ……さいッ!! だから嫌いなのよあんたなんか……っあんたなんかぁッ!!」
(-@∀@)「……わむて、止めなさい」
人il#.゚ヮ゚ノ人「うるさいうるさいうるさいッ!! みんなみんなみいんなだいっきらいようッ!!!!」
(-@∀@)「わむてっ!」
lw´‐ _‐ノv「…………かわいそうな子」
人il#.゚ヮ゚ノ人「な……なっ……!!」
- 399 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:18:13.01 ID:NjqtsWGoO
-
lw´‐ _‐ノv「人から愛を受けた事がない、だからそうするのでしょうね」
人il#.゚ヮ゚ノ人「なに、よ……何ようッ!! そうやってわむてを見下したいわけッ!?」
lw´‐ _‐ノv「ぬしさまは気付いていないだけ」
人il#.゚ヮ゚ノ人「はぁ!? 何がよ、わむてはどうせッ!!」
lw´‐ _‐ノv「あなた方のお坊っちゃんから、愛されているのに」
人il.゚ヮ゚ノ人「あ……っでも、そんなの……ッ」
lw´‐ _‐ノv「子からと云えども、それはまごうことなき愛情……それに気付かず何を喚きんすか」
人il.゚ヮ゚ノ人「…………うる、さい……わむては……」
lw´‐ _‐ノv「……わっちが愛すは、旦那様……わっちを愛して下さった方を、ぬしさまは愛す」
人il.゚ヮ゚ノ人「……うるさ……い」
lw´‐ _‐ノv「ごめんなさいと云うは、失礼になりんす……でも、」
人il.゚ヮ゚ノ人「うるさい……うるさいうるさい…………わむては、あんなの好きじゃないわよう……」
lw´‐ _‐ノv「…………」
- 415 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:21:30.63 ID:NjqtsWGoO
-
(-@∀@)
"(-@∀@(…∀…)コソーリ
(-@∀@)「(甲斐性無し)」
(;…∀…)「(!?)」
(-@∀@)「(六目、本当に駄目ですね……)」
(;…∀…)「(何!? 何で急に!?)」
(-@∀@)
(;…∀…)
(-@∀@)(わむての片想い……本当に報われませんね……)
( ^^)(うわー、六目だめすぎます……)
( ・3・)(気付いてないとかどんだけだよ……)
(;…∀…)(なんか仲間からの視線が痛い……何でだよ……)
- 418 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:22:09.16 ID:NjqtsWGoO
-
人il.゚ヮ゚ノ人「……もう良いわよう……みんな嫌いだもん……」
lw´‐ _‐ノv「お坊っちゃんは?」
人il.゚ヮ゚ノ人「…………すき」
lw´‐ _‐ノv⊃人il.゚ヮ゚ノ人 ナデクリ
人il#.゚ヮ゚ノ人「やめんか」
lw´‐ _‐ノv「……吹っ切れて参りんしたね?」
人il.゚ヮ゚ノ人「……もうどうでも良いわよう……わむて、疲れちゃったし……」
lw´‐ _‐ノv「そう、仰有らないで」
人il.゚ヮ゚ノ人「やあよ……もう、生きるのつらいよう……」
lw´‐ _‐ノv「…………数多の命を奪い、それでも平穏な死を望みんすか」
人il.゚ヮ゚ノ人「だってわむては悪だもの……悪たれ共は最後まで我儘になってやるわ」
lw´‐ _‐ノv「わっちがそれを許さぬと云ったら?」
人il.゚ヮ゚ノ人「舌を噛みきり笑ってあげる」
- 430 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:24:37.03 ID:NjqtsWGoO
-
lw´‐ _‐ノv「……困りんしたね」
( ^^)「あの……僕らも、もう生き疲れたです……」
(…∀…)「長く生きすぎたからなァ」
lw´‐ _‐ノv「六目ちゃんには生き地獄として……皆さんは、いかがいたしんしょう……」
(;…∀…)「俺だけ!?」
lw´‐ _‐ノv「わっちの手足返して」
(;…∀…)「…………ごめん、食った」
lw´‐ _‐ノv
(;…∀…)
lw´‐ _‐ノv「ひーちゃん、この子なぶりものにして」
ノパ听)「おっすおっす! 卵吐こうか!?」
(;…∀…)「止めろ! いや止めて!」
- 440 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:26:07.19 ID:NjqtsWGoO
-
人il.゚ヮ゚ノ人「わむてたち、どうせ悪いもの……わがまま云って死んで楽になってやる……」
( ^^)「あうあう……」
( ・3・)「俺はどっちでも良いっちゃ良いけど」
( ^^)
( ・3・)
( ^^)「ぼるじょあのばーか……」
(;・3・)「な、なんかごめんよう……」
(-@∀@)「ま、それを決めるのはあの子でしょう」
( ・3・)「あの子?」
(-@∀@)「ほら、おいでなすった」
人il.゚ヮ゚ノ人「ぁ……」
- 450 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:28:10.32 ID:NjqtsWGoO
-
からりん、ころりん。
ちりりん、ちりん。
四つの鈴を鳴らして、町の広場に訪れる男。
焦げ茶の羽織に生成りの着物、兄の刀をぶら下げて、坊っちゃんは母の前に立つ。
( ω )「……おっかさん」
lw´‐ _‐ノv「坊っちゃん……あの子は」
( ω )「……」
(-@∀@)「兄を殺しましたか、弟君」
( ω )「……兄さんは、云っていました……生まれ変わるなら、平穏な日々に生きたいと」
(-@∀@)「……」
( ω )「あなた方も、それを望みますかお」
人il.゚ヮ゚ノ人「……望む事は、許されないわよ」
( ω )「ならば僕が許しましょう」
人il.゚ヮ゚ノ人「は?」
- 460 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:30:26.36 ID:NjqtsWGoO
-
( ω )「皆が許さずとも、おっかさんが許さずとも、僕だけは全てを許しましょう」
人il;.゚ヮ゚ノ人「あなた、何を云ってるか解ってるの? 人殺しを許す意味を理解しているのっ?」
( ω )「あなた方の罪は、僕がすべて請け負いましょう、僕がすべて背負いましょう」
人il;.゚ヮ゚ノ人「な……何を、馬鹿な事を……!」
( ω )「この世には、絶対悪は存在しません、尊き祖父が云いました」
人il;.゚ヮ゚ノ人「なっ……」
( ω )「僕は全てを包む大地となりましょう、そして全てを愛する空になりましょう」
人il;.゚ヮ゚ノ人「……あなた……あなた、本当に……大馬鹿者だわ……」
( ω )「これが最善とは思いません、けれどこれが、僕に出来うる最善に近い決断です」
( ^^)「……僕はあなたの友達を殺そうとしました、それでも……許せますか?」
( ω )「僕の友は生きています、許す事は易い事」
(…∀…)「……お前の家族を、俺は散々傷付けた、それでもお前は許せるか?」
( ω )「喩え両親があなたを許さずとも、僕はあなたが居なければ両親の子にはなれませんでした」
- 469 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:32:16.84 ID:NjqtsWGoO
-
(-@∀@)「…………それでも、僕も許すと云いますか」
( ω )「ええ、許しましょう」
(-@∀@)「……あなたはとんでもない人ですね」
( ω )「僕の許しが、あなた方の救いにはなりません」
(-@∀@)「……僕らを許すと同時に、僕らを苦しめると云う事ですね」
( ω )「それが、あなた方の罰としましょう、責められる事もなく許される事こそが」
(-@∀@)「ああ……あなた達の息子は、とんだ鬼畜者ですね……」
( ω )「あなた方が罪悪感を持つからこそ、僕は皆を許します、生まれ変わったその時に、償う様に」
(-@∀@)「……輪廻を許される……それもまた、苦痛ですねぇ……」
( ω )「これで、よろしいでしょうか、おっかさん」
lw´‐ _‐ノv「……坊っちゃんが決めた事ならば、わっちは何も云いんせん」
( ω )「……さあ……おやすみなさい、兄の親御様方
……そしていつか、いつの日か、僕の腕で目覚めます様に」
- 477 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:34:06.40 ID:NjqtsWGoO
-
数珠を掲げて振り下ろし、また掲げて振り下ろす。
空はすっかり白み、月と太陽が共存する。
暁の蛇さんが戻ってきて、町はゆっくりとあかりに包まれる。
静かな静かな広場には、坊っちゃん一人が空を見上げる。
涙を堪える様に空を仰いで、数珠を掲げた。
数珠の輪にすっぽりと、お月さまと太陽の明かりを映し込んで。
「─────百鬼夜行、これにて、仕舞いで御座います」
夜行の闇を祓う為、扇子を抜いてばさりと開く。
そして、町の中に朝の風を扇ぎ入れた。
「皆々様、わがままにお付き合い頂き、有り難う御座いました」
百の鬼はもう居らず、夜は明けて列は消えた。
- 486 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:36:15.86 ID:NjqtsWGoO
-
たくさんたくさん涙を流し、血を流した。
胸の痛みを抱き抱え、全てを愛する男が居た。
男の名前は内藤文太郎。
今や東の町の大地主。
皆を愛して愛される、子供みたいな大きな男。
こうして、夜行の列は崩れ落ち、妖怪達はお日様に照らされる前に姿を消した。
今はもう、町に妖怪は一人もいない。
あの夜に、全てを使い果たしたのだろうか。
それでも皆は忘れない、あの華やかで悲しくて、どうしようもなく愚かな夜を。
その夜こそが、妖怪達の最初で最後の晴れ姿、忘れられぬ夜の名は
百鬼夜行の ようです。
【( ^ω^)百鬼夜行のようです おわり。】
- 507 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:40:14.78 ID:NjqtsWGoO
-
『しかし、本当に良いのかい?』
『構いません、姐様』
『後悔はしないね?』
『しません』
『しょうがないなあ……あまり気は乗らないけど』
『お願いします』
『嗚呼解ったよ、そら二度は見せないから目に焼き付けなさいね、お神楽なんてこれっきりだ』
『よろしく、お願いします』
- 525 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:42:08.86 ID:NjqtsWGoO
-
「旦那様、旦那様!」
「ん、ああはいはい、どうした?」
「どうしたじゃありません、今日はご両親がおいでになるんでしょう?」
「そうだけど……と云うか、旦那様は止めてくれお、つん」
ξ゚听)ξ「使用人と間違えそうだから、ですか?」
( ^ω^)「だお、あなたで良いんだお、つん」
ξ゚听)ξ「でも旦那様は旦那様です」
( ^ω^)「おー……」
「もし、何方かいらっしゃいますか?」
( ^ω^)「お! おっかさんだお!」
ξ゚听)ξ「はあい、ただいま! ほら旦那様、行きましょう?」
( ^ω^)「おー」
- 534 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:44:10.11 ID:NjqtsWGoO
-
lw´‐ _‐ノv「はふ、少しの距離とは云え、疲れまする……」
( ^ω^)「ようこそですお、おっかさん、お疲れ様ですお」
ξ゚听)ξ「どうぞ此方へ、お疲れ様です」
lw´‐ _‐ノv「……」
ξ゚听)ξ?
lw´‐ _‐ノv「やっぱり、良いお嫁さんを貰いんしたね」
ξ*゚听)ξ「な、なんですか急に……」
lw´‐ _‐ノv「いえいえ、ところであの子は?」
( ^ω^)「お、外で走り回ってますお」
『おーい! ぶんたろー!!』
( ^ω^)「噂をすればなんとやら……」
ξ゚听)ξ「もう、名前で呼んじゃ駄目って云ってるのに……」
( ^ω^)「まあまあ」
- 543 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:46:12.36 ID:NjqtsWGoO
- _
( *゚∀゚)「見ろよ文太郎! すっげぇでっかいカブトムシだぞ!」
( ^ω^)「あー兄さん」
_
( *゚∀゚)「ん?」
( ^ω^)「おっかさんの前ですから」
_
( *゚∀゚)
_
( *゚∀゚)「かーちゃんだ!!」
lw´‐ _‐ノv「はいな」
_
( *゚∀゚)「うおーかーちゃんだ!! ひさしぶり!!」
lw´‐ _‐ノv「はいはい、お久しぶりでありんす」
_
( *゚∀゚)「おっぱいでけぇ!」
lw´‐ _‐ノv「あらん、お乳のいる歳は過ぎたでしょうに」
_
( *゚∀゚)「おっぱいだー! つんには無いからな!」
ξ゚听)ξ
- 557 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:48:12.12 ID:NjqtsWGoO
- _
lw´‐ _‐ノv)*゚∀゚) パフパフ
( ^ω^)「……えーと、取り敢えず上がってくださいお」
lw´‐ _‐ノv「はあい」
( ^ω^)「つん、お茶を…………つん?」
ξ゚听)ξ「はい」
( ^ω^)「その燃え盛る鏝を何に使う気だね?」
ξ゚听)ξ「躾に」
( ^ω^)「止めてあげて、まだ五歳なの」
ξ゚听)ξ「今こそ躾の時だと思います」
( ^ω^)「いやいやあれ一応は僕の兄だから、ね?」
_
( *゚∀゚)「文太郎もかーちゃんくらい美人な嫁さんもらえば良かったのに、つんってちんくしゃだし」
( ^ω^)「おい糞兄貴、そこに正座しろ」
- 565 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:50:13.39 ID:NjqtsWGoO
-
('A`)「おーい、餡蜜で良かったかー?」
川 ゚ -゚)「くーどく特製あんみつだ、三つ回ってわんと鳴いてから食え」
('A`)「お前は器に盛っただけだ」
川 ゚ -゚)「あ、あんたのために盛ってあげたんじゃないんだからねっ!」
('A`)「お前の器だけ特盛だな」
川 ゚ -゚)「ほら眉毛、お前の分だぞ」
_
( ゚∀゚)「すげー、超すくねぇ」
川 ゚ -゚)「当たり前だちび、くうはこれからぼいんになるからな」
_
( ゚∀゚)「マジかよ、揉んで良い?」
川 ゚ -゚)「やだもーどくおに聞いて///」
('A`)「好きにしろ。ほら坊っちゃ……若旦那、餡蜜だぞ」
( ^ω^)「おー、ありがたいおー」
川 ゚ -゚)
- 579 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:52:05.80 ID:NjqtsWGoO
-
('A`)「ほれ、若奥様も餡蜜で良いか」
ξ゚听)ξ「あ、はい、ありがとうございます」
('A`)「体を冷やして大丈夫か?」
ξ゚听)ξ?
('A`)「……実子は未だ先っぽいね……」
( ^ω^)「云うなお……一緒に寝る=布団並べて寝る、なんだお……」
ξ゚听)ξ???
('A`)「奥様、どんぞ」
lw´‐ _‐ノv「おもちは?」
('A`)「白玉で我慢して」
( ^ω^)「そういやおっとさんとじっちゃんは?」
lw´‐ _‐ノv「他の子達と遊んでおりんす、もういらっしゃるかと……」
=-三(┌`゚ω゚´)┌「待てこらぁああああああ!!」
-=三(;ΦωΦ)「断る父上!!」
- 592 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:54:06.17 ID:NjqtsWGoO
-
lw´‐ _‐ノv
( ^ω^)
lw´‐ _‐ノv「相変わらずお元気で」
( ^ω^)「全くですお」
('、`*川「あ……え、えとえと……こんにちは……?」
( ^ω^)「お! ぺにさすさん、いらっしゃいですお!」
('、`*川「ご、ごめんなさいね? しゃきんさん、あの子達に悪戯されて怒ってるみたい……」
( ^ω^)「おー……相変わらず悪たれ共だお、全く……おっとさんはどうしたんですかお?」
('、`*川「あの子達を、あの子達を抱えて逃げてらっしゃるみたいなの……」
( ^ω^)「おっとさぁん……叱る時は叱りましょうお……」
lw´‐ _‐ノv「まあま、あちらは任せて大奥様も餡蜜は如何にありんす?」
('、`*川「あら、ありがとう……うふふっ、いただくわ」
- 600 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:56:09.02 ID:NjqtsWGoO
-
(;ΦωΦ)「えええい! 貴様らも我輩にしがみついてないで走らんか!」
人il.゚ヮ゚ノ人「やーん、わむて疲れたー」
( ^^)「これからもよろしくお願いします」
(…∀…)「快適だな」
(#ΦωΦ)「走る事とじい様の拳骨とどちらが嫌か」
(`^ω^´)「全くお前達、大概にしなさいよ」
(ΦωΦ )「父上、我輩はこやつらに筆と墨を貸しただけなのでありますが」
(肉 `^ω^)「その結果がこれだけどね」
(ΦωΦ )「…………お似合いであります」
(肉 `^ω^)「どつき回すぞ」
(ΦωΦ )「いや、我輩はもう本当に無関係なのですが……」
(肉 `^ω^)「よし、お前はでこに肉でどうだ」
(ΦωΦ )「いや本当なんかもうすみません」
- 605 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 02:58:18.41 ID:NjqtsWGoO
-
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちはー! お姉ちゃん、いるー?」
ξ゚听)ξ「でれ? どうしたんで」
_
( *゚∀゚)「ぼいんだー!」
ζ(゚□゚;ζ「ほぎゃぁああっ!?」
( ゚∋゚)「はいすとっぷ」
_
( *゚∀゚)「離せくっくる! 離せ!」
( ゚∋゚)「はいはい、どうしましたでれ様?」
ζ(゚ー゚;ζ「あ、えと……きゅうさんが差し入れ渡してくれーって」
( ゚∋゚)「おお、これは素晴らしいみつ豆、まあ今餡蜜食べてますがでれ様もどうぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、やったー! どくおさんの餡蜜いただきまーす!」
( ゚∋゚)「みつ豆美味しい……」
,,,ミ,,゚Д゚彡「摘まみ食いすんなや」
( ゚∋゚)「ふささんも如何ですか」
ミ,,゚Д゚彡「甘いもん苦手」
- 616 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:00:30.48 ID:NjqtsWGoO
-
( ^ω^)「…………しかし、みんな元気なもんですお」
lw´‐ _‐ノv「全くでありんすね」
( ^ω^)「こないだまで赤ん坊だったのに……」
lw´‐ _‐ノv「あれからもう五年も経ちんした、大きくもなりましょう」
( ^ω^)「五年……か」
ξ゚听)ξ「随分、昔の事みたいですね……」
( ^ω^)「ま、五年の間に僕らも結婚したしお」
川 ゚ -゚)「くうも十歳くらいだぞ」
('A`)「相変わらずちーこいけどな」
川 ゚ -゚)「これからだこれから、いずれ前の様なぼいんになる
まあどくおになら触らせてやっても良いけどな」
('A`)「坊っちゃん、茶あいるか?」
( ^ω^)「あ、頂くお」
川 ゚ -゚)
- 622 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:02:05.59 ID:NjqtsWGoO
-
lw´‐ _‐ノv「……輪廻の儀から、もう五年……か」
( ^ω^)「お」
lw´‐ _‐ノv「あのはいんが、わざわざお神楽を舞ってまでして下さいんしたからね」
( ^ω^)「はいんの姐様……」
lw´‐ _‐ノv「あんな事になるだなんて……」
从 ゚∀从「人を死んだみたいに云わないでもらえるかイ」
( ^ω^)「お、姐様」
从 ゚∀从「全く、餡蜜寄越し賜え」
( ^ω^)「あ、いやんこれ僕の分」
从 ゚∀从「じゃあしゅうの分を」
lw´‐ _‐ノv「けふ」
从 ゚∀从「…………一気に食うなよ」
lw´‐ _‐ノv「ごちそうさま」
- 632 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:04:29.71 ID:NjqtsWGoO
-
从 ゚∀从「はーあ、五年か……五年……君達は老いないねェ」
lw´‐ _‐ノv「はいんこそ」
从 ゚∀从「私は特異な人間のままだからね」
lw´‐ _‐ノv「ま、わっちももう人間でありんすが」
从 ゚∀从「ひっきぃは老いたよ、今までの分を一気に」
lw´‐ _‐ノv「すっかり青年になられんしたね……」
从 ゚∀从「いや、びっくりしたさ……こないだまでこーんな小さかったのに……」
( ^ω^)「今は僕より背が高いお……」
lw´‐ _‐ノv「坊っちゃんより年上でありんすからね、本当は……」
从 ゚∀从「ちょびっとだけね」
lw´‐ _‐ノv「あの子のお嫁さんは?」
从 ゚∀从「あー無理無理、あの奥手に女が出来るものかイ」
- 639 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:06:25.31 ID:NjqtsWGoO
-
从 ゚∀从『あの数珠は、役に立ったかイ?』
( ^ω^)『はい、とても』
从 ゚∀从『あれは、命を封じる数珠……死にかけていようが、関係なく数珠に封じる』
( ^ω^)『そのお陰で、助かりましたお』
从 ゚∀从『まさかこんな使い方をするとは思わなかったがね……ただ封印するだけと思った』
( ^ω^)『……お願い出来ますかお、姐様』
从 ゚∀从『君ね、簡単に云わないでくれ賜えよ……死んでいないものを、輪廻させるなんて』
( ^ω^)『姐様にしか、出来ませんお』
从 ゚∀从『……私を万能だと思わないでくれ賜えよ』
( ^ω^)『じゃあ、出来ませんかお?』
从 ゚∀从『出来るよ、出来るさ……だがね……』
- 645 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:08:21.98 ID:NjqtsWGoO
-
从 ゚∀从『これが、解決になると思うのかイ?』
( ^ω^)『僕は約束しましたお、誰も殺さず、幸せにすると』
从 ゚∀从『…………だが、』
( ^ω^)『僕は、皆を愛します、そして僕が、皆を幸せにしますお』
从 ゚∀从『……あーもう、君の頑固さは両親譲りだ…………やるよ、やります』
( ^ω^)『有り難う、御座いますお』
从 ゚∀从『その数珠の中、全員だね』
( ^ω^)『はいですお』
从 ゚∀从『そいつらは赤子となり、記憶は殆ど引き継がれずに生まれる……ちゃんと育て賜えよ』
( ^ω^)『はい!』
从 ゚∀从『よし、一丁やりますか…………ひっきぃ! ひいと! 手伝い賜え! 御神楽だ!!』
- 653 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:10:11.72 ID:NjqtsWGoO
-
( ^ω^)「…………で」
_
( *゚∀゚)「でれー! ほらかぶとむしー!」
ζ(゚□゚;ζ「やー! その手の虫はやー!!」
_
( *゚∀゚)「ほらほらでっけーだろ!!」
ζ(゚□゚;ζ「ぎにゃーっ!! どさくさに紛れて胸さわんないでー!!」
( ^ω^)「元気すぎるわ」
lw´‐ _‐ノv「でれちゃん、十と……」
ξ゚听)ξ「二つですね、十二歳」
lw´‐ _‐ノv「……立派なお胸で」
ξ゚听)ξ
lw;´‐ _‐ノv
(;^ω^)「どくおー! どくおー!! お茶ー!!」
- 667 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:14:36.36 ID:NjqtsWGoO
-
lw´‐ _‐ノv「しかし、みんなわっちらのお子になりんしたね」
( ^ω^)「おー……僕の子にしようと思ったんですがお……」
lw´‐ _‐ノv「若夫婦には大変でありんしょう……今度は手助けもありんしたし、平気平気」
(;ΦωΦ)「こら! 髪を引っ張るでない!」
( …∀…)つ(;ΦωΦ)グイグイ
(…∀…)「じじーのばーか」
(;ΦωΦ)「おま、何であるか急に!」
(…∀…)「べーだ!」
lw´‐ _‐ノv「…………記憶、引き継いでないんじゃ……?」
从 ゚∀从「殆どね、殆ど」
- 676 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:16:33.68 ID:NjqtsWGoO
-
( ・3・)「ぅおーい、町の奴等から書面預かって来たよー」
( ^ω^)「お、すまんおぼるちゃん」
( ・3・)「ぼるちゃん云うなし」
( ^ω^)「……」
( ・3・)?
( ^ω^)「……何でぼるちゃんだけ、このままなんだお?」
( ・3・)「いや、そんな事聞かれても……」
从 ゚∀从「それだけ輪廻に失敗してね」
( ^ω^)「失敗……?」
从 ゚∀从「ああ、なんかそのままだった」
( ・3・)「俺、そんなあばうとな存在だったの……?」
从 ゚∀从「だって赤子にならなかったし、君の中に悪行があんまり見えなかったんだもの」
- 682 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:18:03.63 ID:NjqtsWGoO
-
从 ゚∀从「悪行と、それに合った後悔が無いとちゃんと出来ないのさ、君はばらんす悪い」
( ・3・)「えぇ……そんな……」
从 ゚∀从「だって後悔ばっかりで特に悪行働いてないからさ、誰も殺した事なかったろ君」
(;・3・)「う」
从 ゚∀从「図星か……何で君があの中にいたのか不思議なくらいだよ……」
(;・3・)「り、略奪くらいなら……飯奪ったり」
从 ゚∀从「この様なちっちぇえ悪行ではこのままになる、解ったかイ?」
( ^ω^)「はーい」
(;・3・)「……まあ良いけどさぁ……ちょっと渉、登らないで」
ヽ( ^^)ノ キャッキャッ
(;・3・)「もー……まあ人間にはなってるみたいだし、良いけど……」
( ^ω^)「ほいほい、はしゃいでないで会議するおー」
- 690 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:20:13.44 ID:NjqtsWGoO
-
( ^ω^)「ほら兄さんも、いつまでもまさぐってないでおいで」
_
( ゚∀゚)「ちぇー、かいぎってなんだー?」
( ^ω^)「兄さんはまだ参加した事なかったおね、お祭りがあるんだお」
_
( *゚∀゚)「まつり!?」
( ^ω^)「お、年に二度だけのお祭りだお」
_
( *゚∀゚)「どんな事するんだ!?」
( ^ω^)「みんなで屋台出して、太鼓鳴らして踊ったり歌ったりするんだおー」
_
( *゚∀゚)「うおおおお! なんで俺は参加してなかったんだ!?」
( ^ω^)「本当は子供は参加しちゃ駄目だからお、五歳になったらこっそり参加して良いんだお」
_
( *゚∀゚)「俺もできるの!?」
( ^ω^)「もっちろんだお」
_
( *゚∀゚)「やったー!!」
- 697 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:22:05.08 ID:NjqtsWGoO
- _
( *゚∀゚)「屋台……太鼓……」
( ^ω^)「おっおっ、実はお祭りの一番楽しいのはそれらじゃないんだお」
_
( *゚∀゚)「? じゃあなんだ?」
( ^ω^)「実は、みんなが妖怪に仮装して大行列を作るんだお!」
_
( *゚∀゚)「なんだそれかっこいー!」
( ^ω^)「だろうおだろうお、今年からは兄さんもその仲間に入るんだお」
_
( *゚∀゚)「おお……おおお……!」
( ^ω^)「そのお祭りの名前、何だと思うお?」
_
( *゚∀゚)「わかんねぇ!!」
( ^ω^)「おっおっおっ……そのお祭りの名前は、妖怪が溢れる夜の名前は─────」
─────百鬼夜行、だお。
- 707 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:24:08.51 ID:NjqtsWGoO
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(しゃんしゃらしゃんしゃら、鈴を振る。)
(とたとんとたんた、地を蹴って。)
(きゃらりきゃらりら、人の声。)
(ざかざしざかざか、草履が鳴く。)
(狐の面を被った男がひとり、くらりくらりと踊っては、扇を片手に声高らかに何かを叫ぶ。)
(其れは丸で唄の様に、しゃんと通る拍子木の様な声で。)
『さあさ さあさあ皆々様! 寄るがよいよい 見るがよい!』
『只のけぐるいじゃあ御座いやせん この私 なんと狐に御座ります!』
『さあさ さあさあご覧あそばせ皆々様! 狐について歩いておいで!』
- 711 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:26:04.16 ID:NjqtsWGoO
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『初めに見えるは狐の嫁入り、お次に見えるは狂い踊りし鎌鼬!』
(通り名でなく、名前、ね?)
(ふ……ふぉっくす、さま……)
(うちは悪い女やのです、最低な女やのですっ!)
(お前……あねさま、泣かせたな……?)
(……いいこ、ちゃうよ……わるいこや)
『正体不明は狢の男、首を斬られた祟り神たる犬神御仁!』
(痛い、いだいよぉっ!! やだあああああああああッ!!!!)
(すまなかった、君の娘を傷付けて)
(俺は、少し人らしくなった、次はお前だ)
『雷操るは金色なる怪手物 魅せるは花魁女郎蜘蛛! 愛しき可愛し蛇女!』
(全く、我輩の雷で貴様が死ぬ等、笑い話にもならぬわッ!!)
(……御子の幸せが、わっちの幸せにありんす)
(……よろしく、です……わたしのあし、ないとうさん)
(で、でれともうします! 今日から、その、しゅうさまのおせわを!)
- 718 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:28:08.54 ID:NjqtsWGoO
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『かたわの天狗に哀れな覚! 血飲むは樹木子、飲ませし烏、喰らい尽くすは悪鬼羅刹に魑魅魍魎!』
(黙れッ! 妹者と兄者を返せ外道がッ!!)
(……外は怖いけど、管狐みたいに、あたたかいなら……嫌いじゃない)
(……ごめんね、れもなはもう綺麗な身じゃないけど)
(それでも、れもなはれもな、僕の愛しい妻モナ)
『嗚呼、見目麗しきはきらびやかなる女達! 身の毛も弥立つ怪手物共の大行進!』
『獣に蟲に無機物に、幽霊、人間、なりそこない!』
『悲しい女に哀れな男、人も妖怪も入り交じり、百鬼夜行が始まるよ!』
『さあさ さあさあ寄っておいで見においで! 狐についてこっちへおいで!』
『両のおめめを見開いて、その目へ焼き付けてご覧よ百鬼夜行!』
『さあさ さあさあ狐についてこちらへおいで!人も見られる百鬼夜行を見においで!』
- 726 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:30:30.90 ID:NjqtsWGoO
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年に二度のお祭り。
一度は夏に、もう一度は冬に。
その夜だけは、この人間だけが溢れる町が、妖怪に満ちる。
その仮装たるやもう、まるで本物の妖怪とみまごう精巧さ。
それはまるで、本物の妖怪の様に─────
「はてさて、かくして、人とあやかしは見事、百鬼夜行を成す事が出来たのでありました」
「数多の傷を負い、数多の思いが交差致しました」
「されどされども彼らは見事に百鬼夜行を成したのです」
「それはそれは楽しく愉快に賑やかに、妖怪と人が入り乱れ」
「その先頭に立つは、人ともあやかしとも云えぬ男、我らが坊っちゃんそのお人」
- 736 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:32:31.22 ID:NjqtsWGoO
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「かのお方の人柄故か、誰の命も亡くさずして終えたは戦に百鬼夜行」
「今やあやかしは人となりけり、されども魂に刻まれしあの夜は消える事もなく」
「この狐も、ついにはあやかしより人へと移り変わったので御座います」
「さてさて皆々様、長きに渡る狐の戯れ言にお付き合い下さり有難う御座いました」
「さあさ さあさあ、これにて仕舞いと致しましょう」
「皆々様が、幸多からん人の世を生きられますよう、狐も人の世を生きたく思います」
「それでは、お後が宜しいようで」
「むっきゅん」
『百鬼夜行のようです 完。』
- 759 ◆XCE/Wako2nqi 2010/08/16(月) 03:35:06.36 ID:NjqtsWGoO
- 支援有り難う御座いました。
これにて、『( ^ω^)百鬼夜行のようです』終了と致します。
途中で投げ出しかけたにもかかわらず、読んでくださった皆様、本当に有り難う御座いました。
投げ掛けた理由はちょっとプロットがアレしてアレだったからです。お恥ずかしい。
途中でgdgdになる事もありましたが、何とか完走する事が出来ました。
これもひとえに、読んでくださった皆様のお陰です。
今まで読んでくださった皆様、支援をして下さった皆様、乙をして下さった皆様
絵を描いて下さった絵師さん、まとめて下さったまとめさん、本当に本当に有り難う御座いました。
規制の荒波にもスクリプト攻撃にもめげず、ほぼ毎週投下が出来たのはそんな皆様のお陰です。
スクリプト攻撃と投下中の鯖移転には爆笑したけど。
後日、落ち着いてからブログの方で登場人物のまとめをしたいと思います。
投票ではべったくそだった主人公も、何だかんだで愛されて嬉しい限りです。
皆様、今までのお付き合い、そして長い時間お付き合い下さいまして、本当に有り難う御座いました。
あ、別に引退とか休止はしねぇよ。
それでは、これにて失礼!
むっきゅーん!